説明

水素化脱硫触媒およびこれを用いてなる水素化脱硫方法

【課題】 圧力損失が小さく、圧力損失による触媒性能(選択性等)の低下を抑制しうる水素化脱硫触媒と、これを用いた石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法とを提供する。
【解決手段】 本発明の水素化脱硫触媒は、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するコイル状筒材11と該コイル状筒材11の軸方向に沿って接合された支柱12とを備えた形状を有し、かつ、アルミナを主成分とする担体10に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素が担持されてなる水素化脱硫触媒である。上記触媒を用いて、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の共存下で、石油系炭化水素中の硫黄化合物を除去する水素化脱硫触媒および水素化脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油の蒸留あるいは重油分解反応などで得られる残さ油を除く石油系炭化水素留分には0.1〜3質量%程度の硫黄化合物が含有されており、これをそのまま使用した場合、後工程の改質等の反応で触媒の被毒や機器・配管類の腐食が生じることがある。このため通常は、水素の共存下、水素化脱硫処理により硫黄化合物の除去が行われる。また、近年、大気汚染防止の観点から、移動式および固定式内燃機関などから排出される排ガス中の硫黄酸化物(SOx)についても更なる低減が求められており、このことから石油系炭化水素留分から製造されるガソリン、軽油、重油および灯油などの移動式および固定式内燃機関用の燃料中に含まれる硫黄化合物についても更なる低減が求められている。
【0003】
水素化脱硫反応は、水素の共存下、石油系炭化水素留分中の硫黄化合物を、100〜600℃の温度、1〜20MPaの圧力、0.1〜20h-1の液空間速度(LHSV)、0.01〜2000Nm3/m3の水素/原料油の供給速度、の条件で反応させ除去するものであり、この反応は以下の反応式(I)で表される。
R‐SH+H2 → R‐H+H2S (I)
なお、上記の反応式(I)において、Rは炭化水素基である。
【0004】
水素化脱硫触媒としては、従来から、アルミナを主成分とする担体に周期律表第VIB族、第VIII族、および第VA族の金属の中から選ばれる1種以上の金属を担持した触媒(特許文献1)、特定の結晶構造と細孔構造とを有する無機酸化物担体に、周期律表第VIA族金属から選ばれる1種以上の金属と周期律表第VIII族金属から選ばれる1種以上の金属とを担持した触媒(特許文献2、3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−317712号公報
【特許文献2】特開2006−35052号公報
【特許文献3】特開平8−89805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した石油系炭化水素留分中の硫黄化合物の除去は、一般に、触媒を多管式固定床反応器の反応管に充填し、該反応管に硫黄化合物を含む石油系炭化水素留分と水素ガスとを通じさせる方法で実施されるため、反応に際しては、反応器の入口と出口とで圧力差、すなわち圧力損失が生じることがあり、このように圧力損失が生じた場合、従来の水素化脱硫触媒では、当該触媒が本来有する触媒性能(触媒活性、選択性、触媒寿命)が充分に発揮できなくなるといった問題を生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、圧力損失が小さく、圧力損失による触媒性能の低下を抑制しうる石油系炭化水素留分中の硫黄化合物を除去する触媒と、これを用いた硫黄化合物の除去方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルミナを主成分とする担体に周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の元素を担持させた触媒の形状を、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するコイル状の筒材に対し、その軸方向に沿って支柱を設けた形状とすれば、圧力損失を効果的に低減することができ、触媒が本来有する性能を充分に発現させることが可能になることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)所定の間隔を持って螺旋状に巻回するコイル状筒材と該コイル状筒材の軸方向に沿って接合された支柱とを備えた形状を有し、かつアルミナを主成分とする担体に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素が担持されてなることを特徴とする水素化脱硫触媒。
(2)前記触媒は複数の支柱を備えている、前記(1)記載の水素化脱硫触媒。
(3)周期律表第VIA族元素がモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)である、前記(1)または(2)に記載の水素化脱硫触媒。
(4)周期律表第VIII族元素がコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
