説明

水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムと、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物よりなる架橋可能なゴム組成物およびその組成物を架橋して得られる架橋ゴム製品。

【課題】 架橋可能な水素化ニトリルゴム含有組成物、及び架橋促進剤の提供。
【解決手段】 水素化ニトリルゴムとブチルゴムの混合物、および水素化ニトリルゴムと、ブチルゴムと、EPDM水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムと、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物にアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂と、架橋促進剤としてのデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドを添加した架橋可能な組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムと、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物よりなる架橋可能なゴム組成物およびその組成物を架橋して得られる架橋ゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって製造される合成ゴムであるアクリロニトリル・ブタジエンゴム(以下NBRと略称することがある)を、水素化して製造され、日本ゼオン株式会社からゼットポールあるいは、ランクセス社からテルバン等の商品名で上市されている公知の合成ゴムである。
【0003】
水素化する方法およびゴムの概要については、例えば非特許文献1および非特許文献2等に記載されている。
【0004】
水素化ニトリルゴムは、アクリロニトリル含有量が17%〜50%、ヨウ素価(中心値)4g/100g〜60g/100gであり、汎用的には、ヨウ素価(中心値)4g/100g〜30g/100gのゴムが市販されている。
【0005】
水素化ニトリルゴムは、優れた耐熱性、物理的強度が高い、化学安定性、低いガス透過率、耐オゾン性等があり、自動車用歯付ベルト、シール、O−リング、ホース等に使用されている。架橋方法としては、有機過酸化物架橋と硫黄架橋が汎用的に採用されている。
【0006】
水素化ニトリルゴムは、アクリロニトリル含有量の相違する原料ゴムグレードの選択により、耐熱性、耐寒性について幅広く対応が可能である。
【0007】
イソプレン・イソブチレンゴム(以下ブチルゴムと略称することがある)は、イソプレンとイソブチレンの共重合によって製造され、不飽和度は0.5mol%〜3mol%であり、公知の合成ゴムである。
【0008】
架橋方法としては、硫黄架橋と樹脂架橋が汎用的に採用されている。
【0009】
架橋されたゴムは、電気絶縁性、耐候性、酸やアリカリに対する耐薬品性、防振性、低ガス透過性に優れ、自動車のチューブ、防振ゴム、キュアリングバッグ、ゴム栓、ホースや電線の被覆等に使用されている。
【0010】
エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下EPDMと略称する)は、エチレン、プロピレンとジエンの三元共重合体であって、第三成分として採用されるジエンには1.4−ヘキサジエンやエチリデンノルボルネン等があり、公知の合成ゴムである。
【0011】
EPDMの架橋方法として、硫黄架橋、有機過酸化物架橋、キノイド架橋、樹脂架橋の4方法が知られている[非特許文献3]。架橋されたゴムは、自動車や建築用ガスケット、耐熱ホース、ゴム栓、電線の被覆等等に広く採用されている。
【0012】
当業者において、二種類以上のゴムを混合(ブレンド)して、それぞれのゴムの特徴を、他方のゴムに付与して、新規な特性を持つゴム製品を製造することは、一般的に行われ
ることである。
【0013】
しかしながら、水素化ニトリルゴムと、ブチルゴム及び、又はEPDMを混合してアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂によって架橋する方法は、一般的に検討されていない。
【0014】
水素化ニトリルゴムの架橋方法として、有機過酸化物架橋と、硫黄架橋が採用されているが、樹脂架橋については、水素化ニトリルゴムの原料であるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)については、非特許文献4にも記載されているように、架橋速度が遅く、架橋速度の改善には、塩化第二スズのような塩素化合物を併用することが必要であるというのが当業者間の共通の認識になっている。
【0015】
このような理由から、水素化ニトリルゴムの場合も、同様に樹脂架橋を実施した場合は、塩化第二スズのような塩素化合物を併用することが必要であろうと推定される。しかしながら、各種の機能部品として使用される水素化ニトリルゴムにおいて、ハロゲン化合物を添加、併用する架橋方法は実用性が極めて低いと判断できる。
【0016】
具体的には、アルミ電解コンデンサの封口ゴム、あるいはO−リング等の製品において、ハロゲン化合物が添加されている組成物は、アルミや銅等を腐食させる為に使用するのは適当でない。
【0017】
水素化ニトリルゴムの架橋剤として、広く使用されている有機過酸化物によって、ブチルゴムが含有されている組成物を架橋すると、ブチルゴムには、架橋剤として働かず、軟化劣化を起こしてしまう問題がある。
【0018】
水素化ニトリルゴムとEPDMの混合物に対しては、有機過酸化物による架橋方法は、公知の架橋方法として、耐熱水性の架橋ゴム製品に使用されている。
【0019】
