説明

水硬性無機材料及び高度浄水処理施設用のコンクリート

【課題】 オゾン処理工程を含む高度浄水処理施設で、コンクリート躯体、モルタル被覆材等に使用された際に、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を発揮し、高耐久であり、かつ人体や環境に対する安全性において、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験における溶出量が、いずれも基準値以下である水硬性無機材料及び該水硬性無機材料を用いた高度浄水処理施設用のコンクリートを提供する。
【解決手段】 ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料であって、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとのいずれか少なくとも一つ以上を含み、シリカ分がSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分がA123換算で10〜15重量%、カルシウム分がCaO換算で20〜35重量%となるように水硬性無機材料を調製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料及びそれを用いた高度浄水処理施設用のコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水の水質を向上させるために、オゾン処理工程や生物活性炭吸着処理工程といった工程を新たに加えた工程での高度浄水処理が行われている。このような高度浄水処理は、通常の浄水処理(沈でん、ろ過、消毒)では、十分に対応できないかび臭の原因となる物質やカルキ臭のもととなるアンモニア性窒素などを取り除き、トリハロメタンのもととなる物質などを減少させるために行われる。そして、上記各処理の多くは、普通コンクリートで造られたコンクリート槽内で行われている。
【0003】
しかし、前記のようなオゾン処理や生物活性炭吸着処理をコンクリート製の処理槽内で行うと、これまでの浄水処理による処理でのコンクリートの劣化に比べ、処理槽のコンクリートが早く劣化してしまうといったことが問題となってきている。また、劣化のメカニズムは判明していないが、オゾン処理槽では、溶存オゾンガス濃度が通常2ppm程度あるので、そのオゾンの強力な酸化作用によりコンクリートが軟化するのではないかといったことが推察されている。また、生物活性炭吸着処理槽では、炭酸ガスによるコンクリートの中性化と活性炭によるコンクリートの磨耗との複合作用が原因であるものと考えられている。
【0004】
このための対策として、コンクリート躯体やモルタル躯体の表面に、樹脂コーテイングやシートライニングするといったことが考えられる。しかし、このようなコーテイングやライニングは、経時的に変化を受け剥離してしまうことが一般的であり、所定期間ごとの塗り替え作業が必要である。また、コーテイング樹脂やシートライニングする際に用いられる接着剤等の有機材料は溶出して処理水を汚染したり、環境ホルモンの原因となったりする。したがって、安全な無機材料を用いて解決を図ることが望まれている。
【0005】
一方、スラグ等の無機材料は、オゾンにより水処理を行なう際の触媒として知られている。例えば、特開2001−70960号公報(特許文献1)には、マグネシウムを含有したスラグをオゾンを用いた水処理における触媒として用いることが開示されている。また、特開平2−144146号公報(特許文献2)には、二酸化チタンとマンガン酸化物とセメントとから成るオゾン分解用触媒が記載されている。
【特許文献1】特開2001−70960号公報
【特許文献2】特開平2−144146号号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オゾン処理工程を含む高度浄水処理施設で、コンクリート躯体、モルタル被覆材等に使用された際に、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を発揮し、高耐久であり、かつ人体や環境に対する安全性において、平成12年厚生省令第15号(改正 平成12年厚生省令第127号、平成14年厚生労働省令第139号、平成16年厚生労働省令第5号)に基づく、平成12年厚生省告示第45号(資機材等の材質に関する試験)による45項目の溶出試験(以下、本明細書で「厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験」のように言及する)おける溶出量が、いずれも基準値以下である水硬性無機材料及び該水硬性無機材料を用いた高度浄水処理施設用のコンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポルトランドセメントと、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとを用い、シリカ分、アルミナ分、カルシウム分の化学組成が所定割合となるように配合すると、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を備え、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験を満足する水硬性無機材料を得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明は、ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料であって、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとの少なくとも一つ以上を含み、シリカ分がSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分がA123換算で10〜15重量%、カルシウム分がCaO換算で20〜35重量%であることを特徴とする。
