説明

水素製造装置及び燃料電池システム

【課題】改質触媒を効率よく加熱し、水蒸気改質を促進して改質ガスを効率よく生成する。
【解決手段】燃焼筒9と、燃焼筒9内で、燃焼筒9の上端部9a側から下端部9b側に向けて火炎Fを形成するバーナ部7と、燃焼筒9の外周面9cに沿って改質触媒C1を配置した下流側改質部24と、下流側改質部24に接続されると共に、燃焼筒9の下端部9b側で、燃焼筒9の軸線Lに交差するように改質触媒C2を配置した上流側改質部23と、を備える水素製造装置(FPS)3Aとした。このFPS3Aでは、上流側改質部23によって火炎方向の熱遮断と熱回収とを行うことができ、上流側改質部23の改質触媒C2を効率良く加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質によって水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、液化石油ガス、灯油やガソリンなどの原料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置が知られている(特許文献1または特許文献2参照)。この種の水素製造装置は、バーナを囲む中空筒状の燃焼筒と、燃焼筒の外周面に沿って配置された改質部とを備えている。改質部には改質触媒が収容されており、改質部内には、気化した原料と水蒸気とが導入される。バーナは燃焼筒内で火炎を形成し、燃焼筒から流出した燃焼ガスは、燃焼筒の外周面に沿って上昇し、上昇する過程で改質部を加熱する。所定の温度まで加熱された改質部では、改質触媒による水蒸気改質が促進され、水素リッチな改質ガスが生成される。
【特許文献1】特許第3625770号公報
【特許文献2】特開2006−176398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の水素製造装置では、バーナの火炎方向における十分な熱遮断や熱回収が難しく、燃焼筒を流れる燃焼ガスによる改質触媒の加熱だけでは、効率向上は難しかった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、改質触媒を効率よく加熱でき、水蒸気改質の促進による改質ガスの効率的な生成を可能にする水素製造装置及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、水素製造用原料が流入する改質触媒を加熱することで水蒸気改質を促進して水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置において、改質触媒を加熱するための燃焼筒と、燃焼筒内で、燃焼筒の一方の端部側から他方の端部側に向けて火炎を形成するバーナ部と、燃焼筒の外周面に沿って改質触媒を配置した下流側改質部と、下流側改質部に接続されると共に、燃焼筒の他方の端部側で、燃焼筒の軸線に交差するように改質触媒を配置した上流側改質部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この水素製造装置では、燃焼筒からの噴出直後の最も高温の燃焼ガスを上流側改質部で受け、この燃焼ガスを利用して上流側改質部の改質触媒を加熱することができる。したがって、燃焼筒の軸線に沿ったバーナ部の火炎方向の熱遮断と熱回収とを上流側改質部で行うことができる。さらに、燃焼筒の外周面からの伝熱によって下流側改質部の改質触媒を加熱することができる。その結果として、改質触媒を効率良く加熱することができ、水蒸気改質の促進による改質ガスの効率的な生成が可能なる。
【0007】
さらに、上流側改質部は、燃焼筒の軸線上に、水素製造用原料を燃焼筒に向けて流入させる導入部を更に有すると好適である。導入部では、バーナにより形成される火炎に対向するように水素製造用原料が導入されるようになり、水素製造用原料の導入に起因した導入部付近の温度低下を抑えることができ、上流側改質部の改質触媒を効果的に加熱できる。
【0008】
さらに、上流側改質部は、改質触媒を収容する筐体部と、筐体部内で、燃焼筒の軸線を中心にして放射状に設けられた複数のガイド部と、を更に有し、筐体部には、複数のガイド部によって囲まれた内側に導入部が設けられ、複数のガイド部の外側には、下流側改質部に接続された連絡部が設けられていると好適である。導入部を介して筐体部内に導入された水素製造用原料は、ガイド部に案内されることで、燃焼筒の軸線周りで均等に分散し、偏り無く連絡部に到達して下流側改質部に流入する。その結果として、上流側改質部での効率的な水蒸気改質が可能になり、効率的に改質ガスを生成できる。
