説明

水溶性ウレタン変性セルロース誘導体

【課題】 本発明は、水に溶解または容易に分散し、かつ水を除去することによりフィルム形成能を有するセルロース誘導体を得ることができる水溶性ウレタン変性セルロース誘導体を提供することを目的とする。
【解決手段】 構成グルコース単位あたり平均0.4〜2.6個の水酸基を有するセルロース誘導体(A)と、数平均分子量が500〜10,000である両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)を、(A)/(B)の重量比が0.3〜3.5で反応させて得られることを特徴とする水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C);これを含むことを特徴とする化粧料、皮膚外用剤および 医薬部外品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性ウレタン変性セルロース誘導体に関する。より詳細には、水に溶解または容易に分散し、かつフィルム形成能に優れた水溶性ウレタン変性セルロース誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
無置換基のセルロース自体は、分子内のグルコース環単位に存在する3個の水酸基が分子内や分子間で水素結合をすることにより水や一般的な有機溶媒への溶解性が乏しくなっている。このため、水への溶解性不足のため、利用上大きな支障となっていた。
そこで、水への溶解性を付与する目的で、セルロースに様々な置換基を導入した誘導体化が行われており、多くの工業用途で使用されている。
水溶性セルロース材料としては、メチルセルロースやカルボキシメチルセルロースなどのエーテル系セルロース誘導体が挙げられるが、フィルム形成能は乏しい。
一方、フィルム形成能を有するセルロース材料としては酢酸セルロースなどに代表されるエステル系セルロース誘導体が挙げられるが、難水溶性であるため、塩化メチレンなどの有機溶媒に溶解させ、溶剤を除去することでフィルムを形成させる手法をとらなければならない(特許文献1)。そのため、人体や環境に対して悪影響を及ぼすため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−278324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、水に溶解または容易に分散し、かつ水を除去することによりフィルム形成能を有するセルロース誘導体を得ることができる水溶性ウレタン変性セルロース誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロース誘導体と両末端ジイソシアネートプレポリマーの反応物が、水に溶解し、かつフィルム形成能を有することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、構成グルコース単位あたり平均0.4〜2.6個の水酸基を有するセルロース誘導体(A)と、数平均分子量が500〜10,000である両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)を、(A)/(B)の重量比が0.3〜3.5で反応させて得られることを特徴とする水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C);これを含むことを特徴とする化粧料、皮膚外用剤および医薬部外品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)は、水溶液または水分散液の状態から水を除去することにより、フィルム形成能を有する水溶性材料である。この水溶性ウレタン変性セルロース誘導体を含有した水溶液は、人体への安全性が高く、柔軟な皮膜を形成するため使用感がよい。そのため、化粧品、皮膚外用剤、医薬部外品等に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)は、特定の水酸基置換度のセルロース誘導体(A)と特定の数平均分子量の両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)とを(A)/(B)が0.3〜3.5(重量比)で反応させて得られることを特徴とする。
すなわち、セルロース誘導体(A)は、構成グルコース単位あたり平均0.4〜2.6個の水酸基を有するセルロース誘導体(A)と、数平均分子量が500〜10,000である両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)を、(A)/(B)の重量比が0.3〜3.5で反応させて得られる。
【0008】
本発明のセルロース誘導体(A)は、セルロースを出発原料とし、この構成グルコース単位あたり3個存在する水酸基の一部を変性することで得られ、0.4〜2.6個の水酸基が構成グルコース単位あたりに存在する。
構成グルコース単位あたりに存在する水酸基の数は0.6〜2.5個が好ましく、この範囲にすることにより、両末端イソシアネートプレポリマーと反応させて得られたウレタン変性セルロース誘導体(C)は水への溶解性が良好となる。
【0009】
本発明のセルロースの誘導体としては、アシル化セルロース(酢酸セルロースおよびプロピオン酸セルロースなど)、アルキルエーテル化セルロース(メチルセルロースおよびエチルセルロースなど)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルセルロースなど)およびカチオン化セルロースなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは、反応性の観点からカルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースであり、特に好ましいのはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0010】