また、本発明は、ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料であって、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとを含み、シリカ分がSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分がA123換算で10〜15重量%、カルシウム分がCaO換算で20〜35重量%であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る水硬性無機材料は、その好ましい一実施の形態で、ポルトランドセメントを20〜30重量%、シリカヒュームを15〜25重量%、高炉水砕スラグを25〜35重量%、フライアッシュを20〜35重量%含み、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験における溶出量が、いずれも基準値以下であることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る水硬性無機材料は、無水石膏をSO3換算で2〜4重量%含むことが好ましい。また、強熱減量(ig.loss)は、3.0重量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明は、別の側面で高度浄水処理施設用のコンクリートであり、本発明に係る水硬性無機材料に、細骨材と粗骨材とを加えてなることを特徴とする。
なお、本明細書中で、高度浄水処理施設とは、オゾンを用いて水の処理を行なう工程を含む処理施設をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高度浄水処理施設で、コンクリート躯体、モルタル被覆材等に使用された際に、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を発揮し、かつ人体や環境に対する安全性において、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験における溶出量が、いずれも基準値以下であるといった高耐久であり安全性の高い水硬性無機材料及び該水硬性無機材料を用いた高度浄水処理施設用のコンクリートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る水硬性無機材料及び該水硬性無機材料を用いた高度浄水処理施設用のコンクリートについて、その実施の形態を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る水硬性無機材料は、好適には、ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとの少なくとも一つ以上を含む。
ポルトランドセメントは、所定の強度を確保する上で必要である。
ポルトランドセメントとしては、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント、低熱セメント等を挙げることができるが、中でも普通セメントと早強セメントが好ましい。
【0015】
ポルトランドセメントは、水硬性無機材料中に20〜30重量%含んでいなければならない。20重量%未満では所定の強度が確保できない。また、30重量%を超えると、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性が十分得られなくなる場合がある。
【0016】
シリカヒュームは、強度発現を良くするとともに、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を向上させる上で必要である。シリカヒュームの種類や品質は、特に限定されないが、ブレーン値が150,000〜220,000cm2/gで、炭素分等の不純物の少ないものが好ましい。すなわち、JIS規格相当品が好ましい。
【0017】
高炉水砕スラグは、流動性を確保するとともに、耐オゾン性を向上させる上で必要である。高炉水砕スラグは、セメント・コンクリートの分野で使用されている市販の高炉水砕スラグ粉、又はそれと同程度の品質のものであれば特に限定されない。好ましいブレーン値は4000〜10000cm2/gである。具体的には、デイ・シイ社のセラメント(商品名)が挙げられる。
【0018】
フライアッシュも、流動性を確保するとともに、耐オゾン性を向上させる上で必要である。フライアッシュは、フライアッシュセメントやセメント混和材の構成材料として用いられているものであれば、特に限定されないが、炭素分等の不純物の少ないものが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る水硬性無機材料では、このようにポルトランドセメントを20〜30重量%含み、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとの少なくとも一つ以上を含むことに加え、シリカ分、アルミナ分及びカルシウム分が所定の割合で配合されなければならない。
【0020】
すなわち、水硬性無機材料中では、シリカ分をSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分をA123換算で10〜15重量%、カルシウム分をCaO換算で20〜35重量%とする。
シリカ分が40重量%未満では、十分な耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を得ることが困難となる。シリカ分が55重量%を超えると、強度発現性が悪くなり、所定の強度を確保することが困難となる。
【0021】
また、アルミナ分が10重量%未満では、十分な耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を得ることが困難となる。アルミナ分が15重量%を超えると、流動性が悪くなったり、長期強度の発現性が悪くなったりする。
【0022】
カルシウム分が20重量%未満では、所定の強度を確保することが困難となる。カルシウム分が35重量%を超えると、十分な耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を得ることが困難となる。
【0023】
シリカ分、アルミナ分、カルシウム分の各々を上記範囲とすることによって、水酸化カルシウム、カルシウムシリケート水和物、カルシウムアルミネート水和物の各々が適当量生成するので、所定の強度を確保し、かつ耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性に優れた水硬性無機材料を得ることができる。
