説明

水素発生用触媒

【課題】低温で寿命の長い水を、水素と酸素に分解できる触媒を提供する。
【解決手段】水が注入される水入口7と水素が流出する水素排出口8を供えた金属製の触媒筒3と、この触媒筒内に注入される水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等からなる親水性の金属酸化物のイオン液体又は金属水酸化物と金属酸化物とを脱水反応させて生成した複合金属酸化物と、前記イオン液体又は複合金属酸化物内に酸化物を作り易い金属イオンを供給する金属元素供給体(20〜22、25)からなる水から水素を取る水素発生用触媒であり、300℃〜700℃の温度範囲で水蒸気を瞬間的に分解できる 。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を分解して、水素を取出すための水素発生用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を使用して、水から水素を作る方法としては、純水を触媒を介して水素と酸素に熱分解することが知られており(特開平10−212101号)、この熱分解においては、シリカ酸化物を触媒として回転可能な炉容器に投入して、炉容器内を真空状態に真空引きし、真空引き後に、純水を投入すると共に、最終目標温度を350℃〜700℃に設定して、段階的に加熱しながら水素と酸素を回収している。
【0003】
また、他の方法としては、細かく粉砕した白金又はパラジウム等の金属触媒を約60℃〜150℃の温度に維持されたキレート化剤含有水と接触させて水素を発生させる方法が知られている(特公昭62−52102号)。
【特許文献1】特開平10−212101号
【特許文献2】特公昭62−52102号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における方法においては、純水が必要であるばかりでなく段階的に加熱するので水素を取出すのに時間を要するという欠点がある。
【0005】
また、特許文献2の方法においては、キレート剤が必要なばかりでなく、水素発生量が少ないという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の水素発生用触媒は、親水性の金属水酸化物と、この水酸化物を加熱して溶融させたときに、その中に溶け出す金属元素とで構成した。
【0007】
また、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)であり、前記金属元素は酸化物を作り易い鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)のうち、少なくとも一種類であることが好ましい。
【0008】
更に、本発明の水素発生用触媒を少なくとも一種類の親水性の低融点の金属水酸化物と、この金属水酸化物と反応して金属水酸化物の融点以上の温度で脱水し複合酸化物を生成する少なくとも一種類の他の化合物とで構成した。
【0009】
また、前記親水性の金属水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)および他の水和金属水酸化物であり、前記他の化合物は、水酸化物として水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)であり、酸化物として、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(FeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化タングステン(WO3)、酸化クロム(Cr23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化アルミニウム(Al23)又は酸化バリウム(BaO)であることが好ましい。
【0010】
更に、また、本発明の水素発生用触媒は、水が注入される水入口と水素が流出する水素排出口とを備えた金属容器と、この金属容器内に収納される低融点の親水性の金属水酸化物と、この金属水酸化物内に配置され前記金属水酸化物を加熱して溶融させたときに金属元素が金属水酸化物の溶融液体内に溶け出す金属元素供給体とからなり、前記金属水酸化物を加熱溶融させたときに前記容器の壁面からも前記金属水酸化物内に金属元素が溶け出すように構成した。
【0011】
また、前記金属容器はステンレス板からなり、前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)であり、前記金属元素供給体は、板状、粒状又は塊状の鉄(Fe)、チタン(Ti)又はステンレス材(Cr、Ni、Fe)からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2の水素発生用触媒は、低融点の金属水酸化物(NaOH、KOH)が加熱されて液体となり、この液体中に金属元素が溶け出して全体としてイオン液体を構成する。このイオン液体は300℃〜600℃に加熱された液状の溶融塩であり、その中には電離した金属水酸化物の金属イオン(Na+又はK+)、水酸基イオン(OH)が含まれ、この液体中に金属元素(Fe、Ni、Cr、Ti等)がイオン(Fe2+、Ni2+、Cr3+、Ti4+等)となって溶け出して全体として活性なイオン液体を構成している。このイオン液体中には、多数の電子(e)が活発に移動しており、この液面に水滴又は300℃〜600℃の水蒸気が当ると、イオン液体は親水性のため、水分子が捕捉され、水が電離して水素イオン(H)と水酸基イオン(OH)とになる。また、液面から上も、イオン液体の細かい粒子がベーパーとして飛び出しており、このベーパーによっても水分子は捕捉されて電離する。ここで、イオン液体中の金属イオン(Fe2+、Ni2+、Cr3+、Ti4+等)は酸化物を作り易くイオン液体中及び水から電離した水酸基イオン(OH)中の酸素(O)を吸着し、水素イオン(H)を放出する。水素イオン(H)は電子(e)リッチな雰囲気内で電子と結合して水素原子となり、これが他の水素原子と結合して水素分子(H2)となり外部に取出される。
