説明

水栓装置

【課題】止水状態で使用者が操作部を操作するときに、操作方向を迷うことなく意図した操作方向で必ず増流量方向に操作することができる操作が容易な水栓装置を提供する。
【解決手段】水栓本体10と、流調弁33aを有する流調調整手段33と、第1操作方向及び第2操作方向に操作可能である流量操作部20と、流量操作部20の操作方向及び操作量を検知し、検知した操作方向に応じて吐水温度を変化させることなく、検知した操作方向及び操作量に基づいて、吐水流量を調整するために流量調整手段33を制御するコントローラ35と、を備えた水栓装置1であって、コントローラ35は、止水状態において流量操作部20が第1操作方向及び第2操作方向のいずれかの操作方向に操作された場合、操作された操作方向を吐水流量を増加させる増流量方向に設定し、他方の操作方向を吐水流量を減少させる減流量方向に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水栓装置に関し、特に止水状態において異なる2方向に操作可能な流量操作部を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水口からの吐水流量を調整するための操作部を有する水栓装置では、この操作部の操作により流調弁の開度が調整されるように構成されており、例えば、操作部を右回転させることにより吐水流量が増加し、左回転させることにより吐水流量が減少するようになっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の水栓装置では、流調を操作する操作部と流調弁とが機械的に連結されており、操作部の操作により直接的に流調弁を制御するように構成されている。また、特許文献2に記載の水栓装置では、制御部が操作部から操作信号を受取り、この操作信号に基づいて制御部が流調弁を制御するように構成されている。このような水栓装置においては、操作部の操作方向と流調の制御方向が決められており、使用者は、操作部の増流量方向及び減流量方向を認識しながら操作部を操作することにより、所望の吐水流量で水栓装置を利用することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平2007−92930号公報
【特許文献2】特開平2001−208229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような操作部の操作方向と流調の制御方向が決まっている水栓装置では、操作部をどちらの方向に操作すれば止水状態から吐水状態となるのかが分からず、使用者が誤った方向に操作してしまうことにより、使用者が不便を感じるという問題がある。例えば、公共に供された水栓装置を不特定多数の人が使用する場合や、家庭用のもので来客人が使用する場合には、使用者が当該水栓装置に不慣れであるから、操作部の増流量方向が分からず、操作部を誤って減流量方向に操作してしまうことが起こる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、止水状態で使用者が操作部を操作するときに、操作方向を迷うことなく意図した操作方向で必ず増流量方向に操作することができる操作が容易な水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、1つの吐水口を有する吐水部と、吐水口から吐水される吐水流量を調整するための流量調整弁を有する流量調整部と、第1操作方向、及びこの第1操作方向と反対の第2操作方向に操作可能である吐水流量を調整するための操作部と、操作部の操作方向及び操作量を検知し、検知した操作方向に応じて吐水温度を変化させることなく、検知した操作方向及び操作量に基づいて流量調整部を制御して吐水流量を調整する制御部と、を備えた水栓装置であって、制御部は、止水状態において操作部が第1操作方向及び第2操作方向のいずれかの操作方向に操作された場合、操作された操作方向を吐水流量を増加させる増流量方向に設定し、他方の操作方向を吐水流量を減少させる減流量方向に設定することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、吐水口からの吐水流量を調整するための操作部が、止水状態において、第1操作方向及び第2操作方向のいずれの方向にも操作可能であり、使用者が操作部をいずれの方向に操作しても、制御部はその操作方向を増流量方向に設定し、他方向を減流量方向に設定する。
【0009】
このため、使用者は、操作部をどちらの方向に操作しても、吐水口から吐水を開始させることができ、また、吐水開始時と異なる方向に操作することにより、吐水流量を減少させ又は止水することができる。
したがって、本発明では、異なる使用者が使用の時々に応じて選択した方向に操作して吐水開始させることができ、これにより、どちらに操作したらよいのか分からないといった問題が生じることなく、使い勝手の良好な水栓装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部が減流量方向に操作され止水を指示する位置まで到達したことを検知し、流量調整部を止水状態に制御した後に、さらに操作部が継続して同じ方向に操作されている止水後継続操作を検知している間は、流量調整部を継続的に止水状態に維持する。
【0011】
このように構成された本発明においては、吐水状態で操作部を減流量方向に操作して止水状態になった後に、使用者が操作部を止水に対応する位置に停止させることなく、誤って同一方向に操作し過ぎて止水位置を通り越した場合であっても、制御部は、使用者の意図しない吐水を再開させることなく止水状態を維持する。
すなわち、使用者が操作部を止水位置に正確に止めることは難しく、わずかに止水位置を超えて操作してしまうことがあるので、このような場合でも、本発明では、使用者の意図を反映させて止水状態とする。これにより、本発明では、誤って再度吐水開始とならないので、使用者を戸惑わせることがなく、使い勝手を良好とすることができる。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、第1操作方向、及びこの第1操作方向と反対の第2操作方向に操作可能である吐水流量を調整するための操作部と、吐水口から吐水される吐水流量を調整するための流量調整弁を有する流量調整部と、操作部の操作方向及び操作量を検知し、検知した操作方向及び操作量に基づいて流量調整部を制御する制御部と、を備えた水栓装置であって、制御部は、止水状態において操作部が第1操作方向及び第2操作方向のいずれかの操作方向に操作された場合、操作された操作方向を吐水流量を増加させる増流量方向に設定し、他方の操作方向を吐水流量を減少させる減流量方向に設定し、制御部は、操作部が減流量方向に操作され止水を指示する位置まで到達したことを検知し、流量調整部を止水状態に制御した後に、さらに操作部が継続して同じ方向に操作されている止水後継続操作を検知している間は、流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、止水状態において、使用者が吐水流量調整用の操作部を第1操作方向及び第2操作方向のいずれの方向にも操作しても、制御部がその操作方向を増流量方向に設定するので、吐水を開始させることができる。また、制御部は他方向を減流量方向に設定するので、使用者は、吐水開始後、他方向に操作すれば吐水流量を減少させ又は止水することができる。