【0009】
連絡部には、多孔板が設けられていると好適である。上流側改質部に流入する水素製造用原料の流れは、多孔板によって均一化され、さらに、上流側改質部から下流側改質部へ流入する水素製造用原料は、多孔板を介して流れることで下流側改質部内に均一に分散して流入する。その結果として、上流側改質部及び下流側改質部での効率的な水蒸気改質が可能になり、効率的に改質ガスを生成できる。
【0010】
さらに、燃焼筒と下流側改質部との間に設けられた燃焼ガス流路と、燃焼ガス流路内に配置されると共に、燃焼筒と下流側改質部とを熱交換可能に接続する伝熱促進部と、を更に有すると好適である。燃焼ガス流路を通過する燃焼ガスによって下流側改質部の改質触媒を効率よく加熱でき、さらに、伝熱促進部を介して燃焼筒から効率よく下流側改質部に熱伝達されるため、下流側改質部の改質触媒を効率よく加熱できる。
【0011】
また、本発明に係る燃料電池システムは、上記の各水素製造装置のいずれか一つと、その水素製造装置によって生成された改質ガスを利用して発電する燃料電池装置と、を備える。この燃料電池システムでは、水素製造装置において、改質触媒を効率良く加熱することができ、その結果として、水蒸気改質を促進し、改質ガスの効率的な生成が可能になり、発電効率が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、改質触媒を効率よく加熱でき、水蒸気改質の促進による改質ガスの効率的な生成を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は本発明に係る水素製造装置を適用した燃料電池システムの概略を示す図である。燃料電池システム1は、水素製造用原料として燃料Qを用いて発電を行なうものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、燃料Qとしては、都市ガス、液化石油ガス、液体燃料等が挙げられるが、入手が容易であり且つ独立して貯蔵可能であるという観点から灯油を例とする。
【0015】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫器2、水素製造装置(以下、「FPS」という)3A、固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」という)スタック4、インバータ5、及びこれらを収容する筐体6を備えている。なお、PEFCスタック4は、燃料電池装置に相当する。
【0016】
脱硫器2は、外部から導入された燃料Qを脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、例えば120℃〜140℃まで加熱されるようになっている。
【0017】
FPS3Aは、熱源としてのバーナ部7と、バーナ部7を取り囲む中空円筒状の燃焼筒9と、燃焼筒9を囲むように配置され、灯油からなる燃料Qが気化した気化燃料を水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質部11と、改質部11の下方に隣接して配置されると共に、改質部11で生成された改質ガスG2(図2参照)から水性シフト反応によって一酸化炭素を低減するCO変成部13と、CO変成部13からの改質ガスG2中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部15と、を備えており、断熱材からなる筐体16で覆われている。
【0018】
図2に示されるように、バーナ部7は、燃焼筒9の上端部(一方の端部)9aに取り付けられており、燃焼筒9内で、燃焼筒9の下端部(他方の端部)9b側に向けて火炎Fを形成する。燃焼筒9は、金属材料からなり、バーナ部7により形成される火炎によって加熱され、周囲に熱を伝える。
【0019】
改質部11は、燃焼筒9の外側で、燃焼筒9と同心に配置された筒状の内胴部17と、内胴部17の外側で、内胴部17と同心に配置された筒状の外胴部19と、を備える。内胴部17と外胴部19との間には、水蒸気改質反応を行うために改質触媒C1が収容されている。改質触媒C1での流れを均一にするために、外胴部19の上端には環状の多孔板28が配置され、多孔板28は外胴部19と内胴部17との間に設置されている。同様に、内胴部17の下端外側には、改質触媒C1を保持するためにも、環状の多孔板18が配置され、多孔板18は外胴部17と内胴部17との間に設置されている。内胴部17と外胴部19との間で保持された改質触媒C1は、断面環状で燃焼筒9の外周面9cに沿うように配置されている。改質触媒C1、内胴部17及び改質触媒C1に接する外胴部19の上部19bによって下流側改質部24が構成される。改質触媒C1は、貴金属系水蒸気改質触媒であり、ルテニウムを用いている。改質触媒C1の触媒反応に適した温度は500°C〜800°Cである。なお、内胴部17には、改質触媒C1内に突き出している複数の伝熱板17aが設けられている。伝熱板17aは、内胴部17の長手方向に沿って延在する金属板であり、改質触媒C1の内部にまで効率よく熱を伝える。