【0013】
また、水酸基イオン(OH)から分離された酸素イオン(O2−)はイオン液体中の金属イオンに一旦吸着され酸化物(FeO、NiO、Cr23、TiO等)を生成するが、分解能力の高いイオン液体中で電離して逐次金属元素から離れて外部に酸素分子(O2)として放出される。このとき、水素イオン(H)が十分に存在する場合には酸素の一部が水素イオン(H)と結合して水蒸気の形態(H2O)として外部に放出される。なお、イオン液体中の水酸基イオン(OH)が不足してくると、イオン液体を維持できなくなるが水が電離して生成された水酸基イオン(OH)がこれを置換してイオン液体が維持される。
【0014】
このようなイオン液体の作用により、水分子は300℃以上の温度で瞬時に水素と酸素に分解される。
【0015】
請求項3、4、5の発明は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)等の親水性の金属水酸化物を加熱し、この中に金属水酸化物(Ca(OH)2)、Ba(OH)2・8H2O、Co(OH)2等)又は金属・非金属酸化物(ZnO、TiO2、NiO、Cr23、SiO2等)を溶かし込み、脱水させて複合金属・非金属酸化物(Na2CaO2、K2CaO2、Na2Ti25、K2Ti25等)を生成し、この複合金属・非金属酸化物の触媒作用により水を分解させる。この複合金属・非金属酸化物を600℃以上に加熱した状態で600℃以上の水蒸気を当てると、水蒸気は、親水性の複合金属・非金属酸化物の表面に捕捉されるとともに、そこから飛び出しているベーパーによっても捕捉され、水蒸気を捕捉した部分はやや溶けてその部分は、電離(Na+、CaO22−:K、Ti252−等)し、更に、捕捉された水蒸気もHとOHに電離し、このOHイオンは複合金属・非金属酸化物の表面のイオンにより分離されHイオンを放出するとともに酸素イオン(O2−)は一旦酸化物(Na2O、K2O等)を作る。水素イオン(H)は豊富な電子(e)雰囲気内で電子を内包して水素原子(H)となり、更に水素分子(H2)となって外部に放出される。ここで、一旦酸化物として捕捉された酸素(O)の一部は、豊富な電子が活動する雰囲気内で再び電離して酸素イオン(O2−)となり、この酸素イオン(O2−)は電離した水素イオン(H+)に電子(e−)を供給して水素分子(H)にしたり、水素イオン(H+)と結合して水蒸気(H2O)を作ったりする。なお、酸素の一部は、触媒容器と作用して酸化物を作る。また、触媒筒のケーシングからも金属元素が溶け込んでイオン液体と同様の作用をする。このような複合作用により水が分解される。
【0016】
なお、この複合金属・非金属酸化物内に、例えば、酸化物を作り易い金属原子供給体である鉄塊とかステンレス塊又はチタン合金塊を入れると、これらの金属元素が金属・非金属酸化物内にとけこんでこれらの金属元素のイオン(Fe2+、Ti3+、Cr3+、Ni2+等)が電離した水の水酸基イオン(OH)に作用して酸素を分離したり酸化物を作ったりして水の分解に寄与する。
【0017】
請求項6、7の発明は、請求項1、2の発明の具体的態様であり、金属水酸化物(NaOH、KOH)を金属容器(ステンレス板)内に入れ、300℃〜600℃に加熱した金属容器内で金属水酸化物を溶融せしめ、更に、この溶融した金属酸化物内に金属元素供給体から金属元素(Ni、Cr、Fe等)を溶かし込み、これに加えて金属容器の壁面からも金属元素を溶かして金属容器内に活性化されたイオン液体を形成したもので、このイオン液体上に水滴又は水蒸気を供給すれば、水が300〜400℃程度の温度で効率よく分解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
本発明の水から水素を発生させるための触媒は、低融点の親水性の金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)の溶液中に酸化物を作り易い鉄イオン(Fe2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、クロムイオン(Cr2+)チタンイオン(Ti2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、コバルトイオン(Co2+)、スズイオン(Sn2+)、ビスマスイオン(Bi3+)、マンガンイオン(Mn2+)タングステンイオン(W6+)、マグネシウムイオン(Mg2+)のうち、少なくとも一種類の金属イオンを溶かしたものである。すなわち、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムは250℃〜300の間に融点を持ち、この温度以上に加熱した溶液中に上述の金属イオンを溶かしてイオン液とし、この液面に300℃以上に加熱した水蒸気(H2O)を当てると水蒸気が分解されて水素と酸素が放出される。なお、イオン液面に直接水滴を当てた場合には、そこで水蒸気となる。
【0020】
前記金属イオンは、金属塊、金属粒子あるいは金属合金として供給され、例えば、容器の中に金属水酸化物を入れるとともにこの容器内に金属粒子、金属塊を入れるか、容器を所望の金属又は合金で形成し、容器内壁から金属イオンを水酸化物の溶液中に溶かすようにして供給する。
【0021】
