説明

水栓

【課題】人感センサーの感知状態を吐水前に認識することができて、不意の吐水により衣服を濡らしたり、火傷をしたりするおそれを防止することができる水栓を提供する。
【解決手段】吐水管13の先端部に人感センサー19を設ける。水栓本体12内には、人感センサー19によって開閉される電磁バルブ20Aを設ける。水栓本体12内には、人感センサー19が人体を感知したとき、電磁バルブ20Aを開放して吐水管13から吐水させるように制御する制御装置21を設ける。吐水管13には、表示ランプ22を設ける。制御装置21により、人感センサー19の人体感知時に、表示ランプ22が表示動作されるとともに、その表示動作から時間をおいて電磁バルブ20Aが開放動作されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばキッチンや洗面所のデッキ等に取り付けられて使用される水栓に係り、特に人感センサーの感知動作により吐水されるように構成された水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水栓としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。
特許文献1に記載の従来構成においては、吐水管に設けられた人感センサーが人体を感知したとき、水栓本体内に設けられた電磁バルブが開放されて、吐水管から湯や水が吐出される。また、人感センサーが人体を再び感知したとき、電磁バルブが閉鎖されて、湯や水の吐出が止められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−316360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成の水栓においては、人感センサーにより人体が感知されたとき、電磁バルブが直ちに開放されて吐水されるようになっている。このため、キッチンにおける食器の洗浄作業等において、誤って人体の一部が人感センサーの感知領域に進入した場合、不意に吐水管から湯や水が吐出されて、衣服を濡らすおそれがあった。また、水栓が高温の吐出状態に調節設定されている場合には、不意に吐水管から高温の湯が吐出されて、火傷をするおそれもあった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、人感センサーの感知状態を吐水前に認識することができて、不意の吐水により衣服を濡らしたり、火傷をしたりするおそれを防止することができる水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、人感センサーと、その人感センサーによって開閉されるバルブとを備え、人感センサーが人体を感知することにより、前記バルブが開放されて吐水されるように制御する制御手段を設けた水栓において、表示部を設け、前記制御手段は、人感センサーが人体を感知したとき、前記表示部を表示動作させるとともに、その表示動作から時間をおいて前記バルブを開放動作させることを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の水栓においては、人感センサーにより人体が感知されると、表示部が表示動作される。そして、その表示動作から時間をおいてバルブが開放動作される。このため、人感センサーの感知状態を、表示部の表示動作によって吐水前に認識することができる。よって、誤って人体の一部が人感センサーの感知領域に進入した場合でも、不意の吐水により衣服を濡らしたり、火傷をしたりするおそれを防止することができる。
【0008】
前記の構成において、前記人感センサーは第1センサー及び第2センサーにより構成され、前記制御手段は、第1センサーのオンによりバルブを開放するとともに、第1センサーのオフによりバルブを閉鎖し、第2センサーのオンによりバルブを開放するとともに、第2センサーの再度のオンによりバルブを閉鎖するように構成するとよい。
【0009】
前記の構成において、前記第1センサー及び第2センサーにそれぞれ対応したバルブを有する並列水路を設け、第1センサーのバルブの水路には吐水温度が所定温度を越えるときに閉鎖される常開型の補助バルブを接続するとよい。
【0010】
前記の構成において、前記人感センサーを水栓先端部の下面側に設け、吐水流路の一部には温度センサーを設け、前記制御手段は温度センサーが所定値以上の吐水温度を感知したとき、バルブを閉鎖させるように構成するとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、人感センサーの感知状態を吐水前に認識することができて、不意の吐水により衣服を濡らしたり、火傷をしたりするおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の水栓を示す正面図。
