説明

水耕栽培システム及び水耕栽培方法

【課題】農作物が配置された栽培槽と溶液タンクとの間で、肥料が溶解する溶液を循環させ、また、農作物の根の成長に応じて水位を任意に調整可能にすることにより、コマツナ、ネギ、ホウレンソウ等の葉菜類、また、トマト、イチゴ等の果菜類等の多種類の農作物を効率よく栽培する汎用性の高い水耕栽培システム及び水耕栽培方法を提供すること。
【解決手段】栽培槽21に貯留された養液80の水位を、タイマの出力に基づいて、調整する。これにより、例えば、苗50が養分をあまり必要としない夜間において、苗50の根に効果的に空気を供給することができる。その結果、苗50の根に障害が発生することが回避される。また、苗50が、養分を必要とする昼間に、肥料が溶け込む養液80を、養液タンク30と栽培槽21との間で循環させることができる。これにより、苗50の生長を、効果的に促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培システム及び水耕栽培方法に関し、更に詳しくは、農作物の生長状況に応じて、養液の循環及び養液の水位を制御することにより、根の発達を著しく促進し、且つ農作物の生長を促進させる水耕栽培システム及び水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土耕栽培では、栽培対象となる植物の生育等が、その土地の気象や栽培環境に大きく左右される。また、畑の土作りにもかなりの時間が必要となる。一方、水耕栽培では、初期投資は大きくなるものの、栽培する場所が限定されない。また、栽培管理の簡易化や連作も可能であり、安定的に収量を維持することができる。このため、水耕栽培は、企業的な農業に適しているといえる。
【0003】
従来の水耕栽培としては、薄膜型水耕(NFT:Nutrient Film Technique)、湛液型水耕(DFT:Deep Flow Technique)に代表されるように、肥料が溶け込む水(養液)を循環させる栽培方式等が用いられている。特許文献1又は2に示されるように、養液が蓄えられた養液タンクと、農作物が配置される栽培槽との間で、養液を循環させることで、農作物の根に養分を効率よく供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−7426号公報
【特許文献2】特開平9−224509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水耕栽培方式における薄膜型水耕(NFT)では、水深が浅いため根への酸素供給が容易であるが、根の伸長が妨げられることによる農作物の生長不良、老化現象等様々な障害が発生する欠点がある。また、湛液型水耕(DFT)では、薄膜型水耕(NFT)に比べ水深も深く、根の伸長が妨げられることはないが、栽培槽内の養液の量が多くなり、養液の溶存酸素濃度が低くなる。このため、根圏酸素要求量が多い作物を栽培した場合には、根腐れや、農作物の生長不良が発生するといった欠点がある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、養液を循環し、且つ、農作物の根の伸長に応じて養液の水位を調整することにより、コマツナ、ネギ、ホウレンソウ等の葉菜類、また、トマト、イチゴ等の果菜類等の多種類の農作物を効率よく栽培することが可能な汎用性の高い水耕栽培システム及び水耕栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る水耕栽培システムは、
農作物を水耕栽培する水耕栽培システムであって、
排水口が形成され、前記農作物が配置される栽培槽と、
肥料が溶解する養液を前記栽培槽に供給する供給手段と、
前記排水口を開閉する開閉手段と、
前記供給手段を駆動して、前記栽培槽へ周期的に前記養液を供給するとともに、前記開閉手段を駆動して、前記供給手段が駆動しているときに、前記排水口を閉じる制御装置と、
を備える。
【0008】
また、水耕栽培システムは、前記養液を貯留する養液タンクを備え、
前記供給手段は、前記養液タンクの前記養液を、前記栽培槽へ供給することとしてもよい。
【0009】
また、水耕栽培システムは、前記排水口から排水された前記養液を、前記養液タンクへ戻すための排水路を備えていてもよい。
【0010】
また、前記制御装置は、前記供給手段を、日照時間に同期して駆動することとしてもよい。