しかし、上記のアルミ電解コンデンサの封口ゴム製品の場合、気体透過率を低く調整する必要があり、そのような場合ブチルゴムを併用することが優れた方法であるが、ブチルゴムの架橋剤による軟化の問題から配合の調整がむずかしい。
【0020】
硫黄による架橋は、耐熱性を改良する場合、ブチルゴムは高温の雰囲気で加硫戻りを起こし、耐熱性の改良を必要とする製品の架橋方法としては好ましくないばかりでなく、硫黄による金属の腐食の問題もある。
【0021】
水素化ニトリルゴムとブチルゴム及び、またはEPDMを任意の割合で混合した組成物のハロゲン化合物を添加する必要のない、樹脂架橋の架橋促進剤は極めて望ましい。
【非特許文献1】日本ゴム協会誌、第70巻(1997)、ページ666、ページ681
【非特許文献2】日本ゴム協会誌、第75巻(2002)ページ207や第79巻(2006)、ページ33
【非特許文献3】ゴム工業便覧(第4版)302頁(平成6年1月20日 社団法人日本ゴム協会発行)
【非特許文献4】日本ゴム協会編「ゴム工業便覧(第四版)」ページ69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の第1の目的は、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(以下水素化ニトリルゴムと記載する場合もある)と、イソプレン・イソブチレンゴム(以下ブチルゴムと記
載する場合もある)又はエチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下EPDMと記載する場合もある)から選ばれる1種類または2種類の混合物のハロゲン化合物を使用しないアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂による新規な架橋可能な組成物と架橋方法を提供することである。
【0023】
また本発明の第2の目的は、該組成物を架橋して得られる架橋ゴム製品を提供することである。
【0024】
更に本発明の第3の目的は、耐熱性、電気絶縁性、耐化学薬品性に優れたアルミ電解コンデンサ用の封口ゴム製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述の本発明の目的は、水素化ニトリルゴムとブチルゴムの混合物、および水素化ニトリルゴムと、ブチルゴムと、EPDM水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムと、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物にアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドを添加した架橋可能な組成物、および該架橋方法によって製造される架橋ゴム製品によって達成される。更に詳しくは、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドを添加してなる組成物、および該組成物を架橋する方法によって、架橋して得られる架橋ゴムによって達成される。
【0026】
次に本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
第1の目的は水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類のゴム95重量部〜5重量部のゴムの計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部を添加してなる組成物、および該組成物を架橋する方法によって、架橋して得られる架橋ゴムによって達成される。
【0028】
第2の目的は水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴムの95重量部〜5重量部と、エチレン・プロピレンゴムの0重量部〜30重量部の計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部を添加してなる組成物、および該組成物を架橋する方法によって、架橋して得られる架橋ゴムによって達成される。
【0029】
本発明は、水素化ニトリルゴムと、ブチルゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物のアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂架橋の新規な架橋促進剤を提供するものである。
【0030】
水素化ニトリルゴムは、アクリロニトリル含有量が17%〜50%、ヨウ素価(中心値)4g/100g〜60g/100gであり、汎用的には、ヨウ素価(中心値)4g/100g〜30g/100gのゴムが市販されているが、いずれの水素化ニトリルゴムを使用してもよい。
【0031】
イソプレン・イソブチレンゴムは不飽和度は0.5mol%〜3mol%の公知の合成ゴムであるが、塩素や臭素でハロゲン化されたハロゲン化ブチルゴムは、本発明のブチルゴムには含まれない。
【0032】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、エチレンとプロピレンとジエンの3元共重合体の合成ゴムであり、エチリデンノルボルネンをジエン第三成分とするEPDMいずれでも使用できる。
【0033】
本発明で使用されるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、比較的低分子量のメチロール基を有する化合物が好適に使用し得る。
【0034】
例えば下記式(1)で示されるような、nが0〜10(式中、Rは炭素数1〜10の脂肪族アルキル基をあらわし、R′は−CH−または−CHOCH−を表す)の低分子量の化合物の混合物が好適に使用し得る。このような化合物は例えば商品名タッキロール201(田岡化学工業株式会社製品)として市販されている。
【0035】
【化1】