本発明に用いられる両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)は、ジイソシアネート化合物(D)とポリオール化合物(E)とをモル比で通常(2.2〜1.8):1.0で反応させて得られる、両末端がイソシアネート基であるプレポリマーである。また、ゲル化しない程度であれば3官能イソシアネートプレポリマーを一部併用してもよい。
【0011】
ジイソシアネート化合物(D)としては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解し又は液状を示すものであれば特に制限されずに適用できる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらのなかでもTDIやMDIが好ましい。
【0012】
上記のジイソシアネート化合物と反応させて両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)を製造する際に使用するポリオール化合物(E)としては、高分子量ポリオールたとえばポリエーテルポリオール(E1)、ポリエステルポリオール(E2)が挙げられ、これらは単独または2種以上混合してもよい。
【0013】
ポリエーテルポリオール(E1)としては、低分子量ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールなどの二官能ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シュークローズなどの三官能以上のポリオールなど)のアルキレンオキシド(炭素数2〜4のアルキレンオキシドたとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物、アルキレンオキシドの開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)が挙げられる。
【0014】
ポリエステルポリオール(E2)としては、ポリカルボン酸(脂肪族ポリカルボン酸たとえばアジピン酸、マレイン酸、二量化リノレイン酸、芳香族ポリカルボン酸たとえばフタル酸など)とポリオール(上述の低分子ポリオールまたはポリエーテルポリオール)との縮合により得られるポリエステルポリオール、ラクトンポリエステル(ポリカプロラクトンポリオールなど)などが挙げられる。
【0015】
ポリオール化合物(E)としては、フィルムの柔軟性の観点からポリエーテルポリオールが好ましく、アルキレンオキシドの開環重合物が更に好ましい。数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜5,000である。ポリオールの数平均分子量が上記の範囲内にある場合、形成したフィルム柔軟性が良好となるため剥離しやすくなり好ましい。
また、ポリオールの平均官能基数は通常2.0〜4.0、好ましくは2.1〜3.0である。ポリオールの官能基数が2.0未満である場合ジイソシアネート化合物と反応させて得られたプレポリマーが両末端イソシアネートプレポリマーとならず、セルロース誘導体と反応して得られたウレタン変性セルロース誘導体で作成したフィルムの柔軟性が乏しく好ましくなく、官能基数が4.0を超える場合、セルロース誘導体と反応して得られたウレタン変性セルロース誘導体で作成したフィルムの水への溶解性が乏しくなるため、好ましくない。
【0016】
前記両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)の製造法については、とくに限定はないが、その一例として、ジイソシアネート化合物(D)とポリオール化合物(E)とを、たとえば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、必要により鎖伸長剤および触媒の存在下、反応させる方法などがあげられる。
反応温度は、60〜150℃、特に65〜130℃で、30〜180分、特に40〜120分の条件下で反応させることが好ましい。
【0017】
ポリオール成分の一部として、前記のポリオール化合物(E)以外に併用できる鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス−β−ヒドロキシエトキシベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、N−フェニルジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミンなど、分子量が400未満の化合物を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、触媒としては、ウレタン化反応の触媒として公知のものでよく、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどの有機金属化合物や、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン類、が挙げられる。
【0019】
得られた両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)は、フィルム形成の観点から数平均分子量が500〜10,000であることが好ましく、1,000〜6,000であることが更に好ましい。数平均分子量が500未満である場合は、セルロース誘導体と反応して得られた水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)で作成したフィルムの柔軟性が乏しいため剥離性が悪く好ましくなく、数平均分子量が10,000を超える場合は、フィルムが粘着性となるため、きれいに剥離できず好ましくない。
【0020】
ポリイソシアネート成分の一部として、前記の両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)以外に3官能以上のポリイソシアネートや3官能以上のプレポリマーを併用してもよい。
