説明

水溶液中の銅の回収方法

【課題】
本発明は、銅の無電解メッキ浴廃液等の比較的微量の銅イオンを含有する水溶液から、簡単な手段で銅イオンをほぼ完全に回収又は除去する方法を提供する。
【解決手段】
硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンを触媒とし、好ましくは不活性雰囲気下に、紫外線特に近紫外線を照射しつつ、該銅イオンを光還元し、回収する。好ましい態様においては、蟻酸塩、蓚酸塩等のドナーを共存させる。
また、本発明は銅イオンを含有する溶液から銅を回収するにあたり、触媒を循環再使用するプロセスをも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中の銅の回収方法に係る。詳しくは、酸化チタンを触媒とし、紫外線を照射することにより水溶液中に存在する銅イオンを還元し、金属銅として回収すると共に、併せて水溶液中の銅イオンをほぼ完全に除去することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅イオンを含む水溶液は、銅の無電解メッキ浴廃液や、銅合金のピックリング廃液、銅の精錬工程廃液等種々存在し、それらを河川等に排出することは、経済的な損失ばかりでなく、環境汚染の問題となるため、含有する銅イオンの回収或いは除去を行う必要がある。通常銅イオンの濃度が比較的大きい場合には、電解処理により銅イオンを還元し除去するが、銅イオン濃度が20mg/l程度以下とすることは困難である。
【0003】
そこで、イオン交換樹脂や、キレート化剤を用いて残りの銅イオンを回収、除去する方法も行われている。
【0004】
しかしながら、これらの方法はエネルギーコストや試薬等にかなりの費用が必要となり、廃液の処理などにあっては、より低コストの方法が望まれる。
【0005】
近年、酸化チタンを触媒として用いる光化学反応を利用した無電解メッキ浴廃液からの銅の回収手段が提案されている(非特許文献1)。該文献によると、硫酸法で得られた酸化チタン(デグッサ製P−25)を用い、蟻酸等のドナーの存在下にpH1.35〜4.52でブラックライトを照射することにより、Cu(II)をCu(I)−TiOとして回収することが記載されている。
【0006】
また、ゾル−ゲル法により得られる酸化チタン触媒が崩壊しやすく、粒状化等加工された触媒の強度を増進し、触媒の寿命を改善することを目的として、チタンアルコキシドに硫黄化合物を加えてゲル化、焼成したチタニア系触媒も提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法にあっては十分な反応速度が得られず産業上利用するには更なる改良を行う必要があった。
【特許文献1】特開2000−210571号公報
【非特許文献1】エンビロメンタル サイエンス アンドテクノロジー 1993年 第27巻 第350頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は光化学反応により、水溶液中の銅イオンを回収或いは除去すること、特に銅の無電解メッキ浴廃液等の銅イオンを含む廃液から銅イオンを回収、除去する方法において従来知られている酸化チタン触媒を用いる方法よりも、一層大きい反応速度を有し、且つ実質的に完全に回収、除去し得る方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次に示す各手段を特徴とする。
【0010】
(1)すなわち、本発明の一つは、銅イオンを含有する水溶液に紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンと接触させることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法である。
【0011】
(2)また、本発明の別の態様は、銅イオンを含有する水溶液に蟻酸塩又は蓚酸塩等の犠牲ドナーを加えて、紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンと接触させることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法である。
【0012】
(3)更に、本発明は銅イオンを含有する水溶液に窒素ガス等の不活性ガスを流通させ、空気等の含酸素ガスを排除し又は排除しつつ、且つ紫外線を照射しつつ、ゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンと接触させることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法である。
