説明

水田作業機

【課題】 線引きマーカ及び視認用のマーカは、機体の側部又は前部に配置されるため、機体の旋回における最外部となることが多く、機体旋回時に畦や周辺の壁面等に干渉するおそれがある。また、線引きマーカ及び視認用のマーカが干渉する場合には、機体旋回時に作業者が線引きマーカ及び視認用のマーカの各々を収納させる必要があり煩わしい。
【解決手段】 線引きマーカ44のマーカ支持部材112を機体の左右方向外側に回動させて線引きが行える状態である作用状態と、マーカ支持部材112を機体の左右方向内側に回動させて収納した収納状態に切替できる構成とし、視認用のマーカ46の視認用アーム155を前側に回動させる視認状態と、視認用アーム155を後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成とし、線引きマーカ44の収納状態への切替及び視認用のマーカ46の非視認状態への切替を機体の旋回時の諸操作に連動して行う連動機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次行程の走行位置を表土面に線引きする線引きマーカを備えた田植機や播種機等の水田作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次行程の走行用目印を表土面に線引きする線引きマーカを、上下に回動するマーカアームと、該マーカアームの先端部に設けた線引き作用部を備えて機体の側部に構成し、マーカアームを下側に回動させ線引き作用部を下降させて接地させ水田面に線引きする作用位置と、マーカアームを上側に回動させ線引き作用部を上昇させて対地浮上させ水田面に線引きしない非作用位置に切替できる構成とし、オペレータが視認することにより機体の位置の指標となる視認用のマーカを、前後に回動する視認用アームと、該視認用アームの先端部に設けた視認部を備えて機体の前部に構成し、視認用アームを前側に回動させ視認部を前側に移動させる視認状態と、視認用アームを後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成とし、作用位置と非作用位置にマーカアームを回動させるアクチュエータを設けた水田作業機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、線引きマーカを、機体の左右方向に回動するマーカ支持部材を備えて構成し、マーカ支持部材を機体の左右方向外側に回動させマーカアームを左右方向外側に移動させて線引きが行える状態である作用状態と、マーカ支持部材を機体の左右方向内側に回動させマーカアームを左右方向内側に移動させて収納した収納状態に切替できる構成とした水田作業機がある。
【特許文献1】特開2003−8号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術によると、線引きマーカ及び視認用のマーカは、機体の側部又は前部に配置されるため、機体の旋回における最外部となることが多く、機体旋回時に畦や周辺の壁面等に干渉するおそれがある。また、線引きマーカ及び視認用のマーカが干渉する場合には、機体旋回時に作業者が線引きマーカ及び視認用のマーカの各々を収納させる必要があり、煩わしい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するべく次の技術的手段を講じた。
請求項1記載の発明は、次行程の走行用目印を表土面に線引きする線引きマーカ(44)を、機体の左右方向に回動するマーカ支持部材(112)と、該マーカ支持部材(112)の先端部に設け上下に回動するマーカアーム(110)と、該マーカアーム(110)の先端部に設けた線引き作用部(111)を備えて機体の側部に構成し、マーカアーム(110)を下側に回動させ線引き作用部(111)を下降させて接地させ表土面に線引きする作用位置と、マーカアーム(110)を上側に回動させ線引き作用部(111)を上昇させて対地浮上させ表土面に線引きしない非作用位置に切替でき、マーカ支持部材(112)を機体の左右方向外側に回動させマーカアーム(110)を左右方向外側に移動させて線引きが行える状態である作用状態と、マーカ支持部材(112)を機体の左右方向内側に回動させマーカアーム(110)を左右方向内側に移動させて収納した収納状態に切替できる構成とし、オペレータが視認することにより機体の位置の指標となる視認用のマーカ(46)を、前後に回動する視認用アーム(155)と、該視認用アーム(155)の先端部に設けた視認部(156)を備えて機体の前部に構成し、視認用アーム(155)を前側に回動させ視認部(156)を前側に移動させる視認状態と、視認用アーム(155)を後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成とし、作用位置と非作用位置にマーカアーム(110)を回動させるアクチュエータ(115L,115R)と、線引きマーカ(44)の収納状態への切替及び視認用のマーカ(46)の非視認状態への切替を機体の旋回時の諸操作に連動して行う連動機構を設けた水田作業機とした。
【0006】
従って、通常の植付作業時は、マーカ支持部材(112)を作用状態にし、アクチュエータ(115L,115R)により線引きマーカ(44)を作用状態にして線引き作用部(111)を接地させ、次行程の走行用目印を表土面に線引きする。また、視認部を前側に移動させて視認用のマーカ(46)を視認状態にし、該視認用のマーカ(46)をオペレータが視認することにより機体の位置を判断し、所望の経路で機体を走行させる。機体の旋回時には、連動機構により、旋回時の諸操作に連動して線引きマーカ(44)及び視認用のマーカ(46)が機体内方側へ収納され、機体の最外半径が縮小される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、連動機構により、旋回時の諸操作に連動して線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が機体内方側へ収納され、機体の最外半径が縮小されるので、機体旋回時に線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が畦や周辺の壁面等に干渉するのを防止できる。また、作業者が線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の各々を収納させる格別の操作が不要になり、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は水田作業機の一例である乗用田植機を表している。この乗用田植機1は、走行車体2の後方に昇降リンク装置3を介して10条植えの苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0009】
