説明

水晶振動子製造システム、成膜装置、水晶振動子製造方法および成膜方法

【課題】中間膜の形成、洗浄、感応膜の形成、洗浄を繰り返して水晶振動子を製造する際に、洗浄処理での異常の有無を容易に検出する。
【解決手段】水晶振動子製造システム1は、水晶振動子の電極上に中間膜を形成する中間膜形成部41、水晶振動子を洗浄する洗浄部42,44、並びに、中間膜上にアルコール検出用の主感応膜を形成する主感応膜形成部43を備え、中間膜の形成、洗浄、主感応膜の形成、洗浄が順に繰り返される。中間膜形成部41および主感応膜形成部43では、膜の形成の開始時および終了時に水晶振動子の発振周波数が取得され、上記処理の繰り返しにおいて、一方の形成部での膜の形成の終了時における発振周波数と、他方の形成部での当該膜に積層される他の膜の形成の開始時における発振周波数とを比較することにより、当該膜の形成後、当該他の膜の形成前の洗浄処理における膜の変化が検出され、洗浄処理での異常の有無が容易に検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定物質の検出用の水晶振動子を製造する技術、および、水晶振動子において電極に薄膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の物質の濃度を検出する装置において水晶振動子が多く用いられており、板状の水晶片の両主面に1対の電極がそれぞれ形成された水晶振動子において、電極上に当該物質を吸着する感応膜を形成する(実際には、所定の中間膜を介在させて電極上に感応膜を形成する)ことにより、当該物質の検出用の水晶振動子(すなわち、当該装置における検出部となる水晶振動子)が製造される(水晶への成膜に関して、例えば特許文献1参照)。このような水晶振動子では、当該物質の吸着による水晶振動子の発振周波数の変化に基づいて、当該物質の濃度が検出される。
【0003】
なお、特許文献2では、水晶振動子の表面に成膜材料を付着させ、この成膜材料の堆積による水晶振動子の共振周波数の変化量を測定して、被処理基板上に堆積される成膜材料の膜厚を監視する手法が開示されている(特許文献3において同様)。
【特許文献1】特開2007−61752号公報
【特許文献2】特開2006−78302号公報
【特許文献3】特開2003−139505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特定物質の検出用の水晶振動子において、中間膜の形成、水晶片の洗浄、感応膜の形成、水晶片の洗浄を順に繰り返して電極上に中間膜と感応膜とを交互に積層することにより、当該物質を多く吸着させて発振周波数の変化量を増大する(すなわち、当該物質の検出感度を向上する)ことが考えられるが、上記処理の繰り返しにおいて、成膜処理や洗浄処理にて異常が発生したときには、水晶振動子の電極上に膜が適切に形成されない、あるいは、電極上の膜が剥がれてしまうことがあり、この場合、当該水晶振動子は不良品となってしまう。このような異常が生じているにもかかわらず、中間膜および感応膜を形成する処理を繰り返すと、特定物質の検出用の水晶振動子を製造する処理の生産性が大きく低下してしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、中間膜および感応膜の形成処理での異常の有無を確実に検出することを目的とし、中間膜の形成、水晶片の洗浄、感応膜の形成、水晶片の洗浄を繰り返して水晶振動子を製造する際に、洗浄処理での異常の有無を容易に検出することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、特定物質の検出用の水晶振動子を製造する水晶振動子製造システムであって、板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極上に中間膜を形成するとともに、少なくとも前記中間膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する第1測定部を有する中間膜形成部と、前記中間膜上に前記特定物質を吸着する感応膜を形成するとともに、少なくとも前記感応膜の形成の開始時および終了時に、前記水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する第2測定部を有する感応膜形成部と、前記水晶片を洗浄する洗浄部と、前記複数の水晶振動子を前記中間膜形成部、前記洗浄部、前記感応膜形成部、前記洗浄部に順に搬送して前記少なくとも1つの電極上に前記中間膜と前記感応膜とを積層する処理を繰り返す搬送部と、前記中間膜形成部および前記感応膜形成部のうちの一方の形成部における膜の形成の終了時に測定部にて取得される発振周波数と、他方の形成部における前記膜に積層される他の膜の形成の開始時に測定部にて取得される発振周波数とを比較することにより、前記膜の形成後、前記他の膜の形成前の前記洗浄部での処理における膜の変化を検出する検出部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水晶振動子製造システムであって、前記複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極および前記水晶片の前記1対の電極が形成された部位が第1振動子とされ、前記両主面にさらに形成された他の1対の電極および前記水晶片の前記他の1対の電極が形成された部位が第2振動子とされ、前記中間膜形成部および前記感応膜形成部において、前記他の1対の電極を含むとともに前記少なくとも1つの電極を除く残りの電極が成膜対象外とされ、前記中間膜形成部の前記第1測定部、および、前記感応膜形成部の前記第2測定部が、前記第1振動子および前記第2振動子のそれぞれの発振周波数を取得する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水晶振動子製造システムであって、前記第1振動子がアルコール検出用の振動子であり、前記第2振動子が、前記第1振動子からの出力補正用の振動子である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の水晶振動子製造システムであって、前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが前記搬送部により搬送され、前記水晶振動子が、前記キャリアにて保持される前記複数の水晶振動子において端に位置するものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の水晶振動子製造システムであって、前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが前記搬送部により搬送され、前記中間膜形成部および前記感応膜形成部の各形成部が、膜の形成が行われる処理部と、前記搬送部の支持部により前記処理部の上方に配置される前記キャリアをアームにて受け取るとともに、前記アームの下降により前記キャリアを前記処理部内に搬入する昇降機構と、前記アームに対して相対的に固定されるとともに、前記各形成部の測定部における端子を前記水晶振動子の端子に対して進退させる進退機構とをさらに有する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極に薄膜を形成する成膜装置であって、薄膜の形成が行われる処理部と、少なくとも前記薄膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する測定部とを備える。
【0012】
