説明

水素の精製方法、水素の出荷設備、及び水素ステーション

【課題】水素中の一酸化炭素の含有率を低減することが可能な水素の精製方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る水素の精製方法は、吸着法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を触媒でメタン化するメタン化工程、一酸化炭素を吸着剤に吸着させる吸着工程、及び一酸化炭素を酸化する酸化工程からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程により、水素含有ガスから一酸化炭素を除去する精製工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の精製方法、水素の出荷設備、及び水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安価で実用的な水素含有ガスの製造方法の一つとして、ナフサ等の石油系原料を水蒸気改質反応等により改質する方法が知られている。このような方法で製造した水素含有ガス中には、水素の他に、水蒸気、未反応の炭化水素、一酸化炭素及び二酸化炭素等の不純物が含まれる。
【0003】
水素含有ガスから上記の不純物を除去して水素ガスを精製する方法としては、Pressure Swing Adsorption法(PSA法)、Thermal Swing Adsorption法(TSA法)、Thermal Pressure Swing Adsorption法(TPSA法)などの吸着法が知られている。PSA法では、例えば下記特許文献1に示すように、高圧の吸着塔内で水素含有ガスに含まれる不純物を吸着剤に吸着させることにより、高純度の水素ガスを精製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−212103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、従来のガソリン車に代わる環境負荷の小さい輸送手段として、水素ガスを燃料とする燃料電池車の普及が望まれている。燃料電池車の普及には、燃料電池車に適用できる純度を有する水素ガスを燃料電池車に供給するための水素ステーションや、水素ステーションへ水素ガスを供給する出荷設備を普及させることが必要となる。
【0006】
水素ガスを燃料電池車に用いる場合、水素ガスから不純物を除去して、好ましくは、99.99質量%、より好ましくは99.999質量%以上の純度を有する水素ガスを精製することが求められる。不純物の中でも特に一酸化炭素(CO)は、燃料電池の電極用触媒に多用される白金(Pt)の触媒毒であるため、少しでも多くの一酸化炭素を水素ガスから除去することが求められる。
【0007】
高純度の水素ガスを上記のPSA法で精製する場合、水素ガス中に残存する一酸化炭素を減らそうとするほど、水素含有ガスの高圧化や精製装置の多段化が必要となる。しかし、水素含有ガスの高圧化によって、吸着剤に吸着する水素が増えてしまうため、水素ガスの回収率が低下してしまう。また、PSA法によって水素ガスの純度を高めるためには、水素含有ガスの高圧化(水素含有ガスの圧縮)に多大なエネルギーを要する。さらに、水素含有ガスの高圧化に伴って安全性が問題になる。また、装置を多段化すれば、水素ガスの回収率が低下してしまうことや、多段化に要するコストや装置の複雑化が問題となる。このように、PSA法で水素ガスの過度の高純度化を行おうとすれば、吸着剤の増量、それに伴う吸着塔の大型化、多段化、水素含有ガスの高圧化のためのコンプレッサーの大規模化が必要となる。
【0008】
以上のように、回収率、エネルギーロス、安全性又はコストの点において、燃料電池車に適用できる程度にまで一酸化炭素の含有率が低減された水素ガスをPSA法で精製することには問題があった。そのため、PSA法を適用した水素の出荷設備や水素ステーションを普及させることは困難であった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水素中の一酸化炭素の含有率を低減することが可能な水素の精製方法、当該精製方法を適用した水素の出荷設備及び水素ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る水素の精製方法は、吸着法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を触媒でメタン化するメタン化工程、一酸化炭素を吸着剤に吸着させる吸着工程、及び一酸化炭素を酸化する酸化工程からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程により、水素含有ガスから一酸化炭素を除去する精製工程を備える。なお、吸着法とは、PSA法、TSA法又はTPSA法のように、水素含有ガスに含まれる不純物を吸着剤に吸着させることにより、水素ガスを精製する方法である。PSA法では、水素含有ガスの圧力の変動によって、吸着剤に対する不純物の吸脱着を制御する。TSA法では、水素含有ガスの温度の変動によって、吸着剤に対する不純物の吸脱着を制御する。TPSA法では、水素含有ガスの圧力と温度の変動によって、吸着剤に対する不純物の吸脱着を制御する。
【0011】