【図2】図1の水栓の平面図。
【図3】同水栓の側面図。
【図4】同水栓の制御構成を示す構成図。
【図5】第2実施形態の水栓の制御構成を示す構成図。
【図6】第3実施形態の水栓の制御構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した水栓の第1実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
図1〜図4に示すように、キッチンにおける流し台等のデッキ11には、水栓本体12が固定されている。水栓本体12の上部にはほぼ逆U字状に形成された筒状の吐水管13が水平に首振り回動可能に支持され、その吐水管13の先端部には吐水口13aが設けられている。水栓本体12の内部には、給湯路14からの湯と給水路15からの水とをそれぞれ単独で、あるいは給湯路14からの湯と給水路15からの水とを混合して、その湯,水あるいは混合水を吐水管13の吐水口13aに連通する吐水流路16に吐出させるための湯水混合バルブ17が配設されている。水栓本体12の側部には、湯水混合バルブ17の動作を調節するための操作レバー18が取り付けられている。そして、この操作レバー18が図2及び図3に示す矢印P1方向に回動操作されたときには、湯水混合バルブ17による湯と水との混合度合が調節される。また、操作レバー18が図1及び図2に示す矢印P2方向に傾動操作されたときには、湯水混合バルブ17による湯,水あるいは混合水の吐出量が調節される。
【0014】
図1〜図4に示すように、前記吐水管13の先端部には、人感センサー19が設けられている。この人感センサー19は、吐水管13の先端部の下面に配設された第1センサー19Aと、吐水管13の先端部の左右両側に配設された一対の第2センサー19Bとより構成されている。第1センサー19A及び第2センサー19Bは、例えば赤外線等を利用した光電反射型センサーから構成され、それぞれ発光器及び受光器を備えている。そして、図1〜図3に示すように、第1センサー19Aから下方に指向する感知領域19a、または第2センサー19Bから両側方に指向する感知領域19bに手をかざしたとき、それらのセンサー19A,19Bがオンされて、後述する制御装置21に人体の感知信号が出力される。
【0015】
図4に示すように、前記水栓本体12内において吐水流路16には、並列水路16a,16bが設けられている。吐水流路16の並列水路16a,16bには、第1センサー19A及び第2センサー19Bにそれぞれ対応する第1電磁バルブ20A及び第2電磁バルブ20Bが接続されている。水栓本体12内あるいは水栓本体12外の所定位置には、電磁バルブ20A,20Bの開閉動作等を制御するための制御手段としての制御装置21が配設されている。そして、この制御装置21の制御によって、第1センサー19Aのオンのときには第1電磁バルブ20Aが開放されるとともに、第1センサー19Aのオフのときには第1電磁バルブ20Aが閉鎖される。また、第2センサー19Bのオンのときには第2電磁バルブ20Bが開放されるとともに、第2センサー19Bの再度のオンのときには第2電磁バルブ20Bが閉鎖される。
【0016】
図1〜図4に示すように、前記吐水管13の先端部の上面には、表示部としての表示ランプ22が配設されている。そして、人感センサー19の第1センサー19Aがオンされたとき、制御装置21の制御によって、表示ランプ22が表示動作されるとともに、その表示動作から時間をおいて第1電磁バルブ20Aが開放動作されるようになっている。この実施形態では、第1センサー19Aのオンから0.4秒後に表示ランプ22が表示動作されるとともに、その表示動作の1秒後に第1電磁バルブ20Aが開放動作されて、吐水管13の吐水口13aから湯や水が吐出されるようになっている。
【0017】
図4に示すように、前記第1センサー19Aと対応する第1電磁バルブ20A側の並列水路16aには、吐水温度が所定温度を越えるときに閉鎖される常開型の補助バルブ23が接続されている。そして、第1センサー19Aのオンにより第1電磁バルブ20Aが開放動作された場合において、並列水路16aの吐水温度が所定温度を越えるとき、補助バルブ23が閉鎖されて、吐水管13の吐水口13aからの湯の吐出が止められるようになっている。
【0018】
次に、前記のように構成された水栓の作用を説明する。
この水栓を利用して、食器洗いや手洗い等を行う場合には、吐水管13の先端部の下面に設けられた第1センサー19Aの感知領域19aに手をかざすと、その第1センサー19Aがオンされて、制御装置21に人体の感知信号が出力される。すると、制御装置21の制御により、表示ランプ22が点灯表示されて、第1センサー19Aの感知状態が報知される。そして、この表示ランプ22の表示動作から所定時間(1秒間)をおいて、第1電磁バルブ20Aが開放動作され、吐水管13の吐水口13aから湯や水が吐出されて、食器洗いや手洗等を行うことができる。その食器洗い等の後に、第1センサー19Aの感知領域19aから手を離間させると、第1センサー19Aがオフされて、第1電磁バルブ20Aが閉鎖され、吐水口13aからの湯や水の吐出が止められる。