走行車体2は、機体の前部に配したミッションケース10の左右側方に前輪ファイナルケース11,11を設け、該前輪ファイナルケースから外向きに突出する前輪車軸に前輪12,12を取り付けると共に、ミッションケ−ス10の背面部に前端部が固着されたメインフレーム13の後端部に後輪ギヤケース14,14をローリング自在に支持し、該後輪ギヤケースから外向きに突出する後輪車軸に主後輸15,15及び補助後輪16,16,17,17を取り付けている。
【0010】
エンジン20はメインフレーム13の上に搭載されている。そのエンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び変速機能付きの第二ベルト伝動装置22によってミッションケース10へ伝達される。ミッションケース10に伝達された回転動力は、該ケース内の主変速装置にて変速された後、走行動力と植付動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース11,11に伝達されて前輪12,12を駆動すると共に、残りが後輪伝動軸23,23を介して後輪ギヤケース14,14に伝達されて後輪15,15,16,16,17,17を駆動する。また、植付動力は、第一植付伝動軸24を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に一旦伝達され、さらに植付クラッチケース25から第二植付伝動軸26を介して苗植付部4へ伝達される。
【0011】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方部は各種操作機構を内蔵するボンネット32で、その上方に前輪12,12を操向操作するハンドル33が設けられている。座席31及びボンネット32の周辺部には各種操作レバーが設けられている。L1は主変速レバーで、主変速装置のギヤチエンジをする。L2は変速レバーで、第二ベルト伝動装置22の変速操作をする。L3は植付昇降レバーで、苗植付部の昇降と植付クラッチケース25内の植付クラッチの入・切を行う。
【0012】
35はメインステップ、36は拡張ステップ、38はリヤステップ、39は補助リヤステップで、これらのステップ上で苗補給等の作業を行う。尚、37は鉄製の棒材にてループ状に形成され拡張ステップ36の外側部に取り付けられた昇降ステップであって、機体への乗り降り時に足を掛けて容易に且つ安全に機体への乗り降りが行なえるように設けられている。
【0013】
40は補給用の苗箱を載置しておく苗枠で、上下2段の苗載レール150を備えている。該苗載レール150は、左右方向に延びるレールフレーム151を前後に設け、該レールフレーム151に設けた前後2列に配置されたローラ41によって苗箱を左右移動させられる構成となっている。前後のレールフレーム151の間は空間となっている。苗枠40に載置された苗箱から苗植付部4へ苗を補給するときは、先ず上段の苗載レール150上の苗を補給し、上段の苗載レール150上の空の苗箱を取り除いてから、下段の苗載レール150上の苗を補給する。このとき、下段の苗載レール150の前側のレールフレーム151を側面視で後側のレールフレーム151の位置に設けた回動中心軸152回りに回動する回動アーム153により上側及び後側に回動させ、側面視で下段の苗載レール150上の苗箱154の上面の延長線が上段の苗載レール150の前後のレールフレーム151間を通過するようにする。これにより、上段の苗載レール150の前後のレールフレーム151間から、苗取り板等により下段の苗載レール150上の苗を容易に取り出すことができる。
【0014】
44は次行程で機体の左右中心が通る位置の目印を表土面(水田面)に線引きする線引きマーカである。この線引きマーカ44については後で詳述する。45は前行程で植付けた最外側の既植条の位置を示すサイドマーカである。46は機体の左右中央を示す指標となる視認用のマーカ(センターマーカ)である。この視認用のマーカ46は、左右中央に配置された座席31に座るオペレータが視認することにより圃場における機体の左右中央の位置を判断するものであり、下端部を中心に前後に回動する視認用アーム155と、該視認用アーム155の先端部に設けた視認部156を備えて機体の前部に構成され、視認用アーム155を前側に回動させ視認部156を前側に移動させる視認状態と、視認用アーム155を後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成となっている。従って、視認用のマーカ46を視認状態にし、オペレータの視認による圃場内の適所と視認部156の相対関係により機体の左右方向の位置を判断し、オペレータは、機体の左右中央位置が圃場内において所望の位置となるようハンドル33を操作するのである。一般的には、オペレータから見て、前行程で線引きマーカ44が引いた表土面の線と視認部156が合致するように機体を操向操作する。尚、視認状態にして視認部156を前側に移動させることにより、オペレータと視認部156の間の間隔を大きくできるので、機体の位置をより適確に判断できるのである。また、視認用アーム155は下端部を中心に左右にも回動できる構成となっており、伸縮する視認用アーム155を適当な長さに伸ばした状態で機体側方に転倒させれば、機体側方の対象物、例えば畦までの距離を示す指標となる。
【0015】
尚、サイドマーカ45に畦や既植苗の上端までの上下方向の間隔を検出する間隔センサを設け、サイドマーカ45の高さを変更する専用の高さ変更モータを設け、間隔センサの検出に基づき畦や既植苗までの上下方向の間隔が所定の間隔となるようサイドマーカ45の高さを自動的に変更する構成としてもよい。これにより、畦や既植苗の高さに合わせてサイドマーカ45の高さを変更でき、サイドマーカ45が畦や既植苗に干渉するのを防止すると共に、畦や既植苗の高さや圃場の耕盤の深さに関係なくサイドマーカ45を畦や既植苗の指標として視認し易くできる。
【0016】
昇降リンク装置3は、メインフレーム13の後端部に固定して設けたリンクベースフレーム50に回動自在に取り付けられた上リンク51及び下リンク52,52を備え、これら上下リンクの後端部に縦リンク53が連結されている。そして、縦リンク53の下端部から後方に突出する軸受部に苗植付部側に固着した連結軸54が回転自在に挿入連結され、苗植付部4が連結軸54を中心にしてローリング自在に装着される。基部側がメインフレーム13に固着した支持部材に枢支され、ピストンロッド側が上リンク51の基部に一体に設けたスイングアーム57の下端部に連結されている油圧シリンダ56を伸縮させると、各リンク51,52,52が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0017】
