説明

水車またはポンプ水車の調速機

【課題】
系統周波数がある周波数以下の状態において、速度制御に応答しない系統周波数領域と応答する系統周波数領域を設定することが可能な水車またはポンプ水車の調速機を提供する。
【解決手段】
速度調整装置1からの目標値と回転速度との偏差に基づき速度演算装置2においてガイドベーンのアクチュエータの制御量を演算して出力する水車またはポンプ水車の調速機であって、切替周波数検出回路6で回転速度を監視し、系統周波数がある周波数以下の場合に、系統周波数の変動(上昇)に対し調速機の速度制御が応答しないように速度演算装置2に入力する回転速度を補正する回転速度補正回路5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車またはポンプ水車の調速機に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需給状況が逼迫した電力系統においては、需要が変化すると供給の遅れが発生し系統周波数が変動する。
【0003】
一方、水車またはポンプ水車の調速機は、系統に連結された後は系統の周波数に即座に応答する,すなわち即応性重視のゲインにて速度制御を行う。このため、系統周波数の変動量が大きくなると、水車またはポンプ水車のガイドベーン開度,すなわち出力が大きく変動し、特に系統周波数の変動量や変動周期によっては共振現象を発生させて系統周波数変動の安定性が損なわれる。
【0004】
電力需給状況が逼迫した電力系統において系統周波数変動の安定性を向上させるためには、系統周波数変動のある領域においては系統周波数の変動に応答しないように調速機の速度制御とすることが有効である。例えば、インド国においては、RGMO(Restricted Governor Mode of Operation)が制定され、系統周波数が規定の周波数以下の状態では周波数が上昇しても、水車またはポンプ水車の調速機は速度制御に応答せず、水車またはポンプ水車の出力を低下させないことと義務つけられている。
【0005】
一方、従来の水車またはポンプ水車の調速機において、系統周波数の変動に応答しない制御モードとしては、負荷制限モードによる運転のみである。負荷制限モードによる運転では系統周波数の変動に一切応答しない制御状態となる。負荷制限モードは、例えば、特許文献1に記載のように、PID演算で得られた出力制御指令を負荷制限設定器(77)で設定された上限値に制限することにより行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−22598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力需給状況が逼迫した電力系統にて運転される水車あるいはポンプ水車においては、従来の調速機の速度垂下率特性に従った速度制御運転を行うと、周波数変動と速度制御に共振現象が発生しやすく、安定した系統への電力供給が困難となる場合がある。
【0008】
従来の水車またはポンプ水車の調速機においては、負荷制限モードも含めて、速度制御状態において系統周波数変動に応答しない周波数領域と応答する周波数領域を任意に設定できるように構成されていない。
【0009】
また、従来の水車またはポンプ水車の調速機においては、電力需給状況が逼迫した電力系統において、系統周波数が規定の周波数以下の状態で周波数が上昇しても、速度制御に応答しないようにして、水車またはポンプ水車の出力が低下しないようにすることができない。
【0010】
本発明の目的は、系統周波数がある周波数以下の状態において、速度制御に応答しない系統周波数領域と応答する系統周波数領域を設定することが可能な水車またはポンプ水車の調速機を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、速度制御に応答しない系統周波数領域と応答する系統周波数領域を設定するにあたって、両者の切替えをスムーズに行い、応答/非応答の切替えにおける移行過渡時の安定性を改善することが可能な水車またはポンプ水車の調速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、系統周波数がある周波数以下の場合に、系統周波数の変動(上昇)に対し調速機の速度制御が応答しないように速度演算装置に入力する回転速度を補正する回転速度補正回路を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、回転速度を監視する切替周波数検出回路を有し、切替周波数検出回路の出力に基づき、回転速度が所定の周波数以下のときに、回転速度補正回路の出力を速度演算装置