説明

水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法

【課題】水素製造の効率が改善された、水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法を提供する。
【解決手段】水素製造用触媒は、活性金属と、疎水性ゼオライトと、親水性ゼオライトとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未来社会の1つのビジョンとして水素をエネルギー媒体とした水素エネルギー社会の実現が注目されており、いくつかの有力な水素製造方法が考えられている。現在主流の水素製造方法は、天然ガスや液化石油ガス等を原料に、700℃以上の反応温度で、触媒の存在下、水蒸気改質法で水素を製造する。この方法では、原料中に、硫黄などの不純物を含むため、不純物の前処理が必要である他、反応温度が高いため、反応器の構造材に耐熱性が高い材料を用いる必要もある。
【0003】
上記方法での水素製造には多量の熱量、すなわち700℃以上の高温が必要であり、この熱源として化石燃料の燃焼熱を利用している。このため、上記方法での水素製造の際は、水蒸気改質法による、原燃料改質に伴う二酸化炭素の生成の他に、熱源での化石燃料の燃焼により二酸化炭素が生成する。また、熱源に化石燃料の燃焼熱を利用する際は、二酸化炭素の他に、硫黄酸化物といった大気汚染物質が同時に生成する。
【0004】
一方、ジメチルエーテルの水蒸気改質反応による水素製造方法は、原料となるジメチルエーテルが合成燃料であることから天然ガスや液化石油ガスなどに比べ硫黄などの不純物が少ない。また、400℃以下の温度で水素生成が可能であることが示され、従来法と比べ低い温度で水素製造できる可能性が示されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
このような状況下、従来技術と比べ環境負荷の軽減が可能なジメチルエーテルを用いる水素製造方法については、例えば触媒中に固体酸を含む水素製造触媒を用いた水素の製造が試みられている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−10685号公報
【非特許文献1】Fukushimaら、「hydrogen production with steam reforming of dimethyl ether at ether at the temperature less than 300℃」、15th World hydrogen Energy Conference 30D-03(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように触媒中に固体酸を含む水素製造触媒を用いた水素製造方法では、水素製造の効率がいまだ十分とは言い難く、さらなる効率向上のための有効な施策が求められている。また、触媒上に反応を行なう原料成分が偏った割合で存在する場合、副反応の進行による水素製造量の低下や、触媒上へのコークスの付着による触媒性能の低下が起こる。そのため、反応雰囲気を制御し触媒に原料成分を安定に供給することが必要となる。さらに、触媒の活性を長期間にわたり維持することが求められている。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであって、水素製造の効率が改善された、水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による水素製造用触媒は、活性金属と、疎水性ゼオライトと、親水性ゼオライトとを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様による水素製造装置は、活性金属と、疎水性ゼオライトと、親水性ゼオライトとを含む水素製造用触媒が充填され、炭化水素又は含酸素炭化水素から水蒸気改質反応により水素を生成する第1の固定床反応器と、前記第1の固定床反応器と切替えて用いられる、前記触媒が活性を再生する再生処理に供される第2の固定床反応器とを備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の他の態様による水素製造方法は、活性金属と、疎水性ゼオライトと、親水性ゼオライトとを含む水素製造用触媒を固定床反応器又は流動層反応器に充填する充填工程と、前記固定床反応器又は流動層反応器に、炭化水素又は含酸素炭化水素、及び水蒸気を導入する導入工程と、前記固定床反応器又は流動層反応器中で、炭化水素又は含酸素炭化水素と水蒸気とを、200〜400℃の温度範囲で反応させて水素又は水素含有ガスを生成させる生成工程と、前記生成された水素又は水素含有ガスを取り出す取得工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとを含むことにより、触媒への原料成分のさらなる安定供給が実現できるので、水素製造効率の向上した、水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
この実施形態に係る水素製造用触媒は、活性金属と、疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト(以下、「ゼオライト類」と称する。)とから構成される。水素製造用触媒は、活性金属及びゼオライト類を担持する触媒担体(基材)をさらに含むこともできる。
【0014】
この実施形態に用いられる活性金属(成分)は、活性金属自体又は活性金属の化合物、例えば活性金属の酸化物の形態である。また、この活性金属は少なくとも銅(Cu)を含む。銅は、銅(金属)又は銅の化合物、例えば銅の酸化物、銅の合金の形態である。銅の化合物のうち銅の酸化物が好ましい。銅の酸化物は酸化第一銅(CuO)、酸化第2銅(CuO)またはその混合物である。
【0015】
また、活性金属は、使用される原料である炭化水素又は含酸素炭化水素の種類等に応じて、水蒸気改質反応の触媒として作用する他の金属(元素)を、金属としてさらに含むことができる。これらの金属のうち、触媒の活性が良好なため、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)及びチタン(Ti)が好ましく、亜鉛(Zn)がより好ましい。このような金属は、金属(自体)又は金属の化合物、例えば金属の酸化物、金属の合金の形態である。金属の化合物のうち金属の酸化物が好ましい。
活性金属において、このような銅以外の金属が含まれる場合には、金属の配合比(重量比)は、銅(Cu):金属=1:0.01〜10、好ましくは1:0.1〜5、より好ましくは0.5〜2である。
この金属は1種類であっても、また2種類以上であってもよい。この金属が2種以上の場合には、各金属の比率は適宜決めることができ、2種以上の金属の合計の配合比(重量比)は、上記の範囲と同じである。
【0016】
なお、本発明においては、活性金属が酸化アルミニウム(Al)を含む場合には、酸化アルミニウム中のアルミニウム(Al)を活性金属として含むものとする。例えば、活性金属として、市販の活性金属を含む触媒、例えば銅−亜鉛系触媒(CuO、ZnO及びAlから構成される)などを粉砕したものを使用する場合には、この銅−亜鉛系触媒に含まれる金属、例えば銅(Cu)及び亜鉛(Zn)などに加えて、酸化アルミニウム(Al)中のアルミニウム(Al)も活性金属に含まれる。但し、本発明においては、ゼオライト類に含まれる酸化アルミニウム(Al)中のアルミニウム(Al)は、活性金属に含まないものとする。また、本発明においては、触媒担体(基材)中の金属、例えば酸化アルミニウム(Al)中のアルミニウム(Al)などは、活性金属に含まないものとする。
【0017】
ゼオライト類と物理的に混合して触媒を調製するために、活性金属が粉体(例えば、銅−亜鉛系触媒を粉砕して得られた粉体)である場合には、活性金属のレーザー法により測定される平均粒径は、適宜決めることができる。例えば、平均粒径は10〜10000μmの範囲内である。平均粒径は、所定の平均粒径のゼオライト類と物理的に混合して流動層触媒層を構成する触媒を調製できるため、50〜5000μmの範囲が好ましく、100〜1000μmの範囲がより好ましい。また、活性金属の比重(ゼオライト類と混合する前の比重)は、0.5g/cm以上であり、好ましくは1.0g/cm以上であり、より好ましくは1.5g/cm以上である。
【0018】
