説明

水素貯蔵材料およびその製造方法

【課題】 水素放出温度を低温化させた水素貯蔵材料、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 水素貯蔵材料は、金属水素化物と金属アミド化合物と水素吸放出能を高める触媒とを含む混合物または複合化物から構成され、この触媒としてナノ粒子からなるものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等の燃料として用いられる水素貯蔵材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NOやSO等の有害物質やCO等の温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギー源として燃料電池の開発が盛んに行われており、既に幾つかの分野で実用化されている。この燃料電池技術を支える重要な技術として、燃料電池の燃料となる水素を貯蔵する技術がある。水素の貯蔵形態としては、高圧ボンベによる圧縮貯蔵や液体水素化させる冷却貯蔵、水素貯蔵物質による貯蔵が知られており、これらの形態の中で、水素貯蔵物質による貯蔵は、分散貯蔵や輸送の点で有利である。水素貯蔵物質としては、水素貯蔵効率の高い材料、つまり水素貯蔵物質の単位重量または単位体積あたりの水素貯蔵量が高い材料、低い温度で水素の吸収/放出が行われる材料、良好な耐久性を有する材料が望まれる。
【0003】
従来、水素貯蔵物質としては、希土類系、チタン系、バナジウム系、マグネシウム系等を中心とする金属材料、金属アラネート(例えば、NaAlHやLiAlH)等の軽量無機化合物、カーボン等の種々の材料が知られている。また、例えば、下式(1)で示されるリチウム窒化物を用いた水素貯蔵方法も報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
LiN+2H⇔LiNH+LiH+H⇔LiNH+2LiH…(1)
【0004】
ここで、LiNによる水素の吸収は100℃程度から開始し、255℃、30分で9.3質量%の水素吸収が確認されている。また、吸収された水素の放出特性としては、ゆっくり加熱することによって200℃弱で6.3質量%、320℃以上で3.0質量%と、二段階のステップを経ることが報告されている。すなわち、上記(1)式の右辺部分に相当する下式(2)の反応は200℃弱で進行し始め、上記(1)式の左辺部分に相当する下式(3)の反応は約320℃で進行し始めることが示されている。
LiNH+2LiH→LiNH+LiH+H↑…(2)
LiNH+LiH→LiN+H↑…(3)
【0005】
しかしながら、上記(1)式に示されるリチウム窒化物は、水素放出温度が高いという問題がある。
【非特許文献1】Ruff, O. , and Goerges, H., Berichte der Deutschen ChemischenGesellschaft zu Berlin,Vol.44, 502-6(1911)
【非特許文献2】Ping Chen et al., Interaction of hydrogen with metalnitrides andimides, NATURE Vol.420, 21 NOVEMBER 2002, p302〜304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らはかかる事情に鑑み、先に特願2003−291672号において、リチウムアミド(LiNH)と水素化リチウム(LiH)をナノ構造化することにより、水素発生反応温度を低温側へシフトさせた水素貯蔵材料を開示した。しかし、水素発生反応温度をさらに低温化させることが望まれている。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、水素放出温度を低温化させた水素貯蔵材料、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、金属水素化物と金属アミド化合物と水素吸放出能を高める触媒とを含む混合物または複合化物から構成される水素貯蔵材料であって、前記触媒はナノ粒子からなることを特徴とする水素貯蔵材料、が提供される。
【0008】
この水素貯蔵材料では、金属水素化物と金属アミド化合物の金属種が2種類以上であることが好ましい、また、金属種としては、リチウム、マグネシウム、カルシウムのいずれかが好適に用いられる。特に好ましい組み合わせとして、水素化リチウムとマグネシウムアミドの組み合わせが挙げられ、この場合には、マグネシウムアミド1モルに対する水素化リチウムの混合比を2モル以上5モル以下とすることが好ましい。別の好ましい組み合わせとしては、水素化マグネシウムとリチウムアミドの組み合わせが挙げられ、この場合には、リチウムアミド1モルに対する水素化マグネシウムの混合比を0.5モル以上3モル以下とすることが好ましい。触媒の担持量は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物または複合化物の合計量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、金属イミド化合物と水素吸放出能を高める触媒を含み、かつ、水素化された水素貯蔵材料であって、前記触媒はナノ粒子からなることを特徴とする水素貯蔵材料、が提供される。
【0010】
この水素貯蔵材料においては、金属イミド化合物としてリチウムイミドが好適に用いられ、リチウムイミドとしては、窒化リチウムを水素と反応させ、またはリチウムアミドを熱分解することにより合成されたものが好適に用いられる。触媒の担持量は、金属イミド化合物の全量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。また、金属イミド化合物としてリチウムイミドを用い、これにさらに窒化マグネシウムを含む水素貯蔵材料も好適に用いられる。この場合には、触媒の担持量は、リチウムイミドおよび窒化マグネシウムの合計量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0011】
