説明

水素貯蔵材料、その製造方法及び水素貯蔵材料における水素放出・吸蔵方法

【課題】 LiH(水素化リチウム)及びLiNH2(リチウムアミド)を含む水素貯蔵材料において、水素放出のピーク温度を低温側にシフトすることを可能とし、しかもこの水素貯蔵材料を安価に得ることを目的とする。
【解決手段】 金属元素供給粒子と、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子とを含む混合物から構成され、金属元素供給粒子と、リチウムアミド粒子及び水素化リチウム粒子とは、混合物の状態で機械的なエネルギーが付与された水素貯蔵材料により前記課題を解決する。金属元素供給粒子、リチウムアミド粒子及び水素化リチウム粒子は、相互に又は同種類の粒子同士が、機械的なエネルギーの付与により接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、常温、低圧下で多量の水素を貯蔵することができる新規な水素貯蔵材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境保全や化石燃料の枯渇の問題から、化石燃料に代わる代替エネルギーとして燃料電池が電力の供給源として有望視されている。燃料電池は原料に水素と酸素を用い、その排ガスもクリーンであることから注目されている。ところが、燃料を水素とする場合、メタノールや天然ガスの改質を利用する方法では起動時に時間がかかることや急激な負荷変動に対応しにくいという欠点がある。そこで、水素を貯蔵する必要があるが、自動車への搭載を想定すると、1回の水素充填で400〜500km走行するためには水素は5kg程度必要であり、この水素量を圧縮した高圧ボンベや低温にした液体水素にしなければならない。しかし、圧縮水素として貯蔵する場合、70MPaの圧縮水素を高圧ボンベに貯蔵しても水素の圧縮率の低下のためそれほど体積が小さくならず、それを充填する高圧ボンベが重いという欠点がある。また、液体水素として貯蔵する場合、水素を常時−252℃に冷却して貯蔵しなければならず、貯蔵容器が大きくなる欠点がある。
【0003】
最近、これらの問題を解決できる貯蔵容積が小さくて軽量な水素貯蔵材料が求められている。現在、最も実用化に近いものは水素吸蔵合金であり、これは水素を金属水素化物として貯蔵するものである。しかし、水素吸蔵合金の単位重量当たりの水素吸蔵量が小さいために、多量の水素を必要とする車載用には未だ使用できない。また、合金の場合、水素の吸蔵及び放出時には、合金を高圧、高温条件に曝す必要があるために、その繰り返しによる水素吸蔵合金の劣化及び性能低下、また構成元素が希少金属の場合には、資源枯渇等の問題がある。
【0004】
このような状況において、軽量で多量の水素を吸蔵することができる無機系の材料としてアラネード系材料(LiAlH4)が注目されている(特許文献1、特許文献2)。アラネード系材料はBogdanovicらのTiドープ法の改良により、実用的な条件で2mol%のTiをドープしたNaAlH4の以下の反応式による水素放出と再水素化反応が検討されている。
NaAlH4⇒1/3Na3AlH6+Al+H2
【0005】
この材料はメカノケミカル法でLiHとLiAlH4から5時間かけて製造され、水素貯蔵量5.6wt%を示すことが知られている。この材料によると、水素貯蔵量が3wt%までの場合は、水素の放出及び吸蔵の繰り返しが100サイクル程度までは、水素の放出と吸蔵の繰り返しを確保することができる。しかし、3〜5.6wt%の貯蔵量を確保するとなると、水素の放出及び吸蔵の繰り返しサイクル数が極めて少なくなる。つまり、可逆的に使用可能な水素量は、従来の合金なみの約3wt%である。しかも、水素吸蔵合金と比較して水素放出温度が高く、かつ水素吸蔵圧力が高いという欠点がある。
【0006】
アラネード系材料と同様にLiBH4も多量の水素を放出することが知られている。現在までに、SiO2触媒の添加で400℃までに9wt%の水素放出が認められている。しかし、この材料は融点が275℃であるため性能が不安定であることと、ほとんど水素を再吸着しないなど、可逆性に劣るという欠点がある。
【0007】
シンガポール大のChen等により非特許文献1、特許文献3に報告されたリチウムアミド系材料が注目を浴びている。Chen等は出発物質をLi3N(窒化リチウム)とし、以下に示す反応式にしたがって、高温高圧で水素化したものを水素吸蔵材料としている。
Li3N+2H2⇒LiNH2+2LiH
【0008】
この反応によれば、理論的には約9wt%の水素貯蔵量を得ることができる。しかし、エンタルピー(ΔH)が大きいために、吸蔵した水素の全てを放出させるのに600℃以上の高温加熱が必要である。
【0009】
広島大学の市川等は、Chen等の反応を詳細に検討することによって、上記反応を次の2段階に分離できることを非特許文献2において報告した。
Li3N+H2⇔Li2NH+LiH
Li2NH+H2⇔LiNH2+LiH
【0010】
市川等は、Chen等の反応のうちΔHが小さいLi2NH+H2⇔LiNH2+LiHに着目し、LiNH2(リチウムアミド)とLiH(水素化リチウム)の混合物を出発物質とし、これらに機械的な粉砕処理を行った。その結果、LiNH2の微細な粒子とLiHの微細な粒子が絡まった反応空間を創製し、副生成物のアンモニアの生成量を低減できることが報告されている。しかも、この水素貯蔵材料は、水素吸蔵量が理論量並みの約6wt%(水熱処理前後の重量変化)が得られている。しかし、水素放出のピーク温度が200〜250℃付近にあり、燃料電池に適用するためには未だ高い。
【0011】