【0011】
また、前記制御装置は、前記日照時間以外の時間に、周期的に前記給水手段を駆動することとしてもよい。
【0012】
また、水耕栽培システムは、
前記農作物を支持する支持部材と、
表面に複数の開口が形成され、前記支持部材と、前記栽培槽の底部との間に配置されたスペーサと、
を備えていてもよい。
【0013】
また、前記スペーサは、メッシュ素材で形成されたパイプであることとしてもよい。
【0014】
水耕栽培システムは、
前記支持部材を、前記栽培槽の内部で高さを調整可能に保持する保持台を備えていてもよい。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点にかかる水耕栽培システムは、
農作物を水耕栽培する水耕栽培システムであって、
排水口が形成され、前記農作物が配置される栽培槽と、
前記栽培槽の内部を、前記排水口を含む第1空間と、それ以外の第2空間に区分するフィルタと、
養液が供給された前記栽培槽の内部の、前記フィルタ近傍に空気を供給する曝気手段と、
を備える。
【0016】
また、前記曝気手段は、前記第1空間に空気を供給することとしてもよい。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る水耕栽培方法は、
農作物を栽培するための水耕栽培方法であって、
前記農作物の根の伸長に応じて、前記農作物が配置される栽培槽内の水位を調整する工程と、
所定の期間に、前記栽培槽内の水位を上下させて、間欠的に、前記農作物の根を露出させる工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水耕栽培システム及び水耕栽培方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0019】
栽培槽に貯留される養液を循環させることにより、栽培槽の養液の濃度を均一化することができ、また、溶存酸素濃度を高くすることができる。
【0020】
栽培槽の水位を任意に調整することが可能であるから、根の伸長に応じて水位を上げることができる。また、日照時間に同期して水位を調整することが可能であるから、日中は、水位を上げて養分を吸収し易くし、夜間は、水位を下げて農作物の呼吸を助けることができる。
【0021】
栽培槽の底部にメッシュ素材で形成されたパイプを配置することにより、根が伸長しても、栽培槽の養液の循環を容易にすることができる。
【0022】
農作物を支持する支持部材を、栽培槽の底部に対して任意の高さに保持する保持台を備えることにより、根の伸長に応じて農作物を支持する位置を高くすることができ、根をストレスなく伸長させることができる。
【0023】
栽培槽の排水口に通じるフィルタ近傍に爆気手段を備えることにより、養液の溶存酸素濃度を高くするとともに、フィルタの目詰まりを回避することができる。
【0024】
本願発明は、根の伸長に応じて、根に十分な量の酸素を供給することができ、且つ、根の障害の発生を抑止し、多種類の農作物を効率よく生長させることができる汎用性の高い水耕栽培システム及び水耕栽培方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る水耕栽培システムの概要を示す図である。
【図2】栽培ユニットの斜視図である。
【図3】保持台の斜視図である。
【図4】フィルタユニットの斜視図である。
【図5】フィルタユニットの展開斜視図である。
【図6】水耕栽培システムの電力系統を示す図である。
【図7】水耕栽培システムの制御系を示す図である。
【図8】水耕栽培システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る水耕栽培システム10の概要を示す図である。水耕栽培システム10は、例えばトマトなどの苗50を栽培するためのシステムである。図1に示されるように、水耕栽培システム10は、苗50が配置される栽培ユニット20、栽培ユニット20へ供給される養液80を貯留する養液タンク30、養液80に酸素を供給するためのブロア35、及び上記各部を制御する制御装置12(図6参照)を備えている。
【0027】
苗50は、例えば培土から発芽したトマトの苗を、株ごとに切り分けて、苗の根の周囲を覆う培土ごと取り出したものである。
【0028】