図1、2は、水素発生メカニズムを示すものである。
【0022】
図1において、水素発生装置1は300℃〜600℃の水蒸気を作る蒸気室2を備え、この蒸気室2に隣接してステンレス材からなる触媒筒3が設けられ、これら蒸気室2および触媒筒3は伝熱ヒータ4により加熱される。前記蒸気室2には供給管5から水が供給され、蒸気室2内で発生した水蒸気は、蒸気管6を介してステンレス材からなる触媒筒3内に送られ、触媒筒3内には触媒が収納され、水蒸気はこの触媒の上面に接触しながら分解され出口部8から立設する排出管9を通って放出される。
【0023】
図2は、図1のII−II線断面図であり、ステンレス容器内に水酸化ナトリウム(NaOH)が収納され、この状態で容器を300℃以上に加熱すると水酸化ナトリウムは溶解し、この溶解液内にステンレス容器の内壁から鉄イオン(Fe2+)、クロムイオン(Cr2+)、ニッケルイオン(Ni2+)が溶け出す。また、溶解した水酸化ナトリウムはナトリウムイオン(Na+)と水酸基イオン(OH)に電離し、いわゆる金属イオンと水酸基イオンを含んだイオン液体をなし電子の移動が激しい活性溶液が出来る。この液面に300℃以上に加熱された水蒸気が当ると、水蒸気(H2O)が水素イオン(H)と水酸基イオン(OH)に電離し、水素イオン(H)はイオン液面の電子(e)と結合して水素原子(H)となり、さらに水素原子同士結合して水素分子(H2)ができ、これが瞬時に排出管9から放出される。
【0024】
一方、水が電離して生成された水酸基イオン(OH)及びイオン溶液中の水酸基イオン(OH)は活性な酸化物を作り易い金属イオン(Fe2+、Ti3+、Cr3+、Ni2+等)特に鉄イオン(Fe2+)により分離され、酸素イオン(O2−)は金属元素と結合して(FeO、Fe23、Cr23、NiO、Na2O)の形でこれら金属元素に吸着され、ここで分離された水素イオン(H)の一部は電子(e)と結合して水素原子(H)となり、この水素原子(H)は他の水素原子(H)と結合して水素分子(H2)として外部に放出され、残部は水酸基イオン(OH)と結合して水蒸気(H2O)を作る。また、金属元素に吸着された酸素(O)の一部は酸化物として容器内に残るが、大部分は活性化されたイオン溶液内で酸化物の金属原子から分断され、水素の放出からやや遅れて徐々に外部に放出される。このように、300℃以上のイオン溶液の液面は親水性で(水酸化ナトリウムの作用)、水蒸気が流入すると液面でそれを捕捉し、液面近傍の活発な金属イオンは、水蒸気を電離させるとともに、イオン液中及び電離した水の水酸基イオン(OH)を水素と酸素に分断する。このように、水蒸気を触媒表面に送ると瞬時に水素が放出され、上述のようにやや遅れて徐々に酸素が放出される。なお、水蒸気を送らないときでもイオン液中の水酸基イオン(OH)が分断され発生した水素が放出されていることは、実験で確認されている。また、水蒸気でなく、水滴を直接イオン液体の液面に供給しても水滴は液面で水蒸気となり、次いで水素と酸素に分離されることも確認されている。更に、水酸化ナトリウムの他に水酸化カリウム(KOH)でも同じような作用をするが、水酸化ナトリウム(NaOH)の方が鉄(Fe)との相性がよい。このようなイオン液体は、触媒作用により300℃位の温度でも水を分解できるが、400℃前後の温度であれば安定して水を分離でき、このように400℃程度にイオン液体を加熱することが好ましい。なお、イオン液体の上限の温度は使用する水酸化物の沸点以下であればよい。例えば、水酸化カリウムの沸点は1320℃、水酸化ナトリウムの沸点は1390℃である。
【0025】
このように、酸化物を作り易い金属元素は溶融された水酸化物内に図3で示すように、粒状の金属元素供給体20の形で供給されても良いし、図4に示すように塊状の金属元素供給体25の形で供給されても良いし、図5に示すように板状の金属元素供給体22の形で供給されても良く、図6に示すように底板23上に多数のフィン25を立設した金属供給体25の形で供給されても良い。これらの金属供給体20〜22、25は所望の純粋金属で形成されても良く、合金の形で形成されても良い。ステンレス容器内に上述の各種金属元素を金属元素供給体として加えても良い。実施例としは、ステンレス容器内にステンレス板を金属元素供給体として加えるのが好適である。
【0026】
以上は、イオン液体触媒についての説明であるが、次に固体状の複合元素(金属・非金属)化合物からなる触媒について説明する。
【0027】
図7において、ステンレス材からなる触媒筒3内には、固体の複合元素化合物からなる触媒30が収納され、この中には、酸化物を作り易い元素、例えば鉄塊31が収納されている。この鉄塊31はチタン、ニッケル、クロム、、モリブデン、マグネシウム、ビスマス、亜鉛、コバルト、スズ、タングステン、マンガン等酸化物を作り易い金属で代替され得る。なお、その形は、上述のように粒状、板状、フィン状でもよい。
【0028】
前記複合元素化合物は、少なくとも一種類の親水性の低融点(250〜450℃)の金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム(NaOH))、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)(融点408℃)の少なくとも一種類を加熱して溶融させながら、他の金属酸化物(酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化銅(CuO)、酸化タングステン(WO3)、酸化クロム(Cr23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化バリウム(BaO)又は非金属水酸化物(酸化珪素(SiO2))又は金属水酸化物(水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)の少なくとも一種類を溶かし込み、ゲル状になった状態で触媒筒3内に注入される。触媒筒3内には鉄塊31が収納され、この鉄塊31は触媒30で被われ、触媒30の加熱中にその中に鉄イオン(Fe2+)として溶け込み触媒30の表面に水蒸気が供給されたときに酸素(O)を酸化物として一旦吸着する作用をする。すなわち、触媒30を水酸化カリウム(KOH)と酸化チタン(TiO)とで形成した場合、両者の加熱中には
