説明

水質浄化リサイクルシステム

【課題】沼や池等に沈積した汚泥や浮遊懸濁物を回収して水質浄化を行うとともに、回収した汚泥や懸濁物を炭化処理して再利用することのできる水質浄化リサイクルシステムを提供する。
【解決手段】沼、池等2中の汚泥または懸濁物等をポンプで汲み上げる際に、吸引ポンプ1中で凝集剤及びオゾンを添加する工程、前記凝集剤及びオゾン添加された汚泥または懸濁物等の回収物を凝集槽に投入して、汚泥または懸濁物等とオゾン処理された水とを分離する工程、前記分離工程にて分離されたオゾン処理された水を、沼、池等の底にある汚泥に向けて噴出させる工程、前記凝集槽にて分離された回収物を脱水機に投入して脱水ケーキとする工程、前記脱水ケーキを乾燥させた後炭化炉に投入して、回収物の炭化処理を行う工程、及び前記炭化処理により得られた炭化物を、前記沼、池等に戻す工程、を含んでなり、前記炭化処理の際に発生する熱を脱水ケーキの乾燥に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化リサイクルシステムに関し、より詳細には、沼や池等に沈積した汚泥や藻、アオコ等の浮遊懸濁物を回収して水質浄化を行うとともに、回収した汚泥や懸濁物を炭化処理して再利用することのできる水質浄化リサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沼や池、灌漑用貯水池、濠などの水質低下により悪臭が発生し、環境問題となっている。悪臭は、これら沼や池に沈積した汚泥や水中に繁殖したアオコ等の懸濁物が発生原因と考えられており、池、沼地等の悪臭を低減するため国や地方自治体では定期的に汚泥や懸濁物を除去して水質浄化を行っている。
【0003】
汚泥や懸濁物を回収除去するための水質浄化装置は一般的に大型の装置であり移動に適さないため、従来は池や沼から回収した汚泥や懸濁物を浄化処理装置が設置してある施設まで運搬し、そこで回収物の処理が行われていた。また、処理された回収物を廃棄するため、さらに廃棄物を廃棄場まで運搬する必要があった。そのため、運搬費用や廃棄費用を含め、処理費用全体が高額になる等の問題があった。
【0004】
上記のような問題を解消するため、池や濠に沈積した汚泥の回収を行い、その場で回収物を脱水、乾燥して炭化処理を行って炭化物とし、その炭化物を池や濠に戻してリサイクルすることが提案されている(例えば特開2001−300288号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−300288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水質浄化は、汚泥の除去だけでなく、浮遊する懸濁物や水中の微生物も除去する水処理も行う必要があるが、これら複数の処理を同時に行うためには装置が複雑化し大型化するため装置の移動が困難となり、その結果、池や沼の現場での水質浄化処理には適さない。また、現場で処理を行う為に処理装置を小型化すると、装置自体の処理能力が低下するため処理に要する時間がかかり、処理費用の増大につながる。
【0007】
本発明者らは、小型の高効率マイクロバルブ発生ノズルを、汚泥等を回収するための吸引ポンプ中に組み込むことにより水質浄化と汚泥の回収を同時に行い、汚泥や浮遊懸濁物の回収時に吸引ポンプ中へ凝集剤を添加することにより、これら回収物を効率的に凝集、脱水処理することにより、短時間で次の炭化処理に供することができ、その結果、処理装置を大型化することなく、効率的に水質浄化と汚泥や懸濁物等の炭化処理を行うことができることを見いだした。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、沼や池等に沈積した汚泥や浮遊懸濁物を回収して水質浄化を行うとともに、回収した汚泥や懸濁物を炭化処理して再利用することのできる水質浄化リサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による水質浄化リサイクルシステムは、沼、池等中の汚泥または懸濁物等をポンプにより汲み上げて凝集槽に投入し、前記凝集槽にて汚泥または懸濁物等の回収物を水分と分離し、回収物を脱水した後に炭化炉に投入して炭化処理を行い、得られた炭化物を沼、池等に戻して再利用する、沼、池等の水質浄化方法であって、