【0020】
図3に示されるように、外胴部19の下部19aは、内胴部17の下端よりも下側に突き出している。さらに、外胴部19の下端には、内側の開口を塞ぐようにして改質触媒C2を保持する円形の底板部20が溶接されている。底板部20の上方には、内胴部17の下端内側に溶接された円形の受熱板部21が設けられている。底板部20と受熱板部21とで挟まれた領域内には、気化燃料と水蒸気が流入し、改質反応を行う改質触媒C2が収容されている。改質触媒C2は、改質触媒C1と同質材料からなるが、異なる材質にすることもできる。受熱板部21、多孔板18、外胴部19の下部19a及び底板部20によって改質触媒C2を収容する筐体部22が構成され、筐体部22及び改質触媒C2によって上流側改質部23が構成されている。
【0021】
上流側改質部23は、燃焼筒9の下端部9b側で、燃焼筒9の軸線Lに直交するように配置されており、燃焼筒9から噴出した最も高温の燃焼ガスG1によって直接的に加熱される。その結果として、熱損失を抑えながら燃焼ガスG1の熱量を効率よく利用でき、上流側改質部23の改質触媒C2を効率的に加熱できる。
【0022】
図3及び図5に示されるように、上流側改質部23と下流側改質部24とは、環状の多孔板18が設けられた連絡部25を介して接続されており、上流側改質部23に流入した気化燃料や水蒸気を含む反応途中の改質ガスG2は多孔板25によって改質触媒C2中を均一に流れ、さらに、改質触媒C2を通過した気化燃料や水蒸気を含む反応途中の改質ガスG2は多孔板18を介して流れることで下流側改質部24内に均一に分散して流入する。その結果として、上流側改質部23及び下流側改質部24での効率的な水蒸気改質が継続して可能になり、改質ガスG2が効率的に生成される。
【0023】
図3及び図4に示されるように、底板部20の中央には、気化燃料と水蒸気とが導入される導入部27が設けられている。導入部27は、燃焼筒9の軸線L上に設けられ、底板部20には、改質触媒C2に接する内面側に、燃焼筒9の軸線Lを中心にして複数のガイド板(ガイド部)29が放射状に立設されている。導入部27は、複数のガイド板29によって囲まれた内側に配置され、複数のガイド板29の外側には環状の連絡部25が配置されている。
【0024】
導入部27を介して筐体部22内に導入された気化燃料や水蒸気は、改質反応を伴いながらガイド板29に案内されることで、燃焼筒9の軸線L周りで均等に分散し、偏り無く連絡部25に到達して下流側改質部24に流入する。その結果として、上流側改質部23での効率的な水蒸気改質が可能になり、効率的に改質ガスを生成できる。さらに、ガイド板29は金属材料からなり、伝熱促進効果も奏する。
【0025】
なお、図6に示されるように、底板部20には、ガイド板29の代わりに、複数の湾曲したガイド板(ガイド部)31を設けるようにしてもよい。ガイド板31は、ガイド板29と同様に、燃焼筒9の軸線Lを中心にして放射状に設けられ、さらに、全てのガイド板31が、外胴部19の周方向の一方側に凹曲面を形成するように湾曲している。ガイド板31によれば、気化燃料の改質触媒C2への接触距離が長くなり、改質触媒C2での水蒸気改質が促進される。
【0026】
図2及び図3に示されるように、底板部20の下側には、液体燃料Q及びプロセス水Wを気化して導入部27に送り込む気化器33が設けられている。気化器33には、燃料供給部35及びプロセス水供給部37が接続されている。
【0027】
外胴部19の外側には、外胴部19と同心円筒状の改質ガス用外筒部39が設けられている。外胴部19を挟むようにして内外に配置された内胴部17と改質ガス用外筒部39とは、外胴部19よりも上側に突き出しており、環状天板41によって塞がれている。改質触媒C1から多孔板28を介して上方に流出した改質ガスG2は、環状天板41によって流れの向きが変わり、改質ガス用外筒部39に沿って下方に流下し、改質ガス用外筒部39の下部に設けられた連絡管42を通ってCO変成部13に導入される。なお、改質ガス用外筒部39を流下する改質ガスG2は、700°C程度にまで暖められている。FPS3Aでは、下流側改質部24の外側を改質ガス用外筒部39で囲み、高温の改質ガスG2を流下させているので、高温の改質ガスG2を効果的に利用して改質触媒C1の温度低下を抑止できる。