【0019】
このように、第1センサー19Aの人体感知時には、表示ランプ22が表示されるとともに、その表示後に時間をおいて吐水が行われるため、誤って人体の一部が第1センサー19Aの感知領域19aに進入した場合でも、不意の吐水により衣服を濡らすおそれはない。また、この第1センサー19Aの人体感知にともなう吐水時において、吐水温度が所定温度を越える場合には、補助バルブ23が閉鎖されて、吐水口13aからの湯の吐出が止められる。よって、高温の湯が吐出されることで、火傷をするおそれもない。
【0020】
一方、水栓により鍋等に湯や水を満たす場合には、吐水管13の先端部の左右両側に設けられた一対の第2センサー19Bのうちの、いずれか一方の第2センサー19Bの感知領域19bに手をかざすと、その第2センサー19Bがオンされて、制御装置21に人体の感知信号が出力される。すると、制御装置21の制御により、第2電磁バルブ20Bが開放動作され、吐水管13の吐水口13aから湯や水が吐出される。この第2センサー19Bの人体感知時には、吐水管13の吐水口13a付近に人体が位置していないため、誤って人体の一部が第2センサー19Bの感知領域19bに進入した場合でも、衣服を濡らしたり火傷をしたりするおそれはない。そして、鍋等に所定量の湯や水を満たされた後に、第2センサー19Bの感知領域19bに再度手をかざすと、第2センサー19Bが再びオンされて、第2電磁バルブ20Bが閉鎖され、吐水口13aからの湯や水の吐出が止められる。
【0021】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この水栓においては、人感センサー19により人体が感知されたとき、制御装置21の制御により、表示ランプ22が表示動作されるとともに、その表示動作から時間をおいて電磁バルブ20Aが開放動作されて、吐水されるようになっている。このため、人感センサー19の感知状態を、表示ランプ22の表示動作によって吐水前に認識することができる。よって、キッチンにおける食器の洗浄作業等において、誤って人体の一部が人感センサー19の感知領域に進入した場合でも、不意の吐水により衣服を濡らしたり、火傷をしたりするおそれを防止することができる。
【0022】
(2) この水栓においては、前記人感センサー19が第1センサー19A及び第2センサー19Bにより構成されている。そして、前記制御装置21により、第1センサー19Aのオンのときに電磁バルブ20Aが開放されるとともに、第1センサー19Aのオフのときに電磁バルブ20Aが閉鎖され、第2センサー19Bのオンのときに電磁バルブ20Bが開放されるとともに、第2センサー19Bの再度のオンのときに電磁バルブ20Bが閉鎖されるように構成されている。
【0023】
このため、手洗い等を行う場合には、第1センサー19Aに手をかざすことにより、その第1センサー19Aの感知動作の間だけ湯や水を吐出させることができる。また、鍋等に湯や水を満たす場合には、第2センサー19Bに手をかざした後に再び手をかざすまでの間、所定量の湯や水を継続して吐出させることができる。さらに、第1センサー19Aの感知動作時には、その第1センサー19Aの感知状態を、表示ランプ22の表示動作によって吐水前に認識することができて、湯や水が不意に吐出されるのを抑制することができる。
【0024】
(3) この水栓においては、前記第1センサー19A及び第2センサー19Bにそれぞれ対応した電磁バルブ20A,20Bを有する並列水路16a,16bが設けられ、第1センサー19Aの電磁バルブ20Aの水路16aには吐水温度が所定温度を越えるときに閉鎖される常開型の補助バルブ23が接続されている。このため、第1センサー19Aの感知動作時に、その第1センサー19Aの感知状態を、表示ランプ22の表示動作によって吐水前に認識することができる。それとともに、吐水温度が所定温度を越えるとき、補助バルブ23が閉鎖されて湯の吐出が止められるため、高温の湯が不意に吐出されることにより、火傷をするおそれを効果的に防止することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した水栓の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