前記汚泥または懸濁物等をポンプで汲み上げる際に、吸引ポンプ中で凝集剤及びオゾンを汚泥または懸濁物等に添加する工程、
前記凝集剤及びオゾン添加された汚泥または懸濁物等の回収物を凝集槽に投入して、汚泥または懸濁物等の回収物とオゾン処理された水とを分離する工程、
前記分離工程にて分離されたオゾン処理された水を、ポンプにて前記沼、池等中に移送して、沼、池等の底にある汚泥に向けて前記オゾン処理水を噴出させる工程、
前記凝集槽にて分離された凝集物を乾燥させる工程、
前記凝集物を乾燥させた後、炭化炉に投入して炭化処理を行う工程、及び
前記炭化処理により得られた炭化物を、前記沼、池等に戻す工程、を含んでなり、
前記炭化処理の際に発生する熱を前記凝集物の乾燥に利用する、ことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記凝集剤及びオゾンの添加を、前記吸引ポンプの吸入口から行う。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、前記オゾン処理水の噴出を、マイクロバブル発生ノズルにより行う。
【0012】
また、本発明の好ましい態様としては、前記凝集物を脱水機に投入して脱水ケーキとする工程を更に含んでなり、前記脱水機にて分離されたオゾン処理水を、前記マイクロバブル発生ノズルにより沼、池等の水中に噴出する。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、前記凝集剤及びオゾンを添加した後、前記懸濁物等の回収物が撹拌ラインを通過して凝集槽に投入される。
【0014】
さらに、本発明の好ましい態様としては、前記の各工程が一連の工程として、沼、池等の現場で行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による沼、池等の水質浄化方法によれば、小型の高効率マイクロバルブ発生ノズルを汚泥等を回収するための吸引ポンプ中に組み込むことにより水質浄化と汚泥の回収を同時に行い、汚泥や浮遊懸濁物の回収時に吸引ポンプ中へ凝集剤を添加することにより、これら回収物を効率的に凝集、脱水処理することにより、短時間で次の炭化処理に供することができ、その結果、処理装置を大型化することなく、効率的に水質浄化と汚泥や懸濁物等の炭化処理を行うことができる。
【0016】
また、水質浄化処理の際に発生する汚泥等も炭化処理されて沼、池等に戻されるので、産業廃棄物が一切発生しない。さらに、この汚泥等の炭化処理により得られた炭化物を沼、池等に戻すことにより、この炭化物が水中の浮遊物や汚泥等を吸着し、さらには活性炭効果により水の消臭や脱臭ができるため、効果的な水質浄化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による水質浄化方法の一実施態様における、凝集剤及びオゾン添加工程の概略模式図。
【図2】本発明の一実施態様において使用する網篭送風式吸引ポンプの側面概略図。
【図3】本発明の一実施態様において使用するマイクロバブルノズルを分解した状態の斜視図。
【図4】本発明の一実施態様において使用するマイクロバブルノズルをその中心軸を含む面で切断した状態を示す断面図。
【図5】本発明の一実施態様において使用するマイクロバブルノズルの混合室Rの周辺を拡大した断面図。
【図6】本発明の一実施態様において使用する撹拌ラインの概略側面図。
【図7】本発明による水質浄化方法の一実施態様における、凝集槽での分離工程の概略を示した模式図。
【図8】本発明による水質浄化方法の一実施態様における、分離した水分の再利用工程の概略を示した模式図。
【図9】本発明による水質浄化方法の一実施態様における、乾燥工程の概略図。
【図10】本発明による水質浄化方法の一実施態様における、炭化処理工程の概略図。
【図11】本発明の一実施態様において使用する炭化炉の縦断面図である。
【図12】図11中の下方断面図である。