【0013】
(4)本発明はまた、チタンアルコキシド〔Ti(OR):Rはアルキル基を表す。〕特にチタンプロポキシド〔Ti(OC〕と硝酸とを水性媒体、例えば、水溶液又はアルコール水溶液中で混合し、pH1以下の酸性下に析出せしめ、72時間以上、好ましくは4日間以上攪拌処理し、次いで透析等の手段により、pHを3乃至4とした後、回収した酸化チタンをゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンとして用いることを特徴とする前記(1)乃至(3)に記載した水溶液中の銅の回収方法である。
【0014】
(5)本発明においては、更に上記(4)の方法において光還元反応に用いられる酸化チタンを100〜600℃、好ましくは300〜550℃の温度で一旦焼成して用いることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法でもある。
【0015】
(6)更に本発明は、前記ゾル‐ゲル法によって析出させた酸化チタンをペレット化或いは基板上に付着させた薄膜として用いることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法でもある。
【0016】
(7)本発明においては、銅イオンを含有する水溶液に紫外線を照射しつつ、前記ゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンと接触させ、該酸化チタン上に銅を沈着又は両者の混合物を得る工程と、前記工程で得られた酸化チタン‐銅よりなる固形物を母液から濾過回収する工程と、更に該酸化チタン‐銅よりなる固形物を酸、特に硝酸又は硫酸等の鉱酸水溶液と接触させることにより、銅を再び銅イオンとして溶解し、酸化チタンと銅とを分離する工程と更に所望により、酸化チタンは銅イオンを含有する水溶液からの銅の回収に用いる工程に循環再使用する工程よりなる水溶液中の銅の回収方法を含むものである。
【0017】
以上の各方法において、分離された銅イオンもまた、銅の無電解メッキ浴液として再利用し得るものでもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、水溶液中の銅イオン(II)を、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンの存在下に光還元して、0価の金属銅とし、回収するものであり、その還元反応速度が大きく、銅の無電解メッキ浴廃液等、銅イオンを含有する水溶液からの銅の回収或いは銅イオンの除去方法として産業上、利用し得る技術を提供するものである。
【0019】
更に本発明は、回収される銅を溶解し再利用すると共に酸化チタンもまた再使用することができるため、両者循環可能な極めて経済的プロセスを構成することができるというメリットを有する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の最大の特徴は、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンを触媒として用いる点にある。
【0021】
ゾル‐ゲル法による酸化チタンの製造方法は、すでに知られており、有機チタン化合物、例えばアルコキシチタンやチタンのアセチルアセトナート、チタン酸エステル等を水又はアルコール性水溶液中で鉱酸により加水分解し、水酸化チタン又は酸化チタンのゾルを得る方法である。本発明にあっては、特に酸として、硝酸を用いることを必須とする。よって、本明細書においてゾル−ゲル法という場合には、硝酸酸性水溶液を用いるゾル−ゲル法を意味するものとする。
【0022】
かくして得られた酸化チタンのゾルは時間の経過と共に脱水縮合して固化し、含水ゲルとなる。
【0023】
本発明にあっては、十分に攪拌しつつ72時間以上常温乃至50℃の温度に保って解膠させることも重要であり、3日間以上、更に好ましくは4日〜10日間解膠させることが好ましい。
【0024】
また本発明にあっては、得られる酸化チタンの比表面積を増大させる目的で、シリカゾルや、アルミナゾルなどを、酸化チタンゾルに混合して攪拌下に熟成させることも好ましい場合がある。この場合、得られる触媒の酸性度の変化等を考慮し、酸化チタン成分が50重量%程度までを限度とするのが一般的である。
【0025】
更に、本発明にあって、高活性の酸化チタン触媒を得るためには、チタンゾルの製造工程も重要である。すなわち、好ましい態様に合っては、アルコキシチタン、特にプロポキシチタン又はブトキシチタン、中でもイソプロポキシチタンを用いることによって好結果が得られる。