苗植付部4は10条植えの構成で、フレームを兼ねる伝動ケース60、苗を載せておく苗載台61、該苗載台上の苗を圃場に植え付ける植付条数分の苗植付装置62,…、苗植付けに先行して泥面を整地するフロート63,…等を備えている。フロート63,…が泥面に接地する位置まで苗植付部4を下降させ、走行車体2を前進させると、フロート63,…が泥面を滑走して整地し、その整地跡に苗植付装置62,…が苗載台61の苗を植付ける。尚、フロート63の迎い角(前後傾斜角度)を検出するフロートセンサを設け、該フロートセンサの検出に基づいて油圧シリンダ56を作動制御し、苗植付部4を所定の対地高さとなるよう昇降制御する構成となっている。
【0018】
図3に示すように、伝動ケース60は、左右中央部に位置する苗載台駆動ケース65の背面に植付伝動ケース66−3の前端部を固着し、また苗載台駆動ケース61の左右側面に第一連結パイプ67,67の内端部を固着し、その第一連結パイプ67の外端部に植付伝動ケース66−2,66−4の前部内面を固着し、その植付伝動ケース66−2,66−4の前部外面に第二連結パイプ68,68の内端部を固着し、その第二連結パイプ68,68の外端部に植付伝動ケース66−1,66−5の前部内面を固着した構成になっている。各植付伝動ケース66−1〜66−5の後部には植付駆動軸69,…が支承され、該植付駆動軸の左右突出部に苗植付装置62が取り付けられている。
【0019】
走行車体2のミッションケ−ス10より伝動される苗植付部駆動用動力が、伝動ケース60の入力部に伝動される。その回転動力が、苗載台駆動ケース61の下部を貫通して植付伝動ケース66−2〜66−4の前部と第一連結パイプ67,67の内部に支承されたセンター植付主軸70Cに伝えられ、更に、植付畦クラッチ71−2〜71−4によってセンター植付主軸70Cと伝動入・切可能なチエン72,…を介して植付伝動ケース66−2〜66−4の各植付駆動軸69,…へ伝動される。また、センター植付主軸70Cの回転動力が、植付畦クラッチ71−1,71−5によって、第二連結パイプ68,68の内部と植付伝動ケース66−1,66−5の前部に支承されたサイド植付主軸70L,70Rに伝動入・切可能に伝えられ、更にサイド植付主軸70L,70Rからチエン72,72を介して植付伝動ケース66−1,66−5の植付駆動軸69,69へ伝動される。各植付畦クラッチ71,…は個別に入・切操作するようになっているので、苗植付装置62,…を2条を1ユニットとして駆動停止させることができる。また、センター植付主軸70Cの回転は、苗送り用のリードカム軸73(図4に図示)へも伝動される。
【0020】
苗載台61はフェンスによって植付条数分の苗載部61−1〜61−10に区分されており、各苗載部ごとに苗を苗取出口側へ移送する左右一対で1組の苗送りベルト85が設けられている。図5は苗送りベルトの伝動機構図である。苗載台80が左右行程の端部に到達すると、リードカム軸73に取り付けられた苗送りカム86,86が中継軸87L,87Rに取り付けられた苗送り駆動アーム88,88に当接して、中継軸87L,87Rを所定角度回転させる。その回転が、リンク機構89L,89Rを介して、苗送りベルト85,…を巻き掛けた駆動ローラ90,…が嵌合する苗送り駆動軸91L,91Rに伝達される。これにより、苗送りベルト85,…が所定量だけ作動する。
【0021】
左側苗送り駆動軸91Lの回転力は、苗送り畦クラッチ93(1)を介して第1条の駆動ローラ90(1)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(2)を介して第2条の駆動ローラ90(2)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(3・4)を介して第3条及び第4条一体の駆動ローラ90(3・4)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(5)を介して第5条の駆動ローラ90(5)へ伝達する。左側苗送り駆動軸91Lは第1条と第2条の境界部で2分割され、両部分が爪クラッチ94Lで伝動連結されている。
【0022】
また、右側苗送り駆動軸91Rの回転力は、苗送り畦クラッチ93(6)を介して第6条の駆動ローラ90(6)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(7)を介して第7条の駆動ローラ90(7)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(8)を介して第8条の駆動ローラ90(8)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(9)を介して第9条の駆動ローラ90(9)へ伝達し、苗送り畦クラッチ93(10)を介して第10条の駆動ローラ90(10)へ伝達する。右側苗送り駆動軸91Rも第8条と第9条の境界部で2分割され、両部分が爪クラッチ94Rで伝動連結されている。
【0023】
第1条と第2条の苗送り畦クラッチ93(1),106(2)、第5条と第6条の苗送り畦クラッチ93(5),93(6)、第7条と第8条の苗送り畦クラッチ93(7),93(8)、及び第9条と第10条の苗送り畦クラッチ93(9),93(10)は、図5に示すように、互いのクラッチアーム93a,93aがリンク93b,93bを介して共通の操作ワイヤ93cに繋がれており、両苗送り畦クラッチが連動して入り・切り操作されるようになっている。これにより、苗植付装置の場合と同様に、苗送りベルトの駆動を2条を1ユニットとして停止させられる。対応する条の植付畦クラッチ77と苗送り畦クラッチ93とは互いに連動するようになっている。
【0024】
図6及び図7は植付畦クラッチ及び苗送り畦クラッチの入・初を切り替える切替機構を示す図である。対応する2条の植付畦クラッチ77及び苗送り畦クラッチ93に繋がる計5本のケーブル100,…が共通の回動軸101に取り付けた操作アーム102,…の一端部にそれぞれ連結されている。操作アーム102,…の他端部にはローラ103,…が回転自在に支持されており、このローラ103,…がカム軸104に取り付けたカム105,…にそれぞれ摺接している。カム軸104は電動モータ106によって回転駆動する。107はモータ106の出力軸に取り付けたピニオン、108はカム軸に取り付けたギヤであり、両者107,108は互いに噛み合っている。
【0025】
カム105の小径部にローラ103が摺接するときは植付畦クラッチ77及び苗送り畦クラッチ93が「入」で、カム105の大径部にローラ103が摺接するときは植付畦クラッチ77及び苗送り畦クラッチ93が「切」になる。各カム105,…は同じ形状であるが、位相が順にずらしてある。このため、モータ106を駆動してカム軸104を回動させると、右の条から左の条もしくはその逆に両クラッチ77,93の「入」と「切」とが切り替わる。回動軸101の角度をポテンショメータ109で検出し、その検出値に基づきモータ104の出力を制御することにより、左右いずれかから順に2条単位で任意の植付条数分だけ苗植付けを停止させることができる。