請求項7に記載の発明は、特定物質の検出用の水晶振動子を製造する水晶振動子製造方法であって、a)板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極上に中間膜を形成するとともに、少なくとも前記中間膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程と、b)前記水晶片を洗浄する工程と、c)前記中間膜上に前記特定物質を吸着する感応膜を形成するとともに、少なくとも前記感応膜の形成の開始時および終了時に、前記水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程と、d)前記水晶片を洗浄する工程と、e)前記a)ないしd)工程を繰り返す工程とを備え、少なくともいずれかの前記a)工程または前記c)工程における膜の形成の終了時に取得される発振周波数と、前記膜に積層される他の膜の形成の開始時に取得される発振周波数とを比較することにより、前記膜の形成後、前記他の膜の形成前の前記b)工程または前記d)工程での処理における膜の変化が検出される。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の水晶振動子製造方法であって、前記複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極および前記水晶片の前記1対の電極が形成された部位が第1振動子とされ、前記両主面にさらに形成された他の1対の電極および前記水晶片の前記他の1対の電極が形成された部位が第2振動子とされ、前記a)工程および前記c)工程において、前記他の1対の電極を含むとともに前記少なくとも1つの電極を除く残りの電極が成膜対象外とされ、前記第1振動子および前記第2振動子のそれぞれの発振周波数が取得される。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の水晶振動子製造方法であって、前記第1振動子がアルコール検出用の振動子であり、前記第2振動子が、前記第1振動子からの出力補正用の振動子である。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項7ないし9のいずれかに記載の水晶振動子製造方法であって、前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記水晶振動子が、前記キャリアにて保持される前記複数の水晶振動子において端に位置するものである。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項7ないし9のいずれかに記載の水晶振動子製造方法であって、前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが搬送部により搬送され、前記キャリアが、膜の形成が行われる処理部の上方に前記搬送部の支持部により配置され、続いて、昇降機構のアームにて受け取られるとともに、前記アームの下降により前記処理部内に搬入され、前記a)工程および前記c)工程のそれぞれにおいて、前記アームに対して相対的に固定される進退機構により、前記水晶振動子の発振周波数を取得する測定部における端子が前記水晶振動子の端子に対して進退する。
【0017】
請求項12に記載の発明は、板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極に薄膜を形成する成膜方法であって、薄膜の形成を行う成膜工程と、少なくとも前記成膜工程の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中間膜および感応膜の形成処理での異常の有無を確実に検出することができ、中間膜の形成、水晶片の洗浄、感応膜の形成、水晶片の洗浄を繰り返して水晶振動子を製造する際には、洗浄処理での異常の有無も容易に検出することができる。
【0019】
また、請求項2および8の発明では、成膜対象外の他の1対の電極に中間膜および感応膜が成膜されていないことを確認することができ、請求項4および10の発明では、中間膜および感応膜の形成における異常を容易に検出することができ、請求項5および11の発明では、中間膜および感応膜の形成に係る構成の設計を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は水晶振動子81の正面図であり、図2は水晶振動子81の背面図である。図1および図2の水晶振動子81は、後述の水晶振動子製造システム1(図3参照)における処理対象となるものである。
【0021】
水晶振動子81は、例えば、直径9ミリメートル(mm)の略円形の板状(円形以外であってもよい。)の水晶片82を有し、図1に示す水晶片82の一の主面821上には、例えば金(Au)にて形成される2つの矩形の電極831,841が形成される。これらの電極831,841は端部(図1中の下側の端部)にて同様の材料にて形成される矩形の補助部851を介して互いに電気的に接続される。図2に示す水晶片82の他の主面822上には、電極831,841にそれぞれ対向する位置に(すなわち、主面822に垂直な方向において重なる位置に)電極831,841と同形状の電極832,842が同様に金にて形成される。電極832,842は離間しており、各電極832,842の外側(水晶片82の外縁側)には、電極832,842と電気的に接続する矩形の補助部852,853が同様の材料にて形成される。
【0022】
水晶振動子81は、所定の金属にて形成される引出線である3本のリード871,872,873を有し、これらのリード871〜873は、図1および図2の横方向に並んだ状態で、絶縁性材料にて形成されるブロック状の部材86(リード871〜873から周囲に突出する部材と捉えることができるため、以下、「フランジ部86」という。)にて固定される。リード871〜873は、フランジ部86の水晶片82側の面861および当該面861とは反対側の面862の双方から突出しており、面862から突出する部位は互いに平行に直線状に伸びている。また、両端のリード872,873の面861から突出する部位は、互いに離れるようにして外側に湾曲し、さらにその先端側にて面861から離れるように面861の垂線におよそ沿う方向に湾曲している。リード871〜873の面861から突出する部位の端部(以下、「サポータ」という。)8711,8721,8731は、水晶振動子81の側面から見て二股に分かれており、水晶片82は各サポータ8711,8721,8731にて挟持され、リード871〜873およびフランジ部86(「ベース」と総称される。)に対して固定される。
【0023】
中央のリード871のサポータ8711は、図1に示す水晶片82の主面821上にて補助部851に導電性接着剤にて接着され、両端のリード872,873のサポータ8721,8731は、図2に示す水晶片82の主面822上にて補助部852,853に導電性接着剤にてそれぞれ接着される。
【0024】
水晶振動子81において、両主面821,822にそれぞれ形成された1対の電極841,842、および、水晶片82の電極841,842が形成された部位は1つの振動子(以下、「第1振動子」と呼ぶ。)881となっており、両主面821,822にそれぞれ形成された他の1対の電極831,832、および、水晶片82の電極831,832が形成された部位も、第1振動子と独立して振動する1つの振動子(以下、「第2振動子」と呼ぶ。)882となっている。
【0025】
図3は、本発明の一の実施の形態に係る水晶振動子製造システム1の構成を示す図である。図3の水晶振動子製造システム1は、水晶振動子81の電極841(図1参照)に所定の薄膜を多層に形成することにより、アルコール検出用の水晶振動子(エチルアルコールを検出する装置(いわゆる、匂いセンサ)における検出部となる水晶振動子)を製造するものである。水晶振動子製造システム1では、後述するように複数の水晶振動子81がキャリア9にて保持され、キャリア9内の全ての水晶振動子81に対して同様の処理が行われる(すなわち、バッチ式の処理が行われる。)。
【0026】
図3の水晶振動子製造システム1は、硫酸(HSO)および過酸化水素(H)を含む洗浄液を用いて電極831,832,841,842の表面のコンタミネーションや有機物等の不要物を除去する前洗浄部31、電極831,832,841,842に対してチオール処理等の前処理を施す前処理部32、水晶片82の主面821上の1つの電極841上にエチルアルコールを検出するための多層膜を形成することにより電極841,842にて構成される主感応電極対を形成する主感応電極形成部4、キャリア9を前洗浄部31、前処理部32および主感応電極形成部4に搬送する搬送部2、並びに、水晶振動子製造システム1の各構成要素を制御する制御部5を備える。