本発明の水硬性無機材料では、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとの少なくとも一つ以上を含むことが必要である。ここで言う「少なくとも一つ以上」とは、「いずれか一つ含めばよい」ということではなく、「状況に応じて一つを用いなかったり、あるいは、均等代替物に置き換えても良い」ということである。
例えば、シリカヒュームと高炉水砕スラグ、シリカヒュームとフライアッシュといった組み合わせ、あるいは、高炉水砕スラグの代わりに高炉ヒューム、シリカヒュームの代わりに籾殻灰を用いるといったことが挙げられる。いずれにしろ、本発明の水硬性無機材料では、前記シリカ分、アルミナ分、カルシウム分の各量は満たしている必要があるので、これらが満たされるよう材料の組み合わせを選択しなければならない。
本発明においては上記のような様々な態様が考えられるが、基本的には、前記のシリカヒュームと高炉水砕スラグとフライアッシュとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0024】
この場合の好ましい配合としては、ポルトランドセメントを20〜30重量%、シリカヒュームを15〜25重量%、高炉水砕スラグを25〜35重量%、フライアッシュを20〜35重量%を含むものである。
【0025】
この範囲の配合割合を採用することにより、上記範囲のシリカ分、アルミナ分、カルシウム分のものを容易に得ることができ、所定の強度の確保、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性といった各性能の確保が併せてできる。このような本発明に係る水硬性無機材料は、予め上記各材料をプレミックスして用いることができる。または、現場でコンクリートやモルタルを製造する際に各々を投入し、混練してもよい。
【0026】
また、本発明に係る水硬性無機材料は、厚生省令第15号に基づく45項目(表15)の溶出試験における溶出量が、いずれも基準値以下であることが好ましい。本発明の水硬性無機材料を高度浄水処理施設の各処理槽に用いる場合は必須となる。この溶出試験は飲料水の安全性および味など品質のために行われるものであり、表15に示すように45項目について各々基準値が定められている。各項目の溶出試験は、平成12年厚生省令第15号に基づく方法によって行われる。この基準値以下を満足することにより、人体や環境ホルモンに対する安全性が確保され品質が保証されているものとなる。
本発明に係る水硬性無機材料で用いる上記構成材料は、全て無機材料であり、重金属や炭素分を多量に含む低品質の構成材料を使用しない限り、あるいは樹脂等の有機系材料を多量に混和しない限り、このような基準を容易に満足することができる。
【0027】
本発明に係る水硬性無機材料において、無水石膏は、強度発現の向上、流動性の向上、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性の向上に寄与するので、必要に応じて添加される。無水石膏の含有範囲は、SO3換算で2〜4重量%が好適である。この範囲であれば、異常膨張を起こすことがなく、このような寄与を果たすことができる。また、強熱減量(ig.loss)は、3.0重量%以下が好適である。3.0重量%を超えるものは、石灰石や有機物等の不純物が多く、またセメントが風化していたりするので好ましくない。
本発明に係る水硬性無機材料の耐オゾン性は、20℃の水道水に溶存オゾンガスを濃度2ppmとした浸漬液に供試体を所定の期間浸漬して測定される。また、耐炭酸・耐重炭酸性は、20℃の重炭酸ナトリウム飽和溶液に供試体を所定の期間浸漬して測定される。耐磨耗性は、20℃の水道水に溶存オゾンガスを濃度2ppmとした浸漬液または20℃の重炭酸ナトリウム飽和溶液に供試体を所定の期間浸漬後にJIS−K 5600−5−9−1999によって測定される。
【0028】
本発明に係る水硬性無機材料に、細骨材と粗骨材とを加えることにより、高度浄水処理施設用のコンクリートを得ることができる。このコンクリートを用いて高度浄水処理施設の各処理槽を作製すれば、耐久性かつ安全性の高い処理槽を得ることができる。
【0029】
このコンクリートには、必要に応じて、さらに、使用することによって水質安全面での基準(表15に示す基準)を満足し、水質に悪影響を与えることのないものや量であれば、膨張材、粘土鉱物、補強繊維、増粘剤や減水剤や収縮低減剤等の化学混和剤を配合することもできる。
コンクリートにおける水硬性無機材料と細骨材と粗骨材の配合割合は特に限定されないが、水硬性無機材料は250〜700kg/m3配合されるのが好ましい。コンクリートの製造方法や使用方法は従来と同様である。
【0030】
また、本発明に係る水硬性無機材料に細骨材のみを加えれば、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性等を有するモルタルを得ることができる。例えば、このモルタルを補修材として高度浄水処理施設における劣化した処理槽のコンクリート表面に被覆すれば、耐久性かつ安全性の高い処理槽として改築することができる。
本発明に係る水硬性無機材料の基本的配合は前記の通りであるが、本発明の効果を著しく阻害しなければ、使用条件に応じて、適宜配合を変更することも可能である。例えば、ポルトランドセメントと高炉水滓スラグ、フライアッシュ、シリカフュームを用いる代わりにそれぞれ高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等を用いても良い。また、例えば、耐久性より強度発現を重視する場合は、本発明の水硬性無機材料100重量部に対し、外割で早強型ポルトランドセメントあるいはエコセメントを10〜100重量部混和して性能調整すればよい。
【実施例】
【0031】
実施例1〜10および比較例1〜6として表1の水硬性無機材料を調製した。これらの水硬性無機材料を結合材として用い、コンクリート試験体及び/又はモルタル試験体を作製し、耐オゾン性試験及び耐炭酸・耐重炭酸性試験を実施した。各試験の劣化指標は、付着性、透水性、摩耗性、及び安定性であり、これらについて各試験を実施した。また、これらの水硬性無機材料を結合材として用いコンクリート試験体を作製し、圧縮強度試験及び安全性検討試験を実施した。
【0032】
【表1】

