説明

水素ガス供給システムおよび水素ガス供給方法

【課題】水素遮断弁が開故障している状況下でもインタンク電磁弁を確実に開弁することができる水素ガス供給システムおよび水素ガス供給方法を提供する。
【解決手段】インタンク電磁弁3の下流側に水素遮断弁4が設けられ、水素遮断弁4の下流側に水素レギュレータ5が設けられている。ECU20は、水素遮断弁4が開故障していると判断した場合には、インタンク電磁弁3のパイロットバルブ3aの開弁開始からの経過時間を、水素遮断弁4が開故障していない場合に比べて遅らせて、経過時間に至ったと判断したときにエアポンプ13を駆動して、水素レギュレータ5に信号圧を入力して開弁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに水素ガスを供給する水素ガス供給システムおよび水素ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車などには、燃料電池スタックに水素を供給する水素ガス供給システムとして、インタンク電磁弁を備えた水素タンクを搭載したものが種々提案されている。例えば、この種のインタンク電磁弁は、メインバルブとパイロットバルブとを備えており、まずパイロットバルブが開き、パイロットバルブの上流側の圧力と下流側の圧力との差が小さくなったところでメインバルブが開くようになっている。また、このシステムでは、メインバルブが開くまでの時間を短くするために、インタンク電磁弁の下流側に水素遮断弁を設けて、インタンク電磁弁の開弁完了後に水素遮断弁を開くように構成したものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−282697号公報(段落0024、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のようなインタンク電磁弁を備えた水素ガス供給システムでは、水素ガス供給時に、水素遮断弁が閉じていることでインタンク電磁弁のメインバルブの開弁を保障しているが、水素遮断弁が開故障(弁が開いたまま閉じなくなる状態)している状況下では、メインバルブの上流側の圧力と下流側の圧力との差がなかなか小さくならず、インタンク電磁弁のメインバルブが開かなくなるという課題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、水素遮断弁が開故障している状況下でもインタンク電磁弁を確実に開弁することができる水素ガス供給システムおよび水素ガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、水素ガスを貯留する水素タンクと、前記水素タンクから燃料電池スタックへ水素ガスを供給する水素ガス供給流路と、前記水素タンクの出口に設けられ、パイロットバルブおよびメインバルブからなるインタンク電磁弁と、前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置された水素遮断弁と、前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置され、弁開度を調整することによりガス圧力を調整する水素レギュレータと、を備え、前記水素タンクから前記燃料電池スタックに水素ガスを供給する場合、前記水素遮断弁を閉じた状態で、前記インタンク電磁弁を開弁制御する水素ガス供給システムにおいて、前記水素遮断弁が開弁した状態で故障しているか否かを検出する遮断弁開故障検知手段をさらに備え、前記水素タンクからの水素ガスの供給開始時において、前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検出された場合には、前記水素レギュレータの弁開度を制御することにより前記インタンク電磁弁の開弁制御を行うことを特徴とする。
【0006】
これによれば、水素遮断弁が開故障している状況下でもメインバルブの上流と下流の差圧を短時間で減少させることができるので、インタンク電磁弁を早期かつ確実に開弁することができ、燃料電池スタックへの水素ガスの供給不足によって燃料電池スタックが発電停止するのを防止できる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記水素レギュレータは、前記燃料電池スタックに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段から供給される酸化剤ガスの圧力によって開状態に設定され、前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検知されたときに、前記酸化剤ガス供給手段を駆動させて前記水素レギュレータを開状態にする前に前記パイロットバルブを開くことを特徴とする。