【0014】
したがって、本発明では、使用者は使用の時々に応じて選択した方向に操作して吐水開始させることができ、これにより、どちらに操作したらよいのか分からないといった問題が生じることなく、使い勝手の良好な水栓装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明では、止水するために操作部を減流量方向に操作したときに、操作部を操作し過ぎて止水位置を通り越してしまった場合であっても、制御部は、使用者の意図しない吐水を再開させることなく止水状態を維持する。これにより、誤って再度吐水開始とならないので、使用者を戸惑わせることがなく、使い勝手を良好とすることができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合、止水状態となってから継続操作された操作部の減流量方向への止水後操作量を算出し、この止水後操作量が所定値以下であるときに、流量調整部を継続的に止水状態に維持する。
【0017】
このように構成された本発明においては、吐水状態から、使用者が操作部を減流量方向に止水位置を越えて、所定操作量以上さらに操作した場合には、使用者が吐水を再開する意思をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合、吐水状態から止水状態となるまでに操作された操作部の減流量方向への止水前操作量と、止水状態となってから継続操作された操作部の減流量方向への止水後操作量とを算出し、止水後操作量が止水前操作量に対して所定割合以下の大きさであるときに、流量調整部を継続的に止水状態に維持する。
【0019】
このように構成された本発明においては、吐水状態から、使用者が操作部を減流量方向に止水位置を越えて、止水後操作量が止水前操作量に対して所定割合を超えるまでさらに操作した場合には、使用者が吐水を再開する意思をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合、吐水状態から止水状態となるまでに操作された操作部の減流量方向への止水前操作量と、止水状態となってから継続操作された操作部の減流量方向への止水後操作量とを算出し、止水後操作量と止水前操作量との和が所定値以下であるときに、流量調整部を継続的に止水状態に維持する。
【0021】
このように構成された本発明においては、吐水状態から、使用者が操作部を減流量方向に止水位置を越えて、止水後操作量と止水前操作量との和が所定値を超えるまでさらに操作した場合には、使用者が吐水を再開する意思をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0022】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合、止水状態となってから操作部が減流量方向へ継続操作された止水後操作時間を算出し、この止水後操作時間が所定値以下であるときに、流量調整部を継続的に止水状態に維持する。
【0023】
このように構成された本発明においては、吐水状態において、使用者が操作部を減流量方向に止水位置を越えて、所定操作時間以上さらに操作した場合には、使用者が吐水を再開する意思をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0024】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合、操作部の増流量方向の操作を検知したときに、流量調整部を吐水状態とする。
【0025】
このように構成された本発明においては、使用者が操作部を減流量方向に操作し過ぎて意図しない止水状態になったとしても、操作部をもう一方の操作方向(すなわち、増流量方向)に操作した場合に、吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0026】
また、本発明において好ましくは、制御部は、止水状態において操作部の同一方向の所定値以上の操作量を検知したときに、検知した操作量に基づいて、流量調整部を制御して吐水流量を調整する。
【0027】
このように構成された本発明においては、止水状態において使用者が操作部を所定量以上操作しないと、制御部が流量調整部に吐水を開始させる制御を行わないように構成されている。このため、使用者が誤って操作部に触れたことにより、操作部がわずかに操作されてしまった場合であっても、意図しない吐水が開始されることを防止することができる。
【0028】
また、本発明において好ましくは、制御部は、操作部の止水後継続操作を検知している場合において、操作部の減流量方向への操作が検知されなくなってから所定時間経過するまでは、増流量方向及び減流量方向の設定を維持する。
【0029】
このように構成された本発明においては、使用者が操作部を減流量方向に操作して、止水位置をわずかに行き過ぎて止水状態にした場合、止水状態に制御されているにもかかわらず、使用者が吐水口から残水により止水されていないと勘違いして、再度、操作部を減流量方向に操作してしまうおそれがある。このような場合であっても、本発明では、所定時間が経過するまでは増減流量方向の設定が維持されるので、使用者が操作部の操作を一旦停止してから誤ってさらに操作しても意図しない吐水が開始されることがなく、使い勝手を良好とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水栓装置によれば、止水状態で使用者が操作部を操作するときに、操作方向を迷うことなく意図した操作方向で必ず増流量方向に操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1乃至図6を参照して、本発明の実施形態による水栓装置を説明する。図1は水栓装置全体を示す斜視図、図2は水栓装置の構成を示すブロック図、図3は第1実施形態による吐水制御の吐水流量の時間変化を示すグラフ、図4は第2及び第3実施形態による吐水制御の吐水流量の時間変化を示すグラフ、図5,図6はそれぞれ第4,第5実施形態による吐水制御の時間変化を示すグラフである。