【0033】
なお、表中の記号は、以下の原料を示す。
NC: 普通セメント(太平洋セメント社製)
SF: シリカヒューム(ノルウェー産)
FCR10A: 高炉水砕スラグ(デイ・シイ社製;ファインセラメント10A)
FA: フライアッシュ(電源開発社製)
AG: 無水石膏(デイ・シイ社製)
【0034】
A.試験槽:
耐オゾン性試験を実施するオゾン槽モデルとしては、水道水を用い、溶存オゾンガス濃度2ppm、温度20℃に保った試験槽を採用した。
耐炭酸・耐重炭酸性試験を実施するBAC池モデルとしては、水道水を用い、重炭酸ナトリウムを飽和させ、温度20℃に保った試験槽を採用した。
【0035】
B.試験体の作製
コンクリート試験体の作製にあたっては、水セメント比(W/C)45%、細骨材率43.0%、スランプ値15±2.5cm、空気量4.5±1.5%とし、以下のような配合割合(単位kg/m3)とした。
水: 160
結合材: 356
細骨材: 733
粗骨材: 980
混和剤: 4.806(高性能AE減水剤:ポリカルボン酸系)
コンクリートの練り混ぜは、結合材と、細骨材と、粗骨材と、高性能AE減水剤とを30秒空練りし、水を投入後、120秒練り、排出することによって実施した。
【0036】
モルタル試験体の作製にあたっては、水/(結合材+硅砂)=18.0%とした。
モルタルの練り混ぜは、結合材と硅砂に水を加え、60秒練り、掻き落とし後60秒練り、排出することによって実施した。
【0037】
以上のようにして得られたコンクリート、モルタルをそれぞれ練混ぜ、所定の型枠に成型、翌日脱型後、20℃で28日間水中養生した。これによって、コンクリート試験体及びモルタル試験体を得た。
【0038】
C.劣化指標の試験:
(1)付着試験(付着強度の測定)
1)試験体の寸法:
試験用基板(コンクリートブロック): 70×70×20(mm)
モルタル試験体: 70×70×20(mm)
2)前処理:
試験用基板はコンクリートブロックを用い、モルタル試験体と接する面にプライマー処理を行った。
【0039】
3)試験方法:
JSCE−K 531−1999に従って実施した。
耐オゾン性試験槽(オゾン槽モデル)、又は耐炭酸・耐重炭酸性試験槽(BAC池モデル)に所定期間浸漬後、試験体を温度20±2℃、湿度50±5%の環境下に水平に静置し、図1に示すように、モルタル試験体1に接着剤を塗り上部引張用鋼製治具2を静かに載せ、さらに、その上に質量1kgのおもり3を載せ24時間静置した。
上部引張用治具の周りに、40×40ミリメートルの方形の4辺に試験用基板4まで約1mmの切込みを入れた。
次いで、試験体面に対して鉛直方向に引張力を加えて、最大引張荷重T(N)を求めた。
付着強度は、以下の式によって算出した。
付着強度(N/mm2) = 最大引張荷重T(N)/160mm2
付着強度に関する試験結果を、後の表2(耐オゾン性試験)、表8(耐炭酸・耐重炭酸性試験)に示す。
【0040】
(2)透水試験
1)試験体作製方法及び養生:
φ150(直径)×300mmの型枠を用いて試験体を成型後、温度20±2℃、湿度80±5%の環境下で24時間養生した。