【0026】
更に、チタン成分と硝酸とを混合した場合のpHも重要である。通常、pHは1以下となるよう、硝酸水溶液にチタン成分を添加するか又は水性媒体中に攪拌しつつ硝酸とチタン成分とを同時に添加する方法が用いられる。
【0027】
次いで、常温〜50℃下に攪拌しつつ解膠させる。解膠は72時間以上行うべきであり、好ましくは4日間以上行う。なお、4日以上解膠処理を行ってもよいが、それによる活性の向上等のメリットは、ほとんど認められない。
【0028】
解膠が終了後、水性媒体のpHを3乃至4とする。このpH調整は、炭酸ソーダやアンモニア水等で行うこともできるが、陰イオンの挾雑により得られる酸化チタンの活性を害すること、特に光還元反応において誘導期間の増大を来たす惧れがあるので、好ましくは、透析により酸性分を除去することにより行う。
【0029】
得られる高分散ゾルは、そのまま銅イオンを含有する水溶液に混合し、紫外線を照射することによって銅イオンを還元するために用いることも可能であるが、銅を析出させた後、過剰に残存する酸化チタンを該被処理液から分離することが困難となるため、通常はゾル液中の酸化チタンを酸化チタンゲル状の固体として用いる。
【0030】
すなわち、高分散ゾル液をガラスや金属の基板上に塗布後、乾燥させ、基板上に形成される酸化チタンの薄膜として用いるか又は前記ゾルを乾燥させ、得られる酸化チタンゲルを破砕し、適当な粒径範囲に揃えるか或いは一旦粉砕した後、造粒してペレット化したものを用いるのが便利である。この場合のペレットの粒径は特に限定されないが、一般に1mm〜30mm程度とするのが取扱上便利である。
【0031】
更に、乾燥後の酸化チタンは、100〜600℃、好ましくは300〜550℃で30分乃至数時間焼成して用いることが好ましい。
【0032】
次にゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンを用いた光還元法について説明する。
【0033】
一般に使用する酸化チタンの粒径が1mm乃至数mm或いは更に小さい場合には、銅イオンを含有する水溶液中に酸化チタンを懸濁させた懸濁液として用い、これに紫外線を照射する。また、酸化チタンが薄膜状である場合には、該薄膜上に銅イオンを含有する水溶液を流通させつつ紫外線を照射するか、或いは逆に銅イオンを含有する水溶液中に酸化チタンの薄膜を有する基盤を浸漬して紫外線を照射することも出来る。同様に酸化チタンのペレットを用いる場合には、銅イオンを含有する水溶液中に該ペレットを浸漬するか又は該ペレットを充填した紫外線透過可能な管に銅イオンを含有する水溶液を流通させる方法も採用し得る。
【0034】
また、本発明に用いられる紫外線とは1mμ〜390mμの範囲の光であり、所謂紫外線(1mμ〜190mμ)のみならず近紫外領域(290mμ〜390mμ)の範囲を含むものとし、特に300〜360mμの波長が得られるブラックライトランプの光が好適に使用される。
【0035】
本発明に用いられる反応器は特に限定されない。従来光化学反応に用いられるタイプの反応器がそのまま使用し得る。
【0036】
本発明において処理される銅イオンを含有する水溶液は、特に限定されない。一般に銅イオンを1000ppm以下含む場合などに用いられる。勿論、銅イオン濃度が高くなる程使用する酸化チタンも多くする必要があるため、あまりに高濃度の銅イオンを含む場合には、むしろ電解還元や薬剤による沈殿手段、或いはイオン交換等で銅の回収を行い、銅イオン濃度を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下として本発明を適用することが好ましい。
【0037】
かかる銅イオンを含有する水溶液は特に限定されないが、銅メッキ浴、特に無電解銅メッキ浴の廃液或いは、銅合金板や管の酸洗液(ピックリング液)、銅精錬の廃液等であり、該溶液中に有機物が混在していてもよい。実際、銅の無電解メッキ浴の廃液には、一般にエチレンジアミン四酢酸等のキレート化剤、シアン化ナトリウム、ホルムアルデヒド或いは界面活性剤等が含まれており、銅イオン(II)は、約20mg/l程度存在するが、本発明においては、全く問題なく銅イオンを回収することができる。
【0038】
本発明においては、処理する銅イオン含有水溶液に更に処理時に蟻酸ナトリウムや、蓚酸ナトリウムなど還元性の有機酸アルカリ金属塩等の犠牲ドナーを用いることも反応速度を増大し、或いは誘導期間を短縮する効果があるので好ましい。これらの犠牲ドナーの使用量は存在する銅イオンと同モル量程度でも良いが、過剰に加えるほど還元速度は大きくなる。しかし、12.7倍以上加えても、それによる反応速度の向上は見られない。
