説明

水溶性重合体およびその製造方法ならびにその用途

【課題】疎水性汚れおよび親水性汚れの洗浄に高い性能を発揮できる水溶性重合体を提供することにある。また、該重合体の効率的な製造方法、該重合体を用いた洗剤用ビルダーおよび洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】水溶性重合体は、一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)1〜80質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)20〜99質量%とを共重合して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性重合体およびその製造方法ならびにその用途に関する。より詳細には、疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)とを共重合させた水溶性重合体、該重合体の製造方法、該重合体を用いた洗剤用ビルダーおよび洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンオキシド系共重合体は、種々の工業分野において用いられている有用な重合体である。例えば、該重合体は、分散剤、洗浄剤組成物等の水系用途に有用である。
【0003】
ポリアルキレンオキシド系共重合体を上記水系用途に用いる場合、使用する水系の水質による影響、併用する他の成分との相互作用による影響などを考慮する必要がある。例えば、国や地域によって水系の硬度が異なる。このため、低硬度の水系において各種効果を発揮できるポリアルキレンオキシド系共重合体であっても、高硬度の水系においては十分な効果が発揮できない場合がある。また、洗浄剤組成物に界面活性剤が含まれる場合、ポリアルキレンオキシド系重合体と界面活性剤との相互作用の程度によって、洗浄効果が十分に発揮できない場合がある。
【0004】
さらに、ポリアルキレンオキシド系共重合体を洗浄剤組成物に用いる場合、洗浄すべき汚れとポリアルキレンオキシド系共重合体との相互作用の程度が、洗浄効果に影響を及ぼす。
【0005】
加えて、洗浄剤に用いる場合、ポリアルキレンオキシド系共重合体は、疎水性汚れおよび親水性汚れの双方に対する洗浄力を発揮することが求められる。
【0006】
疎水性汚れに対する洗浄力を改善したポリアルキレンオキシド系共重合体として、特定の不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位、特定の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位に加えて、1〜3個のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸系単量体および/または(メタ)アクリルアミド系単量体由来の構造単位を必須に含み、全構造単位中の前記1〜3個のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸系単量体および/または(メタ)アクリルアミド系単量体由来の構造単位の含有割合が1〜80重量%である水溶性共重合体が提案されている(特許文献1)。また、カチオン性単量体およびアニオン性単量体に、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を用いて共重合した水溶性両性共重合体であって、単量体成分のモル比を使用するアニオン性単量体の種類に応じて特定した水溶性両性共重合体が提案されている(特許文献2)。しかし、これらのポリアルキレンオキシド系共重合体は、疎水性汚れに対する洗浄力がさらに向上されることが望まれる。
【0007】
その他のポリアルキレンオキシド系共重合体としては、ポリアルキレンオキシド存在下で、四級窒素含有ラジカル重合性モノマーを重合した重合体(特許文献3)、およびポリエチレングリコールにジメチルアミノエチルアクリレートとビニルピロリドンをグラフト共重合した重合体(特許文献4)などのポリアルキレンオキシド系カチオン性共重合体が提案されている。しかし、これらのポリアルキレンオキシド系カチオン性共重合体は、上記水系用途の性能に関して十分なものではない。
【特許文献1】特開2005−350516号公報
【特許文献2】特開2007−39676号公報
【特許文献3】特表2005−531517号公報
【特許文献4】特開昭51−144741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、水系用途において疎水性汚れおよび親水性汚れのいずれの洗浄についても高い性能を発揮できる水溶性重合体を提供することにある。また、該重合体の効率的な製造方法、該重合体を用いた洗剤用ビルダー、および洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水溶性重合体は、一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)1〜80質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)20〜99質量%とを共重合して得られる。
【化1】


式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、Rは炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、nは5〜200の整数を表す。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ジアリルアルキルアミン、およびこれらの四級化物からなる群より選択される少なくとも1つの単量体を含む。
【0011】
好ましい実施形態においては、本発明の水溶性重合体はグラフト共重合体である。
【0012】
本発明の別の局面によれば、重合体組成物が提供される。この重合体組成物は、本発明の水溶性重合体、一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)、カチオン性単量体(b)の単独重合体、および他の単量体を用いた場合のカチオン性単量体(b)と他の単量体の共重合体を含み、これらの合計に対して、該水溶性重合体が、45質量%以上含有されている。
【0013】
本発明の別の局面によれば、洗剤用ビルダーが提供される。この洗剤用ビルダーは、本発明の水溶性重合体を含む。
【0014】
本発明の別の局面によれば、洗浄剤組成物が提供される。この洗浄剤組成物は、本発明の水溶性重合体を含む。
【0015】
本発明の別の局面によれば、水溶性重合体の製造方法が提供される。この製造方法は、本発明の水溶性重合体を製造する方法であって、上記式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)1〜80質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)20〜99質量%とを、少なくとも脂肪族基を含む有機過酸化物の存在下、120℃以上の温度で共重合を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、疎水基含有ポリアルキレンオキシドと少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体とを共重合することにより、疎水性汚れおよび親水性汚れの洗浄に高い性能を発揮できる水溶性重合体を提供することができる。また、該重合体の効率的な製造方法、該重合体を用いた洗剤用ビルダーおよび洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔水溶性重合体〕
本発明の水溶性共重合体は、一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)とを共重合して得ることができる。
【化2】

式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、
は炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基であり、
は炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、
nは5〜200の整数である。
【0018】
またはRが置換のアリール基である場合、置換基はアルケニル基等の不飽和二重結合を有さないことが好ましい。当該アリール基の置換基が不飽和二重結合を有さないことで、グラフト率を上げることができる。
【0019】
は、好ましくは水素原子、または炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、さらに好ましくは水素原子、または炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、または炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、とりわけ好ましくは水素原子、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0020】
は、好ましくは炭素数2〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、さらに好ましくはエチレン基(−CHCH−)である。
【0021】
は、好ましくは炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換または非置換のベンジル基であり、さらに好ましくは炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数12〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。このように末端に疎水基を有するポリアルキレンオキシドを用いることにより、疎水性汚れに対する吸着性が高く、疎水性汚れに対する洗浄力に優れる水溶性重合体を得ることができる。また、Rが置換のベンジル基である場合、置換基としては、炭素数1〜16のアルキル基等が好ましく、またアルケニル基等の不飽和二重結合を有さないことが好ましい。Rの置換基が不飽和二重結合を有さないことで、グラフト率を上げることができる。
【0022】
nは、好ましくは10〜100の整数であり、さらに好ましくは15〜50の整数である。
【0023】
上記疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)は、任意の適切な方法で調製することができる。例えば、重合の開始点となる被反応化合物の存在下、環状エーテルを付加することにより得ることができる。環状エーテルは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0024】
上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)としては、任意の適切な単量体を用いることができる。例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジアリルアルキルアミン、およびこれらの四級化物、ならびにジアリルアミンが挙げられる。好ましくは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ジアリルアルキルアミンである。カチオン性単量体として、これらの3級アミンを用いれば、これらの4級化物を用いた場合よりさらに泥粒子や水溶性着色物質などの親水性汚れに対する洗浄力に優れた水溶性重合体を得ることができ、当該水溶性重合体を洗剤に配合した際に、優れた洗浄力を得ることができる。上記カチオン性単量体としては、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0025】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0026】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0027】
ビニルイミダゾールとしては、例えば、ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムメチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムエチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド3−ベンジル−1−ビニルイミダゾリウムクロリドが挙げられる。なかでも、ビニルイミダゾールが好ましく用いられる。
【0028】
ジアリルアルキルアミンとしては、例えば、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、ジアリルメチルエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジプロピルアンモニウムクロリドが挙げられる。好ましくは、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドが用いられる。
【0029】
本発明の水溶性重合体中における、上記疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)の含有量は、仕込み比で1〜80質量%であり、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜75質量%、さらに好ましくは45〜70質量%、特に好ましくは50〜68質量%である。同様に、上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)の含有量は、仕込み比で20〜99質量%であり、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは25〜60質量%、さらに好ましくは30〜55質量%、特に好ましくは32〜50質量%である。このように、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)の含有量が多いため、泥粒子や水溶性着色物質などの親水性汚れに対する洗浄力に優れた水溶性重合体を得ることができる。
【0030】
本発明の水溶性重合体は、さらに他の単量体を含んで重合してもよい。他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール等の水酸基を有する不飽和単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体、疎水性部分を有さないポリアルキレングリコール系単量体、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレンが挙げられる。疎水性部分を有さないポリアルキレングリコール系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキレングリコールエステル等の不飽和カルボン酸のアルキレングリコールエステル;イソプレノール、アリルアルコール等の不飽和アルコール1モルに対して、炭素数2〜20のアルキレンオキシドを、通常1〜200モル、好ましくは10〜100モル、さらに好ましくは10〜50モル付加した付加物;等が挙げられる。これら他の単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記他の単量体の含有量は、カチオン性単量体およびその他の単量体からなる単量体組成物中、好ましくは30重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは0重量%である。ただし、カチオン性単量体は、対応するアミン換算、カルボン酸系単量体は対応する酸換算で組成比を計算する。
【0032】
本発明の水溶性重合体を得るための重合方法は、任意の適切な重合方法を採用し得る。好ましくは、グラフト共重合である。グラフト共重合した水溶性重合体を用いることにより、再汚染防止能およびクレイ分散能に優れた重合体組成物を得ることができる。