【0027】
主感応電極形成部4は、電極841上に中間膜を形成する中間膜形成部41、中間膜が形成された直後の水晶片82を純水(純水の蒸気であってもよい。後述の洗浄部44において同様。)にて洗浄するとともに乾燥する洗浄部42、中間膜上にアルコール検出用の膜(すなわち、エチルアルコールを吸着させるための膜であり、以下、「主感応膜」という。)を形成する主感応膜形成部43、並びに、主感応膜が形成された直後の水晶片82を純水にて洗浄するとともに乾燥する洗浄部44を備える。水晶振動子製造システム1では、処理前のキャリア9が載置される投入部61(ローダ)から、全体処理後のキャリア9が載置される払出部62(アンローダ)に向かって前洗浄部31、前処理部32、並びに、主感応電極形成部4の中間膜形成部41、洗浄部42、主感応膜形成部43および洗浄部44が順に一列に配列される。
【0028】
図4は主感応膜形成部43の正面図であり、図5は主感応膜形成部43の右側面図である。主感応膜形成部43は、シクロデキストリンを含む処理液を貯溜する処理槽431、および、キャリア9をアーム433にて支持しつつ処理槽431内に搬入する昇降機構432を備え、主感応膜形成部43では、処理槽431が内部にて膜の形成が行われる処理部となっている。既述のように、本実施の形態では、水晶振動子81の電極841が主感応膜形成部43における主感応膜の形成対象(すなわち、成膜対象)とされており、他の電極831,832,842、および、補助部851〜853は予めマスクにより覆われている。
【0029】
ここで、キャリア9の詳細な構造について説明する。図4および図5に示すように、キャリア9は直方体の複数の辺に対応するフレーム(ただし、後述のホルダ92の長手方向に沿う下側の2つの辺に対応する部位(梁)は存在しない。)により形成されるキャリア本体91、および、それぞれが長いブロック状の複数のホルダ92を有する。
【0030】
図5に示すように、複数の水晶振動子81は、フランジ部86(図1および図2参照)を挟持する専用のホルダ92により水晶片82を下方に向けた状態で、ホルダ92の長手方向に配列して保持され、水晶片82およびリード871〜873の先端(水晶片82とは反対側の先端)はホルダ92から突出している。複数のホルダ92の両端部は、図4および図5に示すキャリア本体91の下側の2つの梁911上に載置され、複数のホルダ92は梁911が伸びる方向に配列される。各ホルダ92と、当該ホルダ92と当接する各梁911の部分とには互いに嵌合する部位が形成されており、複数のホルダ92はキャリア本体91に対して強固に、かつ、一定の位置に保持される。図4および図5ではキャリア9を簡略化して図示しており、実際には、キャリア9にて20個のホルダ92が保持され、各ホルダ92には10個の水晶振動子81が取り付けられることにより、キャリア9にて200個の水晶振動子81が水平面上の直交する2方向に配列して保持されている。
【0031】
また、キャリア本体91の上部には図4の横方向の両外側にそれぞれ突出するとともに、ホルダ92の長手方向に長くされる2つの上側鍔部912が形成される。また、上側鍔部912の下方(図4の上下方向におけるキャリア本体91の中央近傍)にも、上側鍔部912と同様の形状の下側鍔部914が形成される。
【0032】
主感応膜形成部43においてキャリア9を処理槽431内に搬入する際には、搬送部2の横行機構23が支持部21を水平方向に移動することによりキャリア9が処理槽431の上方に配置される。このとき、支持部21が有する2つの支持アーム211が2つの上側鍔部912にそれぞれ係合することにより、キャリア9が支持部21により支持される。また、昇降機構432のアーム433はキャリア9に干渉しない位置まで下降している。続いて、アーム433が上昇して下側鍔部914と当接することにより、キャリア9がアーム433にて受け取られ、キャリア9は図4中に二点鎖線にて示す位置までさらに上昇する。そして、図4中に二点鎖線にて示すように、支持アーム211の先端が図4中の横方向に関して上側鍔部912よりも外側まで開いた後、アーム433が下降してキャリア9の複数の水晶振動子81の水晶片82の全体が処理液中に浸漬される。
【0033】
図4に示すように、アーム433(正確には、アーム433において下側鍔部914に沿って伸びる2つの棒状の部位の一方の下側)には測定ユニット434が取り付けられており、測定ユニット434には、複数の水晶振動子81のうちの一の水晶振動子81(以下、「特定水晶振動子81」という。)の発振周波数を取得する測定部(QCM(Quarts Crystal Microbalance)測定器とも呼ばれる。)435、および、キャリア9がアーム433により支持された状態で、測定部435の3つの端子4351(図4では、1つの端子にのみ符号4351を付している。)を特定水晶振動子81の端子であるリード871〜873の先端(水晶片82とは反対側の先端)に対して進退させる進退機構436が設けられる。
【0034】
主感応膜形成部43では、キャリア9を支持するアーム433に対して相対的に固定される進退機構436が3つの端子4351(実際には、チャック機構となっている。)をリード871〜873の先端にそれぞれ当接させることにより、測定部435にて特定水晶振動子81の発振周波数(正確には、2対の電極のそれぞれにおける発振周波数)が取得可能とされる。特定水晶振動子81は、水平面上の2方向に配列される複数の水晶振動子81のうち、後述の処理にて不良品となりやすい端の水晶振動子81とされ、より好ましくは、キャリア本体91の下部において底面に相当する矩形の4角のいずれかに近接するものとされる。
【0035】
主感応膜形成部43においてキャリア9を処理槽431から搬出する際には、支持部21の2つの支持アーム211が開いた状態で、キャリア9が昇降機構432により図4中にて二点鎖線にて示す位置まで上昇し、2つの支持アーム211が上側鍔部912に係合可能な位置まで閉じた後、アーム433が下降する。これにより、キャリア9がアーム433から支持アーム211に受け渡され、支持部21はキャリア9に対する次の処理が行われる構成(例えば、後述の洗浄部44)の上方まで移動する。
【0036】
図3の中間膜形成部41は、処理槽にて貯溜される処理液の種類が異なる点を除き、図4および図5の主感応膜形成部43と同様の構成とされ、中間膜形成部41では電極841上に所定の無機化合物の薄膜(例えば、酸化膜)が中間膜として形成される。このように、図3の水晶振動子製造システム1では、主感応電極形成部4の中間膜形成部41および主感応膜形成部43のそれぞれが、所定の薄膜を成膜対象の電極上に形成する成膜装置となっている。
【0037】
図6.Aおよび図6.Bは、水晶振動子製造システム1がアルコール検出用の水晶振動子を製造する処理の流れを示す図である。図3の水晶振動子製造システム1では、複数の水晶振動子81を保持するキャリア9が投入部61に載置されると、搬送部2によりキャリア9が前洗浄部31内に搬入され、洗浄液を用いて水晶片82が洗浄される(ステップS11)。既述のように、電極831,832,842、および、補助部851〜853は予めマスクにより覆われているため、実際には、水晶片82の他の部位(主として電極841の表面)が洗浄されることとなる(後述の処理において同様)。前洗浄部31では、洗浄液による洗浄後、純水による洗浄および乾燥が行われる。続いて、キャリア9は前処理部32へと搬送され、水晶片82の電極841に対してチオール処理等の前処理が施され、電極841の表面に水酸基が導入される(ステップS12)。前処理部32においても、前処理の後、純水による洗浄および乾燥が行われる。
【0038】
前処理が完了すると、キャリア9が中間膜形成部41の処理槽の上方に配置され、続いて、昇降機構のアームに受け渡されるとともに、測定部の3つの端子が特定水晶振動子81のリード871〜873の先端にそれぞれ当接する。そして、アームが下降して、複数の水晶振動子81の水晶片82が処理槽内の処理液中に浸漬され、電極841上への中間膜の形成が開始される。また、中間膜形成部41の測定部では、中間膜の形成の開始時における特定水晶振動子81の第1振動子881(図1および図2参照)の発振周波数が1対の電極841,842を介して取得され、第2振動子882の発振周波数も他の1対の電極831,832を介して取得され、第1および第2振動子881,882の発振周波数は、制御部5に出力される(ステップS13)。実際には、第1および第2振動子881,882の発振周波数の測定は同時に行われる。なお、図6.Aの最初のステップS14の処理は省略される。
