説明

水蒸気分離装置

【課題】 水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離することが可能な水蒸気分離装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水蒸気分離装置560は、サイクロン式の水蒸気分離装置であって、導入通路566を通過してケース561の内部に達した混合気体が筒状空間563を旋回しつつ通過して水蒸気分離空間564に達するように構成されており、筒状空間563内を旋回する混合気体が水蒸気分離空間564に達すると、混合気体に含まれる水蒸気が水蒸気分離空間564の中央へ向けて分離され回収通路570を通過するとともに、水蒸気が分離された混合気体が水蒸気分離空間564の側方へ向かいつつ排出通路568を通過するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離することが可能な水蒸気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、4サイクルガソリンエンジンや、2サイクルガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等がある。内燃機関である4サイクルガソリンエンジンにおける正味仕事は、図13の熱勘定図で示すように、熱効率として28%程度であり、冷却損失が28.5%、排気損失が34%、機械損失および輻射損失が9.5%程度となっている。
【0003】
そこで、本出願の発明者は、エンジンの熱効率をさらに向上させるべく、内燃機関と、内燃機関から排出された排気ガスの熱を利用して水蒸気を発生させる水蒸気発生装置と、水蒸気発生装置により発生した水蒸気を利用して作動するスチーム機関とを備えたマルチハイブリッドエンジンを考案している。このようなマルチハイブリッドエンジンによれば、内燃機関から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。
【0004】
なお、水蒸気発生装置からスチーム機関に供給された水蒸気は、水蒸気発生装置のリザーブタンクに戻され、水蒸気発生装置により加熱されたのち再びスチーム機関に供給されるようになっている。すなわち、水蒸気が各装置間を循環するようになっており、これにより水蒸気の使用量の低減を図っている。
【特許文献1】特開平6−205917号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スチーム機関において水蒸気がいわゆるブローバイガスのような形で外部に漏れ出すため、定期的に水蒸気発生装置のリザーブタンクに水を補充する必要がある。一方、炭化水素の一種であるガソリンや天然ガスを燃料とする内燃機関から排出された排気ガスは水蒸気(水分)を多く含んでおり、この排気ガスから水蒸気を分離して水蒸気発生装置に供給することができれば、排気ガスを有効利用しつつこの問題を解決することが可能になる。そこで、本出願の発明者は、内燃機関から排出される排気ガス(混合気体)から水蒸気を分離することが可能な装置を開発した。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたものであり、水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離することが可能な水蒸気分離装置を提供することを目的とする。なお、このような水蒸気分離装置に関する先行特許文献は見つからなかったが、本発明に係る水蒸気分離装置に近い構造を有する気水分離器が特許文献1に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る水蒸気分離装置は、水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離可能なサイクロン式の水蒸気分離装置であって、有底筒状のケースと、ケースの内部に繋がる導入通路を有し、ケースの一端側において、導入通路を通過した混合気体がケースの内部で旋回流を形成可能な位置に設けられた導入管と、ケースの他端側の側部に設けられ、ケースの内部に繋がる排出通路を有する排出管と、ケースの他端側の底部中央に設けられ、ケースの内部に繋がる回収通路を有する回収管と、ケースの内部に設けられ、ケースの側部との間に筒状空間を形成するとともに、ケースの他端側底部および側部との間に筒状空間に繋がる水蒸気分離空間を形成する水蒸気分離部材とを備えて構成される。
【0008】
そして、導入通路を通過してケースの内部に達した混合気体が筒状空間を旋回しつつ通過して水蒸気分離空間に達するように構成されており、筒状空間内を旋回する混合気体が水蒸気分離空間に達すると、混合気体に含まれる水蒸気が水蒸気分離空間の中央へ向けて分離され回収通路を通過するとともに、水蒸気が分離された混合気体が水蒸気分離空間の側方へ向かいつつ排出通路を通過するように構成される。
【0009】
また、上述の発明において、混合気体が内燃機関から排出された排気ガスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遠心力を利用して、混合気体に含まれる水蒸気が水蒸気分離空間の中央へ向けて分離され回収通路を通過するとともに、水蒸気が分離された混合気体が水蒸気分離空間の側方へ向かいつつ排出通路を通過するように構成されるため、簡便な構成で、水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離することが可能になる。
【0011】
また、混合気体が内燃機関から排出された排気ガスであることが好ましく、これにより、排気ガスの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明に係る水蒸気分離装置を備えたマルチハイブリッドエンジンENGを図1〜図2に示している。このマルチハイブリッドエンジンENGは、第1内燃機関1および第2内燃機関2と、この第1内燃機関1および第2内燃機関2と平行に並ぶ第1スチーム機関3および第2スチーム機関4とを主体に構成される。
【0013】
第1内燃機関1は、天然ガス(水素ガスを用いてもよい)を燃料とする4サイクル内燃機関であり、燃焼ガスの圧力を利用して作動する第1ピストン機構10を主体に構成される。第1ピストン機構10は、図2に示すように、第1クランクシャフト160を挟むようにして左右一対の第1シリンダ101,102が対向配設されて構成されている。左第1シリンダ101および右第1シリンダ102は、それぞれ内端同士が対向して結合された左右の第1シリンダボディ110,120と、各シリンダボディ110,120の外端に取り付けられた左右の第1シリンダヘッド112,122とからなる。