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水栓装置1は、ボウル(又はシンク)3に取り付けられたスパウト部である水栓本体10と、ボウル3が配置されたカウンタ2に取り付けられた流量操作部20及び温度操作部22と、カウンタ2の下側に配置された水栓機能部30と、を有する。
【0033】
本実施形態による水栓装置1は、流量操作部20,温度操作部22を操作することにより、水栓機能部30に電気信号が送られ、各機能を実行することができる。具体的には、水栓装置1は、流量操作部20,温度操作部22を回転操作することにより、それぞれ吐水流量,吐水温度の調整を行うことができるように構成されている。すなわち、本実施形態の水栓装置1は、流量操作部20,22により、吐水及び止水を含めた流量調整機能、温度調整機能を果たすことができる。
【0034】
図2に示すように、吐水部である水栓本体10は、水栓機能部30から給水管4dを介して湯水が供給され、吐水口10aから吐水することができる。
【0035】
図1に示すように、流量操作部20及び温度操作部22は、カウンタ2に取り付けられている。
本実施形態では、流量操作部20及び温度操作部22は、同じ形状を有しており、それぞれ円盤状の操作ハンドル20a,22aと、各操作ハンドルに上端が固定され下方に延びる軸部と、各軸部の下端に接続された回転検出部とを備えている。
【0036】
操作ハンドル20a,22aは、その下面とカウンタ2の上面との間に所定の間隔が設けられた状態で、軸部を介して回転検出部に取り付けられている。
また、流量操作部20及び温度操作部22の操作ハンドル20a,22aの下面には、それぞれ発光手段である表示部21,23が配置されている。表示部21,23は、軸部まわりに複数配置されたLEDと、その制御基板から構成されている。
【0037】
本実施形態の流量操作部20及び温度操作部22では、操作ハンドル20a,22aが止水状態において時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転自在となっている。したがって、本実施形態では、使用者が操作ハンドル20a,22aを任意の方向に回転させることで、回転検出部が回転量(回転角度)及び回転方向を検出して、この回転量及び回転方向を操作量及び操作方向としてコントローラ35に送出する。具体的には、回転検出部は、操作ハンドルが所定の微小角度回動する毎にパルス信号と共に回転方向を表す信号をコントローラ35に出力する。コントローラ35は、この信号を受け取って、吐水口10aからの吐水流量及び吐水温度を制御する。
【0038】
なお、本実施形態では、回転量を表す信号として所定回転角度毎に出力されるパルス信号を用いているが、これに限らず、回転量に比例した大きさの電気信号を用いてもよい。
【0039】
本実施形態では、温度操作部22は、操作ハンドル22aを時計方向に回動すると吐水温度が上がり、反時計方向に回動すると吐水温度が下がるように構成されている。
一方、流量操作部20は、操作ハンドル20aの増流量方向及び減流量方向が、時計方向及び反時計方向に固定されていない。すなわち、本実施形態では、使用者が、止水状態で操作ハンドル20aをいずれの方向に回動させても、吐水が開始し、その回動方向が増流量方向に設定され、他の回動方向が減流量方向に設定される。
【0040】
また、この流量操作部20の表示部21,23は、それぞれ制御基板がコントローラ35から吐水流量を表す信号,吐水温度を表す信号を受け取り、これに応じて制御基板がLEDに駆動信号を供給し、LEDが吐水流量,吐水温度に応じた光量の光を照射するように構成されている。これにより、操作ハンドル20a,22aのまわりに吐水流量,吐水温度に応じた径の円形の光照射範囲21a,23aが形成される。このような構成により、使用者は、表示部21,23の光照射範囲21a,23aの大きさによって、現在の吐水流量及び吐水温度を認知することができる。
なお、本実施形態では、表示部21が受け取る吐水流量を表す信号は、後述する流量調整手段33の流量調整弁33aの開度を表す信号である。
【0041】
なお、本実施形態では、流量操作部20及び温度操作部22は、照射円の大きさで吐水流量及び吐水温度を表しているが、これに限らず、照射角度範囲または照射角度位置で流量及び温度を表すように構成してもよい。
【0042】
図2に示すように、水栓機能部30は、給湯管4a及び給水管4bに接続され温度調整した混合水を混合水管4cに出力する吐水温度調整手段31と、混合水管4cの下流側に接続され流量調整した湯水を給水管4dに出力する流量調整部としての流量調整手段33と、吐水温度調整手段31及び流量調整手段33を制御する制御部としてのコントローラ35と、を備えている。
【0043】
吐水温度調整手段31は、図示しない温調弁(温度調整弁)及びこれを駆動するモータ等から構成されている。吐水温度調整手段31では、コントローラ35からの駆動信号により、モータが温調弁を駆動するように構成されている。そして、モータ駆動された温調弁は、その弁開度をコントローラ35にフィードバックする。吐水温度調整手段31は、温調弁の弁開度に応じて、給湯管4aから流入する湯及び給水管4bから流入した水を混合して、混合水管4cに出力する。本実施形態においては、温調弁として、主弁体を形状記憶合金バネ及びバイアスバネの付勢力により駆動して温度を調整するタイプのサーモバルブが使用されている。
【0044】
流量調整手段33は、流調弁(流量調整弁)33a及びこれを駆動するモータ33b等から構成されている。流量調整手段33では、コントローラ35からの駆動信号により、この駆動信号の大きさに応じた駆動速度でモータが流調弁33aを駆動するように構成されている。そして、モータ駆動された流調弁は、その弁開度をコントローラ35にフィードバックする。流量調整手段33は、流調弁33aの弁開度に応じて、混合水管4cから給水管4dへ出力する流量を調整する。
【0045】
コントローラ35は、流量操作部20,温度操作部22等からの信号を入力するための入力インターフェイスと、制御プログラムや設定値等を記憶するメモリからなる記憶部35aと、プログラムを実行するマイクロプロセッサと、モータ等を駆動するための出力インターフェイス等から構成される。
