水素発生方法、水素発生装置及び燃料電池システム
【課題】 金属水素錯化合物例えばテトラヒドロホウ酸塩を用いて水素を発生するに当たって、水素発生の応答性がよい水素発生方法及び水素発生装置を提供すること。またこのような方法及び装置を利用して速やかに運転を立ち上げることができる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】 固体の金属水素錯化合物例えば水素化ホウ素ナトリウム及び触媒能を有する金属例えばコバルトの混合物と、水と反応して発熱すると共に生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質例えば水酸化ナトリウムと、を水に接触させ、前記水素化ホウ素ナトリウムと水との加水分解反応により水素ガスを発生させる。これは水酸化ナトリウムと水との反応による発熱分が反応系に加わるため、水素発生が盛んになる臨界温度まで速やかに昇温する。
【解決手段】 固体の金属水素錯化合物例えば水素化ホウ素ナトリウム及び触媒能を有する金属例えばコバルトの混合物と、水と反応して発熱すると共に生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質例えば水酸化ナトリウムと、を水に接触させ、前記水素化ホウ素ナトリウムと水との加水分解反応により水素ガスを発生させる。これは水酸化ナトリウムと水との反応による発熱分が反応系に加わるため、水素発生が盛んになる臨界温度まで速やかに昇温する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属水素錯化合物例えばテトラヒドロホウ酸塩と水とを反応させて応答性よく水素を発生させる方法、水素発生装置及びその水素を利用した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロホウ酸塩例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの固体の金属水素錯化合物と水とを反応させて水素を得、この水素を水素−酸素(空気)型の燃料電池の燃料として用いることが従来から知られている。上述の反応は下記(1)式に示すように水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応により水素及びメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)が生成される。
【0003】
NaBH4+2H2O→NaBO2+4H2↑ ……(1)
この反応は発熱反応であり、水素化ホウ素ナトリウムがある温度例えば100℃から140℃に達すると水素が急激に発生する。このときの温度を臨界温度と呼ぶことにすると、この水素化ホウ素ナトリウムの臨界温度に到達するための時間を早めるために、例えば特許文献1には、塩化コバルト(CoCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)などの触媒金属を用いて水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応を促進させる技術が記載されている。この場合、触媒金属を用いることにより加水分解反応が促進して発熱が早まり、その自己発熱により加水分解反応がさらに促進し、このような相乗作用により昇温速度を早めている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、水素化ホウ素ナトリウムに供給する水の温度に着目し、水を加熱して水蒸気とすることで加水分解反応の促進を図る技術が記載されている。ここでは触媒金属として白金系、ルテニウム系及びチタニア系の金属が用いられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように水素化ホウ素ナトリウムに種々の触媒金属を混合させて加水分解反応の促進を図っても、水の供給開始から当該臨界温度に到達するまでに要する時間が例えば10分前後とかなり長く、急激に水素が発生するまでの応答性(以下、水素発生の応答性という。)が依然として悪いという問題がある。また所定量の水素化ホウ素ナトリウムに対して触媒金属の量を増やした場合、後述に実施例として記載しているように水素発生の応答性は向上するが反応率が低下するという問題が起ってくる。この反応率とはNaBH4における反応した割合、つまりNaBH4の単位量における水素発生量を意味する。
【0006】
このように例えば水素−酸素(空気)型の燃料電池の燃料として上述した水素発生方法により発生させた水素を用いた場合、急激に水素が発生する臨界温度までの到達時間が遅いと、燃料電池の運転開始時に必要とされる水素の量が供給されるまでに長い時間が掛かるので、当該燃料電池の運転の立ち上がりのタイミングが遅くなってしまう。
【0007】
一方上述した特許文献2では、水素発生の応答性がよく、また反応率の低下を避けることができるが、水を加熱するための加熱手段が必要となり、装置構成を複雑化または装置が大型化する問題がある。燃料電池は簡易な発電システムとしての利点を有していることから、水素発生装置の構成が複雑化または大型化すると、その利点が失われてしまい得策なシステムでない。
【0008】
【特許文献1】特開平4−26501
【特許文献2】特開2002−137903(請求項7、段落0065、段落0066、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属水素錯化合物例えばテトラヒドロホウ酸塩を用いて水素を発生するに当たって、水素発生の応答性がよい水素発生方法及び水素発生装置を提供することにある。また、他の目的は、このような方法及び装置を利用して速やかに運転を立ち上げることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水素発生方法は、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共に生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を水に接触させ、前記金属水素錯化合物と水との反応により水素を発生させることを特徴とする。
【0011】
また本発明の水素発生装置は、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を収納するための容器と、
前記容器内の収納物に水を供給するめの手段と、
前記容器内にて発生した水素を取り出すための手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上述した水素発生装置において、前記水を供給するための手段は、容器内に水を供給するための給水部材を含んだ形態と容器内にて前記収納物とを区画する区画部材と、この区画部材により区画を解除するための手段と、を含んだ形態とがある。
【0013】
また本発明の具体的な態様としては、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、は互いに積層されており、前記水を供給するための手段は、前記混合物よりも先に発熱用物質に水が接触するように構成されている。
【0014】
なお、前記金属水素錯化合物は、例えばテトラヒドロホウ酸塩であることが望ましい。また触媒能を有する金属は、例えばニッケルまたはコバルト、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金を挙げることができるが、その他白金(Pt)などの貴金属を用いてもよい。当該貴金属を用いる場合、アルミナや活性炭などからなる担体(基材)に当該貴金属を担持して使用することが一般的であり、従って本発明で言う「触媒能を有する金属」とは、金属の粉末に限らず例えば粒状の担体に貴金属を担持させて粉末状の触媒体としたものも含まれるものである。前記水と反応して発熱する物質は、例えば水酸化アルカリ金属である。