【0033】
本発明においてグラフト共重合体を製造する際には、まず、グラフト共重合体の主鎖となる上記疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)、グラフト共重合体の側鎖となる上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)および必要に応じて上記他の単量体を、それぞれ所望の量だけ準備し、グラフト共重合を行う。
【0034】
上記グラフト共重合体は、好ましくは、上記疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)の存在下で、上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)および必要に応じて上記他の単量体を、適切な重合開始剤の下、適切な重合温度でラジカル重合することにより得られ得る。簡便でありかつ得られたグラフト共重合体の疎水性汚れに対する洗浄力が高いからである。
【0035】
上記グラフト共重合を行う際には、重合開始剤として、任意の適切なラジカル重合開始剤を用い得る。ラジカル重合開始剤としては、少なくとも脂肪族基を含む有機過酸化物が挙げられ、好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド(PBD)、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト(PBZ)およびtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(PBI)、より好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド(PBD)である。これらの有機過酸化物は、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0036】
上記グラフト共重合におけるラジカル重合開始剤の使用量としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な量を採用し得る。例えば、疎水基含有ポリアルキレンオキシドを除くグラフト共重合に用いられる成分の全量に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。ラジカル重合開始剤の使用量が少なすぎると、グラフト率が低下するおそれがある。ラジカル重合開始剤の使用量が多すぎると、コスト的に不利になるおそれや、開始剤断片がグラフト共重合体の物性に影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
上記ラジカル重合開始剤の添加形態としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な形態を採用し得る。
【0038】
上記グラフト共重合の際には、上記ラジカル重合開始剤に加えて、ラジカル重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加しても良い。
【0039】
上記ラジカル重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体;等が挙げられる。これらの分解触媒は、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0040】
上記還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸;等が挙げられる。これらの還元性化合物は、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0041】
上記グラフト共重合においては、任意の適切な溶媒を用い得る。少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)の溶媒への連鎖移動定数が小さい溶媒、沸点80℃以上の溶媒等が好ましく用いられる。このような溶媒としては、例えば、水;イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルテーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物;等が挙げられる。好ましくは、水である。溶媒の使用量としては、例えば、溶媒の含有量が反応系の全量に対して好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは実質的に0である。なお、「実質的に0」とは、グラフト共重合時に積極的に溶媒を添加しない形態を意味し、不純物程度の溶媒の混入は許容され得ることを意味する。溶媒の使用量を上記範囲とすることにより、グラフト共重合は実質的に塊状重合(バルク重合)の形態で行われ、効率的にグラフトさせることが可能となり、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の不純物に起因するビルダー性能の低下を抑制することができる。
【0042】
上記グラフト共重合の際の温度としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、好ましくは120℃以上、より好ましくは120℃〜150℃、さらに好ましくは120〜140℃、最も好ましくは130〜140℃である。グラフト共重合時の温度が低すぎると、反応液の粘度が高くなり過ぎ、グラフト共重合が進行しにくく、グラフト率が低下するおそれがある。すなわち、グラフト共重合の際の温度を上記範囲とすることで、グラフト率を上げることができる。その結果、上記カチオン性単量体の含有割合を高くすることができ、泥粒子や水溶性着色物質などの親水性汚れに対する洗浄力に優れる水溶性重合体を得ることができる。グラフト共重合時の温度が高すぎると、ポリアルキレンオキシドおよび得られるグラフト共重合体の熱分解が起こるおそれがある。
【0043】
上記グラフト共重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させても良い。
【0044】
上記グラフト共重合時の重合時間としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な時間を採用し得る。好ましくは60〜420分、より好ましくは90〜390分、さらに好ましくは120〜360分である。なお、本発明においては、開始剤投入時点を0分(重合開始時間)とする。
【0045】
上記グラフト共重合時の反応圧力としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な圧力を採用し得る。例えば、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであっても良い。得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または加圧下で行うことが好ましい。設備の簡便性の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系の雰囲気としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な反応系の雰囲気を採用し得る。好ましくは、不活性雰囲気であり、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0046】
上記グラフト共重合の形態としては、本発明の目的を達成し得る範囲内で、任意の適切な形態を採用し得る。好ましくは、グラフト共重合体の主鎖となる疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)の一部または全部を反応系に仕込んだ状態で、重合を開始する。具体的には、例えば、疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)の全量を反応系に仕込み、反応系を昇温させた後、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)および必要に応じてラジカル重合開始剤を別々に添加して、グラフト共重合反応を進行させる形態が挙げられる。このような形態によれば、得られるグラフト共重合体の分子量を容易に調整できる。なお、グラフト共重合は、回分式で行われてもよいし、半回分式または連続式で行われてもよい。