【0046】
本実施形態では、コントローラ35は、流量操作部20及び温度操作部22から、それぞれ吐水流量及び吐水温度に関連した電気信号を受け取り、この信号に基づいて、流量調整手段33及び吐水温度調整手段31に駆動信号(駆動電圧)を送って、これらをフィードバック制御するように構成されている。
【0047】
具体的には、コントローラ35は、温度操作部22から、昇温方向のパルス信号を受け取ると、受け取ったパルス信号の数に応じて設定温度値を増加させ、降温方向のパルス信号を受け取ると、受け取ったパルス信号の数に応じて設定温度値を減少させる。そして、コントローラ35は、所定の駆動信号を吐水温度調整手段31に出力して、駆動モータにより温調弁をこの設定温度値に対応する弁開度となるまで駆動させる。
【0048】
一方、コントローラ35は、止水状態で、流量操作部20から、電気信号を受け取ると、この電気信号のうち回転方向を表す信号で表される操作ハンドル20aの回転方向を増流量方向,他の回転方向を減流量方向に設定して、記憶部35aに記憶する。
また、コントローラ35は、止水状態から受け取ったパルス信号の数により、操作ハンドル20aの止水状態からの相対的な回転量(回転角度)を算出し、この回転量に応じて流量設定値である目標吐水流量を決定する。この目標吐水流量は、流量調整手段33の流調弁33aの弁開度に対応する。
【0049】
このような構成により、コントローラ35は、止水状態から使用者が操作ハンドル20aを操作することに応じて、このときの操作方向を増流量方向に設定し、他方を減流量方向に設定し、流量調整手段33のモータ33bの駆動方向を決定する。そして、コントローラ35は、決定した弁開度(目標吐水流量)となるまで、駆動信号(駆動電圧)をモータ33bに出力してフィードバック制御を行う。
【0050】
これにより、使用者は、止水状態で操作ハンドルをいずれの方向に操作しても吐水を開始させることができ、さらに、止水状態からの回転量に応じて増流量調整することができる。また、使用者は、選択した方向と反対方向に回転させることにより減流量調整及び止水することができる。
【0051】
また、本実施形態では、コントローラ35は、止水状態で流量操作部20から操作信号を受け取らなくなってからの時間を計時する。さらに、コントローラ35は、吐水時に流量操作部20が減流量方向に操作されると、この時点からの操作量を算出するように構成されている。
【0052】
次に、図3乃至図6を参照して、本発明の実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
まず、図3に基づいて、本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る吐止水制御のタイミングチャートである。図3(B)は、使用者が止水状態から操作した流量操作部20の操作量(回転角度)の時間変化であり、図3(A)は、図3(B)の操作によって吐水口10aから吐水される吐水量の時間変化である。なお、図3(B)では、時間t0での位置をゼロとして、この位置からの相対位置で示している。
【0053】
以下では、吐水状態から止水状態となった後に、さらに減流量方向に継続操作することを止水後継続操作という。また、吐水状態から止水状態となった流量操作部20の位置を止水位置という。さらに、止水後継続操作による止水位置からの継続的な操作量を止水後操作量、その間の操作時間を止水後操作時間という。
本実施形態では、コントローラ35は、流量操作部20から受け取る操作量及び操作方向を表す出力信号に基づいて、止水後継続操作を検知し、止水後操作量,止水後操作時間等を算出することができる。
なお、継続的な操作とは、流量操作部20を一方向に継続的に操作し続けることに加えて、流量操作部20を断続的に一方向に操作することを含む。
【0054】
また、本実施形態では、コントローラ35は、流量操作部20から受け取る操作量及び操作方向を表す出力信号及び流調弁33aの弁開度に基づいて、止水状態が所定の設定時間ΔTB(例えば、10秒)以上継続したと判定すると、使用者が別の使用者にかわったものとみなして、増減流量方向の設定をリセットする。そして、リセット後に、流量操作部20が再び操作されたときに、増減流量方向の再設定を行い、このときの再操作位置からの操作量に応じて駆動信号を出力する。
【0055】
また、本実施形態では、吐水後、使用者が止水する意図で流量操作部20を減流量方向に操作して、止水位置を超えてしまった場合であっても、止水位置で増減流量方向の再設定を行うことにより再吐水させることなく、所定条件で止水状態を維持するように構成されている。
すなわち、コントローラ35は、止水後操作量が所定の設定操作量ΔLA以下の間、且つ、止水後操作時間が所定の設定操作時間ΔTA(例えば、3秒)以下の間は、止水状態を維持する。この場合、コントローラ35は、流量調整手段33に駆動信号を出力しない。なお、このときコントローラ35が、駆動信号を出力しても、流量調整手段33の流調弁33aはすでに閉状態であるので、この閉状態が保持される。このため、流量調整手段33は、この駆動信号を無効としてもよい。
【0056】
一方、コントローラ35は、止水後操作量が設定操作量ΔLAよりも大きくなるか、止水後操作時間が設定操作時間ΔTAよりも大きくなると、増減流量方向の再設定を行い、止水後操作量が設定操作量ΔLAとなった位置、又は、止水後操作時間ΔTAが経過したときの流量操作部20の位置を基準位置として、この基準位置からの増流量方向への操作量に応じて駆動信号を出力する。
【0057】
図3(B)の例では、使用者は、吐水口10aから吐水されていない止水状態において、時間t0に流量操作部20を正方向(時計方向)に回動させ、その後、流量操作部20を負方向(反時計方向)に回動させ、時間t1に止水状態の回転位置に戻している。
これにより、図3(A)に示すように、時間t0から時間t1において、コントローラ35は、止水状態からの正方向への回転量に応じた吐水流量となるように、駆動信号を流量調整手段33に出力することで、吐水口10aから吐水させる。流量操作部20の操作量がゼロとなる時間t1には、流調弁33aが閉状態となり吐水量もゼロとなる(止水する)。
【0058】
使用者は、時間t1後、さらに負方向に継続して流量操作部20を回動させ(止水後継続操作)、時間t2に、止水状態の基準位置(位置0)を基準とした流量操作部20の操作量(回転量)が操作量L2(<0)に達したところで流量操作部20の操作(回転)を終了している。このとき、止水後操作時間(=t2−t1)及び止水後操作量(=0−L2)が所定値(ΔTA,ΔLA)以下であるので、時間t1から時間t2まで止水状態が維持される。このように、使用者が、止水位置を行き過ぎるまで流量操作部20を操作しても止水状態が維持される。