活性金属の配合量は、使用される原料の種類等に応じて適宜決めることができる。触媒の反応効率を考慮すると、活性金属の配合量が、金属として触媒全量100重量%中5重量%以上が好ましい。触媒の反応効率が良好なため、40〜90重量%の範囲がより好ましく、50〜90重量%がよりさらに好ましく、60〜80重量%の範囲が最も好ましい。また、活性金属中の銅の配合量は、触媒全量100重量%中5重量%以上が好ましい。
【0019】
次に、この実施形態に用いられるゼオライト類(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト)について説明する。一般的には、疎水性とは水との相互作用が小さく水との親和性の小さい性質をいい、親水性とは水との相互作用が大きく水との親和性の大きい性質をいう。本発明においては、水との親和性の小さい性質を有するゼオライトを疎水性ゼオライトといい、水との親和性の大きい性質を有するゼオライトを親水性ゼオライトという。また、本発明において好ましくは、疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトを、SiO/Alのモル比(Si/Al比)で規定する。この場合、N. Y. Chen,“J. Phys. Chem.”, 80, 60(1976)に記載されているように、非極性溶媒(シクロヘキサン)を用いて、水とシクロヘキサンの吸着性を評価し、シクロヘキサンの方が水よりも吸着選択性が高い(吸着容量が多い)場合、すなわちSiO/Alのモル比が15以上の場合に疎水性ゼオライトとし、SiO/Alのモル比が15未満の場合に親水性ゼオライトと規定する。
【0020】
この実施形態に用いられる疎水性ゼオライトは、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができる。疎水性ゼオライトは、天然のものであっても、人工的に合成したものであってもよい。疎水性ゼオライトとしては、ZSM類、モルデナイト類、シリカライト類、Beta型ゼオライト類などが挙げられる。また、これらがアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む場合、それらを他のカチオンで置き換えた各種ゼオライト等も用いることができる。さらに、親水性ゼオライトを後処理により骨格内Alを除去したゼオライト等も用いることができる。
【0021】
疎水性ゼオライトのレーザー法により測定される平均粒径は、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができる。平均粒径は、例えば0.1〜100μm、特には1〜20μmの範囲内で決めることができる。また、疎水性ゼオライトの比表面積は、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができ、例えばBET吸着法で100〜1000m/gの範囲とすることができる。さらに、疎水性ゼオライトの比重は、例えば、0.1〜3.0g/cmの範囲内である。疎水性ゼオライトの比重が小さいほど活性金属との比重差が大きくなり、後述のようにゼオライト類として再生処理ができるため好ましい。疎水性ゼオライトの比重は、好ましくは0.1〜1.0g/cm、より好ましくは0.1〜0.5g/cmの範囲内である。なお、この疎水性ゼオライトの比重は、活性金属(成分)(例えば、活性金属の酸化物を粉砕したもの)と物理的な混合をする際には、それほど増加しないが、例えば、圧縮成形により触媒を調製する場合には、圧縮の条件などに応じて、増加する。
【0022】
疎水性ゼオライトは、SiO/Alのモル比が40以上の場合には、疎水性ゼオライトが原料となる炭化水素又は含酸素炭化水素をより吸着(及び脱離)できるため好ましい。また、疎水性ゼオライトは、いわゆるアンモニア昇温脱離(TPD)法による酸点量が、NH吸着量で100〜2000μmol/gの範囲であることが、触媒反応がより効率的に進むため好ましい。
【0023】
疎水性ゼオライトを製造する場合には、例えばシリカライトのように高Si/Al比ゼオライトを直接合成する方法や、ゼオライトを後処理により骨格内Alを除去する方法、さらに表面シラノール基で修飾する方法などが挙げられる。骨格内Alを除去する方法としては、NH型又はH型ゼオライトを高温下で水熱処理後酸処理を繰り返す方法や、EDTA水溶液中で処理する方法などが挙げられる。また、表面シラノール基の修飾方法としては、アルキルシランやアルコールとの反応によるアルキル基の導入などが挙げられる。また、この実施形態に用いられる疎水性ゼオライトは1種であっても、2種以上を用いてもよい。
【0024】
また、疎水性ゼオライトは、原料である炭化水素又は含酸素炭化水素を吸着(及び脱離)する能力を有するが、原料である炭化水素又は含酸素炭化水素の水蒸気改質反応における反応温度の範囲において、炭化水素又は含酸素炭化水素をより吸着(及び脱離)する能力を有することが、触媒による反応効率が向上するため好ましい。例えば、原料が含酸素炭化水素(例えば、ジメチルエーテル)である場合には、ジメチルエーテルと水蒸気とのいわゆる水蒸気改質反応の温度範囲である200〜400℃の温度範囲でジメチルエーテルをより吸着(及び脱離)する能力を有することが好ましい。
このように、水素製造用触媒中の疎水性ゼオライトが、原料である炭化水素又は含酸素炭化水素(例えば、ジメチルエーテル)を吸着(及び脱離)する能力を有するので、触媒(特に触媒の酸点)に、より安定して原料成分を供給することができる。
【0025】
次に、この実施形態に用いられる親水性ゼオライトについて説明する。この実施形態に用いられる親水性ゼオライトは、天然のものであっても、人工的に合成したものであってもよい。また、親水性ゼオライトの構造(種類)は、用途に応じていずれのものも使用することができる。例えば、親水性ゼオライト としては、A型、X型、Y型、L型ゼオライト類などが挙げられる。また、これらがアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む場合、それらを他の金属イオンで置き換えた各種ゼオライト等も用いることができる。親水性ゼオライトは、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができる。
【0026】
親水性ゼオライトのレーザー法により測定される平均粒径は、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができる。平均粒径は、例えば0.1〜100μm、特には1〜20μmの範囲内で決めることができる。また、親水性ゼオライトの比表面積は、対象となる原料の種類等に応じて適宜決めることができ、例えばBET吸着法で100〜1000m/gの範囲とすることができる。さらに、親水性ゼオライトの比重は、例えば、0.1〜3.0g/cmの範囲内である。親水性ゼオライトの比重が小さいほど活性金属との比重差が大きくなり、後述のようにゼオライト類として再生処理ができるため好ましい。親水性ゼオライトの比重は、好ましくは0.1〜1.0g/cm、より好ましくは0.1〜0.5g/cmの範囲内である。なお、この親水性ゼオライトの比重は、活性金属と物理的な混合をする際には、それほど増加しないが、例えば、圧縮成形により触媒を調製する場合には、圧縮の条件などに応じて、増加する。
【0027】
親水性ゼオライトのSiO/Alのモル比が15未満の場合には、親水性ゼオライトが水分子(例えば、水蒸気)をより吸着(及び脱離)できるため好ましい。また、親水性ゼオライトは、いわゆるアンモニア昇温脱離(TPD)法による酸点量が、NH吸着量で100〜2000μmol/gの範囲であることが、触媒反応がより効率的に進むため好ましい。また、親水性ゼオライトは、例えば水熱合成法により合成することができる。なお、この実施形態に用いられる親水性ゼオライトは、1種であっても、2種以上を用いてもよい。
【0028】
親水性ゼオライトは、水分子(例えば、水蒸気)を吸着(及び脱離)する能力を有するが、原料である炭化水素又は含酸素炭化水素の水蒸気改質反応における反応温度の範囲において、水分子をより吸着(及び脱離)する能力を有することが、触媒による反応効率が向上するため好ましい。例えば、原料が含酸素炭化水素(例えば、ジメチルエーテル)である場合には、ジメチルエーテルと水蒸気とのいわゆる水蒸気改質反応の温度範囲である200〜400℃の温度範囲で水分子をより吸着(及び脱離)する能力を有することが好ましい。
このように、水素製造用触媒中の親水性ゼオライトが、水分子(例えば、水蒸気)を吸着(及び脱離)する能力を有するので、触媒(特に触媒の酸点)に、より安定して水分子(例えば、水蒸気)を供給することができる。
【0029】