触媒としては、B,C,Mn,Fe,Co,Ni,Pt,Pd,Rh,Li,Na,Mg,K,Ir,Nd,Nb,La,Ca,V,Ti,Cr,Cu,Zn,Al,Si,Ru,Mo,W,Ta,Zr,HfおよびAgから選ばれた1種または2種以上の金属、またはその化合物またはその合金、あるいは水素貯蔵合金が好適に用いられ、ナノ金属粒子、ナノ金属酸化物粒子、ナノ金属塩化物のいずれかを用いることが好ましい。
【0012】
本発明の第3の観点によれば、金属水素化物と金属アミド化合物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において機械的粉砕処理により混合、微細化することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0013】
本発明の第4の観点によれば、金属水素化物と金属アミド化合物を不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記被処理物に前記触媒を担持させる第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0014】
本発明の第5の観点によれば、金属水素化物または金属アミド化合物のいずれか一方に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物と他方とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0015】
本発明の第6の観点によれば、金属水素化物と金属アミド化合物それぞれに、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記金属水素化物と金属アミド化合物ごとに、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物どうしを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0016】
これら第5および第6の観点に係る水素貯蔵材料の製造方法によれば、金属水素化物と金属アミド化合物の金属種は2種類以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の第7の観点によれば、金属イミド化合物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、所定の機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0018】
本発明の第8の観点によれば、金属窒化物と金属イミド化合物を、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、所定の機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記被処理物に前記触媒を担持させる第2工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0019】
本発明の第9の観点によれば、金属窒化物または金属イミド化合物のいずれか一方に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物と他方とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する第2工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0020】
本発明の第10の観点によれば、金属窒化物と金属イミド化合物それぞれに、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記金属窒化物と金属イミド化合物ごとに、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物どうしを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
【0021】
これら第8から第10の観点に係る水素貯蔵材料の製造方法では、金属窒化物として窒化マグネシウムを、金属イミド化合物としてリチウムイミドを用いた組み合わせが好適に用いられる。また、第7から第10の観点に係る水素貯蔵材料の製造方法では、金属イミド化合物としてリチウムイミドを用い、この場合に、窒化リチウムを水素と反応させ、またはリチウムアミドを熱分解して合成したリチウムイミドが好適に用いられる。
【0022】
本発明によれば、上記水素貯蔵材料の製造方法により製造されたことを特徴とする水素貯蔵材料、が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水素貯蔵材料によれば、従来よりも水素放出温度を低温化させることができる。これにより、水素貯蔵材料から水素を放出させるための加熱に要するエネルギーを低減させ、また、水素貯蔵材料を充填する容器等の材質や構造の制限が緩和されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る第1の材料系は、金属水素化物と金属アミド化合物と水素吸放出能を高める触媒とを含む混合物または複合化物から構成される水素貯蔵材料であり、ここで、触媒としてはナノ粒子からなるもの(以下、「ナノ粒子触媒」という)を用いる。ナノ粒子触媒を水素貯蔵材料に担持させることにより、水素放出温度を低温化させることができる。
【0025】