【0059】
次に、時間t2から時間t3の期間は、流量操作部20は操作されていない。この期間は、設定時間ΔTBよりも長くなっており(t3−t2>ΔTB)、コントローラ35は、操作停止から設定時間ΔTB経過後に、増減流量方向をリセットする。これ以降の操作では、基準位置は位置L2となる。
【0060】
使用者は、時間t3に流量操作部20を負方向に回動させており、これに応じて、コントローラ35は、負方向を増流量方向に設定し、基準位置(L2)からの操作量に応じて駆動信号を出力する。
その後、使用者は流量操作部20を減流量方向(正方向)に操作しており、流量操作部20は時間t4に基準位置である位置L2に達し、時間t4に吐水量はゼロとなっている。
【0061】
使用者は、時間t4以後、止水後継続操作を行っている。時間t4から設定時間ΔTA経過した時点が、時間t5である(t5−t4=ΔTA)。また、時間t5に流量操作部20は位置L1に達しており、時間t5における止水後操作量が設定操作量ΔLA(ΔLA=L1−L2)となっている。
【0062】
したがって、時間t5に、コントローラ35は、増流量方向,減流量方向をそれぞれ正方向,負方向に再設定する。このとき、基準位置は位置L1となる。
時間t5以降は、再び、コントローラ35は、基準位置L1からの操作量に応じて駆動信号を出力する。そして、時間t7に、流量操作部20は基準位置L1まで戻され、吐水量がゼロとなっている。
【0063】
時間t7以降は、止水後継続操作が行われている。時間t7以降、流量操作部20は、時間t8に止水後操作量が操作量L1(=L1−0)となった位置で一旦停止されている。なお、この時点では、止水後操作量(=L1−0)及び止水後操作時間(=t8−t7)が共に、設定値(ΔLA,ΔTA)以下であるので、止水状態が維持される。
【0064】
コントローラ35は、流量操作部20が時間t8から時間t9まで停止したままであることを検出しているが、流量操作部20の停止(時間t8)から設定時間ΔTBが経過していないので(t9−t8<ΔTB)、増減流量方向の設定及び流量操作部20の操作量を保持している。すなわち、止水後継続操作において、流量操作部20の所定時間(ΔTC)よりも長い停止があった場合には、継続操作とならないが、この場合にコントローラ35は、操作停止から設定時間ΔTBの計時を開始する。
【0065】
したがって、時間t9から時間t10にかけて、使用者は止水状態でさらに減流量方向に流量操作部20を操作していることになるので、コントローラ35は、止水状態を維持する。
すなわち、使用者が、止水する意図で流量操作部20を減流量方向に操作したときに、実際には止水状態となっているにもかかわらず、吐水口10aから残水が吐水される場合がある。このとき、使用者が、流量操作部20を止水位置まで操作していないと勘違いして、流量操作部20をさらに減流量方向に操作してしまうおそれがある。このような場合、流量操作部20の停止によって即座に増減流量方向の設定がリセットされていると、再操作により、意図しない吐水が開始されてしまう。
【0066】
しかしながら、本実施形態では、操作停止から設定時間ΔTB経過するまでは、コントローラ35は、増減流量方向の設定を保持するので、上述のような再操作によって、意図しない吐水が開始されてしまうことを防止することができる。
なお、本実施形態では、時間t9から減流量方向に設定時間ΔTAもしくは設定操作量ΔTAだけ継続的に操作された場合には、使用者が再吐水する意図を有していると判定して、設定時間ΔTA経過時もしくは設定操作量ΔTAだけ操作した時に、増減流量方向の再設定が行われる。
【0067】
このように、本実施形態では、止水状態において、使用者が、任意の選択した方向に流量操作部20を操作(回動)させることにより、操作量に応じた吐水流量で吐水口10aから吐水させることができる。したがって、本実施形態では、使用者が流量操作部20の増流量方向が分からないという問題が生じることがなく、使い勝手を良好とすることができる。
また、本実施形態では、止水するために、使用者が、流量操作部20を減流量方向に操作したときに、止水位置を通り過ぎるまで操作しすぎた場合であっても、再吐水が開始されることがないので、使用者を戸惑わせることがなく、使い勝手を良好とすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、使用者が流量操作部20を止水位置を越えて所定操作量ΔLA以上又は所定操作時間ΔTA以上操作し続けた場合には、使用者が吐水を再開させる意図をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、止水後継続操作中に操作停止した場合には、操作停止から設定時間ΔTBが経過するまでは増流量方向が保持されるので、使用者が流量操作部20をさらに減流量方向に操作したときに、意図しない吐水が開始されてしまうことを防止することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、止水後制御量及び止水後操作時間を、増減流量方向の再設定を行うための制御量にしていたが、これに限らず、止水後制御量及び止水後操作時間のいずれか一方のみを増減流量方向の再設定を行うための制御量にしてもよい。
【0071】
次に、図4を参照して、本発明の第2及び第3実施形態による水栓装置1の作用を説明する。なお、図3の第1実施形態と重複する制御については説明を省略し、異なる制御のみを説明する。
図4(C)は、流量操作部20の操作量(回転角度)の時間変化であり、図4(A)(第2実施形態),図4(B)(第3実施形態)は、図4(C)の操作時における吐水量の時間変化である。
【0072】
図4(C)の例では、使用者が止水状態から時間t20に流量操作部20を正方向に回動させ、時間t21に操作量L1で停止させた後、時間t22から時間t25にかけて流量操作部20を負方向に回動させている。この間に、流量操作部20は時間t23に止水状態であった基準位置(位置0)に戻り、時間t24に負の操作量L2(L2<0)となり、時間t25に負の操作量L7(L7<L2<0)となっている。
【0073】
時間t25に流量操作部20の操作方向は正方向に転じ、時間t26に流量操作部20は位置L2に戻され、時間t27まで位置L2に保持されている。時間t27に流量操作部20は再び正方向の操作が行われ、時間t28に位置L3(0<L3<L1)に達している。
