説明

水質改善用構造体

【課題】水中でのねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制できる水質改善用構造体を提供する。
【解決手段】水質改善用構造体10は、管状体20の下端部に重り部材22が取り付けられ、管状体20の上端部に浮き部材24が取り付けられている。管状体20は、樹脂製の内管12の外周に、炭素繊維14Aを格子状に編んだ繊維製外管14が形成されており、繊維製外管14の外側に放射状に炭素繊維からなる複数の線状繊維16が設けられている。重り部材22は、水中の底部30に設置され、浮き部材24が水面32に浮かぶことで、管状体20が水中を海藻のように揺動する。管状体20は、ねじれや引っ張りに強く、切断や破断が抑制される。繊維製外管14や線状繊維16に微生物や藻などの水生植物が繁殖し、これを目当てに魚類や貝類が生息する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水中、又は湖沼、河川などの水中に設置され、藻類、微生物、及び魚貝類などの水中生物を生育させて水質を改善する水質改善用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、湖沼、池、河川などでは、水質汚濁を改善するために藻などの水生植物を生育させる人口生育場を設置する場合ある。また湾内や近海では、海水中に海藻や魚貝類を生育させるための人口生育場や漁礁を設置する場合がある。
【0003】
このような人口生育場として、例えば、図13に示すように、紐やワイヤーからなる幹状部材200に多数の炭素繊維202を放射状に複数箇所に結んだものがある。また、図14に示すように、紐やワイヤーからなる幹状部材210の複数箇所に織物212を串状に突き刺したものがある。これらの人口生育場を水中に設置すると、図13中の炭素繊維202又は図14中の織物212に微生物や、藻などの水中植物が生育する。これにより、水中の富栄養化が抑制され、水質を改善することができる。
【0004】
また、他の例として、例えば特許文献1では、多孔質コンクリートブロックの表面に植栽土壌を収容する収容部が形成されたブロック製品を水面に浮設し、植栽土壌に植物を植栽させるようにした人口浮設体が提案されている。ブロック製品の下部には、水中に炭素繊維フィラメントからなる成形体が吊設されている。ブロック製品は、水位が変動しても水面に浮いており、多孔質コンクリートブロックに植物の根が入り込むため、安定して植栽がなされる。また、水中の炭素繊維フィラメントには微生物が付着し、柔軟性及び可撓性に優れるために水中で前後左右に揺動して小生物や魚類などの生息場所となる。
【特許文献1】特開2003−221820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の人口生育場などでは、以下のような問題点がある。
【0006】
図13に示す人口生育場では、紐やワイヤーからなる幹状部材200と多数の炭素繊維202を用いるため、ねじれに弱く、水中に重量体などで沈めた際に流水や波で切れ易い。また、図14に示す人口生育場では、これらの問題に加えて、織物212を裁断し、幹状部材210に通し、織物212を幹状部材210に固定するための加工が煩雑であり、効率が悪い。また、図13及び図14に示す人口生育場は、長さ方向にねじれが発生しやすく、水中の浅い部分から深い部分まで設置することが難しい。
【0007】
特許文献1に記載の浮設体では、ブロック製品の下部に炭素繊維フィラメントからなる成形体を吊設するため、炭素繊維フィラメントがねじれに弱く、水中に吊設した際に流水や波で切れ易い。炭素繊維フィラメントが切れると、ブロック製品が浮遊し、遠方に流されるという問題がある。また、植栽を施すブロック製品に炭素繊維フィラメントからなる成形体を吊設するため、設備が大掛かりでコストがかかると共に、設置の際の作業効率が悪い。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、流水や波などによる損傷や切断を抑制し、耐久性を向上すると共に、低コストで水中の浅い部分から深い部分まで設置可能な水質改善用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る水質改善用構造体は、水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管と、を備える管状体と、前記繊維製外管の外側に放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の線状繊維と、前記管状体の下端部に設けられ、水中の底部に設置される重り部材と、前記管状体の上端部に設けられた浮き部材と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明では、管状体の下端部に設けられた重り部材が水中の底部に設置され、管状体の上端部に設けられた浮き部材が水面又は水中で浮くことによって、管状体が水中で海藻のように揺動する。内管の外周上に繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管が形成され、繊維製外管の外側に放射状に複数の線状繊維が設けられているので、繊維製外管の繊維の隙間や複数の線状繊維などに微生物や藻などが繁殖する。複数の線状繊維を設けることで表面積が大きくなり、また藻などが生える足掛かりとなるため、藻などが繁殖しやすい。これらの微生物や藻などを目当てに魚貝類などが集まり、水中の栄養分が消費されることによって、水質が改善される。