さて、この第2実施形態においては、図5に示すように、人感センサー19の第1センサー19Aのみが吐水管13の先端部の下面に設けられている。そして、この第1センサー19Aと対応する第1電磁バルブ20Aが、水栓本体12内の吐水流路16に接続されている。吐水流路16の一部には、吐水温度を感知するための温度センサー25が設けられている。そして、第1センサー19Aの人体感知にともなって、表示ランプ22が表示動作された後に、時間をおいて第1電磁バルブ20Aが開放動作された際に、温度センサー25により吐水温度が感知される。この温度センサー25によって感知された吐水温度が所定値以上のときには、制御装置21の制御により、第1電磁バルブ20Aが閉鎖されて、吐水口13aからの湯の吐出が止められるようになっている。
【0027】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) この水栓においては、吐水流路16の吐水温度が所定温度を越えるとき、吐水流路16の一部に設けられた温度センサー25の感知動作により電磁バルブ20Aが閉鎖されて、湯の吐出が止められるようになっている。このため、高温の湯が不意に吐出されることにより、火傷をするおそれを効果的に防止することができる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した水栓の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0029】
さて、この第3実施形態においては、図6に示すように、吐水管13の先端部に、第1実施形態と同様な第1センサー19A及び第2センサー19Bよりなる人感センサー19が設けられている。水栓本体12内の吐水流路16には、第1センサー19A及び第2センサー19Bと対応する共通の第1電磁バルブ20Aと補助バルブ23とが接続されている。そして、第1センサー19Aの人体感知時には、表示ランプ22が表示動作された後に、時間をおいて第1電磁バルブ20Aが開放動作され、第2センサー19Bの人体感知時には、表示ランプ22が表示動作されることなく、第1電磁バルブ20Aが開放動作されるようになっている。
【0030】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果とほぼと同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0031】
・ 表示部をブザー等の音声表示器により構成すること。
・ 第2センサー19Bを1箇所のみに設けること。
・ 第1センサー19Aや第2センサー19Bの設置位置を他の位置、例えば水栓本体12上に設けること。
【符号の説明】
【0032】
12…水栓本体、13…吐水管、13a…吐水口、16…吐水流路、16a,16b…並列水路、17…湯水混合バルブ、19…人感センサー、19A…第1センサー、19B…第2センサー、20A…第1電磁バルブ、20B…第2電磁バルブ、21…制御手段としての制御装置、22…表示部としての表示ランプ、23…補助バルブ、25…温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人感センサーと、その人感センサーによって開閉されるバルブとを備え、人感センサーが人体を感知することにより、前記バルブが開放されて吐水されるように制御する制御手段を設けた水栓において、
表示部を設け、前記制御手段は、人感センサーが人体を感知したとき、前記表示部を表示動作させるとともに、その表示動作から時間をおいて前記バルブを開放動作させることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記人感センサーは第1センサー及び第2センサーにより構成され、前記制御手段は、第1センサーのオンによりバルブを開放するとともに、第1センサーのオフによりバルブを閉鎖し、第2センサーのオンによりバルブを開放するとともに、第2センサーの再度のオンによりバルブを閉鎖することを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記第1センサー及び第2センサーにそれぞれ対応したバルブを有する並列水路を設け、第1センサーのバルブの水路には吐水温度が所定温度を越えるときに閉鎖される常開型の補助バルブを接続したことを特徴とする請求項2に記載の水栓。
【請求項4】
前記人感センサーを水栓先端部の下面側に設け、吐水流路の一部には温度センサーを設け、前記制御手段は温度センサーが所定値以上の吐水温度を感知したとき、バルブを閉鎖させることを特徴とする請求項1に記載の水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136828(P2012−136828A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287872(P2010−287872)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】