【0028】
燃焼筒9と内胴部17との間には、燃焼ガスG1が通過する燃焼ガス流路43が形成されている。さらに、燃焼ガス流路43内には、発砲金属やメッシュ状の金属部材などの伝熱促進材を充填し、燃焼ガスG1からの熱回収を促進する伝熱促進部44が設けられている。また、伝熱促進部44は、燃焼筒9と下流側改質部24とが熱交換可能に接続されており、下流側改質部24の改質触媒C1の加熱を促進する。
【0029】
燃焼筒9の上端部9aは内胴部17よりも上側に突き出しており、その上端部9aには外側に張り出した環状の天井板部45が溶接されている。さらに、天井板部45の外縁には、改質ガス用外筒部39の外側に設けられた円筒状の燃焼ガス用外筒部47が溶接されている。燃焼筒9の外周面9cに沿って上昇した燃焼ガスG1は、天井板部45に沿って燃焼ガス用外筒部47に導かれ、その後、燃焼ガス用外筒部47に沿って下方に流下し、燃焼ガス用外筒部47の下部に設けられた燃焼ガス出口49から排出される。
【0030】
図1及び図2に示されるように、FPS3Aは、改質部11の下方に、水性シフト反応によって改質ガスG2から一酸化炭素を低減するCO変成部13と、CO変成部13からの改質ガスG2中の一酸化炭素を選択酸化する選択酸化部15と、を備えている。
【0031】
CO変成部13には、改質ガスG2中の一酸化炭素を水と二酸化炭素とに転化する水性シフト反応を促進するシフト触媒C3が収容されている。選択酸化部15には、改質ガス中に残る一酸化炭素の選択酸化反応を促進する選択酸化触媒C4が収容されている。改質部11から流出した改質ガスG2は、CO変成部13に導入されて一酸化炭素が除去される。CO変成部13では、一酸化炭素濃度を0.1%以下にすることは困難であるため、CO変成部13を経た改質ガスG2は、選択酸化部15に導入される。選択酸化部15では、一酸化炭素濃度を10ppm以下にまで低下させることができる。選択酸化部15で一酸化炭素濃度が低減した改質ガスG2は、改質ガス流出部50から流出する。
【0032】
なお、CO変成部13では、シフト触媒C3を効果的に機能させるために改質部11よりも低温の300°C程度に維持する必要がある。従来の水素製造装置(特許文献1及び特許文献2参照)では、ガスバーナの火炎方向側にCO変成部が配置されているため、火炎の影響を避けるための様々な工夫が必要である。しかしながら、ガスバーナの火炎方向では非常に高温になり、適当な断熱材や冷却のための適当な熱媒がないために冷却のための広いスペースが必要になってコンパクト化が難しく、さらに、改質部やCO変成部で触媒反応を効果的に発揮させるための熱バランスの維持が困難であった。しかしながら、FPS3Aでは、燃焼筒9とCO変成部13との間に上流側改質部23が設けられており、上流側改質部23で熱遮断と熱回収が行われるために、冷却のためのスペースを狭くでき、FPS3A自体の小型化に有効であると共に、所定の温度に制御し易くなって熱バランスの維持に好適である。
【0033】
PEFCスタック4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3Aで得られた改質ガスG2を用いて発電してDC電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された電解質である高分子のイオン交換膜とを有しており、アノードに改質ガスG2を導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0034】
インバータ5は、出力されたDC電流をAC電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3A、PEFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。
【0035】
また、燃料電池システム1は、燃料Qを筐体6の外部からFPS3Aに導入するための燃料ラインL1を備えている。燃料ラインL1上には、脱硫器2が設けられている。燃料ラインL1の脱硫器2よりも下流側は分岐しており、一方は、燃料Qを改質部11に導入する燃料ラインL11となり、他方は、燃料Qをバーナ9に供給する燃料ラインL12となっている。
【0036】