【0047】
上記グラフト共重合においては、上記重合時間の経過後、残存単量体の低減を目的として、重合温度を維持して反応を継続してもよい。この際の反応時間としては、好ましくは20〜360分、より好ましくは20〜180分、さらに好ましくは20〜120分である。
【0048】
上記グラフト共重合で得られた反応物に対して、残存単量体をさらに低減させる目的で、過酸化物および/またはアゾ系化合物を添加する後処理を行っても良い。
【0049】
上記後処理に際して、実使用時を考慮し、グラフト共重合体は水溶液とすることが好ましい。グラフト共重合体の水溶液の濃度については、製品形態の経済性(輸送コスト)の観点からは濃い方が好ましく、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上である。
【0050】
上記のようにして得られた反応物は、本発明の水溶性重合体(代表的にはグラフト共重合体)、残存するポリアルキレンオキシド(a)、残存するカチオン性単量体(b)、カチオン性単量体(b)の単独重合体、および他の単量体を用いた場合のカチオン性単量体(b)と他の単量体の共重合体を含む重合体組成物である。当該組成物において、水溶性重合体は、得られた反応物の合計に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上である。水溶性重合体の含有割合が上記範囲にあれば、再汚染防止能およびクレイ分散能に優れた重合体組成物を得ることができる。本発明において、上記水溶性重合体の含有割合はキャピラリー電気泳動で測定することができる。すなわち、上記水溶性重合体の含有割合は、キャピラリー電気泳動の測定チャートにおいて、上記反応物の各組成に起因するピークの全面積に対する、水溶性重合体に起因するピークの面積比から算出することができる。
【0051】
本発明の水溶性重合体は、水系用途において高い性能を発揮でき、耐硬水性、洗浄力、再汚染防止能、クレイ(Clay)分散性、界面活性剤との相互作用などが高いので、分散剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。
【0052】
本発明の水溶性重合体は、再汚染防止能(測定方法の詳細は後述)が、好ましくは82.0%以上、より好ましくは83.0%以上、さらに好ましくは85.0%以上である。
【0053】
本発明の水溶性重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは2000〜200000、さらに好ましくは2000〜50000である。重量平均分子量が上記範囲を外れると、再汚染防止能、クレイ分散能が劣るおそれがある。
【0054】
〔洗剤用ビルダー〕
本発明の洗剤用ビルダーは、上記水溶性重合体を含む。具体的には、本発明の洗剤用ビルダーは、上記水溶性重合体のみからなっていてもよいし、他の任意の適切な洗剤用ビルダーとの混合物からなっていてもよい。
【0055】
本発明の洗剤用ビルダー中における上記水溶性重合体の含有割合は、本発明の洗剤用ビルダー100重量%に対して、0.1〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは5〜65重量%である。水溶性重合体の含有割合が0.1重量%未満であると、洗浄剤組成物として用いた場合の洗浄力が不十分になるおそれがある。水溶性重合体の含有割合が80重量%を超えると、不経済になるおそれがある。
【0056】
上記他の任意の適切な洗剤用ビルダーとしては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマル酸(共)重合体塩などの水溶性重合体等が挙げられる。
【0057】
本発明の洗剤用ビルダーは、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよい。本発明の洗剤用ビルダーは界面活性剤との相溶性に優れる。このため、高濃縮の液体洗浄剤組成物とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
【0058】
本発明の洗剤用ビルダーは、上記水溶性重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0059】
本発明の洗剤用ビルダーは、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0060】
〔洗浄剤組成物〕
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の水溶性重合体を含む。好ましくは、本発明の洗剤用ビルダーを含む。
【0061】
本発明の洗浄剤組成物は、粉末洗浄剤組成物であっても良いし、液体洗浄剤組成物であっても良い。本発明の洗浄剤組成物は、通常、洗剤に用い得る、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。上記添加剤としては、例えば、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適に挙げられる。また、粉末洗浄剤組成物の場合には、ゼオライトを配合することが好ましい。
【0062】
本発明の洗浄剤組成物中の本発明の洗剤用ビルダーの含有割合は、本発明の洗浄剤組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは0.4〜8重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が0.1重量%未満であると、十分な洗浄性能を発揮できないおそれがある。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が20重量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0063】
本発明の洗浄剤組成物における、上記水溶性重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダーの配合形態は、液状でも良いし、固形状でも良い。洗剤の販売時の形態(例えば、液状物または固形物)に応じて決定すれば良い。また、重合後の水溶液の形態で配合しても良いし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合しても良いし、乾燥固化した状態で配合しても良い。
【0064】
なお、本発明の洗浄剤組成物は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。上記水溶性重合体は、キレート能に優れるため、微量金属を捕捉することにより、過酸化水素を安定でき、漂白剤の安定化能に優れることから、好適に用いることができる。
【0065】
本発明の洗浄剤組成物は、上記水溶性重合体以外に、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0066】
本発明の洗浄剤組成物中に好ましく含まれる界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。これらの界面活性剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0067】
界面活性剤を2種以上併用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100重量%に対して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0068】
上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。また、これらのアニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0069】