上記本発明によれば、吸着法単独で水素を精製する場合に比べて、水素中の一酸化炭素の含有率を低減することが可能となる。また、上記本発明によれば、吸着法により精製した水素含有ガスにおける一酸化炭素の含有率が、燃料電池車に適用できる程度にまで低減されていない場合であっても、精製工程において水素中の一酸化炭素の含有率を燃料電池車に適用できる程度にまで低減することが可能となる。
【0012】
上記本発明では、メタン化工程で用いる触媒が、活性金属として、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果が顕著なる。
【0013】
上記本発明では、吸着工程で用いる吸着剤が、活性炭、ゼオライト及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、本発明の効果が顕著なる。
【0014】
上記本発明では、吸着工程で用いる吸着剤に銅が担持されていることが好ましい。これにより、吸着剤への一酸化炭素の吸着が促進される。
【0015】
上記本発明では、酸化工程において、ルテニウム又は白金を含有する触媒を用いて一酸化炭素を酸化することが好ましい。これにより、本発明の効果が顕著なる。
【0016】
本発明に係る水素の出荷設備は、上記本発明に係る水素の精製方法を実施するための設備を備える。また、本発明に係る水素ステーションは、上記本発明に係る水素の精製方法を実施するための設備を備える。本発明に係る水素の出荷設備及び水素ステーションでは、燃料電池車に適用できる程度にまで一酸化炭素の含有率が低減された水素を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水素中の一酸化炭素の含有率を低減することが可能な水素の精製方法、当該精製方法を適用した水素の出荷設備及び水素ステーションを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(PSA法)
以下では、吸着法として、PSA法を用いる場合について説明する。本実施形態に係る水素の精製方法では、PSA法により精製した水素含有ガスを用いる。PSA法では、ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ、アルミナ等の吸着剤を単独で、または組み合わせて用いる。これらの吸着剤を吸着塔内に設置し、コンプレッサーで圧縮した高圧の水素含有ガスを吸着塔内に導入する。または、水素含有ガスを導入した吸着塔内を昇圧する。これにより、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素及び水等の不純物を吸着剤に吸着させるとともに、不純物が除去された水素含有ガスを回収する。水素含有ガスを回収した後は、吸着塔内の圧力を高圧から常圧まで減圧することにより、吸着剤に吸着した不純物を脱着させ、吸着剤を再生する。
【0020】
本実施形態では、PSA法による精製により、純度が99.99質量%以上である水素ガスを得ることが好ましい。これにより、後述する精製工程において、水素ガス中の一酸化炭素の含有率を0.2質量ppm以下に低減することが可能となる。
【0021】
PSA法では、吸着塔内での水素含有ガスの圧力は、0.5〜4.0MPaであればよい。吸着塔に送られる水素含有ガスの温度は10〜100℃であればよい。PSA法による精製で、純度が99.99質量%以上である水素ガスを得るためには、吸着塔内での水素含有ガスの圧力を1.5MPa以上に調整することが好ましい。なお、水素含有ガスの圧力と温度は、必ずしも上記の数値範囲に限定されない。
【0022】
PSA法で精製する前の水素含有ガスとしては、例えば、石油系炭化水素、天然ガス、アルコール類又はエーテル類等の原料の水蒸気改質反応により製造した改質ガスを用いればよい。改質ガスの具体的な原料としては、例えば、ナフサ、灯油、ガソリン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、メタノール、ジメチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
(精製工程)
本実施形態では、PSA法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素及びその他の不純物を、精製工程において除去する。精製工程では、下記のメタン化工程、吸着工程及び酸化工程からなる群より選ばれる一種又は二種以上の工程を用いることにより、水素含有ガスから一酸化炭素及びその他の不純物を除去する。なお、メタン化工程、吸着工程及び酸化工程を組み合わせて実施する場合、工程の順序は、特に限定されない。また、メタン化工程、吸着工程及び酸化工程のうち少なくともいずれかを繰り返してもよい。
【0024】
<メタン化工程>
メタン化工程では、PSA法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を、触媒を用いてメタン化する。なお、メタン化工程では、水素含有ガスに含まれる水素によって一酸化炭素がメタン化する。
【0025】
メタン化工程で用いる触媒は、活性金属として、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。これらの活性金属は、シリカ、アルミナ、チタニア又はジルコニア等に担体に担持させて用いればよい。
【0026】
