説明

水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物

【課題】 本発明は充分な湿分除去効果が得られる吸着体を調製するための水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物及び無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体を得る事を目的とする。
【解決手段】 X線回折のd間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つシリカ多孔体と疎水性有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルの何れか1種類以上を含有する、固形分含量が5〜50%である水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物を作成する事により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体たとえば除湿用吸着シート及び湿気交換用ハニカム吸着素子たとえば除湿用吸着素子又は水蒸気及び顕熱を交換する吸着素子(以下これらを水蒸気交換体と呼ぶ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトその他のモレキュラーシーブ、シリカゲル、塩化リチウム等無機吸湿剤を用いた除湿用又は全熱(水蒸気及び顕熱)交換用のハニカム素子は従来から使用されている。これ等の除湿用吸着体は半導体工業、フィルム工業、食品工業、石油化学、軍事用等あらゆる分野における空気、窒素ガスその他の気体中の湿分除去に利用されている。
【0003】
上記従来のゼオライトその他のモレキュラーシーブ、シリカゲル等の吸着剤はシリカゾル、アルミナゾル等バインダーに分散してこの分散液に無機繊維を基剤とするハニカム素子を浸漬する方法により上記無機吸湿剤の微粒子をハニカム素子を構成するシート内部に含浸固着させ、又はハニカム素子を構成するシートにバインダーを用いて無機吸湿剤の微粒子を固着した後積層しハニカム状に成形する方法が行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法で得られた吸着体の湿分除去効果は充分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特許3345596号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は充分な湿分除去効果が得られる吸着体を調製するための水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物及び無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体を得る事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)X線回折のd間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つシリカ多孔体と、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ及びアルミナゾルの少なくとも何れか1種類以上を含有し、固形分含量が5〜50%である水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物
(2)疎水性有機高分子がアクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルエステル共重合樹脂の何れか1種類以上からなる前記(1)記載の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物
(3)前記(1)又は(2)記載の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物を使用して調製した固形分担持量が80g/L以上である無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体
に関する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来品に比して湿分除去効果が著しく向上する吸着体を調製するための水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物及び無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるシリカ多孔体とは、多孔質構造を持つケイ素酸化物を主成分とする物質である。
【0009】
本発明におけるシリカ多孔体は、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有する。この事は、シリカ多孔体がnmオーダーの均一で規則性に優れた細孔を有する事を示し、湿分の脱吸着を極めて効率的に行えるものである。
【0010】
また、本発明におけるシリカ多孔体は、2nmより大きい位置にある最強のピークの50%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事が好ましく、最強のピークの30%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事がより好ましく、最強のピークの20%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事が最も好ましい。
【0011】
なお、X線回折パターンはX線回折装置(RINT ULTIMAII理学電機株式会社製)等により測定する事ができる。
【0012】
本発明におけるシリカ多孔体の平均細孔径、比表面積、細孔容量は公知のBET法による窒素吸着等温線から算出する事ができる。より具体的には平均細孔径は、公知のBJH法、BET法、t法、DFT法等により算出する事ができ、比表面積は、公知のBET法、t法、α法等により算出する事ができ、細孔容量は、公知のBJH法、BET法、t法等により算出する事ができる。
【0013】