(5)触媒全重量を基準にして、酸化物換算で1〜20重量%の周期律表第VIA族元素、および1〜10重量%の周期律表第VIII族元素の一方又は両元素を担体上に担持した前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
(6)前記アルミナの結晶形が、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型およびθ型から選ばれる1種以上である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸化触媒。
(7)前記担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の水素化脱触媒。
(8)前記担体は、水銀圧入法による細孔分布測定において、極大細孔半径が0.001μm以上であり、かつ累積細孔容積が0.10mL/g以上である、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
(9)前記(1)〜(8)に記載のいずれかの触媒を用いて、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を除去することを特徴とする水素化脱硫方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力損失が小さく、圧力損失による触媒性能の低下を抑制しうる水素化脱硫触媒を提供することができる。また、この本発明の触媒は、圧力損失が小さいことに加え、大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるという利点も有するものであり、これらの観点からも高い触媒性能が期待できるものである。このような本発明の触媒を、硫黄化合物を含む石油系炭化水素の水素化脱硫反応に用いることにより、石油系炭化水素から効率よく硫黄化合物を除去できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本発明における担体の一実施形態を示す側面図であり、(b)は、(a)の担体を上側から見た上面図であり、(c)は、前記上面図に示すx−x線における断面図である。
【図2】(a)は、本発明における担体を製造する押出成形機の一実施形態における押出し孔部を示す拡大断面図であり、(b)は、(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<窒素酸化物除去触媒の製造方法>
本発明の水素化脱硫触媒は、アルミナを主成分とする担体に周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の元素が担持されてなる。
本発明の水素化脱硫触媒における担体は、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するコイル状筒材と該コイル状筒材の軸方向に沿って接合された支柱とを備えた形状を呈している。
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の触媒における触媒の形状を詳しく説明する。図1(a)は、本発明の担体の一実施形態を示す側面図であり、図1(b)は、図1(a)の担体を上側から見た上面図であり、図1(c)は、前記上面図に示すx−x線における断面図である。
【0014】
図1に示す担体10は、コイル状筒材11と支柱12とからなる。コイル状筒材11は、成形材料を、所定の間隔をもって螺旋状に巻回するように1本の紐状に細長く押出したものであり、筒方向に貫通する孔(貫通孔)13を有する。コイル状筒材11を形成する紐状物の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、半円形、円形、三角形等のいずれであってもよい。また、その太さは、螺旋状に巻回したときに隣接する同士が所定の間隔を保持することができる程度であれば、特に制限はない。ここで言う所定の間隔とは、特に限定されないが、通常、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm程度がよい。なお、この間隔は螺旋の全ての部分において同じである必要はない。
【0015】
コイル状筒材11の寸法は、特に制限されるものではないが、例えば、長さ(筒の高さ)は1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、径(筒全体の外径)は1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、貫通孔13の孔径は0.1〜49mm、好ましくは0.2〜48mm程度がよい。
【0016】
なお、図1に示す担体10の場合、コイル状筒材11は、1本の紐状物が巻回した1重螺旋の形状を呈しているが、本発明の触媒における担体の他の実施形態においては、2本の紐状物が巻回した2重螺旋の形状であってもよいし、3本以上の紐状物が巻回した多重螺旋の形状であってもよい。ただし、その場合には、各紐状物が互いに接触しないよう所定の間隔をもって平行して螺旋状に巻回していることが望ましい。
【0017】
支柱12は、コイル状筒材11に対して、その軸方向(筒方向)に沿って4本接合されている。このとき、支柱12はコイル状筒材11の周囲にほぼ同じ間隔で設けられている。なお、支柱12の本数は、図1に示す担体10の場合4本としたが、本発明の触媒における担体の他の実施形態においては、特に限定されるものではない。ただし、充分な強度を確保するためには、担体は複数の支柱12を備えていることが好ましい。