【0015】
また本発明の燃料電池システムは、上述した水素発生装置と、水素を燃料とする燃料電池と、前記水素発生装置から発生した水素を前記燃料電池に供給するための水素供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属水素錯化合物と水との反応が触媒反応により促進され、自己発熱を伴って反応系の温度が上昇していくが、発熱用物質と水との反応による発熱分が前記反応系に加わるため、水素発生が盛んになる臨界温度まで速やかに昇温する。このため金属水素錯化合物と水とが接触してから水素発生が盛んになるまでの到達時間が短くなる。つまり水素発生の応答性が良くなる。また固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、を互に積層するようにすれば、発熱用物質がまとまった状態で昇温するので、混合物の発熱効率をより高めることができる。
【0017】
また水素を燃料とする燃料電池に本発明の水素発生装置を組み合わせれば、燃料電池に必要な量の水素を短時間で発生させることができるので、燃料電池の運転を速やかに立ち上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る水素発生方法の一実施の形態について説明する。ここで説明する実施の形態は、水素−酸素(空気)燃料電池に水素を供給するための水素発生装置に関するものであり、図1及び図2はその水素発生装置に用いられる燃料である水素を発生させるための燃料セル2を示している。この燃料セル2は、例えば金属製の円筒状の容器21と、この容器21の上面側に設けられた両開きの蓋体22と、容器21の下面側から挿入された給水部材である水供給管23とを備えている。前記蓋体22は、例えば磁石などの吸引力や弾性体例えばバネ材の復元力により常時は密閉状態を保ち、容器内21内に水素が発生したときに、その内圧により開くように構成されている。
【0019】
前記容器21には、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物24と、水と反応して発熱する発熱用物質25とが充填されている。この例では、発熱用物質25が前記水供給管23の先端部が隠れるまで敷き詰められており、この発熱用物質25の層の上側に前記混合物24が積層されている。
【0020】
ここで固体の金属水素錯化合物は、例えば平均粒径100μmの粉末状であり、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、又は水素化ホウ素リチウム(LiBH4)などのテトラヒドロホウ酸塩を挙げることができるが、その他に水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH4)2)などを挙げることができる。
【0021】
また触媒能を有する金属は、例えば平均粒径2μmの粉末状であり、前記金属水素錯化合物と接触して加水分解反応を促進させる触媒であればよく、例えばコバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金例えばMg2Niなどの金属が用いられる。更にまた触媒としては、白金(Pt)などの貴金属を用いてもよい。この場合、基材であるアルミナや活性炭などに当該貴金属を担持して使用する場合が一般的であり、この貴金属を担持した基材は、ここでは粉末として用いられる。
【0022】
さらに発熱用物質としては水素と反応したときに発熱量が多い物質、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ金属の水酸化物などを用いることができ、その形状としては粉末状またはフレーク状などが好ましいが、これらの形状に限られるものではない。
【0023】
触媒能を有する金属の量に関しては、その量が増加すると臨界温度に到達するまでの時間が短くなる傾向にあるが、後述の実施例からも分かるように反応温度が高くなり過ぎることにより金属水素錯化合物に対しての反応率が低下し、また金属自体の量が増加したことに伴って、同一重量の混合物からの水素発生量が低下する。よって触媒能を有する金属の量は、その活性にもよるが、金属水素錯化合物に対して1/10〜1/1程度の重量比であることが好ましい。また発熱用物質の量に関しては、その量が増加すると臨界温度に到達するまでの時間が短くなるが、発熱用物質の量が増えた分、同一重量の混合物からの水素発生量は低下する。本発明を特に小型の水素発生装置に適用する場合には、混合物の重量が少ない方が得策であることなども考慮すると、発熱用物質の量は、その発熱量にもよるが、金属水素錯化合物に対して1/10〜1/1程度の重量比であることが好ましい。
【0024】
次に上述した燃料セル2を用いた水素発方法について述べる。この例では固体の金属水素錯化合物は水素化ホウ素ナトリウムであり、触媒能を有する金属はコバルトであり、発熱用物質は水酸化ナトリウムである。これらの物質を用いて具体的に説明する。先ず、水が水供給管23の先端口から吹き出して横方向に向かって広がり、重力により下部側にある粉末状の水酸化ナトリウム(図中では25に相当する。)に浸透していく。そして下記(1)式に示すように水酸化ナトリウムはよく水に溶けて完全に電離するという性質を有し、このようなことから水酸化ナトリウムが水に溶解すると大量の熱が発生する。
【0025】
NaOH→Na+ap+OH−ap(apは水和イオンを表す。) ……(1)
さらに、水面レベルが上昇し、水が水素化ホウ素ナトリウムの粉末とコバルトの粉末とからなる混合物24に浸透し、水と水素化ホウ素ナトリウムとの加水分解反応により水素ガスが発生する(下記(2)式参照。)。
【0026】
NaBH4+H2O→NaBO2+4H2↑ ……(2)
そして、混合物24の下部側にある水酸化ナトリウムが一気に発熱して放出した大量の熱が混合物24に伝熱し、これにより加水分解反応が促進されて自己発熱し、その熱で加水分解反応がさらに促進される。この結果早い速度で混合物24(反応系)が昇温し、短時間に水素発生が盛んになる臨界温度まで到達する。
【0027】
この水素ガスの発生により容器20の内圧が高まり、前記蓋体21が開いて水素ガスが外部に放出される。
【0028】
上述の実施の形態によれば、金属水素錯化合物と触媒能を有する金属との混合物に発熱用物質である例えば水酸化ナトリウムを組み合わせることで、この水酸化ナトリウムと水との反応により発生した熱を利用して、混合物と水との反応系の昇温を促進させているため、短時間に臨界温度まで到達することができ、水素が盛んに発生するまでの時間つまり水素発生の応答時間が短いという効果がある。従って燃料電池などの水素利用手段に速やかに必要な量の水素を供給することができる。また固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、を互に積層するようにすれば、発熱用物質がまとまった状態で昇温するので、混合物の発熱効率をより高めることができる。
【0029】