本発明におけるシリカ多孔体の細孔の平均細孔径は1nm未満であると、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体としての機能が十分発揮できない場合があり、20nmを超えるものは製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明におけるシリカ多孔体の細孔の平均細孔径は1〜20nmであり、好ましくは1〜10nmであり、より好ましくは1〜7nmであり、さらに好ましくは1〜4nmであり、最も好ましくは1〜3nmである。
【0014】
本発明におけるシリカ多孔体の比表面積は100m/g未満であると、水蒸気交換用吸着体としての機能が充分発揮できない場合があり、比表面積が2000m/gより大きいものは、製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明における水蒸気交換用吸着体の比表面積は好ましくは100〜2000m/g、より好ましくは300〜2000m/g、さらに好ましくは500〜2000m/g、最も好ましくは500〜1500m/gである。
【0015】
本発明におけるシリカ多孔体の細孔容量は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1cm/g〜3.0cm/gであるようにコントロールされたものが良く、更に好ましくは、0.2cm/g〜2.0cm/g、最も好ましくは0.15cm/g〜1.0cm/gであるようにコントロールされたものが良い。細孔容量が上記範囲より小さいものでは、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体としての機能が十分発揮できない場合があり、細孔容量が上記範囲より大きいものは、製造するのが実質的に困難である。
【0016】
本発明におけるシリカ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機原料を有機原料と混合し、反応させる事により、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させた後、得られた複合体から、有機物を除去する方法が挙げられる。また、必要に応じてアルミニウム、ジルコニウム等を添着する事ができる。
【0017】
無機原料は、珪素含有無機物であれば特に限定されるものではないが、例えば、層状珪酸塩、非層状珪酸塩等の珪酸塩を含む物質及び珪酸塩以外の珪素を含有する物質が挙げられる。層状珪酸塩としては、カネマイト(NaHSi・3HO)、ジ珪酸ナトリウム結晶(NaSi)、マカタイト(NaHSi・5HO)、アイラアイト(NaHSi17・XHO)、マガディアイト(NaHSi1429・XHO)、ケニヤアイト(NaHSi2041・XHO)等が挙げられ、非層状珪酸塩としては、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルアンモニウム(TMA)シリケート、テトラエチルオルトシリケート等のシリコンアルコキシド等が挙げられる。また、珪酸塩以外の珪素を含有する物質としては、シリカ、シリカ酸化物、シリカ−金属複合酸化物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いて良い。
【0018】
鋳型となる有機原料としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の界面活性剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
陽イオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの中では第4級アンモニウム塩が好ましい。アミン塩は、アルカリ性域では分散性が不良のため、合成条件が酸性域でのみ使用されるが、第4級アンモニウム塩は、合成条件が酸性、アルカリ性のいずれの場合にも使用する事ができる。
【0020】
第4級アンモニウム塩としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル(炭素数8〜22)トリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
さらに、界面活性剤と共にトリメチルベンゼン、トリプロピルベンゼン等の比較的疎水性の分子を添加する事により、ミセルが膨張し、さらに大きな細孔の形成が可能となる。これらの方法を利用する事により、最適な大きさの細孔が形成できる。
【0022】
陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられ、なかでも、セッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩及び高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型のもの等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
限定されないが、水、アルコール等が挙げられる。
【0026】
無機原料と有機原料との混合方法は、特に限定されないが、無機原料に重量比で2倍以上のイオン交換水を添加後、40〜80℃で1時間以上撹拌した後に、有機原料を添加して混合する方法が好ましい。
【0027】
無機原料と有機原料との混合比は、特に限定されないが、無機原料:有機原料の比(重量比)は、好ましくは0.1:1〜5:1、より好ましくは0.1:1〜3:1である。
【0028】
無機原料と有機原料との反応は、特に限定されるものではないが、好ましくはpH11以上で1時間以上撹拌し、pHを8.0〜9.0とした後、1時間以上反応させる事が好ましい。
【0029】
有機物と無機物の複合体から有機物を除去する方法としては、複合体を濾取し、水等により洗浄、乾燥した後、400〜700℃で焼成する方法、有機溶媒等により抽出する方法が挙げられる。
【0030】