次に、この実施形態に用いられる疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトの配合量について説明する。疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトの配合量は、使用される原料の種類等に応じてそれぞれ適宜決めることができる。疎水性ゼオライトの配合量は、原料の良好な転化率が得られるため、疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとの合計量100重量%中30重量%以上が好ましく、35重量%以上がより好ましく、40重量%がよりさらに好ましく、50重量%以上が最も好ましい。また、疎水性ゼオライトの配合量の上限値としては、時間経過後における触媒活性の低下傾向を考慮すると、疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとの合計量100重量%中90重量%以下が好ましい。すなわち疎水性ゼオライトの配合量は疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとの合計量100重量%中30〜90重量%の範囲が好ましく、35〜90重量%の範囲がより好ましく、40〜90重量%の範囲がよりさらに好ましく、50〜90重量%の範囲が最も好ましい。
【0030】
また、疎水性ゼオライトの配合量は触媒全量100重量%中1重量%以上である。触媒の全量100重量%中5重量%以上であることが、原料である炭化水素又は含酸素炭化水素をより吸着(及び脱離)するため、好ましい。また、親水性ゼオライトの配合量は触媒全量100重量%中1重量%以上である。触媒の全量100重量%中1重量%以上であることが、水分子をより吸着(及び脱離)するため、好ましい。
さらに、ゼオライト類(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト)の配合量は、使用される原料の種類等に応じて適宜決めることができる。例えば、触媒全量100重量%中2重量%以上、好ましくは5〜50重量%、特には、5〜20重量%とすることができる。
【0031】
この実施形態に係る水素製造用触媒は、さらに担体として触媒担体(基材)を含むこともできる。触媒担体を使用する場合には、活性金属及びゼオライト類を触媒担体に担持させることができる。触媒担体としては、活性金属及びゼオライト類を担持できる基材であればどのような形態のものも使用することができる。例えば、セラミックス多孔体、多孔質ビーズ、セラミックハニカム、金属ハニカム等を挙げることができる。セラミックス多孔体は、例えばアルミナ、セリア、ジルコニア、窒化アルミナ、チタニア、炭化珪素、シリカ及びマグネシアのうちから選択される少なくとも1つ以上の金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物から構成される。触媒担体を用いる場合には、その配合量は触媒全量100重量%中10重量%以下、好ましくは、5重量%以下、特には1重量%以下である。なお、本発明においては、これらの触媒担体中に含まれる金属は、活性金属には含まない。
【0032】
この実施形態に係る水素製造用触媒の形態については種々の形態を用いることができる。例えば、打錠成形し粉砕後適当な範囲に整粒した触媒、圧縮成形した触媒、適当なバインダーを加え押し出し成形した触媒、粉末状触媒などを用いることができる。これらのうち、流動層触媒層として使用できる粉末状の触媒が、触媒の循環による連続した再生が可能なため好ましい。
【0033】
水素製造用触媒が粉体(粒子)の場合には、レーザー法により測定される平均粒径は、使用される原料の種類、触媒が充填される反応器の種類等に応じて適宜決めることができる。例えば、触媒が固定床反応器に充填されて使用される場合には、平均粒径200μm〜5mmの範囲内で決めることができ、触媒が流動層反応器に充填されて使用される場合には、平均粒径1〜1000μmの範囲内、特には、5〜500μmの範囲内で決めることができる。
【0034】
次に、この実施形態に係る水素製造用触媒の製造方法について説明する。触媒は、活性金属をゼオライト類に担持させる方法、活性金属とゼオライト類とを物理的に混合させる方法、さらには、触媒担体(基材)に活性金属とゼオライト類とを担持させる方法などにより調製できる。まず活性金属をゼオライト類に担持させる触媒の製造方法について説明する。活性金属をゼオライト類に担持させる方法は、圧縮成形、含浸法、ゾルゲル法によるゼオライト類への担持、バインダーによる成形、ゼオライトのカウンターカチオンとしての混合などのいずれの方法を用いることができる。例えば、ゾルゲル法に基づいて説明する。まず、ゼオライト類を固体酸として調製し、これに活性金属の硝酸塩を含む溶液、例えば硝酸銅及び硝酸亜鉛を含む水溶液を加える。その後、例えば50〜80℃の温度に加熱し、さらに乾燥炉で100℃の温度で乾燥して水分を蒸発させた後、例えば450〜500℃の温度で、1〜5時間焼成して硝酸を分解除去することにより、ゼオライト類に活性金属(銅及び亜鉛)が担持された触媒を調製することができる。
【0035】
次に、活性金属をゼオライト類に担持させない物理的な混合による触媒の製造方法について説明する。まず活性金属を含む物質(触媒)、例えば市販の銅−亜鉛系触媒(メタノール触媒)をボールミルなどにより、レーザーにより測定される平均粒径が所定の平均粒径、例えば100〜500μmとなるまで粉砕する。このように粉砕された活性金属を含む物質と、それぞれ所定の平均粒径を有するゼオライト類(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト)とを、物理的に混合し水素製造用触媒を調製する。物理的な混合は、例えば、容器内に導入された活性金属(例えば、活性金属を含む物質の粉体)及びゼオライト類を攪拌して行う。なお、粉砕された活性金属を含む物質を使用する場合には、分級して整粒した後に使用することもできる。
【0036】
上記のように、物理的な混合により流動層触媒層を構成する触媒を製造する場合には、活性金属の比重とゼオライト種の比重差が異なると、後述する触媒の再生処理において、活性金属とゼオライト種とを分離することができ、活性金属とゼオライト種とをそれぞれに最適な条件で再生処理することができる。
【0037】
また、活性金属及びゼオライト類を触媒担体に担持させて触媒を調製する方法は、例えば上記と同様のゾルゲル法による触媒担体への担持などが挙げられる。
【0038】
この実施形態に係る水素製造用触媒を用いての水素製造に用いられる原料としては、炭化水素又は含酸素炭化水素が挙げられる。具体的には、炭化水素としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタンなどが挙げられる。含酸素炭化水素としては、エーテル系炭化水素やアルコール系炭化水素が挙げられる。エーテル系炭化水素としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど、アルコール系炭化水素としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。これらのうち、含酸素炭化水素、特にエーテル系炭化水素が好ましく、中でもジメチルエーテルが最も好ましい。なお、上記の原料は、水素、水、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどを含んでいても使用可能である。
【0039】
次に、この実施形態に係る水素製造用触媒を用いる水素の製造について説明する。原料として含酸素炭化水素(ジメチルエーテル)を用いる場合に基づいて説明する。ジメチルエーテルを原料とする場合には、反応器中に充填された水素製造用触媒により、下記の水蒸気改質反応
CHOCH + HO → 2CHOH (1)
2CHOH + 2HO → 6H + 2CO (2)
により、全体として下記の反応
CHOCH + 3HO → 6H + 2CO (3)
により水素を製造することが可能となる。
なお、水素の製造(生成)とは、原料(燃料)ガスが全て水素に変換される場合だけでなく、水素量が増加したいわゆる水素リッチな原料(燃料)改質ガスを製造することも含む。上記の反応について、水素製造触媒のうち、ゼオライト類が所定の酸点において主として上記(1)の反応を行うと想定され、活性金属が所定の酸点(活性点)において主として上記(2)の反応を行うと想定される。
【0040】