メタン化工程における水素含有ガスの温度は150〜400℃程度とすればよい。メタン化工程における水素含有ガスの圧力は、常圧〜5MPa程度とすればよい。メタン化工程における触媒の温度は、150〜400℃程度とすればよい。
【0027】
従来、例えば、特開2006−290732号公報(以下、「文献2」と記す。)に示すように、PSA法による精製を経ることなく、一酸化炭素をメタン化することにより精製した水素含有ガスを燃料電池に用いる方法が知られている。しかし、文献2の方法では、PSA法による精製を行わないため、メタン化を行う前の水素含有ガス中の一酸化炭素の含有率が、本実施形態で用いる水素含有ガスに比べて高い。したがって、一酸化炭素のメタン化で消費される水素の量が、本実施形態のメタン化工程に比べて多くなる。そのため、文献2の方法では、本実施形態に比べて、最終的に得られる水素の回収率が低くなる。また、文献2に示す方法では、一酸化炭素のメタン化で発生するメタンの量も、本実施形態のメタン化工程に比べて多くなる。その結果、文献2の方法で最終的に得られるガスは、その水素の分圧が本実施形態に比べて低くなり、燃料電池の燃料として用い難くなる。
【0028】
一方、本実施形態では、PSA法により精製した水素含有ガス中の一酸化炭素をメタン化するため、メタン化単独で水素を精製する文献2の方法に比べて、水素ガスの回収率が高くなる。また、本実施形態では、メタン化工程において発生するメタンの量も、文献2の方法に比べて低くなる。
【0029】
<吸着工程>
吸着工程では、PSA法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を吸着剤に吸着させる。
【0030】
吸着工程で用いる吸着剤は、活性炭、ゼオライト及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、本発明の効果が顕著なる。
【0031】
本実施形態では、銅又は銅の化合物が吸着剤に担持されていることが好ましい。これにより、吸着剤への一酸化炭素の吸着が促進される。
【0032】
吸着工程における水素含有ガスの温度は−10〜100℃程度とすればよい。吸着工程における水素含有ガスの圧力は、常圧〜5MPa程度とすればよい。
【0033】
従来、例えば、特許2607682号公報(以下、「文献3」と記す。)に示すように、PSA法による精製を経ることなく、一酸化炭素をガス拡散電極に吸着することにより精製した水素含有ガスを燃料電池に用いる方法が知られている。しかし、文献2の方法では、PSA法により精製した水素含有ガスを用いないため、本実施形態に比べて、精製後の水素中の一酸化炭素の含有率が本実施形態に比べて高くなる。
【0034】
<酸化工程>
酸化工程では、PSA法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を酸化する。
【0035】
本実施形態では、酸化工程において、ルテニウム又は白金の少なくともいずれかを含有する触媒を用いて一酸化炭素を酸化することが好ましい。ルテニウム又は白金は、アルミナ、チタニア、シリカ及びジルコニア等からなる群より選ばれる一種又は二種以上の担体に担持させて用いればよい。
【0036】
酸化工程では、PSA法により精製した水素含有ガス中に酸素を添加することにより、一酸化炭素を酸化することが好ましい。これより、水素含有ガス中の一酸化炭素の酸化が促進される。
【0037】
酸化工程における水素含有ガスの温度は50〜300℃程度とすればよい。酸化工程における水素含有ガスの圧力は、常圧〜5MPa程度とすればよい。酸化工程における触媒の温度は、50〜300℃程度とすればよい。
【0038】
従来、例えば、特開2000−169107号公報(以下、「文献4」と記す。)に示すように、PSA法による精製を経ることなく、一酸化炭素のメタン化と酸化により精製した水素含有ガスを燃料電池に用いる方法が知られている。しかし、文献4の方法では、PSA法による精製を行わないため、酸化を行う前の水素含有ガス中の一酸化炭素の含有率が、本実施形態で用いる水素含有ガスに比べて高い。したがって、文献4の方法では、一酸化炭素の酸化に伴い発生する二酸化炭素の量が、本実施形態の酸化工程に比べて多くなる。そのため、文献4の方法では、本実施形態に比べて、最終的に得られる水素に含まれる二酸化炭素の含有率とその分圧が高くなる。その結果、文献4の方法で最終的に得られるガスは、その水素の分圧が本実施形態に比べて低くなり、燃料電池の燃料として用い難くなる。また、文献4の方法では、一酸化炭素の酸化に要する酸素の量が多いため、本実施形態の酸化工程に比べて、多量の酸素を水素含有ガスに供給する必要がある。そのため、一酸化炭素の酸化のみならず、水素の酸化(燃焼)も進行し易くなる。これにより、文献4の方法では、本実施形態に比べて、最終的に得られる水素の回収率が低くなる。また、文献4の方法では、危険性のある水素の酸化反応が起こり易いため、本実施形態に比べて安全性が低い。
【0039】
一方、本実施形態では、PSA法により精製した水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化するため、文献4の方法に比べて、酸化工程で発生する二酸化炭素や水の量が少なく、水素ガスの回収率が高くなる。また、本実施形態では、文献4の方法に比べて、水素の酸化反応が起こり難く、精製の安全性が向上する。
【0040】