併用される3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート、ポリメリックMDI等が挙げられる。
【0021】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)は、セルロース誘導体を不活性有機溶剤に溶解もしくは分散させた後、両末端ジイソシアネートプレポリマーを添加することで反応させて得られるものである。両末端ジイソシアネートプレポリマーの添加方法は、セルロースが溶解もしくは分散した溶剤中に、一括投入しても連続添加してもよい。
【0022】
不活性有機溶媒(F)としては、アミン(F1)、アミド(F2)、スルホキシド(F3)、ケトン(F4)、もしくはその誘導体、およびこれらの不活性有機溶剤と塩を組み合わせた混合溶剤も挙げられる。
アミン(F1)の具体例としては、第三級の脂肪族アミン類(F11)[トリメチルアミン、トリエチルアミン等]等が例示される。ピリジン誘導体(F12)(例えばピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等)、アミジン類(F13)(例えば1−エチル−3−メチルイミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン)等が例示される。また、これらの塩として、アミジン塩(F14)(例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート等)が挙げられる。
【0023】
アミド(F2)の具体例としてはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、メチルエチルプロピオアミド、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶剤等が例示される。この中でジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶剤が入手しやすいことから好ましい。
【0024】
スルホキシド(F3)の具体例としてはジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジi−プロピルスルホキシド、ジn−プロピルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、メチルi−プロピルスルホキシド等を例示できるが、この中でジメチルスルホキシドが入手しやすいことから好ましい。
【0025】
ケトン(F4)の具体例としてはアセトン、2−ブタノン、3−メチル−2−ブタノン等が挙げられる。この中でアセトンが入手しやすいことから好ましい。
【0026】
本発明で、好ましい不活性有機溶剤(F)としては、ピリジン誘導体(F12)、アミジン塩(F14)、アミド(F2)、スルホキシド(F3)、さらに好ましくは、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶剤などが挙げられ、特に好ましくは、ピリジン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶剤である。
【0027】
不活性有機溶剤の使用量としては、セルロース誘導体の重量100に対して、300重量部から5,000重量部使用するのが好ましい。
不活性有機溶剤の量が5,000重量部よりも多い場合、セルロース誘導体濃度が低くなってしまい、生産性の観点から好ましくない。また、300重量部よりも少ない場合、系中の粘度が上昇するため、生産性の観点から好ましくない。
【0028】
本発明のウレタン化反応には反応を促進させるために塩基触媒を使用しても良い。塩基触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピロール、イミダゾリウム、アミジン塩等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは、不活性有機溶剤としても使用できるピリジン、アミジン塩である。
【0029】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)の製造方法における反応条件として、反応温度としては特に限定されることはないが、好ましくは30℃〜160℃ 、更に好ましくは60℃〜120℃の範囲である。前記範囲外でも製造できるが、30℃より低いと反応速度が低下し生産性が低下することがある。一方、160℃より高いとカーバネート結合が分解する恐れがあり、また、セルロース誘導体が熱分解する恐れがあるため好ましくない。
【0030】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)の皮膜強度は、好ましくは30〜60MPa、さらに好ましくは40〜60MPaである。皮膜強度が30MPa未満であると強靭さが不十分である。
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)の皮膜伸度は、好ましくは200〜400%、更に好ましくは300〜400%の範囲である。皮膜伸度が200%未満であるともろいフィルムとなるため好ましくない。
【0031】
本発明の化粧料としては、化粧水、洗顔クリーム、洗顔フォーム、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、マッサージクリーム、コールドクリーム、モイスチャークリーム、日焼け止めクリーム、日焼け用オイル、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、香油、ヘアリキッド、セットローション、カラーリンス、カラースプレー、パーマネントウェーブ液、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドー、ハンドクリームが挙げられる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤としては、鎮痛剤、消毒殺菌剤、抗真菌剤、核質軟化・剥離剤、皮膚漂白剤、皮膚着色剤、肉芽発生剤、表皮形成剤、壊死組織除去剤、腐食剤、発毛剤、脱水剤、日焼け止め剤、発汗剤、防臭剤、ホルモン剤、ビタミン剤などが挙げられる。