2KOH+2TiO→K2Ti25+H2O …(1)
の反応により脱水して複合金属酸化物であるチタン酸カリウム(K2Ti25)が生じ、この親水性のチタン酸カリウム中に鉄イオン(Fe2+)が溶け込んでいる。鉄イオンを含んだチタン酸カリウムの表面では電子(e)が活発に活動してカリウムイオン(K)とチタン酸イオン(Ti252−)とに電離し、これにより水蒸気を水素イオン(H)と水酸基イオン(OH)に電離し、全体としては前述のイオン液体と同様の作用により水を分解する。但し、安定して分解する温度は650℃〜700℃であり、イオン液体より加熱温度が高くなる。なお、この場合にも触媒筒3の周壁からも、鉄材(Fe2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、クロムイオン(Cr3+)が溶け込んでいる。
【0029】
なお、酸化チタンと同様に酸化ジルコニウム(ZrO2)も、水酸化カリウムと化合物を作るときに、
KOH+ZrO→K2Zr25+H2O …(2)
の反応をして、ジルコン酸カリウム(K2Zr25)を生じ、これも上述のチタン酸カリウム(K2Ti25)と同様の作用をする。
【0030】
なお、水酸化ナトリウム(NaOH)でも、水酸化カリウム(KOH)と同様の作用をするが、これと水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の反応も、上述と同じように
Ca(OH)2+2NaOH→Na2CaO2+2H2O …(3)
の脱水反応をする。このカルシウム酸ナトリウム(Na2CaO2)も、他の複合金属化合物と同じ作用をする。
【0031】
酸化珪素(SiO2)も水酸化ナトリウム(NaOH)と上述と同じように
2SiO2+2NaOH→Na2Si25+H2O …(4)
の脱水反応をして、上述と同様の性質を有する珪酸ナトリウム(Na2Si25)を生じる。
【0032】
同様に、酸化マグネシウム(MgO)と水酸化ナトリウム(NaOH)の反応は、
MgO+2NaOH→Na2MgO2+H2O …(5)
となり、マグネシウム酸ナトリウムが出来る。
【0033】
水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム(KOH)は類似の性質を有するので、交換しても良く、また、両者を加えたものに他の成分を加えてもかまわないが、鉄イオンとの相性は水酸化ナトリウムの方が良いことが確認されている。
【0034】
次に、本発明の触媒を利用した具体的装置及び水素発生システムについて説明する。
【0035】
図8において、水素発生装置Mは、触媒ユニット40を有し、この触媒ユニット40は断熱ケーシング41を備え、この断熱ケーシング41内には、触媒収納ボックス42が3段に積層され、各触媒収納ボックス42の底面には面状発熱体43、43、43が付着され、これにより各触媒収納ボックス42が300℃〜600℃に加熱される。前記各触媒収納ボックス42内には、水タンク44からの水が流量計45、これに連結された補助タンク46の底面から伸びている水パイプ47、47、47を介して所定量送られる。
【0036】
なお、水タンク44の液面には、コンプレッサ48を介して所定圧力が供給され、前記各触媒収納ボックス内の水蒸気の気体圧に負けないようになっている。前記触媒収納ボックス42の水パイプ47が配管される側壁の反対側の側壁には、水素配管49が設けられ、この水素配管49は水蒸気除去装置50に連なり、この装置50は水タンクであり、この水タンク内の液面下に水素配管49が伸び、これにより触媒數納ボックス42内で分解されなかった一部の水蒸気が除去され、この水タンクはチラー51により冷却され、高温の水蒸気が逆流しないようになっている。水蒸気除去装置50を通った水素と酸素は、ポンプ52により気体タンク53に一旦貯溜され、この気体タンク53から水素が、例えばボイラのバーナ54に送られ燃焼される。また、水素と酸素とを分離するパラジウム合金膜からなる分離装置55を通して酸素を除去し、純度の高い水素のみを燃料電池56に送って発電される。
【0037】
一方、気体タンク53からの気体の一部は、前記面状発熱体43を加熱する補助熱源として使用される。前記面状発熱体43は図9に示すように、最上段に配置されたもので、アルミ合金のような熱伝導性の高い板状体に炭素を主成分とする発熱体60を面状に塗布したもので、前記板状体の一側には、加熱部43aがケーシング41外に突出して形成され、ここが水素バーナ61によって加熱され、その熱は直ちに板状体全体に伝導する。同様に中段、下段の面状発熱体43は上段とは異なる位置にそれぞれ加熱部43b、43cが形成され、これらが水素バーナ62、63によって加熱され、各水素バーナ61、62、63には、弁64、65、66及び図示しない水封装置からなる図示しないバックファイヤー防止装置を介して水素が供給される。
【0038】