【0014】
左第1シリンダヘッド112には、左吸気ポート113および左排気ポート114が形成され、左吸気ポート113の端部に吸気側ロータリーバルブ117が回転自在に取り付けられるとともに、左排気ポート114の端部に排気側ロータリーバルブ118が回転自在に取り付けられている。吸気側ロータリーバルブ117は、直径方向に貫通する連通孔117aを有するロータリー式のバルブであり、第1クランクシャフト160の1/4の回転数で回転することにより、左吸気ポート113を所定のタイミングで開閉するようになっている。排気側ロータリーバルブ118も、直径方向に貫通する連通孔118aを有するロータリー式のバルブであり、第1クランクシャフト160の1/4の回転数で回転することにより、左排気ポート114を所定のタイミングで開閉するようになっている。また、左第1シリンダヘッド112の中央には、点火プラグ119が図示のように取り付けられている。
【0015】
なお、第1内燃機関1(左側部分)の吸気行程においては、吸気側ロータリーバルブ117が連通孔117aを介して左吸気ポート113を開放し、排気側ロータリーバルブ118が左排気ポート114を閉鎖する。また、圧縮行程においては、吸気側ロータリーバルブ117が左吸気ポート113を閉鎖し、排気側ロータリーバルブ118が左排気ポート114を閉鎖する。さらに、燃焼行程においては、吸気側ロータリーバルブ117が左吸気ポート113を閉鎖し、排気側ロータリーバルブ118が左排気ポート114を閉鎖する。そして、排気行程においては、吸気側ロータリーバルブ117が左吸気ポート113を閉鎖し、排気側ロータリーバルブ118が連通孔118aを介して左排気ポート114を開放する。
【0016】
右第1シリンダヘッド122には、右吸気ポート123および右排気ポート124が形成され、左第1シリンダヘッド112と同様に、右吸気ポート123の端部に連通孔127aを有する吸気側ロータリーバルブ127が回転自在に取り付けられるとともに、右排気ポート124の端部に連通孔128aを有する排気側ロータリーバルブ128が回転自在に取り付けられている。また、右第1シリンダヘッド122の中央には、点火プラグ129が図示のように取り付けられている。なお、各吸気ポート113,123および排気ポート114,124の内面にはセラミック(耐熱樹脂でもよい)が溶着されており、断熱効果を高めている。これにより、排気ガスの温度は上昇するが、この排気ガスは後述するスチーム機関4の水蒸気を発生させるための熱源として使用されるため、エンジンの熱効率の向上が期待できる。
【0017】
左右の第1シリンダボディ110,120にはそれぞれ、第1クランクシャフト160の回転中心軸C11(以下、第1クランク中心軸C11と称する)に対して直角な方向に貫通する同一径の第1シリンダボア110a,120aが形成されており、これら左右の第1シリンダボア110a,120aが左右の第1シリンダヘッド112,122にそれぞれ覆われて、第1クランクシャフト160を挟んで対向する左第1シリンダ室115および右第1シリンダ室125が形成されている。これら左右の第1シリンダ室115,125は同軸上に位置して形成されている。
【0018】
左右の第1シリンダ室115,125内に第1ピストンアセンブリ103が摺動自在に嵌合配設されている。この第1ピストンアセンブリ103は、第1連結体130と、この第1連結体130の左右端部にピン158により結合された左右一対の第1ピストン150,150と、第1連結体130内に回転自在に配設された第1ローターアセンブリ140とから構成される。左右一対の第1ピストン150,150はそれぞれ左右の第1シリンダボア110a,120aに摺合して第1シリンダ室115,125内に挿入されており、第1連結体130に結合された状態で一体となって、第1シリンダ室115,125内をシリンダ中心軸方向に往復移動可能となっている。
【0019】
左右一対の第1ピストン150,150は同一形状であり、図6に示すように形成されている。第1ピストン150は、各シリンダボア110a,120aと摺合する円筒状のヘッド部151と、ヘッド部151の上下両側から後方に延びた円弧状の一対のスリッパ部152,152と、これら一対のスリッパ部152,152の間を結んでヘッド部151の後側に形成されたリブ153,153とから一体形成されている。ヘッド部151の外周面には3個のリング溝151a,151b,151c(ピストンリング溝およびオイルリング溝)が形成されている。また、リブ153には上下に延びた挿入溝153aが形成されるとともに、この挿入溝153aを横切って上下一対の連結孔153bが形成されている。なお、ヘッド部151の外周面とスリッパ部152の外周面とは、各シリンダボア110a,120aと摺合する円筒面を形成している。
【0020】
第1連結体130(なお、連結体はピストンコネクターとも称される)は、図7〜図9に示すように、リング状リム部131と、リム部131から左右両側に延びた各一対の連結アーム壁133とを有する。リム部131は円筒状開口を有し、この円筒状開口の内周面131aにおける厚さ方向片側には内周側に突出するショルダー部132が一体形成され、このショルダー部132の内面における上下二カ所にそれぞれ複数枚の歯からなる内歯ギヤ132aが形成されている。また、各連結アーム壁133には上下一対の連結孔133aが形成されている。さらに、リム部131の外周側における上下二カ所には、各シリンダボア110a,120aに摺合する円弧状のガイド部135が形成されている。このガイド部135の一端には切り欠き135aが設けられ、この切り欠き135aとリム部131の内周面131aとを連通する第1潤滑孔135bがそれぞれ形成されている。
【0021】
ピストン150のリブ153に形成された挿入溝153aに連結アーム壁133を挿入させるとともに、連結孔133a,153bにピン158を挿入して図2に示すように、第1ピストン150が第1連結体130の両側に結合される。このとき、各ピストン150のスリッパ部152が第1連結体130のガイド部135に当接する。この状態で、ピストンヘッド部151と、スリッパ部152と、ガイド部135の外周面とは同一円周上に並び、シリンダボア110a,120aに摺合可能となっている。
【0022】
第1ローターアセンブリ140は、図10に示すように、メインローター部材141とサブローター部材142とを左右一対のボルト143により結合して構成され、円筒外周面145を有する円筒状に形成されている。この円筒外周面145の中心軸C13(以下、第1ローター中心軸C13と称する)から距離e1だけ偏心した中心軸C12(以下、第1ピン中心軸C12と称する)を有する第1偏心孔144がこの第1ローターアセンブリ140(各ローター部材141,142)に形成されている。なお、メインローター部材141とサブローター部材142との結合面と第1ピン中心軸C12とは重なる。サブローター部材142にはボルト143のヘッドのための座ぐり142bが形成されているが、この座ぐり142bから第1偏心孔144に貫通する小さな潤滑孔142aがサブローター部材142に形成されている。また、円筒外周面145には全周にわたる潤滑溝145aが形成されている。
