説明

汚染土壌の洗浄方法及び洗浄装置

【課題】 土砂表面に強固に付着している汚染物質を剥離・分離し、洗浄処理土の品質の向上した汚染土壌の洗浄方法・洗浄装置を提供。
【解決手段】 有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し洗浄処理土と汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離、洗浄処理土を再利用、濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法:汚染土壌に水を添加、湿式ふるい分級処理して礫・粗砂を分離してスラリー状の土砂とする工程、スラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌、汚染物質を土砂表面から剥離する工程、スラリー状の土砂をハイドロサイクロン処理して砂・細砂と汚染物質を含む細粒子とに分級処理する工程、分級処理した砂・細砂を重力式分離処理し金属汚染物質を分離する工程、砂・細砂を脱水処理する工程を経て洗浄処理土を得る:分離した細粒子を凝集沈殿し沈殿汚泥と水とに分離する工程、沈殿汚泥を脱水処理、濃縮残渣と水とに分離する工程を経て濃縮残渣を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌の洗浄方法及びこの洗浄方法に用いられる洗浄装置に関するものであり、特に、鉱物油、多環芳香族炭化水素(PAHs)、重金属、シアン等の有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、洗浄処理土を再利用に供し、濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法及び洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、汚染土壌の浄化・修復には、汚染物質の種類によって様々な浄化技術が適用される。浄化コストは、対象とする汚染物質に最も適した浄化技術を選択した場合に最小となる。しかしながら、実際のサイトでは、複数の化学物質(例えば、油と重金属)によって汚染されている場合も多い。このため、低コストで、かつ適用範囲の広い浄化技術が望まれている。
【0003】
そのなかでも、土壌洗浄法は、揮発性有機化合物(VOCs)、PCB、農薬、重金属、シアン等の多くの物質に幅広く適用可能であることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この土壌洗浄技術は、(1)洗浄効率が高い、(2)処理能力が大きい、(3)鉱物油、PAHs、重金属、シアン等の多くの物質に幅広く適用が可能、(4)汚染洗浄処理後の土壌の再利用率が約70%と非常に高いため、低コスト処理が可能といった優れた能力を有している。
【非特許文献1】田中仁志、毛利光男、熊本進誠、羽田義治、今沢正樹、高効率土壌洗浄プラント(MRP)による汚染土壌の浄化、土壌環境センター技術ニュース、2003年9月、No.7、p.36−38
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静電気的な相互作用等によって、土砂表面に強固に付着している汚染物質については、非特許文献1に係る土壌洗浄方法によっても、土砂表面から剥離・除去することができず、洗浄処理土に最後まで付着していることが多かった。このため、洗浄処理土の品質が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、土砂表面に強固に付着している汚染物質を剥離・分離し、洗浄処理土の品質の向上した汚染土壌の洗浄方法及びこの洗浄方法に用いられる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法であって、前記汚染土壌に水を添加し、湿式ふるい分級処理して礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする工程(A−1)と、このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する工程(A−2)と、このスラリー状の土砂を、ハイドロサイクロン処理して砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理する工程(A−3)と、分級処理した前記砂・細砂を重力式分離処理して、さらに金属汚染物質を分離する工程(A−6)と、この砂・細砂を脱水処理する工程(A−7)とを経て、前記洗浄処理土を得ると共に、前記工程(A−3)で分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する工程(B−1)と、この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣と水とに分離する工程(B−2)とを経て、前記濃縮残渣を得ることを特徴とする汚染土壌の洗浄方法である。
【0007】
