説明

水質測定装置

【課題】信頼性の高い水質データを長期間、連続的に得ることができ、かつ、メンテナンスの回数を著しく減らし、さらに、簡易な構成となる水質測定装置を提供すること。
【解決手段】第一空気管8を介して水中に設けられた第一空気室3内の空気が排気されると、水が開口部分から入り込み水面が上昇し、第一水中ポンプ14および第一送水管11の取入口11aが水に浸かる。そして、取入口11aから水が吸い込まれて水質測定器7へ送られる。また、空気量調整部6により圧縮空気が第一空気室3内に供給されると、内部の水が開口部分から自然に排出され水面が下降する。このように、通常は各取入口等を空気中に保持するので、各取入口等に藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができ、さらに、信頼性の高いデータを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質測定装置に関し、特に、水中の複数の位置における水質の違いや水深の違いによる水質の違いを測定する水質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海や湖等の水質を測定する際に水質測定装置が用いられている。水質測定装置は、専用のセンサ等を用いて水中における所定の位置の水質を測定するものである。そして、定期的に水質測定を行い、測定データから各種解析等を行うことで、海や湖等の環境状況を把握することができる。
【0003】
水質測定装置により水質を測定する場合には、通常、多数の場所で、場合によってはそれぞれの場所の水深ごとに水質測定を行う。このように複数の位置での水質を測定する方法として、たとえば、水質測定用センサをその都度自動的に水中の所定位置まで沈め込んで水質を測定することや、所定の水深に予め複数の水質測定センサを設置して水質を測定することが考えられる。しかし、これでは、構成が複雑となり保守点検作業も煩雑であり、また、測定データに誤りも生じやすい。
【0004】
そこで、水中の複数の位置に予め取水用の機構を設置しておき、常に同じ場所から取水して水質を測定する装置が利用されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−55238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の水質測定装置は、水中の所定位置に複数の取入口を設け、各取入口から水を取り入れて、その水を所定の水質測定器に送って水質を測定している。
【0006】
しかしながら、このような構成では、取入口および送水管内(以降、適宜取入口等と称することとする)が常に水に浸かることとなるため、取入口等に藻等が付着しやすく、取入口等が閉塞したり、取り入れる水に不純物が混入したりしてしまう。そのため、取水量を確保し、また、正確なデータを得るためには取入口等を頻繁に清掃しなければならず、メンテナンスの回数が多くなってしまう。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、メンテナンスの回数を減らし、かつ、信頼性の高い水質データを得ることができ、さらに、簡易な構成となる水質測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の水質測定装置は、水質を測定するための水質測定器と、水中の所定の位置に設けられた少なくとも一つの空気室と、前記各空気室内に設けられた取入口と、前記取入口と前記水質測定器とを連結する送水管と、前記取入口が水に浸かるまで前記空気室内に水を取り入れる取水手段と、前記取水手段により前記空気室内に取り入れられた水を前記取入口から前記送水管を介して前記水質測定器に送り出す送水手段と、前記水質測定器により水質が測定された後に、前記空気室内の水を排出する排水手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1にかかる発明は、水質測定時にのみ取入口等を水に浸け、通常は取入口等を空気中に保持するので、取入口等に藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができる。
また、取入口等に藻等が付着しにくいので、吸い込んだ水に不純物が混ざりにくく正確な水質を測定することができ、信頼性の高いデータを得ることができる。
【0010】
また、取入口は測定位置に固定されるので、常に同じ位置の水質を測定することができ、一層正確な水質を測定することができる。
【0011】
また、空気室の数が複数であれば、取入口等が複数でありながら各取入口等を清潔に保つことができ、メンテナンスの回数を顕著に減らすことができる。つまり、この水質測定装置は、空気室の数が多いほどその効果も大きくなる。
【0012】
なお、空気室は、その内部が気体であれば良く、たとえば、不活性ガスでも良い。
【0013】
また、水質測定器の数が一つで足りるので、簡易かつ安価な装置となる。
【0014】
