説明

水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーの製造方法および製造品

水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーであって、ここで、水系ポリウレタン・コーティングは溶剤、特にDMFが存在せず、かつシリコーンも存在せず、布製のグローブ・ライナーの表面に部分的に担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンでコーティングされたグローブ、具体的には、水系(waterborne)ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来式の布地で支持された溶剤系のポリウレタン・グローブは、作業環境の用途に軽い掴み面を提供できる。しかしながら、これらのグローブは、着用者または使用者の健康のみならず、生態系および製造工場の周辺環境にも害をもたらす可能性のある、ジメチルホルムアミド(DMF)および/または同様の好ましくない溶剤を含んでいるであろう。この従来式のポリウレタン中のシリコーンの存在も、グローブ市場に好ましくない反応を与えている。
【0003】
こういったグローブの従来式の製造方法としては、グローブ・ライナーをDMF中に浸すか、あるいは他の溶剤系のポリウレタンでコーティングする方法が挙げられる。次に、一連の水への浸漬を行い、膜のゲル化を促進し、溶媒を浸出(leaching)させる。しかしながら、グローブ・ライナーを通じて内表面に至るまで、施された浸漬コーティングが過剰に吸収され、染み込む可能性がある。これらの発生は、内表面上の所望の特性を妨げる可能性があり、これには柔軟性、温覚、および吸収性の低下が含まれうる。これらの発生はまた、着用者または使用者にとって、グローブの快適性をも妨げうる。
【0004】
従来式のポリウレタンに関する主要な問題点は、最終加工されたグローブが、従来の製造方法で用いられるDMFおよび/または他の同様の溶剤を、若干量、含んでいる可能性があるということである。これらの溶剤は、人間の生殖器官に悪影響を及ぼし、また、人間に対する発癌物質の可能性もあると考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、布製のグローブに担持された水系ポリウレタン、特に、溶剤、特にDMFが存在せず、かつシリコーンも存在しない水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーを提供するための製造方法が必要とされている。実質的には、水系ポリウレタンのグローブは、環境に優しく、安全な、問題となっているDMF系のポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーの代替物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、DMFが存在せず、溶剤が存在せず、かつシリコーンが存在しない、水系ポリウレタンでコーティングされたライナーで支持されたグローブを提供する。本発明には、限定はしないが、手のひら部分のコーティング、指関節までの部分コーティング、指部分のコーティングおよび全体コーティングなど、数種類のコーティング形式/好みの、グローブ・ライナー上に施された、スムースまたは発泡コーティングの水系ポリウレタン・コーティングが含まれる。
【0007】
これらの製品の製造方法には、水系ポリウレタンの配合も含まれ、その後、支持するグローブの従来式の浸漬方法を用いて、グローブ・ライナーにコーティングされる。グローブを支持する適切なグローブ・ライナーの材料の例としては、限定はしないが、ナイロンまたは他の合成ポリアミド、ポリエステル、綿、レーヨン、ダイニーマ(登録商標)、ケブラー(登録商標)、ライクラ(登録商標)、スパンデックス、アクリル糸および混紡糸が挙げられる。グローブ用の適切な水系ポリウレタンの例としては、限定はしないが、高分子ラテックスのアクラリン(Acralen) U500、アクラリンU900、アジプレン、バイブラセン(Vibrathane)、ミラセン(Millathane)、ノベオン(Noveon)、ソルコート(Solucote)、ダウ社のシンテグラ(Syntegra)、アルベルディング(Alberdingk)など、またはこれらによって生成され、供給されるものが挙げられる。
【0008】
本発明の1つの利点は、溶剤が存在しない、水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーが、環境に優しく、かつ、安全であることである。
【0009】
本発明の別の利点は、DMFおよび/または他の同様に好ましくない溶剤を含まないため、着用者または使用者の健康、ならびに、生態系および製造工場を取り囲む環境に対して有害ではないことである。
【0010】
本発明のさらに別の利点は、水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーが、安全かつ信頼して扱える、優れた握りが与えられるように設計されていることである。
【0011】
本発明の特徴となる別の利点は、軽量タイプでは、着用者に優れた触知能と柔らかな手触りを与えることである。これは、エレクトロニクス組立部門、光技術などの産業で扱う小型部品への利用を高める。
【0012】
本発明の特徴となるさらに別の利点は、軽量な作りにもかかわらず、この新しく設計された水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーが、この厚さのグローブにしては顕著な耐摩耗性を有することである。
【0013】