【0011】
また、管状体が下端部の重り部材と上端部の浮き部材によって水中の深い部分から浅い部分まで設置されるので、水中の底部付近(湖底や海底など)や水面付近の水質を浄化することが可能となる。また、管状体が揺動することで、汚泥を攪拌し、浄化を促進することが可能となる。また、繊維製外管が樹脂製等の内管で補強されているので、管状体を水中の深い部分から浅い部分に立設しても、ねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性に優れた水質改善用構造体が得られる。また、加工が容易で長尺の管状体を製造することができ、低コスト化が可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水質改善用構造体において、前記浮き部材が、前記管状体の上端部に連結されたワイヤーを介して水面に浮かぶように構成したことを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明では、管状体の上端部にワイヤーが連結されており、底部の深さに応じてワイヤーの長さを調整することで、浮き部材を水面に浮かべる。これによって、水底(底部)の深さが異なる場合にも浮き部材を水面に浮かべて管状体の水中での立設状態を維持することができる。また、浮き部材を水面に浮かべることで、定期的な水質観測や管状体の回収が容易となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の水質改善用構造体において、前記浮き部材に代えて、前記内管の下端部と上端部とが閉じられ、前記内管の内部に気体が封入されたことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明では、内管の下端部と上端部とが閉じられ、内管の内部に気体が封入されているので、管状体自身に浮力が発生し、管状体が水中で海藻のように揺動する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、水面に浮かぶ浮き部材と、前記浮き部材の下方部に連結され、ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管と、を備える複数の管状体と、前記繊維製外管の外側に放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の線状繊維と、前記管状体の下端部に設けられた重り部材と、を有することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明では、水面に浮かぶ浮き部材の下方部に複数の管状体が連結されており、管状体の下端部に設けられた重り部材によって管状体が水中に垂下される。これにより、浮き部材の下方部で複数の管状体が水中を海藻のように揺動する。管状体は、内管の外周上に繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管が形成され、繊維製外管の外側に放射状に複数の線状繊維が設けられているので、繊維製外管の繊維の隙間や複数の線状繊維などに微生物や藻などが繁殖する。複数の線状繊維を設けることで表面積が大きくなり、また藻などが生える足掛かりとなるため、藻などが繁殖しやすい。これらの微生物や藻などを目当てに魚貝類などが集まり、水中の栄養分が消費されることによって、水質が改善される。また、浮き部材に複数の管状体を垂下するので、特に水面付近の水質が改善される。また、繊維製外管が樹脂製等の内管で補強されているので、管状体を水中の深い部分から浅い部分に設置しても、ねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性に優れた水質改善用構造体が得られる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製中間管と、前記繊維製中間管の外周上に形成された生分解性プラスチックからなる被覆管と、を備える管状体と、前記管状体の下端部に設けられ、水中の底面に設置される重り部材と、前記管状体の上端部に設けられた浮き部材と、を有することを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明では、管状体の下端部に設けられた重り部材が水中の底部に設置され、上端部に設けられた浮き部材が水面又は水中で浮くことによって、管状体が水中で海藻のように揺動する。管状体は、内管の外周上に、繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製中間管と、その外周上に生分解性プラスチックからなる被覆管を備えており、被覆管や露出した繊維製中間管に微生物や藻などが繁殖する。