説明

水晶発振器の梱包容器

【課題】高安定水晶発振器を搭載した製品の検査時間を短縮し、精度の良い検査を可能とし、製品の品質ばらつきを低減することが可能な水晶発振器の梱包容器を提供する。
【解決手段】水晶発振器の梱包容器10は、少なくとも1つの水晶発振器12が収納可能な収納部11Aと、個々の水晶発振器12に電源電圧を供給することが可能な少なくとも1つの電源電圧供給部13A、13Bと、個々の水晶発振器12に対応してそれぞれ設けられ、水晶発振器12からの出力信号を外部出力することが可能な少なくとも1つの出力端子17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶発振器の梱包容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、無線基地局装置は、伝送路を介して接続された無線基地局制御装置からの抽出クロック信号に同期して動作している。無線基地局制御装置には周波数安定度の非常に高い水晶発振器(以降、「高安定水晶発振器」と言う。)が搭載されている。無線基地局装置を無線基地局制御装置から送られてくる抽出クロック信号に同期させるように動作させれば、無線基地局装置に搭載される水晶発振器も出力周波数の安定度を高く保ち続けることが可能である。したがって、このような場合、無線基地局装置に搭載される水晶発振器は、無線基地局制御装置ほどの周波数安定度はなくても問題にはならない。
【0003】
しかしながら、無線基地局装置と無線基地局制御装置との伝送路にIP(Internet Protocol)伝送路を使用する場合がある。この場合、無線基地局装置は伝送路からの抽出クロック信号に同期するように動作させることができないため、無線基地局装置に搭載された水晶発振器は無線基地局制御装置の高安定水晶発振器とは独立して動作することになる。このようなネットワーク環境下では、無線基地局装置に搭載される水晶発振器にも無線基地局制御装置に搭載される水晶発振器と同等レベルの高安定水晶発振器を搭載する必要性がある。高安定水晶発振器としては、一般的に周波数安定度の非常に高い恒温槽付水晶発振器(OCXO)が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001-509928号公報
【特許文献2】特開2005-082194号公報
【特許文献3】特開2006-165167号公報
【特許文献4】実用新案登録第3099930号公報
【特許文献5】特開平08-336243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高安定水晶発振器は、電源をオン状態としてから出力周波数が安定するまでに相当の時間を要することから、一般的に部品供給メーカーの周波数経年変化規定は電源を投入してから数日〜数10日後(例えば10日後)の出力周波数を基準とすることになっている。
部品供給メーカーで基準周波数F0に調整され出荷された高安定水晶発振器は、無線基地局装置の製造工場で無線基地局装置に搭載され検査されるまでの間、通常は電源がオフ状態になっている。したがって、無線基地局装置が製造され検査を開始する時点になってようやく高安定水晶発振器の電源がオンとなるので、そこから出力周波数が安定するまで検査を待たなければならない。
【0006】
しかしながら、無線基地局装置の製造工場では、製品検査に当たり、高安定水晶発振器の出力周波数を安定させるためだけに何日間(例えば10日間)も費やすことは現実的には難しく、高安定水晶発振器の出力周波数の安定時間を含めた検査時間の短縮が大きな課題となっている。
【0007】
仮に、検査時間短縮のために高安定水晶発振器を搭載した製品の電源オンから検査開始までの時間を短くすると、高安定水晶発振器の出力周波数が安定していない状態である可能性が高い。そのため、このような方法で検査時間を短縮しようとすると、その時点での高安定水晶発振器の出力周波数が基準となり、本来は良品規格外のものが良品とされたり、本来は良品規格のものが不良品とされたり、品質にばらつきが生じる恐れがある。特に近年は、周波数経年変化の規格が厳しくなっており、周波数が安定しない期間に検査したためによる出荷時の出力周波数のばらつきは好ましくない。
【0008】