【0018】
支柱12の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、(略)半円形、円形、三角形等のいずれであってもよいが、コイル状筒材11との接合を確実にするためには、例えば図1(b)に示すような略半円形のように、コイル状筒材11との接合面積を充分に確保できる形状が好ましい。
【0019】
支柱12の寸法は、特に制限されるものではないが、例えば、長さは1〜50mm、好ましくは3〜30mm程度がよく、太さは、例えば略半円形の場合には、半径が0.1〜12mm、好ましくは0.2〜11mm程度がよい。
【0020】
なお、支柱12は、コイル状筒材11の軸方向に沿って接合されているものであり、図1に示す担体10の場合、真鉛直に接合されているが、本発明の触媒における担体の他の実施形態においては、必ずしも真鉛直に接合されている必要はなく、コイル状筒材11が軸方向に有する複数の隙間を通るように設けられてさえいれば、多少斜めに傾いていても差し支えない。
【0021】
また、図1に示す担体10の場合、支柱12は、コイル状筒材11の外周に面して設けられているが、本発明の触媒における担体の他の実施形態においては、コイル状筒材11の内周に面して(すなわち、貫通孔13の内部に)支柱12を設けるようにしてもよい。
【0022】
以上のような形状の担体は、例えば、外周面に溝を有する第一のダイと、該第一のダイを嵌入し内周面に溝を有するリング状の第二のダイとを備えた押出成形機を用い、第一のダイと第二のダイのいずれか一方のみを回転させながら成形材料を押出す押出成形方法によって作製することができる。以下、この押出成形方法と該方法で用いられる押出成形機とについて、図面を用いて詳しく説明するが、本発明における担体の成形方法は勿論、該方法に限定されるものではない。
【0023】
図2(a)は、本発明における担体を製造する押出成形機の一実施形態における押出し孔部を示す拡大断面図であり、図2(b)は、図2(a)の押出成形機を示す概略断面図である。
図2に示す押出成形機20は、外周面に溝21aを有する第一のダイ21と、該第一のダイ21を嵌入し内周面に4つの溝22aを有するリング状の第二のダイ22とを備えている。詳しくは、第一のダイ21と第二のダイ22は、第二のダイ22に第一のダイ21を嵌入した状態で、ともに押出成形機20の前面に取り付けられており、この第一のダイ21が有する溝21aと第二のダイ22が有する溝22aとから成形材料が連続的に押し出されるようになっている。
【0024】
第一のダイ21およびその溝21a、第二のダイ22およびその溝22aの寸法は、特に制限されるものではないが、例えば、第一のダイ21の外径は0.6〜49mm、好ましくは1.6〜29mm程度がよく、溝21aの深さは、R0.2〜R12mm、好ましくはR0.7〜R7mm程度がよい。また、第二のダイ22の外径は1〜150mm、好ましくは2〜100mm程度がよく、内径は0.6〜49mm、好ましくは1.6〜29mm程度がよく、溝22aの深さは、R0.2〜R12mm、好ましくはR0.7〜R7mm程度がよい。ここでRは曲率半径であることを意味する。なお、図2に示す実施形態においては、溝22aの数は4個となっているが、これに限定されるわけではなく、溝21a、溝22aの数は、それぞれ得ようとする担体の支柱12の数、コイル状筒材11を形成する紐状物の本数、および支柱12がコイル状筒材11の外周面に配設されているか、内周面に配設されているかによって、適宜設定されるものである。
【0025】
さらに、押出成形機20は、前記第一のダイ21と前記第二のダイ22のいずれか一方のみを回転させる回転手段23をも備えている。この回転手段23は、特に制限されるものではなく、例えばモーターなど通常の回転手段を採用すればよい。具体的には、図2に示す実施形態においては、第一のダイ21に固定した回転軸23aをモーター23bで回転駆動させることにより、第一のダイ21を回転させるようになっている。この場合、第一のダイ21の溝21aから押出された成形材料によりコイル状筒材11が形成され、第二のダイ22の4つの溝22aから押出された成形材料により支柱12が形成されることとなり、得られる担体10は、図1に示すように、コイル状筒材11の外周面に支柱12を設けたものとなる。
【0026】
また、図2に示す実施形態とは逆に、回転手段23が第二のダイ22を回転させるものである場合には、第一のダイ21の溝21aから押出された成形材料により支柱12が形成され、第二のダイ22の溝22aから押出された成形材料によりコイル状筒材11が形成されることとなり、得られる担体は、コイル状筒材11の内周面(すなわち、貫通孔13内)に支柱12を設けたものとなる。
【0027】
押出成形機20は、このほかに、第一および第二のダイ21、22から押し出された成形材料を切断する切断手段24をも有している。この切断手段24にて所定長さに切断することにより、担体10が連続的に得られるのである。切断手段24は、特に制限されるものではなく、例えば、カッターナイフや2つのガイドローラ間に張りわたされた線材(ピアノ線など)等をモーター等で駆動させるといった従来公知の切断手段を採用すればよい。
また、本発明における担体を製造する押出成形機には、溝21aと溝22aから押出される成形材料の押出し速度を制御するために、流量制御弁(図示せず)が設けられていてもよい。
【0028】