上記の反応において、導入される水蒸気(スチーム)と原料との混合(配合)割合は、使用される原料の種類に応じて決められ、水蒸気(スチーム)と原料のモル比で規定される。上記のように原料としてジメチルエーテルを使用する場合には、上記式(3)より量論的には、水蒸気3モルとジメチルエーテル1モルが反応する。この場合、水蒸気とジメチルエーテルのモル比は、3:1〜7:1、好ましくは3:1〜5:1と規定できる。
【0041】
原料(ジメチルエーテル)及び水蒸気の空間速度(SV)は、原料の種類などに応じて決めることができる。例えば、GHSVで10〜100000h−1、特には100〜10000h−1である。
【0042】
反応温度は、使用される原料の種類によって適宜決めることができ、例えば、200〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜350℃である。反応温度が200℃より低いと、高い原料(ジメチルエーテル)の転化率が得られず、400℃より高いと副反応により水素の生成量が低下するおそれがあるからである。
【0043】
上記の反応において、疎水性ゼオライトによりジメチルエーテルが吸着(及び脱離)され、そして親水性ゼオライトにより水分子(例えば、水蒸気)が吸着(及び脱離)されるので、ゼオライト類の所定の酸点において、ジメチルエーテルからメタノールへの加水分解がより促進される。また、同時に疎水性ゼオライトのジメチルエーテルを吸着(及び脱離)する能力及び/又は親水性ゼオライトの水分子(例えば、水蒸気)を吸着(及び脱離)する能力により、反応雰囲気の変化に対応して、反応に有利なガス組成(ジメチルエーテル及び水分子(水蒸気))をより一定して供給することができる。例えば、触媒の酸点(活性点)において、ジメチルエーテルの量が減少した場合には、疎水性ゼオライトより減少した量のジメチルエーテルが供給される。また、親水性ゼオライトの水分子(例えば、水蒸気)を吸着(及び脱離)する能力により、主として活性金属上の酸点(活性点)で行なわれるメタノールの加水分解反応がより促進される。
【0044】
次に、この実施形態に係る水素製造用触媒を用いて水素を製造する水素製造装置について図を参照して説明する。図1は、この実施形態に用いられる第1の水素製造装置の要部構成を模式的に示す図である。図2は、第1の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を示す図である。図2では、加熱部を省略して記載する。
【0045】
図1及び図2に示すように、水素製造装置1aは、水蒸気改質器として機能する第1の固定床反応塔2a及び第2の固定床反応塔2bから構成される。第1の固定床反応塔2a及び第2の固定床反応塔2bは、固定床触媒層を構成する水素製造用触媒が充填され、水蒸気改質部として機能する第1の固定床反応器(固定床反応管)3a及び第2の固定床反応器(固定床反応管)3bをそれぞれ備える。図1では、第1の固定床反応塔2a及び第2の固定床反応塔2bは、燃料(例えば、炭化水素)と空気とを燃焼するバーナー4a,4bをそれぞれ備える。バーナー4a,4bにより燃焼された燃焼ガスは、第1の固定床反応器3a及び第2の固定床反応器3bの外壁部を通って、第1の固定床反応器3a及び第2の固定床反応器3bをそれぞれ加熱することにより加熱部5a,5bを構成する。図1では、燃焼ガスがこれらの固定床反応器3a,3bの外壁部をそれぞれ通ることにより加熱部を構成しているが、これらの固定床反応器3a,3b中に、原料ガス及び水蒸気(以下、「混合原料ガス」と称する。)とは混合しないように熱伝導性の良好な材料で作られた配管を配置し、その配管中に燃焼ガスを通すことにより加熱してもよい。また、水素製造装置はCO変成器6や、CO除去器7を備えることも可能である。
【0046】
第1の固定床反応塔2aの第1の固定床反応器3aと第2の固定床反応塔2bの第2の固定床反応器3bは、原料ガス供給管8a,8b、水蒸気供給管9a,9b及び再生ガス供給管10a,10bによりそれぞれ原料ガス、水蒸気及び再生ガスが供給される。原料及び水蒸気は予め混合されて混合原料ガスとし、混合原料ガス供給管11a,11bにより供給することもできる。再生ガスは酸素含有ガス及び/又は水素含有ガスである。酸素含有ガス及び水素含有ガスは、酸素含有ガス供給管12a,12b及び水素含有ガス供給管13a,13bによりそれぞれ供給される。これらの供給管、すなわち原料ガス供給管8a,8b、水蒸気供給管9a,9b及び再生ガス供給管10a,10bなどのバルブ弁の開閉操作により混合原料ガスの供給と再生ガスの供給との切替が可能である。
【0047】
次に、この第1の水素製造装置による水素の製造及び触媒の活性の再生について図1及び図2に基づいて説明する。まず、水素の製造について説明する。図2に示すように、第1の固定床反応器2aにおいて、固定床触媒層を構成(形成)する触媒が充填された第1の固定床反応器3a中に、原料ガス(例えばジメチルエーテル)に水蒸気を混合した混合原料ガスを導入し、水蒸気改質反応により水素及び/又は水素リッチな原料改質ガスを製造する。原料と混合する水蒸気は、固定床反応塔から排出される排気ガスの熱量を、熱交換器を用いて水から水蒸気に変換してもよい。固定床触媒層を構成する触媒の形状は、いずれの形状でもよく、例えば圧縮成形により得られる一片が0.5cmの立方体の形状の触媒を使用できる。触媒が粉体の場合には、平均粒径は、混合原料ガスの空間速度(SV)などに応じて適宜決めることができ、レーザー法により測定される平均粒径は、例えば200〜1000μmの範囲内である。また、水蒸気と原料とのモル比は、例えば3:1であり、混合原料ガスの空間速度はGHSVで100〜100,000h−1である。
【0048】
水蒸気改質反応の温度範囲は、使用する原料の種類によって決めることができ、例えば、ジメチルエーテルを原料とする場合には200〜400℃の温度範囲である。第1の固定床反応塔2aで水蒸気改質反応により生成した水素ガス及び/又は水素リッチな原料改質ガスは、生成ガスとして第1の固定床反応塔2aから取り出される。なお、図1及び図2では、混合原料ガスは、第1の固定床反応塔2aの下側から導入されているが、上側から導入されてもよい。このように水素を製造する工程を反応工程という。
【0049】
次に、触媒の活性を再生する工程について説明する。図2に示すように、第2の固定床反応塔2bにおいて、触媒の活性の再生処理が行われる。水蒸気改質反応に用いられる触媒は、水素製造反応において副生物として生成する炭素の析出、例えば炭素の沈着により触媒の機能が劣化し、また触媒の寿命が低下する。そのため触媒の活性の再生処理が必要となる。触媒の活性の再生の方法は、まず第2の固定床反応器3bへ再生ガスとしての酸素含有ガスを酸素含有ガス供給管12bから導入し、触媒を加熱して酸化する。この加熱により、炭素(C)が下記のいずれかの反応
C + O → CO (4)
C + 1/2O → CO (5)
により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素に変換できるため、触媒から炭素を除去できる。酸素含有ガスとしては、例えば、空気、酸素含有不活性ガス、酸素が挙げられる。これらのうち空気が好ましい。酸化の条件は、触媒の劣化の程度などにより適宜決めることができる。例えば、酸化温度は、500℃以下、好ましくは400〜500℃、特には450℃である。また酸化時間は、触媒の劣化の程度、酸化時間などにより適宜決められるが、例えば1〜3時間、特に2時間である。なお、酸素含有ガスの体積供給速度は、例えば酸素の場合には0.05〜30dm/h程度である。
【0050】
上記の酸化処理の後、第2の固定床反応塔2b中の第2の固定床反応器3bへ再生ガスとしての水素含有ガスを水素含有ガス供給管13bから導入し、触媒を加熱して還元する。この還元により、炭素(C)が、下記の反応
C + 2H → CH (6)
によりメタンに変換できるので、触媒から炭素を除去できる。
水素含有ガスとしては、例えば、水素含有不活性ガス、水素が挙げられる。これらのうち水素が好ましい。還元の条件は、触媒の劣化の程度などにより決めることができる。例えば、還元温度は400℃以下、好ましくは300〜400℃、特には350℃である。また、還元時間は、触媒の劣化の程度などによりきめられるが、例えば1〜3時間、特には2時間である。なお、水素含有ガスの体積供給速度は、例えば水素の場合には0.5〜300dm/h程度である。このように触媒の活性を再生させる工程を触媒再生工程という。
【0051】
水素を製造する反応工程を行う第1の固定床反応塔2aと触媒再生工程を行う第2の固定床反応塔2bとは、定期的に、また触媒の失活時などに、第1の固定床反応器3aと第2の固定床反応器3bとに接続された原料ガス供給管8a,8b、水蒸気供給管9a,9b及び再生ガス供給管10a,10bなどのバルブ弁の開閉操作により切替えることが可能である。