例えば、部品供給メーカーの周波数経年変化規定が電源投入10日後の出力周波数を基準とすることになっているとする。無線基地局装置の製造工場では、無線基地局装置搭載後の装置検査に当たり、高安定水晶発振器の出力周波数を安定させるだけで10日間も費やすことは現実的には難しいため、製品検査を電源投入3日後の出力周波数を基準に実施すると仮定する。
この場合、本来であれば電源投入10日後までに出力周波数F0近傍に安定していくのに対し、製品検査を電源投入3日後を基準に実施するため、電源投入3日後から10日後までの周波数変動量ΔFが検査後の周波数変動量となってしまう。このΔFは個々の高安定水晶発振器によって異なる不確定な周波数変動量であり、場合によってはこのΔF分により高安定水晶発振器の周波数経年変化の規格を満足できなくなる可能性がある。
【0009】
参考までに、特許文献1は、水晶発振器を顧客の仕様に合わせて周波数プログラミングするため戦略的に位置設定されたセンタを含む全世界的マーケティングロジスティクスネットワークに関するものであり、水晶発振器をコンテナから取り出して試験を実施した後再梱包することが記載されている(第22頁の下から第2行目〜第24頁第14行目)。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高安定水晶発振器を搭載した製品の検査時間を短縮し、精度の良い検査を可能とし、製品の品質ばらつきを低減することが可能な水晶発振器の梱包容器を提供することを目的とするものである。
なお、本発明の水晶発振器の梱包容器は、高安定水晶発振器用として好適なものであるが、任意の水晶発振器用として利用可能なものである。
本明細書において、「高安定水晶発振器」とは恒温槽付水晶発振器(OCXO)等の周波数安定度の高い水晶発振器を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水晶発振器の梱包容器は、
少なくとも1つの水晶発振器が収納可能な収納部と、
個々の前記水晶発振器に電源電圧を供給することが可能な少なくとも1つの電源電圧供給部と、
個々の前記水晶発振器に対応してそれぞれ設けられ、前記水晶発振器からの出力信号を外部出力することが可能な少なくとも1つの出力端子とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水晶発振器を搭載した製品の検査時間を短縮し、精度の良い検査を可能とし、製品の品質ばらつきを低減することが可能な水晶発振器の梱包容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態の水晶発振器の構成を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の水晶発振器の構成について説明する。図1は要部平面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の水晶発振器10は、少なくとも1つの高安定水晶発振器12が収納可能な収納部11A、回路部11B、及び出力端子部11Cを有する梱包トレイ(容器本体)11と、開閉自在な蓋材(図示せず)とを備えている。図1では、最大25個の高安定水晶発振器12を格子状に収納可能なものについて図示してある。
高安定水晶発振器12としては、恒温槽付水晶発振器(OCXO)等が挙げられる。
本実施形態の梱包容器10は、電源をオン状態としてから出力周波数が安定するまでに相当の時間を要する高安定水晶発振器用として好適なものであるが、任意の水晶発振器用として用いることができる。
【0016】
回路部11Bには、個々の高安定水晶発振器12に電源電圧を供給することが可能な電源電圧供給部として、2つのバッテリー回路13A、13Bが搭載されている。
回路部11Bにはまた、上記2つのバッテリー回路13A、13Bのうちいずれかの電源電圧供給部から高安定水晶発振器12への電源電圧供給を行うよう、電源電圧供給源を切り替える切替え部として、OR回路14が備えられている。
OR回路14と個々の高安定水晶発振器12の収納箇所とは、電源電圧供給ライン15により接続されている。実際には、OR回路14と計25箇所の個々の高安定水晶発振器12の収納箇所とがそれぞれ異なる電源電圧供給ライン15で接続されている。したがって、電源電圧供給ライン15は、収納可能な高安定水晶発振器12の最大数25個に対応して25本配設されているが、図面上は簡略化して図示してある。