前記触媒収納ボックス42は、全体としてステンレス板で形成され、図10に示すように複数の仕切壁70、71が設けられ、仕切壁70と触媒収納ボックス40の側壁間には、水滴が送られる蒸気室72が形成され、この蒸気室72には、水パイプ47の分岐配管47aにより複数個所に水滴が送られ、ここで、300℃〜600℃の水蒸気が発生する。前記蒸気室72に隣接して触媒室73、73が形成され、この触媒室73内には、例えば、ステンレス板からなるフィン体75、75…75が収納され、このフィン体75は、例えば、前述のイオン液体触媒内に位置する。また、固形触媒を収納することも可能である。蒸気室72の反対側の側壁には分岐配管49aが設けられ、水素は分岐配管49aを経て集合配管74に集められ、水蒸気除去装置50に送られる。
【0039】
図11は水素エンジンシステムのうち、自動車のエンジン80に本発明の触媒を使用した水素発生装置を設置した場合を示している。水素エンジン80は、例えば自動車、発電機、飛行機等各種回転体を回転せしめるものに使用可能となる。水素エンジンはロータリーエンジンに適合すると言われており、このエンジン80の吸入孔82から吸入された水素ガスは、ピストン83により吸入、圧縮、爆発、排気の工程を経て排気孔81から排気される。この排気ガスは高温水蒸気、窒素、酸素からなっており、フィルタ84(例えばPd合金)で窒素(N)、酸素(O)と高温水蒸気(V)を分離した後、高温水蒸気を加熱器85を通して300℃以上とし、その後前記触媒を上下又は左右に多数積層又は並設した触媒ユニット86を通して水素(H)、酸素(O)に分離し、必要に応じて未分解の水蒸気(V)を加熱器85及び触媒ユニット86内を循環せしめた後、前記エンジンの吸入孔82にポンプ88を経てエンジン内に水素と酸素が送られる。一般に、水素エンジンの排気ガスの温度は400℃〜500℃であり、本発明の触媒ユニット86の作動温度が300℃〜600℃であるので、必要に応じて設けられる加熱器85及び触媒ユニット86を作動温度に保持しておく必要がある。自動車の場合には、太陽光を採光してその不足分の熱を得ることも可能であるし、駆動開始等はバッテリーから不足分の熱を得て、その後は自らの水素を燃焼させて不足熱を得ることも可能である。なお、排気温度は400℃〜500℃であるので断熱を完全にすれば、加熱器85は不要である。
【0040】
図12は、加熱装置としての水素バーナシステムを示すものであり、例えば、バーナをボイラに使用した場合には、ボイラのケーシング90の下部には炉心91が設けられ、この炉心91内に水素バーナ92が臨まされている。この水素バーナ92には、水素と空気(窒素と酸素)が供給されるが、炉心91で発生した高温水蒸気と燃焼しなかった窒素と酸素は炉心91の上方に設けられた触媒ユニット93を通って水素が回収された後に熱交換部94を通って排出される。この排気ガスは高温水蒸気と窒素と酸素であるので、そのまま放出しても何ら問題がない。特に植物栽培のビニールハウス等では加湿作用のあるガスとなるので、煙突は全く不要である。前記触媒ユニット93で採集された水素はタンク95に貯蔵され、ここからポンプによりバーナ92に一定圧で送られる。
【0041】
図13は、蒸気ボイラ120に触媒ユニット121を適用したもので、炉心122の周囲に水管123が設けられ、この水管123から蒸気パイプ124により外部に300℃〜600℃の水蒸気が取出される。蒸気パイプ124からは分岐パイプ125が分岐し、この分岐パイプ125に前記触媒ユニット121が設けられ、ポンプ127でボンベ128に水素と酸素が一旦貯溜されバルブ131の開閉により水素バーナ129に水素と酸素が送られる。炉心122で発生した排気ガスは排出口130から外部に放出される。
【0042】
図14は、既存の火力発電システムに本発明の水素発生装置を組み込んだものであり、ボイラ100には、水タンク107からの水が後述する熱交換器104を介して供給されるとともに、ボイラ100は、水素タンク101からの水素で燃焼する水素バーナ102を有している。このボイラ100では、水が1000℃〜1500℃の水蒸気となり、この水蒸気は、発電機103に送られて、発電機のロータを回転した後に熱交換器104を介して水タンク107から供給される水と熱交換されて300℃〜600℃の水蒸気とするとともに熱交換器104で熱せられた水はボイラ100に送られる。
【0043】
ここで、300℃〜600℃に下げられた水蒸気は、触媒ユニット105に送られ、ここで収集されたガスは分離器106により分離され、ここで分離された水素は前記水素タンク101に送られ分離された酸素は酸素タンク108に貯留され未分解の水蒸気は熱交換器104で昇温され、再度触媒収納装置105内に供給される。前記水素バーナ102からの排気は分離器109で分離され高温の水蒸気は発電機103からの水蒸気と混合されて熱交換器104に送られ、前記分離器106で分離された熱風(O、N)は例えば、暖房等に別途使用される。
【0044】
次に、燃料電池を触媒ユニットに結合した場合のシステムについて説明する。
【0045】
図15において、本システムは、2つの触媒ユニットU、Uを有し、これらの触媒ユニットU、Uは弁200の切換によって交互に動作するようになっており、弁200はコントローラ201によって、例えば、5分ごとに切換わり、水タンク202からの水の流れを切り換えるようになっている。これは、上述の触媒の表面が連続運転していると劣化し易いが、間欠的に運転すると、触媒の寿命が延びるからである。
【0046】
各触媒ユニットU、Uには、パラジウム合金等のような水蒸気分離装置203、204が設けられ、ここで水素、酸素とから分離された水蒸気は触媒ユニットの入口側に戻されて触媒ユニット内に流入され更に水素と酸素とに分解される。水蒸気分離装置203、204で分離された水素と酸素はパラジウム合金等からなる分離膜を備えた酸素・水素分離装置205により分離され、ここで分離された純度の高い水素は燃料電池206に送られる。この燃料電池206の出口側は水素と酸素の結合により高熱となり、水蒸気が出るので、この水蒸気は前記コントローラ201により動作し水の供給を切り換える切換弁207を介して作動中の触媒ユニットU、Uに送られる。