に入力するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、回転速度が所定の周波数よりも大きくなり、切替周波数検出回路の出力に基づき、回転速度補正回路で補正された回転速度から実際の回転速度に基づく速度制御に切替える際に、速度演算装置に入力する回転速度を、切替え時の補正された回転速度から実際の回転速度に緩やかに変化させるバンプレス回路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、系統周波数がある周波数以下の状態において、速度制御に応答しない系統周波数領域と応答する系統周波数領域を設定することが可能となり、系統周波数安定に大きく寄与することができる。
【0016】
また、本発明によれば、速度制御に応答しない系統周波数領域と応答する系統周波数領域を設定するにあたって、両者の切替えをスムーズに行い、応答/非応答の切替えにおける移行過渡時の安定性を改善することが可能となり、系統周波数安定に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す調速機制御ブロック図である。
【図2】本発明の系統周波数変動とガイドベーン動作を示す図である。
【図3】調速機の速度垂下率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。
【0020】
符号1〜4,19,20で示す構成要素は従来の調速機に備えられている構成要素であり、その他の符号で示す構成要素が本実施例で新たに加えられた調速機の構成要素である。即ち、本実施例では、調速機の速度制御において、調速機本来の速度制御回路を変更しないようにして、即ち、速度垂下率特性に従った速度制御運転を前提として、速度演算装置に入力する回転速度を補正する回転速度補正回路を設けている。
【0021】
従来の調速機の速度制御部は、速度調整装置1で設定された調速機の制御目標値と検出された水車発電機の回転速度との偏差を受けて速度演算装置2においてガイドベーンの制御目標値をPID(比例積分微分)演算し、速度演算装置2から出力される制御目標値と実際のガイドベーン開度の偏差量によりアクチュエータを制御しガイドベーンを動作させる。ガイドベーン開度は負荷調整装置3の目標値を加味した上で速度垂下率演算器4を介し速度演算装置2に帰還される。ここで、速度垂下率演算器4は、図3に示す速度垂下率特性が組み込まれ、回転速度変動に対するガイドベーンの動作比率を決定するよう作用するものである。また、負荷制限モードでは、負荷制限設定器19と低値選択器20により、アクチュエータに出力される制御指令が負荷制限設定器19で設定された上限値に制限される。また、水車発電機の回転速度は、系統並列後は系統周波数と同一となる。負荷制限モード以外は、水車発電機の回転速度の変動に対し常時応答する回路構成となっている。このため、従来の調速機においては、系統周波数が予め設定された周波数以下の場合において系統周波数変動(特に系統周波数上昇の変動)に応答しない制御状態を実現することができない。
【0022】
本実施例では、調速機の速度制御において、系統周波数の安定性を向上させるために、系統周波数変動(系統周波数上昇の変動)に応答しない領域と応答する領域を設けるにあたって、調速機本来の速度制御回路を変更しないようにし、かつ連続的でスムーズな回転速度補正制御を実現するようにしたものである。
【0023】
即ち、本実施例では、図1に示すように、従来の調速機に対し、前値保持回路8,高値選択回路9及び出力信号選択器10から構成される回転速度補正回路5と、切替周波数検出回路6及びバンプレス回路7を付加し、系統周波数が予め設定された周波数以下となった場合に調速機の速度制御が系統周波数変動(系統周波数上昇の変動)に応答しないようにしたものである。
【0024】
回転速度補正回路5においては、高値選択回路9における高値選択器9-1の一方の入力に速度調整装置1の目標値と回転速度(周波数)との偏差が入力され(プラス偏差:速度調整装置1の目標値>回転速度。プラス偏差であるのは、本実施例では電力需給状況が逼迫し、系統周波数が商用電源周波数よりも小さい状態での動作を想定しているからである。)、高値選択器9-1の他方の入力に予め設定された周波数(系統の商用電源周波数を50Hzとした場合、例えば49Hz)と速度調整装置1の目標値との偏差(速度調整装置1の目標値−予め設定された周波数)が入力され、高い方の信号が後段に出力される。これにより、高値選択器9-1から出力される値がプラスとなり、また、予め設定された周波数よりも実際の回転速度が低い場合のみに後述の一次遅れ要素13(積分器)を積分させるようにしている。なお、予め設定された周波数と回転速度とを比較して低値を選択し、その後に速度調整装置1の目標値との偏差を後段に出力するようにしても良い。