【0008】
これによれば、酸化剤ガス供給手段から供給される酸化剤ガスの圧力によって開状態となる水素レギュレータを使用することにより、水素遮断弁が開故障したときでも酸化剤ガス供給手段を駆動させるタイミングを遅らせるだけで、インタンク電磁弁を開弁することが可能になる。このため、水素遮断弁が開故障したときにインタンク電磁弁のメインバルブを確実に開弁させるための遮断弁などの装置を新たに追加する必要がなくなり、インタンク電磁弁を早期かつ確実に開弁することが可能になる。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記パイロットバルブの開弁開始からの経過時間によって前記インタンク電磁弁の開弁完了を判断する電磁弁開弁完了判定手段を備え、前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検出された場合には、開弁完了を判断する際の経過時間を持ち替えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、水素遮断弁が開故障した場合でも、パイロットバルブの開弁開始からの経過時間を変更するだけで、インタンク電磁弁の開弁完了を判断することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、水素ガスを貯留する水素タンクと、水素タンクの出口に設けられ、パイロットバルブおよびメインバルブからなるインタンク電磁弁と、前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置された水素遮断弁と、前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置され、弁開度を調整することによりガス圧力を調整する水素レギュレータと、を備え、前記水素タンクから燃料電池スタックに水素ガスを供給する場合、前記水素遮断弁を閉じた状態で、前記インタンク電磁弁を開弁する水素ガス供給方法において、前記水素タンクから水素ガスの供給を開始する際に前記水素遮断弁が開故障しているか否かを判断するステップと、前記水素遮断弁が開故障していると判断された場合に前記水素レギュレータの弁開度を制御することにより前記インタンク電磁弁を開弁するステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
これによれば、水素遮断弁が開故障している状況下でもメインバルブの上流と下流の差圧を短時間で減少させることができるので、インタンク電磁弁を早期かつ確実に開弁することができ、燃料電池スタックへの水素ガスの供給不足によって燃料電池スタックが発電停止するのを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素遮断弁が開故障している状況下でもインタンク電磁弁を確実に開弁することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本実施形態の水素ガス供給システムを備えた燃料電池システムを示す全体構成図、図2は本実施形態の水素ガス供給システムの起動時の制御を示すフローチャート、図3は本実施形態の水素ガス供給システムの起動時の制御におけるタイミングチャートを示し、(a)は開故障している場合、(b)は開故障していない場合である。なお、本実施形態では、水素ガス供給システム1を有する燃料電池システム10を搭載した燃料電池自動車(図示せず)を例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の水素ガス供給システム1は、燃料電池システム10の一部であり、水素タンク2、インタンク電磁弁3、水素遮断弁4、水素レギュレータ5、ECU20などを含んで構成されている。また、燃料電池システム10は、水素ガス供給システム1を含み、燃料電池スタック11、エゼクタ12、エアポンプ13、加湿器14、信号圧インジェクタ15などを含んで構成されている。
【0016】
前記水素タンク2は、例えば、アルミニウム合金により形成され、その内部に水素ガスを高圧で貯留するタンク室(図示せず)を有し、そのタンク室の周囲をCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)や、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic:ガラス繊維強化プラスチック)等で形成されたカバー(図示せず)で被覆して構成されている。
【0017】