【0047】
また、燃料電池206で得られる電気の一部は各触媒ユニットU、U内のヒータ208、209に供給される。
【0048】
次に、本発明の触媒ユニットを船舶に適用した場合のシステムについて説明する。
【0049】
船の場合には、揺れがあるので固体触媒を使用すれば良いが、イオン液体の方が触媒機能が大であるで、それを使用するには工夫が必要である。
【0050】
触媒ユニット300は、ジャイロを備えた水平維持装置Hに支持させるのが、良いが、装置が高価となるので、図17、18に示す構造とするのが好ましい。すなわち、触媒ユニット300は、深底のステンレス材からなるケーシング301を有し、このケーシング301内には、格子状のステンレス板からなる仕切板302が収納され、この仕切板302はケーシング301内を小部屋に仕切っており、このように仕切ることにより船が傾斜してもケーシング301の上板305に取付けられる水蒸気供給パイプ303及び水素排出パイプ304がイオン液体によって詰まることがない。なお、前記両パイプ303、304は上板305の前後方向両端部で幅方向中心に設けられ、触媒ユニット300の幅方向中心は船の中心軸C上に配置されることが好ましい。イオン液体は上板から下方所定位置まで降下して設け、船が揺れても両パイプ303、304にイオン液が詰らないようにされる。なお、上板305には、イオン液体が消耗した時に補給する補給筒306が設けられ、補給筒306から供給されたイオン液がケーシング内の各部屋に流入するように、図18に示すように、仕切板302の底部近傍に開口306、306…306が設けられている。
【0051】
前記触媒ユニット300は、水素バーナ310によって300℃〜600℃に加熱される。海水はポンプ311により公知の淡水化装置312に送られ、ここで塩分が取り除かれて水タンク313に入り、ここから所定量の水が触媒ユニット300に供給されて分解され、水素・酸素分離装置313により水素は水素タンク314に、酸素は酸素タンク315に貯溜される。貯溜された水素と酸素は水素エンジン316に供給されてスクリュー317が回転される。なお、水素は水素バーナ310にも送られる。水素エンジン316には発電機327が接続され、発電された電気はキャパシタ318に貯えられ、キャパシタ318は電気分解炉319に送られる。電気分解炉319には、淡水化装置312で分離された塩分が供給されて電気分解されて水酸化ナトリウム(NaOH)が採集される。この水酸化ナトリウムは補給筒306を介して触媒ユニット300内に自動補給される。前記水素エンジン316は各タンク314、315から水素と酸素が供給されるので、外部から取り入れる空気量が少なくなるが、完全に空気が不必要となるわけではないので、水素エンジン316の排気(高温水蒸気)はNO分解触媒320を通って触媒ユニット300に送られる。
【実施例】
【0052】
次に、図1に示す水素発生装置1を使用した実験例について説明する。なお、水素の存在は水素の燃焼試験により確認した。
1.第1実験例
触媒筒3(幅50mm×長さ200mm×高さ15mm)内には全く触媒を入れることなく、空のまま加熱しながら10分毎に0.2ccの水を水蒸気室2に供給したところ、700℃前後の温度で水素が発生したが、4〜6時間で燃焼しなくなった。
【0053】
触媒筒3の材質は18−8ステンレス鋼であり、Cr18%、Ni8%、残部Feである。
【0054】
また、触媒筒3内に屑ステンを20g程度入れたら2日間燃焼した。屑ステンの代わりに銅屑を10g程度入れたら1日で失活した。また、鉄の塊(96g)を入れたら、200℃で2日間燃焼した。これにより、水の分解には金属イオン、特に鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、が大きく影響しているものと思われる。銅(Cn)、アルミニウム(Al)イオンは燃焼に寄与しない。
【0055】
2.第2実験例
触媒筒3内に水酸化ナトリウム(NaOH)を100g入れ、600℃〜700℃の加熱で1週間燃焼した。600℃〜700℃の温度では、水酸化ナトリウムは液状に溶けており、この中にステンレス鋼(触媒筒3の内壁)からニッケルイオン(Ni2+)、クロムイオン(Cr3+)及び鉄イオン(Fe2+)が溶け出し、NaOHもNaとOHに分離している。
【0056】
これらがイオン液体を作り、液面に水蒸気が接触すると水が水素イオン(H)と水酸基イオン(OH)とに分離される。また、液面からは各イオンを含む水酸化ナトリウムの微粒子が飛び出しており、液面から離れた位置にある水蒸気もこれら微粒子に接触して電離する。なお、このイオン液体は親水性が強く、注入された水蒸気を直ちに捕捉する。前記イオン液体中のOHは金属イオン(Na、Fe2+、Ni2+、Cr3+)特にFe2+によりO2−とHに一部分断され、一方水のOHはその一部がイオン液体中に入ってイオン液体中のOHと置換したり、置換しないものは金属元素イオンによりO2−とHに分断される。ここで、Hは、イオン液体中の豊富な電子(e)と結合して水素原子、水素分子(H、H2)となり、外部に放出される。一方、分離された酸素イオン(O2−)は、酸化物を作り易いFe2+、Cr3+、Ni2+、Na、特にFe2+により酸化鉄となるが、活性化されたイオン液体はFeOをFe2+とO2−に分離し、ここでO2−はイオン液体内のeと結合して酸素原子、更には分子となり、外部に放出される。この酸素の一部は触媒筒3内で酸化物として残る。
【0057】
