説明

水素発生装置及び燃料電池発電システム

【課題】本発明は使用者または燃料電池からの要求に従い電極間の電流量を調節することにより発生される水素量を調節することができる燃料電池に供給される水素発生量の調節が可能な水素発生装置を提供する。
【解決手段】本発明の水素発生装置は、電解質水溶液が入っている電解槽と、前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生装置に関するもので、より詳細には、燃料電池に供給される水素発生量の調節が可能な水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは燃料、すなわち、水素、LNG、LPG、メタノールなどと空気の化学エネルギーを電気化学的反応を用いて電気及び熱に直接変換させる装置である。既存の発電技術が燃料の燃焼、蒸気発生、タービン駆動、発電機駆動の過程を用いることとは異なって、燃焼過程や駆動装置がないため効率が高い、かつ環境問題を誘発しない新たな概念の発電技術である。
【0003】
図1は、燃料電池の作動原理を示す面である。
【0004】
図1を参照すると、燃料電池100の燃料極110はアノード(anode)であり、空気極130はカソード(cathode)である。燃料極110は、水素(H)の供給を受けて水素イオン(H)と電子(e)とに分解される。水素イオンは膜120を経て空気極130へ移動する。膜120は電解質層に該当する。電子は外部回路140を経て電流を発生する。そして、空気極130にて水素イオンと電子及び空気中の酸素が結合して水になる。前述した燃料電池100における化学反応式は下記の化学式1で表される。
(化1)
燃料極110:H→2H+2e
空気極130:1/2O+2H+2e→H
全体反応:H+1/2O→H
【0005】
すなわち、燃料極110から分離された電子が外部回路を経て電流を発生することにより電池の機能を果たすことになる。このような燃料電池100はSOxやNOxなどの大気汚染物質をほとんど排出しなく、二酸化炭素の発生も少ないため、無公害発電であり、低騷音、無振動などの長所がある。
【0006】
燃料電池100は燃料極110から電子を発生させるために、水素を含んでいる一般燃料を燃料電池100が要求する、水素を多く含むガスに変化させる水素発生装置を必要とする。水素発生装置として一般的に知られている水素貯蔵タンクなどを用いると嵩が大きくなり、保管するのに危険もある。また、最近注目されている携帯用電子器機(携帯電話、ノートパソコンなど)が高用量の電源供給装置を要求するにつれ、燃料電池はこれらの要求に対応しなくてはならなく、嵩も小さいながら高い性能を有する必要がある。
【0007】
ICAO(International Civil Aviation Organization)から飛行機搬入が承認されたメタノールやギ酸などを用いて燃料を改質して水素を発生させたり、または、直接メタノールやエタノール、ギ酸などを燃料電池にて直接燃料として使用する方式が用いられている。
【0008】
しかし、前者は高い改質温度が要求され、システムが複雑になり、駆動電力が消耗されて純粋水素以外の不純物(CO、CO)が含まれるという問題点がある。そして、後者は低い両極化学反応と炭化水素(hydrocarbon)の膜によるクロスオーバ(cross−over)により電力密度が非常に低くなるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述した従来の問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は電気化学的反応を用いて純粋水素を常温から生成できる水素発生装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は簡単な構造のシステムであり、別途のBOP(Balance of Plant)がなくても水素の発生量制御が可能な水素発生装置を提供することである。
【0011】
また、本発明のさらに他の目的は費用がチープであり、親環境的な水素発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、水素発生量の調節が可能な水素発生装置が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、水素発生装置は電解質水溶液が入っている電解槽と、前記電解槽内に位置し、電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、前記電解槽内に位置し、電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、第1電極と第2電極との間に位置し、前記第1電極から第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部とを備える。
【0014】
ここで、前記第1電極は前記第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることができる。
【0015】
そして、前記第2電極からの水素発生量を測定する流量測定器をさらに含み、前記制御部は設定値の入力を受け、測定された前記水素発生量と前記設定値とを比較して前記電子量を制御することができる。前記制御部は入力装置を用いて使用者からまたは前記水素発生装置に結合されている燃料電池から必要とする水素量に対応する前記設定値の入力を受けることができる。
【0016】
ここで、前記制御部は前記設定値と測定された前記水素発生量とを比較して、前記水素発生量が前記設定値より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記水素発生量が前記設定値より大きい場合には前記電子量を増加させ、前記水素発生量が前記設定値と同一である場合には前記電子量を維持することができる。