また、請求項2に記載の水質測定装置は、請求項1に記載の水質測定装置において、前記空気室は、底部が開口した中空形状であって、開口部分から水が流出入可能となっており、前記取水手段は、前記空気室内の空気量を減らして開口部分から内部に水を取り入れるものであり、前記排水手段は、前記空気室内の空気量を増やして開口部分から外部に水を排出するものであることを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項2にかかる発明は、空気室内の空気量を調整するのみで水を内部に取り入れたり排出したりできるので、簡易な構成を実現できる。
なお、空気室内の空気量を増やすとは、空気室内に種々の気体を供給することを含み、さらに、供給する気体は不活性ガスでも良い。
【0016】
また、請求項3に記載の水質測定装置は、請求項1または2に記載の水質測定装置において、前記送水手段は、前記各空気室内に水中ポンプを備え、当該水中ポンプにより前記取入口から水を吸い込み、吸い込んだ水を前記水質測定器まで押し上げるようにして送水するものであることを特徴とする。
【0017】
すなわち請求項3にかかる発明は、水中ポンプが水に浸かる時間が短かくなるので、水中ポンプに藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0018】
また、請求項4に記載の水質測定装置は、請求項1または2に記載の水質測定装置において、前記送水手段は、前記送水管中途に吸上ポンプを備え、当該吸上ポンプにより前記取入口から水を吸い込み、吸い込んだ水を前記水質測定器まで吸い上げるようにして送水するものであることを特徴とする。
【0019】
すなわち請求項4にかかる発明は、吸上ポンプを水面上または水面フロート上に設けることができるので、吸上ポンプに藻等が付着せず、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0020】
なお、送水管に切替弁を設け、切替弁を切り替えることにより取入口を水質測定器につなぐものであってもよい。このようにすれば、吸上ポンプの数が一つで良いので一層簡易な構成となり、また、安価な構成となる。
【0021】
また、請求項5に記載の水質測定装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の水質測定装置において、前記取入口は、下方に向かって開口しているものであることを特徴とする。
【0022】
すなわち請求項5にかかる発明は、測定終了後、空気室内の空気量を増やして水を排出した後には取入口等に残った水が自然に落下してそれらが残留しないので、藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができ、長期間正確な測定を行うことができる。
【0023】
また、請求項6に記載の水質測定装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の水質測定装置において、前記水質測定器は、測定対象の水を貯めるための貯水槽と、前記貯水槽内に設けられ、貯められた水の水質を測定するための水質測定用センサと、を備え、前記貯水槽は、前記送水手段から送られる水を取り入れるための取水口と、貯めた水を外部に排出するための排水口とを有し、取水口は排水口よりも上部に設けられ、取水口から取り入れられる水の量が排水口から排出される水の量を上回るようにして水が貯められ、かつ、一定の貯水量以上となった場合には開口した上部から水をオーバーフローさせるものであることを特徴とする。
【0024】
すなわち請求項6にかかる発明は、送水手段を駆動させるのみで水と空気とが混ざらないように貯水槽に水を流入させて水質を測定でき、送水手段の駆動を停止させるのみで自然に貯水槽から水を排出することができる。よって、水質測定器の構成が簡易なものとなるとともにより正確な測定が可能となる。特に、溶存酸素濃度を測定する際に正確なデータを得ることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の水質測定装置は、請求項6に記載の水質測定装置において、前記貯水層は、底面が取水口から排水口にかけて傾斜するように形成されていることを特徴とする。
【0026】
すなわち請求項7にかかる発明は、簡易な構成で貯水槽内の水を残留させずに排出することができる。
【0027】
また、貯水槽内に水が残留しないので、次の測定においても残留水の混入を排除でき正確な水質を測定することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明(請求項1)によれば、長期連続水質測定におけるメンテナンスの回数を減らすことができる。本発明(請求項2)によれば、簡易な構成を実現できる。本発明(請求項3)によれば、メンテナンスの回数を減らすことができる。本発明(請求項4)によれば、メンテナンスの回数を減らすことができる。また、複数の水質測定を一つの吸上ポンプで行うことが可能となるため、より簡易な構成とすることができる。本発明(請求項5)によれば、メンテナンスの回数を減らすことができ、長期間正確な測定を行うことができる。本発明(請求項6)によれば、水質測定器の構成が簡易なものとなるとともにより正確な測定が可能となる。本発明(請求項7)によれば、簡易な構成で貯水槽内の水を残留させずに排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の水質測定装置の構成を模式的に示した図である。