前記インタンク電磁弁3は、水素タンク2と一体に構成されたものであり(図1では別々に図示している)、水素タンク2の出口に設けられている。また、インタンク電磁弁3は、パイロットバルブ3aとメインバルブ3bとを備えている。パイロットバルブ3aは、開口面積が小さく、少ない力(電磁力)で開弁可能な弁であり、メインバルブ3bを開弁するために先行して開弁し、インタンク電磁弁3の上流側の圧力とインタンク電磁弁3の下流側の圧力との差圧(水素タンク2の内外の差圧)を縮小させる機能を有している。メインバルブ3bは、パイロットバルブ3aよりも開口面積が大きく、パイロットバルブ3aの機能によって前記差圧が縮小したら開弁するようになっている。なお、インタンク電磁弁3については、公知のものを使用できる。
【0018】
前記水素遮断弁4は、電磁式のものであり、インタンク電磁弁3よりも下流側に設けられている。この水素遮断弁4は、後記するECU20からの制御信号に基づいて開閉される。
【0019】
前記水素レギュレータ5は、水素タンク2から供給された高圧の水素ガスを所定の圧力に減圧して燃料電池スタック11に供給する機能を有し、水素遮断弁4よりも下流側に設けられている。なお、本実施形態における水素レギュレータ5は、後記するエアポンプ13からの空気の圧力を信号圧として入力されることにより開状態に設定され、エアポンプ13が停止することにより信号圧の入力が解除されて閉状態に設定されるように構成されたものである。
【0020】
また、前記した水素ガス供給システム1では、インタンク電磁弁3と水素遮断弁4とがアノード配管6aによって接続され、水素遮断弁4と水素レギュレータ5とがアノード配管6bによって接続され、水素レギュレータ5と後記するエゼクタ12とがアノード配管6cによって接続され、エゼクタ12と後記する燃料電池スタック11とがアノード配管6dによって接続されている。
【0021】
また、水素ガス供給システム1では、水素遮断弁4と水素レギュレータ5との間のアノード配管6bに流量センサ7が設けられている。この流量センサ7は、本実施形態の遮断弁開故障検知手段に相当するものであり、水素遮断弁4の下流側に水素ガスが流れているか否かを検出する機能を有している。
【0022】
前記燃料電池スタック11は、固体高分子からなる電解質膜11aを、触媒を含むアノード11bと、触媒を含むカソード11cとで挟み、さらにその外側を一対の導電性のセパレータ11d,11eで挟んで構成した単セル(Single Cell)を厚み方向に複数積層した構造を有している。
【0023】
前記エゼクタ12は、燃料電池スタック11のアノード11bから排出された未反応の水素を、燃料電池スタック11のアノード11bに戻して循環させるための真空ポンプの一種である。なお、未反応の水素は、アノード11b側の出口に接続されたアノード配管6eを通り、アノード配管6eとエゼクタ12とを接続するアノード配管6fを通って循環するようになっている。
【0024】
なお、本実施形態では、前記したアノード配管6a,6b,6c,6d,6e,6fによって水素ガス供給流路が構成されている。
【0025】
前記エアポンプ13は、モータにより駆動されるスーパーチャージャなどで構成され、車外の空気(酸化剤ガス)を取り込んで圧縮して燃料電池スタック11のカソード11cに供給する機能を有している。なお、エアポンプ13は、本実施形態での酸化剤ガス供給手段に相当する。
【0026】
前記加湿器14は、例えば複数の水透過性の膜を束ねてケースに収容した中空糸膜モジュールを備え、中空糸膜の内側と外側の一側にエアポンプ13からの空気を流通させ、他側に燃料電池スタック11のカソード11c側から排出されたカソードオフガス(湿潤な空気+生成水)を流通させることにより、エアポンプ13からの空気を加湿するように構成されている。
【0027】
なお、本実施形態の燃料電池システム10では、エアポンプ13と、加湿器14と、燃料電池スタック11とが適宜カソード配管16a,16b,16c,16dを介して接続されている。また、図示していないが、本実施形態の燃料電池システム10は、前記したアノード配管6eから排出された水素をカソード配管16dから排出されたカソードオフガスで希釈して車外に排出する希釈装置を備えている。
【0028】
前記信号圧インジェクタ15は、エアポンプ13と加湿器14との間のカソード配管16aに信号圧配管15aおよびオリフィス15bを介して接続されている。また、信号圧インジェクタ15とオリフィス15bとの間の信号圧配管15aには、信号圧配管15bの一端が接続され、他端が水素レギュレータ5と接続されている。また、信号圧インジェクタ15は、開放されたときに、空気が大気中に放出されるようになっている。これにより、信号圧インジェクタ15が閉鎖した状態において、水素レギュレータ5に、エアポンプ13側から空気が導入されて、空気の圧力(カソード系の圧力)が信号圧として入力されることにより、水素レギュレータ5がカソード系の圧力に応じた減圧弁として機能するようになっている。また、信号圧インジェクタ15は、後記するECU20により吐出量が制御されることにより、水素レギュレータ5に入力される信号圧を増減させて、水素レギュレータ5の開度を変更できるようになっている。