図2は、栽培ユニット20の斜視図である。図2に示されるように、栽培ユニット20は、栽培槽21、栽培槽21の内部に敷設された1組のスペーサ24、苗50を保持する保持シート22、保持シート22を保持する保持台70、栽培槽21からの排水を濾過するフィルタユニット27を有している。
【0029】
栽培槽21は、上方が開放された、長手方向をX軸方向とする水槽である。この栽培槽21は、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics)、ポリプロピレン、或いはポリカーボネートを素材とする。
【0030】
栽培槽21の、+X側の側壁の下端部には、栽培槽21の内部に供給された養液80を排出するための排水口21aが形成されている。排水口21aは、+X方向に突出する円筒状に整形されている。図1を参照するとわかるように、この排水口21aには、排出された養液80を、養液タンク30へ導くための導管43が接続されている。
【0031】
この導管43は、途中で、第1導管43aと、第2導管43bに分岐している。第1導管43aは、ほぼ水平に配置された部分と、下方に立ち下がった部分とからなるL字状の管路である。また、第1導管43aには、排出される養液80を止水するための第1電磁弁51が設けられている。この第1電磁弁51は、通常は閉状態で、通電されると開状態となる。
【0032】
第2導管43bは、栽培槽21に貯留される養液80の水面のレベルを一定に維持するための管路である。この第2導管43bは、上方に立ち上がった部分と、水平に配置された部分と、下方に立ち下がった部分の3部分からなる管路である。本実施形態では、第2導管43bの立ち上がった部分の高さを変えることで、栽培槽21に貯留される養液80の水位の調整をすることができる。
【0033】
上述した第1導管43a及び第2導管43bの下端部は、養液タンク30に引き込まれている。
【0034】
図2に戻り、スペーサ24それぞれは、例えばポリエチレンを素材とし、表面に複数の開口が形成されたメッシュ状のシートを筒状に整形することによって形成されている。これらのスペーサ24は、栽培槽21の底面に、長手方向をX軸方向として配置されている。
【0035】
保持シート22は、例えば発砲プラスチックを素材とし、長手方向をX軸方向とする板状の部材である。保持シート22には、上面から下面に貫通する円形の開口部22aが、X軸方向及びY軸方向に、例えば200mm間隔で形成されている。この保持シート22は、栽培槽21の内部で、ほぼ水平となるように支持されている。
【0036】
苗50は、図1及び図2を参照するとわかるように、培土の部分が保持シート22に形成された開口部22aに充填されることで、保持シート22によって保持されている。
【0037】
図3は、保持台70の斜視図である。図3に示されるように、保持台70は、長方形枠状のフレーム71と、フレーム71のコーナー部分を支持する4本の脚72とを有している。
【0038】
フレーム71は、X軸方向の寸法及びY軸方向の寸法が、保持シート22の寸法と同等の大きさになるように整形されている。
【0039】
脚72それぞれは、上下方向に伸縮し、上端がフレーム71の下面に固定されている。この保持台70は、脚72の長さを調整することで、フレーム71上に配置された保持シート22を、栽培槽21の内部で、任意の高さで保持することができるようになっている。なお、保持台70は、長さの異なる脚72に交換することにより、保持シート22を保持する高さを調整する構造を有していてもよい。
【0040】
図4は、フィルタユニット27の斜視図である。また、図5は、フィルタユニット27の展開斜視図である。図4及び図5を参照するとわかるように、フィルタユニット27は、長手方向をX軸方向とする円筒状のフィルタキャップ25と、フィルタキャップ25の内部に収容されるノズル26を有している。
【0041】
フィルタキャップ25は、+X側が開放された円筒状のフィルタ部25aと、フィルタ部25aの+X側端部に固定された環状のフランジ部25bの2部分を有している。フィルタ部25aは、メッシュ状の素材からなり、+X側端部上面に、円形の開口25cが形成されている。
【0042】
ノズル26は、例えばセラミックなどに代表される多孔質を素材とする中空の部材である。このノズル26は、長手方向をX軸方向とする直方体状に整形され、+X側端部にはエアホース26aが接続されている。
【0043】