また、NaOHの代わりに、水酸化カリウム(KOH)100gを触媒筒3内に注入して600℃〜700℃に加熱してイオン液体を生成したら、NaOHと同じように燃焼したが、その寿命は3日間であり、NaOHよりも短命であることが判明した。
【0058】
次いで、NaOH100gに対して18−8ステンレス鋼98gを入れてNi2+、Cr3+、Fe2+イオンをイオン液中に増加せしめたところ、300℃〜400℃の温度で燃焼し、その寿命は10日間に延びた。
【0059】
また、NaOH50g、KOH50gのみを注入し600℃〜700℃に加熱したが、その寿命は4日間程度であり、NaOH100g単体のイオン液体の方が好ましいことが判明した。
【0060】
更に、NaOH50g、KOH50gの混合液にステンレス鋼100g程度を加えたところ、寿命が7日間程度に伸びたが、NaOHにステンレス鋼を加えたものよりも寿命が短かった。
【0061】
更にまた、NaOH100g又はKOH100gにチタン合金を30g程度加えたところ、300℃〜400℃で激しく反応しイオン液体中のOHの酸素と結合して水蒸気を入れることなくイオン液そのものが燃焼し、液体状態から固体状態に変化した。この固体はチタン酸ナトリウム(Na2Ti25)であり、これを600℃〜700℃に加熱したら触媒としての作用を果たした。
【0062】
3.第3実験例
金属水酸化物と金属酸化物とを加熱せしめ、脱水し複合金属酸化物を生成したものをゲル状とし、触媒筒3内に注入した。その組み合わせは、種々あり、以下に示す組み合わせはステンレス容器内で650℃〜750℃で燃焼し、特に記載されていない場合は、その寿命は3日〜5日間であった。
【0063】
1)KOH 100g
TiO2 10g
KOHを溶融させつつ(300℃以上)TiO2粉を混入させていくが、TiO2粉はKOHに対して1/10程度しか混入できない。この場合に脱水してチタン酸カリウム(K2Ti25)ができる。
【0064】
2)KOH 100g
TiO2 30g
Cr23 10g
Cr23粉をバインダーとして入れるとTiO2がKOHに30%程度溶ける。なお、Cr23粉の代わりにMoO3粉を用いることも可能であった。この場合、チタン酸カリウム(K2Ti25)とクロム酸カリウム(K2Cr25)の複合金属化合物ができる。
【0065】
3)KOH 100g
Cr23 10g
700℃前後で燃焼した。
【0066】
4)KOH 100g
MgO 20g
寿命が長い(1週間)。この場合マグネシウム酸カリウム(K2MgO2)ができる。
【0067】
5)KOH 100g
MoO3 34g
この場合、モリブデン酸カリウム(K2MoO4)ができる。
【0068】
6)NaOH 100g
ZnO 40g
この場合、亜鉛酸ナトリウム(Na2ZnO2)ができる。
【0069】
7)NaOH 100g
ZrO2 20g
この場合、ジルコン酸ナトリウム(Na2ZrO3)ができる。
【0070】
8)NaOH 100g
SnO2 70g
この場合、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3)ができる。
【0071】
9)NaOH 100g
WO3 140g
この場合、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)ができ、WO3はNaOH以上に多量に混合した。
【0072】
10)NaOH 100g
CaO 45g
この場合、カルシウム酸ナトリウム(Na2CaO2)ができる。
【0073】
11)NaOH 100g
TiO2 34g
この場合、チタン酸ナトリウム(Na2Ti25)ができる。
TiO2はNaOHよりKOHになじみ易い。
【0074】
4.第4実験例
金属水酸化物と金属水酸化物の組み合わせでステンレス容器内で燃焼したものは、NaOH100g、Ca(OH)28gの組み合わせであり、KOH50g、NaOH50gの組み合わせ、更に、KOH100g、Ba(OH)2・8H2O100gの組み合わせで燃焼は僅かにあったが、全ての場合について十分には燃焼しなかった。
【0075】
5.第5実験例
金属水酸化物と非金属酸化物の組み合わせで、ステンレス容器内で僅かに燃焼したのは、NaOH100g、SiO224gの組み合わせであり、これらに鉄塊を加えた場合にはよく燃焼し、しかも10日間も寿命があった。
【0076】
なお、KOH200g、SiO235gの組み合わせは、SiO2がKOHと結合できず燃焼しなかった。
【0077】
また、更にNaOH100g、SiO217g、Al2312gの組み合わせは、別に加えられた鉄イオン(Fe2+)の存在の下に非常に良好な燃焼をした。すなわち、ステンレス容器に別に加えられた鉄イオンの存在の下にAl23をNaOHとSiO2の組み合わせに加えると大きく変化して良好な触媒となることが判る。
【0078】
以上が水を分解(燃焼)した組み合わせであるが、700℃前後に加熱して脱水後の複合金属(非金属)化合物に水蒸気を当てると、複合金属化合物の電離により水蒸気が電離する(H、OH)。一般に、金属水酸化物は低融点で親水性があり、その表面は水蒸気を捕捉して若干溶けてイオン液体と同じような作用を行なう。すなわち、複合金属(非金属)化合物の表面の元素は酸化物を作り易く、電離してOHのO2−を分断してHを放出する。Hはeリッチな雰囲気内でH原子、分子となり、外部に流出する。酸化物を作り易い、例えばMg2+とO2−は結合してMgOを作るが、この酸素も活発に活動する電子(e)により分断され電離して酸素は外部に放出される。
6.第6実験例
以下に示す組み合わせは鉄イオンの存在の下、600℃〜700℃の温度においても不燃であった。
【0079】
1)KOH 200g
Al23 60g
2)KOH 100g
MnO2 40g
3)KOH 100g
25 20g
4)KOH 100g