この放出ピーク温度を低くするために、市川らのグループはリチウムアミドをマグネシウムアミド等に代えることを試みている。マグネシウムアミド等を使用する目的は、上述のリチウムアミドと水素化リチウムの系で水素吸蔵及び放出に寄与する水素原子(または分子)と窒素またはリチウムの結合を緩めるためである。しかし、マグネシウムアミドは高価であるとともに、マグネシウムアミドはアンモニアと水素化マグネシウムの混合物から機械的な粉砕処理で別途製造が必要な点など未だ技術課題がある。
【0012】
【特許文献1】特表平11−510133号公報
【特許文献2】特表2002−522209号公報
【特許文献3】国際公開第03/037784号パンフレット
【非特許文献1】P. Chen, et al. Nature, 420, 302-304, (2002)
【非特許文献2】Ichikawa et al., J. Phys. Chem. B, 2004, 108, 7887-7892
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、LiH(水素化リチウム)及びLiNH2(リチウムアミド)を含む水素貯蔵材料において、水素放出のピーク温度を低温側にシフトすることを可能とし、しかもこの水素貯蔵材料を安価に得ることを目的とする。また、本発明はそのような水素貯蔵材料における水素放出、吸蔵方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、LiNH2(リチウムアミド)及びLiH(水素化リチウム)における水素の結合を不安定にすることにより、水素放出反応のΔHを低下させることに着目した。そして、この水素の結合の不安定化のために、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドに金属元素を挿入させることを試みた。金属元素の挿入方法としては、混合物に機械的なエネルギーを付与、典型的には機械的な粉砕処理を行うことにより粒子同士を相当の強さで衝突または反応させる方法を採用した。その結果、水素放出のピーク温度を200℃未満にすることに成功した。
【0015】
本発明は以上の知見に基づくものであり、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む混合物から構成され、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、混合物の状態で機械的なエネルギーが付与されたことを特徴とする水素貯蔵材料である。
【0016】
本発明の水素貯蔵材料において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、相互に又は同種類の粒子同士が、機械的なエネルギーの付与により接合されていることが好ましい。機械的なエネルギーの付与により接合されている場合には、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドに金属元素が挿入しているものとみなすことができるからである。ここで、機械的なエネルギーの付与の手法として、機械的な粉砕処理が好ましい。機械的な粉砕が行われる程度のエネルギーを付与すれば、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、相互に又は同種類の粒子同士を接合させることができるからである。
【0017】
以上の水素貯蔵材料において、金属元素供給粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から選択される1種又は2種以上の金属から構成することが、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
また、本発明において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、0.01〜1:1〜2:1のモル比で混合されていることも、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
さらに、本発明の水素貯蔵材料は、触媒粒子が混合されていることも、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
以上の構成を採用することにより、本発明の水素貯蔵材料は、水素放出のピーク温度を200℃未満にできる。
【0018】
本発明によれば、以上説明した水素貯蔵材料を製造する以下の方法が提供される。この水素貯蔵材料の製造方法は、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物を作製するステップ(a)と、ステップ(a)で作製された原料組成物に機械的なエネルギーを付与するステップ(b)と、を含むことを特徴とする。原料組成物に機械的なエネルギーを付与するのは、水素化リチウム粒子及び/又はリチウムアミド粒子に金属元素を侵入させるためである。
【0019】
ステップ(b)における機械的なエネルギー付与を、機械的な粉砕処理で行うことが好ましいのは前述の通りである。このときの機械的な粉砕処理は、0.01〜200時間行うことが好ましい。また、ステップ(b)における機械的なエネルギー付与は、アルゴンガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0020】