本発明の医薬部外品としては、洗口液、歯磨剤、美容液、薬用石鹸、清浄綿、染毛剤、縮毛矯正剤、パーマネントウェーブ用剤、浴用剤、てんか粉、ソフトコンタクトレンズ用消毒剤などが挙げられる。
【0033】
本発明の化粧料、皮膚外用剤または医薬部外品には、必須成分である水溶性ウレタン変性セルロース誘導体以外に添加剤として界面活性剤、粘剤、油剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粉体、防腐剤、香料、保湿剤 、薬剤、キレート剤、着色剤、美白剤、抗炎症剤、肌荒れ防止剤、制汗剤、ビタミン類、ホルモン類、pH調整剤等を1種以上配合して使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0035】
製造例1
攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,000)と2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)を投入し、窒素雰囲気下、80℃2時間反応させることで、本発明の両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)を得た。GPCによる数平均分子量Mnは1,350であった。
攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、カルボキシメチルセルロースナトリウム 「CMC2260」(ダイセル化学工業(株)製、カルボキシメチル置換度(構成グルコース単位あたりの平均カルボキシメチル基の個数)=0.6)(A−1)5.0部、不活性有機溶剤(F)として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート55部を加えた後、上記の両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)5.5部を少量ずつ添加し、90℃で3時間反応させることで粗ウレタン変性カルボキシメチルセルロース溶液を得た。
【0036】
50℃に温調した上記の粗ウレタン変性カルボキシメチルセルロース溶液65.5部をイソプロパノール200部中に投入し、目的物質であるウレタン変性カルボキシメチルセルロースをゲル状物として析出させた。
ホモミキサーで10,000rpmで3分間破砕させることでゲル状の析出物をイソプロパノール中に破砕分散させた後、加圧濾過器を用い、濾過することでウレタン変性カルボキシメチルセルロースと、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートとイソプロパノールからなる混合液とに分離した。
得られた固形物はさらにイソプロパノール200部を加えて30分間撹拌することで洗浄し、上記と同様の方法で固液分離操作を行った。イソプロパノール洗−脱イソプロパノールの操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間減圧乾燥して、本発明のウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C−1)10.5部を得た。
【0037】
製造例2
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:4,000)を使用すること以外は、製造例1と同様にして、両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−2)を得た。GPCによる数平均分子量Mnは4,350であった。
得られたジイソシアネートプレポリマー(B−2)を10部使用すること以外は、製造例1と同様にして、ウレタン化反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C−2)7.5部を得た。
【0038】
製造例3
カルボキシメチルセルロースナトリウムとして「CMCダイセル4890」(ダイセル化学工業(株)製、カルボキシメチル置換度=2.4)(A−2)を使用し、両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)の仕込量を2.0部とした以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C−3)7.0部を得た。
【0039】
製造例4
不活性有機溶剤としてピリジンを使用した以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C−4)10.5部を得た。
【0040】
比較製造例1
両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)を2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)にかえること以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、比較のためのウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C’−1)10.5部を得た。
【0041】
比較製造例2
両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)の仕込量を20.0部にかえること以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C’−2)25.0部を得た。
【0042】
比較製造例3
