説明

水素を製造するための吸着方法および前記方法を行うための装置

原料水素富化ガス(3)をPSA精製ユニット(1)に供給し、純度の高い水素を製品出口(4)に送り、水素が不足したガスを残留物出口に送る。前記水素が不足したガスを加圧して(9)、ガス状可燃性混合物が循環するライン(10)に注入する。ガス状可燃性混合物の一部(12)をPSAユニットの上流で抽出し、加圧し(13)、PSAユニット(1)の前記原料に再注入する。前記発明は特に石油化学の現場で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含む第1圧力の原料ガスのPSAユニットにおける圧力スウィング吸着によって水素を製造/精製するとともに、加圧した廃棄物を、第2圧力の燃料ガス流通ネットワーク(同様に水素を含み、その現場またはその近くの様々なユーザーステーションに供給するように意図されている)に送る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を原料ガスから製造する従来の装置では、いくらか圧力降下があるにせよ、水素を原料ガスの高圧で生成し、一般的にPSAからの廃棄物をその一部だけ燃料ガス混合物流通ネットワーク(燃料ガスネットワークとして知られている)に低圧で放出する。このネットワークは、大規模な産業サイトにあり、様々なブローダウンから生じ特にボイラーで燃焼させて蒸気を生成することを意図した、中程度の圧力の水素と炭化水素との混合物を運ぶ。
【0003】
これらのPSAユニットは、抽出効率が制限されるという欠点を持つ。これは、原料ガスからのかなりの割合の水素が廃棄物および燃料ガス混合物ネットワークにおいて失われることを意味する。
【0004】
72%をわずかに超える効率から80%をわずかに超える効率に進歩させるために、PSAユニットのシリンダ間の均等性を増すことが提案されているが、多額の投資(一般的には個々に大きい、多数の吸着塔)を必要とする。
【0005】
効率を向上させる第2の方法は、廃棄物を大気圧よりもわずかに高い下げた圧力で抽出して再生圧力を下げることである。それならば、コンプレッサの追加という代償を払って、効率は約90%の値に達することができる。
【0006】
さらに、PSA廃棄物の一部を加圧して原料ガス中へ再循環することにより約95%の効率を達成できるが、追加のコンプレッサという代償を払う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、著しい間接費なしに、95%を超えて、100%に達する、または100%を超えさえもする効率を得ることを可能とする、改良された水素の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを果たすために、本発明による方法は、流通ネットワークからの燃料ガス混合物の一部を取り出す工程と、それをおよそ原料ガスの圧力に加圧する工程と、それを追加の原料ガスとして(例えば、原料ガスと混合させて)PSAユニットに注入する工程とをさらに含む。
【0009】
この背景にある推論は以下のとおりである:たとえ水素に富む、例えば70%を超える水素含有量を持つ原料ガスを用いても、PSAユニットの効率を増加させると、廃棄物の組成は急速に乏しくなる(抽出効率が85%を超えるとすぐに30%に低下する)が、本発明者らは、ほとんどの場合に燃料ガス混合物流通ネットワーク中の水素の含有量がこれらの値を超えていた(一般的に約35%から50%)こと、したがって再循環させる廃棄物を使用するよりはむしろ、この水素に富む流体を使用して、PSAユニットへの二次的な供給を形成することが理にかなっていたことを証明した。
【0010】
本発明による方法を使用すると、同じ量を製造する場合に、導入する必要がある原料ガスは少なくなるであろうから、それによって、エネルギーの面および投資の面で節約するために、必要な加圧を削減でき、かつ一般的にPSA装置のサイズを縮小できる。また、同程度の不純物がPSAユニットに導入される場合および/または加圧ガスが同じ量である場合でも、明らかにより多くの水素を処理し、製造量を増加させることができるようになり、上で挙げたように、98%を超える効率を達成できる。
【0011】
特別な機能を持つ異なる吸着剤(例えば、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭および適切なゼオライト)を用いる複数の床を使用することで、PSAへの導入の間、主原料ガスに普通は存在しない望ましくない成分を精密に制御することができる。
【0012】
本発明のその他の対象はこの方法を実施するための装置であって:
少なくとも1つの原料ガス供給パイプと;
燃料ガス混合物流通ネットワークの少なくとも1つのラインと;
原料ガスパイプに接続している1つの入口と、製品ガス出口と、少なくとも1つの廃ガス出口とを持つ、吸着によってガスを分離するための少なくとも1つのPSAユニットと;
廃ガス出口を燃料ガス混合物ラインに接続している第1コンプレッサと;
圧縮可能なガス混合物ラインをPSAユニットの入口、典型的には原料ガスパイプに接続している第2コンプレッサと
を具備する装置である。
【0013】
本発明のより具体的な特徴によると、第1および第2のコンプレッサは共通のサブアセンブリを使用し、例えば共通の駆動ライン上で異なる加圧段階を構成する。
【0014】
このような配置によって、PSAユニットへの二次的な供給物の追加が燃料ガス混合物流通ネットワークから取り出した一部を加圧することによって得られ、従来の解決策と比較してより良好に、水素抽出効率を増加させ、かつPSAユニットの廃棄物の一部を再循環して達成できるよりも、より効率的に行うことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明をここで、添付の図面を参照し、非限定的な説明として示される実施形態と関連して説明する。
【0016】
ただ1つの図は、圧力スウィング吸着1によって水素を製造するPSAユニットを示す。このユニットは、水素を含むガス状混合物から水素を分離することができる少なくとも1つの吸着剤、典型的には活性炭および/またはゼオライトを各々含む、少なくとも4つの吸着塔を具備する。
【0017】
PSAユニット1は、パイプ3中の原料ガスを高圧、典型的に15から45barの間で受け入れる入口2を具備する。パイプ3は例えば接触改質ユニットから通じていて、少なくとも60%、有利には少なくとも70%の水素を含む。PSAユニット1は原料ガスとおよそ同じ圧力で供給パイプ5に供給する出口4を具備し、高純度水素を現場のユーザーステーションに供給する。