本実施形態によれば、PSA法単独で水素を精製する方法及び上記文献2〜4の方法に比べて、水素中の一酸化炭素の含有率を低減することが可能となる。また、本実施形態では、PSA法により精製した水素含有ガスにおける一酸化炭素の含有率が、燃料電池車に適用できる程度にまで低減されていない場合であっても、メタン化工程、吸着工程又は酸化工程において水素中の一酸化炭素の含有率を燃料電池車に適用できる程度にまで低減することが可能となる。具体的には、本実施形態では、水素中の一酸化炭素の含有率を0.2質量ppm以下に低減することが可能となる。一酸化炭素の含有率が0.2質量ppm以下に低減された水素は、燃料電池車の燃料として好適である。
【0041】
従来のように、改質ガスをPSA法単独で精製して、水素ガス中の一酸化炭素の含有率を1質量ppm程度に低減する場合、改質ガスの組成にもよるが、水素の回収率は約85質量%以上になる。しかし、改質ガスをPSA法単独で精製して、水素ガス中の一酸化炭素の含有率を0.2質量ppm未満に低減する場合、水素含有ガスの高圧化によって水素の吸着剤への吸着が促進されるため、水素の回収率が約70質量%以下に低下してしまう。一方、本実施形態では、PSA法による精製で水素含有ガスの圧力を低く設定しても、その後の精製工程で一酸化炭素を除去できるため、水素の回収率を低下させることなく、水素中の一酸化炭素の含有率を燃料電池車に適用できる程度にまで低減することが可能となる。
【0042】
仮に、PSA法単独で水素中の一酸化炭素の含有率を0.2質量ppm以下に低減する場合、PSA法における水素含有ガスを約4.0MPaGより高い圧力に調整したり、精製装置を多段化したりする必要がある。しかし、水素含有ガスを高圧で圧縮するほど、圧縮に要するエネルギーが増大し、PSA法を実施するための設備(吸着塔、コンプレッサー等)が大型化するため、精製に伴うコストが増大する。精製装置の多段化にもコストがかかる。また、高圧化に伴って精製の安全性が低下する。一方、本実施形態では、PSA法単独で水素を精製する方法に比べて、精製に伴うコストを軽減し、精製の安全性を向上させることが可能である。
【0043】
本実施形態に係る水素の出荷設備は、上記本実施形態に係る水素の精製方法を実施するための設備を備える。本実施形態に係る水素ステーションは、上記本実施形態に係る水素の精製方法を実施するための設備を備える。つまり、上記本実施形態に係る水素の出荷設備及び水素ステーションは、PSA法で精製された水素含有ガスを用いたメタン化工程、吸着工程又は酸化工程を実施するための設備を備える。水素の出荷設備は、例えば、精製した水素ガスを燃料電池車用の水素ステーション等に供給する。水素ステーションは、例えば、道路沿いに設置され、燃料電池車等に水素を直接供給する。
【0044】
本実施形態に係る水素の出荷設備及び水素ステーションでは、PSA法単独で水素を精製する出荷設備及び水素ステーションに比べて、水素の精製に伴うコスト及び消費エネルギーを軽減し、精製の安全性を向上させることが可能である。そのため、本実施形態に係る水素の出荷設備及び水素ステーションは、普及させ易い。
【0045】
以上、本発明に係る水素の精製方法、水素の出荷設備及び水素ステーションの好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、PSA法の代わりに、TSA法又はTPSA法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素及びその他の不純物を、精製工程において除去してもよい。この場合も、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(比較例1)
ナフサを原料とし、水蒸気改質反応により、水素含有ガスを製造した。この水素含有ガスをPSA法で精製した。PSA法では、水素含有ガスを加圧して、水素含有ガスの圧力を3.0MPaに調整した。また、PSA法では、加圧した水素含有ガスの温度を40℃に調整した。以下では、比較例1においてPSA法により精製した水素含有ガスを「水素含有ガス1」と記す。
【0048】
水素含有ガス1の組成を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。水素含有ガス1の組成を表1に示す。表1に示すように、水素含有ガス1における水素の濃度は99.99質量%以上であった。一方、水素含有ガス1中に不純物として残存する一酸化炭素の濃度は0.70ppmであった。
【0049】
(実施例1)
水素含有ガス1に含まれる一酸化炭素を、市販の50質量%ニッケル/シリカ触媒を用いてメタン化して、実施例1の水素ガスを得た。メタン化では、300℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。なお、50質量%ニッケル/シリカ触媒とは、シリカを担体として有し、触媒の全質量に対して50質量%のニッケルが担持された触媒を意味する。
【0050】
(実施例2)
水素含有ガス1に含まれる一酸化炭素を、2質量%Ru/アルミナ触媒を用いてメタン化して、実施例2の水素ガスを精製した。メタン化では、270℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。
【0051】
(実施例3)
水素含有ガス1に含まれる一酸化炭素を、2質量%Rh/アルミナ触媒を用いてメタン化して、実施例3の水素ガスを精製した。メタン化では、250℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。