そして、時間t28に流量操作部20の操作方向は負方向に転じ、時間t29に流量操作部20は位置L2に戻され、時間t30に位置L4(L7<L4<L2<0)に達している。さらに、時間t30に流量操作部20の操作方向は正方向に転じ、時間t31に流量操作部20は位置L2に戻され、時間t32に位置0に達している。
【0074】
さらに、時間t32に流量操作部20の操作方向は負方向に転じ、時間t33に流量操作部20は位置L2に戻され、引き続き時間t34に位置L4に達した後、時間t35に位置L5に達し、さらに時間t36に位置L6に達している。時間t36以後は、流量操作部20は位置L6に保持されている。
【0075】
以下では、吐水状態において流量操作部20を減流量方向へ操作し始めてから、基準位置に達し、止水状態となるまでの流量操作部20の操作量を止水前操作量という。
【0076】
次に、図4(A)に基づいて、第2実施形態を説明する。
図4(A)の態様では、コントローラ35は、止水前操作量と止水後操作量の和が、所定の設定操作量ΔLA以下の場合に、使用者が止水操作をしているものと判断して、止水後継続操作において止水状態を維持する。
【0077】
一方、コントローラ35は、止水前操作量と止水後操作量の和が、所定の設定操作量ΔLAよりも大きくなった場合に、使用者が再吐水の意図を有していると判断して、増減流量方向の再設定を行う。そして、コントローラ35は、再設定時点での流量操作部20の位置を基準位置として操作量に応じた吐水流量で吐水口10aから吐水を行わせるように制御を行う。
【0078】
図4(A)、時間t22に流量操作部20を減流量方向に操作し始め、時間t23に基準位置(位置0)からの操作量がゼロとなり、止水状態となっている。したがって、時間t22から時間23にかけて止水前操作が行われており、止水前操作量は、位置L1から位置ゼロまでの操作量(=L1−0)に相当する。時間t23以後に行われている止水後操作において、時間t24での止水後操作量は、位置0から位置L2までの操作量(=0−L2)に相当する。
【0079】
この例では、時間t22から時間t23にかけての止水前操作量と、時間t23から時間t24にかけての止水後操作量との和が、設定操作量ΔLA(=L1−L2)となる。
このため、コントローラ35は、止水状態となった時間t23から時間t24までは、止水状態を維持し、時間t24に増減流量方向の再設定を行う。すなわち、時間t24において、負方向が増流量方向に再設定され、正方向が減流量方向に再設定される。
コントローラ35は、時間t24から時間t26においては、基準位置L2からの操作量に応じて吐水させる制御を行う。
【0080】
時間t26から時間t27の間の時間は、設定時間ΔTB以上であるので、コントローラ35は、増減流量方向をリセットする。なお、コントローラ35は、設定時間ΔTB経過するまでは、増減流量方向の設定を維持する
時間t27から時間t30においては、コントローラ35は、正方向を増流量方向に設定し、位置L2を基準位置として吐水制御を行っている。
時間t28から時間t29までの止水前操作量と、時間t29から時間t30までの止水後操作量との和(=L3−L4)は、設定操作量ΔLAよりも小さいので、コントローラ35は、時間t29以後も時間t30まで止水状態を維持する。
【0081】
また、時間t30から時間t36においては、コントローラ35は、正方向を増流量方向に設定した状態を継続しており、位置L4を基準位置として吐水制御を行っている。
時間t32から時間t34までの止水前操作量と、時間t34から時間t36までの止水後操作量との和(=0−L6)は、設定操作量ΔLAよりも小さいので、コントローラ35は、時間t34から時間t36まで止水状態を維持し、その後も止水状態を維持する。
【0082】
このように、本実施形態では、使用者が流量操作部20を止水操作中に、止水位置を越えて操作した場合、止水前操作量と止水後操作量の和が所定の設定操作量ΔLAを超えるまでは、止水後操作中に止水状態を維持し、さらに止水前操作量と止水後操作量の和が所定の設定操作量ΔLAを超えると、使用者が吐水を再開させる意図をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0083】
次に、図4(B)に基づいて、第3実施形態を説明する。
図4(B)の態様では、コントローラ35は、止水後操作量が止水前操作量に対して所定割合R以下の大きさである場合に、使用者が止水操作をしているものと判断して、止水後操作において止水状態を維持する。
【0084】
一方、コントローラ35は、止水後操作量が止水前操作量に対して所定割合Rよりも大きくなった場合に、使用者が再吐水の意図を有していると判断して、増減流量方向の再設定を行う。そして、コントローラ35は、再設定時点での流量操作部20の位置を基準位置として操作量に応じた吐水流量で吐水口10aから吐水を行わせるように制御を行う。
【0085】
図4(B)では、時間t20から時間t24においては、コントローラ35は、正方向を増流量方向に設定し、位置0を基準位置として吐水制御を行っている。
時間t22から時間t23までの止水前操作量(=L1−0)に対して、時間t23から時間t24までの止水後操作量が、設定割合Rより小さいので、コントローラ35は、時間t23から時間t24まで止水状態を維持している。
【0086】
しかしながら、時間t24に止水後操作量(=0−L2)が止水前操作量の設定割合Rに等しい大きさとなるので、コントローラ35は、増減流量方向の再設定を行う。これにより、コントローラ35は、時間t24から時間t26において、負方向を増流量方向,正方向を減流量方向に設定して、位置L2を基準位置として吐水制御を行う。
【0087】
時間t26から時間t27の間(>ΔTB)に、コントローラ35は、設定時間ΔTB経過するまでは増減流量方向の設定を維持するが、設定時間ΔTB経過時に増減流量方向をリセットする。その後、コントローラ35は、時間t27から時間t30においては、正方向を増流量方向に設定し、位置L2を基準位置として吐水制御を行っている。
時間t28から時間t29までの止水前操作量(=L3−L2)に対して、時間t29から時間t30までの止水後操作量(=L2−L4)が、設定割合Rよりも小さいので、コントローラ35は、時間t29以後も時間t30まで止水状態を維持する。
【0088】
さらに、本実施形態では、止水後操作中に流量操作部20の操作方向が切り換えられても、切り換え前の増減流量方向の設定及び基準位置が保持されるように構成されている。