本発明の特徴となるさらに別の利点は、ライナーへの染み込みがごく僅かであり、それによってライナーの快適で柔軟な手触りと優れた吸収性を与えることである。
【0014】
本発明の特徴となるさらに別の利点は、オゾンおよび酸素の攻撃に対する強い耐性である。
【0015】
本発明のさらに別の利益および利点は、以下の本発明の詳細な説明を読み、理解する当業者にとって明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明を示すものであり、ここで図1aは、本発明品の手のひら側の正面図であり、図1bは、本発明品の手の甲側の正面図であり、それによって、a)布製のグローブ・ライナー(1)と、b)水系ポリウレタン(2)を含む、水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーを開示している。
図1に示すように、本発明には、水系のスムース・ポリウレタンおよび発泡ポリウレタンのコーティングが含まれ、溶剤、特にDMFが存在せず、かつシリコーンも存在せず、また、限定はしないが、図2a、2b、2cおよび2dにそれぞれ示すように、グローブ・ライナーは、手のひら部分のコーティング、指関節部分のコーティング、全面コーティングおよび指部分のコーティングなど、数種類のコーティング形式/好みがあり、それらは布製のグローブ・ライナーの表面に部分的に担持されている。
【0017】
本発明の様々な実施形態に従った、ライナーで支持された水系ポリウレタン・グローブの作製工程または方法について、ここに開示する。適切なグローブ型は、アルミニウムもしくは他の金属製の手型成型であって差し支えない。必要に応じて、グローブ型の温度を操作し、調整するために、従来式の加熱装置を使用することができる。
【0018】
最初に、施すべきディッピングの特定の形式用に設計されたグローブ型に、布製のグローブ・ライナーを装着した。ライナーを施したグローブ型を、ここでは「ライナー装着」と称するが、これを次に約55℃〜65℃に加熱する。ライナー装着を、当業者に理解されている典型的な濃度範囲の水系凝固剤を含む第1ディッピング・タンクに漬ける。凝固剤系溶液への浸漬の程度および角度は、限定はしないが、手のひら部分のコーティング、指関節の部分のコーティング、全面コーティングおよび指部分のコーティングなど、所望のコーティング形式/好みに応じて、変化させて構わない。水系凝固剤の温度を約70℃±5℃に維持し、乾燥目的の急速な蒸発を促進すべきである。ライナー装着に凝固剤系の溶液を施用後、凝固剤でコーティングされたライナー装着を、第1浸漬タンクから引き出し、当業者が精通している適切な方式で回転させ、過剰の凝固剤系の溶液の流れを制限する。最初にコーティングされたライナーを、次に第2浸漬タンクにディッピングする。これもまた、凝固剤系の溶液への浸漬の程度および角度は、限定はしないが、手のひら部分のコーティング、指関節の部分のコーティング、全面コーティングおよび指部分のコーティングなど、所望のコーティング形式/好みに応じて、変化させて構わない。
【0019】
一例として、水系ポリウレタンが入った第2浸漬タンクを、あらかじめ調製する。適切な水系ポリウレタン化合物は、下記の表1に記載するように、およその範囲の下記の成分を含むことが好ましい。
【表1】

【0020】
軟水の量は、所望の固形物によって決まる。
【0021】
当業者は、容易に、ディッピングの設計における配合成分を変化させて、所望の最終製品に適応させることが可能であろう。上記に掲載された特定の薬剤または化合物は、配合物の調製に利用して差し支えない、典型的な従来材料であることが意図されており、配合物のこういった各成分の単なる限定されない例であることが意図されていることも、当業者に理解されよう。
【0022】
ポリマー化合物における様々な成分の性質および特徴の例としては、限定はしないが、次のとおりである。
【0023】
・酸化亜鉛は、膜の補強を改善する、ポリマー化合物の架橋結合を提供する。酸化亜鉛と同様の他の種類の適切な材料として、限定はしないが、硫黄、およびジチオカルバメート系促進剤が挙げられる。
【0024】
・二酸化チタンおよび色素は、ポリマー化合物の着色剤である。他の着色剤もまた、ポリマー化合物に加えることができる。
【0025】
・発泡剤(発泡コーティング用)は、ポリマー化合物中に泡の形成を引き起こす。適切な薬剤としては、限定はしないが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、およびアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】
・カルボキシメチルセルロースは、滑らかで均等なコーティングにするため、ポリマー化合物に厚みを出すための粘度調整剤である。他の種類の適切な粘度調整剤としては、限定はしないが、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート系および他のセルロース系の増粘剤が挙げられる。
【0027】
・軟水は、ポリマー化合物の固形成分含量をca20±5%まで下げる希釈剤として作用する。他の濃度の固形成分含量もまた、本発明にかかる様々な実施形態にしたがって使用することができる。
【0028】
装着ライナーを、次に、水系ポリウレタン化合物が入った第2浸漬タンクから取り出し、当業者が精通している適切な方法で回転させ、ポリマー化合物の塗付を均一にし、その流れを制限する。ポリマーコーティングされたグローブ・ライナーを、次に、換気されたオーブンまたは他の加熱装置で、必要に応じて約10〜20分間、またはそれ以上、75℃±10℃で乾燥させ、十分に固化した膜を作る。
【0029】