続いて前記燃料セル2を水素発生装置に適用し、前記水素発生装置と燃料電池とを組み合わせた燃料電池システムについて図3を用いて説明する。図中3は水素発生装置であり、4は燃料電池である。前記水素発生装置3は、水を蓄えたタンク5と前記タンク5の水を燃料セル2に供給するためのポンプ6と、複数の燃料セル2(2a、2b、2c)と、燃料セル2を収納する密閉容器からなる収納部20とを備えている。図中では燃料セル2は収納部20内に3個設置されているが、1個あるいは2個ないしは4個以上設置してもよい。また前記燃料電池4は、燃料極41と酸化剤極42との間に電解質膜43が介在しており、燃料極41の側面には燃料である水素が通流するための燃料通流路44が形成され、酸化剤極42の側面には空気が通流するための空気通流路45が形成されている。
【0030】
また燃料通流路44の一端側46は水素供給管47を介して収納部20に接続される。また燃料通流路44の他端側48には排出管49が接続されている。また空気通流路45の一端側53には空気を供給するための空気供給管54が接続されている。また空気通流路45の他端側50は前記排出管51を介してタンク5に接続される。また前記排出管51には気液分離器52が介在されている。
【0031】
さらに前記燃料セル2の下端側には既述の水供給管23が前記収納部20の下端面を貫通して接続されており、前記水供給管23を介してタンク5と接続される。そしてこの水供給管23にはバルブ55(55a、55b、55c)及びポンプ6が夫々介設されている。前記水供給管23は、例えば燃料セル2の下方側で分割できるように構成されており、これにより収納部20は装置側の水供給管23に対して着脱自在に密着できるようになっている。
【0032】
次にこの燃料電池システムの作用について述べる。先ず、バルブ55aを開けてタンク5の水をポンプ6によって燃料セル2a内に所定量供給する。燃料セル2内に水を供給することによって上述した水素発生方法により水素ガスを発生させる。そして当該水素ガスは、水素供給管47を通って燃料通流路44の一端側46から供給される。また空気通流路45の一端側53からは空気が供給される。燃料極41側では下記(3)式に示す反応が起こり、酸化剤極42側では下記(4)式に示す反応が起ることで燃料電池4から電気が取り出される。
【0033】
H2→2H++2e− ……(3)
1/2O2+2H++2e−→H2O ……(4)
当該反応により酸化剤極42側では水が生成されるので、この水と空気中に含まれる窒素ガスと未反応の酸素ガスとは空気通流路45の他端側50から排出される。排出されたガス成分は、気液分離部52で水から分離され、外部に放出される。そして水は排出管51を介してタンク5へと回収され、燃料セル2に供給するための水として再利用される。
【0034】
また燃料セル2aからの水素ガスの発生量が少なくなると、バルブ55bを開けて燃料セル2b内に所定量の水を供給することで連続して水素ガスを燃料電池4に供給することができる。このような燃料セルの順次の駆動は、例えば水素供給管47内に図示しない圧力検出部を設け、その圧力検出値が所定値以上になったときに図示しない制御部によりバルブ55のアクチュエーターに制御信号を出力することによって行われる。
【0035】
このように上述した水素発生の応答性の速い水素発生方法を燃料電池システムに組み込むことにより、短時間に所定量の水素を燃料電池4に供給することができ、このことによって当該燃料電池4の運転の立ち上がり時間が早くなるので、素早く発電させることができる。
【0036】
また本発明は、図4及び図5に示すように他の形態の燃料セル7を用いてもよい。この燃料セル7は、容器70の下端面から金属水素錯化合物と触媒能を有する金属とを混合した混合物24が敷き詰められており、この混合物24の上側に発熱用物質25が積層されている。そして発熱用物質25の上側には発熱用物質24と水とを隔てる例えば収縮性のあるゴムなどからなる区画部材である隔膜71が形成されている。この隔膜71の外縁部分は前記容器70の側壁に止着されている。また前記容器70の上端面の中央部には円筒管72が挿設されており、前記円筒管72の先端部は前記隔膜71の面に接している。この円筒管72内には円筒状の水素取り出し管73が密に嵌合されており、前記水素取り出し管73の先端部は尖鋭になっている。そして容器70と隔膜71と円筒管72とで囲まれる空間74には所定量の水が満たされている。
【0037】
図5に示すように、前記水素取り出し管73が下降して水素取り出し管73の先端部が隔膜71を突き破ることで、上述したように前記隔膜71は収縮性のあるゴムであるため、破れた中央部の膜は外方に向かって引っ張られ、隔膜71の中央部に穴が開く。この穴から水が前記発熱物質24に浸透し、先ず、燃料セル2の上方側に敷き詰められている水酸化ナトリウムの粉末と接触することで多量な熱を発生する。続いて、この熱が下層の混合物24に伝熱することで、既述のように加水分解反応が促進されて自己発熱し、その熱で加水分解反応がさらに促進され、早い速度で反応系が昇温するので上述と同様の効果を得ることができる。
【0038】
このような燃料セル7を既述の燃料電池システムに組み合わせた場合、タンク5、ポンプ6、供給管23及びバルブ55が設けられていない他は、図3に示した燃料電池システムと同様の構成にある。なお、水素取り出し管73から放出された水素ガスは収納部20に一端放出され、そして水素供給管47を通って燃料通流路44の一端側46から燃料電池4に供給されることになる。
【0039】
この燃料電池システムは上述と同様の作用効果があるが、燃料セル7内に所定量の水が貯蔵されているので水を蓄えたタンク5を必要とせず、よって水素発生装置3をコンパクトにすることができる。
【0040】
また燃料セル7からの水素ガスの発生量が少なくなると、次段の燃料セルにおいて上述の燃料セル7と同様の操作を行うことで、連続して水素ガスを燃料電池4に供給することができる。この場合、前記水素取り出し管73を上下に駆動する図示しない駆動機構を設け、また例えば水素供給管47内に図示しない圧力検出部を設けることで、その圧力検出値が所定値以上になったときに図示しない制御部により前記駆動機構に制御信号を出力することによって行われる。
【0041】
なお、上述の実施の形態の他に、図6に示すように金属水素錯化合物と触媒能を有する金属とを混合させた混合物からなる層70及び発熱用物質の層71とを交互に多数積層した構成であってもよい。また図7に示すように、粉末状の金属水素錯化合物と粉末状の触媒能を有する金属とを混合し固めた混合物80のペレットの表面を粉末状の発熱用物質81により被覆し、こうして得られたペレットを容器内に充填するようにしてもよい。このような構成にしても、上述と同様な作用効果を呈する。
【実施例】
【0042】
次に本発明の効果を確認するために行った実験について述べる。
【0043】
A.実験例
(実施例1)
乳鉢で粉砕混合することにより平均粒径50〜200μmの水素化ホウ素ナトリウム1g、触媒である平均粒径1〜2μmのコバルト0.5g及び発熱用物質である平均粒径50〜200μmの水酸化ナトリウム0.5の混合物を得て、この混合物を試験管の中に投入した。そして試験管内に水1.9gを入れて、前記混合物に浸透させ、試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図8及び図9において●印で表示する。図8は縦軸が水素発生量〔ml〕、横軸が反応時間〔分〕を示す特性図であり、図9は縦軸が反応温度〔℃〕、横軸が反応時間〔分〕を示す特性図である。
【0044】
(実施例2)
実施例1の混合物を試験管の中に投入し、続いて発熱用物質である平均粒径50〜200μmの水酸化ナトリウム0.5gを試験管内に投入し、前記混合物の上に前記発熱用物質を積層させた。そして試験管内に水1.9gを入れて、試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図8及び図9において○印で表示する。
【0045】