【0023】
メインローター部材141には片側側面に開口した左右一対のローラ配設空間141aが左右対称形状に形成されている。各ローラ配設空間141a内には、支持ピン146aにより回転自在に支持されたメインローラ146と、それぞれ支持ピン147aにより回転自在に支持された一対のサブローラ147とが配設されている。これら左右一対のローラ配設空間141,141を覆ってメインローター部材141の側面にカバー149がボルト149aにより固定されている。ここで、メインローラ146の支持ピン146aはボルト146bによりメインローター部材141およびカバー149に固定されており、この支持ピン146aの上にメインローラ146が回転自在に緩嵌合して取り付けられている。
【0024】
また、カバー149の上においてボルト146bに捻りコイルバネ148が取り付けられており、両側脚部148a,148aがカバー149の開口を通ってローラ配設空間141内に突出し、サブローラ147の支持ピン147aと係合している。捻りコイルバネ148は脚部148a,148aが閉じる方向、すなわち、図10(A)において矢印Aで示す方向に付勢力が作用するバネであり、一対のサブローラ147,147を互いに近づけるように付勢する。なお、ローラ配設空間141には、メインローター部材141の第1偏心孔144に開口してメインローラ146の外周面を露出させるメイン開口141aと、円筒外周面145に開口してサブローラ147の外周面を露出させるサブ開口141b,141bとが形成されている。なお、各ローラ146,147および捻りコイルバネ148により、第1クランクピン161の回転に連動して第1ローターアセンブリ140を回転させる連動回転機構を構成している。
【0025】
第1ローターアセンブリ140の円筒外周面145は第1連結体130のリム部131の内周面131aに回転自在に摺合する寸法であり、第1偏心孔144は第1クランクシャフト160の第1クランクピン161を回転自在に摺合させる寸法である。このため、図2に示すように、第1偏心孔144内に第1クランクピン161を回転自在に摺合させるようにして第1ローターアセンブリ140が第1クランクピン161に取り付けられ、且つこの第1ローターアセンブリ140は第1連結体130のリム部131の内周面131aに回転自在に摺合される。この結果、第1ピストンアセンブリ103は、第1連結体130および第1ローターアセンブリ140を介して第1クランクピン161に連結されるとともに、第1シリンダ室115,125内に軸方向に移動自在に挿入配設された状態となる。
【0026】
なお、このように第1偏心孔144内に第1クランクピン161を回転自在に摺合させるとともに第1ローターアセンブリ140が第1連結体130の内周面131aに回転自在に摺合されたとき、メインローラ146の外周面がメイン開口141aを介して第1クランクピン161の外周面に当接し、サブローラ147,147の外周面がサブ開口141b,141bを介して第1連結体130の内周面131aと当接する。このとき、捻りコイルバネ148の付勢により、サブローラ147,147が互いに近づくように押され、メインローラ146の外周面と第1クランクピン161の外周面との当接およびサブローラ147,147の外周面と第1連結体130の内周面131aとの当接状態が維持される。
【0027】
このように捻りコイルバネ148によりサブローラ147,147を付勢することにより、第1クランクピン161に対する第1ローターアセンブリ140の位置を所望の位置に保持することができる。例えば、第1クランクピン161が回転駆動されると、支持ピン146aとメインローラ146との隙間および支持ピン147aとサブローラ147との隙間に対応する分だけ、第1クランクピン161の回転角と第1ローターアセンブリ140の回転角とに差(進角差)が生じるが、回転駆動力が解放された時点で捻りコイルバネ148の付勢力により両ローラ146,147が所定の位置に戻され、所望位置にリセットされる。また、第1クランクピン161から軸直角方向に作用する力は、各ローラ146,147を介して第1連結体130の内周面131aにより受け止められる、すなわち、各ローラがベアリングとしての役割を果たすため、第1クランクピン161の強度、耐久性を向上することができる。
【0028】
第1クランクシャフト160を図11に詳細に示しており、この第1クランクシャフト160は第1クランク中心軸C11を中心として回転自在となって左右の第1シリンダボディ101,102により支持されている。第1クランクピン161の中心軸である第1ピン中心軸C12は第1クランク中心軸C11から距離e1だけ偏心しており、第1クランクピン161の片側には複数の歯を有する外歯ギヤ162が形成されている。なお、第1クランク中心軸C11と第1ピン中心軸C12との偏心距離e1は、第1ローターアセンブリ140における第1ピン中心軸C12と第1ローター中心軸C13との偏心距離e1と等しい。また、第1クランクピン161の径は第1連結体130における内周面131aの径の1/2である。
【0029】
以上のような構成の第1ピストン機構10(第1内燃機関1)では、第1クランクシャフト160の回転が第1クランクピン161に取り付けられた第1ローターアセンブリ140を介して、第1連結体130、すなわち第1ピストンアセンブリ103を左右の第1シリンダ室115,125内で往復動させる運動に変換されるようになっている。なおこのとき、第1ローターアセンブリ140は第1クランクシャフト160と反対方向に相対回転するが、各ローラ146,147および捻りコイルバネ148からなる回転連動機構により、第1クランクシャフト160の回転駆動力が第1ローターアセンブリ140を反対方向へ回転するように伝達されるので、第1クランクシャフト160の回転が第1ピストンアセンブリ103を往復動させる運動にスムーズに変換される。なお、第1ピストンアセンブリ103の往復幅は、第1ローターアセンブリ140が第1クランクシャフト160と反対方向に相対回転するため、偏心距離e1の4倍となる。
【0030】
また、第1ピストン機構10は、上述したように、第1クランクシャフト160を挟むようにして左第1シリンダ室115および右第1シリンダ室125が対向配設され、左右の第1シリンダ室115,125内に第1ピストンアセンブリ103、すなわち左右の第1ピストン150,150が摺動自在に嵌合配設された、いわゆるダブルアクティングピストン機構であり、これにより、同一排気量の従来の内燃機関(ピストン機構)と比較して1/5〜1/6程度の小型化が可能になる。