本発明における水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物とは無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体を調製するためのスラリーであり、その構成物質は、シリカ多孔体と、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ及びアルミナゾルの少なくとも何れか1種類以上を含有する事が好ましく、シリカ多孔体、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルを含有する事がより好ましい。また、固形分がシリカ多孔体、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルから成る事が最も好ましい。
【0031】
本発明における水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の分散媒は特に限定するものではないが、水が好ましい。
【0032】
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の固形分含量は湿分除去効果の点より5〜50%が好ましく、10〜50%がより好ましく、15〜30%が最も好ましい。
【0033】
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の固形分含量は25℃での重量と105℃で24時間乾燥後の重量から算出する事ができる。
【0034】
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の粘度は特に限定されるものではないが、B型粘度計による粘度で100cps以下である事が好ましい。
【0035】
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物のpHは特に限定されるものではないが、湿分除去効果の観点からpH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましい。
【0036】
本発明における疎水性有機高分子とは、水に溶解しなければ特に限定されるものではないが、アクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸エステル共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルエステル共重合樹脂の何れか1種類以上からなる事が好ましく、アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルエステル共重合樹脂の何れか1種類以上からなる事がより好ましい。
【0037】
本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルを含有するスラリーにシリカ多孔体を添加・混合し調製する方法が挙げられる。
【0038】
この際の混合比率については特に限定されるものではないが、固形分換算で有機高分子:コロイダルシリカ:アルミナゾル:シリカ多孔体=0.1〜5:0.1〜5:0.1〜5:5〜20が好ましく、0.3〜3:0.3〜3:0.3〜5:5〜20がより好ましい。
【0039】
本発明の無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体は多数の小細孔を有する積層体と積層体への固着物から成る事が好ましい。固着物はシリカ多孔体と、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルの少なくとも何れか1種類以上を含有する組成物から成る事が好ましく、シリカ多孔体、有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルを含有する組成物からなる事がより好ましく、シリカ多孔体、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ、アルミナゾルからなる事が最も好ましい。
【0040】
本発明の無機繊維とは特に限定されるものではないが、例えばガラス繊維等が挙げられる。
【0041】
無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1Lあたりの固形分担持量は特に限定されるものでないが、60g/L〜150g/Lが好ましく、80g/L〜150g/Lがより好ましく、100g/L〜150g/Lが最も好ましい。
【0042】
無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1Lあたりの固形分担持量は小細孔を有する積層体の容積、水蒸気交換用吸着体スラリーに添着前の小細孔を有する積層体の重量と水蒸気交換用吸着体スラリー用組成物に添着後120℃、24時間乾燥後の重量から算出する事が出来る。
【0043】
無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1Lあたりの固形分担持量
[スラリー添着、乾燥後の積層体重量(g)−積層体の重量(g)]/[積層体の容積(cc)]
【0044】
本発明の無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物に小細孔を有する積層体を浸漬させ、一定時間後静置後、積層体をスラリー用組成物から取り出し、充分にエアブローした後、120℃で乾燥させる方法が挙げられる。積層体のスラリー用組成物への添着、乾燥工程は2回以上繰り返す事が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
製造例1
日本化学工業(株)製の水ガラス1号(SiO/NaO=2.00)50gを界面活性剤であるn−デシルトリメチルアンモニウムクロリド〔C1021N(CHCl〕の0.1M水溶液1000mlに分散させ、70℃で3時間撹拌しながら加熱した。その後、70℃で加熱・撹拌しながら、2Nの塩酸を添加して、分散液のpHを8.5に下げ、さらに70℃で3時間加熱・撹拌した。固形生成物を一旦濾過し、再度イオン交換水1000mlに分散させ撹拌した。この濾過・分散撹拌を5回繰り返した後40℃で24時間乾燥させた。乾燥させた固形生成物を空気中550℃で6時間焼成する事により、シリカ多孔体A11gを得た。
【0047】
製造例2