上記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。また、これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0070】
上記カチオン系界面活性剤の具体例としては、4級アンモニウム塩等を挙げることができる。カチオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0071】
上記両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシル型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。両性界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0072】
本発明の洗浄剤組成物に含まれる界面活性剤の配合割合は、洗浄剤組成物中、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは12〜50重量%であり、さらに好ましくは15〜45重量%であり、特に好ましくは15〜40重量%である。界面活性剤の配合割合が10重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがある。他方、60重量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0073】
本発明の洗浄剤組成物が液体洗浄剤組成物である場合、液体洗浄剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗浄剤組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜75重量%、より好ましくは0.2〜70重量%、さらに好ましくは0.5〜65重量%、さらに好ましくは0.7〜60重量%、特に好ましくは1〜55重量%であり、最も好ましくは1.5〜50重量%である。
【0074】
本発明の洗浄剤組成物が液体洗浄剤組成物である場合、液体洗浄剤組成物は、カオリン濁度が、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは150mg/L以下、さらに好ましくは120mg/L以下、特に好ましくは100mg/L以下、最も好ましくは50mg/L以下である。
【0075】
本発明の水溶性重合体を洗剤用ビルダーとして液体洗浄剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、好ましくは500mg/L以下、より好ましくは400mg/L以下、さらに好ましくは300mg/L以下、特に好ましくは200mg/L以下、最も好ましくは100mg/L以下である。
【0076】
カオリン濁度は、例えば、厚さ10mmの50mm角セルに均一に撹拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製の濁度計(NDH2000)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
【0077】
上記洗浄剤組成物に配合し得る酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼが好ましい。上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100重量%に対して、5重量%以下が好ましい。5重量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなるおそれや、経済性が低下するおそれがある。
【0078】
上記洗浄剤組成物に配合し得るアルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。
【0079】
上記洗浄剤組成物に配合し得るキレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明における水溶性重合体以外のその他の成分を含むものを添加しても良い。
【0080】
本発明の洗浄剤組成物は、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗浄剤組成物とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
【0081】
本発明の洗浄剤組成物は、上記水溶性重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダー以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0082】
本発明の洗浄剤組成物は、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0083】
〔その他の用途〕
上記水溶性重合体は、顔料分散剤やスケール防止剤に用いることもできる。また、シャンプー、リンス、ボディーソープ等の身体用洗剤、繊維加工、建材加工、塗料、窯業等の分野においても幅広く応用できる。
【0084】
上記水溶性重合体は、水処理剤、繊維処理剤に用いることもできる。
【0085】
上記水処理剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることにより、例えば、炭酸カルシウムやシリカ等のスケール防止性や金属の腐食防止性等にとって有利となる可能性がある。
【0086】
上記繊維処理剤は、各種繊維を処理することにより、例えば、吸水性、柔軟性、耐磨耗性、汚れの防止性、触感性等にとって有利となる可能性がある。
【0087】
上記水処理剤や上記繊維処理剤において、上記水溶性重合体は、そのまま添加しても良いし、本発明の水溶性重合体以外の他の成分とともに添加しても良い。
【0088】
上記水処理剤や上記繊維処理剤は、上記水溶性重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0089】
上記水処理剤や上記繊維処理剤は、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0091】
〔実施例1〕
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、ソフタノール200(株式会社日本触媒製:第2級アルコール(C12―14)のエチレンオキシド20モル付加物)80.0gを仕込み、窒素を吹き込み、攪拌しながら135℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、135℃に保持された重合反応系中に、100%ジメチルアミノエチルアクリレート(以下、100%DAA)40.0g、ジ−ter−ブチルパーオキサイド(以下、PBD)2.2gをそれぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBD2.0gを200分間、100%DAAはPBD滴下開始20分後から180分間とした。さらに、100%DAAの滴下終了30分後にPBD0.2gを5分間にわたって滴下した。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。その後、さらに25分間、135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水118.0gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%の重合体(1)の水溶液を得た。
【0092】
〔実施例2〕