本実施形態では、2つのバッテリー回路13A、13Bを設け、OR回路14にて電源電圧供給源を切替え可能としているので、2つのバッテリー回路13A、13Bのうちいずれかが故障しても、故障していない方のバッテリー回路を使用して高安定水晶発振器12への電源電圧供給を継続することができる。
【0017】
出力端子部11Cは、個々の高安定水晶発振器12に対応してそれぞれ設けられ、高安定水晶発振器12からの出力信号を外部出力することが可能な少なくとも1つの出力端子17を備えている。図1では、収納可能な高安定水晶発振器12の最大数25個に対応して、25個の出力端子17が備えられている。
個々の高安定水晶発振器12の収納箇所と対応する出力端子17とが信号伝送ライン16で接続されている。実際には、計25箇所の個々の高安定水晶発振器12の収納箇所と対応する出力端子17とがそれぞれ異なる信号伝送ライン16で接続されている。したがって、信号伝送ライン16は、収納可能な高安定水晶発振器12の最大数25個に対応して25本配設されているが、図面上は簡略化して図示してある。
【0018】
本実施形態の梱包容器10では、部品供給メーカーで計25個の高安定水晶発振器12を梱包トレイ11の収納部11Aに収納してから出荷前の保管中に、バッテリー回路13A又は13Bより個々の高安定水晶発振器12への電源電圧供給を続けることができる。したがって、無線基地局装置の製造工場等のユーザーに届けられるまでの間に、高安定水晶発振器12の出力周波数を安定化させることができる。
【0019】
本実施形態の梱包容器10を用いれば、無線基地局装置の製造工場等のユーザー側で、高安定水晶発振器12の出力周波数が安定するまで待つ必要がなく、無線基地局装置等の高安定水晶発振器を搭載した製品が製造された時点で直ちに検査を行うことができる。
本来出力周波数の安定に必要な期間を短縮して、高安定水晶発振器12の出力周波数が不安定な状態で、高安定水晶発振器12を搭載した製品の検査を行うこともなくなるので、精度の良い検査が可能となり、製品の性能ばらつきを低減でき、品質向上を図ることができる。
【0020】
本実施形態では、高安定水晶発振器12を搭載した無線基地局装置等の製品製造後に製品の電源をオンにする前から梱包容器10に備えられたバッテリー回路13A又は13Bにより、高安定水晶発振器12に電源電圧が継続供給されることにより、高安定水晶発振器12の出力周波数を高安定水晶発振器12を搭載した製品への搭載時まで安定した状態に保つことができる。
そのため、高安定水晶発振器12を搭載した製品の電源オン後の出力周波数の安定時間やばらつきを気にする必要がなくなり、基準周波数のばらつきΔFを限りなく小さくすることができる。そのため、周波数経年変化規定の基準時点を早くすることができ、無線基地局装置等の製品の検査時間を大幅に短縮するがことが可能となる。
【0021】
本実施形態の梱包容器10では出力端子17を備えているので、25個の高安定水晶発振器12の出力周波数を梱包したままの状態で検査することができる。
したがって、部品供給メーカーで、出荷時に出力周波数が規格内の良品か否かを容易に検査することができる。保管中に周波数が安定化した高安定水晶発振器12に対して、梱包したままの状態で出荷時において基準周波数F0が否かを検査し、良品のみを出荷することができる。
高安定水晶発振器12を搭載した製品を製造するユーザー側でも、製造開始前に、保管・輸送中に周波数が安定化した高安定水晶発振器12に対して、梱包したままの状態で基準周波数F0が否かを検査し、良品のみを使用して製造を行うことができる。
製造前の高安定水晶発振器12の品質検査も容易であるので、万一不良品が混じっていた場合には、製造前にこれをはじくことができ、高安定水晶発振器12を搭載した製品の不良率を低減することができる。
【0022】
水晶発振器を対象としたものではないが、本発明の関連技術としては、「背景技術」の項で挙げた特許文献2〜5がある。
特許文献2には、液晶テレビ等の表示画面を備えた電子機器(3)の良品検査を梱包状態のまま可能とした梱包構造が開示されている(請求項5、図2、段落0006)。特許文献2に記載の梱包構造では、梱包箱(1)の背面に着脱自在な接続手段(9)を介して電源電圧供給手段(11)と映像信号供給手段(12)とが接続可能とされている。この梱包構造では、電源電圧供給手段(11)からの電源と映像信号供給手段(12)からの試験用の映像信号が電子機器(3)に供給されて、電子機器(3)の良品検査を梱包状態のまま実施できるようになっている。電源電圧供給手段および映像信号供給手段は電子機器に内蔵できることも記載されている(請求項6)