【0031】
第2内燃機関2は、天然ガス(水素ガスを用いてもよい)を燃料とする4サイクル内燃機関であり、燃焼ガスの圧力を利用して作動する第2ピストン機構20を主体に構成される。第2ピストン機構20は、第1ピストン機構10と同様の構成であり、詳細な図示および説明を省略する。
【0032】
第1スチーム機関3は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)からの排気ガスの熱を利用して発生させた水蒸気を利用して作動する機関であり、詳細は後述する水蒸気発生システム5(図4を参照)により発生した水蒸気の圧力を利用して作動する第3ピストン機構30を主体に構成される。これにより、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。第3ピストン機構30は、第1ピストン機構10と同様の構成であり、図2に示すように、第3クランクシャフト360を挟むようにして左右一対の第3シリンダ301,302が対向配設されて構成されている。左第3シリンダ301および右第3シリンダ302は、それぞれ内端同士が対向して結合された左右の第3シリンダボディ310,320と、各シリンダボディ310,320の外端に取り付けられた左右の第3シリンダヘッド312,322とからなる。
【0033】
左第3シリンダヘッド312には、左吸気ポート313や、互いに途中で繋がる上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bが形成され、左吸気ポート313の端部にロータリースチームバルブ317が回転自在に取り付けられるとともに、上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bの端部に排気側ロータリーバルブ318がそれぞれ回転自在に取り付けられている。左吸気ポート313は水蒸気発生システム5(図4を参照)に繋がっており、水蒸気発生システム5から液化された水蒸気(高温高圧の水)が供給されるようになっている。
【0034】
ロータリースチームバルブ317は、直径方向に貫通する連通孔317aおよび、この連通孔317aに中央に形成された略球形の水溜めである空間部317bを有するロータリー式のバルブであり、第3クランクシャフト360の1/2の回転数で回転することにより、左吸気ポート313を所定のタイミングで開閉するようになっている。排気側ロータリーバルブ318は、直径方向に貫通する連通孔318aを有するロータリー式のバルブであり、第3クランクシャフト360の1/2の回転数で回転することにより、上側左排気ポート314aおよび下側左排気ポート314bを所定のタイミングで開閉するようになっている。
【0035】
なお、第1スチーム機関3(左側部分)の膨張行程においては、ロータリースチームバルブ317が連通孔317aを介して左吸気ポート313を開放し、各排気側ロータリーバルブ318,318が上下の左排気ポート314a,314bをそれぞれ閉鎖する。また、排気行程においては、ロータリースチームバルブ317が左吸気ポート313を閉鎖し、各排気側ロータリーバルブ318,318が連通孔318aを介して上下の左排気ポート314a,314bをそれぞれ開放する。
【0036】
右第3シリンダヘッド322には、右吸気ポート323や、互いに途中で繋がる上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bが形成され、左第3シリンダヘッド312と同様に、右吸気ポート323の端部に連通孔327aおよび略球形の水溜めである空間部327bを有するロータリースチームバルブ327が回転自在に取り付けられるとともに、上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bの端部に連通孔328aを有する排気側ロータリーバルブ328がそれぞれ回転自在に取り付けられている。また、右吸気ポート323は水蒸気発生システム5(図4を参照)に繋がっており、水蒸気発生システム5から液化された水蒸気(高温高圧の水)が供給されるようになっている。なお、各吸気ポートおよび排気ポートの内面にはセラミックが溶着されており、断熱効果を高めている。
【0037】
左右の第3シリンダボディ310,320にはそれぞれ、第3クランクシャフト360の回転中心軸C31(以下、第3クランク中心軸C31と称する)に対して直角な方向に貫通する同一径の第3シリンダボア310a,320aが形成されており、これら左右の第3シリンダボア310a,320aが左右の第3シリンダヘッド312,322にそれぞれ覆われて、第3クランクシャフト360を挟んで対向する左第3シリンダ室315および右第3シリンダ室325が形成されている。これら左右の第3シリンダ室315,325は同軸上に位置して形成されている。
【0038】
左右の第3シリンダ室315,325内に第3ピストンアセンブリ303が摺動自在に嵌合配設されている。この第3ピストンアセンブリ303は、第1ピストンアセンブリ103と同様に、第3連結体330と、この第3連結体330の左右端部にピン358により結合された左右一対の第3ピストン350,350と、第3連結体330内に回転自在に配設された第3ローターアセンブリ340とから構成される。
【0039】
左右一対の第3ピストン350,350は、第1ピストン150,150と同様に、左右の第3シリンダボア310a,320aにそれぞれ摺合して第3シリンダ室315,325内に挿入されており、第3連結体330に結合された状態で一体となって、第3シリンダ室315,325内をシリンダ中心軸方向に往復移動可能となっている。第3連結体330は第1連結体130と同様に形成され、第3連結体330に形成される円筒状開口の内周面331aには、第3ローターアセンブリ340が第3ローター中心軸C33を中心に回転自在に摺合されている。
【0040】
第3ローターアセンブリ340は、第1ローターアセンブリ140と同様に円筒外周面(図示せず)を有する円筒状に形成され、この第3ローターアセンブリ340には、円筒外周面の中心軸となる第3ローター中心軸C33から距離e3だけ偏心した中心軸C32(すなわち、第3ピン中心軸C32)を有する第3偏心孔344が形成されている。そして、第3偏心孔344内に第3クランクピン361を回転自在に摺合させるようにして第3ローターアセンブリ340を第3クランクピン361に取り付けることで、第3ピストンアセンブリ303が第3連結体330および第3ローターアセンブリ340を介して第3クランクピン361に連結されるようになっている。
【0041】