【0039】
また、銅イオンを含有する水溶液中に空気や酸素等の酸化性気体が溶存又は液上の雰囲気気体として存在している場合触媒となる酸化チタン内の励起電子が、それにより消費されるので、誘導期間の増大や、反応速度の低下を来たすので、一般に光還元を行う前に被処理水溶液に窒素ガス等の不活性ガスをバブルさせ、且つ反応器内の空気を追い出しておくことが好結果を生ずる。また光還元反応中も、連続的又は間歇的に不活性ガスを反応器内又は被処理溶液の貯槽に流通させておくことも極めて有効である。
【0040】
本発明による処理によって、被処理液中の銅イオンは、実質的に完全に除去することができる。すなわち銅イオン(II)は、金属銅として酸化チタン上に沈着し、溶液中には残存しないのである。かくして、濾過等により銅を沈着した酸化チタン(以後TiO‐Cuと記載することもある)は、溶液から容易に分離される。
【0041】
従って、例えば銅の無電解メッキ浴の場合等、銅を除去した後、再度無電解メッキ浴として循環使用することができる。
【0042】
またTiO‐Cuは、これを酸、例えば硫酸、塩酸又は硝酸等の強酸水溶液に浸漬することによって、銅イオンとして溶解させることにより、残った酸化チタンは実質的に活性を減じることなく再度光還元に循環再使用することができる。
【0043】
このため、本発明の特徴の一つは、銅イオンを含有する水溶液に紫外線を照射しつつゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンと接触させ、該酸化チタン上に銅を沈着又は両者の混合物を得る第1工程と前記工程で得られた酸化チタン‐銅よりなる固形物を濾過回収する第2工程と、更に該酸化チタン‐銅よりなる固形物に酸水溶液を接触させ、銅を溶触除去する第3工程と銅を除去されたゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンを第1工程に循環する第4工程よりなる、循環式銅イオンの回収、除去方法をも提供するものである。
【0044】
以下に実施例を示す。
(ゾル‐ゲル法酸化チタンの製造)
硝酸1.3mlを加えた180ml水溶液にチタンテトライソプロポキシド15mlを攪拌下に滴下して加えた。滴下後の溶液のpHは1以下であった。この溶液を室温で攪拌しつつ解膠した。3日後には溶液が透明となった。
【0045】
この溶液を、透析膜(Spectra/Por社製MWCO3500)を用いて透析により、pHが4以上となるまで酸の除去を行った。
【0046】
このゾル溶液を濃縮乾燥した後100〜500℃で焼成し、塊状の酸化チタンをスパチュラの先で破砕し、透明なペレットを得た。
【実施例1】
【0047】
Cu(NO・3HO、蟻酸ナトリウムの水溶液(Cu(II)50ppm、HCOONa 0.1M、pH3.6)、7.4mlに上記酸化チタン粉砕物0.38gを入れ、容器中に窒素ガスを導入しつつ、15Wのブラックライトを照射した。照射後、すぐに酸化チタンは茶褐色に色づき、銅の析出が見られた。
【0048】
6時間後、イオンクロマトグラフにより溶液中の銅イオン濃度を測定し、酸化チタン上に沈着捕集された銅の捕集率を求めたところ、78.7%であった。
【0049】
この酸化チタン‐銅混合物を濾過分離し、pH3.6の硝酸水溶液に入れ、放置したところCuが再び溶液中Cu(II)として溶け出し、42時間後には酸化チタン上の銅はほぼ完全に除去された。
【0050】
この酸化チタンを再び上記銅イオンの回収に供したところ、ほぼ同様の銅の回収率が得られた。
【実施例2】
【0051】
上記酸化チタンの破砕ペレット(概略の大きさ1cm×0.6cm×0.2cm)をそのまま用いる。
【0052】
実施例1と同じ組成の銅イオン含有水溶液500ml中にペレット1個を入れ、攪拌しつつ窒素雰囲気下にブラックライトを照射したところ、たちまち茶褐色となった。
【実施例3】
【0053】
上記ゾル‐ゲル法による酸化チタンの製造において、透析によりpHを4以上としたゾル溶液に4cm×0.8cmの酸化インジウムスズガラス(ITOという)を浸漬し、2cm/分の速度で引き上げ、30分間風乾する。これを5回繰り返し、1日風乾後、電気炉で100〜400℃、4時間焼成して、ITO基板上に形成した酸化チタン薄膜を得た。
【0054】
この酸化チタン薄膜を用い、銅イオンの捕集実験を行った。
【0055】
