説明

水流発生装置

【課題】 養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させること。
【解決手段】 本体部20,21の開口部42の下部に位置するポンプ室40は、回転軸34に取付けられた羽根車35の回転により、本体部20,21の開口部42から吸い込まれた水を吐出する構造であるから、構造が簡単で、しかも、廉価に製造できる。また、ポンプ室40が本体部20,21の上部にある開口部42から養魚場の水を吸い込み、それをポンプ室40の吐出部43から噴き出すものであるから、養魚場の下に沈殿している土砂等を装置内部に吸い込まない水流とすることができるから養殖されている魚が、土砂等を飲み込むことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、群をなし流れに逆らって泳ぐ性質を備える鮎や鱒或いは鯉等の養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させる水流発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
群をなし流れに逆らって泳ぐ性質を備える鮎や鱒或いは鯉等の養殖魚を養殖する養魚場は、その平面形状が矩形状、丸形形状或いはその他の形状に作られており、養殖魚を自由勝手に泳がせて養殖するため、自然魚と略同等の肉質に養殖されることが難しい。
【0003】
一般に、この養魚場では養殖魚を充分運動させることが難しく、充分運動させないまま養殖された養殖魚は、病気になりやすく、かつ、ストレスが溜まりやすく、黒ずんだ状態になる。また、天然の魚類に比較すると余分な体脂肪が付いて、所謂、肥満した魚類となって肉質が良好のものとはならず、市場価格も安くなる等の問題点がある。
【0004】
このため、養殖魚を養殖するのに、養殖魚が水流に逆らって泳ぐ性質を利用した養魚場が作られている。また、養殖魚をストレスの少ない状態にするために、右曲がりと左曲がりの流路部分が連設され、自然の川に酷似する環境下にした周回流路を有するとともに、周回流路には流路内の水流を一定方向にする周回流形成手段を設置した養殖魚のストレス蓄積防止技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−45083号公報(第2欄16行―27行、図1)
【0005】
また、海や河川、さらには湖沼等の水が澱んだ水域の溶存酸素量の不足を補う目的で、中央部に水中に向かって開口した開口部を有する船体と、上昇位置と下降位置との間で開口部を通って位置変更可能に船体に装着された水流発生手段と、この水流発生手段を上昇位置と下降位置との間で位置変更させる位置変更手段とを設け、水流発生手段は水平方向に向けて水流を発生させる水流機を有し、位置変更手段は、開口部に臨んで基端側が船体にリンクされ、かつ、先端側が水流発生手段にリンクされた平行四辺形型リンク構造と、この平行四辺形型リンク構造にリンク運動を行わせる駆動手段とを有した水流発生装置が提案されている。そして、水流発生手段を上昇位置に設定した船体を所定の水域に浮かべて目的の場所まで曳航または自走させ、その場所で位置変更手段の鼓動手段によって水流発生手段を下降位置に位置変更し、この状態で水流機を駆動することにより、水流発生手段が周りの水を吸い込んでそれを吐出し、これによって澱んだ水中に水流を発生させ、溶存酸素量を増加させる水流発生装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開平10−226391号公報(第7欄47行―第8欄15行、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1は、養殖魚が水流に逆らって泳ぐ性質を利用して、養魚場の一定方向に水流を発生させ、養殖魚をストレスの少ない状態で養殖する方法並びにその養魚場についての技術を開示したものであって、養魚場の流路に水流を発生させる水流発生装置についての具体的提案はない。養殖を前提とする養魚場では、単位体積当たりの魚の密度が高く、流路を形成すると効率のよい養殖ができなくなり、前記特許文献1は実用的でなかった。
【0007】
また、前記特許文献2は、海や河川、さらには湖沼等の水が澱んだ水域の水中で水流機を駆動することにより、水流発生手段が周りの水を吸い込んでそれを吐出し、これによって澱んだ水中に水流を発生させ、溶存酸素量を増加させる技術を開示したものである。しかし、ここで開示された技術は、あくまで溶存酸素量の増加を狙ったものであり、群をなし流れに逆らって泳ぐ鮎や鱒或いは鯉等の養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させる水流発生装置とは、水流を発生させる目的を異にする技術思想を開示したものである。更に、ここに開示された水流発生装置は、装置自体が大がかりなものである。