一般的に、ナノ粒子とは粒径が実質的にサブミクロンオーダー未満の粒子を言うが、本発明におけるナノ粒子触媒とは、この一般的な定義に加えて、所定の水素貯蔵材料へ添加した場合に、そのナノ粒子触媒と同組成のマイクロ粒子触媒を同添加率で水素貯蔵材料に添加した場合よりも、水素放出スペクトルのピーク温度(以下「水素放出温度」という)を10℃以上低下させる効果を示すものを指すものとする。なお、マイクロ粒子触媒とは、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であるか、または粒子数の9割以上が0.1μm以上100μm以下の範囲にある粒子、または、BET比表面積が1.0m/g超20m/g未満の粒子を指すものとする。
【0026】
金属水素化物と金属アミド化合物の金属種としては、リチウム、マグネシウム、カルシウムのいずれかが好適に用いられ、水素放出温度を低温化させる観点からは、これら金属水素化物と金属アミド化合物の金属種を2種類以上とすることが好ましい。
【0027】
特に好ましい組み合わせとして、水素化リチウムとマグネシウムアミドの組み合わせが挙げられる。水素化リチウムとマグネシウムアミドとの水素放出反応は、下記(4)式および下記(5)式で表される。
2LiH+Mg(NH⇔LiNH+MgNH+2H …(4)
8LiH+3Mg(NH⇔4LiNH+Mg+8H …(5)
【0028】
上記(4)式および(5)式を考察すると、上記(4)式では、1モルのマグネシウムアミドに対して2モルの水素化リチウムが化学等量であり、理論水素貯蔵率は5.48質量%となる。一方、上記(5)式では、1モルのマグネシウムアミドに対して2.67モルの水素化リチウムが化学等量であり、理論水素貯蔵率は6.85質量%となる。したがって、マグネシウムアミドと水素化リチウムの組成比が変化することで支配的に起こる反応が変わり、また水素貯蔵率も変わってくることになる。
【0029】
ここで、上記(5)式を下記(6a)式および(6b)式に分けて考える。
6LiH+3Mg(NH⇔3LiNH+3MgNH+6H …(6a)
3MgNH+2LiH⇔LiNH+Mg+2H …(6b)
すると、上記(6a)式は上記(4)式における各物質の係数を3倍したものであり、実質的に上記(4)式と同じである。そして、上記(6b)式は上記(6a)式で生成したマグネシウムイミド(MgNH)と水素化リチウムとの反応である。
【0030】
つまり上記(5)式は、上記(4)式の反応を起こさせようとして水素化リチウムをマグネシウムアミドに対して化学量論比よりも過剰にすると、結果的に、生成したマグネシウムイミドの一部が過剰に添加された水素化リチウムと反応し、窒化マグネシウムが生成するところまで反応が進行する、ということを示している。
【0031】
これらのことから、1モルのマグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比が2未満の場合は、マグネシウムアミドが水素化リチウムに対して過剰であるから、このときには上記(4)式が支配的に進行する。また、1モルのマグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比が化学量論比である2の場合にも、上記(4)式が支配的に進行する。しかしながら、マグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比を上記(4)式に合わせたとしても、実際には、マグネシウムイミドと水素化リチウムの混合状態(分散状態)等に依存して、生成したマグネシウムイミドと水素化リチウムとが反応して上記(5)式の反応が進行し、一部のマグネシウムアミドは反応せずに残存することも起こり得ると考えられる。
【0032】
これに対して、1モルのマグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比が2超2.67未満の場合は、上記(4)式からみるとマグネシウムアミドに対して水素化リチウムは過剰であるが、上記(5)式からみるとマグネシウムアミドに対して水素化リチウムが不足している。この場合には、混合比が2に近い場合には上記(4)式が支配的に進行して、生成したマグネシウムイミドの一部が窒化マグネシウムへ変化し、混合比が2.67へ上がるにつれて上記(5)式が支配的に進行するようになる。そして、1モルのマグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比が2.67の化学量論比である場合と混合比が2.67超の場合には、上記(5)式が支配的に進行する。
【0033】
これら上記(4)式と上記(5)式のどちらを主体的に利用するかは、例えば、水素貯蔵率と、水素放出後の生成物に再び水素を吸蔵させる反応のサイクル特性(つまり、上記(4)式と上記(5)式の右辺から左辺への反応の容易さ)等とを考慮して、決定することができる。また、水素化リチウムとマグネシウムアミドのいずれか一方を他方に対して過剰とすることにより、その他方の物質の反応確率を上げて、水素放出を促進させることができると考えられる。しかし、一方の物質が過度に多すぎると、全量に対する水素貯蔵率を低下させてしまう問題が生ずる。
【0034】
したがって、このような水素貯蔵率や反応物質の利用率、水素吸放出反応のサイクル特性等を考慮して、水素化リチウムとマグネシウムアミドの各量を定めることが好ましい。具体的には、1モルのマグネシウムアミドに対する水素化リチウムの混合比を2モル以上5モル以下とすることが好ましく、さらに主に上記(5)式が進行するように、2.5モル以上3.5モル以下とすることで、水素貯蔵率をそれ以外の範囲よりも高く維持することができる。
【0035】
別の好ましい組み合わせとしては、水素化マグネシウムとリチウムアミドの組み合わせが挙げられる。水素化マグネシウムとリチウムアミドとの反応は、下記(7)式および下記(8)式で示される。
MgH+2LiNH⇔LiNH+MgNH+2H …(7)
3MgH+4LiNH⇔Mg+2LiNH+6H …(8)
【0036】