上述のフィルタキャップ25及びノズル26は、エアホース26aが開口25cから引き出された状態で、ノズル26が、フィルタキャップ25の内部に挿入されることで一体化される。そして、フィルタキャップ25のフランジ部25bが、栽培槽21の内壁に、排水口21aを囲んだ状態で固定される。これにより、ノズル26は、フィルタキャップ25と栽培槽21の内壁とで規定される空間に配置される。
【0044】
上述のように構成された栽培ユニット20は、図1に示されるように、床面Fに配置された架台60によって、養液タンク30よりも高い位置で支持されている。
【0045】
養液タンク30は、苗50が必要とする肥料分が溶け込んだ養液80を貯留する貯留タンクである。養液タンク30としては、例えばFRP、ポリプロピレン、或いはポリカーボネートを素材とする容器が用いられる。この養液タンク30には、導管45が引き込まれている。また、養液タンク30の内部には、循環ポンプ31と、ノズル32と、水位センサ33が配置されている。
【0046】
導管45は、養液タンク30の内部へ水道水を供給するための管路である。この導管45の一端は、商用の水道管に接続されている。また、他端側には、導管45を流れる水道水を止水するための第2電磁弁52が設けられている。この第2電磁弁52は、通常閉状態で、通電されると開状態となる。
【0047】
ノズル32は、上述したノズル26と同等の構成を有している。このノズル32は、養液タンク30の底部に配置されている。
【0048】
循環ポンプ31は、養液タンク30の内部に配置されている。この循環ポンプ31は、養液タンク30に貯留された養液80を、供給管41を介して、栽培槽21へ供給する。
【0049】
水位センサ33は、例えばフロート式のセンサである。この水位センサ33は、フロートにより養液タンク30に貯留された養液80の水面のレベルを検出する。そして、養液80の水面のレベルが、所定の基準レベルより低くなるとオンになり、基準レベルよりも高くなるとオフになる接点を有している。
【0050】
ブロア35は、エアホース26aを介して、フィルタユニット27を構成するノズル26に空気を供給する。また、不図示のエアホースを介して、養液タンク30の底部に配置されたノズル32に空気を供給する。
【0051】
図6は、上述した循環ポンプ31、第1電磁弁51、第2電磁弁52、及びブロア35の電力系統を示す図である。循環ポンプ31及び第1電磁弁51それぞれは、リレーR1のa接点及びb接点を介して商用電源に接続されている。また、ブロア35及び第2電磁弁52は、それぞれリレーR2のa接点、及びリレーR3のa接点を介して、商用電源に接続されている。
【0052】
なお、a接点とは、リレーに電圧が印加されていないとき、すなわち、リレーがオフのときにオープンとなり、リレーに電圧が印加されたとき、すなわち、リレーがオンのときにクローズする接点である。また、b接点とは、リレーがオフのときにクローズし、リレーがオンのときにオープンする接点である。
【0053】
図7は、制御装置12を中心とする、水耕栽培システム10の制御系を示すブロック図である。制御装置12は、入力インターフェイス、出力インターフェイス、及び入力インターフェイスへ入力された信号に基づいて生成した信号を、出力インターフェイスへ出力するCPU(Central Processing Unit)を備えるシーケンサを含んで構成されている。この制御装置12は、例えば入力部13を介して、ユーザからの起動指令を受信すると、水位センサ33及びタイマ90からの出力に基づいて、リレーR1〜R3の制御を開始する。
【0054】
以下、制御装置12の動作について、図8のタイミングチャートを参照しつつ説明する。なお、前提として、栽培槽21の水位は、零(ローレベル)であるものとする。
【0055】
上述のタイマ90は、時刻t1にオンとなり、時刻t1から時間T1経過した時刻t2でオフとなり、時刻t2から時間T2経過した時刻t1で再びオンとなる接点を有している。ここでは、例えば時刻t1は、午前6時であり、時刻t2は午後8時である。つまり、タイマ90の接点は、時刻t1から14時間経過した時刻t2までオンとなり、時刻t2から10時間経過した時刻t1までオフとなる。
【0056】
制御装置12は、タイマ90の接点がオンのときに、リレーR1を駆動するための駆動信号S1をハイレベルにする。駆動信号S1がハイレベルになると、リレーR1がオンとなり、循環ポンプ31が運転されるとともに、第1電磁弁51が閉となる。これにより、養液タンク30の養液80が、供給管41を介して、栽培槽21へ給水される。
