説明

水系インクジェットインク組成物

【課題】ピエゾ方式のインクジェットプリンターで印刷を行っている最中にある一定時間ヘッドノズルを停止・放置させた状態にしてもヘッドノズルの詰まりが生じることがなく、再度印刷を開始して安定に印刷することが可能であるピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物を提供すること。
【解決手段】着色顔料と、水と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、ノズル詰まり防止剤とを含有し、該ノズル詰まり防止剤がポリオキシエチレンスチレン化フェニルエ−テルからなる群より選ばれたものであるピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物に関し、具体的にはノズル詰まりを防止してインクを安定に吐出させることができる水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の樹脂を含有するインクジェットプリンター用水性インク組成物が多数提案されている(例えば特許文献1参照)が、そのような水性インク組成物を用いてピエゾ方式のインクジェットプリンターで印刷を行なっている最中にある一定時間ヘッドノズルを一時的に停止・放置させたままにすると、ヘッドノズル内でのインクの乾燥により詰まりが生じ、再度印刷を開始してもインク滴が飛翔しなくなり、被印刷面に対して記録できなくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2007−269864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、ピエゾ方式のインクジェットプリンターで印刷を行っている最中にある一定時間ヘッドノズルを停止・放置させた状態にしてもヘッドノズルの詰まりが生じることがなく、再度印刷を開始して安定に印刷することが可能であるピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、水性インク組成物に特定のノズル詰まり防止剤を配合することにより、ピエゾ方式のインクジェットプリンターのノズル詰まりを防止してインクを安定に吐出させることができる水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明のピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物は、着色顔料と、水と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、ノズル詰まり防止剤とを含有し、該ノズル詰まり防止剤がポリオキシエチレンスチレン化フェニルエ−テルからなる群より選ばれたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性インク組成物を用いることにより、ピエゾ方式のインクジェットプリンターで印刷を行っている最中にある一定時間ヘッドノズルを停止・放置させた状態にしてもヘッドノズルの詰まりが生じることがなく、再度印刷を開始して安定に印刷することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の水性インク組成物について具体的に説明する。
本発明の水性インク組成物は着色顔料と、水と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、ノズル詰まり防止剤とを含有するものであり、本発明で使用する着色顔料としては特に制限はなく、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、55、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、153、154、155、166、168、180、181、185、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、64、80、ピグメントグリーン7、36、ピグメントブラウン23、25、26、ピグメントブラック7、26、27、28、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。着色顔料の配合量は、使用する着色顔料の種類等により任意に決定できるが、通常はインク組成物の0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0008】
本発明で使用する樹脂としては特に制限はなく、例えば、ビニル樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルポリアミド樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリメチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂及びこれらの変性樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いても二種以上を併用してもよい。樹脂(固形分)の配合量は、使用する樹脂の種類等により任意に決定できるが、通常はインク組成物の0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0009】
本発明の水性インク組成物においては、溶剤として水を必須成分とし、更に水溶性有機溶剤を含有する。本発明で使用する水溶性有機溶剤として、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のグリコールエーテル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−バレロラクトン等のラクトン化合物、N−メチル−2−ピロリドン及びそれらの混合物等を挙げることができる。水及び水溶性有機溶剤からなる溶剤の配合量は通常はインク組成物の20〜99質量%であり、好ましくは30〜90質量%であり、水溶性有機溶剤の配合量は、使用する水溶性有機溶剤の種類等により任意に決定できるが、通常はインク組成物の10〜49質量%であり、好ましくは20〜40質量%である。
【0010】
本発明で使用するノズル詰まり防止剤はポリオキシエチレンスチレン化フェニルエ−テル、具体的にはポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエ−テル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエ−テル又はポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエ−テルである。また、ノズル詰まり防止剤は混合して用いても良い。該ノズル詰まり防止剤は重量平均分子量Mwが好ましくは100〜20000の範囲内のものであり、より好ましくは200〜10000の範囲内のものである。ノズル詰まり防止剤の配合量は、使用するノズル詰まり防止剤の種類等により任意に決定できるが、通常はインク組成物の0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%である。配合量が0.1質量%未満の場合にはノズル詰まりの防止効果が不十分であり、15質量%を超える場合にはインク膜の被印刷面への密着性が衰え、耐エタノール性が低下する傾向がある。
【0011】