請求項2にかかる発明は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法であって、前記汚染土壌に水を添加し、湿式ふるい分級処理して礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする工程(A−1)と、このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する工程(A−2)と、このスラリー状の土砂を、ハイドロサイクロン処理して砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理する工程(A−3)と、分級処理した前記砂・細砂に捕集剤を添加して混合・攪拌する工程(A−4)と、混合・攪拌した前記砂・細砂を、泡浮遊式分離処理して汚染物質を分離する工程(A−5)と、分離した前記砂・細砂を重力式分離処理して、さらに金属汚染物質を分離する工程(A−6)と、この砂・細砂を脱水処理とする工程(A−7)とを経て、前記洗浄処理土を得ると共に、前記工程(A−3)で分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する工程(B−1)と、この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣と水とに分離する工程(B−2)とを経て、前記濃縮残渣を得ることを特徴とする汚染土壌の洗浄方法である。
【0008】
請求項3にかかる発明は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄装置であって、水を添加した前記汚染土壌から礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする湿式ふるい装置(10)と、このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する混合攪拌装置(20)と、このスラリー状の土砂を、砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理するハイドロサイクロン装置(30)と、分級処理した前記砂・細砂からさらに金属汚染物質を分離する重力式分離装置(60)と、この砂・細砂を脱水処理し、前記洗浄処理土を得る脱水サイクロン装置(70)とを備え、かつ、分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する凝集沈殿装置(100)と、この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣を得るプレス脱水装置(200)とを備えたことを特徴とする汚染土壌の洗浄装置である。
【0009】
請求項4にかかる発明は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄装置であって、水を添加した前記汚染土壌から礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする湿式ふるい装置(10)と、このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する混合攪拌装置(20)と、さらにこのスラリー状の土砂を、砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理するハイドロサイクロン装置(30)と、分級処理した前記砂・細砂に捕集剤を添加して混合・攪拌する混合攪拌装置(40)と、混合・攪拌した前記砂・細砂から汚染物質を分離する泡浮遊式分離装置(50)と、分離した前記砂・細砂からさらに金属汚染物質を分離する重力式分離装置(60)と、前記砂・細砂を脱水処理し、前記洗浄処理土を得る脱水サイクロン装置(70)とを備え、かつ、分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する凝集沈殿装置(100)と、この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣を得るプレス脱水装置(200)とを備えたことを特徴とする汚染土壌の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚染土壌の洗浄方法及び洗浄装置によれば、土砂に分散剤を添加して混合・攪拌することにより、土砂表面に強固に付着している汚染物質を剥離・分離することができ、洗浄処理土の品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る汚染土壌の洗浄方法及びこの洗浄方法に用いられる洗浄装置について、図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る汚染土壌の洗浄装置の概略図である。本実施形態に係る洗浄装置は、請求項3に記載の発明に対応するものであり、洗浄方法は、請求項1に記載の発明に対応するものである。
【0013】