【0030】
水質測定装置1は、海底や湖等に設置される装置であって、基台部2、第一空気室3、第二空気室4、第三空気室5、空気量調整部6および水質測定器7を備えている。
【0031】
基台部2は、海底や湖底に設置されており、水質測定装置1の台部分である。
【0032】
第一空気室3〜第三空気室5は、基台部2に取り付けられており、水中において第一空気室3が上方部分に位置し、第二空気室4が中央部分に位置し、第三空気室5が下方部分に位置するようになっている。第一空気室3〜第三空気室5は、後述するように測定する水を取り入れるためのものであり、それぞれ水中における水質測定位置に固定されている。
【0033】
空気量調整部6は、空気を送り出したり排気したりするためのものであり、第一空気管8、第二空気管9および第三空気管10の各一端が接続されている。また、第一空気管8の他端は第一空気室3に接続され、第二空気管9の他端は第二空気室4に接続され、第三空気管10の他端は第三空気室5に接続されている。これにより、空気量調整部6は各空気管を介して空気を送り出したり排気したりして、各空気室内の空気量を調整するようになっている。なお、空気量調整部6は、エアコンプレッサ等の圧縮空気源を内蔵しており、空気を送り出すときは圧縮した空気を送り出すようになっている。なお、空気量調整部6が送り出すものは気体であれば良く、空気に限らない。例えば、圧縮した不活性ガスが送り出されるものであっても良い。
【0034】
水質測定器7は、水質を測定するためのものであり、第一送水管11、第二送水管12および第三送水管13の各一端がそれぞれ接続されている。また、第一送水管11の他端は第一空気室3に接続され、第二送水管12の他端は第二空気室4に接続され、第三送水管13の他端は第三空気室5に接続されている。
【0035】
以下、水質測定装置1の各部の構成を詳しく説明する。
図2は、第一空気室3〜第三空気室5の構成を模式的に示した図である。
【0036】
なお、第一空気室3〜第三空気室5は同様の構成であるので、図2においては、これらのうち一つの構成のみ示した。
【0037】
第一空気室3〜第三空気室5は、底部が開口した中空形状であって開口部分から水が流出入可能となっている。第一空気管8〜第三空気管10は、その一端がそれぞれ第一空気室3〜第三空気室5の上部を貫通してわずかに内部まで延伸しており、それぞれの先端は空気口8a〜空気口10aとなっている。
【0038】
また、第一送水管11〜第三送水管13は、その一端がそれぞれ第一空気室3〜第三空気室5の上部を貫通してその先端が第一空気室3〜第三空気室5の底部付近に位置している。
【0039】
第一送水管11は、先端が取入口11aとなっており下方に向かって開口している。また、第一送水管11は、先端部分に第一水中ポンプ14が取り付けられている。第一水中ポンプ14には下方に向かって開口するポンプ口14aが形成されており、第一送水管11の取入口11aは、第一水中ポンプ14内においてポンプ口14aにつながるようになっている。
【0040】
同様に、第二送水管12および第三送水管13の先端は、それぞれ取入口12aおよび取入口13aとなっていて下方に向かって開口しており、第二送水管12および第三送水管13の先端部分にはそれぞれ第二水中ポンプ15および第三水中ポンプ16が取り付けられている。また、第二水中ポンプ15および第三水中ポンプ16には、それぞれポンプ口15aおよびポンプ口16aが形成されている。そして、取入口12aおよび取入口13aは、それぞれポンプ口15aおよびポンプ口16aにつながるようになっている。
【0041】
第一水中ポンプ14〜第三水中ポンプ16は、水を押し出すようにして送り出すためのポンプであり、これらを駆動することで、後述するように各空気室から水質測定器7に送水できる。
【0042】
通常は、第一空気室3〜第三空気室5は内部が空気で満たされており、下部にわずかだけ水が入り込んだ状態となっている。そして、その水面は、それぞれ、第一水中ポンプ14〜第三水中ポンプ16よりも下方に位置するようになっている。つまり、通常の状態では、第一空気室3〜第三空気室5内においては、第一水中ポンプ14〜第三水中ポンプ16および取入口11a〜取入口13aは水に浸からないようになっている。
【0043】
第一空気室3〜第三空気室5における一連の動作を、第一空気室3を例に挙げて説明する。