本発明の水性インク組成物は、必要に応じて、通常の水性インク組成物に用いられている界面活性剤、湿潤剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、りん系酸化防止剤等を含有していても良い。
【0012】
次に、本発明の水性インク組成物の製造方法について説明する。本発明の水性インク組成物の製造方法については特に限定されないが、例えば、以下の方法によれば水性インク組成物を効率的に製造することができる。即ち、まず最初に、着色顔料、樹脂又は樹脂エマルション、ノズル詰まり防止剤及びイオン交換水を混合攪拌した後、サンドミル分散機にて処理し、着色顔料を微粒子状に分散させて水性顔料分散液を得る。次いで、得られた水性顔料分散液に水溶性有機溶剤、イオン交換水及び所望により添加剤を加えて充分に混合する。また、本発明の水性インク組成物は着色顔料、樹脂又は樹脂エマルション及びイオン交換水を混合攪拌し、サンドミル分散機にて処理して水性顔料分散液を調製した後にその水性顔料分散液にノズル詰まり防止剤、水溶性有機溶剤、イオン交換水及び所望により添加剤を加える方式でも調製することができる。
【0013】
本発明の水性インク組成物は、通常のピエゾ方式のインクジェットプリンター用水性インク組成物と同様にピエゾ方式のインクジェットプリンターに適応した特性を持っていることが必要であり、そのためにはインク組成物の粘度を1〜100cP(20℃)、表面張力を2×10-2〜6×10-2N/m、比重を0.8〜1.2の範囲内にすることが望ましい。
【0014】
本発明の水性インク組成物は、特にラージフォーマット用のピエゾ方式の大型インクジェットプリンターによる印刷、例えばサインディスプレイ等の屋外用物品に印刷することを目的としたピエゾ方式のインクジェットプリンターによる印刷に好適に適用できる。
【0015】
ピエゾ方式のインクジェットプリンターによる印刷後の被印刷面(インク組成物)を常温〜数百℃で乾燥することにより乾燥皮膜が形成される。なお、本発明の水性インク組成物を用いる印刷の対象となる基材については、被印刷面(インク組成物)を乾燥する条件下で変形もしくは変質しないものであれば特に制限されることはない。そのような基材として、例えば、金属、ガラスおよびプラスチック等の基材表面、表面を樹脂でコーディングした紙、オーバーヘッドプロジェクト用の透明シート、サインディスプレイ等の屋外用物品等を挙げることができる。
【0016】
以下に、実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1
モナーク(M)1000(カーボンブラック顔料/キャボット社製)10質量部、ジョンクリル537(スチレンアクリル系エマルション、固形分46%/BASF社製)50質量部、ノイゲンEA−157(ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル及びポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテルの混合物、/第一工業製薬社製)0.167質量部及びイオン交換水39.833質量部の混合物をサンドミルで処理して水性顔料分散液を得た。
【0017】
得られた水性顔料分散液30質量部に対して、サーフロンS−145(パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物/セイミケミカル社製)0.4質量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル10質量部及びイオン交換水49.6質量部を混合して水性インク組成物を得た。
【0018】
実施例2〜10及び比較例1〜2
実施例1と同じ調製方法に従って、第1表及び第2表に記載の原料を用いて第1表及び第2表に示す組成の水性インク組成物を調製した。なお、エマルゲンA−500は花王社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルであり、BYK190はビッグケミー社製のブロック共重合体、固形分40%であり、SOLSPERSE43000はルーブリゾール社製のアクリル系分散剤、固形分50%であり、スーパーフレックス126は第一工業製薬社製のポリウレタンディスパージョン、固形分30%であり、エリーテルKA-5071Sはユニチカ社製のポリエステルエマルジョン、固形分30%であり、ジョンクリル63はBASF社製の水性アクリル樹脂、固形分30%である。
【0019】
実施例1〜10及び比較例1〜2で得た水性インク組成物について、耐ノズル詰まり性及び耐エタノール性を下記の方法で測定し、下記の基準で評価した。
【0020】
<耐ノズル詰まり性>
ラージフォーマット用のピエゾ方式のインクジェットプリンターで印刷し、印刷の最中にヘッドを15分間その場で放置させ、その後、再度印刷を開始した際に、所定の位置にインクを吐出出来ないノズル数をカウントし、下記の基準で評価した。
◎:15分間放置後、所定の位置に吐出出来ないノズル数が、全ノズル数の60分の1以下、
○:15分間放置後、所定の位置に吐出出来ないノズル数が、全ノズル数の60分の1より多く、60分の2以下、
×:15分間放置後、所定の位置に吐出出来ないノズル数が、全ノズル数の60分の2より多い。
それらの評価結果は第1表及び第2表に示す通りであった。
【0021】
<耐エタノール性>
ラージフォーマット用のピエゾ方式のインクジェットプリンターで画像を印刷し、75質量%エタノール水溶液を染み込ませたガーゼで画像を10回擦り、目視で下記の基準で評価した。
◎ : 擦り傷の痕跡なし、
○ : 僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
× : 擦り傷の痕跡あり。
それらの評価結果は第1表及び第2表に示す通りであった。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
第1表及び第2表に示す評価結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10の水性インク組成物については良い評価結果が得られ、良好な水性インク組成物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料と、水と、樹脂と、水溶性有機溶剤と、ノズル詰まり防止剤とを含有し、該ノズル詰まり防止剤がポリオキシエチレンスチレン化フェニルエ−テルからなる群より選ばれたものであることを特徴とするピエゾ方式のインクジェットプリンター用の水性インク組成物。
【請求項2】
ノズル詰まり防止剤がポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエ−テル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエ−テル又はポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエ−テルである請求項1記載の水性インク組成物。
【請求項3】
インク全組成物中のノズル詰まり防止剤の含有量が0.1〜15質量%である請求項1又は2記載の水性インク組成物。

【公開番号】特開2010−18742(P2010−18742A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181808(P2008−181808)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】