【0039】
水晶片82は予め定められた時間だけ処理液中にて保持され、終了時刻の直前には、測定部により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数(すなわち、中間膜の形成の終了時における発振周波数)が取得される。その後、アームが上昇してキャリア9が処理槽から取り出され、中間膜の形成が終了する(ステップS15)。これにより、電極841上に所定の厚さの中間膜が形成される。
【0040】
ここで、電極841に膜が形成されると、質量変化により第1振動子881における発振周波数がステップS13にて取得される成膜前の発振周波数から変化する。制御部5の検出部51では、電極841上に形成される膜の厚さと、発振周波数の変化量との関係が予め求められており、ステップS13,S15の処理にて中間膜の形成の開始時および終了時に取得される第1振動子881の発振周波数から電極841上の膜の厚さが求められる。そして、電極841上の膜の厚さが目標値を中央とする所定の範囲外となる場合には、中間膜の形成に異常が発生しているとされる。
【0041】
また、既述のように、電極841以外の電極831,832,842はマスクされているため、ステップS13,S15の処理にて中間膜の形成の開始時および終了時に取得される第2振動子882の発振周波数は、通常は同じ値となるが、検出部51では、これらの発振周波数に所定値以上の差が生じている場合には、マスクの損傷等の異常が発生しているものとされる。以上のようにして、検出部51では、中間膜の形成の開始時および終了時における特定水晶振動子81の発振周波数に基づいて、中間膜の形成における異常の有無が判定され、異常が発生している場合には(ステップS16)、キャリア9がアンロードされる(すなわち、キャリア9が払出部62に搬送される)とともに、制御部5の表示部にてその旨が表示されて操作者への異常の発生の報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止(終了)される(ステップS16a)。
【0042】
中間膜の形成にて異常が発生していない場合には(ステップS16)、キャリア9は洗浄部42に搬送されて、中間膜が形成された直後の水晶片82が純水にて洗浄され、その後、窒素ガスの噴射により乾燥される(ステップS17)。洗浄部42での処理が完了すると、キャリア9が図4の主感応膜形成部43の処理槽431の上方に配置され、続いて、昇降機構432のアーム433に受け渡されるとともに、測定部435の3つの端子4351が特定水晶振動子81のリード871〜873の先端にそれぞれ当接する。そして、アーム433が下降して、複数の水晶振動子81の水晶片82が処理槽431内の処理液中に浸漬され、電極841上への主感応膜の形成が開始される。また、測定部435により主感応膜の形成の開始時における特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数が取得され、制御部5に出力される(ステップS18)。
【0043】
検出部51では、ステップS15の処理にて中間膜の形成の終了時に取得された第1振動子881の発振周波数が記憶されており、当該発振周波数と主感応膜の形成の開始時に測定部435にて取得された発振周波数とが比較される。中間膜の形成の終了後、主感応膜の形成の開始までの間には電極841上には膜は形成されないため、これらの発振周波数は、通常は同じ値となるが、これらの発振周波数の間に所定値以上の差が生じている場合には、直前の洗浄部42における処理にて、中間膜に変化を生じさせる異常(例えば、中間膜の剥がれや、不要物の付着等)が発生しているとされ(ステップS19)、キャリア9が処理槽431から取り出されて払出部62に搬送されるとともに、操作者への異常の発生の報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止(終了)される(ステップS19a)。
【0044】
洗浄部42の洗浄にて異常が発生していない場合には(ステップS19)、水晶片82は予め定められた時間だけ処理液中に継続して保持される。そして、終了時刻の直前に測定部435により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数(すなわち、主感応膜の形成の終了時における発振周波数)が取得される。その後、アーム433が上昇して水晶片82が処理槽431から取り出され、主感応膜の形成が終了する(ステップS20)。これにより、エチルアルコールと包接錯体を形成するシクロデキストリンの薄膜が、主感応膜として所定の厚さにて電極841の中間膜上に形成される。
【0045】
検出部51では、ステップS18,S20の処理にて主感応膜の形成の開始時および終了時に取得された第1振動子881の発振周波数から主感応膜形成部43にて形成された電極841上の膜(主感応膜)の厚さが求められる。そして、当該膜の厚さが目標値を中央とする所定の範囲外となる場合には、主感応膜の形成が異常であるとされる。また、ステップS18,S20の処理にて主感応膜の形成の開始時および終了時に取得された第2振動子882の発振周波数に所定値以上の差が生じている場合にも、異常が発生しているものとされる。以上のように、検出部51では、主感応膜の形成の開始時および終了時における特定水晶振動子81の発振周波数に基づいて、主感応膜の形成における異常の有無が判定される。そして、異常が発生している場合には(ステップS21)、キャリア9がアンロードされるとともに、操作者への異常の発生の報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止される(ステップS21a)。
【0046】
主感応膜の形成にて異常が発生していない場合には(ステップS21)、キャリア9は洗浄部44に搬送されて、主感応膜が形成された直後の水晶片82が純水にて洗浄され、その後、窒素ガスの噴射により乾燥される(ステップS22)。
【0047】
水晶振動子製造システム1の制御部5では、キャリア9に対するステップS13〜S22の処理の回数がカウントされており、所定回数に到達していないことが確認されると(ステップS23)、キャリア9が中間膜形成部41へと搬入され、複数の水晶振動子81の水晶片82が処理槽内の処理液中に浸漬されて電極841の主感応膜上への中間膜の形成が開始されるとともに、測定部により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数が取得される(ステップS13)。
【0048】
検出部51では、直前のステップS20の処理にて主感応膜の形成の終了時に取得された第1振動子881の発振周波数が記憶されており、当該発振周波数と現在の中間膜の形成の開始時に取得された第1振動子881の発振周波数との間に所定値以上の差が生じている場合には、直前の洗浄部44における処理にて、主感応膜に変化を生じさせる異常(例えば、主感応膜の剥がれ等)が発生しているとされ(ステップS14)、キャリア9が処理槽から取り出されて払出部62に搬送されるとともに、操作者への異常の発生の報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止(終了)される(ステップS14a)。
【0049】
洗浄部44の洗浄にて異常が発生していない場合には(ステップS14)、水晶片82は予め定められた時間だけ処理液中に継続して保持される。そして、終了時刻の直前に測定部により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数が取得され、その後、アームが上昇して水晶片82が処理槽から取り出され、主感応膜上への中間膜の形成が終了する(ステップS15)。
【0050】