したがって、時間t30から時間t31においては、コントローラ35は、流量操作部20の位置が基準位置L2より小さいため、止水状態を維持する。
【0089】
時間t31から時間t36においては、時間t27から時間t31までと同様に、正方向を増流量方向に設定した状態を維持しており、位置L2を基準位置として吐水制御を行っている。
時間t32から時間t33までの止水前操作量(=0−L2)に対して、時間t33から時間t35までの止水後操作量が、設定割合Rよりも小さいので、コントローラ35は、時間t33以後も時間t35まで止水状態を維持する。
【0090】
しかしながら、時間t35に止水後操作量(=L2−L5)が止水前操作量の設定割合Rに等しい大きさとなるので、コントローラ35は、増減流量方向の再設定を行う。これにより、コントローラ35は、時間t35以降は、負方向を増流量方向,正方向を減流量方向に設定して、位置L5を基準位置として吐水制御を行う。
【0091】
このように、本実施形態では、使用者が流量操作部20を止水操作中に、止水位置を越えて操作した場合、止水後操作量が止水前操作量に対して所定の設定割合Rを超えるまでは、止水後操作中に止水状態を維持し、さらに止水後操作量が止水前操作量に対して所定の設定割合Rを超えると、使用者が吐水を再開させる意図をもって操作しているものと判断して吐水を再開させることで、より使い勝手を良好とすることができる。
【0092】
次に、図5及び図6に基づいて、本発明の第4及び第5実施形態の水栓装置1の作用を説明する。第4及び第5の実施形態は、吐水開始時の制御に関するものである。
第4及び第5実施形態では、コントローラ35は、止水状態において、流量制御部20が正方向及び負方向にわずかに回動しても、その回転量が基準位置から設定操作量ΔLB(例えば、3°)以下であれば、止水状態を維持する。
【0093】
まず、図5に基づいて、本発明の第4実施形態を説明する。
図5の態様では、コントローラ35は、止水状態において、流量制御部20が操作開始された位置を基準位置に設定する。
図5(B)の例では、使用者は、止水状態における時間t40から時間t41まで流量操作部20を操作しておらず、時間t41に流量操作部20を、選択した正方向とは反対方向の負方向に誤って操作している。
【0094】
コントローラ35は、時間t41に流量操作部20が操作されたが、この時点では、基準位置である位置0から設定操作量ΔLB以上操作されていないので、増減流量方向の設定は行わず、止水状態を維持する制御を行う。
そして、流量操作部20は、時間t42に負の操作位置L12(<0)に達しているが、このときの操作量(=0−L12)も設定操作量ΔLBより小さいので、コントローラ35は、増減流量方向の設定を行うことなく、図5(A)に示すように、止水状態を維持する制御を行う。
【0095】
時間t42に流量操作部20の操作方向が切り換えられ、時間t43に流量操作部20は位置L10(L10>0)に達している。この時点での基準位置からの操作量(=L10−0)は、設定操作量ΔLBに等しい。
このため、コントローラ35は、時間t43に、現在の操作方向である正方向を増流量方向、負方向を減流量方向に設定する。さらに、コントローラ35は、増減流量方向設定時(時間t43)時点での流量操作部20の位置L10を基準位置として、これ以降、この基準位置からの操作量に応じて、図5(A)に示すように、吐水制御を行う。
【0096】
このように、本実施形態では、止水状態において、使用者が誤って流量操作部20に触れてしまっても、止水状態を維持することができる。これにより、意図しない吐水が開始されることを防止することができる。
【0097】
したがって、例えば、本実施形態では、使用者が増流量方向であると考えた操作方向と逆方向に流量操作部20を設定操作量ΔLB未満でわずかに操作してしまった場合には、依然として止水状態に維持される。そして、使用者が増流量方向と考えた操作方向にあらためて操作した場合に、設定操作量ΔLB以上操作されたときに吐水が開始される。これにより、使用者は、流量操作部20を違和感なく操作することができる。
【0098】
次に、図6に基づいて、本発明の第5実施形態を説明する。
図6の態様では、コントローラ35は、止水状態において、流量制御部20が操作開始された時点では、操作開始された位置を基準位置に設定するが、その後、止水状態のまま操作方向が切り換えられたときに、切換時の位置を基準位置に設定し直す。
図6(B)の例では、使用者は、止水状態における時間t50から時間t51まで流量操作部20を操作しておらず、時間t51に流量操作部20を、選択した負方向とは反対方向の正方向に誤って操作し、その後、時間t52に位置L13(0<L13<ΔLB)で操作方向を負方向に切り換えている。したがって、図5(B)の例では、時間t51から時間t52の間は、位置0が基準位置となるが、時間t52以降は位置L13が基準位置となる。
【0099】
コントローラ35は、時間t51に流量操作部20が操作されたが、この時点では、基準位置である位置0から設定操作量ΔLB以上操作されていないので、増減流量方向の設定は行わず、止水状態を維持する制御を行う。
そして、流量操作部20は、時間t52に操作位置L13(>0)に達しているが、このときの操作量(=L13―0)も設定操作量ΔLBより小さいので、コントローラ35は、増減流量方向の設定を行うことなく、図6(A)に示すように、止水状態を維持する制御を行う。
【0100】
時間t52に流量操作部20の操作方向が切り換えられると、コントローラ35は、時間t52における流量操作部20の位置L13を基準位置に設定する。時間t53に流量操作部20は位置L14(<0)に達している。この時点での基準位置L13からの操作量(=L13−L14)は、設定流量ΔLBに等しい。
このため、コントローラ35は、時間t53に、現在の操作方向である負方向を増流量方向、正方向を減流量方向に設定する。さらに、コントローラ35は、増減流量方向設定時(時間t53)時点での流量操作部20の位置L14を基準位置として、これ以降、この基準位置からの操作量に応じて、図6(A)に示すように、吐水制御を行う。
【0101】
このように、本実施形態でも第4実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態では、操作方向を切り換えた位置が基準位置に設定される。このため、基準位置からΔLBだけ流量操作部20を操作したときに必ず吐水開始されるので、使用者が、選択した操作方向に操作し直したときの吐水開始までの操作量を、第4実施形態よりも小さくすることができる。