(実施例3)
発熱用物質である水酸化ナトリウムの重量を0.3gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及び図11において×印で表示する。
【0046】
(実施例4)
触媒であるコバルトの重量を1.0gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及び図11において△印で表示する。
(実施例5)
触媒であるコバルトの重量を0.2gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及ぶ図11において▲印で表示する。
【0047】
(比較例1)
発熱用物質である水酸化ナトリウムを添加しない他は、実施例1と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図12及び図13において□印で表示する。
【0048】
(比較例2)
触媒であるコバルトの重量を1.0gとした他は、比較例1と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図12及び図13において■印で表示する。
【0049】
B.結果及び考察
実施例1、2、3、4及び5より発熱用物質である水酸化ナトリウムを添加することで比較例1及び比較例2よりも臨界温度に到達するまでの時間が早くなっていることが理解できる。具体的には、実施例1は約4分、実施例2は約2分、実施例3は約4分、実施例4は約2分、実施例5は約9分、比較例1は約24分、比較例2は約11分とグラフより読取ることができる。
【0050】
また実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方が、臨界温度に到達するまでの時間が早くなっていることが分かる。これは実施の形態で述べたように実施例2では、先ず、水が試験管内の上方側に敷き詰められている水酸化ナトリウムの粉末と接触することで多量の熱を一気に発生し、この熱が下層の混合物に伝熱する。これに対して実施例1では、発熱用物質である水酸化ナトリウムが塊として存在しないために、水との反応によって生じる熱が離散的であり、このようなことから実施例2における混合物の昇温の方が急激に起るものと推測される。
【0051】
また発熱用物質である水酸化ナトリウムの量を0.3gと少なくすると(実施例3)、臨界温度に到達するまでの時間が遅くなることが分かる。また実施例4に示すように、触媒であるコバルトの量を1.0gと増やすと、臨界温度に到達するまでの時間が早くなるが、臨界温度に到達したときに発生する水素の量が減っていることが分かる。これは反応速度が向上したため反応のピーク温度が上がり、高温のために供給した水が蒸気となって失われ、水素化ホウ素ナトリウムと水との加水分解反応が低下したと思われる。また実施例5に示すように、触媒であるコバルトの量を0.2gと減らすと、臨界温度に到達するまでの時間がかなり遅くなっていることが分かる。
【0052】
このようなことから水素発生量及び水素発生の応答性の両方を考慮すると、発熱用物質である水酸化ナトリウムの量及び触媒であるコバルトの量は水素化ホウ素ナトリウムの量に対して実験により勘案して決定することが望ましい。よって上述のデータの中では水素化ホウ素ナトリウム、コバルト及び水酸化ナトリウムの重量比は、2:1:1とすることが好ましい。また水素化ホウ素ナトリウムに対する水の供給量は、水素化ホウ素ナトリウム1molに対して水4molであることが好ましい。NaBH4/Co/NaOH=2/1/1(重量比)とし、NaBH4に対する水のモル比を4とした場合、水供給から臨界温度に到達するまでの時間が約2分、このときの水素化ホウ素ナトリウムの反応率が89%と実験の中で最も高い値を示した。この理由については、適当な触媒活性及び適量の発熱用物質の添加により、速やかな昇温による短時間での水素発生が得られ、また比較的温和な反応温度により発生した水素に同伴する水蒸気が少なく、供給した水を反応に有効利用できたためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る燃料セルを説明する説明図である。
【図2】本発明に係る燃料セルを説明する説明図である。
【図3】本発明に係る燃料電池システムを説明する説明図である。
【図4】本発明に係る他の燃料セルを説明する説明図である。
【図5】本発明に係る他の燃料セルを説明する説明図である。
【図6】本発明に係る他の実施の形態を説明する説明図である。
【図7】本発明に係る他の実施の形態を説明する説明図である。
【図8】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図11】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図12】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図13】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【符号の説明】
【0054】
1 原料貯蔵部
2 燃料セル
21 容器
22 蓋体
23 水供給管
24 混合物
25 発熱用物質
3 水素発生装置
4 燃料電池
47 水素供給管
49 排出管
52 気液分離器
55 バルブ
6 ポンプ
7 燃料セル
70 容器
71 隔膜
72 円筒管
73 水素取り出し管
74 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属水素錯化合物例えばテトラヒドロホウ酸塩と水とを反応させて応答性よく水素を発生させる方法、水素発生装置及びその水素を利用した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロホウ酸塩例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの固体の金属水素錯化合物と水とを反応させて水素を得、この水素を水素−酸素(空気)型の燃料電池の燃料として用いることが従来から知られている。上述の反応は下記(1)式に示すように水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応により水素及びメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)が生成される。
【0003】
NaBH4+2H2O→NaBO2+4H2↑ ……(1)
この反応は発熱反応であり、水素化ホウ素ナトリウムがある温度例えば100℃から140℃に達すると水素が急激に発生する。このときの温度を臨界温度と呼ぶことにすると、この水素化ホウ素ナトリウムの臨界温度に到達するための時間を早めるために、例えば特許文献1には、塩化コバルト(CoCl2)、塩化ニッケル(NiCl2)などの触媒金属を用いて水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応を促進させる技術が記載されている。この場合、触媒金属を用いることにより加水分解反応が促進して発熱が早まり、その自己発熱により加水分解反応がさらに促進し、このような相乗作用により昇温速度を早めている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、水素化ホウ素ナトリウムに供給する水の温度に着目し、水を加熱して水蒸気とすることで加水分解反応の促進を図る技術が記載されている。ここでは触媒金属として白金系、ルテニウム系及びチタニア系の金属が用いられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように水素化ホウ素ナトリウムに種々の触媒金属を混合させて加水分解反応の促進を図っても、水の供給開始から当該臨界温度に到達するまでに要する時間が例えば10分前後とかなり長く、急激に水素が発生するまでの応答性(以下、水素発生の応答性という。)が依然として悪いという問題がある。また所定量の水素化ホウ素ナトリウムに対して触媒金属の量を増やした場合、後述に実施例として記載しているように水素発生の応答性は向上するが反応率が低下するという問題が起ってくる。この反応率とはNaBH4における反応した割合、つまりNaBH4の単位量における水素発生量を意味する。