検出部51では、直前のステップS13,S15の処理にて取得された第1振動子881の発振周波数(すなわち、主感応膜上への中間膜の形成の開始時および終了時における発振周波数)から中間膜形成部41における(直前の)成膜処理にて形成された電極841上の膜の厚さが求められる。そして、当該膜の厚さが目標値を中央とする所定の範囲外となる場合、および、直前のステップS13,S15の処理にて取得された第2振動子882の発振周波数に所定値以上の差が生じている場合には、中間膜の形成処理に異常が発生しているとされ(ステップS16)、キャリア9のアンロードおよび操作者への報告が行われるとともに、水晶振動子製造システム1における処理が停止される(ステップS16a)。
【0051】
中間膜の形成にて異常が発生していない場合には(ステップS16)、上記と同様に、洗浄部42において中間膜が形成された直後の水晶片82が純水にて洗浄される(ステップS17)。その後、キャリア9が主感応膜形成部43へと搬入され、複数の水晶振動子81の水晶片82が処理槽431内の処理液中に浸漬されて電極841の中間膜上への主感応膜の形成が開始されるとともに、測定部435により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数が取得される(ステップS18)。
【0052】
検出部51では、直前のステップS15の処理にて中間膜の形成の終了時に取得された第1振動子881の発振周波数と、現在の主感応膜の形成の開始時に取得された第1振動子881の発振周波数との間に所定値以上の差が生じている場合には、直前の洗浄部42における処理にて異常が発生しているとされ(ステップS19)、キャリア9のアンロードおよび操作者への報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止される(ステップS19a)。
【0053】
また、洗浄部42の洗浄にて異常が発生していない場合には(ステップS19)、水晶片82は予め定められた時間だけ処理液中に継続して保持される。そして、終了時刻の直前に測定部435により特定水晶振動子81の第1および第2振動子881,882の発振周波数が取得され、その後、水晶片82が処理槽から取り出されて、電極841上への主感応膜の形成が終了する(ステップS20)。
【0054】
検出部51では、直前の主感応膜の形成の開始時および終了時における発振周波数に基づいて、主感応膜の形成における異常の有無が判定され、異常が発生している場合には(ステップS21)、キャリア9のアンロードおよび操作者への報告が行われ、水晶振動子製造システム1における処理が停止される(ステップS21a)。また、主感応膜の形成にて異常が発生していない場合には(ステップS21)、洗浄部44において主感応膜が形成された直後の水晶片82が純水にて洗浄される(ステップS22)。
【0055】
このようにして、搬送部2が複数の水晶振動子81を中間膜形成部41、洗浄部42、主感応膜形成部43および洗浄部44に順に搬送して、各水晶振動子81の電極841上に中間膜と主感応膜とを積層する上記ステップS13〜S22の処理が所定回数(例えば、2回以上10回以下)だけ繰り返されることにより(ステップS23)、電極841上に中間膜および主感応膜が多層に交互積層され、これらの膜を有する電極841と、電極841に対向する電極842との集合である主感応電極対が完成する。
【0056】
実際には、複数のキャリア9に対して前洗浄部31、前処理部32、並びに、主感応電極形成部4の中間膜形成部41、洗浄部42、主感応膜形成部43および洗浄部44における処理が並行して行われ、水晶振動子製造システム1では、アルコール検出用の水晶振動子を効率よく製造することが可能となっている。この場合に、中間膜の形成処理、主感応膜の形成処理および洗浄処理のいずれかに異常が発生したときには、全てのキャリア9に対する処理が一時的に中断され、異常の発生原因が解消された後に、処理が再開される。
【0057】
また、本実施の形態における水晶振動子81では、電極831上に、空気中の水分もしくは主感応膜に吸着されるエチルアルコール以外の物質のうち少なくとも一方を吸着させるための有機化合物を含む膜(実際には、エチルアルコールと包接錯体を形成しない膜であり、以下、「副感応膜」という。)が予め形成されている。具体的には、電極831上に無機化合物の中間膜、および、副感応膜が多層に(1層ずつであってもよい。)交互積層されており、これらの膜を有する電極831と、電極831に対向する電極832との集合が、後述するように、主感応電極対からの出力の補正に用いられる副感応電極対となっている。
【0058】
もちろん、主感応電極対が形成された後に、副感応電極対が形成されてもよく、副感応電極対の形成では、処理液の種類が主感応電極形成部4の中間膜形成部41および主感応膜形成部43の処理液と相違する点を除き、上記水晶振動子製造システム1と同様の構成とされるもの(すなわち、中間膜形成部、副感応膜形成部、および、2つの洗浄部を有する水晶振動子製造システム)が用いられてもよい。このような水晶振動子製造システムでは、水晶振動子81の電極831が成膜対象とされ、他の電極832,841,842、および、補助部851〜853は予めマスクにより覆われる。
【0059】
ここで、主感応電極対および副感応電極対を有する水晶振動子(専用の発振回路と合わせて、ツインセンサとも呼ばれる。)について説明する。既述のように、水晶振動子では、1対の電極841,842(すなわち、主感応電極対)を有する第1振動子881、および、他の1対の電極831,832(すなわち、副感応電極対)を有する第2振動子882が形成されており、第1および第2振動子881,882のそれぞれは、所定の基準環境下(常温および常湿、かつ、エチルアルコールの濃度がほぼ0%)において一定の発振周波数(以下、「基準周波数」という。)を示すものとなっている。
【0060】
また、主感応電極対における主感応膜はエチルアルコールを吸着するものとされ、水晶振動子がエチルアルコールを含む雰囲気中に置かれると、エチルアルコールの吸着により主感応膜の質量が増大する。したがって、当該雰囲気中では第1振動子881における発振周波数が基準周波数から変化する。このとき、第1振動子881における発振周波数の変化は、正確には、エチルアルコールの吸着の影響以外に、基準環境からの温度および湿度の変化、並びに、主感応膜に吸着されるエチルアルコール以外の物質の影響も含んでいる。副感応電極対における副感応膜は水分または主感応膜に吸着されるエチルアルコール以外の物質のうち少なくとも一方を吸着するものとされ、当該雰囲気中では、基準環境からの温度および湿度の変化の影響により第2振動子882における発振周波数が基準周波数から変化する。よって、第1振動子881における発振周波数の変化量から第2振動子882における発振周波数の変化量を引く(または、これらの変化量を用いた所定の演算を行う)ことにより、第1振動子881におけるエチルアルコール以外の要因による周波数変化をキャンセルして、エチルアルコールの濃度を精度よく検出することが可能となる。以上のように、水晶振動子では、第1振動子881がアルコール検出用の振動子となり、第2振動子882が、第1振動子881からの出力補正用の振動子となっている。
【0061】
なお、副感応電極対が副感応膜を有していないアルコール検出用の水晶振動子が製造されてもよく、この場合であっても、副感応電極対を有する第2振動子882では、基準環境からの温度の変化の影響による周波数変化が発生するため、第1振動子881における周波数変化に対する温度補償が可能となる。
【0062】
ところで、高精度な水晶振動子(アルコール検出用の水晶振動子)を製造するには、電極上に中間膜および主感応膜(副感応膜において同様)を精度よく形成する必要があるが、中間膜の形成、水晶片の洗浄、主感応膜の形成、水晶片の洗浄を順に繰り返して中間膜と主感応膜とを交互に積層する場合に、成膜処理や洗浄処理にて異常が発生したときには、電極上に膜が適切に形成されない、あるいは、電極上の膜が剥がれることがあり、このような水晶振動子は不良品となってしまう。この場合に、仮に全ての処理が終了した後に、水晶振動子の発振周波数を測定し、処理前(全ての処理の前)の発振周波数との差に基づいて良品および不良品の判別を行うときには、上記異常が生じているにもかかわらず、中間膜および主感応膜を形成する処理が繰り返されてしまい、水晶振動子を製造する処理の生産性が大きく低下する。