使用した銅イオン含有水溶液は、硝酸銅によりCu(II)50ppm、蟻酸ナトリウム0.1M、pH3.6の水溶液とし、この4mlを1cm光路長の分光器用セルにいれ、ふたをし、窒素ガスで空気を置換して6時間反応させる。
【0056】
この場合、銅イオンの捕集率を表1に示す。
【0057】
【表1】

【実施例4】
【0058】
実施例3と同様に行うが、基板上に酸化チタン薄膜の形成をスピンコート法により行う。なおコートは3回繰り返し行う。
【0059】
結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【実施例5】
【0061】
実施例4と同様に行うが、焼成温度500℃について、熟成時間を4〜10日とした例について表3に示す。
【0062】
【表3】

【実施例6】
【0063】
実施例3と同様に行うが、焼成温度200℃について、被処理液中の銅イオン濃度を50〜200ppmとした場合の例を表4に示す。
【0064】
【表4】

【実施例7】
【0065】
実施例4と同様に行うが、焼成温度500℃について、被処理液中の銅イオン濃度を50〜200ppmとした場合の例を表5に示す。
【0066】
【表5】

【実施例8】
【0067】
実施例4と同様に行うが、ITOガラスでなく、市販のスライドガラスをよく洗浄してから用いた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、水溶液中の銅イオンをほぼ完全に回収、除去し得る方法であり、しかも触媒が再生使用し得るため、銅の無電解メッキ浴廃液の処理等に有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンを含有する水溶液に紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンを接触させることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法。
【請求項2】
銅イオンを含有する水溶液にドナーを加えて紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンと接触させることを特徴とする請求項1に記載の銅の回収方法。
【請求項3】
銅イオンを含有する水溶液に不活性ガスを流通させ、系内の含酸素ガスを排除しつつ、且つ紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンと接触させることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の水溶液中の銅の回収方法。
【請求項4】
ゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンがチタンアルコキシドと硝酸とを水媒体中で混合し、pH1以下の酸性下に析出せしめ、100時間以上攪拌処理し、ついで、透析手段によりpHを3乃至4とした後、回収した酸化チタンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水溶液中の銅の回収方法。
【請求項5】
ゾル‐ゲル法によって得られる酸化チタンがチタンプロポキシドと硝酸とを水媒体中で混合し、pH1以下の酸性下に析出せしめ、100時間以上攪拌処理し、ついで、透析手段によりpHを3乃至4とした後、回収した酸化チタンであることを特徴とする請求項4記載の水溶液中の銅の回収方法。
【請求項6】
請求項4乃至5のいずれかにおいて光還元反応に用いられる酸化チタンは、100〜600℃の温度で一旦焼成して用いることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて光還元に用いられる酸化チタンは、ペレット化或いは基板上に付着させた薄膜としていることを特徴とする水溶液中の銅の回収方法。
【請求項8】
銅イオンを含有する水溶液に紫外線を照射しつつ、硝酸酸性水溶液を用いるゾル‐ゲル法により得られる酸化チタンと接触させ、該酸化チタン上に銅を沈着又は、両者の混合物を得る工程と、前記工程で得られた酸化チタン‐銅よりなる固形物を母液から濾過回収する工程と、更に該酸化チタン‐銅よりなる固形物を酸水溶液と接触させることにより、銅を溶解し、酸化チタンと銅とを分離する工程とよりなる水溶液中の銅の回収方法。

【公開番号】特開2006−249523(P2006−249523A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69208(P2005−69208)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】