これらの微生物や藻などを目当てに魚貝類などが集まり、水中の栄養分が消費されることによって、水質が改善される。また、被覆管に汚泥や土中の微生物などが繁殖しやすく、水中のみでなく土中での浄化も可能である。また、被覆管と繊維製外管が樹脂製等の内管で補強されているので、管状体が下端部の重り部材と上端部の浮き部材によって水中に設置されても、管状体はねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性に優れた水質改善用構造体が得られる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の水質改善用構造体において、前記内管の内部に流体が供給されることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明では、内管の内部に流体として、例えば酸素などの気体や栄養素などの液体が供給されることで、微生物や魚などの繁殖をよりいっそう促進できる。また、水中の底部付近まで酸素や栄養素などの流体を供給することができ、底部の堆積物を微生物により早く改質することが可能である。また、内管の内部に酸素などの気体を供給することによって、管状体の内部にエア圧力を加えることができ、管状体を運動させることが可能である。これによって、汚泥を攪拌し、浄化を促進できる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の水質改善用構造体において、前記繊維が炭素繊維であることを特徴としている。
【0023】
請求項7に記載の発明では、繊維製外管として炭素繊維を用いることで、生体親和性が良く、微生物や藻などの水生生物が繁殖し易い。また、腐敗なども生じないため、よりいっそう耐久性に優れた水質改善用構造体を実現できる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項、又は請求項7に記載の水質改善用構造体において、前記内管が生分解性プラスチックで形成されていることを特徴としている。
【0025】
請求項8に記載の発明では、内管が生分解性プラスチックで形成されているので、汚泥や土中の微生物などが繁殖しやすく、水中のみでなく土中での浄化も可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る水質改善用構造体によれば、管状体が水中で海藻のように揺動するので、微生物、藻類や魚類などが生息し、水質を改善でき、漁礁としての役割を持たせることができる。また、管状体がねじれや引っ張りに強いため、流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性を向上できる。また、管状体の加工が容易で長尺の水質改善用構造体を製造でき、低コスト化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1には、本発明の第1実施形態である水質改善用構造体10が示されている。この水質改善用構造体10は、長筒状の管状体20と、管状体20の下端部に取り付けられた重り部材22と、管状体20の管状体の上端部に取り付けられた浮き部材24とを備えている。管状体20は、図2に示すように、樹脂製の内管12と、この内管12の外周に炭素繊維14Aを格子状に編んだ繊維製外管14とを備えており、繊維製外管14が内管12で補強された構造となっている。繊維製外管14の外側には、放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の炭素繊維からなる線状繊維16が設けられている。
【0029】
重り部材22の上部には筒状部22Aが設けられており、筒状部22Aを管状体20に加締めることによって、管状体20の下端部に重り部材22が取り付けられている。また、浮き部材24の下部には筒状部24Aが設けられており、筒状部24Aを管状体20に加締めることによって、管状体20の上端部に浮き部材24が取り付けられている。浮き部材24は弾性変形可能なゴム又は樹脂製の球状体からなり、球状体の内部には気体が封入されている。気体としては、空気、窒素ガス、ヘリウムなどの比較的軽い気体が用いられている。
【0030】
これらの水質改善用構造体10は、河川や湖沼などの水中に、又は湾内や漁場などの海水中に複数設置されている。その際、重り部材22が水中の底部30に設置され、浮き部材24を水面32に浮かべることで、管状体20が水中を海藻(例えば昆布)のように揺動するようになっている。
【0031】
ここで、管状体20は、例えば1m〜50m程度の長さに形成されており、線状繊維16の長さは、例えば1mm〜500mmに設定されている。
【0032】
内管12を形成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが用いられる。内管12の材料は、樹脂の他、ゴムや繊維などを用いても良い。ゴムとしては、例えば、NBR、EPDM、シリコーンゴムなどが用いられる。繊維としては、例えば炭素繊維が用いられる。
【0033】