【図13】本発明の一実施態様による水質浄化リサイクルシステム概略フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による沼、池等の水質浄化方法は、沼、池等中の汚泥または懸濁物等をポンプにより汲み上げて凝集槽に投入し、前記凝集槽にて汚泥または懸濁物等の回収物を水分と分離し、回収物を脱水した後に炭化炉に投入して炭化処理を行い、得られた炭化物を沼、池等に戻して再利用するものであり、以下の工程、すなわち、(1)汚泥または懸濁物等をポンプで汲み上げる際に、吸引ポンプ中で凝集剤及びオゾンを汚泥または懸濁物等に添加する工程、(2)前記凝集剤及びオゾン添加された汚泥または懸濁物等の回収物を凝集槽に投入して、汚泥または懸濁物等の回収物とオゾン処理された水とを分離する工程、(3)前記分離工程にて分離されたオゾン処理された水を、ポンプにて前記沼、池等中に移送して、沼、池等の底にある汚泥に向けて前記オゾン処理水を噴出させる工程、(4)凝集槽にて分離された凝集物を乾燥させる工程、(5)前記凝集物を乾燥させた後、炭化炉に投入して炭化処理を行う工程、(6)前記炭化処理により得られた炭化物を、前記沼、池等に戻す工程を含むものである。各工程について、図面を参照しながら、以下説明する。
【0019】
<凝集剤及びオゾン添加工程>
図1は、汚泥または懸濁物等をポンプで汲み上げる際に、吸引ポンプ中で凝集剤及びオゾンを汚泥または懸濁物等に添加する工程の概略を示した模式図である。本発明による沼、池等の水質浄化方法においては、吸引ポンプ1によって、沼や池2の中にある汚泥や懸濁物を汲み上げる際に、ポンプ中で凝集剤及びオゾンを添加する。汲み上げられた汚泥や懸濁物は先ず凝集槽に投入されるが、凝集剤3及びオゾン4の添加は、吸引ポンプ1から凝集槽までの経路中のいずれかの場所で添加されてよく、また、凝集剤とオゾンとを一カ所の注入口から同時に添加してもよく、また別々の注入口からそれぞれを添加してもよい。
【0020】
吸引ポンプ1としては、サンドポンプ等の水中ポンプを使用することができる。この吸引ポンプ1はウインチ5で釣り下げられており、所望の深さ位置で吸引ポンプ1を固定することができるようになっている。沼や池2などでは、藻やアオコのような浮遊懸濁物は水面近くに存在するため、ウインチ5を操作して吸引ポンプ1を水面近くで固定することにより、懸濁物を効果的に吸引除去することができる。また、汚泥は、通常沼や池の底面に存在するため、ウインチ5を操作して沼や池2の底面まで吸引ポンプ1を下ろすことにより、汚泥を選択的に吸引除去することができる。
【0021】
吸引ポンプ1は、図2に示すように、網篭送風式吸引ポンプを好適に使用できる。網篭送風式吸引ポンプは、吸引ポンプ本体11と、その本体11が、本体を覆うように下方開口した網篭12で覆われ、網篭12の周囲を下方開口したカバー13で覆ったものである。網篭12の頂部14から空気等を送気できるようになっており、送気された空気の一部は網篭12のメッシュから網篭12とカバー13との隙間に抜け、一部の空気は下方(底方向)に抜けて外部に放出される。網篭12とカバー13との隙間に抜けた空気は、カバー13頂部の排気口15から排出される。この網篭送風式吸引ポンプを沼、池等の底に沈めた状態で駆動させると、網篭12の底部から排出される空気により、池等の底に堆積している固化した汚泥16に空気が入り込み汚泥をほぐし、汚泥の吸引が容易となる。また、通常、沼や池の底には栗石等17が敷き詰められており汚泥16はその栗石等17の上に堆積しているが、網篭12下部開口からの空気の吹き出しにより、栗石17を吹き飛ばしながら汚泥16を吸引することができる。さらに、網篭12側面のメッシュからカバー13側へ吹き出す空気により、沼、池等の底に沈殿している樹木の残骸や落ち葉などが、ポンプの吸引口18に詰まって吸引力が低下するのを防ぐことができる。網篭12の網目(メッシュ)は、10〜30mm程度であることが好ましい。
【0022】
吸引ポンプ1から吸引された汚泥や懸濁物は、配管6を通って凝集槽に送られる。本発明においては、図1に示すように、配管6中に凝集剤3及びオゾン4の注入口を設け、そこから凝集剤及びオゾンを汚泥や懸濁物等に添加する。注入口は配管中に一カ所であってもよく、また複数箇所であってもよい。また、注入口の代わりに吸引ポンプ1の吸引口に三方コック(図示せず)を設けて、そのから凝集剤及びオゾンを汚泥及び懸濁物中に添加してもよい。
【0023】
凝集剤は、凝集剤タンク7から配管を通じて、注入口3又は吸引ポンプ1に導入される。また、オゾンは、オゾン発生装置8によりから配管を通じて注入口4又は吸引ポンプ1に導入される。凝集剤及びオゾン発生装置は、従来公知のものを好適に利用することができる。
【0024】