【0006】
このように例えば水素−酸素(空気)型の燃料電池の燃料として上述した水素発生方法により発生させた水素を用いた場合、急激に水素が発生する臨界温度までの到達時間が遅いと、燃料電池の運転開始時に必要とされる水素の量が供給されるまでに長い時間が掛かるので、当該燃料電池の運転の立ち上がりのタイミングが遅くなってしまう。
【0007】
一方上述した特許文献2では、水素発生の応答性がよく、また反応率の低下を避けることができるが、水を加熱するための加熱手段が必要となり、装置構成を複雑化または装置が大型化する問題がある。燃料電池は簡易な発電システムとしての利点を有していることから、水素発生装置の構成が複雑化または大型化すると、その利点が失われてしまい得策なシステムでない。
【0008】
【特許文献1】特開平4−26501
【特許文献2】特開2002−137903(請求項7、段落0065、段落0066、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金属水素錯化合物例えばテトラヒドロホウ酸塩を用いて水素を発生するに当たって、水素発生の応答性がよい水素発生方法及び水素発生装置を提供することにある。また、他の目的は、このような方法及び装置を利用して速やかに運転を立ち上げることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水素発生方法は、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共に生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を水に接触させ、前記金属水素錯化合物と水との反応により水素を発生させることを特徴とする。
【0011】
また本発明の水素発生装置は、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を収納するための容器と、
前記容器内の収納物に水を供給するめの手段と、
前記容器内にて発生した水素を取り出すための手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上述した水素発生装置において、前記水を供給するための手段は、容器内に水を供給するための給水部材を含んだ形態と容器内にて前記収納物とを区画する区画部材と、この区画部材により区画を解除するための手段と、を含んだ形態とがある。
【0013】
また本発明の具体的な態様としては、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、は互いに積層されており、前記水を供給するための手段は、前記混合物よりも先に発熱用物質に水が接触するように構成されている。
【0014】
なお、前記金属水素錯化合物は、例えばテトラヒドロホウ酸塩であることが望ましい。また触媒能を有する金属は、例えばニッケルまたはコバルト、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金を挙げることができるが、その他白金(Pt)などの貴金属を用いてもよい。当該貴金属を用いる場合、アルミナや活性炭などからなる担体(基材)に当該貴金属を担持して使用することが一般的であり、従って本発明で言う「触媒能を有する金属」とは、金属の粉末に限らず例えば粒状の担体に貴金属を担持させて粉末状の触媒体としたものも含まれるものである。前記水と反応して発熱する物質は、例えば水酸化アルカリ金属である。
【0015】
また本発明の燃料電池システムは、上述した水素発生装置と、水素を燃料とする燃料電池と、前記水素発生装置から発生した水素を前記燃料電池に供給するための水素供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属水素錯化合物と水との反応が触媒反応により促進され、自己発熱を伴って反応系の温度が上昇していくが、発熱用物質と水との反応による発熱分が前記反応系に加わるため、水素発生が盛んになる臨界温度まで速やかに昇温する。このため金属水素錯化合物と水とが接触してから水素発生が盛んになるまでの到達時間が短くなる。つまり水素発生の応答性が良くなる。また固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、を互に積層するようにすれば、発熱用物質がまとまった状態で昇温するので、混合物の発熱効率をより高めることができる。
【0017】
また水素を燃料とする燃料電池に本発明の水素発生装置を組み合わせれば、燃料電池に必要な量の水素を短時間で発生させることができるので、燃料電池の運転を速やかに立ち上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る水素発生方法の一実施の形態について説明する。ここで説明する実施の形態は、水素−酸素(空気)燃料電池に水素を供給するための水素発生装置に関するものであり、図1及び図2はその水素発生装置に用いられる燃料である水素を発生させるための燃料セル2を示している。この燃料セル2は、例えば金属製の円筒状の容器21と、この容器21の上面側に設けられた両開きの蓋体22と、容器21の下面側から挿入された給水部材である水供給管23とを備えている。前記蓋体22は、例えば磁石などの吸引力や弾性体例えばバネ材の復元力により常時は密閉状態を保ち、容器内21内に水素が発生したときに、その内圧により開くように構成されている。
【0019】
前記容器21には、固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物24と、水と反応して発熱する発熱用物質25とが充填されている。この例では、発熱用物質25が前記水供給管23の先端部が隠れるまで敷き詰められており、この発熱用物質25の層の上側に前記混合物24が積層されている。
【0020】
ここで固体の金属水素錯化合物は、例えば平均粒径100μmの粉末状であり、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、又は水素化ホウ素リチウム(LiBH4)などのテトラヒドロホウ酸塩を挙げることができるが、その他に水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH4)2)などを挙げることができる。
【0021】
また触媒能を有する金属は、例えば平均粒径2μmの粉末状であり、前記金属水素錯化合物と接触して加水分解反応を促進させる触媒であればよく、例えばコバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金例えばMg2Niなどの金属が用いられる。更にまた触媒としては、白金(Pt)などの貴金属を用いてもよい。この場合、基材であるアルミナや活性炭などに当該貴金属を担持して使用する場合が一般的であり、この貴金属を担持した基材は、ここでは粉末として用いられる。
【0022】