【0052】
(実施例4)
水素含有ガス1に含まれる一酸化炭素を、5質量%Fe/活性炭触媒を用いてメタン化して、実施例4の水素ガスを精製した。メタン化では、350℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。
【0053】
(実施例5)
常温、常圧の水素含有ガス1を、市販の活性炭にCuClを担持した吸着剤で処理した。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を吸着剤に吸着させて、実施例5の水素ガスを精製した。
【0054】
(実施例6)
常温、常圧の水素含有ガス1を、市販のゼオライトにCuClを担持した吸着剤で処理した。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を吸着剤に吸着させて、実施例6の水素ガスを精製した。
【0055】
(実施例7)
常温、常圧の水素含有ガス1を、市販のアルミナにCuClを担持した吸着剤で処理した。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を吸着剤に吸着させて、実施例7の水素ガスを精製した。
【0056】
(実施例8)
常温、常圧の水素含有ガス1を、市販のゼオライト系吸着剤で処理した。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を吸着剤に吸着させて、実施例8の水素ガスを精製した。
【0057】
(実施例9)
常温、常圧の水素含有ガス1を、市販の活性炭系吸着剤で処理した。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を吸着剤に吸着させて、実施例9の水素ガスを精製した。
【0058】
(実施例10)
0.5質量%Ru/アルミナ触媒を用いて、酸素を添加した200℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を酸化して、実施例10の水素ガスを精製した。
【0059】
(実施例11)
0.5質量%Ru−0.1質量%Pt/アルミナ触媒を用いて、酸素を添加した180℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を酸化して、実施例11の水素ガスを精製した。
【0060】
(実施例12)
0.5質量%Pt−0.1質量%Ni/アルミナ触媒を用いて、酸素を添加した180℃の水素含有ガス1を常圧下で反応させた。これにより、水素含有ガス1中の一酸化炭素を酸化して、実施例12の水素ガスを精製した。
【0061】
比較例1においてPSA法により精製した水素含有ガス、実施例1〜12の精製された水素ガスの各組成をガスクロマトグラフィーによって分析した。分析結果を表1に示す。なお、表1に記載の「%」及び「ppm」は質量を基準としている。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1〜12の水素ガスにおける一酸化炭素の含有率は0.2質量ppm未満であり、比較例1に比べて小さいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着法により精製した水素含有ガス中に残存する一酸化炭素を触媒でメタン化するメタン化工程、前記一酸化炭素を吸着剤に吸着させる吸着工程、及び前記一酸化炭素を酸化する酸化工程からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程により、前記水素含有ガスから前記一酸化炭素を除去する精製工程を備える、
水素の精製方法。
【請求項2】
前記メタン化工程で用いる前記触媒が、活性金属として、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、
請求項1に記載の水素の精製方法。
【請求項3】
前記吸着工程で用いる前記吸着剤が、活性炭、ゼオライト及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種である、
請求項1又は2に記載の水素の精製方法。
【請求項4】
前記吸着剤に銅が担持されている、
請求項3に記載の水素の精製方法。
【請求項5】
前記酸化工程において、ルテニウム又は白金を含有する触媒を用いて前記一酸化炭素を酸化する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素の精製方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素の精製方法を実施するための設備を備える、
水素の出荷設備。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素の精製方法を実施するための設備を備える、
水素ステーション。









【公開番号】特開2011−32128(P2011−32128A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179571(P2009−179571)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】