本発明の水素貯蔵材料の製造方法において、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子に対して予め機械的なエネルギーを付与すること、又は金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子に対して予め機械的なエネルギーを付与することが好ましい。金属元素の挿入を促進させるためである。つまり、本発明は、ステップ(a)において、混合状態で予め機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子に対して、水素化リチウム粒子を混合して原料組成物を作製し、ステップ(b)において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に機械的なエネルギーを付与することができる。また、本発明は、ステップ(a)において、混合状態で予め機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子に対して、リチウムアミド粒子を混合して原料組成物を作製し、ステップ(b)において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に機械的なエネルギーを付与することもできる。もちろん本発明は、混合状態で予め機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子と、混合状態で予め機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を混合して原料組成物を作製する形態し、さらに機械的なエネルギーを付与する形態をも包含する。
【0021】
また、本発明において、金属元素供給粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から選択される1種又は2種以上の金属から構成することが、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
また、本発明において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、0.1〜1:1〜2:1のモル比で混合されていることも、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
さらに、本発明は、原料組成物に触媒粒子が混合されていることも、水素放出のピーク温度の低下にとって好ましい。
【0022】
本発明による水素貯蔵材料を用いて水素放出・吸蔵を行うためには、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む混合物から構成され、かつ金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、混合物の状態で機械的なエネルギーが付与された水素貯蔵材料を所定温度に加熱することにより水素を放出させるステップ(e)と、水素が放出された水素貯蔵材料を水素雰囲気下に晒すことにより水素貯蔵材料に水素を吸蔵するステップ(f)と、を実行すればよい。本発明のステップ(e)において、水素貯蔵材料の加熱温度が200℃未満であっても、多量の水素を放出することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、LiH(水素化リチウム)及びLiNH2(リチウムアミド)を含む水素貯蔵材料において、水素放出のピーク温度を低温側にシフトすることができる。しかもこの水素貯蔵材料は、金属元素を添加し、機械的なエネルギーを付与することにより得ることができるので、低コストで水素貯蔵材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明をより詳細に説明する。
<水素貯蔵材料>
本発明の水素貯蔵材料は、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む混合物から構成される。そして、この混合物において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、混合物の状態で機械的なエネルギーが付与されている。
混合物の状態で機械的なエネルギーが付与されることにより、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子が、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。この反応性の増大により、金属元素供給粒子がリチウムアミドと反応し、また金属元素供給粒子が水素化リチウムと反応する。この反応により、金属元素供給粒子がリチウムアミドと接合し、また金属元素供給粒子が水素化リチウムと接合することがある。また、この反応により、水素化リチウム粒子及び/又はリチウムアミド粒子に、金属元素供給粒子を構成する金属元素を挿入させることができる。このように、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドに対して、リチウムの化学量論組成よりも過剰に金属元素を侵入させたり、欠陥を作ったりすることにより、水素の結合状態が不安定となり、ΔHが低くなる結果として、水素放出温度のピークを低温側にシフトすることができる。
【0025】
本発明の金属元素供給粒子を構成する金属としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属の中から選択される1種又は2種以上を掲げることができる。
ここで、アルカリ金属とは、水素を除く周期律表第1族に属するLi、Na、K、Rb、Cs及びFrをいう。アルカリ金属の中では、Li、Ka及びKを用いることが本発明にとって好ましい。重い元素を使用すると水素貯蔵密度が低下するためである。
また、アルカリ土類金属とは、Be及びMgを除く周期律表第2族に属するCa、Sr、Ba及びRaをいうが、本発明ではBe及びMgを包含するものとして扱う。アルカリ土類金属の中では、Mg及びCaを用いることが好ましい。Beは毒性があることから避け、SrやBa元素は重いことと電気陰性度が小さいために十分な効果が得られないためである。