【0008】
なお、溶存酸素量の増加を狙って水を撹拌する技術については、例えば、特開平8−290193号公報等多数の開示がある。しかし、いずれも養殖魚を養殖する養魚場の貯水に水流を発生させる水流発生装置についての具体的構成を開示したものは見あたらない。
【0009】
この発明は、これらの実情に鑑みてなされたもので、養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させる簡単な構造で、安価、かつ、水中の土砂等を装置内部に吸い込み難い水流発生装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明の水流発生装置は、全体が略中空柱状体で構成されるとともに、その周囲に前記養魚場の水を吸い込む開口部が形成された本体部と、前記本体部の中空内部に回転可能に配置され、前記(該は直前の単語を意味する)本体部の長手方向に延在する回転軸と、前記本体部の上方部に設置され、前記回転軸を回転駆動する駆動装置と、前記本体部の開口部の下部に位置し、前記回転軸に取付けられた羽根車を収容し、前記羽根車の回転により、前記本体部の開口部から吸い込まれた水を吐出する吐出部を有するポンプ室を具備するものである。
【0011】
ここで、上記本体部は、通常、全体が略円筒状の中空柱状体で構成されるが、主に、水の通路となるものであるから、全体が略円筒状に限定されるものではなく、略四角筒状及び略多角筒状とすることができる。また、その開口部は、円形またはその長さ方向に長い長円形、四角形状、多角形状等の形状とすることができる。
【0012】
また、上記回転軸は、前記本体部の中空内部に回転可能に配置され、前記本体部の長手方向に延在するものであるが、本発明を実施する場合には、駆動装置とポンプ室の羽根車とが連繋されるものであればよい。
【0013】
そして、上記駆動装置は、本体部の上方部に設置され、前記回転軸を回転駆動するものであり、電動機を直結するものであっても、または電動機の回転を減速機構を介して前記回転軸に接続してもよい。いずれにせよ、駆動装置は、回転軸の駆動源となるものを有しておればよい。
【0014】
更に、上記ポンプ室は、前記本体部の下方部に設けられるもので、前記回転軸に取付けられた羽根車を収納される室を構成するものであればよい。
【0015】
更にまた、上記吐出部は、前記本体部の開口部の下部に位置し、前記羽根車の回転により、前記本体部の開口部から吸い込まれた水を吐出する部位で、ポンプ室の一部を構成するものである。
【0016】
また、請求項2の発明の水流発生装置は、請求項1の発明に、更に、酸素を含む気体をポンプ室に送給する送給管を具備するものである。
【0017】
この送給管は、外部から空気をポンプで送給してもよいし、送給管のみを配設し、羽根車の形成する負圧により、酸素を含む気体を吸引するようにしてもよい。これによって水位の変化によって空気が引き込まれなくなり、水中の酸素濃度が減衰するという現象が回避される。
【0018】
そして、請求項3の発明の水流発生装置は、請求項1の発明に、更に、酸素を含む気体にオゾン混合する混合気体を生成する混合気体生成装置と、前記混合気体生成装置で生成された混合気体をポンプ室に送給する送給管とを具備するものである。
この送給管は、外部から酸素及びオゾン混合した混合気体を空気をポンプで送給してもよいし、送給管のみを配設し、羽根車の形成する負圧により、酸素を含む気体を吸引するようにしてもよい。これによって水位の変化によって空気が引き込まれなくなり、水中の酸素濃度が減衰するという現象が回避される。
【0019】
更にまた、請求項4の発明の水流発生装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の開口部を、本体部の長さ方向に延長する溝状開口部としたものである。
【0020】
この溝状開口部は、水中の上部の層から水を取り入れることができ、かつ、溝状開口部の一部が空気中から空気を吸い込み易くなり、ポンプ室から吸い込まれた水と空気を吐き出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、本体部の開口部の下部に位置するポンプ室は、回転軸に取付けられた羽根車の回転により、本体部の開口部から吸い込まれた水を吐出する構造であるから、構造が簡単で、しかも、廉価に製造できる。また、ポンプ室が本体部の上部にある開口部から養魚場の水を吸い込み、それをポンプ室の吐出部から噴き出すものであるから、養魚場の下に沈殿している土砂等を装置内部に吸い込まない水流とすることができるから養殖されている魚が、土砂等を飲み込むことがない。