上記(7)式および(8)式を考察すると、上記(7)式では、1モルのリチウムアミドに対して0.5モルの水素化マグネシウムが化学等量であり、理論水素貯蔵率は5.48質量%となる。一方、上記(8)式では、1モルのリチウムアミドに対して0.75モルの水素化リチウムが化学等量であり、理論水素貯蔵率は7.08質量%となる。したがって、水素化マグネシウムとリチウムアミドの組成比が変化することで支配的に起こる反応が変わり、また水素貯蔵率も変わってくることになる。
【0037】
つまり、水素化マグネシウムとリチウムアミドの組み合わせの場合にも、前述した水素化リチウムとマグネシウムアミドの組み合わせの場合と同様に、水素貯蔵率や反応物質の利用率、水素吸放出反応のサイクル特性等を考慮して、水素化マグネシウムとリチウムアミドの各量を定めることが好ましい。具体的には、水素化マグネシウムを過剰とすることが好ましく、1モルのリチウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比を0.5モル以上3モル以下とすることが好ましい。さらに、さらに主に上記(8)式が進行するように、0.5モル以上1モル以下とすることで、水素貯蔵率をそれ以外の範囲よりも高く維持することができる。
【0038】
ナノ粒子触媒の担持量は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物または複合化物の合計量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。触媒添加率が0.1質量%未満では触媒としての効果が実質的に得られず、20質量%超では水素吸放出反応が逆に阻害され、また全量に対する水素放出率が低下する。
【0039】
上述した第1の材料系に属する水素貯蔵材料の製造方法としては、以下に示す4方法のいずれかを用いることができる。第1の製造方法は、金属水素化物と金属アミド化合物に、ナノ粒子触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下(以下「不活性ガス雰囲気下等」という)において機械的粉砕処理により混合、微細化する方法である。
【0040】
第2の製造方法は、金属水素化物と金属アミド化合物を不活性ガス雰囲気下等において機械的粉砕処理により混合、微細化し、こうして得られた被処理物にナノ粒子触媒を添加して、被処理物にナノ粒子触媒を担持させる方法である。
【0041】
第3の製造方法は、金属水素化物または金属アミド化合物のいずれか一方にナノ粒子触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下等において機械的粉砕処理により混合、微細化し、次に得られた被処理物と他方とを、不活性ガス雰囲気下等において混合粉砕する方法である。
【0042】
第4の製造方法は、金属水素化物と金属アミド化合物それぞれにナノ粒子触媒を添加して、金属水素化物と金属アミド化合物ごとに、不活性ガス雰囲気下等において機械的粉砕処理により混合、微細化し、こうして得られた被処理物どうしを、不活性ガス雰囲気下等において混合粉砕する方法である。後段の混合粉砕処理は、実質的に粉砕が起こらない条件での混合処理であってもよい。
【0043】
本発明の第2の材料系は、金属イミド化合物とナノ粒子触媒を含み、かつ、水素化された水素貯蔵材料である。ここで、本明細書において「物質の水素化」とは、その物質と水素とを反応させることによって、その物質が水素を取り込んだ状態に変化することをいうものとする。
【0044】
この第2の材料系に属する水素貯蔵材料としては、水素化したリチウムイミドが挙げられる。前記水素化の定義によれば、水素化したリチウムイミドは、リチウムイミドを水素と反応させることにより得られ、その構造は明らかでないが、リチウムアミドやアンモニアに変化することなく、水素と反応して水素を何らかの形で取り込んでおり、後に所定温度に加熱すると取り込まれた水素が放出されて元のリチウムイミドに戻る材料をいう。
【0045】
リチウムイミドの水素化は、リチウムイミドを所定圧力、所定温度の水素ガス雰囲気下で所定時間保持することにより行うことができる。ナノ粒子触媒の担持量は、第1の材料系の場合と同様の理由により、金属イミド化合物の全量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0046】
リチウムイミドは、窒化リチウムを水素と反応させ、またはリチウムアミドを熱分解することにより合成することが好ましい。これは次のような理由による。すなわち、リチウムイミドは水素化リチウムとリチウムアミドとを混合して反応させることにより合成することもできるが、この場合には固相反応となるために、ミクロな状態で水素化リチウムとリチウムアミドを均質に接触させるために大きな機械的エネルギーが必要になるという問題がある。これに対して、リチウムイミドを熱分解等により合成すれば、その過程でリチウムイミドの比表面積が大きくなり、水素化が進行しやすくなるというメリットがある。
【0047】
また、第2の材料系には、金属イミド化合物と金属窒化物とナノ粒子触媒を含み、かつ、水素化された水素貯蔵材料が含まれる。具体例としては、リチウムイミドと窒化マグネシウムとナノ粒子触媒を含み、これを水素化したものが挙げられる。この材料の場合にも、ナノ粒子触媒の担持量は、リチウムイミドおよび窒化マグネシウムの合計量の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
上述した各種の水素貯蔵材料に含まれるナノ粒子触媒としては、B,C,Mn,Fe,Co,Ni,Pt,Pd,Rh,Li,Na,Mg,K,Ir,Nd,Nb,La,Ca,V,Ti,Cr,Cu,Zn,Al,Si,Ru,Mo,W,Ta,Zr,HfおよびAgから選ばれた1種または2種以上の金属、またはその化合物またはその合金、あるいは水素貯蔵合金が好適に用いられる。ナノ粒子触媒の形態としては、ナノ金属粒子、ナノ金属酸化物粒子、ナノ金属塩化物が好適に用いられる。ナノ粒子触媒のさらに好ましい例としては、TiO(アナターゼ型)ナノ粒子、Tiナノ粒子が挙げられる。
【0049】