本発明で使用されるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は、5重量部〜25重量部、好ましくは8重量部〜20重量部である。
【0036】
5重量部より少ないと目的とする効果が少なく、25重量部以上の添加は、本発明の目的とする効果を得るためには、特に必要としない。
【0037】
架橋促進剤として使用するデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドは、0.3重量部〜10重量部、好ましくは0.5重量部〜6重量部使用される。
【0038】
0.3重量部より少ないと目的とする効果が少なく、10重量部以上の添加は、本発明の目的とする効果を得るためには、特に必要としない。
【0039】
ゴムの成分のうち、水素化ニトリルゴムの成分比率が50%以上の組成比率で、イソプレン・イソブチレンゴム又はEPDMの1種類または2種類を混合した場合、未架橋ゴムのゴム練り加工性の改良、即ち、水素化ニトリルゴムの欠点であるオープン・ロールへの未架橋コンパウンドの巻き付き、シーティング特性の改良された高充填配合の架橋可能な耐熱性と耐油性のある組成物の提供を可能にする。
【0040】
架橋剤として添加されるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂は、未架橋の混合物においては、可塑剤としても働き、ゴムのプレス成型に重要なシーティング特性の更なる改良された組成物の提供を可能にする。
【0041】
高充填された水素化ニトリルゴムの成分比率が高いシーティング特性の改良された組成物は、高価な水素化ニトリルゴムの原料価格対策として、望ましいことである。
【0042】
本発明で使用されるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド以外に、ゴムの充填剤として通常使用されるクレー、タルク、カーボンブラック、マイカ、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤等任意に添加して架橋可能な組成物を製造できる。
【0043】
本発明の組成物の架橋を実施する場合、架橋条件は特に限定されないが、架橋温度は、伝熱プレスで、160℃乃至210℃で5分間乃至20分行うと良い。
【0044】
2次架橋(ポストキュアとも云う)は、実施しなくても良いが、伸び(%)を少なくすることや、硬度など高くする場合、任意に実施してよい。この場合、当業者の使用しているノーマルオーブンや真空オーブンを使用して、160℃乃至210℃で、30分乃至3時間行うのがよい。更に押出製品に使用される高周波架橋等のオーブン加硫を採用してもよい。
【0045】
ゴムの成分のうち、ブチルゴム又はEPDMの1種類または2種類の成分比率が50%以上の組成比率で、水素化ニトリルゴムを混合した場合、水素化ニトリルゴムの比率が増加するに従って、組成物に耐熱性を付与することができる。
【0046】
そして、ブチルゴム又はEPDMの特徴を保持した状態の架橋可能な組成物を製造することができる。
【0047】
そして、本発明は、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(以下DCSHと略記する場合もある)を併用することによって達成される。
【0048】
本発明は、水素化ニトリルゴムをゴム成分として含有してなる組成物のアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂による架橋方法において、特定のヒドラジド化合物であるデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドが、良好な架橋促進剤として働くことを見出したものである。
【0049】
ヒドラジド化合物であっても、たとえばドデカン二酸ジヒドラジドは、架橋促進効果を示さず、架橋阻害を起こす。
【0050】
デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドが本発明の架橋ゴムの物理特性に、特徴ある特性を付与するのは、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂による架橋の、架橋速度を速める以外に、高い硬度の付与、モジュラスと引張強度の上昇、及び伸び(%)の減少等である。
【0051】
本発明の請求項2に記載したEPDMの混合量30重量部以下の架橋可能な組成物は、特に気体透過率がブチルゴムに近い状態の組成物として提供される。
【0052】
好ましくは、EPDMの混合量は、10重量部〜25重量部である。
【0053】
EPDMを混合する長所は、充填剤の添加量を容易に高くできることであり、欠点は、気体透過率が添加量が多くなると、高い値となることである。
【0054】
架橋ゴム製品の例として、ブチルゴムの透過率により近い水素化ニトリルゴムの含有された封口ゴムの場合、要求される特性である。
【0055】
水素化ニトリルゴムとイソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエ
ンゴムから選ばれる1種類または2種類の混合物が、ハロゲンを含有しないアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドによって良好に架橋できることは、全く予期されないことである。
【0056】
本発明に基づいた配合処方によって、組成物を製造するには、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の当業者が使用している機械を使用して容易に製造できる。
【0057】
本発明は、該組成物を架橋することによって得られる架橋ゴムを使用したゴム製品を提供する。本発明によって提供されるゴム製品とは、耐熱ベルト、ダイヤフラム、O−リング、耐熱水性パッキン、ゴムロールであり、銅、アルミ等の金属と接触するパッキン、ゴムシート等である。
【0058】
さらに、アルミ電解コンデンサ用の封口ゴムとして、特徴のある製品を提供できる。即ち、水素化ニトリルゴムの成分比率を高くすることによって、ブチルゴムやEPDMで対応ができなかった125℃乃至160℃の耐熱性のある封口ゴム製品を提供することができる。
【0059】
本発明について以下実施例および比較例によって更に詳細に説明する。
【0060】
なお、表中の原料配合量はすべて重量部である。
【0061】
常態物性の測定は、JIS K6251に従って測定した。硬度の測定は、JIS K6253に従い、タイプAデュロメータ硬度計で行った。
【0062】
常態物性のモジュラスおよび引張強さの単位は、Kgf/cmを採用した。
【0063】
二次架橋は、30トル以下に真空度を調整した真空オーブンを使用した。
【0064】
架橋曲線の測定は、JSRトレーディング株式会社製のキュラストメーターW型を使用して、200℃で測定した。
【0065】
架橋剤として使用したアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂(田岡化学工業(株)製の製品 タッキロール201を使用した)は、T−201と略記した。
【0066】
組成物は、オープン・ロールを使用した。
【実施例】
【0067】
実施例1、比較例1
水素化ニトリルゴム60重量部と、ブチルゴム28重量部と、EPDM12重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂16重量部と、2重量部のデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(以下DCSHと略称する場合もある)を添加し、1次架橋を伝熱プレスで200℃で10分、2次架橋を真空オープンで180℃で3時間実施した。
【0068】
配合処方と得られた架橋ゴムの1次架橋と2次架橋した物性特性(物性)を実施例1として表1に示す。
【0069】
比較のため、DCSHを添加しない原料配合で架橋して得られた架橋ゴムの物性を表1の比較例1に示す。
【0070】
実施例1と比較例1の200℃で測定した架橋曲線を図1に示す。
【0071】
比較例1と比較して、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドは、1次架橋および2次架橋の両方の物性、モジュラス、引張強さ、および硬度を大幅に上昇させることがわかる。
【0072】
図1の架橋曲線でも明らかなように、DCSHは、水素化ニトリルゴムとブチルゴムとEPDMの混合物の、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂架橋における良好な架橋促進剤であることがわかる。
【0073】
【表1】