【0025】
高値選択回路9の出力は、高値選択器11,信号選択器12及び一次遅れ要素13から構成された前値保持回路8に入力され、高値選択回路9の出力値が一次遅れ要素13の出力値より高い場合は(系統周波数が低下方向に相当)、信号選択器12を介し一次遅れ要素13に入力されることにより、一次遅れ要素13は高値選択回路9の出力と同一の出力値となる。一方、高値選択回路9の出力値が一次遅れ要素13の出力値より小さい場合は(系統周波数が上昇方向に相当)、高値選択器11により一次遅れ要素13の出力値が選択されるので、一次遅れ要素13の出力は前値を保持する。ここで、信号選択器12は、系統周波数が予め設定された周波数よりも高くなったかを監視する後述する切替周波数検出回路6の状態により作動する。切替周波数検出回路6が、系統周波数が予め設定した周波数以下であることを検出している場合(切替周波数検出回路6がOFF)は、信号選択器12は高値選択器11の出力を出力し、他方、系統周波数が予め設定した周波数より大きい場合(切替周波数検出回路6がON)は、リセットされ、Z1の0.0を出力する。
【0026】
かくして、回転速度補正回路5(前値保持回路8)は、系統周波数が一旦予め設定された周波数以下となった場合に系統周波数が予め設定された周波数を超えるまでの間で一番低い系統周波数と速度調整装置1の目標値との偏差を出力する。
【0027】
切替周波数検出回路6は、比較器6-2において回転速度を常時監視し系統周波数が予め設定された周波数より大きい場合にON出力する。ここで、刻々変化する回転速度に対し切替周波数検出回路6のチャタリングを防止することを目的に、切替周波数を検出したことにより作動するタイマー要素6-2が加味され、ON出力がある時間継続した後に切換周波数の検出を後段に出力する。なお、速度調整装置1の目標値と回転速度(系統周波数)との偏差を常時監視し、速度調整装置1の目標値と回転速度との偏差が予め設定された偏差(速度調整装置1の目標値と予め設定された周波数との偏差)より小さい場合にON出力するようにしても良い。
【0028】
出力信号選択器10は、信号選択器14及び信号選択器15から構成されている。
【0029】
信号選択器14は、切替周波数検出回路6の出力により作動し、系統周波数が予め設定された周波数より高くなった場合に速度調整装置1と回転速度の偏差を出力(信号選択器14へのZ1を出力)し、系統周波数が予め設定された周波数以下の場合は前値保持回路8の出力を選択して、信号選択器15へ出力する。
【0030】
信号選択器15は、系統並列した状態(系統と発電機を繋ぐ遮断器がONで系統と発電機が並列した状態)により作動し、系統並列した状態である場合は回転速度補正回路5の出力(信号選択器14からの出力)を選択し、系統並列していない場合は速度調整装置1の目標値と回転速度の偏差の出力(信号選択器15へのX)を選択し出力する。
【0031】
次に本実施例の回転速度補正回路5の動作について説明する。
【0032】
信号選択器15に系統並列の信号が入力されると、回転速度補正回路5からの信号が選択され、速度演算装置2には回転速度補正回路5からの回転速度信号(速度調整装置1の目標値と回転速度の偏差に関する信号)が入力される。
【0033】
系統周波数が予め設定された周波数より高い場合は、切替周波数検出回路6の出力はOFFとなるので、信号選択器14は速度調整装置1と回転速度の偏差を、信号選択器15を介して速度演算装置2に出力し、従来の調速機における速度垂下率特性に従った速度制御運転と同じ速度制御を行う。
【0034】
系統周波数が予め設定された周波数以下の場合は、切替周波数検出回路6の出力がONとなるので、信号選択器14は回転速度補正装置5で補正された速度信号を選択、即ち、前値保持回路8の出力を選択して、信号選択器15を介して速度演算装置2に出力し、補正された回転速度信号に基づき速度制御を行う。
【0035】
回転速度補正装置5では、上述したように、高値選択回路9及び前値保持回路8により、系統周波数が一旦予め設定された周波数以下となった場合に系統周波数が予め設定された周波数を超えるまでの間で一番低い系統周波数と速度調整装置1の目標値との偏差を出力する。即ち、回転速度補正回路5は、系統周波数が一旦予め設定された周波数以下となった場合に系統周波数が予め設定された周波数を超えるまで、系統周波数が上昇しても、恰も系統周波数が上昇していないように、言い換えれば、実質的に回転速度が維持されているように、回転速度の偏差を補正している。
【0036】