型枠を脱型し、φ150×40mmの試験体に切出し、水温20±3℃の環境下で材齢28日間水中養生を行なった。
2)試験方法:
JSCE−K 533−1999に従って実施した。
耐オゾン性試験槽(オゾン槽モデル)、又は耐炭酸・耐重炭酸性試験槽(BAC池モデル)に所定期間浸漬後、温度20±2℃、湿度50±5%の環境下で12日間乾燥を行った後、試験体側面をエポキシ樹脂で被覆し、2日間の乾燥を行った。
【0041】
作製した試験体の質量(W0)を量り、透水試験機に試験体を設置した。
98kPaの水圧を1時間加えた後、質量(W1)を量った。透水量(Wp)を計算し、3個の試験体平均値を求めた。
透水量(Wp)=透水後の質量(W1)−透水前の質量(W0)
透水試験に関する試験結果を、後の表3(耐オゾン性試験、コンクリート試験体)、表4(耐オゾン性試験、モルタル試験体)、表9(耐炭酸・耐重炭酸性試験、コンクリート試験体)、表10(耐炭酸・耐重炭酸性試験、モルタル試験体)に示す。
【0042】
(3)摩耗試験
1)試験体作製方法及び養生:
φ100直径×200mmの型枠を用いて試験体を成型後、温度20±2℃、湿度80±5%の環境下で24時間養生した。
型枠を脱型し、φ100×10mmの試験体に切出し、水温20±3℃の環境下で材齢28日間水中養生を行なった。
【0043】
2)試験方法:
JIS−K 5600−5−9−1999に従って実施した。
耐オゾン性試験槽(オゾン槽モデル)、又は耐炭酸・耐重炭酸性試験槽(BAC池モデル)に所定期間浸漬後、温度20±2℃、湿度(50±5)%の環境下で1日間乾燥を行った。
試験体をテーパー形摩耗試験機の回転盤上に設置した。
研磨用ヘッドを試験体面に載せ、回転数1000回を行い、摩耗減量を求めた。
摩耗減量 = 試験前の質量−試験後の質量
摩耗試験に関する試験結果を、後の表5(耐オゾン性試験、コンクリート試験体)、表6(耐オゾン性試験、モルタル試験体)、表11(耐炭酸・耐重炭酸性試験、コンクリート試験体)、表12(耐炭酸・耐重炭酸性試験、モルタル試験体)に示す。
【0044】
(4)安定性試験
摩耗試験と同様のモルタル試験体を作成した。
耐オゾン性試験槽(オゾン槽モデル)、又は耐炭酸・耐重炭酸性試験槽(BAC池モデル)に所定期間浸漬後、温度20±2℃、湿度(50±5)%の環境下で1日間乾燥を行った。
そして、試験体の質量変化率を求めた。
安定性試験に関する試験結果を、後の表7(耐オゾン性試験、モルタル試験体)、表13(耐炭酸・耐重炭酸性試験、モルタル試験体)に示す。
【0045】
(5)圧縮強度試験
実施例1及び2の各結合材を用い、透水試験で作製したと同様の試験体を作製し、材齢7日及び28日について圧縮強度を測定した。
結果を後の表14に示す。
【0046】
(6)安全性試験
実施例1及び2の各結合材を用い、透水試験で作製したと同様のコンクリート試験体を作製し、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験を実施した。
【0047】
D.試験結果と考察:
表2から表14で実施例とあるのは、表1の実施例に係る結合材を用いた試験体に関する結果である。
a).耐オゾン性
(1)付着試験(付着強度の測定)
【0048】
【表2】