【0026】
上記構成によれば、1組のモータ106、ポテンショメータ109、及び制御回路で全条を制御することができ、コストダウンが図れる。また、カム105の径が小さく、切替機構全体をコンパクトに構成できると共に、各ユニットのケーブルの向きがほぼ同じであるので、ケーブルの配索が容易である。
【0027】
尚、植付畦クラッチ77の停止に連動して、フロートセンサの迎い角の制御目標をフロート63が前上がり姿勢となる側に補正して、苗植付部4の昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する構成となっている。これにより、表土面が硬く荒れ易い圃場内の畦に近い所で植付畦クラッチ77を停止させるが、圃場内の畦に近い所でフロート63による整地作用を確実に得ることができ、圃場の整地性が向上する。尚、植付畦クラッチ77の停止に代えて、後述するマーカ自動切替スイッチ140が「自動」以外の設定であるとき、ハンドル33の操向操作で苗植付部4が自動的に上昇するオートリフト制御を非作動状態に設定したとき、あるいは旋回終了にあたり苗植付部4の下降及び駆動を自動的に行う自動旋回制御を非作動状態に設定したとき、苗植付部4の昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する構成としてもよい。フロート63が底面の半分以上が対地浮上するほどの大きな前下がり姿勢であることをフロートセンサが検出したとき、苗植付部4の昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する構成とすれば、フロート63の接地を促すことができ、整地の確実化及び浮き苗を防止できる。また、ハンドル33を小刻みに左右に操向操作したことをハンドル切れ角センサが検出すると、苗植付部4の昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する構成とすれば、機体のふらつきによる苗植付部4の対地浮上を防止でき、整地の確実化及び浮き苗を防止できる。
【0028】
参考例として、ハンドル33の操向操作で苗植付部4が自動的に上昇するオートリフト制御を非作動状態に設定したとき、苗植付部4の昇降制御の制御感度を敏感側に補正する構成とすれば、変形田等で屈曲する経路で走行させながら植付作業をするためにオートリフト制御を非作動状態に設定したとき、フロート63による左右方向への泥押し及び水押しを抑制できる。オートリフト制御を非作動状態に設定し、且つハンドル33を操向操作したことをハンドル切れ角センサが検出したときのみ、苗植付部4の昇降制御の制御感度を敏感側に補正する構成としてもよい。
【0029】
また、植付畦クラッチ77の停止に連動して、オートリフト制御を非作動状態に自動的に切り替える構成としてもよい。これにより、走行経路が屈曲し易い畦際近くでの植付作業でオートリフト制御が作動するのを防止でき、作業性が向上する。尚、植付畦クラッチ77の停止に代えて、後述するマーカ自動切替スイッチ140が「自動」以外の設定であるとき、
次に、線引きマーカ44について説明する。線引きマーカ44は、図8乃至図10に示すように、上下に回動自在に支持されたマーカアーム110の先端部に線引き作用部111を垂直に取り付けてなり、線引き作用部111の先端が接地するように転倒した作用位置と、マーカアーム110がほぼ垂直に起立した非作用位置とに回動させるようになっている。また、マーカアーム110を支持するマーカ支持部材112を、ミッションケ−ス10から左右側方に張り出して設けた枠型フレーム113に枢支軸113aを介して水平に回動自在に取り付けている。マーカ支持部材112にはマーカ収納用ケーブル157のインナーワイヤ157aの一端を連結し、マーカ収納用ケーブル157のアウターケーブル157bの一端側を枠型フレーム113に取り付けている。マーカ収納用ケーブル157の他端側は、インナーワイヤ157aを昇降リンク装置3を作動させる油圧シリンダ56のピストンロッドに連結し、アウターケーブル157bを油圧シリンダ56に取り付けている。そして、苗植付部4を上昇させるべく油圧シリンダ56のピストンロッドが作動すると、マーカ収納用ケーブル157のインナーワイヤ157aが引かれてマーカ支持部材112が後方に回動された収納状態となり、線引きマーカ44を機体から左右に突出しない状態に収納する構成となっている。尚、マーカ支持部材112と枠型フレーム113の間には引張バネであるマーカ作用スプリング113bを設けており、該マーカ作用スプリング113bによりマーカ支持部材112を左右方向に突出した作用状態に回動する側に付勢している。従って、苗植付部4を下降させるべく油圧シリンダ56が作動すると、マーカ収納用ケーブル157のインナーワイヤ157aが弛んでマーカ作用スプリング113bによりマーカ支持部材112が作用状態に回動する。
【0030】
同様に、視認用のマーカ46の視認用アーム155には非視認用ケーブル158の非視認用インナーワイヤ158aの一端を連結し、非視認用ケーブル158の非視認用アウターケーブル158bの一端側を機体側に取り付けている。非視認用ケーブル158の他端側は、非視認用インナーワイヤ158aを昇降リンク装置3を作動させる油圧シリンダ56のピストンロッドに連結し、非視認用アウターケーブル158bを油圧シリンダ56に取り付けている。そして、苗植付部4を上昇させるべく油圧シリンダ56のピストンロッドが作動すると、非視認用ケーブル158の非視認用インナーワイヤ158aが引かれて視認用アーム155が後方に回動された非視認状態となり、視認用のマーカ46を機体の前方に突出しない状態に収納する構成となっている。尚、視認用アーム155の下端部にはトルクスプリングである視認用スプリング159を設けており、該視認用スプリング159により視認用アーム155を前側へ突出させる視認状態に回動する側に付勢している。従って、苗植付部4を下降させるべく油圧シリンダ56が作動すると、非視認用ケーブル158の非視認用インナーワイヤ158aが弛んで非視認用スプリング159により視認用アーム155が視認状態に回動する。
【0031】
よって、マーカ収納用ケーブル157、マーカ作用スプリング113b、非視認用ケーブル158及び視認用スプリング159等により連動機構が構成され、この連動機構により、線引きマーカ44の収納状態への切替及び視認用のマーカ46の非視認状態への切替を機体の旋回時の諸操作である植付昇降レバーL3による苗植付部4の上昇操作に連動して行う構成となっている。尚、線引きマーカ44の収納状態への切替作動及び視認用のマーカ46の非視認状態への切替作動は、同時に作動するように設定されており、旋回時の諸操作に連動して速やかに行える構成となっている。尚、左右のマーカ収納用ケーブル157及び非視認用ケーブル158の計3本のケーブルが、並列に配置されて油圧シリンダ56に取り付けられている。