【0063】
これに対し、図3の水晶振動子製造システム1では、中間膜形成部41および主感応膜形成部43のそれぞれに、特定水晶振動子81の発振周波数を取得する測定部が設けられ、薄膜(中間膜および主感応膜)の形成の開始時および終了時に、特定水晶振動子81の発振周波数が取得される。これにより、中間膜および主感応膜の形成処理での異常の有無を確実に検出することができる。また、中間膜の形成、水晶片の洗浄、主感応膜の形成、水晶片の洗浄を繰り返して水晶振動子を製造する際に、中間膜形成部41および主感応膜形成部43のうちの一方の形成部における膜の形成の終了時に測定部にて取得される発振周波数と、他方の形成部における当該膜に積層される他の膜の形成の開始時に測定部にて取得される発振周波数とを比較することにより、当該膜の形成後、当該他の膜の形成前の洗浄部での処理における膜の変化が検出される。これにより、洗浄処理での異常の有無も容易に検出することができ、その結果、異常が発生したロット(すなわち、キャリア9内の複数の水晶振動子81)に対する処理を、異常の発生時から直ぐに停止して、水晶振動子製造システム1において生産性が低下することを防止することができる。
【0064】
本実施例では、複数の水晶片のうち、1つの周波数を測定しているが、1次元的な配列の場合における両端の水晶片または2次元的な配列の場合における四隅の水晶片のうち1つ以上の水晶片を測定してもよい。両端または四隅に位置するこれらの水晶片は、水晶片の間隔、拡散距離、流動状態等、他の水晶片とは異なる条件で処理が行われるため、水晶片全体の中で、最も不良が発生しやすいからである。
【0065】
また、水晶振動子製造システム1では、中間膜形成部41の測定部および主感応膜形成部43の測定部435が、成膜対象の電極841を含む第1振動子881の発振周波数以外に、第2振動子882の発振周波数も取得することにより、成膜対象外の1対の電極831,832に中間膜および主感応膜が成膜されていないことを確認することができる。さらに、特定水晶振動子81が、キャリア9にて保持される複数の水晶振動子81において特に異常が生じやすい端に位置するものとされることにより、中間膜および主感応膜の形成における異常を容易に検出することができる。
【0066】
図7および図8は主感応膜形成部の他の例を示す図である。図7は主感応膜形成部43a内の水晶片82を主面822側から見た図であり、図8は水晶片82を主面821側から見た図である。図7および図8では、主感応膜形成部43a内を抽象的に示しており、実際には多数の水晶片82が処理液中に浸漬されている。主感応膜形成部43aを有する水晶振動子製造システム1では、図1および図2の水晶振動子81のベース(すなわち、リード871〜873およびフランジ部86)を省略したものが処理対象となっている。
【0067】
主感応膜形成部43aでは、水晶片82は電極832,842が図7の縦方向(液面に垂直な方向)に並ぶ状態にて、水晶片支持部71により支持されている。水晶片支持部71は導電性を有する3個の支持要素711,712,713(ただし、耐薬品性を有する絶縁性材料にて被覆されている。)を有し、各支持要素711〜713の先端には水晶片82を挟持するクランプ部721が形成される。
【0068】
既述のように、図8の水晶片82において、1対の電極841,842の電極841と、他の1対の電極831,832の電極841と同じ主面821に形成される電極831とは、補助部851を介して互いに電気的に接続しており、支持要素711のクランプ部721はこの補助部851に接続される。また、図7に示すように、支持要素712のクランプ部721は電極832に連続する補助部852に接続され、支持要素713のクランプ部721は電極842に連続する補助部853に接続される。支持要素711〜713は測定部435(図4参照)に接続され、第1および第2振動子881,882(図7参照)のそれぞれの発振周波数が取得可能とされる。主感応膜形成部43aを有する水晶振動子製造システム1では、中間膜形成部も同様の構成とされる。
【0069】
主感応膜形成部43aおよび中間膜形成部では、互いに対向する電極841,842の双方が成膜対象とされており、成膜対象の1対の電極841,842が処理槽431内の処理液中に浸漬され、成膜対象外の他の1対の電極831,832が処理液外に配置されるように、水晶片82が支持されて成膜が行われる。これにより、成膜対象の電極841,842のみに薄膜を形成するとともに、薄膜を形成する物質が成膜対象外の残りの電極831,832に付着することを(マスクを形成することなく)確実に防止することができる。
【0070】
また、主感応膜形成部43aおよび中間膜形成部では、薄膜の形成の開始時および終了時に第1および第2振動子881,882のそれぞれの発振周波数が取得されることにより、中間膜および主感応膜の形成処理での異常の有無を確実に検出することができ、中間膜の形成および主感応膜の形成を繰り返して水晶振動子を製造する際には、洗浄部の処理での異常の有無も容易に検出することができる。主感応電極対(および副感応電極対)が形成された水晶振動子(ただし、ベースは形成されていない。)は、例えば、専用の電気的回路が形成されたプリント基板に組み込まれ、アルコールの濃度を検出する装置が完成する。
【0071】
なお、副感応電極対も図7および図8の主感応膜形成部43aと同様の中間膜形成部および副感応膜形成部を有する水晶振動子製造システムにて形成されてもよく、この場合、電極831,832が処理槽内の処理液中に位置し、電極841,842が処理液外に位置するように、水晶片82を図7および図8に示す姿勢から外周に沿って180度だけ回転させた姿勢にて、水晶片82が水晶片支持部により支持される。
【0072】
また、図7および図8の主感応膜形成部43aにて処理液中に浸漬される1対の電極841,842の一方の電極にマスクが形成され、他方の電極のみが成膜対象とされてもよい。さらに、図4および図5の主感応膜形成部43にて、電極841,842の双方が成膜対象とされ、電極831,832(および、補助部851〜853)のみにマスクが形成されてもよい。以上のように、水晶振動子製造システム1では、1対の電極841,842の少なくとも1つの電極が成膜対象とされ、他の1対の電極831,832を含むとともに当該少なくとも1つの電極を除く残りの電極が成膜対象外とされる(副感応電極対の形成に係る水晶振動子製造システムにおいて同様)。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0074】
図4および図7に示す主感応膜形成部43,43aでは、処理液の回収や補充等が電極に対する成膜時以外に行われ、成膜時には処理槽431に対する処理液の供給および排出が行われないが(いわゆる、ディップ方式にて成膜が行われる。)、イオン結合や静電気的結合により電極上に形成される薄膜の剥がれが生じにくい場合には、例えば、図9に示す主感応膜形成部43bのように、成膜時に供給ノズル437から処理液の緩やかな供給(および排出)が行われてもよい。図9では、供給ノズル437を始点とする矢印(図9中にて符号A1を付す。)にて処理液の流れを示している。実際には、図9の主感応膜形成部43bでは、処理槽431内の処理液を排水する排出口も設けられる。
【0075】
また、主感応膜形成部および中間膜形成部では、気相蒸着等により薄膜が形成されてもよく、この場合に、図10に示す主感応膜形成部43cでは、主感応膜の形成が行われる処理部である処理チャンバ431a内に処理液の蒸気が供給されるとともに、成膜対象外の電極831,832が当該蒸気に晒されるのを防止する密閉カバー438が設けられる。実際には、図10の主感応膜形成部43cでは、処理チャンバ431a内に処理液の蒸気を供給する供給ノズル、および、処理チャンバ431a内を排気する排気口が設けられる。
【0076】