【0049】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での実施例は、いずれもオゾン槽モデルについて、良好な付着強度維持した。なお、ABとあるのは、図1で基板ブロックと4とモルタル試験体1との間ABで破断したことを意味する。
(2)透水試験
【0050】
【表3】

【0051】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたコンクリート試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもオゾン槽モデルでの透水試験について、良好な結果を維持した。
【0052】
【表4】

【0053】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもオゾン槽モデルでの透水試験について、良好な結果を維持した。
(3)摩耗試験
【0054】
【表5】

【0055】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたコンクリート試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもオゾン槽モデルでの摩耗試験について、良好な結果を維持した。
【0056】
【表6】

【0057】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもオゾン槽モデルでの摩耗試験について、良好な結果を維持した。
(4)安定性試験
【0058】
【表7】

【0059】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもオゾン槽モデルでの安定性試験について、良好な結果を維持した。
b).耐炭酸・耐重炭酸性
(1)付着試験(付着強度の測定)
【0060】
【表8】

【0061】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例と実施例は、いずれもBAC池モデルについて、良好な付着強度維持した。なお、ABとあるのは、図1で基板ブロックと4とモルタル試験体1との間ABで破断したことを意味する。
(2)透水性試験
【0062】
【表9】

【0063】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたコンクリート試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもBAC池モデルでの透水試験について、良好な結果を維持した。
【0064】
【表10】

【0065】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例と実施例は、いずれもBAC池モデルでの透水試験について、良好な結果を維持した。
(3)摩耗試験
【0066】
【表11】

【0067】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたコンクリート試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもBAC池モデルでの摩耗試験について、良好な結果を維持した。
【0068】
【表12】

【0069】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもBAC池モデルでの摩耗試験について、良好な結果を維持した。
(4)安定性試験
【0070】
【表13】

【0071】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたモルタル試験体での比較例1、4、6以外と実施例は、いずれもBAC池モデルでの安定性試験について、良好な結果を維持した。
c).強度発現性
【0072】
【表14】

【0073】
本発明に係る水硬性無機材料を用いたコンクリート試験体での比較例と実施例は、十分な圧縮強度を備えていた。
【0074】
d).安全性試験
以下の表15に厚生省令第15号に基づく45の溶出試験項目を示す。
安全性確認結果は、実施例1及び2の結合材について、全て厚生省基準を満足した。
【0075】
【表15】

【産業上の利用可能性】
【0076】
前述したように、本発明に係る水硬性無機材料を、高度浄水処理施設におけるオゾン処理槽や生物活性炭吸着処理槽のコンクリート躯体、あるいは、表層モルタル被覆材(補修材を含む)に使用した場合、これらの処理槽は高耐久性で安全性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】付着強度試験を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0078】
1 モルタル試験体
2 冶具
4 試験用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料であって、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとのいずれか少なくとも一つ以上を含み、シリカ分がSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分がA123換算で10〜15重量%、カルシウム分がCaO換算で20〜35重量%であることを特徴とする水硬性無機材料。
【請求項2】
ポルトランドセメントを20〜30重量%含み、耐オゾン性、耐炭酸・耐重炭酸性、耐磨耗性を有する水硬性無機材料であって、シリカヒュームと、高炉水砕スラグと、フライアッシュとを含み、シリカ分がSiO2換算で40〜55重量%、アルミナ分がA123換算で10〜15重量%、カルシウム分がCaO換算で20〜35重量%であることを特徴とする水硬性無機材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水硬性無機材料であって、ポルトランドセメントを20〜30重量%、シリカヒュームを15〜25重量%、高炉水砕スラグを25〜35重量%、フライアッシュを20〜35重量%含み、厚生省令第15号に基づく45項目の溶出試験における溶出量が、いずれも基準値以下であることを特徴とする水硬性無機材料。
【請求項4】
無水石膏をSO3換算で2〜4重量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水硬性無機材料。
【請求項5】
強熱減量が3.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水硬性無機材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水硬性無機材料に、細骨材と粗骨材とを加えてなるコンクリートであって、高度浄水処理施設用のコンクリート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31262(P2007−31262A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105856(P2006−105856)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(592037907)株式会社デイ・シイ (36)
【Fターム(参考)】