【0032】
マーカ支持部材112の長さは、後方に回動させた収納状態で昇降ステップ37の前端部よりも前方に位置する長さになっており、左右線引きマーカ44・44を機体から左右に突出しない状態に収納しても、作業者は自由に昇降ステップ37に足を掛けて機体に容易に且つ安全に乗り降りできる構成となっており、作業性がとても良い。尚、マーカ支持部材112の長さは、後方に回動させた収納状態で昇降ステップ37の前端部に少し重複する程度で(昇降ステップ37が乗り降りに支障ない程度にあいている状態で)あっても、左右線引きマーカ44・44を機体から左右に突出しない状態に収納した場合、作業者は自由に昇降ステップ37に足を掛けて機体に容易に且つ安全に乗り降りでき同様に作業性は良い。
【0033】
また、マーカ支持部材112の長さが短い分だけ、マーカアーム110の長さは長くなっており、収納状態で線引き作用部111は機体からかなり高い位置になっており、作業者が昇降ステップ37に足を掛けて機体に乗り降りする際に、作業者は線引き作用部111が邪魔にならず作業性が良い。
【0034】
線引きマーカ44の上下回動はアクチュエータである電動モータ115によって行う。電動モータ115はマーカ支持部材112の先端部付近に設けられ、該モータの出力軸に取り付けたピニオン116とマーカアーム110の回動支点軸117に取り付けたギヤ118とが噛み合っている。マーカアーム110に対し回動自在な回動支点軸117にはギヤ118と反対側の端部に円板119が取り付けられ、モータ115の駆動によるギヤ118及び円板119のトルクを、ライニング122と板バネ123とを介してマーカアームの基部プレート110aに伝える。この構成とすることにより、線引きマーカ44に一定以上の荷重がかかった場合、線引きマーカ44とギヤ118及び円板119との伝動が断たれるので、モータ115に高負荷がかかるのを回避できる。マーカアーム110の角度はポテンショメータ(マーカ角度センサ)124によって検出される。
【0035】
図16の構成としてもモータ115に高負荷がかかるのを回避させられる。この構成は、マーカアーム110に回動支点軸117が固定、回動支点軸117にギヤ118が回動自在に嵌合しており、ギヤ118から回動支点軸117ヘボールクラッチを介してトルクを伝えるようになっている。ボールクラッチは、回動支点軸117に一体回転かつ軸方向に摺動自在なクラッチ板126の凹部及びギヤ118の凹部にスチールボール127を収容し、クラッチ板126を圧縮スプリング128によってギヤ118の側に付勢している。通常はスチールボール127を介してギヤ118から回動支点軸117ヘトルクが伝えるが、線引きマーカ44に一定以上の荷重がかかると、圧縮スプリング128の張力に抗してクラッチ板126が押し戻されることにより、スチールボール127がクラッチ板126の凹部から外れてトルクの伝動が断たれる。
【0036】
マーカ支持部材112とマーカアームの基部プレート110aとの間には、線引きマーカ44を起立させる側に付勢する引張りスプリング130が張設されている。これにより、起立時にモータ115にかかる負荷が軽減する共に、運搬時や路上走行時に線引きマーカ44が非作用位置で安定する。
【0037】
マーカ支持部材112とマーカアーム110の連結部には、モータ115やポテンショメータ124を覆うカバー131が取り付けられている。図示のようにモータ115は背面視で斜めに設けることにより、カバー131をコンパクトにできる。
【0038】
図11は線引きマーカの位置を制御するマーカ制御装置のブロック図である。マーカ自動切替スイッチ140は、左右の線引きマーカを自動制御で作用位置と非作用位置とに回動させる「自動」、左右両方の線引きマーカを作用位置にする「両出し」、左右両方の線引きマーカを非作用位置にする「切」、左の線引きマーカだけを作用位置にする「左」、及び右の線引きマーカだけを作用位置にする「右」の各操作位置を有する。マーカ高さ調節スイッチ141は、作用位置における線引きマーカの高さ目標値を調節する調節具である。尚、マーカ高さ調節スイッチ141は、ハンドル33の直ぐ下に設けられ、植付作業をしながら操作できる。マーカ高さリセットスイッチ142は、苗植付部を上昇させるごとに線引きマーカの高さ目標値をリセットするか否かを選択するスイッチで、前記マーカ高さ調節スイッチ141の直ぐ右側に設けられている。キースイッチ143は、エンジンを始動及び停止させる。植付昇降レバーセンサ144は、植付昇降レバーL3の操作位置を検出する。主変速レバーセンサ145は、主変速レバーL1の操作位置を検出する。昇降リンクセンサ146は、上リンク51の角度を検出する。左右傾斜センサ147は、走行車体の左右傾斜を検出する。マーカ角度センサ124L,124Rは、線引きマーカの角度を検出する。これらスイッチ及びセンサが制御部148の入力側に接続され、アクチュエータである左マーカ用モータ115L及び右マーカ用モータ115Rが制御部148の出力側に接続されている。
【0039】
図12は制御部による主なマーカ回動制御の流れを示すフローチャートである。各スイッチ及びセンサからの信号を読み込んだ後(S1)、まずキースイッチ143の状態を判断する(S2)。キースイッチ143がONなら次に進むが、キースイッチ143がOFFなら後述する高さ目標値演算制御で設定された線引きマーカの高さ目標値をリセットして(S3)から最初に戻る。高さ目標値は圃場の状況に合わせて設定される数値であり、これをエンジンが切れる(キースイッチOFF)とリセットすることにより、次回行われる別の圃場での作業の際に前回の高さ目標値を持ち越さないようにしている。この実施の形態では、一旦設定された高さ目標値をリセットするリセット手段がキースイッチ143になっているが、作業圃場の変更に起因して操作される他の操作具をリセット手段としてもよい。
【0040】
キースイッチ143がONの場合、昇降リンクセンサ146の状態を判断すると共に(S4)、主変速レバーセンサ145の状態を判断する(S5)。そして、昇降リンクセンサ146が「下降域(苗植付部が作業位置にある状態)」である場合、又は昇降リンクセンサ146が「下降域」でなく、かつ主変速レバーセンサ145が「後進」である場合には、高さ目標値演算制御(S6)に進む。昇降リンクセンサ146及び主変速レバーセンサ145が上記以外の状態である場合は、最初に戻る。
【0041】