汚泥や懸濁物にオゾンを添加すると、オゾン反応(O→O+O)により、殺菌、消臭及び有機物の分解が行われる。また、オゾン反応により発生する酸素が汚泥や懸濁物の水分中に溶解するため、高濃度酸素水が生成される。この高濃度酸素水は、後記するように、凝集槽等で分離された後、沼、池に戻されるが、この高濃度酸素水により沼、池の底にある嫌気性層を好気性層に置換することができる。
【0025】
オゾンは、マイクロバブルノズルから噴出して添加されることが好ましい。マイクロバブルノズルにより、単位時間あたり大量のオゾンを汚泥や懸濁物に添加することができる。また、マイクロバブル化したオゾンを添加することにより、脱臭効果が著しく向上するとともに、オゾンがバブルの状態で水中に長時間存在できるため、脱臭効果を維持することができる。また、オゾン反応後も酸素がマイクロバブルの状態で長期間水中に存在することができるため、
【0026】
このマイクロバブルノズルについて説明する。図3は、マイクロバブルノズルを分解した状態の斜視図であり、図4は、マイクロバブルノズルをその中心軸を含む面で切断した状態を示す断面図であり、図5は、マイクロバブルノズルの混合室Rの周辺を拡大した断面図である。
【0027】
図3に示すように、マイクロバブルノズル20は、混合室Rと、その混合室R内に第一の被混合物を導入するための第一導入口INと、第二の被混合物を導入するための第二導入口INとを備え、第一導入口に対向する位置に、第一及び第二の被混合物が混合室R外へ噴射するための噴出口が設けられた構造を有するものである。図4に示すように、円筒形状に形成された混合室Rの内面(後端面、前端面又は内周面)には、第一の導入口INと第二導入口INと噴射口OUTとが設けられている。導入口IN及びINから混合室R内へ導入された被混合物は、混合室内で混合されて混合物Cとなり、噴射口OUTから混合室R外へ噴射される。導入口INから導入される被混合物は水等の媒体であり、導入口INから導入される被混合物は、オゾンや酸素等の気体である。
【0028】
水等の媒体の導入口INは、混合室Rの後端面(後述する第一部材21の前面)に設けられており、オゾンや酸素等の気体の導入口INは、混合室Rの側周面(後述する第二部材22の内周面)に設けられている。被混合物導入口INは、混合室Rにおける後端面や前端面における被混合物導入口INや混合物噴射口OUTが設けられていない位置に設けてもよい。混合物噴射口OUTは、混合室Rの前端面(被混合物導入口INが設けられた後端面に対向する面であって、後述する第三部材23の背面)に設けられている。このため、第一導入口Cの導入方向と第二導入口Cの導入方向とが直交し、第一導入口Cの導入方向と混合物Cの噴射方向とが同一線上で平行となるようになっている。
【0029】
マイクロバブルノズル20は、図4に示すように、第一導入口INが前面に形成された第一部材21と、第二導入口INが内周面に形成されて混合室Rが内部に形成された第二部材22と、混合物噴射口OUTが背面に形成された第三部材23とに分解可能な構造としている。
【0030】
第一部材21、第二部材22又は第三部材23を切り替えるだけで、直径DIN1や直径DIN2や直径DOUTや直径Dを切り替えることが可能になり、マイクロバブルノズル20の用途などに応じてノズル20の仕様を容易に変えることも可能になる。さらに、マイクロバブルノズル20に痛みが生じたような場合などは、各部ごとに交換することもできるなど、マイクロバブルノズル20のメンテナンスを容易に行うことも可能になる。
【0031】
第一混合部材21の前面には、図3に示すように、円形をした凹部が2段に形成されている。図4に示すように、小さな方の凹部には第二部材22が嵌め込まれ、大きな方の凹部には第三部材23が嵌め込まれるようになっている。第三部材23の外周面には螺子溝が形成されており、螺子溝を第一部材21の大きな方の凹部の内周面に形成された螺子溝に螺合することができるようになっている。これにより、第一部材21と第二部材22と第三部材23とをその中心軸方向にしっかりと密着させ、混合室Rに導入された第一の被混合物Cや第二の被混合物Cなどが各部の隙間から漏れ出るのを防ぐことができるようになっている。
【0032】