さらに、遷移金属とは、d軌道又はf軌道が電子で満たされておらず、種々の酸化数をとることのできる元素のことであり、具体的にはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、周期律表においてLaからHgまで、AcからLrまでの元素をいう。遷移金属の中では、Fe、Co、Ni、Cu、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cdを用いることが好ましい。Tc、Ruなどの重い元素は水素貯蔵密度が低下するため効果が顕著ではないためである。
【0026】
本発明の水素貯蔵材料において、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、0.01〜1:1〜2:1のモル比で混合されていることが好ましい。
金属元素供給粒子の比率が0.01未満では、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドに挿入する金属元素の量が不足するために、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドにおける水素の結合状態を十分に不安定にすることができない。したがって、水素放出温度のピークを十分に低温側にシフトすることができない。一方、金属元素供給粒子のモル比率が1を超えると、水素化リチウム及び/又はリチウムアミドに金属元素を挿入させる効果が飽和してしまう。また、金属元素供給粒子自体は水素貯蔵・放出を行わないために、必要以上に含まれると、水素貯蔵材料の単位重量あたりの水素貯蔵量、水素放出量を低下させる。そこで、リチウムアミド粒子に対する金属元素供給粒子の比率は1以下とすることが好ましい。さらにリチウムアミド粒子に対する好ましい金属元素供給粒子の比率は0.05〜0.8、リチウムアミド粒子に対するより好ましい金属元素供給粒子の比率は0.1〜0.5である。
【0027】
水素化リチウム粒子の比率が1未満では金属元素供給粒子と水素化リチウム又はリチウムアミドの挿入反応が進行する。また、リチウムアミド粒子に対する水素化リチウム粒子の比率が2を超えるとその量は過剰供給となり、水素貯蔵量の低下となる。したがって、リチウムアミド粒子に対する水素化リチウム粒子の比率は、1〜2とすることが好ましい。リチウムアミド粒子に対するさらに好ましい水素化リチウム粒子の比率は1〜1.5、リチウムアミド粒子に対するより好ましい水素化リチウム粒子の比率は1〜1.2である。
【0028】
本発明の水素貯蔵材料は、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子の他に、触媒粒子を含むことが好ましい。ここで、触媒粒子は、Li2NH+H2⇔LiNH2+LiHの反応を促進することのできる物質から構成される。具体的には、遷移金属、遷移金属の酸化物、遷移金属の塩化物を用いることができる。これらの中では、Ti及び/又はAlを用いるのが好ましく、金属Ti及び/又は金属Al、酸化物チタン及び/又は酸化アルミニウム並びに塩化チタン及び/又は塩化アルミニウムを用いるのが好ましい。触媒粒子は、リチウムアミドに対して0.001〜0.1のモル比率で含むことが好ましい。0.001未満では触媒としての機能を十分に発揮することができない。また、0.1を超えても触媒としての機能は向上しないとともに、水素貯蔵材料の単位重量あたりの水素貯蔵量、水素放出量を低下させる。リチウムアミドに対する触媒粒子のより好ましい比率は0.005〜0.08であり、リチウムアミドに対するさらに好ましい比率は0.01〜0.05である。
【0029】
<水素貯蔵材料の製造方法>
次に、本発明の水素貯蔵材料の製造方法について説明する。この製造方法は、少なくとも4つの形態があり、以下第1形態〜第4形態の順に説明する。
<第1形態>
第1形態は、図1に示すように、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物を得る(S101)。この原料組成物を得る際には、金属元素供給粒子:水素化リチウム粒子:リチウムアミド粒子=0.01〜1:1〜2:1のモル比となるように秤量することが好ましい。原料となる金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、概ね10〜1000μm程度の粒径を有していればよいが、これに限定されるものではない。また、触媒粒子を含む水素貯蔵材料を製造する場合は、この段階で配合すればよい。
【0030】
次いで、図1に示すように、得られた原料組成物に対して機械的なエネルギーを付与する(S103)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。この反応性の増大により、金属元素供給粒子がリチウムアミド粒子と反応し、また金属元素供給粒子が水素化リチウム粒子と反応する。水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子も互いに活性化して、反応することになる。
【0031】
このような機械的なエネルギーの付与には、機械的な粉砕機を用いることができる。粉砕機は、物質を粉砕することを目的としているが、本発明では粉砕自体を目的とするものではなく、あくまで金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子に、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーを付与することを目的とするものである。もっとも、この目的を達成する過程で、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子が粉砕されることを排除するものではない。粉砕が行われる程度の機械的なエネルギーを付与することは、本発明にとって好ましいということができるからである。
【0032】