【0017】
また、前記設定値は上限設定値と下限設定値とを含み、前記制御部は前記設定値と測定された前記水素発生量とを比較して、前記水素発生量が前記下限設定値より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記水素発生量が前記上限設定値より大きい場合には前記電子量を減少させ、前記水素発生量が前記下限設定値と前記上限設定値の間にあると前記電子量を維持することができる。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、水素発生量の調節が可能な水素発生装置を備える燃料電池発電システムが提供される。
【0019】
本発明の一実施例による燃料電池発電システムは、電極の間に流れる所定時間の間の電子量を調節することにより水素発生量を調節する水素発生装置と、前記水素発生装置から生成される水素の供給を受け、前記水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料装置と、前記電気エネルギーの供給を受け、予め設定された動作を行う負荷(load)とを備える。
【0020】
ここで、前記水素発生装置は電解質溶液が入っている電解槽と、前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、前記電解槽内に位置し、前記電解槽水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、前記負荷から要求電力の入力を受け、前記燃料電池の出力を測定し前記要求電力と前記出力とを比較して前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部とを備える。前記第1電極は前記第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることができる。
【0021】
前記制御部は前記要求電力と前記出力とを比較して、前記出力が前記要求電力より大きい場合には前記電子量を減少させ、前記出力が前記要求電力より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記出力が前記要求電力と同一である場合には前記電子量を維持することができる。
【0022】
本発明の他の実施例のよる燃料電池システムは、前記燃料電池と前記負荷との間に結合され、前記燃料電池から前記電気エネルギーの供給を受けて充電し、前記負荷が必要とする場合には充電された前記電気エネルギーを提供する充電池をさらに備える。
【0023】
ここで、前記水素発生装置は電解質水溶液が入っている電解槽と、前記電解槽内に位置し、前記電解槽水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、前記充電池の現在電圧を測定し、前記充電池の完充電圧と比較して、前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部とを備える。前記第1電極は前記第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることができる。
【0024】
ここで、前記制御部は前記現在電圧と前記完充電圧とを比較して、前記現在電圧が前記完充電圧より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記現在電圧が前記完充電圧より大きいか、または同一である場合には前記電子量を最小にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による水素発生装置は、別途の消費電力を消耗しながらも、小型化が困難であるBOPユニットの代りに親環境的な物質を用いて水素を発生させることができる。
【0026】
また、電気化学的反応を用いて純粋水素を常温から生成することができ、簡単な構造のシステムであり、費用がチープである。
【0027】
また、従来水素が一定量だけ発生されたこととは異なって、使用者または燃料電池からの要求に応じて電極の間の電流量を調節することにより、発生される水素量を調節することができる。これにより消費電力が随時変化する毛髪用機器などの製品にも燃料電池の使用を可能にさせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、多様に変更することができ、多くの実施例を有することができることは明らかであり、以下、特定実施例を図面に例示し詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解されるべきである。本発明の説明において、係る公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をかえって不明にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0029】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用するが、前記構成要素が前記用語により限定されるものではない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別する目的のみに利用する。例えば、本発明の権利範囲を脱しない限り第1構成要素が第2構成要素と命名されることもあり、同じく第2構成要素が第1構成要素と命名されることも可能である。及び/またはという用語は、関連記載の複数の項目の 組み合い、または 関連記載の複数の項目の中のいずれの項目を含む。
【0030】
ある構成要素が異なる構成要素に"連結されている"とか"接続している"と記載された場合には、その異なる構成要素に直接的に連結されているかまたは接続されている場合でもあり、あるいは、その間に他の構成要素が存在していることも可能であることは理解されるべきである。それに反して、ある構成要素が異なる構成要素に"直接連結されている"とか"直接接続している"と記載された場合には、その間に他の構成要素が存在しないことと理解されるべきである。