【0022】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えて、前記ポンプ室に酸素を含む気体を送給する送給管が配設されているから、水位の変化に対しても、養魚場の水に溶け込んでいる酸素濃度を高くすることができる。この酸素の供給は水質を浄化し、養殖魚の育成を良好にすることができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、請求項1の効果に加えて、酸素を含む気体にオゾンを混合した混合気体を生成し、その生成された混合気体を送給し、ポンプ室の吐出部からそれを水と共に噴き出すものであるから、病気の少ない養殖魚の養殖を可能にする。また、水位の変化に対しても、養魚場の水に溶け込んでいる酸素濃度を高くすることができる。この酸素の供給は水質を浄化し、養殖魚の育成を良好にすることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の水流発生装置の本体部の開口部は、前記本体部の長さ方向に延長する溝状開口部としたものであるから、水位変動にも対応でき、かつ、空気を吸い込ませることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる水流発生装置について好適な実施の形態を説明する。
【0026】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の水流発生装置を矩形状の養魚場において使用している状態を平面的に示した概念図である。図2は本実施の形態1の水流発生装置で、便宜上、一部を破断して図示した正面図である。また、図3は本発明の実施の形態1の水流発生装置に使用されている羽根車の正面図であり、図4は図3のX−X線断面図である。図5は本発明の実施の形態1の水流発生装置に使用しているポンプ室の水平断面図である。
【0027】
図1において、養魚場10には所定の深さの水11が入っており、養魚場10の所望の位置に、本実施の形態1に係る水流発生装置12が、壁面に近いところに、上方部分を水面から突出するように配置されている。
【0028】
水流発生装置12は、交流電源13から直接またはインバータ装置14を介して電力が供給されるように接続されており、この電力を受けて後述するように、養魚場10の水11に、例えば、一点鎖線で示す水流15を発生させている。なお、養殖魚16は、この水流15に逆らって泳ぐ鮎や鱒或いは鯉等を示している。
【0029】
図1においては、説明の便宜上、インバータ装置14を水流発生装置12と別体として図示しているが、実際にはインバータ装置14は水流発生装置12の駆動源である電動機内に一体構成されており、所謂、インバータ電動機として機能するものである。なお、水流発生装置12が養魚場10の水11に水流15を発生させるメカニズムについては後述する。
【0030】
また、図1は、水流発生装置12に交流電源13からインバータ装置14を介して電力を供給する方法について図示しているが、交流電源13に変わって太陽光発電を行うソーラー発電機等から電力を供給する方法を採用してもよい。
【0031】
図2において、水流発生装置12には、中空円柱体からなる下部胴体部20と、この下部胴体部20の上部に搭載され、下部胴体部20と略同一直径の中空円柱体からなる上部胴体部21と、水流発生装置12の駆動源である電動機22が装備されている。
【0032】
下部胴体部20と上部胴体部21とは、下部胴体部20の上部に形成される下部フランジ23と、上部胴体部21の下部に形成される上部フランジ部24を、ねじなどの締付具(図示せず)で締め付けることにより一体的に構成されている。
【0033】
この下部胴体部20と上部胴体部21とを一体的にすることにより、水流発生装置12の本体部25が構成されている。なお、本実施の形態では、下部胴体部20と上部胴体部21とで本体部25が構成される事例を示したが、本発明を実施する場合には、一体で構成してもよい。
【0034】
電動機22は、取付座26を介して上部胴体部21に取付けられており、電動機22の端子箱27の端子(図示せず)を介して交流電源13に接続されている。また、電動機22の出力軸28は歯車ケース29内に突出しており、出力軸28の突出端には、出力側ベルトプーリ30が装着されている。この出力側ベルトプーリ30は、負荷側ベルトプーリ32とベルト31によって連結されている。出力側ベルトプーリ30は負荷側ベルトプーリ32と連結されるように構成され、これら出力側ベルトプーリ30、ベルト31、及び負荷側ベルトプーリ32は、ケース29内に収納されて、電動機22とともに水流発生装置12の駆動装置33を構成する。
【0035】