繊維製外管14は、複数本(本実施形態では4本)の炭素繊維14Aの束を格子状に編んだものであり、各炭素繊維14Aの繊維間には隙間が形成されている。
【0034】
次に、水質改善用構造体10の作用について説明する。
【0035】
図1に示すように、このような水質改善用構造体10は、管状体20の下端部に設けられた重り部材22が水中の底部30に設置され、管状体20の上端部に設けられた浮き部材24が水面32で浮くことによって、管状体20が水中で海藻(例えば昆布)のように揺動する。管状体20には、炭素繊維14Aを格子状に編んだ繊維製外管14が設けられており、繊維製外管14の隙間に微生物などが繁殖する。また、繊維製外管14の外側に複数の線状繊維16が設けられているので、微生物が付着しやすく、また藻類などの足がかりになるため、繊維製外管14の表面や複数の線状繊維16から藻類などの水生植物27が生育する。微生物や水生植物27などを目当てに小魚28Aや貝類29が繁殖し、さらに小魚28Aや貝類29を目当てに大きな魚類28Bが繁殖する。これによって水中のリンなどの栄養分が消費され、水質が改善される。また、小魚28A、魚類28Bが繁殖するため、漁礁として用いることができる。また、管状体20が水中を揺動することで、汚泥を攪拌し、浄化を促進することが可能である。
【0036】
また、重り部材22を湖底や海底などの底部30の所定位置に容易に設置することができ、暴風雨などによる強い流水や波を受けても、水質改善用構造体10が移動しにくく底部30の環境改善に役立つ。
【0037】
このような水質改善用構造体10は、繊維製外管14が樹脂製の内管12で補強された管状層構造となっているため、管状体20が下端部の重り部材22と上端部の浮き部材24によって水中に立設されても、水中や海水中でのねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性が良い。このため、水中での立設状態を維持することができ、耐久性に優れた水質改善用構造体10が得られる。また、内管12の外周に繊維製外管14とその外側に複数の線状繊維16を有する構造であるので、図13等に示す従来の人口生育場のように、紐やワイヤーなどの幹状部材200が不要であり、安価で容易に加工できる。また、長尺の水質改善用構造体10を容易に製造でき、低コスト化が可能である。
【0038】
また、繊維製外管14、線状繊維16として炭素繊維を用いることで、生体親和性が良く、微生物や藻などの水生植物27が繁殖し易い。また、炭素繊維は腐敗などが生じないため、長期にわたり安定して設置され、水質を改善することが可能である。また、微生物は小さいので、炭素繊維44Aの隙間に入り込むことができ、奥側の微生物は小魚28Aなどの外敵から守られるため、繁殖が促進される。また、微生物を安定して確保し、小魚28Aや大型の魚類28Bなどを呼び込むため、漁礁としての役割を果たす。
【0039】
図3には、本発明の第2実施形態である水質改善用構造体40に用いられる管状体41が示されている。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0040】
この水質改善用構造体40は、図1に示す管状体20に代えて、図3に示す管状体41が用いられている。この管状体41は、内管12と、その外周に炭素繊維44Aを複数層のスパイラル構造とした繊維製外管44とを備えている。繊維製外管44は、各炭素繊維44Aの繊維間に隙間を有するように複数層のスパイラル構造として各繊維の接触部を接着剤などで固めている。本実施形態では、2層又は4層のスパイラル構造としている。また、繊維製外管44の外側には、放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の炭素繊維からなる線状繊維16が設けられている。
【0041】
このような水質改善用構造体40では、管状体41が水中で海藻のように揺動する(図1参照)。その際、繊維製外管44の隙間や複数の線状繊維16に微生物が繁殖すると共に、繊維製外管44の表面や複数の線状繊維16から藻類などの水生植物27が生育する。微生物や水生植物27などを目当てに小魚28Aや貝類29が繁殖し、さらに小魚28Aや貝類29を目当てに大きな魚類28Bが繁殖する。これによって水中のリンなどの栄養分が消費され、水質が改善される。また、小魚28A、魚類28Bが繁殖するため、漁礁として用いることができる。
【0042】
図4には、本発明の第3実施形態の水質改善用構造体50が示されている。なお、第1又は第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0043】
この水質改善用構造体50は、図1に示す浮き部材24に代えて、管状体20の下方部が重り部材22の閉止部材52Aによって密封されると共に、管状体20の上端部が閉止部材54によって密封され、管状体20の内管(図2参照)の内部に気体が封入されている。この気体としては、例えば、空気、窒素、ヘリウムなど比較的軽い気体が用いられている。閉止部材52A、54は、管状体20に加締めることによって取り付けられている。
【0044】