本発明において、前記担体はアルミナを主成分とする多孔質耐火物からなるものであり、具体的には前記担体材料の全重量の90重量%以上がアルミナであるのがよい。ここで、前記担体の主成分とするアルミナの結晶形は、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型およびθ型から選ばれる1種以上の結晶形をとることができる。
【0029】
前記担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有するものであることが好ましい。
担体のBET比表面積が100m2/g未満であると、触媒の活性部位と石油系炭化水素中の硫黄化合物との接触効率が低くなるため、触媒活性が不充分となる傾向がある。
【0030】
前記担体は、水銀圧入法による細孔容積測定において極大細孔半径が0.001μm以上であり、且つ、累積細孔容積を0.10mL/g以上有するものであることが好ましい。極大細孔半径が0.001μm未満であったり、累積細孔容積が0.10mL/g未満であったりすると、充分な触媒活性が得られないおそれがある。
【0031】
本発明の水素化脱硫触媒は、上述した担体に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素を担持したものである。周期律表第VIA族の元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)から選ばれる金属であり、特にモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)を担持させたものが好ましい。周期律表第VIII族の元素としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、特に、コバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)を担持させたものが好ましい。
【0032】
周期律表第VIA族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物元素換算で1〜20重量%、好ましくは2〜18重量%、更に好ましくは5〜15重量%であることがよい。第VIA族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、20重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。なお、第VIA族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、モリブデンおよびタングステンの担持比率は1:1でよい。
また、周期律表第VIII族元素の担持量は、触媒全重量に対して、酸化物換算で1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは3〜7重量%であることがよい。なお、第VIII族元素の担持量が1重量%未満であると充分な触媒活性が得られないおそれがあり、一方、10重量%を越えると、触媒活性の低下を招くおそれがある。また、第VIII族元素の2種以上を担持させる場合には、それぞれの担持量の合計が上記範囲内にあればよく、例えば、コバルトおよびニッケルの担持比率は1:1でよい。
なお、周期律表第VIA族元素および第VIII族元素は、その一方、又は両元素を担体上に担持させてもよい。
【0033】
担体に周期律表第VIA族元素、第VIII族元素を担持させる方法は、特に制限はなく、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等の塩もしくは化合物を適当な溶媒に溶解した溶液を、上記担体に接触もしくは含浸させ、ついで加熱処理(乾燥および焼成)する方法を採用すればよい。
第VIA族元素、第VIII族元素を担持する順番や、第VIA族元素、第VIII族元素の溶液の濃度や、接触もしくは含浸の処理回数は、最終的に所定量の第VIA族元素、第VIII族元素が担持されるように適宜設定すればよい。
【0034】
モリブデンの塩もしくは化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデンおよびモリブデン酸等が使用でき、タングステンの塩もしくは化合物としては、例えば、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステンおよびタングステン酸、コバルトの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルトおよび塩化コバルト、ニッケルの塩もしくは化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケルおよび炭酸ニッケル等が使用できる。
【0035】
<石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法>
本発明に係る石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した本発明の水素化脱硫触媒を用い、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。
【0036】