【0031】
本願から使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用したものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を表現しない限り複数の意味も含む。本願において"含む"または"有する"などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合いしたものが存在することを指定することにすぎなく、一つまたはその以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合いしたものなどの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解されるべきである。
【0032】
別に定義しない限り、技術的あるいは科学的な用語を含んでここで使用する全ての用語は、本発明が属する技術分野の通常の知識を持った者により一般的に理解されることと同じ意味を有する。一般的に使用する、辞典に定義されている用語は、係る技術の文脈上の意味と一致する意味で解釈しなくてはならなく、本願で明白に定義しない限り、理想的にまたは過度に形式的な意味で解釈することはない。
【0033】
以下、本発明の実施例を添付した図面を参照して詳しく説明する。
【0034】
図2は本発明の一実施例による水素発生装置の概略的な断面図である。
【0035】
水素発生装置200は電解槽210、第1電極220、第2電極230及び制御部240を備える。以下では本発明の理解と説明の便宜のために第1電極220がマグネシウム(Mg)からなり、第2電極230がステンレススチール(Stainless Steel)からなったものを中心に説明する。
【0036】
電解槽210内には電解質(electrolyte)水溶液215が入っている。電解質水溶液215は水素イオンを含んでおり、水素発生装置200は電解質水溶液215に含まれている水素イオンを用いて水素ガスを発生する。
【0037】
電解質水溶液215において、LiCl、KCl、NaCl、KNO、NaNO、CaCl、MgCl、KSO、NaSO、MgSO、AgClなどが電解質として使用できる。
【0038】
また、電解槽210の内部には第1電極220及び第2電極230がある。第1電極220及び第2電極230は、全体またはその一部が電解質水溶液内に浸されている。
【0039】
第1電極220は活性電極である。第1電極220では、マグネシウム(Mg)電極と水(H0)のイオン化エネルギーの差によりマグネシウム電極が水中に電子(e)を出してマグネシウムイオン(Mg2+)に酸化する。この際、生成される電子は第1電線225、制御部240及び第2電線235を経て第2電極230へ移動する。
【0040】
第2電極230は非活性電極である。第2電極230では、水が第1電極220から移動してきた電子を受けて水素に分解される。
【0041】
前述の化学反応式は、下記の化学式2で表される。
(化2)
第1電極220:Mg→Mg2++2e
第2電極230:2HO+2e→H+2(OH)-
全体反応:Mg+2HO→Mg(OH)+H
【0042】
前述した化学反応は、多くの要素により反応速度及び反応効率が決定される。反応速度を決定する要素には、第1電極220及び/または第2電極230の電極面積、電解質水溶液215の濃度、電解質水溶液215の種類、第1電極220及び/または第2電極230の個数、第1電極220と第2電極230との間の連結方法、第1電極220と第2電極230との間の電気的抵抗などがある。
【0043】
前述した要素を変化させると、反応条件に応じて第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量(すなわち、電子量)が変り、化学式2のような電気化学的反応の速度も変わることになる。電気化学的反応の速度が変わると、第2電極230から発生する水素量にも変化が生ずる。
【0044】
よって、本発明の実施例では、第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量を調節することにより生成される水素量を調節できるようになる。これは、下記の数学式1で表されるようにファラデー法則(Fadaday'slaw)により原理的に説明できる。
【数1】

【0045】
ここで、Nhydrogenは1秒間に生成される水素量(mol)であり、Vhydrogenは1分間に生成される水素の体積(ml/min)である。iは電流(C/s)、nは反応電子の個数、Eは電子1モール当たりの電荷(C/mol)を示す。
【0046】
前記の化学式2を参照すると、第2電極220にて水素電子二つが反応するのでnは2であり、電子1モールの電荷は約−96485クーロンである。
【0047】
1分間に生成される水素の体積は、1秒間にに生成される水素量に時間(60秒)と水素1モールの体積(22400ml)とを乗じて算出することができる。
【0048】
若し、燃料電池が2Wシステムで用いられる場合、燃料電池を0.6V及び常温で駆動する際の利用率を約60%と仮定すると水素要求量は42ml/mol程度であり、6Aの電流を必要とする。また、燃料電池が5Wシステムで用いられる場合、水素要求量は105m/mol程度であり、15Aの電流を必要とする。
【0049】
このように水素発生装置200は、第1電極220に連結された第1電線225及び第2電極230に連結された第2電線235に流れる電流量を調節すれば後段に連結される燃料電池が必要とするだけの水素を発生させることが可能になる。
【0050】