また、燃料電池システム1は、水蒸気改質に用いられるプロセス水Wを改質部11に導入する水導入ラインL2を備えている。水導入ラインL2は、FPS3Aに設けられたプロセス水供給部37(図2参照)に接続されている。
【0037】
上記のFPS3Aによれば、燃焼筒9からの噴出直後の最も高温の燃焼ガスG1を上流側改質部23で受け、この燃焼ガスG1を利用して上流側改質部23の改質触媒を加熱することができる。したがって、燃焼筒9の軸線Lに沿ったバーナ部7の火炎方向の熱遮断と熱回収とを上流側改質部23で行うことができる。さらに、燃焼筒9の外周面9cからの伝熱によって下流側改質部24の改質触媒を加熱することができる。その結果として、改質触媒C1及び改質触媒C2を効率良く加熱することができ、水蒸気改質を促進して改質ガスG2の効率的な生成が可能なる。
【0038】
さらに、改質触媒C1及び改質触媒C2を効率的に加熱できることで、温度低下に起因した改質触媒C1及び改質触媒C2の機能の低下を抑制し易く、その分、改質触媒C1や改質触媒C2の減量化にも有効であって小型化に有利である。
【0039】
さらに、上流側改質部23は、燃焼筒9の軸線L上に、燃料Qが気化した気化燃料及びプロセス水Wの水蒸気を燃焼筒9に向けて流入させる導入部27を有し、導入部27では、バーナ部7から放射される火炎に対向するように気化燃料等が導入されるようになり、気化燃料や水蒸気の導入に起因した導入部27付近の温度低下を抑えることができ、上流側改質部23の改質触媒C2を効果的に加熱できる。
【0040】
さらに、FPS3Aは、燃焼ガス流路43を通過する燃焼ガスG1によって下流側改質部24の改質触媒C1を効率よく加熱でき、さらに、燃焼ガス流路43を流下する燃焼ガスG1によって下流側改質部24の改質触媒C1を効率よく加熱でき、さらに、伝熱促進部44を介して燃焼筒9から効率よく下流側改質部24に熱伝達されるため、下流側改質部24の改質触媒C1を効率よく加熱できる。
【0041】
また、上記のFPS3Aを備える燃料電池システム1によれば、FPS3Aにおいて、改質触媒C1及び改質触媒C2を効率良く加熱することができ、その結果として、水蒸気改質を促進し、改質ガスG2の効率的な生成が可能なり、発電効率が向上する。
【0042】
次に、第2の実施形態に係るFPS(水素製造装置)3Bについて図7を参照して説明する。なお、FPS3Bについて、FPS3Aと同様の要素部材や構造については、FPS3Aと同一の符号を記して説明を省略する。
【0043】
FPS3Bは、改質部11の周りを囲むように配置されたCO変成部51と選択酸化部53と、を備えている。CO変成部51は、選択酸化部53の下側に隣接して設けられている。改質ガス用外筒部39から下方に流出した改質ガスG2は、CO変成部51内を上昇し、一酸化炭素が低減される。その後、CO変成部51を流出した改質ガスG2は、選択酸化部53に流入し、一酸化炭素濃度が10ppmにまで削減され、改質ガス流出部54から流出する。
【0044】
FPS3Bも、FPS3Aと同様に燃焼筒9からの噴出直後の最も高温の燃焼ガスG1を上流側改質部23で受け、この燃焼ガスG1を利用して上流側改質部23の改質触媒を加熱することができる。したがって、燃焼筒9の軸線Lに沿ったバーナ部7の火炎方向の熱遮断と熱回収とを上流側改質部23で行うことができる。さらに、燃焼筒9の外周面9cからの伝熱によって下流側改質部24の改質触媒C1を加熱することができる。その結果として、改質触媒C1及び改質触媒C2を効率良く加熱することができ、水蒸気改質を促進して改質ガスG2の効率的な生成が可能なる。
【0045】
また、FPS3Aの代わりに、FPS3Bを備えた燃料電池システム1によっても、FPS3Bにおいて、改質触媒C1及び改質触媒C2を効率良く加熱することができ、その結果として、水蒸気改質を促進し、改質ガスの効率的な生成が可能となり、発電効率が向上する。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、上記実施形態では、水素製造用原料として灯油を用いたが、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料を用いてもよい。また、天然ガス、液化石油ガス、消化ガス等の気体燃料を用いてもよい。なお、この場合には、脱硫器(脱硫方法)及び改質器(改質方法)は、用いる燃料の特性に応じたものとされる。
【0048】
改質触媒に用いられる貴金属系水蒸気改質触媒としては、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVII属金属を用いることもできる。