本発明の機械的なエネルギーの付与には、ロッキングミルを用いることができる。ロッキングミルは、ミル容器を回転しつつ三次元に振動させることのできる粉砕機であり、ボールミルの数十倍の機械的なエネルギーを非処理物に付与することができる。
図5にロッキングミル1の外観の正面図を示す。後述する実施例では機械的な粉砕(ケミカルミリング)にロッキングミル1を使用した。図5において、ミル容器2はロッキングミル1の上面に備え付けられた振動テーブル3に固定する。ミル容器2には内部を真空排気及び水素ガスが充填できるように枝管を取り付け、圧力センサーで水素ガスの圧力を常時計測できるようにしてある。ロッキングミル1は振動テーブル3の中心を振動中心としてケミカルミリングを行う。
【0033】
図6にミル容器2の内部構造の断面図を示す。図6に示すように、ミル容器2の内部に処理対象物(金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子、リチウムアミド粒子、触媒粒子)4を充填する。ケミカルミリングのために鋼鉄製のボール5をミル容器2の内部に入れ、ロッキングミル1の運動6によって粉砕処理する。この処理により金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子、リチウムアミド粒子、触媒粒子は微細な凝集粉を形成する。この凝集粉の粒径は、0.1〜10μm程度である。
以上のような、機械的な粉砕処理を行う時間は0.01〜200時間の範囲から選択することが好ましい。0.01時間未満では、十分な機械的なエネルギーを金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子に付与することができない。また、200時間程度粉砕処理を行えば十分な機械的なエネルギーを金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子に付与することができるからである。好ましい粉砕処理時間は、0.1〜100時間、さらに好ましい粉砕処理時間は0.5〜40時間である。
また、機械的な粉砕処理も含め、機械的なエネルギーを付与する雰囲気は不活性ガス雰囲気、特にアルゴンガス雰囲気とすることが好ましい。多くの材料がアルゴンに対して不活性であるためである。
【0034】
<第2形態>
第2形態は、図2に示すように、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物を得る(S201)。この原料組成物を得る際には、金属元素供給粒子:水素化リチウム粒子:リチウムアミド粒子=0.01〜1:1〜2:1のモル比となるように秤量する。
【0035】
次いで、図2に示すように、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に対して機械的なエネルギーを付与する(S203)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。この反応性の増大により、金属元素供給粒子がリチウムアミド粒子と反応する。
【0036】
次いで、機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物と水素化リチウム粒子を秤量、配合する(S205)。そして、この金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に対して、機械的なエネルギーを付与する(S207)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。とくに、リチウムアミド粒子は、予め金属元素供給粒子とともに機械的なエネルギーが付与され、さらに水素化リチウムが配合された後にも機械的なエネルギーが付与されるため、金属元素の挿入を促進することができる。なお、触媒粒子を含む水素貯蔵材料を製造する場合は、この段階で配合すればよい。
【0037】
<第3形態>
第3形態は、図3に示すように、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物を得る(S301)。この原料組成物を得る際には、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を、金属元素供給粒子:水素化リチウム粒子:リチウムアミド粒子=0.01〜1:1〜2:1のモル比となるように秤量する。
【0038】
次いで、図3に示すように、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物に対して機械的なエネルギーを付与する(S303)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。この反応性の増大により、金属元素供給粒子が水素化リチウム粒子と反応する。
【0039】
第3形態は、機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物とリチウムアミド粒子を秤量、配合する(S305)。そして、この金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に対して、機械的なエネルギーを付与する(S307)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子には、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。とくに、水素化リチウム粒子は、予め金属元素供給粒子とともに機械的なエネルギーが付与され、さらにリチウムアミド粒子が配合された後にも機械的なエネルギーが付与されるため、金属元素の挿入を促進することができる。なお、触媒粒子を含む水素貯蔵材料を製造する場合は、この段階で配合すればよい。