水素発生装置200の第2電極230から水素を発生する反応速度を決定する前述した要素のうち、第1電極220と第2電極230との間の電気的抵抗を除いたその他の要素は水素発生装置200を構成する際に決定される要素であって、以後にその要素を変化させることは容易ではない。
【0051】
よって、本発明の実施例で水素発生装置200は、第1電極220と第2電極230とを連結する第1電線225と第2電線235との間に制御部240を備えることにより第1電極220と第2電極230との間の電気的抵抗を調節する。
【0052】
すなわち、前述した数学式1に基づいて、第1電極220と第2電極230との間の電気的抵抗を変化させ第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量を調節することにより燃料電池が必要とするだけの水素を発生させることが可能になる。
【0053】
本発明の実施例によれば、第1電極220はマグネシウム以外にアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などのアルカリ金属系の元素や、鉄(Fe)などの相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることができる。また、第2電極230は、ステンレススチール以外に白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、鉄(Fe)などのように第1電極220を成す金属より相対的にイオン化傾向が小さい金属からなることができる。
【0054】
制御部240は電気化学的反応により第1電極220から生成された電子を第2電極230に伝達する速度、すなわち、電流量を調節する。
【0055】
制御部240は燃料電池と連結されている負荷(load)の必要とする電力の伝達を受けて、必要とする電力に従い第1電極220から第2電極230に流れる電子量をそのまま維持するか、あるいは、増加または減少させる。
【0056】
例えば、図3に示されている携帯電話の電力消耗量を参照して説明する。図3は携帯電話の電力消耗量を示すグラフである。
【0057】
携帯電話は、現在動作するキーやメニュー選択などにより使用用途が異なってくるし、それに応じて電力消耗量も異なってくる。
【0058】
301は番号を押して電話を要請する場合であり、302は相手が電話に出るまで通話連結音を聞いている場合であり、303は通話が繋がって相手と通話する場合であり、304は通話が終了された場合であり、305は通話料金メッセージを転送する場合を示している。それぞれの場合ごとに、携帯電話の内部で動作する部品などに差があるので、図3に示したように電力消耗量が随時変化することになる。
【0059】
よって、制御部240は図3に示された携帯電話のような負荷から、現在必要とする電力をフィードバックで受けて、それに応じて必要とするだけの水素を発生させることにより燃料電池と連結されている負荷に十分な電力を提供する。
【0060】
また、水素発生装置は別途の入力装置を備えて使用者から直接的に必要とする電力または水素量の入力を受けることもできる。
【0061】
制御部240は可変抵抗から構成されて可変抵抗値を変化させることにより第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量を調節したり、オン/オフスィッチから構成されてオン/オフタイミングを調節することにより第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量を調節することができる。
【0062】
本発明において第1電極220及び/または第2電極230は一つまたは二つ以上であってもよい。第1電極220及び/または第2電極230の個数が増加すると、同一時間の間に発生する水素量は増加するのでより短い時間内に所望する水素を発生させることができる。
【0063】
図4は本発明の一実施例による水素発生装置200において、第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量と発生される水素量との関係を示すグラフである。ここで、発生する水素量は1分単位で算出された流量(flowrate)である。これは、燃料電池に使用される場合水素の総発生量ではなく水素の流量が重要な値であるからである。
【0064】
実験条件は下記のとおりである。
第1電極220:マグネシウム(Mg)
第2電極230:ステンレススチール(Stainless Steel)
電極間の距離:3mm
電解質の種類及び濃度:30wt%KCl
電極の使用個数:マグネシウム3ea、ステンレススチール3ea
電極の連結方式:直列連結
電解質水溶液の体積:60ml(excessive condition)
電極の大きさ:24mm×85mm×1mm
【0065】
ただし、図4に示されているグラフを得るための実験では、一対の電極ではなく三対の電極を用いたため、各対の電極相互間の交互作用により水素の流量は一対の電極だけを用いた場合の理論値(前述の数学式1に基づいた値)よりさらに大きい値を有した。
【0066】
しかし、図4を参照しても、第1電極220と第2電極230との間に流れる電流量に応じて発生される水素の流量(ml/min)が決定されることを確認できる。グラフ上ではほとんど線形的な特性を有し、これは前述した数学式1と同じ結果である。
【0067】
図5は本発明の一実施例による水素発生装置200の制御部240の概略的な構成図である。
【0068】
制御部240は流量測定器510に連結される。
【0069】
流量測定器510は水素発生装置200の第2電極230から生成された水素発生量を流量(flow rate)単位で測定する。前述したように本発明の実施例による水素発生装置200を燃料電池に結合して使用するためには水素の総発生量ではなく一定時間の間に所定の水素発生量が維持されることが重要であるので、水素発生量を流量単位、すなわち、ml/min単位で測定する。勿論、その以外にも流量を測定することができれば他の測定単位を用いることもできる。