図11に示すように水晶片82の主面821上の電極831,841が分離した水晶振動子81aが、水晶振動子製造システム1における処理対象とされてもよい。ただし、図1に示す水晶片82では、電極831,841が接続していることにより、図11に示す水晶片82のように電極831,841が分離している場合に比べて、電極831,841の表面をより平滑化する(粗さを低くする)ことができ、電極841上により好ましい(欠陥が少ない)薄膜を形成することが容易に可能となる。また、水晶振動子81においてベースを設ける場合には、電極831,841を接続させることにより、部品点数(リードの個数)を少なくすることができ、水晶振動子81の製造に係るコストを削減することができる。
【0077】
また、図12および図13に示すように、水晶片82の両主面821,822に1対の電極831a,832aのみが形成された水晶振動子81bが、水晶振動子製造システム1における処理対象とされてもよく、この場合、当該1対の電極831a,832aの少なくとも一方の電極に薄膜が形成される。
【0078】
水晶振動子製造システム1における中間膜形成部および主感応膜形成部のそれぞれでは、薄膜の形成の開始時および終了時に特定水晶振動子(の第1および第2振動子881,882)の発振周波数が取得されるのであるならば、薄膜の形成途上においても特定水晶振動子の発振周波数が測定されてもよい。水晶振動子製造システム1では、中間膜形成部および主感応膜形成部のそれぞれにおいて、少なくとも薄膜の形成の開始時および終了時に特定水晶振動子の発振周波数を取得することにより、当該薄膜の形成処理での異常の有無を確実に検出することができ、中間膜の形成および感応膜の形成を繰り返して水晶振動子を製造する際には、洗浄処理での異常の有無も容易に検出することが可能となる。
【0079】
図6.Aおよび図6.Bのアルコール検出用の水晶振動子の製造処理では、洗浄部42,44での全ての洗浄処理における異常の有無が検出されるが、測定部が設けられない洗浄部42,44における洗浄処理の異常の有無を検出する上記手法は、一部の洗浄処理のみにて採用することも可能である。すなわち、ステップS13〜S22の処理の繰り返しにおいて、少なくともいずれかのステップS15の処理またはステップS20の処理にて膜の形成の終了時に取得される発振周波数と、当該膜に積層される他の膜の形成の開始時に取得される発振周波数とを比較することにより、当該膜の形成後、当該他の膜の形成前に水晶片82を洗浄するステップS17,S22の処理での異常の有無を検出することが可能となる。水晶振動子の製造処理の生産性が低下することを確実に防止するには、全ての洗浄処理における異常の有無が検出されることが好ましい。
【0080】
また、図6.Aおよび図6.Bの水晶振動子の製造処理では、ステップS13,S15にて中間膜の形成を行う成膜処理と、成膜処理の開始時および終了時に特定水晶振動子の発振周波数を取得する処理とが部分的に重複して行われ、ステップS18,S20にて主感応膜の形成を行う成膜処理と、成膜処理の開始時および終了時に特定水晶振動子の発振周波数を取得する処理とが部分的に重複して行われるが、成膜処理の開始直前、および、終了直後に特定水晶振動子の発振周波数を取得して、成膜処理と成膜処理の開始時および終了時における特定水晶振動子の発振周波数を取得する処理とが明確に区別されてもよい。
【0081】
中間膜形成部および主感応膜形成部のそれぞれにおいて、測定部における端子を水晶振動子の端子に対して進退させる進退機構は昇降機構のアームから分離した状態で設けられてもよい。ただし、中間膜および感応膜の形成に係る構成である各形成部の設計を容易に行うには、進退機構がアームに対して相対的に固定され、アームの位置に関係なく、測定部における端子がアームにて保持されるキャリア9内の水晶振動子の端子に対してアクセス可能とされることが好ましい。
【0082】
また、図4に示すキャリア9において1つのホルダ92のみが支持されてもよく、少なくとも1つのホルダ92がキャリア本体91に支持され、複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリア9にて保持されることにより、水晶振動子製造システム1では、省スペースにて効率よく処理を行うことが可能となる。また、1つのキャリア9内にて測定対象となる2以上の特定水晶振動子が設けられてもよく、この場合に、各ホルダ92の一方または両方の端に位置する全ての水晶振動子が特定水晶振動子とされてもよい。
【0083】
図3の水晶振動子製造システム1では、中間膜の形成直後の水晶片82を洗浄する洗浄部42、および、主感応膜の形成直後の水晶片82を洗浄する洗浄部44が設けられるが、水晶振動子製造システム1において1つの洗浄部のみが設けられ、中間膜の形成直後の水晶片82、および、主感応膜の形成直後の水晶片82が同じ洗浄部にて洗浄されてもよい。
【0084】
水晶振動子製造システム1では、主感応膜形成処理、中間膜形成処理、洗浄および乾燥処理はそれぞれ別の槽で行われるが、測定部を有する成膜装置では、これらのうち、洗浄および乾燥処理が、主感応膜形成処理または中間膜形成処理と同一の槽にて行われてもよい。
【0085】
アルコール検出用の水晶振動子の製造において、主感応膜形成部にて形成される主感応膜は、シクロデキストリン以外のエチルアルコールと包接錯体を形成する有機化合物を含むものであってもよい。また、水晶振動子製造システム1では、エチルアルコール以外の特定物質(例えば、毒性ガス、可燃性ガス、煙(火災時の煙等)、特定の危険物、環境ホルモン、特定の汚染物質(土壌汚染物質等)、エチルアルコールまたは薬物の摂取による代謝物、疾病による代謝物等)の検出用の水晶振動子が製造されてもよく、水晶振動子の用途に応じて、水晶振動子製造システム1の各成膜装置(中間膜形成部および主感応膜形成部)にて用いられる処理液は適宜変更される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】水晶振動子の正面図である。
【図2】水晶振動子の背面図である。
【図3】水晶振動子製造システムの構成を示す図である。
【図4】主感応膜形成部の正面図である。
【図5】主感応膜形成部の右側面図である。
【図6.A】アルコール検出用の水晶振動子を製造する処理の流れを示す図である。
【図6.B】アルコール検出用の水晶振動子を製造する処理の流れを示す図である。
【図7】主感応膜形成部の他の例を示す図である。
【図8】主感応膜形成部の他の例を示す図である。
【図9】主感応膜形成部のさらに他の例を示す図である。
【図10】主感応膜形成部のさらに他の例を示す図である。
【図11】水晶振動子の他の例を示す図である。
【図12】水晶振動子のさらに他の例を示す図である。
【図13】水晶振動子のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 水晶振動子製造システム
2 搬送部
9 キャリア
21 支持部
41 中間膜形成部
42,44 洗浄部
43,43a〜43c 主感応膜形成部
51 検出部
81,81a,81b 水晶振動子
82 水晶片
431 処理槽
431a 処理チャンバ
432 昇降機構
433 アーム
435 測定部
4351 端子
436 進退機構
821,822 主面
831,831a,832,832a,841,842 電極
871〜873 リード
881 第1振動子
882 第2振動子
S13,S15,S17,S18,S20,S22,S23 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定物質の検出用の水晶振動子を製造する水晶振動子製造システムであって、
板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極上に中間膜を形成するとともに、少なくとも前記中間膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する第1測定部を有する中間膜形成部と、
前記中間膜上に前記特定物質を吸着する感応膜を形成するとともに、少なくとも前記感応膜の形成の開始時および終了時に、前記水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する第2測定部を有する感応膜形成部と、