導入口IN、IN及び混合物噴射口OUTの開口形状は、特に限定されず、非円形であってもよいが、本発明の実施態様においては、図3に示すように、いずれも円形としている。混合室Rの断面形状(円筒形状の混合室Rの中心軸に垂直な断面の形状)も特に限定されないが、本発明の実施態様においては、円形としている。混合物噴射口OUTの開口面積は、混合室Rの断面積よりも狭く、かつ導入口INの開口面積よりも広く設定されている。換言すると、混合物噴射口OUTの直径DOUT(図5)は、混合室Rの断面の直径D(図5)よりも小さく、かつ導入口INの直径DIN1よりも大きく設定されている。導入口INの開口面積(導入口INの直径DIN2(図5))は、被混合物であるC(水)、C(オゾン又は酸素)の所望の混合比などに応じて適宜決定される。
【0033】
直径DIN1は、通常、30mm以下とされる。直径DIN1は、20mm以下であると好ましく、15mm以下であるとより好ましく、10mm以下であるとさらに好ましい。直径DIN1は、通常1mm以上、好ましくは2mm以上とされる。導入口INの上流側は、ストレートに形成しても(直径DIN1よりも大きな内径を有するストレート状の管路としても)よいが、本実施態様においては、図5に示すように、テーパー状に形成しており、導入口INに近づくにつれて被混合物Cの流速が徐々に速くなるようにしている。
【0034】
直径DIN2は、通常、30mm以下とされる。直径DIN2は、20mm以下であると好ましく、10mm以下であるとより好ましく、5mm以下であるとさらに好ましい。直径DIN2は、通常0.5mm以上、好ましくは1mm以上とされる。
【0035】
混合物噴射口OUTの直径DOUT(図5)は、被混合物導入口INの直径DIN1よりも大きく、混合室Rの直径Dよりも小さければ特に限定されない。直径DOUTは、通常、直径DIN1よりも0.5mm以上大きく設定される。直径DOUTは、直径DIN1よりも1mm以上大きくすると好ましく、1.5mm以上大きくすると好ましい。一方、直径DOUTは、通常、混合室Rの直径Dよりも0.5mm以上、好ましくは1mm以上小さく設定される。
【0036】
混合室Rの直径D(図5)は、混合物噴射口OUTの直径DOUTよりも大きければ特に限定されない。特に、直径Dの上限に特に制限はないが、通常50mm以下、好ましくは、40mm以下、より好ましくは30mm以下とされる。
【0037】
円筒形状の混合物Rの中心軸に沿った方向の長さL(図5)も、直径DIN1,DIN2,DOUT,Dなどとの兼ね合いによって異なり、特に限定されない。しかし、長さLを短くしすぎると、混合室Rで渦流が発生しにくくなり、被混合物C,Cが混合室R内で十分に混合しにくくなるおそれがある。導入口IN、INの直径DIN1、DIN2や混合物噴射口OUTの直径DOUTや混合室のRの直径Dを上記の範囲程度とする場合には、長さLは、通常0.5mm以上とされる。混合室Rの長さLは1mm以上であると好ましく、2mm以上であるとより好ましい。混合室Rの長さLを長くすると、混合室Rで渦流が発生しやすくなり、被混合物C、Cが混合しやすくなるものの、マイクロバブルノズル20の寸法が大きくなるため、通常30mm以下とされる。混合室Rの長さLは、20mm以下であると好ましく、10mm以下であるとより好ましい。
【0038】
凝集剤及びオゾンが添加された汚泥又は懸濁物は、次の凝集槽に投入される前に十分に撹拌しておく必要がある。撹拌には、スパイラルミキサー、スタティックミキサー等の従来公知の撹拌機を使用できるが、本発明においては、図6に示すような撹拌ライン30を組み込むことにより、汚泥又は懸濁物の撹拌を行う。撹拌ラインは、90度垂直に曲がる管を組み合わせてつなげた構造を有する。吸引されて管内を輸送される汚泥等は、この90度に曲がる管内を通過する際に衝撃が加えられ、十分な撹拌が行われる。本発明においては、上記したようなマイクロバブルノズルと撹拌ラインとを組み合わせることにより、従来の水浄化処理のように濁水処理装置を設置する必要がなくなるため、水質処理に要するコストを削減できるだけでなく、処理設備自体も小型化できる。
【0039】
撹拌ラインは、その管径Dを、輸送配管径の1.5〜2.0倍とすることにより、汚泥等の流速が低減し、撹拌時間が1.75〜4倍となる。撹拌時間を長くすることにより、凝集剤と懸濁物、汚泥とがしっかりと混合されるとともに、オゾンによる脱臭をより完全に行うことができる。撹拌ラインは、直線配管部分の長さL,Lを20〜30cmとし、90度曲がった箇所を5〜15箇所程度設けるのが好ましい。また、撹拌ラインの全長は20〜25m程度であってよい。