【0057】
栽培槽21への給水が開始されると、栽培槽21での水位が徐々に上昇し始める。そして、栽培槽21での水位が、第2導管43bの、上方へ立ち上がった部分の上端と一致すると、栽培槽21での水位の上昇が停止する。以降、第2導管43bから、養液80が排水されることで、栽培槽21の水位は一定のレベル(ハイレベル)に維持される。そして、養液80は、供給管41と第2導管43bとを介して、養液タンク30と栽培槽21との間を循環する。これにより、栽培槽21の水位は、タイマ90の接点がオンの間、ハイレベルとなる。
【0058】
制御装置12は、時刻t2でタイマ90の接点がオフになると、まず、駆動信号S1を時間T3だけローレベルにする。駆動信号S1がローレベルになると、リレーR1がオフとなり、循環ポンプ31が停止するとともに、第1電磁弁51が開となる。これにより、養液タンク30の養液80が、第1導管43aを介して養液タンク30に排水される。
【0059】
制御装置12は、時刻t2から時間T3経過すると、次に、駆動信号S1を時間T4だけハイレベルにする。駆動信号S1がハイレベルになると、リレーR1がオンとなり、循環ポンプ31が運転されるとともに、第1電磁弁51が閉となる。これにより、栽培槽21からの排水が停止するとともに、栽培槽21への給水が開始される。
【0060】
制御装置12は、上述の動作を、タイマ90の接点がオフの間繰り返す。これにより、栽培槽21の水位は、タイマ90の接点がオフの間、ハイレベルとローレベルとを繰り返す。
【0061】
また、制御装置12は、ユーザからの起動指令を受けると、リレーR2を駆動するために、駆動信号S2をハイレベルにする。駆動信号S2がハイレベルになることによって、リレーR2がオン状態となり、ブロア35が運転される。これにより、栽培槽21に配置されたノズル26と、養液タンク30に配置されたノズル32を介して、栽培槽21の内部に貯留された養液80、及び養液タンク30の内部に貯留された養液80に空気が供給される。
【0062】
また、制御装置12は、水位センサ33の接点がオンのときに、リレーR2を駆動するための駆動信号S3をハイレベルにする。これにより、リレーR3がオンとなり、第2電磁弁52が開となる。一方、制御装置12は、水位センサ33の接点がオフのときに、リレーR2を駆動するための駆動信号S3をローレベルにする。これにより、リレーR3がオフとなり、第2電磁弁52が閉となる。
【0063】
上述の動作により、養液タンク30の水位が基準レベルを下回ると、養液タンク30へ水道水が供給され、養液タンク30の水位が基準レベルを上回ると、養液タンク30への水道水の供給が停止する。これにより、養液タンク30に貯留される養液80の量がほぼ一定に維持される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の水耕栽培システム10では、栽培槽21に貯留された養液80の水位が、タイマ90の出力に基づいて、調整される。このため、例えば、苗50が養分をあまり必要としない夜間において、苗50の根に効果的に空気を供給することができる。これにより、苗50の根に障害が発生することを回避することができる。
【0065】
また、本実施形態の水耕栽培システム10では、苗50が、養分を必要とする昼間に、養分が溶け込む養液80を、養液タンク30と栽培槽21との間で循環させることができる。これにより、苗50の成長を、効果的に促進することができる。
【0066】
また、本実施形態の水耕栽培システム10では、栽培槽21の底部と、苗50を保持する保持シート22との間に、スペーサ24が配置されている。スペーサ24は、ポリエチレン、塩化ビニール等を素材とし、表面に複数の開口が形成されたメッシュ状のシートからなるパイプ状の部材である。スペーサ24の内側に養液80が流れ込むことにより、スペーサ24の表面に設けられた複数の開口から、スペーサ24の外側に向かって養液80が流出する。これにより、苗50の根が伸長して栽培槽21の内部に張り巡らされたとしても、栽培槽21での養液80の循環が滞ることがなくなる。このため、苗50には、養分と酸素とが効果的に供給される。
【0067】