(注)
(1)日本ゼオン株式会社製の水素化ニトリルゴムであるゼットポール2020を使用した。
(2)日本ブチル株式会社製のブチルゴムであるブチル268を使用した。
(3)JSR株式会社製のエチレン・プロピレン・ジエンゴムであるEP33を使用した。
(4)、(5)旭カーボン株式会社製のカーボンブラックである旭#60および旭#50を使用した。
(6)バーゲスピグメント社製の焼成クレーであるアイスバーグを使用した。
(7)浅田製粉株式会社製のタルクであるJET−Sを使用した。
(8)正同化学工業株式会社製の亜鉛華を使用した。
(9)信越化学工業株式会社製のKBM−803を使用した。
(10)田岡化学工業株式会社製のアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂であるタッキロール201を使用した。
(11)株式会社ADEKA製のデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドであるアデカスタブCDA−6を使用した。
(12)、(16) (実施例の硬度)−(比較例の硬度)を示す。
【0074】
以下の実施例も同様である。
(13)、(17) (実施例のモジュラス)−(比較例のモジュラス)を示す。
【0075】
以下の実施例も同様である。
(14)、(18) (実施例の引張強さ)−(比較例の引張強さ)を示す。
【0076】
以下の実施例も同様である。
(15)、(19) (実施例の伸び%)−(比較例の伸び%)を示す。
【0077】
以下の実施例も同様である。
【0078】
実施例2、比較例2
水素化ニトリルゴム25重量部と、ブチルゴム53重量部と、EPDM22重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂16重量部と、2重量部のDCSHを添加し、実施例1と同じ条件で架橋した。
【0079】
配合処方と得られた架橋ゴムの1次架橋と2次架橋した物性特性(物性)を実施例2として表2に示す。
【0080】
比較のため、DCSHを添加しない組成で架橋して得られた架橋ゴムの物性を表2の比較例2に示す。
【0081】
実施例2と比較例2の200℃で測定した架橋曲線を図2に示す。
【0082】
比較例2と比較して、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドは、1次架橋および2次架橋の両方の物性、モジュラス、引張強さ、および硬度を大幅に上昇させることがわかる。
【0083】
図2の架橋曲線でも明らかなように、DCSHは、水素化ニトリルゴムとブチルゴムとEPDMの混合物の、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂架橋における良好な架橋促進剤であることがわかる。
【0084】
組成物を作成するオープン・ロールの工程において、実施例1および実施例2においても、バッキングは起こらず、良好な未架橋ゴムシートをつくることができた。
【0085】
【表2】