日本化学工業(株)製の水ガラス1号(SiO/NaO=2.00)50gを界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド水溶液の0.1M水溶液1000mlに分散させ、70℃で3時間撹拌しながら加熱した。その後、70℃で加熱・撹拌しながら、2Nの塩酸を添加して、分散液のpHを8.5に下げ、さらに70℃で3時間加熱・撹拌した。固形生成物を一旦濾過し、再度イオン交換水1000mlに分散させ撹拌した。この濾過・分散撹拌を5回繰り返した後40℃で24時間乾燥させた。乾燥させた固形生成物を空気中550℃で6時間焼成する事により、シリカ多孔体B11gを得た。
【0048】
製造例3
製造例1で得られたシリカ多孔体A1gに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム溶液100gを添加、撹拌後1時間静置した後、濾過し乾燥させアルミニウムを担持させたシリカ多孔体C1gを得た。
【0049】
製造例4
製造例2で得られたシリカ多孔体B1gに0.5mol/Lの硝酸アルミニウム溶液100gを添加、撹拌後1時間静置した後、濾過し乾燥させアルミニウムを担持させたシリカ多孔体D1gを得た。
【0050】
得られたシリカ多孔体A、B、C、DのX線回折パターンを測定した。結果をそれぞれ図1、図2、図3、図4に示す。
【0051】
図1〜図4に示すように得られたシリカ多孔体A、B、C、DはX線回折のd間隔が2nmより大きい位置に1つのピークを有した。
【0052】
得られたシリカ多孔体A、B、C、Dの平均細孔径を公知のBET法による窒素吸着等温線から算出したところ(BJH法)1.80nm、2.65nm、1.4nm、2.2nmであった。
【0053】
公知の窒素吸着法によりシリカ多孔体A、B、C、Dの比表面積(BET法)、細孔容量(BJH法)を算出したところ比表面積はそれぞれ1019.0m/g、1027.6m/g、605.3m/g、610.8m/g、細孔容量はそれぞれ0.288cm/g、0.63cm/g、0.15cm/g、0.38cm/gであった。
【0054】
製造例5
スラリー中の固形分含量が20重量部、固形分比がアクリル酸エステル樹脂:コロイダルシリカ:アルミナゾル:シリカ多孔体A=2:2:3:15となるように混合し、本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物a500gを得た。(分散媒:水)
【0055】
製造例6
スラリー中の固形分含量が20重量部、固形分比がアクリル酸エステル樹脂:コロイダルシリカ:アルミナゾル:シリカ多孔体B=2:2:3:15となるように混合し、本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物b500gを得た。(分散媒:水)
【0056】
製造例7
スラリー中の固形分含量が20重量部、固形分比がアクリル酸エステル樹脂:コロイダルシリカ:アルミナゾル:シリカ多孔体C=2:2:3:15となるように混合し、本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物c500gを得た。(分散媒:水)
【0057】
製造例8
スラリー中の固形分含量が20重量部、固形分比がアクリル酸エステル樹脂:コロイダルシリカ:アルミナゾル:シリカ多孔体D=2:2:3:15となるように混合し、本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物d500gを得た。(分散媒:水)
【0058】
得られた水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物a、b、c、dを各1g秤量し、105℃で24時間乾燥後の重量を秤量し、固形分含量を算出したところ、水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物a、b、c、dの固形分含量はそれぞれ19.8%、20.1%、20.3%、20.8%であった。
【0059】
製造例9
製造例5〜8で得られた水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物a500gに小細孔を有する積層体(3cm×3cm×10cm)を浸漬し、1分間静置後、積層体を水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物から取り除いた。この積層体を風速10m/minで5分間以上積層体からスラリーの滴下がなくなるまでエアブローし、120℃で2時間乾燥させた。その後、再度水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物a500mlへ浸漬し、1分間静置後、積層体を水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物から取り除いた。この積層体を風速10m/minで5分間以上積層体から水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物の滴下がなくなるまでエアブローし、120℃で24時間乾燥させ、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1を得た。
【0060】
製造例10
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物aの代わりに水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物bを用いた以外は製造例9と同様な方法で無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体2を得た。
【0061】
製造例11
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物aの代わりに水蒸気交換用吸着体用スラリー組成物cを用いた以外は製造例9と同様な方法で無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体3を得た。
【0062】
製造例12
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物aの代わりに水蒸気交換用吸着体用スラリー組成物dを用いた以外は製造例9と同様な方法で無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体4を得た。