コーティングされたグローブ・ライナーをオーブンから出し、周囲温度で約2分間、清浄水で浸出させる。次に、グローブ・ライナーを浸出タンクから引き出し、過剰な水を滴り落とし、硬化させるオーブンに入れる前に約15分間空気乾燥させた。一例として、コーティングされたグローブ・ライナーを、硬化オーブン内で、約90℃±5℃の硬化温度で約1時間、加熱する。他の温度、持続時間および方向は、本発明の様々な実施態様にしたがって利用することができる。硬化された水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーをオーブンから取り出し、工程または方法の最後に、型から剥がし取る。
【0030】
先の説明には多くの仕様が含まれるが、これらの仕様は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に開示された実施形態を説明するものと解釈されるべきである。多くの変更および修正が、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精髄および範囲から逸脱することなく、行なわれるであろう。当業者は、本発明の範囲内にある多くの他の予想されるバリエーションを思い描くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本発明品の手のひら側の正面図
【図1B】本発明品の手の甲側の正面図
【図2A】手のひら部分にコーティングを施した本発明品。
【図2B】指関節の部分にコーティングを施した本発明品。
【図2C】全体にコーティングを施した本発明品。
【図2D】指部分にコーティングを施した本発明品。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)布製のグローブ・ライナーと、
b)溶剤およびシリコーンが含まれず、布製のグローブ・ライナーの表面に部分的に担持されている、水系ポリウレタン・コーティングと、
を含む、水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナー。
【請求項2】
ナイロンまたは他の合成ポリアミド、ポリエステル、綿、レーヨン、ダイニーマ(登録商標)、ケブラー(登録商標)、ライクラ(登録商標)、スパンデックス、アクリル糸および混紡糸の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナー。
【請求項3】
前記水系ポリウレタン・コーティングが、市販されている水系ポリウレタンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナー。
【請求項4】
前記水系ポリウレタン・コーティングが、酸化亜鉛、二酸化チタン、色素、カルボキシメチルセルロース、発泡コーティング用の発泡剤および軟水の内の少なくとも1つを含む化合物であることを特徴とする請求項1記載の水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナー。
【請求項5】
前記水系ポリウレタン・コーティングが、スムース・コーティングおよび発泡コーティングを含むことを特徴とする請求項1記載の水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナー。
【請求項6】
水系ポリウレタンでコーティングされたグローブ・ライナーを製造する方法であって、
a)第1成分を布製のグローブ・ライナーの一部に施し、
b)第2成分を前記布製のグローブ・ライナーの前記最初にコーティングされた部分に施し、その際に、前記水系ポリウレタン・コーティングが前記布製のグローブ・ライナーに付着し、
c)前記布製のグローブ・ライナーをオーブン乾燥し、
d)前記布製のグローブ・ライナーを浸出に供し、
e)前記布製のグローブ・ライナーを空気乾燥またはオーブン乾燥し、
f)前記布製のグローブ・ライナーを硬化させる、
各工程を有してなる方法。
【請求項7】
前記第1成分が、凝固剤系の溶液であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記布製のグローブ・ライナーが、ナイロンまたは他の合成ポリアミド、ポリエステル、綿、レーヨン、「ダイニーマ」、「ケブラー」、「ライクラ」、スパンデックス、アクリル系および混紡糸の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第2成分が、水系ポリウレタン、酸化亜鉛、二酸化チタン、色素、カルボキシメチルセルロース、発泡コーティング用の発泡剤および軟水の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記水系ポリウレタン・コーティングが、市販されている水系ポリウレタンのいずれかを含むことを特徴とする請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2009−506227(P2009−506227A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527861(P2008−527861)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/MY2006/000002
【国際公開番号】WO2007/024127
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508059775)
【氏名又は名称原語表記】GOLDENDIP SDN.BHD.
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】