空気量調整部6により第一空気管8を介して第一空気室3内の空気が空気口8aから排気されると、第一空気室3内の空気量が少なくなるので、水が開口部分から自然に入り込み、水面が上昇する。そして、第一水中ポンプ14および取入口11aが水に浸かる。この状態で第一水中ポンプ14を駆動させると、ポンプ口14aおよび取入口11aから水が吸い込まれてその水が押し出されるようにして第一送水管11を介して水質測定器7へ送られる。なお、図3には、この状態の第一空気室3を示した。
【0044】
次いで、空気量調整部6により第一空気管8を介して空気口8aから圧縮空気が第一空気室3内に供給されると、第一空気室3内の空気量が増えるので、内部の水が開口部分から自然に排出され、水面が下降する。そして、第一空気室3内がほぼ空気で満たされて取入口11aが空気中に保持される通常の状態になる(図2参照)。このとき、取入口11aは下方に向かって開口しているので、取入口11aおよび第一送水管11内にある水が自然に落下して残留しない。
【0045】
このように、第一空気室3〜第三空気室5は、空気量調整部6によって内部に空気が送り込まれたり排気されたりすることで、内部に水が取り入れられたりその水が排出されたりする。そして、内部に水が取り入れられた状態で、第一送水管11〜第三送水管13を介して水が水質測定器7に送られる。なお、空気量調整部6には、適宜バルブが設けられており、このバルブにより空気の流れが遮断されたり流通されたりする。
【0046】
図4は、水質測定器7の構成を模式的に示した図である。
【0047】
水質測定器7は、貯水槽71を備えている。
【0048】
貯水槽71は、中空形状の透明部材であって外部からの視認性を確保し、内部に水を貯めることができるようになっていて、側部に第一取水口71a〜第三取水口71cが形成されており、下部に排水口71dが形成されている。また、底面は傾斜面71eとなっており、上面付近にはオーバーフロー管72が接続されている。なお、図示は省略するが貯水槽71はボックス等で遮光されているものとする。
【0049】
第一取水口71a〜第三取水口71cは、貯水槽71の側部において並列するように設けられている。そして、第一取水口71aには第一送水管11が接続されており、第二取水口71bには第二送水管12が接続されており、第三取水口71cには第三送水管13が接続されている。
【0050】
なお、第一取水口71a〜第三取水口71cおよび排水口71dは、第一取水口71a〜第三取水口71cよりも排水口71dが下方に位置しながら出来る限り下方に設けられていることが望ましい。このようにすれば、水質測定時に第一取水口71a〜第三取水口71cから取り入れられる水に空気が混ざりにくく、正確な水質測定を行うことができる。
【0051】
また、第一取水口71a〜第三取水口71cは、その径が排水口71dの径に比べて大きく形成されていることが望ましい。このようにすれば、後述するように貯水槽71内に水を取り入れる際にその流入量が大きくなりやすい。
【0052】
排水口71dは、貯水槽71の最下部に形成されていて、排水管74がつながれている。
【0053】
排水管74は、下方に向かって延伸していて、その先端は海や湖の水面に接しないようになっている。
【0054】
傾斜面71eは、貯水槽71の底面であって、第一取水口71a〜第三取水口71cから排水口71dにかけて傾斜している
【0055】
オーバーフロー管72は、貯水槽71内の水が一定量以上になったときにその水をオーバーフローさせるためのものであり、その先端は海や湖の水面に接しないようになっている。
【0056】
また、貯水槽71内には水質測定用センサ75が設けられている。
【0057】
水質測定用センサ75は、貯水槽71内に貯められた水の水質を測定するためのセンサであって、貯水槽71の上部に設けられている。
【0058】
貯水槽71内に水が貯められる際は、取り入れられる水の量が排水口71dから排出される水の量を上回るようにして水が貯められていく。たとえば、第一空気室3から第一送水管11および第一取水口71aを介して貯水槽71内に水が導かれると、排水口71dから排水されながらも貯水槽71内に水が貯まっていく。そして、貯められた水が一定量以上になると、オーバーフロー管72から水がオーバーフローされる。このとき、排水管74から排出される水およびオーバーフロー管72からオーバーフローされる水は、海や湖に放出される。
【0059】
このようにして貯水層71内に水が貯められ、その水の水質を水質測定用センサ75が測定する。そして、第一空気室3からの送水が停止されると、傾斜面71cにより貯水槽71内の水が排水口71dまで自然に導かれ、排水管74から排出される。
【0060】
このように、第一空気室3〜第三空気室5から第一送水管11〜第三送水管13を介して貯水層71内に水が導かれると貯水槽71内に自然に一定量の水が貯められ、また、送水が停止されると、自然に水が排出される。なお、第一送水管11〜第三送水管13には、適宜バルブが設けられており、このバルブにより水の流れが遮断されたり流通されたりする。
【0061】
図5は、水質測定装置1の構成例を示した図である。
【0062】