上述したように、本実施例においては、従来の調速機の速度制御部の前段に、回転速度補正回路5及び切替周波数検出回路6を設けることにより、水車及びポンプ水車が系統並列後において、系統周波数が予め設定された周波数以下に低下した状態において系統周波数の上昇に調速機の速度制御部を応答させないようにすることができる。従って、電力需給状況が逼迫した系統においても安定した電力供給が可能となる。
【0037】
また、電力需給状況が逼迫した系統において、系統周波数が予め設定された周波数、例えば49Hz以下に低下した状態で、系統周波数が上昇すると、従来の調速機では、ガイドベーン開度が閉じる方向に動作して出力を低下させてしまい、安定した電力供給ができなくなるが、本実施例では出力を維持することができ、安定した電力供給が可能となる。
【0038】
また、本実施例では、系統周波数上昇の変動に応答しない領域と応答する領域を設けるにあたって、連続的でスムーズな回転速度補正制御が実現できるようにしている。即ち、本実施例では、系統周波数が予め設定された周波数より大きくなり、回転速度補正回路5(前値保持回路8)の出力を使用する状態から不使用状態に切り替わる過渡時に、一次遅れ要素16と信号選択器17から構成されるバンプレス回路7を介し信号を伝達することにより、急激な信号変化を防止し、穏やかな状態移行を可能としている。
【0039】
バンプレス回路7の一次遅れ要素(積分器)16は、回転速度補正回路5の出力を使用する状態から不使用状態に切り替わると瞬時に出力が変化することを防止するためのもので、一次遅れ要素16の時定数により、回転速度補正回路5の出力を使用する状態から不使用状態の出力に到達する時間を任意に設定することができる。バンプレス回路7からの出力は加算器18において速度調整装置1の目標値と回転速度の偏差に加算されて、信号選択器14及び信号選択器15を介して速度演算装置2に入力される。信号選択器17は、切替周波数検出回路6がON(Z2が1)となった場合、Z1の信号が選択され出力され、切替周波数検出回路6がOFF(Z2が0)の場合はXが選択され出力され、一次遅れ要素16のK2のゲインを設定する。Z1とXのKは、例えば、それぞれ0.02と100を目安に設定される。
【0040】
図2は、本実施例による系統周波数とガイドベーン開度動作状況を示すものである。
【0041】
ここで、従来の調速機では、図3に示す速度垂下率特性に従いガイドベーン開度の目標値が決定される。すなわち、系統並列後、系統周波数が変化すると速度垂下率の比率によりガイドベーン開度の動作量が決定される。尚、系統周波数変動によるガイドベーン開度の変化の過渡時においては速度制御部のダンピング特性により動作状況が相違することは当然でのことである。
【0042】
図2において、系統周波数がA点からB点に低下した場合、予め設定された周波数よりも高い周波数であることからガイドベーン開度は速度垂下率特性に従い開動作する(切替周波数検出回路6がONで、信号選択器14はZ1を選択し出力し、目標値と回転速度の偏差に基づいて速度垂下率特性に従いガイドベーン開度制御が行われている。)。
【0043】
系統周波数がB点からC点においては予め設定された周波数以下に低くなっても周波数が低下方向に変動していることから速度垂下率特性に従いガイドベーン開度は開動作する(切替周波数検出回路6がOFFで、信号選択器14は前値保持回路8からの信号を選択し出力している。また、周波数が低下方向に変動しているので、前値保持回路8の出力値は高値選択回路9と同一の出力値となり、目標値と回転速度の偏差に基づいて速度垂下率特性に従いガイドベーン開度制御が行われている。)。
【0044】
系統周波数がC点からD点においては予め設定された周波数以下に低くなっており、周波数が上昇していることから、従来の調速機であれば速度垂下率特性により点線のようにガイドベーン開度が閉動作する。本実施例では、回転速度補正回路5及び切替周波数検出回路6の作用により、系統周波数はC点の状態を継続しているように補正されガイドベーン開度は一定開度を保持する(切替周波数検出回路6がOFFで、信号選択器14は前値保持回路8からの信号を選択し出力している。また、周波数が上昇方向に変動しているので、前値保持回路8の出力値は前値を保持した値となり、即ち、目標値と回転速度の偏差があたかも変化していないように補正されて、速度演算装置2に入力され、ガイドベーン開度制御(一定開度保持)が行われている。)。
【0045】
系統周波数がD点を超え予め設定された周波数より高くなった場合は、回転速度補正回路5が不使用状態となり速度垂下率特性に従いガイドベーンが閉動作する(切替周波数検出回路6がONで、信号選択器14はZ1を選択し出力し、目標値と回転速度の偏差に基づいて速度垂下率特性に従いガイドベーン開度制御が行われている。)。