第3クランクシャフト360は第1クランクシャフト160と同様に形成され、第3クランク中心軸C31を中心として回転自在となって左右の第3シリンダボディ301,302により支持されている。第3クランクピン361の中心軸である第3ピン中心軸C32は第3クランク中心軸C31から距離e3だけ偏心しており、この第3クランク中心軸C31と第3ピン中心軸C32との偏心距離e3は、第3ローターアセンブリ340における第3ピン中心軸C32と第3ローター中心軸C33との偏心距離e3と等しくなっている。
【0042】
そして、以上のような構成の第3ピストン機構30(第1スチーム機関3)では、第1ピストン機構10と同様に、第3クランクシャフト360の回転が第3クランクピン361に取り付けられた第3ローターアセンブリ340を介して、第3連結体330、すなわち第3ピストンアセンブリ303を左右の第3シリンダ室315,325内で往復動させる運動にスムーズに変換されるようになっている。また、第3ピストンアセンブリ303の往復幅は、第3ローターアセンブリ340が第3クランクシャフト360と反対方向に相対回転するため、偏心距離e3の4倍となる。なお、本実施形態において、第3ピストン350の面積(径)は、第1ピストン150の面積(径)と等しくなっているが、必要に応じて変えるようにしてもよい。
【0043】
また、第3ピストン機構30は、上述したように、第3クランクシャフト360を挟むようにして左第3シリンダ室315および右第3シリンダ室325が対向配設され、左右の第3シリンダ室315,325内に第3ピストンアセンブリ303、すなわち左右の第3ピストン350,350が摺動自在に嵌合配設された、いわゆるダブルアクティングピストン機構であり、これにより、同一排気量の従来の内燃機関(ピストン機構)と比較して1/5〜1/6程度の小型化が可能になる。
【0044】
第2スチーム機関4は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)からの排気ガスの熱を利用して発生させた水蒸気を利用して作動する機関であり、詳細は後述する水蒸気発生システム5(図4を参照)により発生した水蒸気の圧力を利用して作動する第4ピストン機構40を主体に構成される。これにより、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)を有効利用することができるため、エンジンの熱効率をより向上させることが可能になる。第4ピストン機構40は、第3ピストン機構30と同様の構成であり、詳細な図示および説明を省略する。
【0045】
ところで、図3に示すように、第1クランクシャフト160は、第1クランク中心軸C11と第2ピストン機構20の第2クランク中心軸C21とが同軸となるように、第2ピストン機構20を構成する第2クランクシャフト260と連結されるように構成されており、第1クランクシャフト160と第2クランクシャフト260とが同軸上で連結されて第1クランクシャフトアセンブリ60が形成されるようになっている。これにより、図1に示すように、第1クランクシャフトアセンブリ60の軸線上(すなわち、第1および第2クランク中心軸C11,C21上)で第1ピストン機構10(第1内燃機関1)と第2ピストン機構20(第2内燃機関2)とが並んで配置される。なお、図3に示すように、第1ピン中心軸C12(第1クランクピン161)が第2ピストン機構20の第2ピン中心軸C22(第2クランクピン261)に対して第1クランク中心軸C11(第2クランク中心軸C21)を中心に180度だけ相対回転した位置に位置するように、第1クランクシャフト160と第2クランクシャフト260とが連結される。
【0046】
また、図3に示すように、第3クランクシャフト360は、第3クランク中心軸C31と第4ピストン機構40の第4クランク中心軸C41とが同軸となるように、第4ピストン機構40を構成する第4クランクシャフト460と連結されるように構成されており、第3クランクシャフト360と第4クランクシャフト460とが同軸上で連結されて第2クランクシャフトアセンブリ65が形成されるようになっている。これにより、図1に示すように、第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線上(すなわち、第3および第4クランク中心軸C31,C41上)で第3ピストン機構30(第1スチーム機関3)と第4ピストン機構40(第2スチーム機関4)とが並んで配置される。なお、図3に示すように、第3ピン中心軸C32(第3クランクピン361)が第4ピストン機構40の第4ピン中心軸C42(第4クランクピン461)に対して第3クランク中心軸C31(第4クランク中心軸C41)を中心に180度だけ相対回転した位置に位置するように、第3クランクシャフト360と第4クランクシャフト460とが連結される。
【0047】
そして、図1に示すように、第1クランクシャフトアセンブリ60の軸線(第1および第2クランク中心軸C11,C21)が第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線(第3および第4クランク中心軸C31,C41)に対して平行となり、且つ、第1ピストン機構10が第3ピストン機構30に対して第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線と直角な方向に並んで配置されるとともに、第2ピストン機構20が第4ピストン機構40に対して第2クランクシャフトアセンブリ65の軸線と直角な方向に並んで配置されるように構成されている。これにより、エンジンの重心G(図1を参照)をエンジンの中央に位置させることができるため、バランサー等が不要となり、エンジンの小型化が可能になる。
【0048】
なお、各ピストン機構に構成される第1シリンダ101,102(第1ピストン機構10)、第2シリンダ201,202(第2ピストン機構20)、第3シリンダ301,302(第3ピストン機構30)、そして第4シリンダ401,402(第4ピストン機構40)は、互いに一体的に形成されてシリンダアッセンブリ70を構成する。また、シリンダアッセンブリ70の外部に突出する第1および第3クランクシャフト160,360の端部には、第1および第2クランクシャフトアセンブリ60,65を同期回転させることが可能なシンクロドライブギヤ(図示せず)等がそれぞれ取り付けられる。
【0049】
続いて、第1スチーム機関3および第2スチーム機関4に水蒸気を供給するための水蒸気発生システム5について図4を参照しながら説明する。なお、図4において、説明容易化のため、第1内燃機関1および第1スチーム機関3が上下方向に反転して記載されている。水蒸気発生システム5は、水が貯留されたリザーブタンク501と、リザーブタンク501から供給される水を加熱するための一次熱交換器510および二次熱交換器520とを主体に構成される。