【0052】
また、水素製造装置1aは、第1の固定床反応塔2a及び第2の固定床反応塔2bの他に、さらに他の固定床反応塔、例えば第3の固定床反応塔(図示せず)などを備えることも可能である。この場合、水素を製造する反応工程を行なう固定床反応塔と、触媒再生工程を行なう固定床反応塔はそれぞれ、目的に応じて任意の数で増加させることができる。
【0053】
このように、上記の反応工程と触媒再生工程を定期的に、若しくは触媒失活時に切り替えることにより、触媒の活性を、長時間にわたり維持することができ、触媒寿命の長期化を図ることができる。さらに、固定床反応器中に充填された触媒の交換も固定床反応塔を1塔ずつ触媒の交換ができるので、水素製造装置全体を止めることなく作業でき、プラントの連続運転が可能となる。
【0054】
次に、この実施形態に用いられる第2の水素製造装置について説明する。第2の水素製造装置は、主として第1の水素製造装置における第1の固定床反応塔及び第2の固定床反応塔が、第1の流動層反応塔及び第2の流動層反応塔(再生塔)にそれぞれ置換され、これらの反応塔が触媒粒子管で接続されたものである。図3は、第2の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を示す図である。図3では、図2と同様に加熱部を省略して記載する。
図3に示すように、水素製造装置1bは、水蒸気改質器として機能する第1の流動層反応塔21a及び触媒の活性を再生する第2の流動層反応塔(以下、「再生塔」と称する。)21bから構成される。第1の流動層反応塔21aは、流動層触媒層を構成(形成)する水素製造用触媒が充填され、水蒸気改質部として機能する第1の流動層反応器22aを備える。再生塔21bは、触媒の活性を再生する第2の流動層反応器(以下、「再生反応器」と称する。)22bを備える。なお、図3では、第1の流動層反応器22aが全体として第1の流動層反応塔21aを構成する。同様に、再生反応器21bが全体として再生塔21bを構成する。水素製造装置1bは、第1の流動層反応器22a中の流動層触媒層の一部を再生塔21b中の再生反応器22bに移動させる第1の触媒粒子管23aを備える。また、水素製造装置1bは、再生反応器22b中の触媒の一部を第1の流動層反応塔器22aに移動させる第2の触媒粒子管23bを備える。
【0055】
次に、第2の水素製造装置による水素の製造及び触媒の再生について説明する。まず、水素の製造について説明する。図3に示すように、第1の流動層反応塔21aにおいて、流動層触媒層を構成する触媒が充填された第1の流動層反応器22a中に、混合原料ガス供給管24により混合原料ガスを導入し、水蒸気改質反応により水素及び/又は水素リッチな原料改質ガスを製造する。第1の流動層反応器22aに充填される流動層触媒層を構成する触媒、すなわち浮遊状態の流動層に形成された粒子状の触媒の平均粒径は、混合原料ガスの空間速度(SV)などに応じて適宜決めることができる。例えば、レーザー法により測定される平均粒径は、1〜1000μmの範囲内である。また、水蒸気と原料のモル比は、例えば3:1であり、混合原料ガスの空間速度はGHSVで100〜100,000h−1である。
【0056】
水蒸気改質反応の温度範囲は、使用する原料の種類によって適宜決めることができ、例えば、ジメチルエーテルを原料とする場合には200〜400℃の温度範囲である。第1の流動層反応塔21aで水蒸気改質反応により生成した水素ガス及び/又は水素リッチな原料改質ガスは、生成ガスとして第1の流動層反応塔21aから取り出される。
【0057】
次に触媒の活性の再生について説明する。図3に示すように、第1の流動層反応器22a中に充填された触媒は、浮遊状態の流動層に形成された粒子状の触媒、例えば微細な粒径の触媒である。そのため、触媒の一部は、第1の触媒粒子管23aを介して再生反応器22b中へ連続的に、または定期的に移動させること可能である。この移動は、例えばポンプ(図示せず)を使用して圧送することができる。また、例えば触媒の平均粒径の調整又は混合原料ガスの空間速度の調整などにより、触媒自体が移動できるよう調整することも可能である。第1の流動層反応器22aから再生反応器22b中に移動させる触媒の量(割合)は適宜決めることができる。このようにして、再生反応器22b中に導入された触媒を、再生ガス(酸素含有ガス及び/又は水素含有ガス)を用いて再生する。
【0058】
酸化処理及び/又は還元処理による触媒の再生のための再生処理の条件は、触媒の平均粒径や、第1の流動層反応器22aから再生反応器22bに移動する触媒の量等により適宜決めることができる。例えば、酸素含有ガス供給管25により供給される酸素含有ガスによる酸化の酸化温度は、500℃以下、好ましくは400〜500℃、特には450℃である。また酸化時間は、触媒の劣化の程度、酸化時間などにより決められるが、例えば1〜3時間、特には2時間である。なお、酸素含有ガスの体積供給速度は、例えば酸素の場合には0.05〜30dm/h程度である。
さらに、水素含有ガス供給管26により供給される水素含有ガスによる還元処理を行う場合には、例えば還元温度は、400℃以下、好ましくは300〜400℃、特には350℃である。また、還元時間は、触媒の劣化の程度などによりきめられるが、例えば1〜3時間、特に2時間である。水素ガスの体積供給速度は、例えば水素の場合には0.5〜30dm/h程度である。
【0059】
活性が再生された再生触媒は、第2の触媒粒子管23bを介して第1の流動層反応塔21aの流動層反応器22a中に移動させる。この移動も、例えばポンプ(図示せず)を使用して圧送することができ、また再生ガスの体積供給速度の調整などにより、触媒自体が移動できるように調整することも可能である。
【0060】
また、触媒の活性の再生は、再生塔21bの再生反応器22b中に充填された触媒の活性の再生処理を、酸素含有ガスを用いる酸化処理のみ行い、その後、触媒を第1の流動層反応塔21aの第1の流動層反応器22a中に第2の触媒粒子管23bを介して移動させ、水蒸気改質反応により生成した水素含有ガスを用いて還元処理により触媒の再生処理を行ってもよい。この場合、触媒の再生処理に必要とする時間を短縮することができる。
【0061】
図3では、水素製造装置1bは、第1の流動層反応塔21aと第2の流動層反応塔(再生塔)21bが一対で構成される。水素製造装置1bは、さらに別の流動層反応塔、例えば、第3の流動層反応塔(図示せず)、第4の流動層反応塔(再生塔)(図示せず)など備えて構成させることも可能である。この場合、水素を製造する反応工程を行なう流動層反応塔と、触媒再生工程を行なう再生塔は、目的に応じてそれぞれ任意の数で増加させることが可能である。
【0062】
このように、流動層触媒層を構成する触媒を用いることにより、触媒の一部を第1の流動層反応塔から第2の流動層反応塔(再生塔)へ、また、第2の流動層反応塔から第1の流動層反応塔へ連続的に移動させることができるので、操業を停止することなく、連続的に安定して水素製造を行うことが可能となる。また、触媒の活性を、長時間にわたり維持することができ、触媒寿命の長期化を達成できる。
【0063】
次に、この実施形態に用いられる第3の水素製造装置について説明する。第3の水素製造装置は、主として第2の水素製造装置における第2の流動層反応塔(再生塔)が後述する再生塔群に置換されたものである。図4は、第3の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を示す図である。図4では、図3と同様に加熱部を省略して記載する。
水素製造装置1cは、水素を製造する反応工程を行なう反応塔と触媒の再生を行なう再生工程を行なう再生塔群とから構成される。図4に示すように、水素製造装置1cは、反応塔として、水蒸気改質器として機能する流動層反応塔31を備え、再生塔群として、再生処理が必要な触媒を活性金属とゼオライト類に分離する分離器(分離塔)32と、ゼオライト類の再生処理を行うゼオライト再生塔33と、活性金属を再生する活性金属再生塔34と、再生されたゼオライト類と再生された活性金属とを物理的に混合して触媒を再度調製する触媒再生器として機能する混合器(混合塔)35とを備える。流動層反応塔31は、水蒸気改質部として機能し、流動層触媒層を構成する触媒が充填される流動層反応器36を備える。また、水素製造装置1cは、流動層反応塔31と分離器32、分離器32とゼオライト再生器33、分離器32と活性金属再生器34、ゼオライト再生器33と混合器35、活性金属再生器34と混合器35、及び混合器35と流動層反応塔31を、それぞれ接続する移動管(配管)37a〜37fを備える。移動管37a及び37fは触媒を、移動管37b及び37dはゼオライト類を、そして移動管37c及び37eは活性金属をそれぞれ移動させる。