回転軸34は金属棒からなり、下部胴体部20と上部胴体部21からなる本体部25の中空内部を長手方向に延在するように配置されている。回転軸34の上部には負荷側ベルトプーリ32が装着され、下部には羽根車35が装着されている。
【0036】
この羽根車35は、図3の平面図と、図3のX―X線断面図である図4に示すような構成となっている。
【0037】
即ち、羽根車35は、回転軸34に、例えば、ボルト36で取付けられる軸受部37と、この軸受部37と一体的に形成される撹拌翼38、及びこの撹拌翼38と一体的に形成される複数個の羽根板39から構成されている。また、羽根車35は、アルミニュウム等の非金属、金属、或いは樹脂等により形成されるとともに、下部胴体部20の下端部に形成されるポンプ室40に配置されている。この羽根板39は正面から見た長方形、または上部の幅が短くなった台形に形成されている。これらの羽板39の形状は、放出水量及び吸引力、回転数等によって決定される。即ち、羽根車35は、放出水量及び吸引力、回転数等によって、その形状、型式が任意に決定されるものである。
【0038】
軸受41は、上部胴体部21内に取付けられ、回転軸34を回転可能に支承するベアリングを示している。また、円形開口部42は、下部胴体部20に形成された開口で、後述するように、羽根車35の回転によって生じる養魚場10の水11の吸引口となるものである。円形開口部42は、下部胴体部20のポンプ室40よりも上部の位置に形成されている。また、あまり下方位置に形成すると下部胴体部20等の内部に土砂等を吸い込むことになるので、水面より若干下方位置に形成することが好ましい。また、この円形開口部42は、所望の直径を有し、下部胴体部20の周囲に所定間隔で複数形成されており、円形開口部42の相互のポンプ室40からの位置は、略同一高さまたは機械的強度及び水位の変動を考慮してその付近の位置に形成されている。
【0039】
吐出部43は、先端部が養魚場10に開口し、他端部がポンプ室40から噴出する水の吐出口であって、図5に羽根車35とともにその平面構造を示している。この吐出部43は、下部胴体部20に形成される円形開口部42から吸い込んだ水11を、養魚場10の底面と略平行方向に吐出するものであって、図2に矢印Wで示すように水流を形成する。また、基台44は、水流発生装置12の最下部に取付け部材であって、水流発生装置12が養魚場10で転倒しないように安定して設置できるように設けられるものである。したがって、設置の安定性及び自重が重いものである。
【0040】
気体生成装置45は、生成された酸素を含む気体、例えば、空気は、気体供給管46によりポンプ室40に送給される。気体供給管46は、締め付け部材47によりスペーサー48を介して下部胴体部20に締め付けられている。また、気体生成装置45で生成された酸素を含む気体は、気体供給管46の所望箇所に設けられたバルブ49により、送給、遮断或いは送給量の調節が行われる。
【0041】
なお、前記において、電動機22の出力軸28の回転力を回転軸34に伝達するのに、ケース29内に収納された出力側ベルトプーリ30、負荷側ベルトプーリ32、及びベルト31で伝達する装置について図示説明したが、電動機22の出力軸28の回転駆動力を回転軸34に伝達すればよく、例えば、出力側ベルトプーリ30、ベルト31、負荷側ベルトプーリ32を歯車に変えて伝達してもよく、或いは電動機22の出力軸28と回転軸34とを直結して伝達してもよい。また、周知のギャード電動機を用いる等、諸種の手段が使用可能である。ベルトプーリ30、ベルト31、負荷側ベルトプーリ32で伝達する方式、更にはギャード電動機で伝達する方式を採用する場合は、歯車の組み合わせ、或いはベルトとプーリーの組み合わせ、更にはギャード電動機のギャ比により、回転軸34の回転力、或いは回転速度が任意に選べる。
【0042】
本実施の形態1の水流発生装置は、このように構成されており、次のように動作する。
【0043】
先ず、水流発生装置12を養魚場10の所望の位置に設置すると、水流発生装置12の下部胴体部20に形成された円形開口部42から水11が下部胴体部20内の水面位置50まで入り込み、ポンプ室40が水11で充満される。次に、交流電源13から電動機22に電力を供給すると、電動機22は回転駆動され、この回転駆動力は、ケース29内に収納された出力側ベルトプーリ30からベルト31を介して負荷側ベルトプーリ32に回転力を伝達して回転軸34を回転させる。回転軸34は軸受41に支承されて回転し、ポンプ室40に配置されている羽根車35を回転させる。
【0044】
羽根車35が回転することにより、水流発生装置12の下部胴体部20に形成された円形開口42から水11が吸い込まれ、この吸い込まれた水11が遠心力を付与されて吐出部43から吐出される。この吐出された水11は、図1に示すように養魚場10の水11に水流15を形成することになり、この形成された水流15に逆らって鮎や鱒或いは鯉等の養殖魚16が群れをなして泳ぐことになる。