前記水晶片を洗浄する洗浄部と、
前記複数の水晶振動子を前記中間膜形成部、前記洗浄部、前記感応膜形成部、前記洗浄部に順に搬送して前記少なくとも1つの電極上に前記中間膜と前記感応膜とを積層する処理を繰り返す搬送部と、
前記中間膜形成部および前記感応膜形成部のうちの一方の形成部における膜の形成の終了時に測定部にて取得される発振周波数と、他方の形成部における前記膜に積層される他の膜の形成の開始時に測定部にて取得される発振周波数とを比較することにより、前記膜の形成後、前記他の膜の形成前の前記洗浄部での処理における膜の変化を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする水晶振動子製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶振動子製造システムであって、
前記複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極および前記水晶片の前記1対の電極が形成された部位が第1振動子とされ、前記両主面にさらに形成された他の1対の電極および前記水晶片の前記他の1対の電極が形成された部位が第2振動子とされ、
前記中間膜形成部および前記感応膜形成部において、前記他の1対の電極を含むとともに前記少なくとも1つの電極を除く残りの電極が成膜対象外とされ、
前記中間膜形成部の前記第1測定部、および、前記感応膜形成部の前記第2測定部が、前記第1振動子および前記第2振動子のそれぞれの発振周波数を取得することを特徴とする水晶振動子製造システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水晶振動子製造システムであって、
前記第1振動子がアルコール検出用の振動子であり、
前記第2振動子が、前記第1振動子からの出力補正用の振動子であることを特徴とする水晶振動子製造システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の水晶振動子製造システムであって、
前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが前記搬送部により搬送され、
前記水晶振動子が、前記キャリアにて保持される前記複数の水晶振動子において端に位置するものであることを特徴とする水晶振動子製造システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の水晶振動子製造システムであって、
前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが前記搬送部により搬送され、
前記中間膜形成部および前記感応膜形成部の各形成部が、
膜の形成が行われる処理部と、
前記搬送部の支持部により前記処理部の上方に配置される前記キャリアをアームにて受け取るとともに、前記アームの下降により前記キャリアを前記処理部内に搬入する昇降機構と、
前記アームに対して相対的に固定されるとともに、前記各形成部の測定部における端子を前記水晶振動子の端子に対して進退させる進退機構と、
をさらに有することを特徴とする水晶振動子製造システム。
【請求項6】
板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極に薄膜を形成する成膜装置であって、
薄膜の形成が行われる処理部と、
少なくとも前記薄膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する測定部と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
特定物質の検出用の水晶振動子を製造する水晶振動子製造方法であって、
a)板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極上に中間膜を形成するとともに、少なくとも前記中間膜の形成の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程と、
b)前記水晶片を洗浄する工程と、
c)前記中間膜上に前記特定物質を吸着する感応膜を形成するとともに、少なくとも前記感応膜の形成の開始時および終了時に、前記水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程と、
d)前記水晶片を洗浄する工程と、
e)前記a)ないしd)工程を繰り返す工程と、
を備え、
少なくともいずれかの前記a)工程または前記c)工程における膜の形成の終了時に取得される発振周波数と、前記膜に積層される他の膜の形成の開始時に取得される発振周波数とを比較することにより、前記膜の形成後、前記他の膜の形成前の前記b)工程または前記d)工程での処理における膜の変化が検出されることを特徴とする水晶振動子製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の水晶振動子製造方法であって、
前記複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極および前記水晶片の前記1対の電極が形成された部位が第1振動子とされ、前記両主面にさらに形成された他の1対の電極および前記水晶片の前記他の1対の電極が形成された部位が第2振動子とされ、
前記a)工程および前記c)工程において、前記他の1対の電極を含むとともに前記少なくとも1つの電極を除く残りの電極が成膜対象外とされ、前記第1振動子および前記第2振動子のそれぞれの発振周波数が取得されることを特徴とする水晶振動子製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の水晶振動子製造方法であって、
前記第1振動子がアルコール検出用の振動子であり、
前記第2振動子が、前記第1振動子からの出力補正用の振動子であることを特徴とする水晶振動子製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の水晶振動子製造方法であって、
前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、
前記水晶振動子が、前記キャリアにて保持される前記複数の水晶振動子において端に位置するものであることを特徴とする水晶振動子製造方法。
【請求項11】
請求項7ないし9のいずれかに記載の水晶振動子製造方法であって、
前記複数の水晶振動子が、水平方向に少なくとも1列に配列された状態でキャリアにて保持され、前記キャリアが搬送部により搬送され、
前記キャリアが、膜の形成が行われる処理部の上方に前記搬送部の支持部により配置され、続いて、昇降機構のアームにて受け取られるとともに、前記アームの下降により前記処理部内に搬入され、
前記a)工程および前記c)工程のそれぞれにおいて、前記アームに対して相対的に固定される進退機構により、前記水晶振動子の発振周波数を取得する測定部における端子が前記水晶振動子の端子に対して進退することを特徴とする水晶振動子製造方法。
【請求項12】
板状の水晶片の両主面に1対の電極が形成された複数の水晶振動子のそれぞれにおいて、前記1対の電極の少なくとも1つの電極に薄膜を形成する成膜方法であって、
薄膜の形成を行う成膜工程と、
少なくとも前記成膜工程の開始時および終了時に、前記複数の水晶振動子のうちの一の水晶振動子の発振周波数を前記1対の電極を介して取得する工程と、
を備えることを特徴とする成膜方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6.A】
image rotate

【図6.B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−101852(P2010−101852A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275927(P2008−275927)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(501048930)株式会社シームス (34)
【Fターム(参考)】