高さ目標値演算制御(S6)で高さ目標値を設定したならば、次にマーカ自動切替スイッチ140の状態を判断し(S7)、それに応じて下記の制御を行う。マーカ自動切替スイッチ140が「自動」なら、後述するマーカ左右切替制御を行う(S8)。「切」なら、左右マーカ用モータ115L,115Rにマーカを起立させるように出力する(S9)。「面出し」なら、高さ目標値に基づいて左右マーカ用モータ115L,115Rに出力する(S10)。「左」なら、高さ目標値に基づいて左マーカ用モータ115Lに出力する(S11)と共に、右マーカ用モータ115Rに線引きマーカを起立させるように出力する(S12)。「右」なら、高さ目標値に基づいて右マーカ用モータ115Rに出力する(S13)と共に、左マーカ用モータ115Lに線引きマーカを起立させるように出力する(S14)。これらの制御の後、後述の障害物対処制御(S15)をしてから最初に戻る。
【0042】
高さ目標値演算制御は図13のフローチャートに示す順序で行う。まず、左右傾斜センサ147値と昇降リンクセンサ146値とから左右の高さ目標値を演算する(S6−1)。詳しくは、機体が左右傾斜している場合、低位側については高さ目標値を高く設定し、高位側については高さ目標値を低く設定する。また、昇降リンクセンサ146値から圃場の耕盤深さを判定し、耕盤の浅い圃場では機体の沈み込みが少ないので高さ目標値を低く設定し、逆に耕盤の深い圃場では高さ目標値を高く設定する。
【0043】
そして、線引きマーカが「作用位置」にある場合(S6−2)、マーカ高さ調節スイッチ141の状態を判断する(S6−3)。操作がないならそのまま次に進み、「下」操作があるなら前記高さ目標値を下げ側に補正(S6−4)してから次に進み、「上」操作があるなら前記高さ目標値を上げ側に補正(S6−5)してから次に進む。苗植付部を昇降させなくても、或は植付作業中であっても、いつでもマーカ高さ調節スイッチ141の操作により線引きマーカを作用位置と非作用位置とに切り替えることができる。これは、線引きマーカの上下回動を電動モータで行うことにより可能になっている。尚、前記マーカ高さ調節スイッチ141は、「上」操作位置と「下」操作位置との間に復帰位置を設けた復帰式のスイッチであって、オペレ−タが「上」又は「下」操作する度に所定間隔おきにマーカの高さ目標値を上げ側又は下げ側に順次補正して変更する構成となっている。
【0044】
尚、高さ目標値は所定の設定可能領域内に設定されるようになっており、上述の演算による高さ目標値が前記設定可能領域から逸脱するときは、その逸脱する側となる設定可能領域の境界値を高さ目標値としてマーカ回動制御を行うようになっている。
【0045】
次いで、マーカ高さリセットスイッチ142がONであり(S6−6)、かつ昇降リンクセンサ146が「上昇域」なら(S6−7)、高さ目標値をリセット(S6−8)してから最初に戻る。それ以外の場合は、そのまま最初に戻る。このようにマーカ高さリセットスイッチ142で高さ目標値をリセットするか否かを選択できるようにしておけば、圃場や作業状況に適した制御を選べる。
【0046】
マーカ左右切替制御は図14のフローチャートに示す順序で行う。苗植付装置の上昇に連動して、前回作用位置にあった線引きマーカは次回非作用位置になり、前回非作用位置にあった線引きマーカは次回作用位置になるように周知の制御方法にて制御する。
【0047】
障害物対処制御は図15のフローチャートに示す順序で行う。下げ出力されてから所定時間Aが経過し(S15−1)ているにもかかわらず、線引きマーカが高さ目標値まで回動していない(S15−2)なら、線引きマーカが障害物に当たっている可能性があるので、下げ出力を所定時間Bだけ停止する(S15−3)。この間に機体が移動して線引きマーカが障害物から離れる。下げ出力を停止する代わりに、上げ出力するようにしてもよい。S15−1及びS15−2の判定がいずれかがNOである場合は、S15−3を通らずに次に進む。
【0048】
また、上げ出力されてから所定時間Aが経過し(S15−4)ているにもかかわらず、線引きマーカが高さ目標値まで回動していない(S15−5)なら、線引きマーカが障害物に当たっている可能性があるので、上げ出力を停止する(S15−6)。そして、マーカ自動切替スイッチ140を該当する側の線引きマーカが上がるように操作されたなら(S15−7)、上げ出力の停止を解除する(S15−8)。このように線引きマーカを上げる人為操作があるまで上げ出力の停止を解除しないようにすれば、確実に線引きマーカと障害物との干渉を外すことができる。S15−7を、植付昇降レバーが「苗植付部上げ」に操作されたらS15−8に進むようにしてもよい。
【0049】
図17に、上述したマーカ回動制御における不感帯変更制御のフローチャートを示す。この不感帯変更制御は、左右マ−カ用モ−タ115L,115Rの作動制御におけるマーカ角度センサ124L,124Rの不感帯領域を設定変更するようになっており、図12に示すフローチャートの制御ル−チンとは別のル−チンで実行される。マ−カの高さ目標値が標準値から上げ側のとき、高さ目標値に対して所定量A上げ側の値から高さ目標値に対して前記と同量である所定量A下げ側の値までの検出幅2Aの領域を不感帯領域とする(S17)。一方、マ−カの高さ目標値が標準値より下げ側のとき、高さ目標値から高さ目標値に対して所定量2A下げ側の値までの検出幅2Aの領域を不感帯領域とする(S18)。そして、左右マ−カ用モ−タ115L,115Rの作動制御において、この不感帯領域にマーカ角度センサ124L,124Rの検出値が到達すると、マ−カ用モ−タ115L,115Rの作動を停止するようになっている。従って、高さ目標値が標準値より下げ側のとき、高さ目標値に対して下げ側(低位側)の不感帯領域が、高さ目標値が標準値から上げ側のときと比較して検出幅2Aとなり広く設定される。尚、高さ目標値が標準値のとき、マ−カア−ム110が機体左右方向にほぼ平行になり、機体が左右方向水平の状態で線引き作用部111が鉛直に向くようになっている。
【0050】
尚、前記高さ目標値の標準値は高さ目標値の設定可能領域において下げ側寄りの値に設定されており、該標準値より下げ側の設定可能領域を標準値より上げ側の設定可能領域より小さくしている。これにより、オペレ−タのマーカ高さ調節スイッチ141の操作により線引きマーカ44を極端に下降させるようなことを防止し、線引きマーカ44の破損を防止すると共に、マーカ高さ調節スイッチ141により線引きマーカ44の上昇側の操作は広範囲で行えるようにして線引きマーカ44を地面から浮上する非作用位置まで上昇させることができるようにし、マーカ高さ調節スイッチ141による線引きマーカ44の操作性の向上を図っている。尚、マーカ高さ調節スイッチ141の「上」及び「下」の1回の操作当たりのマ−カア−ム110の回動角度が同一になるように、マーカ高さ調節スイッチ141の操作に伴って高さ目標値を変更する構成となっている。