水質測定装置1は、空気量調整部6、第一水中ポンプ14、第二水中ポンプ15、第三水中ポンプ16、水質測定用センサ75および制御部17を備えている。
【0063】
空気量調整部6、第一水中ポンプ14、第二水中ポンプ15、第三水中ポンプ16および水質測定用センサ75は、それぞれ制御部17に接続されている。
【0064】
制御部17は、たとえば、コンピュータ等を含んでいて、各部の動作を制御し、測定結果を蓄積し、あるいは携帯電話回線その他の無線・有線手段により送信するものである。
【0065】
以下、制御部17による制御の流れを説明する。
【0066】
まず、水質測定装置1は、通常は、第一空気室3〜第三空気室5内が空気で満たされた状態で維持されている(図2参照)。
【0067】
水質測定時には、まず、空気調整部6が動作されて、第一空気室3内の空気が排気される。空気が排気されると、第一空気室3内に水が入り込み、取入口11aが水に浸かる。そして、取入口11aが水に浸かった状態で第一水中ポンプ14が駆動され、第一送水管11および第一取水口17aを介して貯水槽71内に水が貯められていく。このとき、貯水槽71内には水が流され続け、一定量以上の水はオーバーフロー管72から排出される。
【0068】
そして、水質測定用センサ75により水質が測定された後、第一水中ポンプ14の駆動が停止されて第一空気室3からの送水が停止され、貯水槽71内の水が全て排出される。
【0069】
次に、空気量調整部6が動作されて、第一空気室3内に圧縮空気が供給されて第一空気室3内から水が排出され、第一空気室3内は取入口11aおよび第一送水管11内が空気中に保持される通常の状態となる。このようにして第一空気室3からの水の取り込み動作が終了する。
【0070】
その後は、以上と同様にして、第二水中ポンプ15が動作されて第二空気室4内から水が取り込まれてその水質が測定され、次いで、第三水中ポンプ16が動作されて第三空気室5内から水が取り込まれてその水質が測定される。なお、水質を測定する空気室の順序は上述したものでなくても良い。
【0071】
このようにして水質測定用センサ75により測定された水質データは、たとえば、制御部17から図示しない通信手段によって外部装置に送信され、当該装置において管理される。
【0072】
以上のように、本実施形態では、水質測定時にのみ各取入口等を水に浸け、通常は各取入口等を空気中に保持するので、各取入口等に藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0073】
また、各取入口等に藻等が付着しにくいので、吸い込んだ水に不純物が混ざりにくく正確な水質を測定することができ、信頼性の高いデータを得ることができる。
【0074】
また、各取入口は測定位置に固定されるので、常に同じ位置の水質を測定することができ、一層正確な水質を測定することができる。
【0075】
また、水質測定器7の数が一つなので、簡易かつ安価な装置となる。
【0076】
また、空気量調整部6により各空気室内の空気量を調整するのみで各空気室内部に水を取り入れたり排気したりできるので、簡易な構成を実現できる。
【0077】
また、各水中ポンプが水に浸かる時間が短かくなるので、各水中ポンプに藻等が付着しにくく、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0078】
また、各取入口等が下方に向かって開口しているので、各取入口から水を吸い込んだ後には各取入口等に残った水や藻等が自然に落下してそれらが残留せず、メンテナンスの回数を減らすことができ、長期間正確な測定を行うことができる。
【0079】
また、各水中ポンプを駆動させるのみで水と空気とが混ざらないように貯水槽71に水を流入させて水質を測定でき、各水中ポンプの駆動を停止させるのみで自然に貯水槽71から水を排出することができるので、水質測定器7の構成が簡易なものとなるとともにより正確な測定が可能となる。特に、溶存酸素濃度を測定する際に正確なデータを得ることができる。
【0080】
また、貯水槽71の底面が傾斜面71eであるので、簡易な構成で貯水槽71内の水を残留させずに排出することができる。さらに、貯水槽71内に水が残留しないので、正確な水質を測定することができる。
【0081】
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0082】
たとえば、上記実施形態においては、各空気室内に水中ポンプを設ける構成としたが、各送水管11〜13の上部に吸上ポンプを設け、この吸上ポンプにより水を吸い上げて水質測定器7に水を送るものであっても良い。
【0083】
なお、この状態の第一空気室3〜第三空気室5の構成を図6に示した。
【0084】
この場合、取入口11a〜取入口13aは、通常は水に浸からず水質測定器7に送水する際にのみ水に浸かることとなる。そして、取入口11a〜取入口13aが水に浸かった状態で吸上ポンプを駆動することで水質測定器7に水が送られる。
【0085】
このようにすれば、吸上ポンプを水面上または水面フロート上に設けることができるので、吸上ポンプに藻等が付着せず、メンテナンスの回数を減らすことができる。