【0070】
制御部240は水素発生量に関する設定値の入力を受ける。水素発生装置200に別途の入力部(図示せず)が備えられ、使用者が直接入力することもできる。また、水素発生装置200の結合された燃料電池が電力を提供する負荷から必要とする電力の入力を受けることもできる。後者の場合、負荷には、 必要とする電力を水素発生装置200に伝達するための電力要求部が別途に備えられてもよい。
【0071】
制御部240は、入力された設定値と流量測定器510から測定した水素発生量とを比較する。水素発生量が設定値より小さい場合には水素発生量が増加するように第1電極220から第2電極230へ流れる電子量を増加させ、水素発生量が設定値より多い場合には水素発生量が減少するように第1電極220から第2電極230に流れる電子量を減少させる。すなわち、制御部240は第1電極220から第2電極230へ流れる電子量を調節することにより水素発生量を調節する。
【0072】
図6は本発明の他の実施例による水素発生装置200の制御部240及びそれに結合されている燃料電池と負荷とを含む燃料電池発電システムの概略的な構成図である。
【0073】
制御部240は燃料電池100が電力を提供する負荷610に連結される。前述したように、負荷610は現在動作状態に応じて必要とする電力に差が生ずる(図3参照)。よって、制御部240は負荷610の現在動作状態に応じて必要とする電力の入力を受ける。
【0074】
また、制御部240は燃料電池100に連結され燃料電池100の出力の入力を受ける。燃料電池100の出力とは、例えば、水素発生装置200から発生した水素の供給を受ける燃料電池100が負荷610に提供する電力を意味する。前述したように、本発明の実施例による水素発生装置200を燃料電池に結合して使用するためには水素の総発生量ではなく一定時間の間に所定の水素発生量が維持されることが重要であるので、水素発生量による燃料電池100の電力をワット(W)単位で入力を受ける。また、制御部240は燃料電池100に電圧(voltage)を測定し、抵抗を用いて電力に換算する。その他にも最終的に電力を測定することができれば他の測定単位を用いることも可能である。
【0075】
制御部240は、燃料電池100の出力と負荷610が必要とする要求電力とを比較する。燃料電池100の出力が要求電力より小さい場合には水素発生量が増加するように第1電極220から第2電極230へ流れる電子量を増加させ、燃料電池100の出力が要求電力より多い場合には水素発生量が減少するように電子量を減少させる。燃料電池100の出力が要求電力と比較して一定誤差範囲内にあると現在の水素発生量を維持することにする。
【0076】
図7は本発明のさらに他の実施例による水素発生装置200の制御部240及びそれに結合されている燃料電池と負荷とを含む燃料電池発電システムの概略的な構成図である。
【0077】
図7に示す燃料電池発電システムは、図6の燃料電池発電システムに比して充電池710をさらに備える。 燃料電池100は応答性が遅いため、負荷610からピーク電力(peak power)が要求される場合瞬間的に対処することができない。よって、充電池710に電力を予め充電しておくことによりピーク電力に対処できるようになる。
【0078】
制御部240は充電池710の電圧を測定しながら充電池710が完全に充電されるまで水素を引続き生成し、燃料電池100は電圧を引続き供給するようにする。そして、負荷610からの要求電力の応じて充電池710に充電されている電圧を提供し、これにより充電池の電圧が低くなると再び水素発生装置200が水素を生成するようにする。
【0079】
すなわち、制御部240は充電池710の現在電圧と完充電圧とを比較する。完充電圧とは充電池710が完全に充電された場合の電圧を意味する。現在電圧が完充電圧より小さい場合には水素発生量が増加するように第1電極220から第2電極230へ流れる電子量を増加させ、現在電圧が完充電圧より大きいか、または同一である場合には水素発生が停止するように第1電極220から第2電極230へ流れる電子量を最小にする。
【0080】
ここで、充電池710はスーパーキャパシタ(super capacitor)または充電用小型バッテリであることができる。スーパーキャパシタはキャパシタの性能中の電気容量の性能を強化したものであり、電力を充電しながらも必要により充電された電力を放出する。
【0081】
前記では本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の通常の知識を持った者であれば、本発明の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更することができることを理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】燃料電池の作動原理を示す面である。
【図2】本発明の一実施例による水素発生装置の概略的な断面図である。
【図3】本発明の一実施例による水素発生装置における第1電極と第2電極との間に流れる電流量と発生される水素量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施例による水素発生装置における第1電極と第2電極との間に流れる電流量と発生される水素量との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例による水素発生装置の制御部に対する概略的な構成図である。
【図6】本発明の他の実施例による水素発生装置の制御部及びそれに結合されている燃料電池と負荷とを備える燃料電池の発電システムの概略的な構成図である。
【図7】本発明の他の実施例による水素発生装置の制御部及びそれに結合されている燃料電池と負荷とを備える燃料電池の発電システムの概略的な構成図である。