(注)
(1)〜(11)実施例1に同じ。
【0086】
実施例3、比較例3
水素化ニトリルゴム30重量部と、ブチルゴム70重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂20部と、0.5重量部のDCSHを添加し、実施例1と同じ条件で架橋した。
【0087】
配合処方と得られた架橋ゴムの1次架橋と2次架橋した物性を実施例3として表3に示す。
【0088】
比較のため、DCSHを添加しない組成で架橋して得られた架橋ゴムの物性を表3の比較例3に示す。
【0089】
比較例3比較して、DCSHは、水素化ニトリルゴムとブチルゴムの混合物の1次架橋および2次架橋の両方の物性、モジュラス、引張強さ、および硬度を大幅に上昇させることがわかる。
【0090】
実施例3と比較例3の200℃で測定した架橋曲線を図3に示す。
【0091】
【表3】

(注)
(1)〜(8)は、実施例1で使用したゴム材料、充填剤、薬品に同じ。
【0092】
実施例4、比較例4
水素化ニトリルゴム70重量部と、ブチルゴム30重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂14部と、3重量部のDCSHを添加し、200℃で10分架橋した物性を実施例4として表4に示す。比較のため、DCSHを添加しない組成で架橋して得られた架橋ゴムの物性を表4の比較例4に示す。
【0093】
比較例4と比較して、DCSHは、水素化ニトリルゴムの含有比率の高い組成物の架橋ゴム物性を大幅に上昇させることがわかる。
【0094】
水素化ニトリルゴムとブチルゴムの混合物の1次架橋および2次架橋の両方の物性、モジュラス、引張強さ、および硬度を大幅に上昇させることがわかる。
【0095】
【表4】

(注)
(1)〜(8)は、実施例1で使用したゴム材料、充填剤、薬品に同じ。
【0096】
発明の効果
デカメチレンジカルボン酸ジサロチロイルヒドラジドは、水素化ニトリルゴムとブチルゴム又はEPDMの1種類または2種類のゴムの混合物のアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂架橋の架橋促進剤として、優れた効果を示す。
【0097】
そして架橋ゴム物性のモジュラス、引張強度を大幅に改良する作用がある。
【0098】
本発明の組成物を架橋したゴムは、O−リング、ベルト、ゴム栓、オイルシール、耐熱性パッキン、耐熱水性パッキン、ダイヤフラム等に幅広く利用できる。
【0099】
アルミ電解コンデンサに使用されるブチルゴム製やEPDM製の封口ゴムの耐熱性を高める場合、必要な耐熱性の要望に対して、水素化NBRの任意の比率の混合と架橋による特性を付与した製品対応が容易になる。
【0100】
水素化ニトリルゴムの成分比率が高くなるに従って、耐熱性と耐油性の高いゴム製品の製造が可能であり、同時にブチルゴムやEPDMの特性を付与することもできる。
【0101】
そして、成型工程に重要なシーティングの優れた組成物を、当業者が一般的に利用しているバンバリィ・ミキサーやオープン・ロールで容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は実施例1と比較例1のキュラストメーターによる200℃で測定した架橋曲線を示す。
【図2】図2は実施例2と比較例2のキュラストメーターによる200℃で測定した架橋曲線を示す。
【図3】図3は実施例3と比較例3のキュラストメーターによる200℃で測定した架橋曲線を示す。
【図4】図4は実施例4と比較例4のキュラストメーターによる200℃で測定した架橋曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類のゴム95重量部〜5重量部のゴムの計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部が含有されてなることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
【請求項2】
水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴムの95重量部〜5重量部と、エチレン・プロピレンゴムの0重量部〜30重量部の計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部が含有されてなることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
【請求項3】
水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムから選ばれる1種類または2種類のゴム95重量部〜5重量部のゴムの計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部を添加することを特徴とするゴム組成物を架橋する方法。
【請求項4】
水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムの5重量部〜95重量部と、イソプレン・イソブチレンゴムの95重量部〜5重量部と、エチレン・プロピレンゴムの0重量部〜30重量部の計100重量部に、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂5重量部〜25重量部と、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド0.3重量部〜10重量部を添加することを特徴とするゴム組成物を架橋する方法。
【請求項5】
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、下記式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2の架橋可能なゴム組成物。
【化1】

【請求項6】
デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドが、下記式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2の架橋可能なゴム組成物。
【化2】

【請求項7】
請求項3〜請求項4のいずれか1項の架橋方法によって得られる架橋ゴム製品。
【請求項8】
請求項3〜請求項4のいずれか1項の架橋方法によって得られるアルミ電解コンデンサに使用する封口ゴム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−106207(P2008−106207A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292909(P2006−292909)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(506362679)株式会社スーリエ (3)
【Fターム(参考)】