さらに発熱用物質としては水素と反応したときに発熱量が多い物質、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ金属の水酸化物などを用いることができ、その形状としては粉末状またはフレーク状などが好ましいが、これらの形状に限られるものではない。
【0023】
触媒能を有する金属の量に関しては、その量が増加すると臨界温度に到達するまでの時間が短くなる傾向にあるが、後述の実施例からも分かるように反応温度が高くなり過ぎることにより金属水素錯化合物に対しての反応率が低下し、また金属自体の量が増加したことに伴って、同一重量の混合物からの水素発生量が低下する。よって触媒能を有する金属の量は、その活性にもよるが、金属水素錯化合物に対して1/10〜1/1程度の重量比であることが好ましい。また発熱用物質の量に関しては、その量が増加すると臨界温度に到達するまでの時間が短くなるが、発熱用物質の量が増えた分、同一重量の混合物からの水素発生量は低下する。本発明を特に小型の水素発生装置に適用する場合には、混合物の重量が少ない方が得策であることなども考慮すると、発熱用物質の量は、その発熱量にもよるが、金属水素錯化合物に対して1/10〜1/1程度の重量比であることが好ましい。
【0024】
次に上述した燃料セル2を用いた水素発方法について述べる。この例では固体の金属水素錯化合物は水素化ホウ素ナトリウムであり、触媒能を有する金属はコバルトであり、発熱用物質は水酸化ナトリウムである。これらの物質を用いて具体的に説明する。先ず、水が水供給管23の先端口から吹き出して横方向に向かって広がり、重力により下部側にある粉末状の水酸化ナトリウム(図中では25に相当する。)に浸透していく。そして下記(1)式に示すように水酸化ナトリウムはよく水に溶けて完全に電離するという性質を有し、このようなことから水酸化ナトリウムが水に溶解すると大量の熱が発生する。
【0025】
NaOH→Na+ap+OH−ap(apは水和イオンを表す。) ……(1)
さらに、水面レベルが上昇し、水が水素化ホウ素ナトリウムの粉末とコバルトの粉末とからなる混合物24に浸透し、水と水素化ホウ素ナトリウムとの加水分解反応により水素ガスが発生する(下記(2)式参照。)。
【0026】
NaBH4+H2O→NaBO2+4H2↑ ……(2)
そして、混合物24の下部側にある水酸化ナトリウムが一気に発熱して放出した大量の熱が混合物24に伝熱し、これにより加水分解反応が促進されて自己発熱し、その熱で加水分解反応がさらに促進される。この結果早い速度で混合物24(反応系)が昇温し、短時間に水素発生が盛んになる臨界温度まで到達する。
【0027】
この水素ガスの発生により容器20の内圧が高まり、前記蓋体21が開いて水素ガスが外部に放出される。
【0028】
上述の実施の形態によれば、金属水素錯化合物と触媒能を有する金属との混合物に発熱用物質である例えば水酸化ナトリウムを組み合わせることで、この水酸化ナトリウムと水との反応により発生した熱を利用して、混合物と水との反応系の昇温を促進させているため、短時間に臨界温度まで到達することができ、水素が盛んに発生するまでの時間つまり水素発生の応答時間が短いという効果がある。従って燃料電池などの水素利用手段に速やかに必要な量の水素を供給することができる。また固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、を互に積層するようにすれば、発熱用物質がまとまった状態で昇温するので、混合物の発熱効率をより高めることができる。
【0029】
続いて前記燃料セル2を水素発生装置に適用し、前記水素発生装置と燃料電池とを組み合わせた燃料電池システムについて図3を用いて説明する。図中3は水素発生装置であり、4は燃料電池である。前記水素発生装置3は、水を蓄えたタンク5と前記タンク5の水を燃料セル2に供給するためのポンプ6と、複数の燃料セル2(2a、2b、2c)と、燃料セル2を収納する密閉容器からなる収納部20とを備えている。図中では燃料セル2は収納部20内に3個設置されているが、1個あるいは2個ないしは4個以上設置してもよい。また前記燃料電池4は、燃料極41と酸化剤極42との間に電解質膜43が介在しており、燃料極41の側面には燃料である水素が通流するための燃料通流路44が形成され、酸化剤極42の側面には空気が通流するための空気通流路45が形成されている。
【0030】
また燃料通流路44の一端側46は水素供給管47を介して収納部20に接続される。また燃料通流路44の他端側48には排出管49が接続されている。また空気通流路45の一端側53には空気を供給するための空気供給管54が接続されている。また空気通流路45の他端側50は前記排出管51を介してタンク5に接続される。また前記排出管51には気液分離器52が介在されている。
【0031】
さらに前記燃料セル2の下端側には既述の水供給管23が前記収納部20の下端面を貫通して接続されており、前記水供給管23を介してタンク5と接続される。そしてこの水供給管23にはバルブ55(55a、55b、55c)及びポンプ6が夫々介設されている。前記水供給管23は、例えば燃料セル2の下方側で分割できるように構成されており、これにより収納部20は装置側の水供給管23に対して着脱自在に密着できるようになっている。
【0032】
次にこの燃料電池システムの作用について述べる。先ず、バルブ55aを開けてタンク5の水をポンプ6によって燃料セル2a内に所定量供給する。燃料セル2内に水を供給することによって上述した水素発生方法により水素ガスを発生させる。そして当該水素ガスは、水素供給管47を通って燃料通流路44の一端側46から供給される。また空気通流路45の一端側53からは空気が供給される。燃料極41側では下記(3)式に示す反応が起こり、酸化剤極42側では下記(4)式に示す反応が起ることで燃料電池4から電気が取り出される。
【0033】
H2→2H++2e− ……(3)
1/2O2+2H++2e−→H2O ……(4)
当該反応により酸化剤極42側では水が生成されるので、この水と空気中に含まれる窒素ガスと未反応の酸素ガスとは空気通流路45の他端側50から排出される。排出されたガス成分は、気液分離部52で水から分離され、外部に放出される。そして水は排出管51を介してタンク5へと回収され、燃料セル2に供給するための水として再利用される。
【0034】
また燃料セル2aからの水素ガスの発生量が少なくなると、バルブ55bを開けて燃料セル2b内に所定量の水を供給することで連続して水素ガスを燃料電池4に供給することができる。このような燃料セルの順次の駆動は、例えば水素供給管47内に図示しない圧力検出部を設け、その圧力検出値が所定値以上になったときに図示しない制御部によりバルブ55のアクチュエーターに制御信号を出力することによって行われる。
【0035】
このように上述した水素発生の応答性の速い水素発生方法を燃料電池システムに組み込むことにより、短時間に所定量の水素を燃料電池4に供給することができ、このことによって当該燃料電池4の運転の立ち上がり時間が早くなるので、素早く発電させることができる。
【0036】
また本発明は、図4及び図5に示すように他の形態の燃料セル7を用いてもよい。この燃料セル7は、容器70の下端面から金属水素錯化合物と触媒能を有する金属とを混合した混合物24が敷き詰められており、この混合物24の上側に発熱用物質25が積層されている。そして発熱用物質25の上側には発熱用物質24と水とを隔てる例えば収縮性のあるゴムなどからなる区画部材である隔膜71が形成されている。この隔膜71の外縁部分は前記容器70の側壁に止着されている。また前記容器70の上端面の中央部には円筒管72が挿設されており、前記円筒管72の先端部は前記隔膜71の面に接している。この円筒管72内には円筒状の水素取り出し管73が密に嵌合されており、前記水素取り出し管73の先端部は尖鋭になっている。そして容器70と隔膜71と円筒管72とで囲まれる空間74には所定量の水が満たされている。