【0040】
上記のような撹拌ラインは、例えば塩ビ管等をつなぎ合わせて簡単に作製することができる。塩ビ管等は、安価かつ入手も容易なだけでなく、防錆質であるためメンテナンス性も良好である。また、軽量であるため、現場に持ち込んで簡単に撹拌ラインを組み立てることができる。
【0041】
<凝集槽での分離工程>
図7は、凝集槽での分離工程の概略を示した模式図である。上記のようにして凝集剤及びオゾンが添加された汚泥又は懸濁物は凝集槽40での分離工程に付されて、水分が除去される。凝集槽40は、複数の凝集槽が並列して連結された多連多重式の凝集槽となっている。多連多重式凝集槽は、第一の凝集槽41と第二の凝集槽42とが荒取りフィルター44を介して連結しており、第二の凝集槽42と第三の凝集槽43とは微細フィルター45を介して連結された、桶式フィルター沈殿槽である。吸引された汚泥や懸濁物等の回収物は、先ず第一凝集槽41に投入され、ここで比較的比重が大きい沈降フロックが分離され、次いで第二及び第三の凝集槽42,43でそれよりも比重の小さい沈降フロック46が分離される。分離後の上澄み液である水分は、第三凝集槽43から配管47を通って、後記するように再利用される。
【0042】
多連多重式凝集槽は、フィルターを介して2室の沈殿槽を備えた凝集槽を2基連結してもよく、例えばその1基の凝集槽として深さ100cm、奥行き100cm、長さ150cm程度の桶型凝集槽を好適に使用できる。
【0043】
<分離した水分の再利用工程>
上記の分離工程により分離された水分は、配管を通じて、もとの沼、池等に戻される。この移送された水分は、上記したように多量の酸素またはオゾンを含む。沼、池に、この高濃度酸素(オゾン)水を投入することで、消臭、殺菌、有機物の分解等が促進されるため、水質浄化処理をより効率的に行うことができる。
【0044】
本発明においては、この分離された高濃度酸素(オゾン)水を、上記したマイクロバブルノズルにより、沼、池の底にある汚泥に向けて噴出させることが好ましい。汚泥に向けて高濃度酸素(オゾン)水を噴出させることで、沼、池の底にある汚泥の嫌気性層を好気性層に置換することができる。微生物作用を活性化させて有機物の分解を促進させることができる。また、マイクロバブルノズルを用いることにより、気泡の水中での滞留時間が長くなるため、高濃度酸素(オゾン)水による消臭等の効果がより向上する。池、沼等2に沈められたマイクロバブルノズルから噴射された高濃度酸素(オゾン)水は、図8に示すように、一旦、バブル滞留装置9を介して放出されてもよい。バブル滞留装置9を設置することによりマイクロバブルを緩やかに放出することができる。例えば、バブル滞留装置9の放出口の口径を排水管の口径の1.5倍以上とすることにより、マイクロバブルをより緩やかに放出することができる。
【0045】
<凝集物の乾燥工程>
次いで、凝集槽下部から取り出された沈降フロック(凝集物)46は乾燥工程に付され、そこで水分の除去が行われる。水分は、凝集物の水分含有量が30重量%以下になるまで行われる。図9は、本発明における乾燥工程の概略図を示したものである。水分を多量に含む凝集物46は乾燥機50内に運ばれ、ここで水分含有量が30重量%以下になるまで乾燥が行われる。乾燥機50は、後記する炭化炉から発生する熱を利用することができる。炭化炉からの排熱を再利用することにより、水質浄化システム全体のエネルギーコストを削減できるとともに、二酸化炭素排出量を削減できる。また、乾燥機から排出される排ガスもクリーンなため、周囲環境を悪化させることもない。
【0046】
本発明においては、凝集物の乾燥を行う前に、沈降フロックを脱水機(図示せず)にて脱水し、脱水ケーキとすることにより、凝集物の含水量をある程度下げておいてもよい。脱水機を設置することによりその後の乾燥工程の時間を短縮することができる。脱水機は、従来公知の真空脱水機等を好適に使用できるが、これに限定されるものではない。
【0047】
脱水機を設置した場合、凝集物の脱水工程により分離された水は、上記したように高濃度の酸素(オゾン)を含む。したがって、上記の分離工程の欄にて説明したように、分離した高濃度酸素(オゾン)水を、沼、池に戻すことが好ましく、また、マイクロバブルノズルにより、沼、池等の底にある汚泥に向けてオゾン処理された高濃度酸素(オゾン)水を噴出させることが好ましい。