カルボキシメチルセルロースナトリウムとして置換度の低い「サンローズSLD」(日本製紙ケミカル(株)製、カルボキシメチル置換度=0.2)(A−3)を使用する以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C’−3)10.5部を得た。
【0043】
比較製造例4
ポリオール化合物として1,4−ブタンジオールとアジピン酸とから得られる数平均分子量=2,000のポリエステルポリオールを使用し、鎖伸長剤としてエチレングリコールを使用すること以外は、製造例1と同様にして、両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−3)を得た。GPCによる数平均分子量Mnは15,000であった。
得られたジイソシアネートプレポリマー(B−3)を2.0部を使用する以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C’−4)7.0部を得た。
【0044】
比較製造例5
両末端ジイソシアネートプレポリマー(B−1)の仕込量を1.0部に変更する以外は、製造例1と同様にして、反応および精製を行い、ウレタン変性カルボキシメチルセルロース(C’−5)6.0gを得た。
【0045】
実施例1〜4および比較例1〜5
ウレタン変性カルボキシメチルセルロース5.0部を水95.0部に溶解させた。
得られた水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)のフィルムの成膜性、皮膜強度、皮膜伸度は以下の方法で評価し、判定した。
その結果を表1に示す。
【0046】
<フィルム成膜性の評価方法>
上記調製法で希釈して作製したウレタン変性セルロース誘導体の水溶液または分散液を、ガラス板上に0.5mmアプリケーターで塗布させ、50℃で8時間減圧乾燥させ、フィルムを形成させた。
【0047】
得られた乾燥フィルムはガラス板上より剥離させて、フィルム成膜性を判定した。
○:フィルムがきれいに剥離できる。
×:フィルムが柔軟性がないため剥離できない。
【0048】
<フィルムの皮膜強度と皮膜伸度の測定>
希釈して作製したウレタン変性セルロース誘導体の水溶液または分散液を、ドライ膜厚約50μmとなるようポリエチレン製容器に流し込み50℃で8時間減圧乾燥させ、フィルムを剥がした。
得られたフィルムを3号ダンベルにて型抜きしたものを試験片とし、株式会社島津製作所製オートグラフ「AGS−500B」を用い、温度20℃、クロスヘッドスピード300mm/分の条件にて皮膜強度、皮膜伸度の測定を行った。
なお、比較例1〜5の水溶液または分散液はいずれもフィルムがきれいに剥離できなかったため物性評価ができなかった。
【0049】
【表1】

【0050】
表1で明らかなように、実施例1〜4の本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C−1)〜(C−4)はいずれも、フィルムの成膜性は良好であり、皮膜強度、皮膜伸度も優れていることがわかる。
一方、両末端ジイソシアネートプレポリマーの分子量が小さい(TDIそのもの)比較例1はフィルムの柔軟性が乏しく、フィルムを剥離する際に割れてしまい、両末端ジイソシアネートプレポリマーの使用量が多い比較例2は粘着性があるため、剥離する際にガラス板上に残渣が残りきれいに剥離できない。
また、低置換度のカルボキシメチルセルロースを使用した比較例3や両末端プレポリマーの使用量が少ない比較例5は、柔軟性が乏しく、フィルムを剥がす際に割れてしまいフィルム成形性が乏しい。また、両末端ジイソシアネートプレポリマーの分子量が大きい比較例4は水への溶解性が乏しくフィルム表面の粗度が大きく、きれいにフィルムを成膜することが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体は、安全性が高く、フィルム成形性が優れているため、化粧品原料、皮膚外用剤、医薬部外品としても有用である。
また、本発明の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体を用いた化粧品は、良好なフィルム形成能を有するため、しわ伸ばしとしてのアンチエイジング剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成グルコース単位あたり平均0.4〜2.6個の水酸基を有するセルロース誘導体(A)と、数平均分子量が500〜10,000である両末端ジイソシアネートプレポリマー(B)を、(A)/(B)の重量比が0.3〜3.5で反応させて得られることを特徴とする水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)。
【請求項2】
該セルロース誘導体(A)が、カルボキシアルキルセルロース(A1)である請求項1記載の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)。
【請求項3】
(A)/(B)の重量比が0.5〜3.5である請求項1または2記載の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)。
【請求項4】
皮膜強度が30〜60MPaである請求項1〜3いずれか記載の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)。
【請求項5】
皮膜伸度が200〜400%である請求項1〜4いずれか記載の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の水溶性ウレタン変性セルロース誘導体(C)を含むことを特徴とする化粧料、皮膚外用剤または医薬部外品。

【公開番号】特開2010−254985(P2010−254985A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81448(P2010−81448)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】