このような第2の材料系に属する水素貯蔵材料の製造方法としては、以下の4方法が好適に用いられる。第1の製造方法は、金属イミド化合物にナノ粒子触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下等において所定の機械的粉砕処理により混合、微細化し、その後に水素化する方法である。
【0050】
第2の製造方法は、金属窒化物と金属イミド化合物を不活性ガス雰囲気下等において所定の機械的粉砕処理により混合、微細化し、こうして得られた被処理物にナノ粒子触媒を添加して、被処理物にナノ粒子触媒を担持させ、その後に水素化する方法である。
【0051】
第3の製造方法は、金属窒化物または金属イミド化合物のいずれか一方にナノ粒子触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下等において機械的粉砕処理により混合、微細化し、こうして得られた被処理物と他方とを不活性ガス雰囲気下等において混合粉砕し、その後に水素化する方法である。
【0052】
第4の製造方法は、金属窒化物と金属イミド化合物それぞれにナノ粒子触媒を添加して、金属窒化物と金属イミド化合物ごとに不活性ガス雰囲気下等において機械的粉砕処理により混合、微細化し、こうして得られた被処理物どうしを不活性ガス雰囲気下等において混合粉砕し、その後に水素化する方法である。後段の混合粉砕処理は、実質的に粉砕が起こらない条件での混合処理であってもよい。
【0053】
上記各材料系に属する水素貯蔵材料の機械的粉砕処理は、原料粉末を、例えば、ボールミル装置、ローラーミル、内外筒回転型ミル、アトライター、インナーピース型ミル、気流粉砕型ミル等の公知の種々の粉砕手段を用いて行うことができる。このような機械的粉砕処理では、粉砕助剤として、無機質担体、合成品担体、植物担体や有機溶剤などを添加することは、効率よく原料粉末を微細化する上で有効である。
【実施例】
【0054】
(1)LiH+LiNH系試料(実施例1,2、比較例1,2)の作製
表1に示すように、水素化リチウムとリチウムアミド(いずれもアルドリッチ社製、純度95%)と各種触媒とを、モル比が1:1:0.02でその合計量が1.3gとなるように、高純度アルゴングローブボックス中で秤量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器(250ml)に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度アルゴンガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置(Fritsch社製、P−5)を用いて、室温、250rpmで120分ミリング処理した。ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中でミル容器を開き、試料を取り出した。
【0055】
なお、TiOナノ粒子はミレニアムケミカルズ社製の純度が82.8%でBET比表面積が129.8m/g、TiOマイクロ粒子はアルドリッチ社製で純度が99.9%でBET比表面積が18m/g、Tiナノ粒子は平均粒径が1nm、Tiマイクロ粒子はレアメタル社製の純度が99.9%で粒子径が10〜100μm、である。
【0056】
(2)リチウムイミド系試料(実施例3,4、比較例3,4)の作製
表2に示すように最終的にリチウムイミドと各種触媒とがモル比で1:0.02となるように、原料たるリチウムアミド(アルドリッチ社製、純度95%)と各種触媒とを、モル比が1:0.01でその合計量が1.3gとなるように高純度アルゴングローブボックス中で秤量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器(250ml)に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度アルゴンガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、250rpmで120分ミリング処理を行った。続いて、ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中でミル容器を開き、試料を取り出してステンレス製の反応容器(50ml)に移した。この反応容器内を真空排気した後、350℃で6時間熱処理することでリチウムアミドを熱分解し、各種触媒を担持したリチウムイミドを合成した。さらに得られたリチウムイミドを水素ガス中、3MPa、180℃で12時間処理し、水素化した。
【0057】
(3)LiH+Mg(NH系試料(実施例5,6、比較例5,6)の作製
最初に水素化マグネシウム(アヅマックス社製、純度95%)をアンモニアと反応させてマグネシウムアミドを合成した。次に、表3に示すように、水素化リチウム(アルドリッチ社製、純度95%)と合成したマグネシウムアミドと各種触媒とを、モル比が8:3:0.11でその合計量が1.3gとなるように高純度アルゴングローブボックス中で秤量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器(250ml)に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度アルゴンガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、250rpmで所定時間ミリング処理した。ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中でミル容器を開き、試料を取り出した。
【0058】
(4)LiNH+MgH系試料(実施例7,8、比較例7,8)の作製
表4に示すように、リチウムアミドと水素化マグネシウムと各種触媒を、モル比が4:3:0.07でその合計量が1.3gとなるように高純度アルゴングローブボックス中で秤量し、高純度アルゴンガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、250rpmで所定時間ミリング処理した。ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中でミル容器を開き、試料を取り出した。