【0064】
次に、第3の水素製造装置による水素の製造及び触媒の再生について説明する。まず、水素の製造について説明する。図4に示すように、流動層反応塔31において、流動層触媒層を構成する触媒が充填された流動層反応器36中に、混合原料ガス供給管38により混合原料ガスを導入し、水蒸気改質反応により水素及び/又は水素リッチな原料改質ガスを製造する。混合原料ガスの水蒸気と原料のモル比は、例えば3:1であり、混合原料ガスの空間速度はGHSVで100〜100,000h−1であり、反応温度は200〜400℃である。
【0065】
次に、水素製造装置1cに用いられる流動層触媒層を構成する触媒について説明する。この触媒は、活性金属及びゼオライト類(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト)の少なくとも一方を、それぞれ適切な粒径(平均粒径)に調整した後、物理的に混合して調製されたものである。この触媒のレーザー法により測定される平均粒径は、混合原料ガスの供給速度、すなわち空間速度(SV)などに応じて適宜決めることができ、例えば、平均粒径は、10〜10000μmの範囲内、好ましくは50〜5000μmの範囲内で決められる。また、この触媒を構成する活性金属の比重は、0.5g/cm以上であり、好ましくは1.0g/cm以上であり、より好ましくは1.5g/cm以上である。またゼオライト類の比重は、例えば0.1〜3.0g/cmの範囲内であり、好ましくは0.1〜1.0g/cm、より好ましくは0.1〜0.5g/cmの範囲内である。活性金属とゼオライト類の比重差が大きいほど比重差を利用するサイクロン分離器による分離が良好に行なわれるため好ましく、活性金属とゼオライト類の比重差が0.5g/cm以上の場合より好ましい。なお、活性金属とゼオライト類の配合比(重量)は適宜決めることができる。
このように、この触媒は、後述する触媒の活性の再生処理において、活性金属とゼオライト類とを分離できるため、活性金属とゼオライト類を、それぞれ再生に最も適する条件で再生することができ、それぞれ再生された活性金属とゼオライト類を混合器35により物理的に混合して再度触媒の調製を行なうことができる。
【0066】
次に触媒の活性の再生について説明する。図4に示すように、流動層反応器36中に充填された触媒は流動層触媒層を形成する。そのため、触媒の一部は、移動管37aを介して分離器32中へ連続的に、または定期的に移動させることが可能である。この移動は、例えばポンプ(図示せず)を使用して圧送することができる。また、例えば触媒の平均粒径の調整及び/又は混合原料ガスの空間速度の調整などにより、触媒自体が移動できるよう調整することも可能である。なお、後述の移動管37b〜37fを介しての活性金属、ゼオライト類などの移動も同様である。
ゼオライト類の比重と活性金属の比重とを比較すると、一般にゼオライト類の比重の方が小さいので、比重差を利用する、例えばサイクロン式の分離器32により遠心分離を行なうことにより、ゼオライト類と活性金属とを分離できる。比重の小さいゼオライト類は分離器32の上側から排出されて移動管37bによりゼオライト再生塔33に送られる。比重の大きい活性金属は分離器32の下側から排出されて移動管37cにより活性金属再生塔34に移動させる。
【0067】
ゼオライト再生塔33においては、ゼオライト類(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト)を再生する。ゼオライト類の再生は、まず酸素含有ガス供給管39aにより供給される酸素含有ガス(例えば、酸素)による酸化処理を行う。酸化処理の条件、例えば温度範囲、酸化時間などは、ゼオライト類の種類などに応じて適宜決めることができる。酸化温度は、例えば700℃以下、好ましくは600〜700℃の温度範囲、特には650℃である。また、酸化時間は、例えば30分〜2時間、特には1時間である。酸素含有ガスの体積供給速度は、例えば酸素の場合は5m/h程度である。酸化処理の後、さらに水素含有ガス供給管40aにより供給される水素含有ガスによる還元処理を行う場合には、還元処理の条件、例えば温度範囲、還元時間などは、ゼオライト類の種類などに応じて適宜決めることができる。還元温度は、例えば400℃以下、好ましくは300〜400℃の温度範囲、特には350℃である。また、還元時間は、例えば30分〜2時間、特には1時間である。水素含有ガスの体積供給速度は、例えば水素の場合には、10m/h程度である。このようにして再生されたゼオライト類は、移動管37dにより混合器35に移動させる。
【0068】
活性金属再生塔34においては、活性金属を再生する。活性金属の再生は、まず、酸素含有ガス供給管39bにより供給される酸素含有ガス(例えば、酸素)による酸化処理を行う。酸化処理の条件、例えば温度範囲、酸化時間などは、活性金属の種類などに応じて適宜決めることができる。酸化時間は、例えば400℃以下、好ましくは300〜400℃の温度範囲、特には350℃である。酸化時間は、例えば30分〜2時間、特には1時間である。酸素含有ガスの体積供給速度は、酸素の場合には5m/h程度である。酸化処理の後、さらに水素含有ガス供給管40bにより供給される水素含有ガス(例えば、水素)による還元処理を行う場合には、還元処理の条件、例えば温度範囲、還元時間などは、活性金属の種類などに応じて適宜決めることができる。還元温度は、例えば400℃以下、好ましくは300〜400℃の温度範囲、特には350℃である。また、還元時間は、例えば30分〜2時間、特には1時間である。水素含有ガスの体積供給速度は、例えば水素の場合には、10m/h程度である。このようにして再生された活性金属は、供給管37eにより混合器35に移動させる。
【0069】
このように再生されたゼオライト類と活性金属とを、それぞれ混合器35に導入し、物理的に混合して、触媒を調製する。触媒の調製条件は、活性金属の種類及び粒径(平均粒径)や、ゼオライト類の種類及び粒径(平均粒径)などによって適宜決めることができる。このようにして再生された触媒は、供給管37fにより流動層反応塔31中の流動層反応器36に移動させる。
【0070】
図4では、反応塔としての流動層反応塔31と、再生塔群(すなわち、分離器(塔)32、ゼオライト再生塔33、活性金属再生塔34及び混合器(塔)35)とは、1対1で構成されるが、これらの塔数の割合は任意に変化させることが可能である。また、再生塔群を構成する、分離器(塔)32、ゼオライト再生塔33、活性金属再生塔34及び混合器(塔)35のいずれもその塔数の割合は任意に変化させることが可能である。
【0071】
このように、ゼオライト類を再生する工程と活性金属を再生する工程を分離することによって、ゼオライト類と活性金属をそれぞれ最も適した条件で再生を行うことができる。そのため、触媒の活性をより長い期間維持することが可能になり、触媒寿命のさらなる長期化が達成できる。
【0072】
このように、本実施形態に係る水素製造用触媒によれば、疎水性ゼオライトが炭化水素又は含酸素炭化水素を吸着(及び脱離)し、親水性ゼオライトが水分子(例えば、水蒸気)を吸着(及び脱離)するため、触媒上の所定の酸点(活性点)への原料成分の供給のさらなる安定化が実現できる。そのため、炭素の析出などの副生物が生成する副反応が抑制され、水素製造効率が向上し、触媒寿命の向上した水素製造用触媒、水素製造装置及び水素製造方法を提供できる。また、本実施形態に係る水素製造用触媒によれば、水素製造効率の向上により、触媒単位体積あたりの水素製造量が向上するため、より小型の反応容器を用いるプラント設計が可能になり、反応容器の大型化に伴う熱の伝達効率の低下、熱の偏りなどが抑制できる。さらに、本実施形態に係る水素製造装置によれば、水素の製造を行なう反応塔と触媒の活性の再生を行なう再生塔(群)とを設け、反応工程と再生工程を同時に進行させることで、触媒の高寿命化とそれに伴う触媒再生工程または触媒交換工程の短縮が可能になる。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明の水素製造用触媒について、実施例および比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明の水素製造用触媒は、何ら実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