【0050】
一次熱交換器510は、後述するタービンユニット550から排出された排気ガスが通過する排気管511の肉厚部に、螺旋状に形成されたステンレス製の第1熱交換パイプ512が鋳込まれた構成となっており、リザーブタンク501からの水が第1熱交換パイプ512を通過するときに、排気管511を通過する排気ガスの熱を利用して第1熱交換パイプ512を通過する水を加熱することで、一次熱交換器510によりリザーブタンク501からの水が加熱されるようになっている。そして、一次熱交換器510を用いて加熱された水は、第1加圧ポンプ502を用いて二次熱交換器520に送られるようになっている。このとき、第1加圧ポンプ502を用いて二次熱交換器520に送られる水の圧力は、例えば、6〜16kgf/cm程度に設定される。なお、排気管511の肉厚部に螺旋状の第1熱交換パイプ512を鋳込むことにより、第1熱交換パイプ512の破裂を防止している。また、第1加圧ポンプ502は図示しないモーターで駆動されるギアポンプであり、例えば、第1スチーム機関3の第3ピストンアセンブリ303が一往復する間に0.05〜0.2ml程度の(高圧の)水を送るようになっている。
【0051】
二次熱交換器520は、第1内燃機関1の左排気ポート114および右排気ポート124(並びに、第2内燃機関2の排気ポート)から排出された排気ガスが通過するエキゾーストマニホールド521の肉厚部に、螺旋状に形成されたステンレス製の第2熱交換パイプ522が鋳込まれた構成となっており、一次熱交換器510(第1加圧ポンプ502)からの高圧の水が第2熱交換パイプ522を通過するときに、エキゾーストマニホールド521を通過する排気ガスの熱を利用して第2熱交換パイプ522を通過する水を加熱することで、二次熱交換器520により一次熱交換器510からの水が加熱されるようになっている。そして、二次熱交換器520を用いて加熱された高温高圧の水は、第1スチーム機関3の左吸気ポート313および右吸気ポート323(並びに、第2スチーム機関4の吸気ポート)に送られるようになっている。このようにして、左吸気ポート313および右吸気ポート323に送られた高温高圧の水は、相対的に圧力が低下する左右の第3シリンダ室315,325(並びに、第2スチーム機関4の各シリンダ室)で水蒸気に気化するようになっている。なお、エキゾーストマニホールド521の肉厚部に螺旋状の第2熱交換パイプ522を鋳込むことにより、第2熱交換パイプ522の破裂を防止している。
【0052】
ところで、タービンユニット550は、タービンシャフト552の一端側に設けられた排気タービン551と、タービンシャフト552の他端側に設けられたインペラ553と、排気タービン551を回転駆動した排気ガスから水蒸気を分離する水蒸気分離装置560とを主体に構成される。排気タービン551は、第1内燃機関1(および、第2内燃機関2)の各排気ポートから排出された排気ガスを利用して回転駆動されるように構成されており、この排気タービン551の回転力を利用してタービンシャフト552およびインペラ553が回転するようになっている。なお、第1内燃機関1(および、第2内燃機関2)の各排気ポートから排出された排気ガスは、前述の二次熱交換器520および排気ガスを浄化するキャタライザー508を通過したのち排気タービン551に達するようになっている。
【0053】
タービンシャフト552は、図示しない歯車機構等を利用して第1または第2クランクシャフトアセンブリ60,65と連結されており、排気タービン551の回転力を利用して各クランクシャフトアセンブリ60,65を(補助的に)駆動可能に構成される。これにより、エンジンの出力向上が期待できる。
【0054】
インペラ553は、前述したように、排気タービン551により回転駆動され、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)における各シリンダ室内の気体をシリンダ室の外部へ向けて吸引可能に構成される。そして、例えば、第1スチーム機関3(第3ピストン機構30)の上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bが開放されたときに、第1スチーム機関3における右シリンダ室325内の気体(水蒸気)がこのインペラ553に吸引されて、上側右排気ポート324aおよび下側右排気ポート324bからリザーブタンク501へ送られるようになっている。
【0055】
これにより、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)における排気行程において、インペラ553によりシリンダ室内の気体(水蒸気)を効率よくシリンダ室の外部へ排出させることができるため、第1および第2内燃機関1,2(第1および第2ピストン機構10,20)から排出された排気ガスを有効利用しつつ、第1および第2スチーム機関3,4(第3および第4ピストン機構30,40)の出力を向上させることが可能になる。なお、リザーブタンク501内の圧力は2〜3kgf/cm程度に設定され、インペラ553を利用してリザーブタンク501へ送られた水蒸気は、水に液化した状態でリザーブタンク501内に貯留される。
【0056】
さて、水蒸気分離装置560は、いわゆるサイクロン方式の分離装置であり、図5に示すように、有底筒状のケース561と、ケース561の一端側(図5における左側)の側部に設けられた導入管565と、ケース561の他端側(図5における右側)の側部に設けられた排出管567と、ケース561の他端側(図5における右側)の底部中央に設けられた回収管569と、ケース561の内部中央に設けられた水蒸気分離部材571とを有して構成される。
【0057】
ケース561は金属材料を用いて有底筒状に形成され、内部を排気ガスが通過するようになっている。ケース561の内部における一端側には、タービン収容空間562が形成され、このタービン収容空間562に排気タービン551が回転自在に収容されるようになっている。導入管565はケース561と一体に形成され、導入管565の内部には、図4に示すように、一方がケース561のタービン収容空間562に繋がるとともに、他方がキャタライザー508(第1および第2内燃機関1,2側)に繋がる導入通路566が形成される。そして、導入管565の導入通路566を通過してケース561のタービン収容空間562に達した排気ガスは、排気タービン551を回転駆動したのち旋回流となって、ケース561の筒状空間563(詳細は後述)を通過するようになっている。
【0058】