【0102】
第1乃至第3実施形態では、止水状態からいずれかの操作方向に流量操作部20を操作したときに、即座に吐水状態となるように構成されていたが、これに限らず、第4及び第5実施形態のように、止水状態から操作する場合に設定操作量ΔLBの不感帯を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態による吐水制御の吐水流量の時間変化を示すグラフである。
【図4】本発明の第2及び第3実施形態による吐水制御の吐水流量の時間変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第4実施形態による吐水制御の時間変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第5実施形態による吐水制御の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
1 水栓装置
10 水栓本体
10a 吐水口
20 流量操作部
22 温度操作部
30 水栓機能部
31 吐水温度調整手段
33 流量調整手段
33a 流調弁
35 コントローラ
35a 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの吐水口を有する吐水部と、
前記吐水口から吐水される吐水流量を調整するための流量調整弁を有する流量調整部と、
第1操作方向、及びこの第1操作方向と反対の第2操作方向に操作可能である吐水流量を調整するための操作部と、
前記操作部の操作方向及び操作量を検知し、検知した操作方向に応じて吐水温度を変化させることなく、検知した操作方向及び操作量に基づいて前記流量調整部を制御して吐水流量を調整する制御部と、を備えた水栓装置であって、
前記制御部は、止水状態において前記操作部が前記第1操作方向及び第2操作方向のいずれかの操作方向に操作された場合、操作された操作方向を吐水流量を増加させる増流量方向に設定し、他方の操作方向を吐水流量を減少させる減流量方向に設定することを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部が減流量方向に操作され止水を指示する位置まで到達したことを検知し、前記流量調整部を止水状態に制御した後に、さらに前記操作部が継続して同じ方向に操作されている止水後継続操作を検知している間は、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
第1操作方向、及びこの第1操作方向と反対の第2操作方向に操作可能である吐水流量を調整するための操作部と、
吐水口から吐水される吐水流量を調整するための流量調整弁を有する流量調整部と、
前記操作部の操作方向及び操作量を検知し、検知した操作方向及び操作量に基づいて前記流量調整部を制御して吐水流量を調整する制御部と、を備えた水栓装置であって、
前記制御部は、止水状態において前記操作部が前記第1操作方向及び第2操作方向のいずれかの操作方向に操作された場合、操作された操作方向を吐水流量を増加させる増流量方向に設定し、他方の操作方向を吐水流量を減少させる減流量方向に設定し、
前記制御部は、前記操作部が減流量方向に操作され止水を指示する位置まで到達したことを検知し、前記流量調整部を止水状態に制御した後に、さらに前記操作部が継続して同じ方向に操作されている止水後継続操作を検知している間は、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする水栓装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合、止水状態となってから継続操作された前記操作部の前記減流量方向への止水後操作量を算出し、この止水後操作量が所定値以下であるときに、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合、吐水状態から止水状態となるまでに操作された前記操作部の前記減流量方向への止水前操作量と、止水状態となってから継続操作された前記操作部の前記減流量方向への止水後操作量とを算出し、前記止水後操作量が前記止水前操作量に対して所定割合以下の大きさであるときに、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合、吐水状態から止水状態となるまでに操作された前記操作部の前記減流量方向への止水前操作量と、止水状態となってから継続操作された前記操作部の前記減流量方向への止水後操作量とを算出し、前記止水後操作量と前記止水前操作量との和が所定値以下であるときに、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合、止水状態となってから前記操作部が前記減流量方向へ継続操作された止水後操作時間を算出し、この止水後操作時間が所定値以下であるときに、前記流量調整部を継続的に止水状態に維持することを特徴とする請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合、前記操作部の前記増流量方向の操作を検知したときに、前記流量調整部を吐水状態とすることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の水栓装置。
【請求項9】
前記制御部は、止水状態において前記操作部の同一方向の所定値以上の操作量を検知したときに、検知した操作量に基づいて、前記流量調整部を制御して吐水流量を調整することを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の水栓装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記操作部の前記止水後継続操作を検知している場合において、前記操作部の前記減流量方向への操作が検知されなくなってから所定時間経過するまでは、増流量方向及び減流量方向の設定を維持することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の水栓装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−77735(P2010−77735A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249121(P2008−249121)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】