親水性ゼオライト(Si/Al比=6.0、アンモニアTPD法による酸点量=2000μmol/g、比表面積(BET)=650g/m、平均粒径4μm、比重=0.32g/cm)[HSA331:東ソー株式会社製]を4.0g、疎水性ゼオライト(Si/Al比=50、アンモニアTPD法による酸点量=800μmol/g、比表面積(BET)=425g/m、平均粒径8.8μm、比重=0.21g/cm)[ZeolystCBV5524G:Zeolyst International社製]を6.0g、活性金属として、市販の銅−亜鉛系触媒(CuO:ZnO:Al=53.9:58.1:18.9(重量比) [MDC−3:ズードケミー社製]を、レーザーを用いた測定による平均粒径が230μmまで、ボールミルで粉砕したものを90g、を混合した。この混合物を2.0MPaの圧力下で、10分間圧縮成形して、一片が0.5cmの立方体の触媒を調製した。
【0075】
(比較例1)
親水性ゼオライトおよび疎水性ゼオライトの代わりに、市販のγ酸化アルミニウム[商品名NK−324:住友精化社製]を使用する以外は実施例1と同様に実験を行なった。
【0076】
このようにして得られた実施例1の触媒及び比較例1の触媒を固定床反応器内に充填し、ジメチルエーテルを原料として水蒸気改質反応を実施し、ジメチルエーテルの転化率について、原料の空間速度(SV)を変動させて評価した。なお、水蒸気改質反応の条件は、水蒸気/ジメチルエーテルのモル比=3/1、GHSV=100〜4000h−1、反応温度=300℃及び圧力=1atmであった。これらの結果を図5に示す。図5は、ゼオライト類とγ酸化アルミニウムの相違が原料の空間速度と原料の転化率との関係に及ぼす影響を示す図である。
図5に示されるように、原料(ジメチルエーテル)の空間速度(SV)が増加するにつれて、γ酸化アルミニウムを混合させた触媒では、ジメチルエーテルの転化率は低い空間速度(SV)から大幅に低下する傾向となるが、実施例1の親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトを用いた触媒では、ジメチルエーテルの転化率の低下は、かなり高い空間速度(SV)まで低下せず、改善されていることがわかる。
【0077】
これらの結果より、ジメチルエーテルの転化率は、実施例1の親水性ゼオライトおよび疎水性ゼオライトを含む触媒の方が優れていることが明らかになった。
【0078】
(比較例2および3)
比較例2では、親水性ゼオライトおよび疎水性ゼオライトを使用する代わりに、親水性ゼオライトのみを10g使用する以外は、実施例1と同様に実験を行なった。また、比較例3では、疎水性ゼオライトのみを10g使用する以外は、実施例1と同様に実験を行なった。
【0079】
このようにして得られた比較例2、比較例3及び実施例1の触媒について、比較例2の触媒と実施例1の触媒のジメチルエーテル流量への影響、及び比較例3の触媒と実施例1の触媒の水蒸気流量への影響を評価した。
比較例2の触媒及び実施例1の触媒をそれぞれ固定床反応器に充填し、温度200℃、体積供給量(流量)0.2m/分の条件でジメチルエーテルを供給し、疎水性ゼオライトの有無によるジメチルエーテル流量の安定性への影響を調べた。その結果を図6に示す。図6では、固定床反応器中へのジメチルエーテルの供給量に対する固定床反応器からのジメチルエーテルの流出量の比を経時的に示す。図6に示すように、疎水性ゼオライトが存在する場合には、固定床反応器を流れるジメチルエーテルの流量の時間の経過に伴う変動(バラツキ)が減少し、安定性が向上する。その結果、水素製造用触媒中の疎水性ゼオライトが原料となるジメチルエーテルを吸着及び脱離し、触媒により安定してジメチルエーテルを供給できることがわかる。
【0080】
次に、比較例3の触媒及び実施例1の触媒をそれぞれ固定床反応器に充填し、温度200℃、体積供給量(流量)0.2m/分の条件で水蒸気を供給し、親水性ゼオライトの有無による水蒸気流量の安定性への影響を調べた。その結果を図7に示す。図7では、固定床反応器中への水蒸気の供給量に対する固定床反応器からの水蒸気の流出量の比を経時的に示す。図7に示すように、親水性ゼオライトが存在する場合には、固定床反応器を流れる水蒸気の流量の時間の経過に伴う変動(バラツキ)が減少し、安定性が向上する。その結果、水素製造用触媒中の親水性ゼオライトが水分子(例えば、水蒸気)を吸着及び脱離し、触媒により安定して水蒸気を供給できることがわかる。
【0081】
また、このようにして得られた比較例2及び比較例3の触媒、さらに実施例1の触媒を固定床反応器内に充填し、ジメチルエーテルを原料として水蒸気改質反応を実施し、水素の製造量について評価した。なお、水蒸気改質反応の条件は、水蒸気/ジメチルエーテルのモル比=3/1、反応温度=300℃、及び圧力=1atmであった。これらの結果を図8に示す。図8は、親水性ゼオライトおよび疎水性ゼオライトそれぞれ単独(1種のみ)に対するこれら2種類のゼオライトを混合した水素製造量に対する効果を示す図である。図8に示すように、親水性ゼオライトのみと活性金属を混合した触媒では、水素製造量が低いことがわかる。また、初期活性は疎水性ゼオライトのみと活性金属を混合した触媒の方がやや高いが、時間の経過とともに、疎水性ゼオライトのみと活性金属を混合した触媒では、触媒活性の低下が顕著に現れてくる。これに対し、2種のゼオライト(疎水性ゼオライトと親水性ゼオライト)と活性金属を混合した触媒では活性低下が見られず長時間安定した活性が得られることがわかる。
【0082】
(実施例2)
本実施例では、疎水性ゼオライトと、親水性ゼオライトの配合比を変化させたときの触媒活性について検討した。疎水性ゼオライトの配合比(重量%)を増加させたときの、ジメチルエーテルの転化率を測定した結果を図9に示す。なお、水蒸気/ジメチルエーテルのモル比=3/1であり、水蒸気改質反応の温度は300℃、1atmの条件化で行った。図9は、疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとの混合比の、初期活性における、ジメチルエーテル転化率への影響を示す図である。
【0083】
疎水性ゼオライトの配合率(重量%)は、以下の式
疎水性ゼオライト/(疎水性ゼオライト+親水性ゼオライト)×100
により求められる。図9に示すように、疎水性ゼオライトの配合率が30重量%の点から触媒の初期活性における、ジメチルエーテルの転化率が向上し始め、さらに疎水性ゼオライトの配合率を増加させることにより、ジメチルエーテルの転化率がより向上する傾向となる。疎水性ゼオライトの配合率が30重量%以上、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上の場合に、より良好なジメチルエーテルの転化率が達成できる。
また、図8の結果を考慮すると、疎水性ゼオライトの配合量100重量%であると、時間の経過とともに、触媒活性の低下の傾向が見られるので、疎水性ゼオライトの配合量は、90重量%までが好ましい。
【0084】
従って、疎水性ゼオライトの配合率は、30〜90重量%の範囲、好ましくは35〜90重量%の範囲、より好ましくは40〜90重量%の範囲、最も好ましくは50〜90重量%の範囲が、良好なジメチルエーテルの転化率を得ることができることがわかる。
【0085】
(実施例3)
実施例1と同じ親水性ゼオライトを4g、疎水性ゼオライトを6g、さらに実施例1と同じ市販の銅−亜鉛系触媒を平均粒径230μmに粉砕したもの(比重=0.6g/cm)を90g、をビニル袋で3分間、物理的に混合して、レーザーによる測定で平均粒径が200μm程度の流動層触媒層を構成する触媒を調製した。このようにして得られた触媒を流動層反応器内に充填し、ジメチルエーテルを原料として水蒸気改質反応を実施し、ジメチルエーテルの転化率について、原料の空間速度(SV)を変動させて評価した。その結果、実施例1と同様に、ジメチルエーテルの転化率の低下は、かなり高い空間速度(SV)まで低下せず、改善されていることがわかる。
【0086】
(実施例4)
実施例1と同じ親水性ゼオライト2.0g及び実施例1と同じ疎水性ゼオライト8.0gを混合して固体酸を調製した。