【0051】
キースイッチ143がONになってから、苗植付部を昇降させる操作、例えば植付昇降レバーの操作や主変速レバーを「後進」にする操作があってから上記マーカ回動制御を開始するようにすると、線引きマーカが不用意に回動するのを防止できる。また、振動等により線引きマーカが自重で下方に回動するのを防止するために、常時マーカ角度センサ124L,124Rで線引きマーカの角度を監視し、それが適正角度に保たれるようにマーカ用モータ115L,115Rに出力するように構成するのが好ましい。
【0052】
図18は、上述のようにマーカ高さ調節スイッチ141の操作から高さ目標値を設定してマーカ用モータ115L,115Rを作動制御する代わりに、マーカ高さ調節スイッチ141の操作に基づいて直接マーカ用モータ115L,115Rを作動させる制御のフロ−チャ−トを示すものである。この制御は、マーカ高さ調節スイッチ141を「上」又は「下」操作すると(S19)、マーカ角度センサ124L,124Rの検出値に拘らずその操作した側に一定時間マーカ用モータ115L,115Rを作動させる(S20)。そして、マーカ高さ調節スイッチ141を操作してから所定時間経過したことを検出すると(S21)、マーカ角度センサ124L,124Rの検出値を制御部148が読み込み(S22)、その検出値を記憶し(S23)、苗植付部4を上昇させて機体を旋回した後に左右反対の線引きマーカ44を作用位置に移動させるとき等、一旦線引きマーカ44を非作用位置に移動させた後に作用位置に移動させるとき、マーカ角度センサ124L,124Rの検出値が記憶した値となるようマーカ用モータ115L,115Rに出力させるものである。尚、マーカ角度センサ124L,124Rの検出値を制御部148が読み込むタイミングは、マーカ用モータ115L,115Rの作動が停止した後、0.2秒以上経過したときに設定されており、マーカ用モータ115L,115Rの作動停止後に所定時間経過したときになっている。
【0053】
この構成によると、マーカ用モータ115L,115Rがマーカ高さ調節スイッチ141による操作した方向のみ作動するので、マーカ高さ調節スイッチ141による操作方向とは逆側へ線引きマーカ44が移動することが防止され、オペレ−タに違和感を与えるようなことを防止できると共に、マーカ高さ調節スイッチ141の操作に伴って確実にマーカ用モータ115L,115Rが操作した側に作動するので、線引きマーカ44が操作した側へ移動したことをオペレ−タが認識でき、マーカ高さ調節スイッチ141による操作方向に線引きマーカ44が移動しないとオペレ−タが誤認するようなことを防止できる。また、タイミングがマーカ用モータ115L,115Rの作動停止後に所定時間経過したときにマーカ角度センサ124L,124Rの検出値を読み込んで記憶するようになっているので、マーカ用モータ115L,115Rの作動停止後のマ−カア−ム110の振動が治まって適正に安定したマーカ角度センサ124L,124Rの検出値を読み込むことができ、以降の線引きマーカ44の移動目標を正確に読み込むことができる。仮に、マーカ用モータ115L,115Rの作動停止直後のマーカ角度センサ124L,124Rの検出値を読み込むようにすると、停止時のマ−カア−ム110の振動により前記検出値がばらつき、線引きマーカ44の移動目標を正確に設定できない虞がある。
【0054】
また、上述の構成において、マーカ高さ調節スイッチ141を「下」操作したときのマーカ用モータ115L,115Rの作動時間より、「上」操作したときのマーカ用モータ115L,115Rの作動時間を長く設定しており、線引きマーカ44の自重に抗して作動する上げ側のマーカ用モータ115L,115Rの作動時間を長くすることにより、マーカ高さ調節スイッチ141の1回当たりの操作に伴う線引きマ−カ44の移動量を上げ側と下げ側とで近づけて略均一になるようにし、操作するオペレ−タに違和感を生じさせないようにしている。上げ側と下げ側とのマーカ用モータ115L,115Rの作動時間を同一にすると、線引きマ−カ44の移動量が上げ側と下げ側とで大きく相違する虞がある。
【0055】
以上により、この乗用田植機1は、次行程の走行用目印を表土面に線引きする線引きマーカ44を、機体の左右方向に回動するマーカ支持部材112と、該マーカ支持部材112の先端部に設け上下に回動するマーカアーム110と、該マーカアーム110の先端部に設けた線引き作用部111を備えて機体の側部に構成し、マーカアーム110を下側に回動させ線引き作用部111を下降させて接地させ表土面に線引きする作用位置と、マーカアーム110を上側に回動させ線引き作用部111を上昇させて対地浮上させ表土面に線引きしない非作用位置に切替でき、マーカ支持部材112を機体の左右方向外側に回動させマーカアーム110を左右方向外側に移動させて線引きが行える状態である作用状態と、マーカ支持部材112を機体の左右方向内側に回動させマーカアーム110を左右方向内側に移動させて収納した収納状態に切替できる構成とし、オペレータが視認することにより機体の位置の指標となる視認用のマーカ46を、前後に回動する視認用アーム155と、該視認用アーム155の先端部に設けた視認部156を備えて機体の前部に構成し、視認用アーム155を前側に回動させ視認部を前側に移動させる視認状態と、視認用アーム155を後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成とし、作用位置と非作用位置にマーカアーム110を回動させるアクチュエータ115L,115Rと、線引きマーカ44の収納状態への切替及び視認用のマーカ46の非視認状態への切替を機体の旋回時の諸操作に連動して行う連動機構を設けた。
【0056】
従って、通常の植付作業時は、マーカ支持部材112を作用状態にし、アクチュエータ115L,115Rにより線引きマーカ44を作用状態にして線引き作用部111を接地させ、次行程の走行用目印を表土面に線引きする。また、視認部を前側に移動させて視認用のマーカ46を視認状態にし、該視認用のマーカ46をオペレータが視認することにより機体の位置を判断し、所望の経路で機体を走行させる。機体の旋回時には、連動機構により、旋回時の諸操作に連動して線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が機体内方側へ収納され、機体の最外半径が縮小される。
【0057】
よって、連動機構により、旋回時の諸操作に連動して線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が機体内方側へ収納され、機体の最外半径が縮小されるので、機体旋回時に線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が畦や周辺の壁面等に干渉するのを防止できる。また、作業者が線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の各々を収納させる格別の操作が不要になり、作業性が向上する。