【0045】
また、気体生成装置45で生成される酸素を含む気体、例えば、バルブ49を開放することにより、空気または酸素が気体供給管46を経てポンプ室40に送給され、養魚場10の水11に酸素を供給する。この酸素の供給は水質を浄化し、養殖魚16の育成に良好な効果をもたらす。
このとき、空気または酸素が気体供給管46を経てポンプ室40への送給は、外部の圧力ポンプによって送給してもよいし、或いは、外部の圧力ポンプに頼ることなく、ポンプ室40の吸引力を使用して送給してもよい。なお、養魚場10の水位と部胴体部20に形成された円形開口42との距離が近い場合には、自然に空気を巻き込み養魚場10の水11に酸素を供給することができる。特に、気体供給管46を用いることにより、養魚場10の水位と部胴体部20に形成された円形開口42との距離に無関係に、ポンプ室40に空気を供給することができる。
【0046】
このように、本実施の形態1は、養殖魚を養殖する養魚場10の水11に水流を発生させる水流発生装置において、全体が略中空柱状体でなり、その周囲に養魚場10の水11を吸い込む円形開口42のような開口部が形成された下部胴体部20と上部胴体部21からなる本体部25と、本体部25の中空内部に回転可能に配置され、本体部25の長手方向に延在する回転軸34と、本体部25の上方部に設置され、回転軸34を回転駆動する駆動装置33と、本体部25の円形開口42のような開口部の下部に位置し、回転軸34に取付けられた羽根車35を収容し、羽根車35の回転により、本体部25の円形開口42のような開口部から吸い込まれた水11を吐出する吐出部43を有するポンプ室40とを備えるものである。
【0047】
したがって、養魚場10の水11に水流15を形成する水流発生装置12が、電動機22に回転駆動され、先端部に羽根車35を取付けた回転軸34、円形開口部42を有する本体部25及び羽根車35によってポンプ室40で発生する圧力水を吐出する吐出部43で構成でき、簡単な構造の水流発生装置12が得られることになる。
【0048】
また、養魚場10に水流15を形成するのに、養魚場10の水面50に近い水11を円形開口部42からなる開口部から吸い込み、底に近く、かつ、底の面と略平行方向に水11を吐出部43から吐出するようにしたので、水流発生装置12の内部に土砂等を吸い込むことなく、底面近くに水流が形成できる。更に、養殖魚に充分運動させることができるので、ストレスを与えることなく、余分な体脂肪が除去でき、肉質の良好な養殖魚を得ることができる。
【0049】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0050】
図6は本実施の形態2の水流発生装置で、便宜上、一部を破断して図示した正面図である。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一記号または同一符号は、上記実施の形態1と同一または相当する構成部分を示すものであるから、ここでは、重複する説明を省略する。
【0051】
図6において、混合気体生成装置60は、この混合気体生成装置60は、オゾン生成装置61を具備しており、オゾン生成装置61で生成したオゾンと、酸素を含む気体の混合体を生成するものである。混合気体生成装置60で生成される酸素を含む気体とオゾンの混合体は、実施の形態1と同様に、気体供給管46を経てポンプ室40に送給される。
【0052】
周知のように、オゾンには殺菌作用があり、かつ、水中で酸素と変化するから、実施の形態2による混合気体生成装置60により生成した酸素を含む気体とオゾンとの混合体をポンプ室40に送給すれば、水流発生装置12の羽根車35により形成される水流にオゾンが溶け込み、養殖魚への病気の発生を未然に防ぐことができる。即ち、実施の形態2によれば、実施の形態1の効果を得るとともに、病気の少ない養殖魚の養殖を可能にする効果を発揮する。
【0053】
図6において、下部胴体部20の周囲に水11で埋没する箇所に形成される溝状開口部70は、水位の深さ方向、即ち、下部胴体部20の高さ方向に長い開口形状を有するものである。
【0054】
前述のように、水11の吸入口となる開口部を、下部胴体部20のあまり上部位置に形成すると水面が低下した場合に水11を吸い込まなくなり、また、あまり下方位置に形成すると下部胴体部20等の内部に土砂等を吸い込むことになるので、水11に埋没する位置で、水面より若干下方位置に形成することが好ましい。
【0055】