【0048】
<炭化処理工程>
図10は、炭化処理工程の概略図を示したものである。炭化炉60は二基の第1排出ガス燃焼炉61と第2排出ガス燃焼炉62が配置されている。第1、第2の排出ガス燃焼炉61,62では、炭化炉60からの排出されるガスを高温焼成し、この第1排出ガス燃焼炉61からの高温排ガスを再び炭化炉60へ戻し、第2排出ガス燃焼炉62からの高温排ガスを乾燥機50へ供給するための供給配管63が設けられている。このような炭化処理装置を用いることにより、装置汚染や配管詰まり等がなく、清潔かつ悪臭公害もなくすことができる。
【0049】
炭化炉60への原料である乾燥凝集物の供給は、ショベルローダ等で破砕機に原料を投入し破砕物は振動篩65を内蔵した供給機64で必要により粒子の大きさを揃えてバケットコンベア66等により炭化炉60上部の二重ダンパ67付ホッパ68へ輸送される。二重ダンパ67は原料チップを炭化炉60へ投入の際に炭化炉60内部を外部から空気遮断して還元雰囲気を維持するために設けられている。炭化後の炭化物は下方から排出されて、スクリューコンベア69等で炭化物ストッカ70へ移送される。
【0050】
炭化炉60には排出ガス燃焼炉を2基備え、第1排出ガス燃焼炉61は炭化炉60加熱用とし、第2排出ガス燃焼炉62は凝集物の乾燥用として、これら2基の排出ガス燃焼炉でもって排出ガスの高温焼却を十分にし、かつ、凝集物の乾燥及び炭化を十分に達成できる。
【0051】
次に、各種供給配管を含む乾燥凝集物から炭化製品に到るまでの配管フローにつき、図10を参照しながら説明する。炭化炉60へは排出ガスを吸引ブロワ71と第1排出ガス燃焼炉61を介して循環させる炭化炉循環配管72がある。また、この第1排出ガス燃焼炉61への炭化炉循環配管72から分岐して第2排出ガス燃焼炉62への乾燥配管73を設けている。第2排出ガス燃焼炉62からは乾燥機50への乾燥機配管63を設けている。乾燥機50からは排気配管74となり、バッグフィルタ等の排煙浄化装置75を経て排気ガスは大気中へ放出される。
【0052】
排出ガス燃焼炉61,62は、排ガスを高温燃焼させるため、従来の炭化炉加熱のみのものに比較して、バーナ数を増やして、加熱容量の大きい燃焼装置とすることが好ましい。
【0053】
炭化炉は、図11又は図12に示すように、炭化炉60本体の内壁が下方に広がる円錐壁76となっている。円錐壁76は、図11に示すように、下方に広がるテーパー状であり、例えば、円錐壁76の高さが2.5mの場合、その直径が上部で1.1m、下部で1.2m程度の拡大で十分なブリッジ防止効果が得られている。このことにより、炭化途中で原料のブリッジ形成による原料詰まりがなくなり、連続供給、連続排出が円滑に行える。
【0054】
また、炭化炉60内部下方の炭化物取出装置77は回転円盤型であり、これと同軸に炭化物取出装置77上方へ撹拌円盤又は撹拌翼からなる撹拌機78を設ける構造にする。炭化炉60本体の内壁が下方に広がる円錐壁76としているので、撹拌機78がなくてもブリッジ防止効果が得られているが、撹拌機78を設けるとなおよい。撹拌機78の構造も簡単な円盤や撹拌羽根あるいは単なる放射状のバーでよいので、設備費も抑制できる。
【0055】
炭化炉60内部の原料を還元状態で焼成炭化するための加熱ガス供給口79は、円錐壁76の円周上の複数箇所に設ける。図12は図11の下方断面を示したものであるが、この場合は3方向に炭化炉循環配管72から取巻き分岐管73によって3個所の加熱ガス供給口79に加熱ガスを分配している。
【0056】
<炭化物の再利用工程>
本発明においては、上記のようにして得られた炭化物を、沼、池等に戻す工程を含む。炭化物は、前記した凝集物中に有機物のみが燃焼することから一般的に多孔質形態をとる。このような多孔質形態の炭化物を沼、池等に沈めておくと、水中の微少浮遊物や汚泥を吸着でき、水質浄化剤として機能する。炭化物は種々の形態としてよく特に制限されるものではなく、複数の炭化物片を網に詰めたものを沼、池等に沈めておいてよい。
【0057】
<水質浄化リサイクルシステム>