また、本実施形態の水耕栽培システム10では、ブロア35とノズル26とを含んで、栽培槽21に貯留された養液80に空気を供給するための曝気装置が構成される。この曝気装置は、排水口21aのフィルタとして機能するフィルタキャップ25を介して、栽培槽21に貯留された養液80へ空気を供給する。これにより、フィルタキャップ25の目詰まりを回避しつつ、栽培槽21に貯留された養液80の曝気を行うことが可能となる。
【0068】
特に、水耕栽培システム10に用いられる養液80が、有機肥料が溶け込む養液である場合には、微生物によるバイオフィルムなどにより、フィルタキャップ25に目詰まりが発生する度合いが高くなる。本実施形態では、フィルタキャップ25の内部に、空気を供給することにより、フィルタキャップ25の目詰まりの防止と、養液中への十分な酸素供給が実現される。
【0069】
また、本実施形態に係る水耕栽培システム10は、栽培槽21の内部で、保持シートの高さを任意に調整することが可能な保持台70を有している。したがって、苗50の根の生長に合わせて、保持される苗50の位置を変更することができる。
【0070】
これにより、苗50を定植した直後は、作物の吸肥を促進するために、保持台70の脚72の長さを短くすることで、保持される苗50の位置を低くして栽培槽21の水位を少なくするとともに、根が栽培槽21の底に接触しないような位置で、苗50を保持することができる。また、苗50の根の生長に合わせて保持台70の脚72の長さを長くして、保持される苗50の位置を高くするとともに、栽培槽21の水位を上昇させることで、常に根が栽培槽21の底に接触しないような位置で、苗50を保持することができる。このため、苗50の根が伸長しても、苗50を保持する位置を変更することで、根と栽培槽21との干渉を回避しつつ、根が養液80に浸かった状態を維持することができる。これにより、根の伸長が促進される。そして、農作物の生長不良が防止され、苗の生長が促進される。
【0071】
また、栽培槽21での水位を、苗50の根の長さに応じた水位とすることで、余分な養液80が栽培槽21に貯留されることが回避され、養液80の循環効率が向上する。これにより、栽培槽に貯留される養液80の溶存酸素濃度の低下を防止することが可能となる。また、栽培槽内に貯留される養液80の濃度が均一化されるため、苗50に効率的に養分を供給することが可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施形態では、図8に示されるように、午後8時から午前6時の間に、栽培槽21の水位が調整される場合について説明した。これに限らず、栽培槽21の水位を調整する時間帯については、栽培対象となる農作物に応じて決定することができる。また、日照時間外で、栽培槽21の水位を調整することとしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、スペーサ24は、例えばポリエチレンを素材とし、表面に複数の開口が形成されたメッシュ状のシートかなる部材であるものとした。これに限らず、スペーサ24として、例えば、表面に複数の開口が形成された塩化ビニルパイプなどを用いてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、栽培槽21には、1組のスペーサ24が敷設されている場合について説明した。これに限らず、栽培槽21には、3つ以上のスペーサが敷設されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ノズル26は、フィルタキャップ25の内部に配置されている。これに限らず、ノズル26は、フィルタキャップ25の近傍に配置されていてもよい。この場合も、フィルタキャップ25の目詰まりを回避することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、養液80に関しては、苗50が必要とする肥料を有機液肥とした。これに限らず、養液80は、無機液肥であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、制御装置12が、シーケンサを含んで構成されていることとした。これに限らず、水耕栽培システム10の制御系を、リレーやタイマからなるリレー回路で構成してもよい。
【0079】
また、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明においては、農作物の種類に応じて、最適な液肥の濃度、養液の循環速度、養液の水位等の栽培管理条件を日単位、週単位、月単位で制御装置に設定することにより、