このような水質改善用構造体50では、管状体20の内部に気体が封入されているので、管状体20自身に浮力が発生し、管状体20が水中で海藻のように揺動する。これによって、水質を浄化することができる。なお、図4では、管状体20に代えて、図3に示す管状体41を用いても良い。
【0045】
図5には、本発明の第4実施形態の水質改善用構造体60が示されている。なお、第1〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0046】
この水質改善用構造体60は、図1に示す浮き部材24に代えて、管状体20の上端部に設けられた保持部材62にワイヤー64の一端が取り付けられ、ワイヤー64の他端に浮き部材66が取り付けられている。浮き部材66の内部には気体が封入されており、この気体として、例えば、空気、窒素、ヘリウムなど比較的軽い気体が用いられている。
【0047】
また、ワイヤー64の長さは、ワイヤー64に取り付けられた浮き部材66が水面32に浮かぶような長さに調整されている。
【0048】
このような水質改善用構造体60では、底部30の深さに応じてワイヤー64の長さを調整し、浮き部材66を水面32に浮かべるため、管状体20の水中での立設状態を維持して、管状体20を海藻のように揺動させることができる。このため、水質改善用構造体60は底部30の深さが異なる場合にも浮き部材66を水面32に浮かべて管状体20の水中での立設状態を維持することができ、水中の底部30付近の水質も改善できる。また、浮き部材66を水面32に浮かせることで、定期的な水質観測や管状体20の回収が容易となる。なお、図5では、管状体20に代えて、図3に示す管状体41を用いても良い。
【0049】
図6には、本発明の第5実施形態の水質改善用構造体70が示されている。なお、第1〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0050】
この水質改善用構造体70は、管状体20の上端部に保持部材72が設けられ、保持部材72の管状体20と反対側に管状体74の下端部が取り付けられている。管状体74は、内管と繊維製外管とからなり(図2参照)、複数の線状繊維は設けられていない。また、管状体74の上端部には、継手部材76が取り付けられ、継手部材76の側部にはパイプ78が連結されている。パイプ78は、継手部材76を介して管状体74と連通しており、管状体74は、保持部材72を介して管状体20と連通している。継手部材76に連結された管状体74の他端部は、水面32より上方に出ている。また、継手部材76の上部には、浮き部材24が設けられている。また、パイプ78には、図示しない気体供給装置を接続することで、酸素などの気体を供給可能となっている。
【0051】
このような水質改善用構造体70は、管状体20の下端部に取り付けられた重り部材22が底部30に設置され、管状体20の上方の管状体74の上端部に浮き部材24が設けられているので、管状体20及び管状体74が水中を海藻のように揺動する。また、パイプ78に酸素などの気体を供給することで、管状体74の内部や管状体20の内部に酸素などの気体が供給される。酸素が水中に漏れ出すことで、微生物や魚類などが生息しやすくなる。また、水中の底部30付近まで酸素などの気体を供給することができ、底部30の堆積物を微生物によって早く改質することが可能である。また、管状体20及び管状体74の内部に酸素などの気体を供給することによって、管状体20及び管状体74の内部にエア圧力を加えることができ、管状体20及び管状体74を運動させることができる。これによって、汚泥を攪拌し、浄化を促進できる。
【0052】
図7には、本発明の第6実施形態の水質改善用構造体80が示されている。なお、第1〜第5実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0053】
この水質改善用構造体80では、管状体20と重り部材22とを連結する連結部82に複数の開口82Aが設けられている。また、管状体20に複数の開口を設けても良い。また、パイプ78から栄養素などの気体又は液体が導入される。複数の開口を設けることで、パイプ78から供給される気体又は液体が開口82Aから水中に導出され、気体Gは水中を上昇し、又は液体が水中に混ざりこむ。これにより、微生物や魚、海藻などの繁殖をよりいっそう促進することができる。
【0054】
図8には、本発明の第7実施形態の水質改善用構造体90が示されている。なお、第1〜第6実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0055】
この水質改善用構造体90は、水面32に浮かぶ筏状の浮き部材92を備えている。浮き部材92の下方部には、複数の連結部材94が設けられ、連結部材94に管状体20の上端部が取り付けられている。また、管状体20の下方部には、重り部材96が取り付けられている。この重り部材96は、図1に示す重り部材22よりも軽量であり、水中の底部(図1参照)に接触しない長さに設定されている。また、管状体20の外周には、複数の線状繊維16が設けられている。
【0056】