【0037】
図5に示すように、前記水素取り出し管73が下降して水素取り出し管73の先端部が隔膜71を突き破ることで、上述したように前記隔膜71は収縮性のあるゴムであるため、破れた中央部の膜は外方に向かって引っ張られ、隔膜71の中央部に穴が開く。この穴から水が前記発熱物質24に浸透し、先ず、燃料セル2の上方側に敷き詰められている水酸化ナトリウムの粉末と接触することで多量な熱を発生する。続いて、この熱が下層の混合物24に伝熱することで、既述のように加水分解反応が促進されて自己発熱し、その熱で加水分解反応がさらに促進され、早い速度で反応系が昇温するので上述と同様の効果を得ることができる。
【0038】
このような燃料セル7を既述の燃料電池システムに組み合わせた場合、タンク5、ポンプ6、供給管23及びバルブ55が設けられていない他は、図3に示した燃料電池システムと同様の構成にある。なお、水素取り出し管73から放出された水素ガスは収納部20に一端放出され、そして水素供給管47を通って燃料通流路44の一端側46から燃料電池4に供給されることになる。
【0039】
この燃料電池システムは上述と同様の作用効果があるが、燃料セル7内に所定量の水が貯蔵されているので水を蓄えたタンク5を必要とせず、よって水素発生装置3をコンパクトにすることができる。
【0040】
また燃料セル7からの水素ガスの発生量が少なくなると、次段の燃料セルにおいて上述の燃料セル7と同様の操作を行うことで、連続して水素ガスを燃料電池4に供給することができる。この場合、前記水素取り出し管73を上下に駆動する図示しない駆動機構を設け、また例えば水素供給管47内に図示しない圧力検出部を設けることで、その圧力検出値が所定値以上になったときに図示しない制御部により前記駆動機構に制御信号を出力することによって行われる。
【0041】
なお、上述の実施の形態の他に、図6に示すように金属水素錯化合物と触媒能を有する金属とを混合させた混合物からなる層70及び発熱用物質の層71とを交互に多数積層した構成であってもよい。また図7に示すように、粉末状の金属水素錯化合物と粉末状の触媒能を有する金属とを混合し固めた混合物80のペレットの表面を粉末状の発熱用物質81により被覆し、こうして得られたペレットを容器内に充填するようにしてもよい。このような構成にしても、上述と同様な作用効果を呈する。
【実施例】
【0042】
次に本発明の効果を確認するために行った実験について述べる。
【0043】
A.実験例
(実施例1)
乳鉢で粉砕混合することにより平均粒径50〜200μmの水素化ホウ素ナトリウム1g、触媒である平均粒径1〜2μmのコバルト0.5g及び発熱用物質である平均粒径50〜200μmの水酸化ナトリウム0.5の混合物を得て、この混合物を試験管の中に投入した。そして試験管内に水1.9gを入れて、前記混合物に浸透させ、試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図8及び図9において●印で表示する。図8は縦軸が水素発生量〔ml〕、横軸が反応時間〔分〕を示す特性図であり、図9は縦軸が反応温度〔℃〕、横軸が反応時間〔分〕を示す特性図である。
【0044】
(実施例2)
実施例1の混合物を試験管の中に投入し、続いて発熱用物質である平均粒径50〜200μmの水酸化ナトリウム0.5gを試験管内に投入し、前記混合物の上に前記発熱用物質を積層させた。そして試験管内に水1.9gを入れて、試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図8及び図9において○印で表示する。
【0045】
(実施例3)
発熱用物質である水酸化ナトリウムの重量を0.3gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及び図11において×印で表示する。
【0046】
(実施例4)
触媒であるコバルトの重量を1.0gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及び図11において△印で表示する。
(実施例5)
触媒であるコバルトの重量を0.2gとした他は、実施例2と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図10及ぶ図11において▲印で表示する。
【0047】
(比較例1)
発熱用物質である水酸化ナトリウムを添加しない他は、実施例1と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図12及び図13において□印で表示する。
【0048】
(比較例2)
触媒であるコバルトの重量を1.0gとした他は、比較例1と同様にして試験管内の水素発生量及び混合物の反応温度の各経時変化を調べた。その結果を図12及び図13において■印で表示する。
【0049】
B.結果及び考察
実施例1、2、3、4及び5より発熱用物質である水酸化ナトリウムを添加することで比較例1及び比較例2よりも臨界温度に到達するまでの時間が早くなっていることが理解できる。具体的には、実施例1は約4分、実施例2は約2分、実施例3は約4分、実施例4は約2分、実施例5は約9分、比較例1は約24分、比較例2は約11分とグラフより読取ることができる。
【0050】
また実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方が、臨界温度に到達するまでの時間が早くなっていることが分かる。これは実施の形態で述べたように実施例2では、先ず、水が試験管内の上方側に敷き詰められている水酸化ナトリウムの粉末と接触することで多量の熱を一気に発生し、この熱が下層の混合物に伝熱する。これに対して実施例1では、発熱用物質である水酸化ナトリウムが塊として存在しないために、水との反応によって生じる熱が離散的であり、このようなことから実施例2における混合物の昇温の方が急激に起るものと推測される。
【0051】
また発熱用物質である水酸化ナトリウムの量を0.3gと少なくすると(実施例3)、臨界温度に到達するまでの時間が遅くなることが分かる。また実施例4に示すように、触媒であるコバルトの量を1.0gと増やすと、臨界温度に到達するまでの時間が早くなるが、臨界温度に到達したときに発生する水素の量が減っていることが分かる。これは反応速度が向上したため反応のピーク温度が上がり、高温のために供給した水が蒸気となって失われ、水素化ホウ素ナトリウムと水との加水分解反応が低下したと思われる。また実施例5に示すように、触媒であるコバルトの量を0.2gと減らすと、臨界温度に到達するまでの時間がかなり遅くなっていることが分かる。
【0052】
このようなことから水素発生量及び水素発生の応答性の両方を考慮すると、発熱用物質である水酸化ナトリウムの量及び触媒であるコバルトの量は水素化ホウ素ナトリウムの量に対して実験により勘案して決定することが望ましい。よって上述のデータの中では水素化ホウ素ナトリウム、コバルト及び水酸化ナトリウムの重量比は、2:1:1とすることが好ましい。また水素化ホウ素ナトリウムに対する水の供給量は、水素化ホウ素ナトリウム1molに対して水4molであることが好ましい。NaBH4/Co/NaOH=2/1/1(重量比)とし、NaBH4に対する水のモル比を4とした場合、水供給から臨界温度に到達するまでの時間が約2分、このときの水素化ホウ素ナトリウムの反応率が89%と実験の中で最も高い値を示した。この理由については、適当な触媒活性及び適量の発熱用物質の添加により、速やかな昇温による短時間での水素発生が得られ、また比較的温和な反応温度により発生した水素に同伴する水蒸気が少なく、供給した水を反応に有効利用できたためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る燃料セルを説明する説明図である。