【0029】
前記ECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、プログラムなどで構成され、遮断弁開故障検知手段および電磁弁開弁完了判定手段を備えている。また、ECU20は、インタンク電磁弁3、水素遮断弁4、エアポンプ13、信号圧インジェクタ15と制御線を介して接続され、インタンク電磁弁3の開閉制御、水素遮断弁4の開閉制御、エアポンプ13の回転速度制御、信号圧インジェクタ15の開閉制御を行うようになっている。
【0030】
次に、本実施形態の水素供給システムの動作について図2および図3を参照(適宜、図1参照)して説明する。なお、燃料電池自動車のイグニッションがオフにされて燃料電池システム10が停止している場合には、インタンク電磁弁3、水素遮断弁4、水素レギュレータ5、信号圧インジェクタ15は閉じており、またエアポンプ13は停止している。
【0031】
車両のイグニッションがオンにされると、ステップS100において、ECU20は、インタンク電磁弁3を開弁する開指令を与える(図3(a)の時刻t1参照)。これにより、インタンク電磁弁3のコイル(ソレノイド)が通電されて、まずパイロットバルブ3aのみが開弁する。すなわち、前記したように、インタンク電磁弁3に開指令が入力されてコイルが通電されたとしても、インタンク電磁弁3の上流側と下流側との差圧が非常に大きいのでメインバルブ3bは開こうとしても開かず、パイロットバルブ3aのみが開く。
【0032】
そして、ステップS101に進み、ECU20は、水素遮断弁4が開故障しているか否かを判断する。このときの水素遮断弁4が開故障しているか否かの判断は、水素遮断弁4の下流側に設けられた流量センサ7からの検出値に基づいて、水素遮断弁4の下流側に水素が流れていることを検知したときに水素遮断弁4が開故障していると判断することができる。
【0033】
なお、水素遮断弁4が開故障しているかの判断は、流量センサ7に限定されず、例えば、水素遮断弁4の上流側や下流側に圧力センサを設けて、圧力の上がり具合を検知して水素遮断弁4が開故障していると判断してもよい。あるいは、水素遮断弁4の弁開度を直接に検知するセンサを設けて、開故障を判断してもよい。また、開故障の判断は、過去の開故障履歴を参照して判断して、故障履歴を確認した場合に開故障を判断してもよい。
【0034】
ステップS101において、ECU20は、水素遮断弁4が開故障していないと判断した場合には(No)、ステップS102に進み、ステップS100のインタンク電磁弁3の開指令と同時に、エアポンプ13の駆動を開始する(図3(a)の時刻t1参照)。エアポンプ13の駆動を開始することにより、外部(車外)から取り込んで圧縮された空気が加湿器14で加湿されて燃料電池スタック11のカソード11cに供給される。また、エアポンプ13からの圧縮空気が信号圧配管15aおよび15cを通って水素レギュレータ5に送られて、水素レギュレータ5に圧縮空気の圧力(カソード側の圧力)が信号圧として入力され、水素レギュレータ5が開く。
【0035】
そして、ステップS103に進み、ECU20は、インタンク電磁弁3に開指令を入力してから所定時間(経過時間)T1が経過したか否かを判断する。ステップS103において、ECU20は、所定時間T1が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS103の処理を繰り返し、所定時間T1が経過したと判断した場合には(Yes)、インタンク電磁弁3の開弁が完了したと判断して、ステップS104に進む(図3(a)の時刻t2参照)。なお、ここで設定される所定時間T1、つまり水素遮断弁4が開故障していない場合の所定時間T1とは、インタンク電磁弁3の開弁完了を判断するための時間であり、アノード配管6a内に形成されている配管ボリュームV1(図1参照)に基づいて予め決められる時間である。すなわち、所定時間T1とは、インタンク電磁弁3の上流側と下流側の差圧が縮小してソレノイドの電磁力でメインバルブ3bを開弁できるまでの時間である。
【0036】
そして、ステップS104に進み、ECU20は、インタンク電磁弁3の開弁完了と同時に、水素遮断弁4を開弁する開指令を与える(図3(a)の時刻t2参照)。水素遮断弁4が開くと、水素ガスは、水素レギュレータ5によって減圧されて、燃料電池スタック11のアノード11bに供給されるようになっている。
【0037】