Ba(OH)2・8H2O 100g
5)NaOH 200g
MgO 20g
Al23 20g
6)NaOH 100g
Ca(OH)2 7g
7)NaOH 100g
Ca(OH)2 50g
水酸化カルシウムの量を増やしても不燃であった。
8)NaOH 100g
NiO 140g
9)NaOH 100g
Bi23 25g
10)NaOH 100g
Al23 60g
11)NaOH 100g
SiO2 25g
MnO2 15g
12)NaOH 100g
SiO2 20g
TiO2 4g
MgO 2g
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の水素発生用触媒は、水素を供給する水素ステーションに最適であり、小型に水素発生装置を作れば、水素ボイラ、自動車、船舶に適用可能であり、大型に水素発生装置を作れば大型発電用プラントに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の水素発生用触媒を適用した水素発生装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】粒状の金属元素供給体である。
【図4】塊状の金属元素供給体である。
【図5】板状の金属元素供給体である。
【図6】フィン状の金属元素供給体である。
【図7】鉄塊を入れた固体複合元素化合物からなる水素発生用触媒である。
【図8】本発明の触媒を使用した水素発生装置の概略斜視図である。
【図9】図8の水素発生装置に使用される面状発熱体の斜視図である。
【図10】図8の水素発生装置に使用される触媒収納ボックスの斜視図である。
【図11】水素エンジンのシステム図である。
【図12】水素バーナのシステム図である。
【図13】水素ボイラの水蒸気を利用したシステム図である。
【図14】水素で駆動する火力発電システムである。
【図15】本発明を燃料電池に適用した場合のシステム図である。
【図16】本発明を船舶に適用した場合のシステム図である。
【図17】船舶用触媒ユニットの斜視図である。
【図18】船舶用触媒ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…水素発生装置
2…蒸気室
3…触媒筒
31…鉄塊
40…触媒ユニット
42…触媒収納ボックス
43…面状発熱体
50…水蒸気除去装置
74…フィン体
80…水素エンジン
92…水素バーナ
100…ボイラ
105…触媒ユニット
120…蒸気ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の金属水酸化物と、この水酸化物を加熱して溶融させたときに、その中に溶け出す金属元素からなる水から水素を発生せしめる水素発生用触媒。
【請求項2】
前記水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)であり、前記金属元素は酸化物を作り易い鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)のうち、少なくとも一種類である請求項1記載の水素発生用触媒。
【請求項3】
少なくとも一種類の親水性の低融点の金属水酸化物と、この金属水酸化物と反応して金属水酸化物の融点以上の温度で脱水し複合酸化物を生成する少なくとも一種類の他の化合物とからなる水から水素を発生せしめる水素発生用触媒。
【請求項4】
前記親水性の金属水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)2・8H2O)および他の水和金属水酸化物であり、前記他の化合物は、水酸化物として水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)であり、酸化物として酸化チタン(TiO)、酸化鉄(FeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化タングステン(WO3)、酸化クロム(Cr23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化アルミニウム(Al23)又は酸化バリウム(BaO)である請求項3記載の水素発生用触媒。
【請求項5】
前記請求項3の水素発生用触媒中に酸化物を作り易い金属を供給する金属元素供給体を加えた請求項3又は請求項4に記載の水素発生用触媒。
【請求項6】
水が注入される水入口と水素が流出する水素排出口とを備えた金属容器と、この金属容器内に収納される低融点の親水性の金属水酸化物と、この金属水酸化物内に配置されて前記金属水酸化物を加熱して溶融させたときに金属元素が金属水酸化物の溶融液体内に溶け出す金属元素供給体とからなり、前記金属水酸化物を加熱溶融させたときに前記容器の壁面からも前記金属水酸化物内に金属元素が溶け出すようになっている水素発生用触媒。
【請求項7】
前記金属容器はステンレス板からなり、前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)からなり、前記金属元素供給体は、板状、粒状又は塊状の鉄(Fe)、チタン(Ti)又はステンレス材(Cr、Ni、Fe)からなる請求項5記載の水素発生用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−131553(P2010−131553A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311270(P2008−311270)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(504323205)
【Fターム(参考)】