これに、Cu(NO・3HO30.0g及び(Zn(NO・6HO)36.9gを秤量し、蒸留水で溶解し、硝酸銅及び硝酸亜鉛を含む水溶液を加えた。この水溶液を50〜80℃に加熱して硝酸銅及び硝酸亜鉛を蒸発させた。次いで、乾燥炉で100℃で、水分を蒸発させた後、450℃で3時間焼成し、硝酸を分解除去することにより、50モル%のCuおよび50モル%のZnが担持された触媒を得た。このようにして得られた触媒を固定床反応器内に充填し、ジメチルエーテルを原料として水蒸気改質反応を実施し、ジメチルエーテルの転化率について、原料の空間速度(SV)を変動させて評価した。その結果、実施例1と同様に、ジメチルエーテルの転化率の低下は、かなり高い空間速度(SV)まで低下せず、改善されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1の実施形態に用いられる第1の水素製造装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図2】第1の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を模式的に示す図である。
【図3】第2の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を模式的に示す図である。
【図4】第3の水素製造装置における水素製造および触媒再生の概略を模式的に示す図である。
【図5】ゼオライト類とγ酸化アルミニウムの相違が原料の空間速度と原料の転化率との関係に及ぼす影響を示す図である。
【図6】疎水性ゼオライトの有無によるジメチルエーテル流量の安定性への影響を示す図である。
【図7】親水性ゼオライトの有無による水蒸気流量の安定性への影響を示す図である。
【図8】疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライト単独(1種)に対する2種類のゼオライトを混合した水素製造量に対する効果を示す図である。
【図9】疎水性ゼオライトと親水性ゼオライトとの混合比の、初期活性におけるジメチルエーテル転化率への影響を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1a,1b,1c…水素製造装置、2a…第1の固定床反応塔、2b…第2の固定床反応塔、3a…第1の固定床反応器、3b…第2の固定床反応器、4a,4b…バーナー、5a,5b…加熱部、6…CO変成器、7…CO除去器、8a,8b…原料ガス供給管、9a,9b…水蒸気供給管、10a,10b…再生ガス供給管、11a,11b,24,38…混合原料ガス供給管、12a,12b,25,39a,39b…酸素含有ガス供給管、13a,13b,26,40a,40b…水素含有ガス供給管、21a…第1の流動層反応塔、21b…第2の流動層反応塔、22a…第1の流動層反応器、22b…第2の流動層反応器、23a…第1の触媒粒子管、23b…第2の触媒粒子管、31…流動層反応塔、32…分離器、33…ゼオライト再生塔、34…活性金属再生塔、35…混合器、36…流動層反応器、37a〜37f…移動管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性金属と、
疎水性ゼオライトと、
親水性ゼオライトと
を含むことを特徴とする水素製造用触媒。
【請求項2】
前記疎水性ゼオライトは、SiO/Alモル比で40以上であることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項3】
前記親水性ゼオライトは、SiO/Alモル比で15未満であることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項4】
前記疎水性ゼオライトは、200〜400℃の温度範囲で炭化水素又は含酸素炭化水素を吸着する能力を有することを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項5】
前記親水性ゼオライトは、200〜400℃の温度範囲で水分子を吸着する能力を有することを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項6】
前記疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトのうちの少なくとも1種は、酸点量がNH吸着量で100〜2000μmol/gであることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項7】
前記疎水性ゼオライトの配合量は、該疎水性ゼオライトと該親水性ゼオライトとの合計量100重量%中30重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項8】
前記疎水性ゼオライトの配合量は、触媒全量100重量%中5重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項9】
前記活性金属の配合量は、金属として触媒全量100重量%中50〜90重量%であることを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項10】
前記活性金属は、銅と、亜鉛、ジルコニウム、鉄、マンガン及びチタンからなる群のうち少なくとも1種以上の金属とを含むことを特徴とする請求項1記載の水素製造用触媒。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の水素製造用触媒が充填され、炭化水素又は含酸素炭化水素から水蒸気改質反応により水素を生成する第1の固定床反応器と、
前記第1の固定床反応器と切替えて用いられる、前記触媒が活性を再生する再生処理に供される第2の固定床反応器と
を備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の水素製造用触媒が充填され、炭化水素又は含酸素炭化水素から水蒸気改質反応により水素を生成する第1の流動層反応器と、
前記第1の流動層反応器と一対で用いられ、前記触媒が活性を再生する再生処理に供される第2の流動層反応器と、
前記第1の流動層反応器内の前記触媒と前記第2の流動層反応器内の前記触媒とを移動させる移動機構と
を備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の水素製造用触媒が充填され、炭化水素又は含酸素炭化水素から水蒸気改質反応により水素を生成する流動層反応器と、
前記触媒を構成する活性金属と、疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトとを比重差により分離する分離器と、
前記分離器により分離された疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトを再生させるゼオライト再生器と、
前記分離器により分離された活性金属を再生させる活性金属再生器と、
前記再生された疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトと前記再生された活性金属とを混合して触媒を再生成する触媒再生器と、
前記流動層反応器中の前記触媒を前記分離器に移動させ、前記分離器により分離された疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトを前記ゼオライト再生器に移動させ、前記分離器により分離された活性金属を前記活性金属再生器に移動させ、前記ゼオライト再生器により再生された疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトを前記触媒再生器に移動させ、前記活性金属再生器により再生された活性金属を前記触媒再生器に移動させ、前記触媒再生器により再生された触媒を前記流動層反応器に移動させる移動機構と
を備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項14】
前記分離器は、サイクロン型分離器であることを特徴とする請求項13記載の水素製造装置。
【請求項15】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の水素製造用触媒を固定床反応器又は流動層反応器に充填する充填工程と、
前記固定床反応器又は流動層反応器に、炭化水素又は含酸素炭化水素、及び水蒸気を導入する導入工程と、
前記固定床反応器又は流動層反応器中で、炭化水素又は含酸素炭化水素と水蒸気とを、200〜400℃の温度範囲で反応させて水素又は水素含有ガスを生成させる生成工程と、
前記生成された水素又は水素含有ガスを取り出す取得工程と
を備えることを特徴とする水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−68242(P2008−68242A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251874(P2006−251874)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】