【0040】
<第4形態>
第4形態は、図4に示すように、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物を得る(S401)。また第4形態は、図4に示すように、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物を得る(S405)。以上の原料組成物を得る際には、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を、金属元素供給粒子:水素化リチウム粒子:リチウムアミド粒子=0.01〜1:1〜2:1のモル比となるように秤量する。
【0041】
次いで、図4に示すように、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に対して機械的なエネルギーを付与する(S403)。また、図4に示すように、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物に対して機械的なエネルギーを付与する(S407)。機械的なエネルギーを付与することにより、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子、並びに金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子は、互いに衝突を繰り返す。この過程で、金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子、金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子には、各々、圧縮、摩擦、衝撃などの機械的なエネルギーが付与されることにより、活性化して各粒子は反応性が増大する。この反応性の増大により、金属元素供給粒子がリチウムアミド粒子と、また金属元素供給粒子が水素化リチウム粒子と反応する。
【0042】
第4形態は、機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物と、機械的なエネルギーが付与された金属元素供給粒子及び水素化リチウム粒子を含む原料組成物とを秤量、配合する(S409)。そして、この金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物に対して、機械的なエネルギーを付与する(S411)。機械的なエネルギーを付与することによる効果は上述の通りであるが、第4形態では、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子は、各々、予め金属元素供給粒子とともに機械的なエネルギーが付与され、さらに両者が配合された後にも機械的なエネルギーが付与されるため、金属元素の挿入をより促進することができる。また、触媒粒子を含む水素貯蔵材料を製造する場合は、この段階で配合すればよい。
【0043】
<水素貯蔵材料の使用方法>
以上のようにして得られた本発明の水素貯蔵材料は、加熱することにより水素を放出する。本発明の水素貯蔵材料の特徴は、水素放出のピーク温度を200℃未満にできるところにある。このような温度域に水素放出のピークがあるということは、水素貯蔵材料の実用性にとって非常に有効である。
【0044】
本発明の水素貯蔵材料は、水素を放出した後には、基本的にはリチウムイミド(Li2NH)となる。水素放出により得られたリチウムイミドを水素ガス雰囲気下で加熱されることにより、再度水素を吸蔵することができる。この水素吸蔵により、本発明の水素貯蔵材料が構成される。水素吸蔵のための加熱は、100〜250℃の範囲とすればよい。また、水素ガス雰囲気は、加圧雰囲気とすることが好ましい。
本発明により得られる水素貯蔵材料は、水素放出、水素貯蔵を繰り返すことができる可逆的な水素貯蔵を実現することができる。しかも、水素放出、水素貯蔵の繰り返しサイクルを100程度行うことができる。
【実施例1】
【0045】
水素化リチウム(LiH):0.1g、リチウムアミド(LiNH2):0.26g、金属Mg:0.1g及び酸化チタン(TiO2):0.45gを秤量し、高純度アルゴン雰囲気(水分≦1ppm)のグローブボックス内でミル容器2に充填した。ミル容器2をロッキングミル1に固定し、圧力センサーでリークがないことを確認した後、振動数50Hzで2時間機械的な粉砕(ケミカルミリング)処理した。次にケミカルミリング処理した試料を段階的に昇温させ、それぞれの温度での試料からの水素放出量を測定した。
金属Mgを添加することなく、上記と同様にして水素貯蔵材料を作製した。また、金属Mgの替わりに水素化Mg又は金属Liを添加した以外は、上記と同様にして水素貯蔵材料を作製した。
【0046】
表1に水素放出量(放出水素重量/(水素化リチウム+リチウムアミド+添加金属元素重量+触媒重量)の測定結果を示す。
表1より、250℃までの積算水素放出量は、金属Mgを添加することなく作製した水素貯蔵材料が最も高いことがわかる。しかし、175℃以下の温度における水素放出量、又は200℃以下の温度における水素放出量を比較すると、金属Mg、水素化Mgあるいは金属Liを添加した水素貯蔵材料の方が、金属Mgを添加することなく作製した水素貯蔵材料に比べて水素放出量が高いことがわかる。また、表1より、金属Mgを添加することなく作製した水素貯蔵材料は、水素放出のピーク温度が200〜250℃の範囲にあるが、金属Mgを添加して作製された水素貯蔵材料は、水素放出のピーク温度が150〜175℃の範囲にある。このように、金属Mgを添加することにより、水素放出のピーク温度を低温側にシフトできることがわかる。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