そして、ステップS105に進み、ECU20は、水素遮断弁4に対する開指令から所定時間T2が経過したか否かを判断する。なお、このときの所定時間T2は、開指令から開弁完了と判断するまでの時間であり、予め決められる時間(微小時間)である。ステップS105において、ECU20は、所定時間2が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS105の処理を繰り返し、所定時間2が経過したと判断した場合には(Yes)、処理を終了する(図3(a)の時刻t3参照)。
【0038】
一方、ステップS101において、ECU20は、水素遮断弁4が開故障していると判断した場合には(Yes)、ステップS106に進み、インタンク電磁弁3(パイロットバルブ3a)を開弁開始してから(図3(b)の時刻t1参照)、所定時間(経過時間)T3が経過したか否かを判断する。なお、このときの所定時間T3、つまり水素遮断弁4が開故障している場合の所定時間T3とは、アノード配管6aおよびアノード配管6b内に形成されている配管ボリュームV2(図1参照)によって予め決められる時間である。すなわち、所定時間T3とは、インタンク電磁弁3の上流側と下流側の差圧が縮小してメインバルブ3bを開弁できるようになる時間である。なお、ステップS106が、本実施形態における電磁弁開弁完了判定手段によって実施される。
【0039】
ステップS106において、ECU20は、所定時間T3が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS106の処理を繰り返し、所定時間T3が経過していると判断した場合には(Yes)、ステップS107に進み、エアポンプ13の駆動を開始するとともに、水素遮断弁4に対して開指令を与える(図3(b)の時刻t4参照)。エアポンプ13の駆動により、前記のようにして、水素レギュレータ5に信号圧が入力されて、水素レギュレータ5が開弁してカソード系の圧力に応じた減圧弁として機能するようになる。なお、例えば、水素遮断弁4に対して開指令が行われると、弁が全開の状態で開故障していれば水素遮断弁4は全開状態のままであるが、弁が半開の状態で開故障していれば水素遮断弁4は半開状態から全開状態になる。なお、ECU20は、水素遮断弁4が開故障している場合には、水素遮断弁4に対する開指令と同時に、水素遮断弁4の開弁が完了していると判断する(図3(b)の時刻t4参照)。
【0040】
このように、本実施形態の水素ガス供給システムによれば、水素遮断弁4が開故障している状況下でも、インタンク電磁弁3(メインバルブ3b)の上流と下流の差圧を短時間で減少させることができるので、インタンク電磁弁3(メインバルブ3b)を早期かつ確実に開弁できるようになる。よって、水素ガスの供給不足によって燃料電池スタック11が停止するのを防止することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態の水素ガス供給システムによれば、エアポンプ13から供給される空気の圧力によって開状態となる水素レギュレータ5を使用しているので、水素遮断弁4の開故障時でもエアポンプ13の駆動タイミングをずらす(遅らせる)だけで、インタンク電磁弁3(メインバルブ3b)を開弁することが可能になる。このため、インタンク電磁弁3(メインバルブ3b)を開弁させるための遮断弁などの装置を新たに追加することなく、インタンク電磁弁3を早期かつ確実に開弁できるようになる。
【0042】
また、本実施形態の水素ガス供給システムによれば、水素遮断弁4が開故障した場合でも、パイロットバルブ3aの開弁開始からの経過時間を、所定時間T1から所定時間T3に持ち替えるだけで、インタンク電磁弁3の開弁完了を判断することができる。
【0043】
なお、前記した実施形態では、水素遮断弁4の下流側に水素レギュレータ5が設けられた構成について説明したが、これに限定されるものではなく、前記とは逆に、水素レギュレータ5の下流側に水素遮断弁4が設けられた構成であってもよい。このような場合には、インタンク電磁弁3と水素レギュレータ5との間の配管ボリュームに基づいて経過時間3が決められる。この場合の経過時間3は、通常(開故障していないとき)のインタンク電磁弁3の開弁完了判断に必要な経過時間T1よりも短くなる。
【0044】
また、前記した実施形態では、水素遮断弁4の開故障時にはエアポンプ13の駆動を遅らせる構成にしたが、これに限定されるものではなく、エアポンプ13をインタンク電磁弁3に対する開指令と同時に駆動を開始させるとともに信号圧インジェクタ15を開放して水素レギュレータ5に信号圧が入力されないようにしておき、所定時間T3が経過したときに信号圧インジェクタ15を閉鎖して水素レギュレータ5に信号圧を入力するようにしてもよい。
【0045】