図13は、本発明による水質浄化リサイクルシステムの概略フロー図を示したものである。先ず、上記したように、沼、池等中の汚泥または懸濁物等をポンプにより汲み上げて凝集槽に投入する。この際、吸引ポンプ中で凝集剤及びオゾンを汚泥または懸濁物等に添加する。この工程により、効率的に短時間で吸引回収物の脱臭や有機物の分解が行われる。次いで、凝集剤及びオゾン添加された汚泥または懸濁物等の回収物を凝集槽に投入して、汚泥または懸濁物等の回収物とオゾン処理された水とを分離する。この分離工程において分離されたオゾン処理された高濃度酸素(オゾン)水を、ポンプにてもとの沼、池等中に移送して、沼、池等の底にある汚泥に向けて前記オゾン処理水を噴出させる。この再利用された高濃度酸素(オゾン)水は、沼、池の底にある汚泥を柔らかくほぐし吸引し易くするとともに、沼、池の水質浄化にも役立つ。一方、凝集槽にて沈殿、分離された凝集物は、乾燥工程、所望により脱水工程を経て、炭化炉に投入されて炭化処理が行われる。この炭化処理により得られた炭化物は、もとの沼、池等に戻される。そのため、一連の水質浄化リサイクルにおいて産業廃棄物を生じさせることがなく、さらには、再利用した炭化物も、沼、池等の水質浄化に供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 吸引ポンプ
2 沼、池等
3 凝集剤投入口
4 オゾン投入口
5 ウインチ
6 配管
7 凝集剤タンク
8 オゾン発生装置
9 バブル滞留装置
11 吸引ポンプ本体
12 網篭
13 カバー
18 ポンプ吸引口
20 マイクロバブルノズル
30 撹拌ライン
40 凝集槽
44,45 フィルター
46 沈降フロック(凝集物)
50 乾燥機
60 炭化炉
61 第1排出ガス燃焼炉
62 第2排出ガス燃焼炉
64 供給機
76 円錐壁
77 炭化物取出装置
78 撹拌機
79 加熱ガス供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沼、池等中の汚泥または懸濁物等をポンプにより汲み上げて凝集槽に投入し、前記凝集槽にて汚泥または懸濁物等の回収物を水分と分離し、回収物を脱水した後に炭化炉に投入して炭化処理を行い、得られた炭化物を沼、池等に戻して再利用する、沼、池等の水質浄化方法であって、
前記汚泥または懸濁物等をポンプで汲み上げる際に、吸引ポンプ中で凝集剤及びオゾンを汚泥または懸濁物等に添加する工程、
前記凝集剤及びオゾン添加された汚泥または懸濁物等の回収物を凝集槽に投入して、汚泥または懸濁物等の回収物とオゾン処理された水とを分離する工程、
前記分離工程にて分離されたオゾン処理された水を、ポンプにて前記沼、池等中に移送して、沼、池等の底にある汚泥に向けて前記オゾン処理水を噴出させる工程、
前記凝集槽にて分離された凝集物を乾燥させる工程、
前記凝集物を乾燥させた後、炭化炉に投入して炭化処理を行う工程、及び
前記炭化処理により得られた炭化物を、前記沼、池等に戻す工程、を含んでなり、
前記炭化処理の際に発生する熱を前記凝集物の乾燥に利用する、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記凝集剤及びオゾンの添加を、前記吸引ポンプの吸入口から行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オゾン処理水の噴出を、マイクロバブル発生ノズルにより行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記凝集物を脱水機に投入して脱水ケーキとする工程を更に含んでなり、前記脱水機にて分離されたオゾン処理水を、前記マイクロバブル発生ノズルにより沼、池等の水中に噴出する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記凝集剤及びオゾンを添加した後、前記懸濁物等の回収物が撹拌ラインを通過して凝集槽に投入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の各工程が一連の工程として、沼、池等の現場で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−78861(P2011−78861A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230754(P2009−230754)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(593111060)株式会社金星 (15)
【Fターム(参考)】