排出管567はケース561と一体に形成され、排出管567の内部には、図4に示すように、一方がケース561の水蒸気分離空間564(詳細は後述)に繋がるとともに、他方が一次熱交換器510の排気管511に繋がる排出通路568が形成される。また、回収管569はケース561と一体に形成され、回収管569の内部には、図4に示すように、一方がケース561の水蒸気分離空間564(詳細は後述)に繋がるとともに、他方が冷却装置504に繋がる回収通路570が形成される。
【0059】
水蒸気分離部材571は、金属材料を用いて開口部572を有する有底筒状に形成され、この開口部562がケース561の他端側底部(図5における右側の底部)に対向するように、ケース561の内部中央に取り付けられる。そして、水蒸気分離部材571の側部とケース561の中央側部との間に、筒状空間563がタービン収容空間562に繋がって形成されるとともに、水蒸気分離部材571の底部および側部とケース561の他端側底部および側部との間に、筒状空間563より断面積の大きい水蒸気分離空間564が筒状空間563に繋がって形成されるようになっている。
【0060】
なお、水蒸気分離部材571の径は、ケース561の一端側から他端側(図5における左側から右側)へ向かうにつれて大きくなるように構成されており、これにより、筒状空間563の断面積がケース561の一端側から他端側へ向かうにつれて小さくなるようになっている。また、回収管569の一方の端部は、ケース561の他端側(図5における右側)の底部から水蒸気分離空間564内に突出し、水蒸気分離部材571の内側に位置するようになっている。
【0061】
このように構成される水蒸気分離装置560において、図5に示すように、導入管565の導入通路566を通過してケース561のタービン収容空間562に達した排気ガス(矢印A)は、排気タービン551を回転駆動したのち旋回流となって、ケース561の筒状空間563を通過する(矢印B)。筒状空間563を通過する排気ガスは、筒状空間563内を旋回しながら筒状空間563の一端側(タービン収容空間562側)から他端側(水蒸気分離空間564側)へ向かい、旋回しながら水蒸気分離空間564に達する。
【0062】
排気ガスが筒状空間563より断面積の大きい水蒸気分離空間564に達すると、排気ガス中の比重が相対的に大きい炭酸ガス等は遠心力により水蒸気分離空間564の側方(外方)へ向かい、排気ガス中の比重が相対的に小さい水蒸気は水蒸気分離空間564の中央へ向かう。すなわち、水蒸気分離空間564において、排気ガスから水蒸気が分離される。なお、例えば、圧力1kgf/cm、温度200℃における水蒸気の比重が0.452kg/mであるのに対し、炭酸ガスの比重が1.103kg/mであり、さらに、窒素ガスを多く含む空気の比重が0.722kg/mであることから(機械工学便覧による)、第1内燃機関1(および第2内燃機関2)から排出された排気ガスでは水蒸気の比重が一番小さく、水蒸気分離空間564において比重が相対的に小さい水蒸気は水蒸気分離空間564の中央へ向かう。
【0063】
そして、水蒸気分離空間564の中央へ向けて分離された水蒸気は、ケース561内の圧力が大気圧より高いため、押し出されるように水蒸気分離部材571の開口部572を通過して水蒸気分離部材571の内側に達し(矢印C)、回収管569の回収通路570を通過してケース561の外部(冷却装置504へ)に排出される。一方、水蒸気が分離されて水蒸気分離空間564の側方へ向かう排気ガス(矢印D)は、排出管567の排出通路568を通過してケース561の外部に(一次熱交換器510へ)排出される。これにより、簡便な構成で、水蒸気を含む排気ガスから水蒸気を分離することが可能になる。
【0064】
なお、筒状空間563の断面積をケース561の一端側(タービン収容空間562側)から他端側(水蒸気分離空間564側)へ向かうにつれて小さくすることで、筒状空間563を通過する排気ガスの速度が水蒸気分離空間564に向かうにつれて速くなり、水蒸気分離空間564において排気ガスから水蒸気を分離する効果(遠心力の効果)を高めることができる。
【0065】
このようにして、水蒸気分離装置560により排気ガスから分離された水蒸気は、図5に示すように、冷却装置504を通過して水になり集水タンク505へ送られる。そして、集水タンク505に貯留された水は、リザーブタンク501内の水量が所定値以下となった場合に、モーターで駆動される第2加圧ポンプ506を用いてリザーブタンク501に送られる。これにより、水蒸気分離装置560を用いて外部(排気ガス)からリザーブタンク501に水が供給されるため、リザーブタンク501に水を補充する手間を省くことができ、メンテナンス性が向上する。さらに、リザーブタンク501に水を補充するための大型の装置を別途設ける必要がなく、エンジンの小型化が可能になる。特に、移動を伴う自動車や航空機用エンジンに有効である。また、第1内燃機関1(および第2内燃機関2)から排出された排気ガスから水蒸気を分離するため、排気ガスの有効利用を図ることができる。
【0066】
なお、水蒸気分離装置560の排出通路568を通過した排気ガスは、図5に示すように、一次熱交換器510の排気管511を通過したのち外部に排出される。これからわかるように、水蒸気発生システム5の一次熱交換器510および二次熱交換器520は、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガスの熱を利用して水を加熱する構成となっており、第1内燃機関1(第1ピストン機構10)および第2内燃機関2(第2ピストン機構20)から排出された排気ガス(排気熱)が有効利用される。
【0067】
そして、以上のような構成の水蒸気分離装置560によれば、遠心力を利用して、排気ガスに含まれる水蒸気が水蒸気分離空間564の中央へ向けて分離され回収通路570を通過するとともに、水蒸気が分離された排気ガスが水蒸気分離空間654の側方へ向かいつつ排出通路568を通過するように構成されるため、簡便な構成で、水蒸気を含む排気ガスから水蒸気を分離することが可能になる。
【0068】
また、第1内燃機関1(および第2内燃機関2)から排出された排気ガスから水蒸気を分離するため、排気ガスの有効利用を図ることができる。
【0069】