この実施の形態2のように、水11の吸入口となる開口部を深さ方向に長い開口形状を有する溝状開口部70とすることにより、水流発生装置12を設置した養魚場の水位が低下しても、溝状開口部70から水11を吸い込むことができ、ポンプ室40を経て吐出部43から外部に吐出させることができる。即ち、水位変動にも対応できる水流発生装置12が得られる。
【0056】
また、制限板80は、溝状開口部70の水11の取入口、即ち、開口部を制限するもので、養魚場10の水11の深さ、或いは浮遊物の存在等によって設けるものであり、制限板80は、ボルト81によって本体部25に取付け、任意の水11の吸入口となる溝状開口部70からなる開口部の面積に設定することができる。
【0057】
前記各実施の形態においては、水流発生装置12の本体部25を中空円柱体から構成したものについて図示説明したが、この発明の主旨は、中空内部に回転軸32を回転可能に配置できる形状であれば中空角柱体等でもよく、所謂、中空柱状体であればよいことは言うまでもない。
【0058】
また、前記各実施の形態において、水流発生装置12の本体部25に、円形開口部42或いは溝状開口部70を、その周囲に所定間隔で複数形成したものについて図示説明したが、本体部25に水11を導入出来ればよく、従って、複数形成する必要はなく、1個形成するのみでもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、この発明に係る水流発生装置によれば、流れに逆らって泳ぐ性質を備える鮎や鱒或いは鯉等の養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させる手段として、簡単な構造で、安価で、かつ、水中の土砂等を装置内部に吸い込まない水流発生装置を得ることができ、産業上の利用可能性は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明の実施の形態1の水流発生装置を矩形状の養魚場において使用している状態を平面的に示した概念図である。
【図2】図2は本実施の形態1の水流発生装置で、一部を破断して図示した正面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1の水流発生装置に使用されている羽根車の正面図である。
【図4】図4は図3のX−X線断面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1の水流発生装置に使用しているポンプ室の水平断面図である。
【図6】図6は本実施の形態2の水流発生装置で、一部を破断して図示した正面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 養魚場
11 水
12 水流発生装置
25 本体部
33 駆動装置
34 回転軸
35 羽根車
40 ポンプ室
42 円形開口部
43 吐出部
45 気体生成装置
46 気体供給管
60 混合気体生成装置
61 オゾン生成装置
70 溝状開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖魚を養殖する養魚場の水に水流を発生させる水流発生装置において、
全体が略中空柱状体でなり、その周囲に前記養魚場の水を吸い込む開口部が形成された本体部と、
前記本体部の中空内部に回転可能に配置され、前記本体部の長手方向に延在する回転軸と、
前記本体部の上方部に設置され、前記回転軸を回転駆動する駆動装置と、
前記本体部の開口部の下部に位置し、前記回転軸に取付けられた羽根車を収容し、前記羽根車の回転により、前記本体部の開口部から吸い込まれた水を吐出する吐出部を有するポンプ室と
を備えたことを特徴とする水流発生装置。
【請求項2】
前記ポンプ室には、酸素を含む気体を送給する送給管が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の水流発生装置。
【請求項3】
更に、酸素を含む気体にオゾン混合する混合気体を生成する混合気体生成装置と、前記混合気体生成装置で生成された混合気体を送給する送給管を具備することを特徴とする請求項1に記載の水流発生装置。
【請求項4】
前記本体部の開口部は、前記本体部の長さ方向に延長する溝状開口部としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の水流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25729(P2006−25729A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211386(P2004−211386)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(500177846)
【Fターム(参考)】