【0059】
(5)LiNH+Mg系試料(実施例9,10、比較例9,10)の作製
表5に示すように、上記(3)に記載の方法で合成したリチウムイミドと窒化マグネシウム(アルドリッチ社製、純度95%)に各種触媒とを、モル比が4:1:0.05でその合計量が1.3gとなるように高純度アルゴングローブボックス中で秤量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器(250ml)に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度アルゴンガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、250rpmで所定時間ミリング処理した。ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中でミル容器を開き、試料を取り出した。さらに得られた被処理物を水素ガス中、3MPa、220℃で12時間処理し、水素化した。
【0060】
(6)試料評価
BET比表面積の測定は、窒素ガスによる多点式BET測定(Micromeritics社製、ASAP2400)により行った。また、高純度アルゴングローブボックス内に設置されたTG−MASS装置(熱重量・質量分析装置)を用い、昇温速度を5℃/分として昇温して水素放出スペクトルを測定し、そのピーク温度を水素放出温度とした。
【0061】
(7)試験結果
図1に実施例1および比較例1の水素放出スペクトルを示すグラフを示し、図2に実施例2および比較例2の水素放出スペクトルを示すグラフを示す。また、実施例1,2および比較例1,2の水素放出温度を表1に併記する。図1および図2ならびに表1から、ナノ粒子触媒を用いることによって、水素放出反応が起こる温度範囲が狭くなって、水素放出温度が低温側にシフトしていることがわかる。これにより、例えば250℃で実施例1と比較例1とを比べると、250℃までに放出される水素の全量は、実施例1の方が比較例1よりも多くなる。実施例2と比較例2についても同様のことが言える。
【0062】
実施例3〜10および比較例3〜10の水素放出温度は表2〜表5に併記している。これらの表からも、ナノ粒子触媒を用いた場合に水素放出温度が低温側にシフトしていることが確認された。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る水素貯蔵材料は、水素と酸素を燃料として発電する燃料電池の水素源として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1と比較例1の水素放出スペクトルを示す説明図。
【図2】実施例2と比較例2の水素放出スペクトルを示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水素化物と金属アミド化合物と水素吸放出能を高める触媒とを含む混合物または複合化物から構成される水素貯蔵材料であって、
前記触媒はナノ粒子からなることを特徴とする水素貯蔵材料。
【請求項2】
前記金属水素化物と金属アミド化合物の金属種が2種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項3】
前記金属種がリチウム、マグネシウム、カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素貯蔵材料。
【請求項4】
前記金属水素化物は水素化リチウムであり、前記金属アミド化合物はマグネシウムアミドであることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項5】
前記マグネシウムアミド1モルに対する前記水素化リチウムの混合比は2モル以上5モル以下であることを特徴とする請求項4に記載の水素貯蔵材料。
【請求項6】
前記金属水素化物は水素化マグネシウムであり、前記金属アミド化合物はリチウムアミドであることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項7】
前記リチウムアミド1モルに対する前記水素化マグネシウムの混合比が0.5モル以上3モル以下であることを特徴とする請求項6に記載の水素貯蔵材料。
【請求項8】
前記触媒の担持量が、前記金属水素化物と金属アミド化合物との混合物または複合化物の合計量の0.1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項9】
金属イミド化合物と水素吸放出能を高める触媒を含み、かつ、水素化された水素貯蔵材料であって、
前記触媒はナノ粒子からなることを特徴とする水素貯蔵材料。
【請求項10】
前記金属イミド化合物はリチウムイミドであり、前記リチウムイミドは窒化リチウムを水素と反応させ、またはリチウムアミドを熱分解することにより合成されたものであることを特徴とする請求項9に記載の水素貯蔵材料。
【請求項11】
前記触媒の担持量が、前記金属イミド化合物の全量の0.1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の水素貯蔵材料。
【請求項12】
前記金属イミド化合物はリチウムイミドであり、さらに窒化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項9に記載の水素貯蔵材料。
【請求項13】
前記触媒の担持量が、前記リチウムイミドおよび窒化マグネシウムの合計量の0.1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項12に記載の水素貯蔵材料。
【請求項14】