【0046】
ここで、C点からD点においては回転速度補正回路5によりC点の系統周波数が継続しているように補正しているため、本実施例のバンプレス回路7がない場合、D点以降において、回転速度補正回路5を不使用とした直後の制御偏差が過大であり、一点鎖線の如く急激にガイドベーンが閉動作することになる。本実施例では、上述のバンプレス回路7を用いることにより実線の如く穏やかなガイドベーンの閉動作を実現することができる。
【0047】
本実施例によれば、電力需給状況が逼迫した電力系統に連結された水車またはポンプ水車の速度制御時に、水車またはポンプ水車の出力が系統周波数の変動(特に、水車あるいはポンプ水車の出力が減少する方向の系統の周波数変動)に過敏に応答することがなく、安定した系統への電力供給を実現することができる。
【0048】
また、本発明は、制御系における外乱などにより、通常の変動範囲を逸脱するような制御指令が入力され不安定現象を発生してしまう装置においても、制御の安定性を維持することのできる手段として有効な発明である。即ち、回転速度の検出信号にノイズなどが侵入し誤信号となる場合があるが、この誤信号による制御となると出力が大きく変動し不安定現象を引き起こすが、本発明が具備されていれば不安定現象を小さく抑えることができる。但し、予め設定する周波数は想定される誤信号に応じて設定される。
【符号の説明】
【0049】
1… 速度調整装置、 2… 速度演算装置、 3… 負荷調整装置、 4… 速度垂下率演算器、 5… 回転速度補正回路、 6… 切替周波数検出回路、 7… バンプレス回路、 8… 前値保持回路、 9… 高値選択回路、 10… 出力信号選択回路、 11… 高値選択器、 12… 信号選択器、 13… 一次遅れ要素、 14… 信号選択器、 15… 信号選択器、 16… 一次遅れ要素、 17… 信号選択器、 18… 加算器、 19… 負荷制限設定器、 20… 低値選択器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度調整装置からの目標値と回転速度との偏差に基づき速度演算装置においてガイドベーンのアクチュエータの制御量を演算して出力する水車またはポンプ水車の調速機であって、
系統周波数がある周波数以下の場合に、系統周波数の変動に対し調速機の速度制御が応答しないように前記速度演算装置に入力する回転速度を補正する回転速度補正回路を設けたことを特徴とする水車またはポンプ水車の調速機。
【請求項2】
請求項1に記載の水車またはポンプ水車の調速機において、
前記回転速度補正回路は、系統周波数がある周波数以下の場合に、系統周波数の上昇に対し、実質的に水車またはポンプ水車の回転速度が維持されるように、前記速度演算装置に入力する回転速度を補正することを特徴とする水車またはポンプ水車の調速機。
【請求項3】
請求項2に記載の水車またはポンプ水車の調速機において、
前記回転速度補正回路は、系統周波数がある周波数以下の場合に、系統周波数が上昇しても、系統周波数があたかも上昇していないように、前記速度演算装置に入力する回転速度を補正することを特徴とする水車またはポンプ水車の調速機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の水車またはポンプ水車の調速機において、
前記回転速度を監視する切替周波数検出回路を有し、前記切替周波数検出回路の出力に基づき、回転速度が所定の周波数以下のときに、前記回転速度補正回路の出力を前記速度演算装置に入力するようにしたことを特徴とする水車またはポンプ水車の調速機。
【請求項5】
請求項4に記載の水車またはポンプ水車の調速機において、
回転速度が所定の周波数よりも大きくなり、前記切替周波数検出回路の出力に基づき、前記回転速度補正回路で補正された回転速度から実際の回転速度に基づく速度制御に切替える際に、前記速度演算装置に入力する回転速度を、切替え時の補正された回転速度から実際の回転速度に緩やかに変化させるバンプレス回路を設けたことを特徴とする水車またはポンプ水車の調速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74739(P2013−74739A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212524(P2011−212524)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(511238158)日立三菱水力株式会社 (14)
【Fターム(参考)】