【0086】
また、各送水管を上方で連結し、当該連結部分に切替弁および吸上ポンプを設け、切替弁を切り替えることにより取入口11a〜取入口13aを水質測定器7につないで水を吸い込むものであってもよい。このようにすれば、吸上ポンプの数が一つで良いので一層簡易な構成となり、また、安価な構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、海や湖に限らず、ダム等の貯水池および廃水処理施設等においても利用することができ、広く液体全般の測定において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の水質測定装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】通常の状態の空気室の構成を模式的に示した図である。
【図3】水を取り入れた状態の空気室の構成を模式的に示した図である。
【図4】水質測定器の構成を模式的に示した図である。
【図5】水質測定装置の構成例を示した図である。
【図6】他の実施形態にかかる空気室の構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0089】
1 水質測定装置
3 第一空気室
4 第二空気室
5 第三空気室
6 空気量調整部
7 水質測定器
11 第一送水管
12 第二送水管
13 第三送水管
14 第一水中ポンプ
15 第二水中ポンプ
16 第三水中ポンプ
71 貯水槽
71a〜71c 取水口
71d 排水口
71e 傾斜面
72 オーバーフロー管
75 水質測定用センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質を測定するための水質測定器と、
水中の所定の位置に設けられた少なくとも一つの空気室と、
前記各空気室内に設けられた取入口と、
前記取入口と前記水質測定器とを連結する送水管と、
前記取入口が水に浸かるまで前記空気室内に水を取り入れる取水手段と、
前記取水手段により前記空気室内に取り入れられた水を前記取入口から前記送水管を介して前記水質測定器に送り出す送水手段と、
前記水質測定器により水質が測定された後に、前記空気室内の水を排出する排水手段と、
を備えることを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
前記空気室は、底部が開口した中空形状であって、開口部分から水が流出入可能となっており、
前記取水手段は、前記空気室内の空気量を減らして開口部分から内部に水を取り入れるものであり、
前記排水手段は、前記空気室内の空気量を増やして開口部分から外部に水を排出するものであることを特徴とする請求項1に記載の水質測定装置。
【請求項3】
前記送水手段は、前記各空気室内に水中ポンプを備え、当該水中ポンプにより前記取入口から水を吸い込み、吸い込んだ水を前記水質測定器まで押し上げるようにして送水するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の水質測定装置。
【請求項4】
前記送水手段は、前記送水管中途に吸上ポンプを備え、当該吸上ポンプにより前記取入口から水を吸い込み、吸い込んだ水を前記水質測定器まで吸い上げるようにして送水するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の水質測定装置。
【請求項5】
前記取入口は、下方に向かって開口しているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の水質測定装置。
【請求項6】
前記水質測定器は、
測定対象の水を貯めるための貯水槽と、
前記貯水槽内に設けられ、貯められた水の水質を測定するための水質測定用センサと、を備え、
前記貯水槽は、
前記送水手段から送られる水を取り入れるための取水口と、貯めた水を外部に排出するための排水口とを有し、取水口は排水口よりも上部に設けられ、
取水口から取り入れられる水の量が排水口から排出される水の量を上回るようにして水が貯められ、かつ、一定の貯水量以上となった場合には開口した上部から水をオーバーフローさせるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の水質測定装置。
【請求項7】
前記貯水層は、底面が取水口から排水口にかけて傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の水質測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−225364(P2007−225364A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44885(P2006−44885)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】