このような水質改善用構造体90では、水面32に浮かぶ浮き部材92の下方部に複数の管状体20が連結されており、管状体20の下端部に設けられた重り部材96によって、管状体20が水中に垂下される。これによって、浮き部材92の下方部で複数の管状体20が水中を海藻のように揺動する。このため、管状体20や複数の線状繊維16などに微生物や藻などが繁殖し、水質が改善される。また、浮き部材92に複数の管状体20を垂下するので、特に水面32付近の水質を改善することができる。また、管状体20はねじれや引っ張りに強いため、水面32付近の流水や波などによる破損や切断を抑制でき、耐久性に優れた水質改善用構造体90が得られる。
【0057】
図9には、本発明の第8実施形態の水質改善用構造体100に用いられる管状体102が示されている。なお、第1〜第7実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0058】
この管状体102は、生分解性プラスチックからなる内管104と、この内管104の外周に炭素繊維106Aを格子状に編んだ繊維製外管106とを備えている。なお、図示を省略するが、繊維製外管14の外側には、放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の炭素繊維からなる線状繊維16(図2参照)が設けられている。
【0059】
内管104を構成する生分解性プラスチックとしては、例えば、トウモロコシや馬鈴薯などのでんぷんを乳酸菌により発酵させて得た乳酸を脱水重合したポリ乳酸などが用いられる。その他、ポリカプロラクトン、セルロース又はその誘導体などを用いることができる。
【0060】
水質改善用構造体100の管状体102以外の構成は、図1と同じであり、下端部に重り部材22が設けられ、管状体112の上端部に浮き部材24が設けられている(図1参照)。
【0061】
このような水質改善用構造体100では、内管104が生分解性プラスチックで形成されているので、汚泥や土中の微生物などが繁殖しやすく、水中のみでなく土中での浄化も可能である。
【0062】
図10には、本発明の第9実施形態の水質改善用構造体110に用いられる管状体112が示されている。なお、第1〜8実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0063】
この管状体112は、図10及び図11に示すように、樹脂製の内管12と、この内管12の外周に炭素繊維114Aを格子状に編んだ繊維製中間管114と、この繊維製中間管114の外周に生分解性プラスチックからなる被覆管116とを備えている。
【0064】
水質改善用構造体110の管状体112以外の構成は、図1と同じであり、下端部に重り部材22が設けられ、管状体112の上端部に浮き部材24が設けられている(図1参照)。
【0065】
このような水質改善用構造体110では、管状体112の下端部に設けられた重り部材22が水中の底部に設置され、上端部に設けられた浮き部材24が水面で浮くことによって、管状体112が水中で海藻のように揺動する。管状体112には、繊維製中間管114の外周に生分解性プラスチックからなる被覆管116が設けられているので、被覆管116に微生物などが繁殖しやすく、被覆管116や露出した繊維製中間管114に微生物や藻類などが繁殖する。これらの微生物や藻などを目当てに魚貝類などが集まり、水中の栄養分が消費されることによって、水質が改善される。また、被覆管116に汚泥や土中の微生物などが繁殖しやすく、水中のみでなく土中での浄化も可能である。また、被覆管116と繊維製中間管114が樹脂製の内管12で補強されているので、管状体112は水中でのねじれや引っ張りに強く、流水や波などによる破損や切断を抑制できる。このため、耐久性に優れた水質改善用構造体110が得られる。
【0066】
図12には、本発明の第10実施形態の水質改善用構造体120に用いられる管状体122が示されている。なお、第1〜9実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0067】
この水質改善用構造体120では、管状体122として、樹脂製の内管12の外周に炭素繊維124Aをスパイラル状に固めた繊維製中間管124が設けられ、この繊維製中間管124の外周に生分解性プラスチックからなる被覆管116が設けられている。これにより、被覆管116や露出した繊維製中間管124に微生物や藻などが繁殖するため、水質を改善することができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、繊維として炭素繊維が用いられているが、これに限定するものではない。微生物や水生植物などとの親和性が高い繊維であれば、他の材料も使用可能である。
【0069】
なお、上記実施形態では、水質改善用構造体は、微生物や藻などを繁殖させて水質を改善するものであるが、本発明の水質改善用構造体を昆布などの海藻や、貝類などの養殖場として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る水質改善用構造体の使用状態を示す拡大斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る水質改善用構造体の使用状態を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る水質改善用構造体を示す斜視図である。