水素化リチウム(LiH):0.1g、リチウムアミド(LiNH2):0.26g、金属Mg:0.1g及び触媒として、酸化チタン(TiO2)、塩化チタン(TiCl3)又は塩化チタン・塩化アルミニウム混合物(TiCl3・AlCl3):0.45gを秤量し、以後は実施例1と同様にして水素貯蔵材料を製造し、やはり実施例1と同様に水素放出量の測定を行った。その結果を表2に示すが、触媒として塩化チタン(TiCl3)又は塩化チタン・塩化アルミニウム混合物(TiCl3・AlCl3)を用いることによっても、200℃以下、さらには175℃以下の水素放出量を増大できることがわかる。
【0049】
【表2】

【実施例3】
【0050】
リチウムアミド(LiNH2):0.26g、Li、Mg、Cu:0.1g及び酸化チタン(TiO2):0.45gを秤量し、高純度アルゴン雰囲気(水分≦1ppm)のグローブボックス内でミル容器2に充填し、以後は実施例1と同様の条件でロッキングミル1により粉砕処理を行った。
以上のようにリチウムアミドとLi、Mg又はCuとの粉砕処理を優先して得られた原料組成物に対して、高純度アルゴン雰囲気(水分≦1ppm)のグローブボックス内でミル容器2に水素化リチウム(LiH):0.1gを添加し、以後は実施例1と同様の条件でロッキングミル1により粉砕処理を行って、水素貯蔵材料を製造した。得られた水素貯蔵材料について、実施例1と同様に水素放出量を測定した。その結果を表3に示す。なお、表3には、リチウムアミドとLi、Mg又はCuとの粉砕処理を優先することなく、水素化リチウムとともに配合し、その後、実施例1と同様の条件で製造した水素貯蔵材料の水素放出量も併せて示している(表3、優先なし)。
【0051】
【表3】

【0052】
表3からLi、Mg及びCuのいずれにおいても、水素放出量のピークが低温側へシフトする傾向が見出され、リチウムアミドと金属元素の機械的粉砕処理を優先する工程を採用することにより、水素放出特性が向上する効果が確認された。すなわち、リチウムアミドと金属元素を予めケミカルミリングすることによってリチウムアミドと添加金属元素の反応を選択的に促進させることによって、当該リチウムアミドに金属元素を効率良く挿入させることができる。
【実施例4】
【0053】
水素化リチウム(LiH):0.1g、Li、Mg、Cu:0.1g及び酸化チタン(TiO2):0.45gを秤量し、高純度アルゴン雰囲気(水分≦1ppm)のグローブボックス内でミル容器2に充填し、以後は実施例1と同様の条件でロッキングミル1により粉砕処理を行った。
以上のように水素化リチウムとLi、Mg又はCuとの粉砕処理を優先して得られた処理物に対して、高純度アルゴン雰囲気(水分≦1ppm)のグローブボックス内でミル容器2にリチウムアミド(LiNH2):0.26gを添加し、以後は実施例1と同様の条件でロッキングミル1により粉砕処理を行って、水素貯蔵材料を製造した。得られた水素貯蔵材料について、実施例1と同様に水素放出量を測定した。その結果を表4に示す。なお、表4には、水素化リチウムとLi、Mg又はCuとの粉砕処理を優先することなく、リチウムアミドとともに配合し、その後、実施例1と同様の条件で製造した水素貯蔵材料の水素放出量も併せて示している(表4、優先なし)。
【0054】
【表4】

【0055】
表4からLi、Mg及びCuのいずれにおいても、水素放出のピーク温度が低温側へシフトする傾向が見出され、水素化リチウムと金属元素の機械的粉砕処理を優先する工程を採用することにより、水素放出特性が向上する効果が確認された。すなわち、水素化リチウムと金属元素を予めケミカルミリングすることによって水素化リチウムと添加金属元素の反応を選択的に促進させることによって、当該リチウムアミドにMgなどの金属元素を効率良く挿入させることができる。
【実施例5】
【0056】
実施例2水素放出を行った試料について、250℃、1MPaの水素雰囲気下で3時間放置する水素の再吸着処理を行った。3時間放置後、試料を室温に戻した後、大気圧、250℃に昇温して水素放出を行い、積算水素量を測定した。なお、以上の水素再吸着を3回繰り返した。その結果を、表5に示す。表5に示すように、水素の再吸着を行っても、当初の水素放出量を確保することができることがわかった。
【0057】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1形態による水素貯蔵材料の製造手順を示す図である。
【図2】第2形態による水素貯蔵材料の製造手順を示す図である。
【図3】第3形態による水素貯蔵材料の製造手順を示す図である。
【図4】第4形態による水素貯蔵材料の製造手順を示す図である。
【図5】ロッキングミルの構成を示す図である。
【図6】ロッキングミルによる粉砕を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0059】
1…ロッキングミル、2…ミル容器、3…振動テーブル、4…処理対象物(金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子、リチウムアミド粒子、触媒粒子)、5…ボール、6…運動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む混合物から構成され、
前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子は、前記混合物の状態で機械的なエネルギーが付与されたことを特徴とする水素貯蔵材料。
【請求項2】
前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子は、相互に又は同種類の粒子同士が、前記機械的なエネルギーの付与により接合されていることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項3】