【0058】
また、苗植付部4を下降させると、線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が自動的に元の状態(作用状態、視認状態)に復帰する。従って、旋回終了の諸操作に連動して線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が機体外方側へ復帰するので、作業者が線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の各々を元の状態に復帰させる格別の操作が不要になり、作業性が向上する。
【0059】
また、苗植付部4が上昇時に上昇途中の所定の高さまで到達したことを昇降リンクセンサ146が検出すると、アクチュエータ115L,115Rを作動させて非作用位置にマーカアーム110を回動させる構成となっている。この非作用位置へのマーカアーム110の回動動作が連動機構による線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の収納動作より先に動作し、マーカアーム110が非作用位置に到達してマーカアーム110の回動動作が停止してから線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の収納動作が開始するよう、連動機構が設定されている。これにより、線引きマーカ44の収納作動時、マーカアーム110及び線引き作用部111が枢支軸113a側に移動してからマーカ支持部材112が後側に回動するので、この回動の負荷すなわち線引きマーカ44の収納作動の負荷が軽減され、円滑に線引きマーカ44を収納作動させることができる。
【0060】
また、線引き作用部111が対地浮上してから線引きマーカ44の収納動作が開始するので、線引きマーカ44の収納動作時に線引き作用部111の表土面に接触することによる抵抗がなく、マーカ支持部材112の回動の負荷すなわち線引きマーカ44の収納作動の負荷が軽減され、円滑に線引きマーカ44を収納作動させることができる。尚、線引き作用部111が対地浮上した非作用位置へのマーカアーム110の回動途中で線引きマーカ44の収納動作が開始するように連動機構を設定すれば、非作用位置へのマーカアーム110の回動と同時に線引きマーカ44の収納動作が行えるので、線引きマーカ44及び視認用のマーカ46の収納を速やかに行え、線引きマーカ44及び視認用のマーカ46が機体の旋回により畦等の障害物に干渉するのをより確実に防止できる。
【0061】
尚、連動機構により、サイドマーカ45も機体内方側へ収納される構成としてもよい。また、連動機構により、視認用のマーカ46を機体側方に転倒させた状態でも、該視認用のマーカ46が機体内方側へ収納される構成としてもよい。また、旋回時の諸操作として、ハンドル33の操作で連動機構が作動する構成としてもよい。尚、ハンドル33の操向操作で苗植付部4が自動的に上昇する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】苗移植機の側面図である。
【図2】苗移植機の平面図である。
【図3】苗植付部の一部を省略した平面図である。
【図4】苗送りベルトの伝動機構図である。
【図5】苗送り畦クラッチの連結部を示す図である。
【図6】植付畦クラッチ及び苗送り畦クラッチの入・初を切り替える機構の正面図である。
【図7】植付畦クラッチ及び苗送り畦クラッチの入・初を切り替える機構の平面図である。
【図8】線引きマーカの背面図である。
【図9】マーカアーム回動部の平面図である。
【図10】マーカアーム回動部の背面図である。
【図11】マーカ制御装置のブロック図である。
【図12】マーカ制御のフローチャートその1である。
【図13】マーカ制御のフローチャートその2である。
【図14】マーカ制御のフローチャートその3である。
【図15】マーカ制御のフローチャートその4である。
【図16】マーカアーム回動部の別例の平面図である。
【図17】マーカ制御のフローチャートその5である。
【図18】異なるマーカ制御のフローチャートである。
【図19】苗枠のレールフレームを示す側面図である。
【符号の説明】
【0063】
1:乗用田植機、44:線引きマーカ、46:視認用のマーカ、110:マーカアーム、111:線引き作用部、112:マーカ支持部材、115L:左マーカ用モータ、115R:右マーカ用モータ、155:視認用アーム、156:視認部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次行程の走行用目印を表土面に線引きする線引きマーカ(44)を、機体の左右方向に回動するマーカ支持部材(112)と、該マーカ支持部材(112)の先端部に設け上下に回動するマーカアーム(110)と、該マーカアーム(110)の先端部に設けた線引き作用部(111)を備えて機体の側部に構成し、マーカアーム(110)を下側に回動させ線引き作用部(111)を下降させて接地させ表土面に線引きする作用位置と、マーカアーム(110)を上側に回動させ線引き作用部(111)を上昇させて対地浮上させ表土面に線引きしない非作用位置に切替でき、マーカ支持部材(112)を機体の左右方向外側に回動させマーカアーム(110)を左右方向外側に移動させて線引きが行える状態である作用状態と、マーカ支持部材(112)を機体の左右方向内側に回動させマーカアーム(110)を左右方向内側に移動させて収納した収納状態に切替できる構成とし、オペレータが視認することにより機体の位置の指標となる視認用のマーカ(46)を、前後に回動する視認用アーム(155)と、該視認用アーム(155)の先端部に設けた視認部(156)を備えて機体の前部に構成し、視認用アーム(155)を前側に回動させ視認部(156)を前側に移動させる視認状態と、視認用アーム(155)を後側に回動させて収納する非視認状態とに切替できる構成とし、作用位置と非作用位置にマーカアーム(110)を回動させるアクチュエータ(115L,115R)と、線引きマーカ(44)の収納状態への切替及び視認用のマーカ(46)の非視認状態への切替を機体の旋回時の諸操作に連動して行う連動機構を設けた水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−154813(P2010−154813A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335453(P2008−335453)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】