【0018】
PSAユニット1は少なくとも1つの廃ガス出口7を具備する。この出口7は、水素が乏しく、抽出コンプレッサ9を組み込んでいるパイプ8を介してライン10に通じている。ライン10は、現場で、他のユーザーステーション、典型的には産業サイトの能動部分または受動部分を加熱するためのバーナー11に供給しようとする燃料ガス混合物を運び、少なくとも30%、有利には35から50%の間の水素を含む。
【0019】
この配置を使用して、廃ガスを、出口7で低圧(約1.1から2bar)で抽出し、コンプレッサ9により、ライン10で得られる圧力(典型的に3から8barの範囲にある)まで加圧する。
【0020】
本発明の1つの態様によると、コンプレッサ13を組み込んでいるパイプ12は、ライン10のパイプ8への接続領域の上流にあるライン10の点を、原料ガス供給パイプ3に接続している。コンプレッサ13はライン10から取り出した燃料ガス混合物の流れの一部をパイプ3の高圧に上昇させ、燃料ガス混合物において得られる利用可能な追加量の水素を原料ガスに再注入する。
【0021】
本発明の1つの態様によるとコンプレッサ9および13は、図において線14で表現しているように、所定のサブアセンブリ、例えば共通のオイルシステム、共通の冷却システム、または共通の駆動システムを共有するように配置されている。
【0022】
従って、好ましくは、2つのコンプレッサ9および13を組み合わせて、各々のコンプレッサに向けた1つまたは複数のステージ(stage)を持つ、単一の機械に結合する。前記ステージはピストン、インペラ、スクリューであり得る。
【0023】
このように2つのコンプレッサの機能を統合することによって、投資を約30%から40%の規模の節約ができる。
【0024】
本発明をいくつかの特定の実施形態に関連して説明したが、それらに限定されることはなく、当業者に明らかであろう方法で以下の特許請求の範囲内で改良および変化が可能である。
【0025】
従って、燃料ガス混合物の流れの一部をPSAユニット1にパイプ12を介して注入することを、主原料ガス3をPSAユニット1に入れることとは、後者に採用されるサイクルがそれを許すのであれば(特に、数個のシリンダが同時に生産段階にある場合)、別に行ってもよい。
【0026】
さらに、PSAユニット1のサイクルに応じて、PSAユニットの出口7で得られる廃棄物の一部をネットワーク10に、加圧なしに、例えば吸着塔の減圧の開始時点で直接注入することができる。吸着塔シリンダ内の圧力が減少する場合には、廃棄物をその後コンプレッサを用いて加圧する。
【0027】
そして、燃料ガス混合物の流れを、PSAユニットから廃棄物を受け取るネットワーク10と平行して作動するネットワークから取り出してもよい(この平行ネットワークが少なくとも30%の水素を含むガス混合物を運ぶのであれば)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む第1圧力(P)の原料ガスのPSAユニットにおける圧力スウィング吸着によって水素を製造するとともに、加圧した廃棄物を、第2圧力(P)(前記第1圧力(P)より低い)の、水素を含む燃料ガス混合物流通ネットワークに送る方法であって、前記ネットワークを流れる前記燃料ガス混合物の一部を取り出す工程と、それをおよそ前記第1圧力(P)に加圧する工程と、それを追加の原料ガスとして前記PSAユニットに注入する工程とを含む方法。
【請求項2】
燃料ガス混合物の前記一部を前記原料ガスに注入する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1圧力(P)は約15から45barの範囲にあり、前記第2圧力(P)は約3から8barの範囲にあることを特徴とする請求項1および2記載の方法。
【請求項4】
前記廃棄物を前記圧力スウィング吸着ユニットから約1.1から2barの範囲にある第3圧力(P)で抽出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記燃料ガス混合物は少なくとも30%の水素を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記燃料ガス混合物は約35から50%の水素を含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって:
少なくとも1つの原料ガス供給パイプ(3)と;
燃料ガス混合物流通ネットワークの少なくとも1つのライン(10)と;
前記原料ガスパイプ(3)に接続している1つの入口(2)と、製品ガス出口(4)と、少なくとも1つの廃ガス出口(7)とを持つ、吸着によってガスを分離する少なくとも1つのPSAユニットと;
前記廃ガス出口(7)を前記ライン(10)に接続している第1コンプレッサ(9)と;
前記ライン(10)を前記PSAユニットの前記入口(2)に接続している第2コンプレッサ(13)と
を具備する装置。
【請求項8】
前記第2コンプレッサ(13)は、前記ライン(10)を前記原料ガスパイプ(3)に接続しているパイプ(12)に位置していることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記第2コンプレッサ(13)は前記ライン(10)に、前記第1コンプレッサ(9)への後者の接続点の上流で接続していることを特徴とする請求項7または8記載の装置。
【請求項10】
前記第1(9)および前記第2(13)のコンプレッサは共通のサブアセンブリを使用することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記第1(9)および前記第2(13)のコンプレッサは共通の駆動ライン(14)を有することを特徴とする請求項10記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2006−528594(P2006−528594A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520870(P2006−520870)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050294
【国際公開番号】WO2005/009591
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】