前記機械的なエネルギーの付与が、機械的な粉砕処理によることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素貯蔵材料。
【請求項4】
前記水素化リチウム粒子及び/又は前記リチウムアミド粒子は、前記金属元素供給粒子を構成する金属元素が侵入していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素貯蔵材料。
【請求項5】
前記金属元素供給粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から選択される1種又は2種以上の金属から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素貯蔵材料。
【請求項6】
前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子は、0.01〜1:1〜2:1のモル比で混合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素貯蔵材料。
【請求項7】
触媒粒子が混合されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水素貯蔵材料。
【請求項8】
水素放出のピーク温度が200℃未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水素貯蔵材料。
【請求項9】
金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む原料組成物を作製するステップ(a)と、
前記原料組成物に機械的なエネルギーを付与するステップ(b)と、
を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)における前記機械的なエネルギー付与が、機械的な粉砕処理であることを特徴とする請求項9に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項11】
前記機械的な粉砕処理を0.01〜200時間行うことを特徴とする請求項10に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)における機械的なエネルギー付与を、アルゴンガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)において、混合状態で予め前記機械的なエネルギーが付与された前記金属元素供給粒子及び前記リチウムアミド粒子に対して、前記水素化リチウム粒子を混合して前記原料組成物を作製し、
前記ステップ(b)において、前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子を含む前記原料組成物に前記機械的なエネルギーを付与することを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(a)において、混合状態で予め前記機械的なエネルギーが付与された前記金属元素供給粒子及び前記水素化リチウム粒子に対して、前記リチウムアミド粒子を混合して前記原料組成物を作製し、
前記ステップ(b)において、前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子を含む前記原料組成物に前記機械的なエネルギーを付与することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項15】
前記金属元素供給粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から選択される1種又は2種以上の金属から構成されることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項16】
前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子は、0.01〜1:1〜2:1のモル比で混合されていることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項17】
前記原料組成物に、触媒粒子が混合されていることを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項18】
金属元素供給粒子、水素化リチウム粒子及びリチウムアミド粒子を含む混合物から構成され、かつ前記金属元素供給粒子、前記水素化リチウム粒子及び前記リチウムアミド粒子は、前記混合物の状態で機械的なエネルギーが付与された水素貯蔵材料を所定温度に加熱することにより水素を放出させるステップ(e)と、
水素が放出された前記水素貯蔵材料を水素雰囲気下に晒すことにより前記水素貯蔵材料に水素を吸蔵させるステップ(f)と、
を含むことを特徴とする水素貯蔵材料における水素放出・吸蔵方法。
【請求項19】
前記ステップ(e)における加熱温度が200℃未満であることを特徴とする請求項18に記載の水素貯蔵材料における水素放出・吸蔵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−247511(P2006−247511A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66909(P2005−66909)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 水素安全利用等基板技術開発 水素に関する共通基盤技術開発 メカノケミカル法グラファイト系及びリチウム系水素貯蔵材料の研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】