【図2】本発明に係る燃料セルを説明する説明図である。
【図3】本発明に係る燃料電池システムを説明する説明図である。
【図4】本発明に係る他の燃料セルを説明する説明図である。
【図5】本発明に係る他の燃料セルを説明する説明図である。
【図6】本発明に係る他の実施の形態を説明する説明図である。
【図7】本発明に係る他の実施の形態を説明する説明図である。
【図8】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図11】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図12】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【図13】本発明の効果を確認するために行った実験例の結果を示す特性図である。
【符号の説明】
【0054】
1 原料貯蔵部
2 燃料セル
21 容器
22 蓋体
23 水供給管
24 混合物
25 発熱用物質
3 水素発生装置
4 燃料電池
47 水素供給管
49 排出管
52 気液分離器
55 バルブ
6 ポンプ
7 燃料セル
70 容器
71 隔膜
72 円筒管
73 水素取り出し管
74 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を水に接触させ、前記金属水素錯化合物と水との反応により水素を発生させることを特徴とする水素発生方法。
【請求項2】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を収納するための容器と、
前記容器内の収納物に水を供給するための手段と、
前記容器内にて発生した水素を取り出すための手段と、を備えたことを特徴とする水素発生装置。
【請求項3】
前記水を供給するための手段は、容器内に水を供給するための給水部材を含むことを特徴とする請求項2記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記水を供給するための手段は、容器内にて前記収納物とを区画する区画部材と、この区画部材による区画を解除するための手段と、を含むことを特徴とする請求項2記載の水素発生装置。
【請求項5】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、は互いに積層されていることを特徴とする請求項2、3または4記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記水を供給するための手段は、前記混合物よりも先に発熱用物質に水が接触するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の水素発生装置。
【請求項7】
前記金属水素錯化合物は、テトラヒドロホウ酸塩であることを特徴とする請求項2または6のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項8】
前記触媒能を有する金属は、ニッケルまたはコバルト、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項2または7のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項9】
前記水と反応して発熱する物質は、水酸化アルカリ金属であることを特徴とする請求項2または8のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項10】
請求項2ないし9のいずれか一に記載の水素発生装置と、水素を燃料とする燃料電池と、前記水素発生装置から発生した水素を前記燃料電池に供給するための水素供給手段と、を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項1】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を水に接触させ、前記金属水素錯化合物と水との反応により水素を発生させることを特徴とする水素発生方法。
【請求項2】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、水と反応して発熱すると共にその生成熱により水素生成反応を促進させる発熱用物質と、を収納するための容器と、
前記容器内の収納物に水を供給するための手段と、
前記容器内にて発生した水素を取り出すための手段と、を備えたことを特徴とする水素発生装置。
【請求項3】
前記水を供給するための手段は、容器内に水を供給するための給水部材を含むことを特徴とする請求項2記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記水を供給するための手段は、容器内にて前記収納物とを区画する区画部材と、この区画部材による区画を解除するための手段と、を含むことを特徴とする請求項2記載の水素発生装置。
【請求項5】
固体の金属水素錯化合物及び触媒能を有する金属の混合物と、前記発熱用物質と、は互いに積層されていることを特徴とする請求項2、3または4記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記水を供給するための手段は、前記混合物よりも先に発熱用物質に水が接触するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の水素発生装置。
【請求項7】
前記金属水素錯化合物は、テトラヒドロホウ酸塩であることを特徴とする請求項2または6のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項8】
前記触媒能を有する金属は、ニッケルまたはコバルト、あるいはマグネシウム−ニッケル系水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項2または7のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項9】
前記水と反応して発熱する物質は、水酸化アルカリ金属であることを特徴とする請求項2または8のいずれか一に記載の水素発生装置。
【請求項10】
請求項2ないし9のいずれか一に記載の水素発生装置と、水素を燃料とする燃料電池と、前記水素発生装置から発生した水素を前記燃料電池に供給するための水素供給手段と、を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−56753(P2006−56753A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241396(P2004−241396)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(595155978)株式会社水素エネルギー研究所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(595155978)株式会社水素エネルギー研究所 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]