【0049】
また、上流側改質部23と下流側改質部24とを接続する連絡部25には、多孔板18を設けなくてもよく、上流側改質部23の改質触媒C2と下流側改質部24の改質触媒C1とが境界無く連絡しているような態様であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る水素製造装置を用いた燃料電池システムの概略を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るFPS(水素製造装置)の概略を示す断面図である。
【図3】上流側改質部の概略を示す断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図であり、上流側改質部に設けられた複数のガイド板を示す図である。
【図5】図3のV−V線に沿った断面図である。
【図6】上流側改質部に設けられた複数のガイド板の変形例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係るFPS(水素製造装置)の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…燃料電池システム、3A,3B…FPS(水素製造装置)、4…PEFCスタック(燃料電池装置)、7…バーナ部、9…燃焼筒、9a…燃焼筒の上端部(一方の端部)、9b…燃焼筒の下端部(他方の端部)、9c…燃焼筒の外周面、18…多孔板、22…筐体部、23…上流側改質部、24…下流側改質部、25…連絡部、27…導入部、29,31…ガイド板(ガイド部)、43…燃焼ガス流路、44…伝熱促進部、C1,C2…改質触媒、G2…改質ガス、F…火炎、Q…燃料(水素製造用原料)、L…燃焼筒の軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造用原料が流入する改質触媒を加熱することで水蒸気改質を促進して水素リッチな改質ガスを生成する水素製造装置において、
前記改質触媒を加熱するための燃焼筒と、
前記燃焼筒内で、前記燃焼筒の一方の端部側から他方の端部側に向けて火炎を形成するバーナ部と、
前記燃焼筒の外周面に沿って前記改質触媒を配置した下流側改質部と、
前記下流側改質部に接続されると共に、前記燃焼筒の前記他方の端部側で、前記燃焼筒の軸線に交差するように前記改質触媒を配置した上流側改質部と、を備えたことを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記上流側改質部は、
前記燃焼筒の軸線上に設けられると共に、前記水素製造用原料を前記燃焼筒に向けて流入させる導入部を更に有することを特徴とする請求項1記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記上流側改質部は、
前記改質触媒を収容する筐体部と、
前記筐体部内で、前記燃焼筒の軸線を中心にして放射状に設けられた複数のガイド部と、を更に有し、
前記筐体部には、複数の前記ガイド部によって囲まれた内側に前記導入部が設けられ、複数の前記ガイド部の外側には、前記下流側改質部に接続された連絡部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記連絡部には、多孔板が設けられていることを特徴とする請求項3記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記燃焼筒と前記下流側改質部との間に設けられた燃焼ガス流路と、
前記燃焼ガス流路内に配置されると共に、前記燃焼筒と前記下流側改質部とを熱交換可能に接続する伝熱促進部と、を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の水素製造装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の水素製造装置と、前記水素製造装置によって生成された改質ガスを利用して発電する燃料電池装置と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−7204(P2009−7204A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170674(P2007−170674)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】