なお、上述の実施形態において、水蒸気分離装置560により排気ガスから分離された水蒸気が水蒸気発生システム5のリザーブタンク501に送られるように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、水蒸気分離装置560により排気ガスから分離された水蒸気を水に液化してエンジンの冷却水として用いるようにしてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態において、第1内燃機関1に加えて第2内燃機関2が設けられているが、これに限られるものではなく、内燃機関が1つだけ設けられるようにしてもよく、内燃機関が3つ以上設けられるようにしてもよい。さらに、第1スチーム機関3に加えて第2スチーム機関4が設けられているが、これに限られるものではなく、スチーム機関が1つだけ設けられるようにしてもよく、スチーム機関が3つ以上設けられるようにしてもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態において、ケース561内のタービン収容空間562に排気タービン551が回転自在に設けられているが、これに限られるものではなく、ケース561の内部に排気タービン551が設けられなくてもよい。すなわち、導入通路566を通過した排気ガスがケース561の内部で旋回流を形成可能な構成であればよい。
【0072】
また、上述の実施形態において、図12に示すように水蒸気分離部材571を設けなくてもよい。このようにしても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。なおこのとき、排気タービン551が本発明に係る水蒸気分離部材として機能し、排気タービン551の胴部551aとケース561の一端側部との間に筒状空間663が形成されるとともに、排気タービン551の先端とケース561の他端側底部および側部との間に、筒状空間663より断面積の大きい水蒸気分離空間664が筒状空間663に繋がって形成される。
【0073】
そして、導入管565の導入通路566を通過してケース561の内部に達した排気ガス(矢印A′)は、排気タービン551の胴部551aから筒状空間663内に突出する羽根部551bを押圧して排気タービン551を回転駆動しつつ、筒状空間663内を旋回する旋回流(矢印B′)となり、旋回しながら筒状空間663を通過して水蒸気分離空間664に達する。排気ガスが水蒸気分離空間664に達すると、上述の実施形態の場合と同様にして排気ガスから水蒸気が分離され、水蒸気(矢印C′)が回収管569の回収通路570を通過してケース561の外部に排出されるとともに、水蒸気が分離された排気ガス(矢印D′)が排出管567の排出通路568を通過してケース561の外部に排出される。なお、図12において、ケース561の内部に(水蒸気分離部材571に加えて)排気タービン551を設けなくてもよく、導入通路566を通過した排気ガスがケース561の内部で旋回流を形成可能な構成であればよい。このようにしても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
さらに、上述の実施形態において、水蒸気分離装置560により第1内燃機関1(および第2内燃機関2)から排出された排気ガスから水蒸気を分離するように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、外燃機関の排気ガスから水蒸気を分離するようにしてもよく、水蒸気を含む混合気体に対して、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る水蒸気分離装置を備えたマルチハイブリッドエンジンのシリンダヘッドを取り外した状態を示す側面図である。
【図2】上記マルチハイブリッドエンジンを構成する第1内燃機関および第1スチーム機関を示す断面図である。
【図3】上記マルチハイブリッドエンジンを構成する第1および第2クランクシャフトアセンブリを示す側面図である。
【図4】上記マルチハイブリッドエンジンを構成する水蒸気発生システムの概要を示す構成図である。
【図5】本発明に係る水蒸気分離装置の断面図である。
【図6】第1内燃機関の第1ピストンアセンブリを構成する第1ピストンの部分断面側面図および部分断面背面図である。
【図7】第1内燃機関の第1ピストンアセンブリを構成する第1連結体の部分断面正面図である。
【図8】第1内燃機関の第1ピストンアセンブリを構成する第1連結体の部分断面側面図である。
【図9】第1内燃機関の第1ピストンアセンブリを構成する第1連結体の部分断面平面図である。
【図10】第1内燃機関の第1ピストンアセンブリを構成する第1ローターアセンブリの部分断面正面図および側面図である。
【図11】第1内燃機関を構成する第1クランクシャフトの正面図、側面図および断面図である。
【図12】水蒸気分離装置の変形例を示す断面図である。
【図13】従来の4サイクルガソリンエンジンにおける熱勘定図である。
【符号の説明】
【0076】
ENG マルチハイブリッドエンジン
1 第1内燃機関
2 第2内燃機関
3 第1スチーム機関
4 第2スチーム機関
5 水蒸気発生システム
550 タービンユニット
560 水蒸気分離装置
561 ケース
563 筒状空間
564 水蒸気分離空間
565 導入管
566 導入通路
567 排出管
568 排出通路
569 回収管
570 回収通路
571 水蒸気分離部材
663 筒状空間(変形例)
664 水蒸気分離空間(変形例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を含む混合気体から水蒸気を分離可能なサイクロン式の水蒸気分離装置であって、
有底筒状のケースと、
前記ケースの内部に繋がる導入通路を有し、前記ケースの一端側において、前記導入通路を通過した混合気体が前記ケースの内部で旋回流を形成可能な位置に設けられた導入管と、
前記ケースの他端側の側部に設けられ、前記ケースの内部に繋がる排出通路を有する排出管と、
前記ケースの他端側の底部中央に設けられ、前記ケースの内部に繋がる回収通路を有する回収管と、
前記ケースの内部に設けられ、前記ケースの側部との間に筒状空間を形成するとともに、前記ケースの他端側底部および側部との間に前記筒状空間に繋がる水蒸気分離空間を形成する水蒸気分離部材とを備え、
前記導入通路を通過して前記ケースの内部に達した混合気体が前記筒状空間を旋回しつつ通過して前記水蒸気分離空間に達するように構成されており、
前記筒状空間内を旋回する混合気体が前記水蒸気分離空間に達すると、混合気体に含まれる水蒸気が前記水蒸気分離空間の中央へ向けて分離され前記回収通路を通過するとともに、水蒸気が分離された混合気体が前記水蒸気分離空間の側方へ向かいつつ前記排出通路を通過するように構成されることを特徴とする水蒸気分離装置。
【請求項2】
前記混合気体が内燃機関から排出された排気ガスであることを特徴とする請求項1に記載の水蒸気分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−192348(P2006−192348A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5294(P2005−5294)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(302000977)
【Fターム(参考)】