前記触媒は、B,C,Mn,Fe,Co,Ni,Pt,Pd,Rh,Li,Na,Mg,K,Ir,Nd,Nb,La,Ca,V,Ti,Cr,Cu,Zn,Al,Si,Ru,Mo,W,Ta,Zr,HfおよびAgから選ばれた1種または2種以上の金属、またはその化合物またはその合金、あるいは水素貯蔵合金であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項15】
前記触媒は、ナノ金属粒子、ナノ金属酸化物粒子、ナノ金属塩化物のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項16】
金属水素化物と金属アミド化合物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において機械的粉砕処理により混合、微細化することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項17】
金属水素化物と金属アミド化合物を不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記被処理物に前記触媒を担持させる第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項18】
金属水素化物または金属アミド化合物のいずれか一方に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物と他方とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項19】
金属水素化物と金属アミド化合物それぞれに、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記金属水素化物と金属アミド化合物ごとに、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物どうしを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項20】
前記金属水素化物と金属アミド化合物の金属種が2種類以上であることを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項21】
金属イミド化合物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、所定の機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第2工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項22】
金属窒化物と金属イミド化合物を、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、所定の機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記被処理物に前記触媒を担持させる第2工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項23】
金属窒化物または金属イミド化合物のいずれか一方に、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物と他方とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する第2工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項24】
金属窒化物と金属イミド化合物それぞれに、ナノ粒子からなり、水素吸放出能を高める触媒を添加して、前記金属窒化物と金属イミド化合物ごとに、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、機械的粉砕処理により混合、微細化する第1工程と、
前記第1工程により得られた被処理物どうしを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において、混合粉砕する第2工程と、
前記第2工程により得られた被処理物を所定の条件下で水素と反応させて水素化する第3工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項25】
前記金属窒化物は窒化マグネシウムであり、前記金属イミド化合物はリチウムイミドであることを特徴とする23または請求項24に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項26】
前記金属イミド化合物はリチウムイミドであり、前記リチウムイミドは、窒化リチウムを水素と反応させ、またはリチウムアミドを熱分解して合成したものであることを特徴とする請求項21から請求項25のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項27】
前記触媒は、B,C,Mn,Fe,Co,Ni,Pt,Pd,Rh,Na,Mg,K,Ir,Nb,Nd,La,Ca,V,Ti,Cr,Cu,Zn,Al,Si,Ru,Mo,Ta,Zr,HfおよびAgから選ばれた1種もしくは2種以上の化合物、または水素貯蔵合金であることを特徴とする請求項16から請求項26のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
【請求項28】
請求項16から請求項27のいずれかの水素貯蔵材料の製造方法により製造されたことを特徴とする水素貯蔵材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7064(P2006−7064A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186451(P2004−186451)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】