特許文献2では、電源電圧供給手段および映像信号供給手段により電源および試験用の映像信号を供給して画面表示させることで、表示画面の表示の良否を窓(7)を通して目視確認するようにしている。すなわち、特許文献2では、良品検査は目視によりなされており、本発明のような電子機器からの出力信号を外部出力することが可能な出力端子を備えてはいない。
また、電源電圧供給手段(11)は1つであり、電源電圧供給手段(11)を複数設けること、及び電源電圧供給源を切り替えることは記載がない。
【0023】
特許文献3には、太陽電池に電圧を印加するための端子部とこの端子部に電圧を印加するための電圧印加部とを備え、保管時および運搬時に保管された太陽電池セルに電圧を印加し電流を流すことにより、太陽電池の出力を安定化させることが可能な太陽電池の保管容器が開示されている(請求項3)。
特許文献3には、複数の太陽電池セル(401)が収納可能とされ、すべての太陽電池セルの正極と負極がこれらを束ねるクリップ状の端子部(404)に接続され、この端子部が保管容器に取り付けられた着脱可能の蓄電池(405)と接続された保管容器が記載されている(図4、段落0031、0032)。
特許文献3の端子部(404)は、太陽電池セルに所望の電圧を印加する蓄電池(405)を接続するためのもので、太陽電池セルからの出力信号を外部出力することが可能な出力端子ではない。
また、電圧印加部である蓄電池(405)は1つであり、電圧印加部を複数設けること、及び電源電圧供給源を切り替えることは記載がない。
【0024】
特許文献4〜5には、複数のバッテリ回路を備え、電源電圧供給源を切り替え可能とした回路構造が記載されている(特許文献4の図15、特許文献5の図1〜図2)。
かかる構成自体は公知であるが、本発明は個々の高安定水晶発振器に電源電圧を供給することが可能な少なくとも1つの電源電圧供給部と、個々の高安定水晶発振器に対応してそれぞれ設けられ、高安定水晶発振器からの出力信号を外部出力することが可能な少なくとも1つの出力端子とを備えたことを特徴としており、特許文献4〜5には本発明の特徴については記載がない。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、高安定水晶発振器12を搭載した製品の検査時間を短縮し、精度の良い検査を可能とし、製品の品質ばらつきを低減することが可能な高安定水晶発振器の梱包容器10を提供することができる。
【0026】
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更が可能である。
バッテリー回路を2つ搭載した梱包容器について説明したが、バッテリー回路の数は適宜設計でき、少なくとも1つあればよい。
ただし、バッテリー回路等の電源電圧供給部を複数設け、複数の電源電圧供給部のうちいずれかの電源電圧供給部から高安定水晶発振器への電源電圧供給を行うよう、電源電圧供給源を切り替えるOR回路等の切替え部を設けることで、1つあるいは一部の電源電圧供給部の故障が生じても、高安定水晶発振器への電源電圧供給を続けることができ、好ましい。
【符号の説明】
【0027】
10 水晶発振器の梱包容器
11 梱包トレイ
11A 収納部
11B 回路部
11C 出力端子部
12 高安定水晶発振器
13A、13B バッテリー回路(電源電圧供給部)
14 OR回路(切替え部)
15 電源電圧供給ライン
16 信号伝送ライン
17 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの水晶発振器が収納可能な収納部と、
個々の前記水晶発振器に電源電圧を供給することが可能な少なくとも1つの電源電圧供給部と、
個々の前記水晶発振器に対応してそれぞれ設けられ、前記水晶発振器からの出力信号を外部出力することが可能な少なくとも1つの出力端子とを備えた水晶発振器の梱包容器。
【請求項2】
前記電源電圧供給部が複数備えられており、当該複数の電源電圧供給部のうちいずれかの電源電圧供給部から前記水晶発振器への電源電圧供給を行うよう、電源電圧供給源を切り替える切替え部を備えた請求項1に記載の水晶発振器の梱包容器。
【請求項3】
高安定水晶発振器用である請求項1又は2に記載の水晶発振器の梱包容器。

【図1】
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