すなわち、本発明の石油系炭化水素中の硫黄化合物の除去方法は、前記した本発明の触媒を用い、水素の共存下で、上述した式(I)の反応によって石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去するものである。本発明の石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去方法で採用しうる具体的手法は、上述した式(I)に基づく手法であれば特に制限されるものではなく、常法に従い適宜行えばよい。本発明の石油系炭化水素中の硫黄化合物除去触媒は、反応装置や容器に充填して石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解除去に用いた際に、圧力損失が小さく、しかも大きな表面積を有しながら適度な強度をも兼ね備えるので、高い触媒性能を発揮し、効率よく石油系炭化水素中の硫黄化合物を分解除去することができる。
【0037】
本発明で用いられる石油系炭化水素としては、原油の常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、熱分解、接触分解および水素化処理などの石油精製工程で生成する留分が挙げられる。
【0038】
本発明における石油系炭化水素中の硫黄化合物としては、メタンチオールおよびエタンチオールなどのチオール類、ジメチルスルフィドおよびジエチルスルフィドなどの硫化物、ジメチルジスルフィドおよびジエチルジスルフィドなどの二硫化物、チオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類およびベンゾナフトチオフェン類などが挙げられる。
【0039】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは200℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応圧力は、通常1MPa以上、好ましくは2MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下である。
【0040】
石油系炭化水素中の硫黄化合物の分解反応は、通常、多管式固定床反応器を用いて行われ、そのときの硫黄化合物を含む石油系炭化水素のLHSV(液空間速度)は、通常0.1h-1以上、20h-1以下であり、水素/原料油の供給速度は、通常0.01Nm3/m3以上、2000Nm3/m3以下である。
【符号の説明】
【0041】
10 担体
11 コイル状筒材
12 支柱
13 貫通孔
20 押出成形機
21 第一のダイ
21a 第一のダイの溝
22 第二のダイ
22a 第二のダイの溝
23 回転手段
23a 回転軸
23b モーター
24 切断手段
25 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を持って螺旋状に巻回するコイル状筒材と該コイル状筒材の軸方向に沿って接合された支柱とを備えた形状を有し、かつアルミナを主成分とする担体に、周期律表第VIA族および第VIII族の中から選ばれる少なくとも1種の元素が担持されてなることを特徴とする水素化脱硫触媒。
【請求項2】
前記触媒は複数の支柱を備えている、請求項1記載の水素化脱硫触媒。
【請求項3】
周期律表第VIA族元素がモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)である、請求項1または2に記載の水素化脱硫触媒。
【請求項4】
周期律表第VIII族元素がコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)である、請求項1〜3のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
【請求項5】
触媒全重量を基準にして、酸化物換算で1〜20重量%の周期律表第VIA族元素、および1〜10重量%の周期律表第VIII族元素の一方又は両元素を担体上に担持した請求項1〜4のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
【請求項6】
前記アルミナの結晶形が、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型およびθ型から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化触媒。
【請求項7】
前記担体は、窒素吸着一点法によるBET比表面積測定において100m2/g以上のBET比表面積を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
【請求項8】
前記担体は、水銀圧入法による細孔分布測定において、極大細孔半径が0.001μm以上であり、かつ累積細孔容積が0.10mL/g以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の水素化脱硫触媒。
【請求項9】
請求項1〜8に記載のいずれかの触媒を用いて、水素の共存下、石油系炭化水素中の硫黄化合物を除去することを特徴とする水素化脱硫方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−136279(P2011−136279A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297253(P2009−297253)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】