【0063】
製造例9〜12で得られた無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1、2、3、4の固形分担持量を算出したところそれぞれ110g/L、85g/L、110g/L、85g/Lであった。
【0064】
比較例1
シリカ多孔体Aの代わりにゼオライトを用いた以外は製造例5と同様な方法でスラリー1を得た。
【0065】
比較例2
水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物aの代わりにスラリー1を使用した以外は製造例9と同様な方法で吸着体1を得た。
【0066】
試験例1
製造例9、11で得られた無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1、3及び比較例2で得られた吸着体1を温度20℃、相対湿度40%、吸着体前面の風速1m/秒の環境下で一定期間静置後の湿気吸着量を測定した。その結果、本発明の無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体3の湿気吸着量はそれぞれ19重量%、17重量%であった。一方、吸着体1の湿気吸着量は7重量%であった。
【0067】
試験例2
製造例10、12で得られた無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体2、4及び比較例2で得られた吸着体1を温度20℃、相対湿度70%、吸着体前面の風速1m/秒の環境下で一定期間静置後の湿気吸着量を測定した。その結果、本発明の無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体2、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体4の湿気吸着量はそれぞれ18重量%、17重量%であった。一方、吸着体1の湿気吸着量は7重量%であった。
【0068】
試験例3
製造例9、11で得られた無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1、3を0.1g分取し、日本ベル(株)社製BELSORP−18PLUSを用いて、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体の水蒸気吸着特性、再生挙動を評価した。水蒸気の吸着・脱着は25℃で行い、1回目の水蒸気吸着時の前処理を300℃、5時間、2回目以降の前処理を180℃、5時間とした。また、飽和水蒸気雰囲気で十分に水蒸気を吸着させた試料を加熱し、熱重量分析(セイコーインスツルメンツ・TG/DTA6200)を行う事により再生挙動を評価した。この吸着・脱着試験を計5回繰り返した。その結果、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体1、3の水蒸気の飽和吸着量は1回目の吸着後は若干の減少が見られたが、2回目以降は有意な減少は見られなかった。
【0069】
試験例4
製造例10、12で得られた無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体2、4を0.1g分取し、日本ベル(株)社製BELSORP−18PLUSを用いて、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体の水蒸気吸着特性、再生挙動を評価した。水蒸気の吸着・脱着は25℃で行い、1回目の水蒸気吸着時の前処理を300℃、5時間、2回目以降の前処理を180℃、5時間とした。また、飽和水蒸気雰囲気で十分に水蒸気を吸着させた試料を加熱し、熱重量分析(セイコーインスツルメンツ・TG/DTA6200)を行う事により再生挙動を評価した。この吸着・脱着試験を計5回繰り返した。その結果、無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体2、4の水蒸気の飽和吸着量は1回目の吸着後は若干の減少が見られたが、2回目以降は有意な減少は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物及び無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体により、従来にない優れた湿分除去効果が得られ、そのその産業上の利用価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1はシリカ多孔体AのX線回折パターンを示す図である。
【0072】
【図2】図2はシリカ多孔体BのX線回折パターンを示す図である。
【0073】
【図3】図3はシリカ多孔体CのX線回折パターンを示す図である。
【0074】
【図4】図4はシリカ多孔体DのX線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折のd間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つシリカ多孔体と、疎水性有機高分子、コロイダルシリカ及びアルミナゾルの少なくとも何れか1種類以上を含有する、固形分含量が5〜50%である水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物
【請求項2】
疎水性有機高分子がアクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルエステル共重合樹脂の何れか1種類以上からなる請求項1記載の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物
【請求項3】
請求項1又は2記載の水蒸気交換用吸着体用スラリー用組成物を使用して調製した固形分担持量が80g/L以上である無機繊維を基剤とする水蒸気交換用吸着体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−160516(P2009−160516A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299(P2008−299)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】