また、前記した実施形態では、エアポンプ13の圧力を信号圧として動作する水素レギュレータ5を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、電気駆動する水素レギュレータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態の水素ガス供給システムを備えた燃料電池システムを示す全体構成図である。
【図2】本実施形態の水素ガス供給システムの起動時の制御を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の水素ガス供給システムの起動時の制御におけるタイミングチャートを示し、(a)は開故障している場合、(b)は開故障していない場合である。
【符号の説明】
【0047】
1 水素ガス供給システム
2 水素タンク
3 インタンク電磁弁
3a パイロットバルブ
3b メインバルブ
4 水素遮断弁
5 水素レギュレータ
6a〜6f アノード配管(水素ガス供給流路)
7 流量センサ(遮断弁開故障検知手段)
11 燃料電池スタック
13 エアポンプ(酸化剤ガス供給手段)
20 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを貯留する水素タンクと、
前記水素タンクから燃料電池スタックへ水素ガスを供給する水素ガス供給流路と、
前記水素タンクの出口に設けられ、パイロットバルブおよびメインバルブからなるインタンク電磁弁と、
前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置された水素遮断弁と、
前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置され、弁開度を調整することによりガス圧力を調整する水素レギュレータと、を備え、
前記水素タンクから前記燃料電池スタックに水素ガスを供給する場合、前記水素遮断弁を閉じた状態で、前記インタンク電磁弁を開弁制御する水素ガス供給システムにおいて、
前記水素遮断弁が開弁した状態で故障しているか否かを検出する遮断弁開故障検知手段をさらに備え、
前記水素タンクからの水素ガスの供給開始時において、前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検出された場合には、前記水素レギュレータの弁開度を制御することにより前記インタンク電磁弁の開弁制御を行うことを特徴とする水素ガス供給システム。
【請求項2】
前記水素レギュレータは、前記燃料電池スタックに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段から供給される酸化剤ガスの圧力によって開状態に設定され、
前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検知されたときに、前記酸化剤ガス供給手段を駆動させて前記水素レギュレータを開状態にする前に前記パイロットバルブを開くことを特徴とする請求項1に記載の水素ガス供給システム。
【請求項3】
前記パイロットバルブの開弁開始からの経過時間によって前記インタンク電磁弁の開弁完了を判断する電磁弁開弁完了判定手段を備え、
前記遮断弁開故障検知手段により前記水素遮断弁が開放状態であると検出された場合には、開弁完了を判断する際の経過時間を持ち替えることを特徴とする請求項2に記載の水素ガス供給システム。
【請求項4】
水素ガスを貯留する水素タンクと、
水素タンクの出口に設けられ、パイロットバルブおよびメインバルブからなるインタンク電磁弁と、
前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置された水素遮断弁と、
前記水素ガス供給流路の前記インタンク電磁弁よりも下流側に設置され、弁開度を調整することによりガス圧力を調整する水素レギュレータと、を備え、
前記水素タンクから燃料電池スタックに水素ガスを供給する際に、前記水素遮断弁を閉じた状態で、前記インタンク電磁弁を開弁する水素ガス供給方法であって、
前記水素タンクから水素ガスの供給を開始する際に前記水素遮断弁が開故障しているか否かを判断するステップと、前記水素遮断弁が開故障していると判断された場合に前記水素レギュレータの弁開度を制御することにより前記インタンク電磁弁を開弁するステップと、を備えることを特徴とする水素ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−218076(P2008−218076A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51173(P2007−51173)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】