【符号の説明】
【0083】
100 燃料電池
110 燃料極
120 膜
130 空気極
200 水素発生装置
210 電解槽
215 電解質水溶液
220 第1電極
230 第2電極
240 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質水溶液が入っている電解槽と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間に電子量を制御する制御部と
を備える水素発生装置。
【請求項2】
前記第1電極が、第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることを特徴とする請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記第2電極からの水素発生量を測定する流量測定器をさらに備え、
前記制御部が、設定値の入力を受け、測定された前記水素発生量と前記設定とを比較して前記電子量を制御することを特徴とする請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記制御部が、入力装置を用いて使用者からまたは前記水素発生装置に結合されている燃料電池から必要とする水素量に対応する前記設定値の入力を受けることを特徴とする請求項3に記載の水素発生装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記設定値と測定された前記水素発生量とを比較して、前記水素発生量が前記設定値より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記水素発生量が前記設定値より大きい場合には前記電子量を減少させ、前記水素発生量が前記設定値と同一である場合には前記電子量を維持することを特徴とする請求項3に記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記設定値が、上限設定値と下限設定値とを含み、
前記制御部が、前記設定値と測定された前記水素発生量とを比較して、前記水素発生量が前記下限設定値より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記水素発生量が前記上限設定値より大きい場合には前記電子量を減少させ、前記水素発生量が前記上限設定値と下限設定値の間にある場合は前記電子量を維持することを特徴とする請求項3に記載の水素発生装置。
【請求項7】
電極の間に流れる所定時間の間の電子量を調節して水素発生量を調節する水素発生装置と、
前記水素発生装置から生成された水素の供給を受け、前記水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池と、
前記電気エネルギーの供給を受け、予め設定された動作を行う負荷(load)と
を備える燃料電池発電システム。
【請求項8】
前記水素発生装置が、
電解質水溶液が入っている電解槽と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、
前記負荷から要求電力の入力を受け、前記燃料電池の出力を測定し、前記要求電力と前記出力とを比較して前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部と
を備える請求項7に記載の燃料電池発電システム。
【請求項9】
前記第1電極が、第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池発電システム。
【請求項10】
前記制御部が、前記要求電力と前記出力とを比較して、前記出力が前記要求電力より大きい場合には前記電子量を減少させ、前記出力が前記要求電力より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記出力が前記要求電力と同一である場合には前記電子量を維持することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記燃料電池と前記負荷との間に結合され、前記燃料電池から前記電気エネルギーの供給を受けて充電し、前記負荷が必要とする場合には充電された前記エネルギーを提供する充電池をさらに備える請求項7に記載の燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記水素発生装置が、
電解質水溶液が入っている電解槽と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され電子を発生する第1電極と、
前記電解槽内に位置し、前記電解質水溶液に浸され前記電子を受けて水素を発生する第2電極と、
前記充電池の現在電圧を測定し、前記充電池の完充電圧と比較して前記第1電極から前記第2電極へ流れる所定時間の間の電子量を制御する制御部と
を備える請求項11に記載の燃料電池発電システム。
【請求項13】
前記第1電極が、第2電極より相対的にイオン化傾向が大きい金属からなることを特徴とする請求項12に記載の燃料電池発電システム。
【請求項14】
前記制御部が、前記現在電圧と前記完充電圧とを比較して、前記現在電圧が前記完充電圧より小さい場合には前記電子量を増加させ、前記現在電圧が前記完充電圧より大きいか、または同一である場合には前記電子量を最小にすることを特徴とする請求項12に記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−195598(P2008−195598A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312789(P2007−312789)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】