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、ソフタノール200;120.0gを仕込み、窒素を吹き込み、攪拌しながら135℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、135℃に保持された重合反応系中に、100%DAA;48.0g、PBD;2.64gをそれぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBD2.4gを200分間、100%DAAはPBD滴下開始20分後から180分間とした。さらに、100%DAAの滴下終了30分後にPBD0.24gを5分間にわたって滴下した。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。その後、さらに25分間、135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水165.5gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%の重合体(2)の水溶液を得た。
【0093】
〔実施例3〕
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、ソフタノール200;160.0gを仕込み、窒素を吹き込み、攪拌しながら125℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、125℃に保持された重合反応系中に、100%DAA;48.0g、PBD;2.64gをそれぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、PBD2.4gを200分間、100%DAAはPBD滴下開始20分後から180分間とした。さらに、100%DAAの滴下終了30分後にPBD0.24gを5分間にわたって滴下した。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。その後、さらに25分間、125℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、純水205.6gを徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%の重合体(3)の水溶液を得た。
【0094】
〔比較例1〕
比較重合体(C1)として、ソフタノール200を準備した。
【0095】
〔評価〕
得られた重合体(1)、(2)および(3)と比較重合体(C1)について、重量平均分子量、再汚染防止能の評価を行った。
【0096】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値である。
測定装置:日立製「L−7000シリーズ」
検出器:RI、UV(検出波長:254nm)
カラム:昭和電工製「SHODEX SB−G」、「SHODEX SB−804HQ」「SHODEX SB−803HQ」、「SHODEX SB−802.5HQ」をこの順で接続したもの
温度:40℃
流速:0.8mL/分
検量線:ポリエチレンオキシド標準サンプル(ジーエルサイエンス社製)を用いて作製
溶離液:0.5M酢酸+0.5M酢酸ナトリウム
【0097】
<再汚染防止能>
(i)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(ii)塩化カルシウム2水和物2.94gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製した。
(iii)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、炭酸ナトリウム4.0gに純水を加えて100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。
(iv)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の重合体水溶液1g、ゼオライト0.15g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布10枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、25℃にした硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(vii)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
再汚染防止能(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100
【0098】
評価結果を表1に示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の水溶性重合体は、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高い。したがって、分散剤、洗剤用ビルダー、洗浄剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)1〜80質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)20〜99質量%とを共重合して得られる、水溶性重合体:
【化1】


式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、Rは炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜24の置換または非置換のアリール基であり、nは5〜200の整数を表す。
【請求項2】
前記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)が、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジアリルアルキルアミン、およびこれらの四級化物、ならびにジアリルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの単量体を含む、請求項1に記載の水溶性重合体。
【請求項3】
前記水溶性重合体がグラフト共重合体である、請求項1または2に記載の水溶性重合体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の水溶性重合体と、疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)、カチオン性単量体(b)の単独重合体、および他の単量体を用いた場合のカチオン性単量体(b)と他の単量体の共重合体を含む重合体組成物であって、該水溶性重合体が、該水溶性重合体、該疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)、該少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)、該カチオン性単量体(b)の単独重合体、および他の単量体を用いた場合の該カチオン性単量体(b)と他の単量体の共重合体の合計に対して、45質量%以上含有されている、重合体組成物。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の水溶性重合体を含む、洗剤用ビルダー。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれかに記載の水溶性重合体を含む、洗浄剤組成物。
【請求項7】
一般式(1)で表される疎水基含有ポリアルキレンオキシド(a)1〜80質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)20〜99質量%とを、少なくとも脂肪族基を含む有機過酸化物の存在下、120℃以上の温度で共重合させる、水溶性重合体の製造方法。
【化2】


【公開番号】特開2009−35574(P2009−35574A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198509(P2007−198509)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】