コマツナ、ネギ、ホウレンソウ等の葉菜類、また、トマト、イチゴ等の果菜類等の多品種、多種類の農作物を自在に栽培することが可能である。また、気温、湿度、日照時間等を検出するセンサを設け、制御装置に計測結果をフィードバックすることにより、更に精度の高い最適な栽培管理をすることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 水耕栽培システム
12 制御装置
13 入力部
20 栽培ユニット
21 栽培槽
21a 排水口
22 保持シート
22a 開口部
24 スペーサ
25 フィルタキャップ
25a フィルタ部
25b フランジ部
25c 開口
26 ノズル
26a エアホース
27 フィルタユニット
30 養液タンク
31 循環ポンプ
32 ノズル
33 水位センサ
35 ブロア
41 供給管
43 導管
43a 第1導管
43b 第2導管
45 導管
50 苗
51 第1電磁弁
52 第2電磁弁
60 架台
70 保持台
71 フレーム
72 脚
80 養液
90 タイマ
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物を水耕栽培する水耕栽培システムであって、
排水口が形成され、前記農作物が配置される栽培槽と、
肥料が溶解する養液を前記栽培槽に供給する供給手段と、
前記排水口を開閉する開閉手段と、
前記供給手段を駆動して、前記栽培槽へ周期的に前記養液を供給するとともに、前記開閉手段を駆動して、前記供給手段が駆動しているときに、前記排水口を閉じる制御装置と、
を備える水耕栽培システム。
【請求項2】
前記養液を貯留する養液タンクを備え、
前記供給手段は、前記養液タンクの前記養液を、前記栽培槽へ供給する請求項1に記載の水耕栽培システム。
【請求項3】
前記排水口から排水された前記養液を、前記養液タンクへ戻すための排水路を備える請求項2に記載の水耕栽培システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記供給手段を、日照時間に同期して駆動する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水耕栽培システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記日照時間以外の時間に、周期的に前記給水手段を駆動する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水耕栽培システム。
【請求項6】
前記農作物を支持する支持部材と、
表面に複数の開口が形成され、前記支持部材と、前記栽培槽の底部との間に配置されたスペーサと、
を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水耕栽培システム。
【請求項7】
前記スペーサは、メッシュ素材で形成されたパイプである請求項6に記載の水耕栽培システム。
【請求項8】
前記支持部材を、前記栽培槽の内部で高さを調整可能に保持する保持台を備える請求項6又は7に記載の水耕栽培システム。
【請求項9】
農作物を水耕栽培する水耕栽培システムであって、
排水口が形成され、前記農作物が配置される栽培槽と、
前記栽培槽の内部を、前記排水口を含む第1空間と、それ以外の第2空間に区分するフィルタと、
養液が供給された前記栽培槽の内部の、前記フィルタ近傍に空気を供給する曝気手段と、
を備える水耕栽培システム。
【請求項10】
前記曝気手段は、前記第1空間に空気を供給する請求項9に記載の水耕栽培システム。
【請求項11】
農作物を栽培するための水耕栽培方法であって、
前記農作物の根の伸長に応じて、前記農作物が配置される栽培槽内の水位を調整する工程と、
所定の期間に、前記栽培槽内の水位を上下させて、間欠的に、前記農作物の根を露出させる工程と、
を含む水耕栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177130(P2011−177130A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45895(P2010−45895)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】