【図9】本発明の第8実施形態に係る水質改善用構造体の管状体を示す拡大断面図である。
【図10】本発明の第9実施形態に係る水質改善用構造体の管状体を示す斜視図である。
【図11】本発明の第9実施形態に係る水質改善用構造体の管状体を示す拡大断面図である。
【図12】本発明の第10実施形態に係る水質改善用構造体の管状体を示す斜視図である。
【図13】従来の人口生育場の一例を示す側面図である。
【図14】従来の人口生育場の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 水質改善用構造体
12 内管
14 繊維製外管
14A 炭素繊維
16 線状繊維
20 管状体
22 重り部材
22A 筒状部
24 浮き部材
24A 筒状部
27 水生植物
28A 小魚
28B 魚類
29 貝類
30 底部
32 水面
40 水質改善用構造体
41 管状体
44 繊維製外管
44A 炭素繊維
50 水質改善用構造体
52A 閉止部材
54 閉止部材
60 水質改善用構造体
62 保持部材
64 ワイヤー
66 浮き部材
70 水質改善用構造体
72 保持部材
74 管状体
76 継手部材
78 パイプ
80 水質改善用構造体
82 連結部
82A 開口
90 水質改善用構造体
92 浮き部材
94 連結部材
96 重り部材
100 水質改善用構造体
102 管状体
104 内管
106 繊維製外管
106A 炭素繊維
110 水質改善用構造体
112 管状体
114 繊維製中間管
114A 炭素繊維
116 被覆管
120 水質改善用構造体
122 管状体
124 繊維製中間管
124A 炭素繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、
ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管と、を備える管状体と、
前記繊維製外管の外側に放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の線状繊維と、
前記管状体の下端部に設けられ、水中の底部に設置される重り部材と、
前記管状体の上端部に設けられた浮き部材と、
を有することを特徴とする水質改善用構造体。
【請求項2】
前記浮き部材が、前記管状体の上端部に連結されたワイヤーを介して水面に浮かぶように構成したことを特徴とする水質改善用構造体。
【請求項3】
前記浮き部材に代えて、前記内管の下端部と上端部とが閉じられ、前記内管の内部に気体が封入されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水質改善用構造体。
【請求項4】
水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、
水面に浮かぶ浮き部材と、
前記浮き部材の下方部に連結され、ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製外管と、を備える複数の管状体と、
前記繊維製外管の外側に放射状に編み込み又は毛羽立たせた複数の線状繊維と、
前記管状体の下端部に設けられた重り部材と、
を有することを特徴とする水質改善用構造体。
【請求項5】
水中に設置され、藻や微生物が生育することによって水質を改善する水質改善用構造体であって、
ゴム製、樹脂製又は繊維製の内管と、前記内管の外周上に形成され繊維を編み又は繊維を複数層のスパイラル構造とした繊維製中間管と、前記繊維製中間管の外周上に形成された生分解性プラスチックからなる被覆管と、を備える管状体と、
前記管状体の下端部に設けられ、水中の底面に設置される重り部材と、
前記管状体の上端部に設けられた浮き部材と、
を有することを特徴とする水質改善用構造体。
【請求項6】
前記内管の内部に流体が供給されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の水質改善用構造体。
【請求項7】
前記繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の水質改善用構造体。
【請求項8】
前記内管が生分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項、又は請求項7に記載の水質改善用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−330198(P2007−330198A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167544(P2006−167544)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(390034452)ブリヂストンフローテック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】