また、本実施形態に係る汚染土壌の洗浄装置は、有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、洗浄処理土を再利用に供し、濃縮残渣を回収処理に供するものである。この装置は、水を添加した汚染土壌から礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする湿式ふるい装置(10)と、このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する混合攪拌装置(20)と、このスラリー状の土砂を、砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理するハイドロサイクロン装置(30)と、分級処理した砂・細砂からさらに金属汚染物質を分離する重力式分離装置(60)と、この砂・細砂を脱水処理し、洗浄処理土を得る脱水サイクロン装置(70)と、分離した細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する凝集沈殿装置(100)と、この沈殿汚泥を脱水処理し、濃縮残渣を得るプレス脱水装置(200)とから、概略構成されている。
【0014】
洗浄対象となる汚染土壌は、有害な汚染物質を含有するものである。このような有害な汚染物質としては、鉱物油、多環芳香族炭化水素(PAHs)、揮発性有機化合物(VOCs)、PCB、ダイオキシン、農薬、重金属、シアン等の有機性汚染物質及び無機性汚染物質が挙げられる。また、汚染土壌は、農業用地、工業用地、市街地、住宅地等のすべての土地の土壌である。有害な汚染物質により人工的に高濃度に汚染された工場跡地のような土壌であっても構わないし、自然汚染の農地のような土壌であってもよい。
【0015】
まず、汚染土壌は、水を添加した後、湿式ふるい装置(10)に送られる。この湿式ふるい装置(10)は、振動ふるいや超音波ふるい、比重選別等により、異物を選別して、2mmを超える礫・粗砂とそれ以下のスラリー状の土砂とに分級するものであり、網面を内部に備えている。この湿式ふるい装置(10)には、市販の公知の装置を使用することができる。汚染土壌は水を添加した後、この湿式ふるい装置(10)で分級処理し、2mmを超える礫・粗砂と2mm以下のスラリー状の土砂とに分級する(工程(A−1))。有害な汚染物質のほとんどが細粒子に付着・吸着しているおり、2mmを超える大きな礫・粗砂に含まれる汚染物質の量は、環境基準値以下であるため、2mmを超える礫・粗砂は分離後、洗浄処理土と共に再利用に供することができる。また、2mmを超える礫・粗砂をあらかじめ分離しておくことにより、土砂の洗浄効率を向上することができる。汚染土壌への水の添加量は、スラリー化する点から、土壌の2.5〜5倍(質量比)であるのが好ましい。
【0016】
分級したスラリー状の土砂は、混合攪拌装置(20)に送られる。この混合攪拌装置(20)には、攪拌槽と攪拌羽根とが設けられている。この装置は、スラリー状の土砂に分散剤を添加した上で、攪拌羽根等を用いて機械的に混合・攪拌してスラリー状の土砂を相互に擦り合わせることにより、土砂表面に強固に付着した汚染物質を剥離し、分離するためのものである。この混合攪拌装置(20)には、市販の公知の装置を使用することができる。前記工程(A−1)で分級したスラリー状の土砂は、分散剤を添加して、この混合攪拌装置(20)にて混合・攪拌して、汚染物質を土砂表面から剥離する(工程(A−2))。分散剤としては、界面活性剤が好ましく、そのなかでも、ポリリン酸系の界面活性剤がより好ましい。また、分散剤の添加量は、汚染物質の存在量によって変わるが、全体に対して、0.01〜0.1質量%であるのが好ましい。分散剤を添加せずに、単にスラリー状の土砂を機械的に混合・攪拌しても、汚染物質を土砂表面から剥離することは難しい。これは、汚染物質と土砂表面との表面電荷が異なり、汚染物質は静電気的な相互作用によって、土砂表面に強固に付着しているためである。分散剤を添加することにより、これらの表面電荷が変化するため、汚染物質を容易に剥離することができる。この剥離した汚染物質は、次工程において、細粒子と共にオーバーフローとして分級するため、洗浄処理土には残らない。
【0017】
次いで、このスラリー状の土砂は、ハイドロサイクロン装置(30)に送られる。このハイドロサイクロン装置(30)は、円筒底部が円錐型をした構造の容器からなり、土砂と水を混ぜたスラリーを導入する上部流入口と、アンダーフローを取り出す下部流出口と、オーバーフローを取り出す上部流出口とを備えている。上部流入口から入ったスラリー状の土砂は、円筒容器の円周方向に高速で供給されることにより、回転運動を起こし、回転流となって、円錐頂部に向かって進む。この時、スラリー中の比重の重い粒子は遠心力により周壁に集まり、次第にアンダーフロー出口(下部流出口)に向かい、濃縮して排出される。一方、液体と比重の軽い粒子は、円筒容器の中央部を渦流となって上昇し、オーバーフロー出口(上部流出口)から排出される。具体的には、63μm〜2mmの砂・細砂はアンダーフローとして分級され、63μm未満の細粒子と汚染物質はオーバーフローとして上方に分級される(工程(A−3))。このハイドロサイクロン装置(30)には、市販の公知の装置を使用することができる。汚染物質は細粒子に付着・吸着しているため、ハイドロサイクロン装置(30)で分級することにより、ほとんどの汚染物質を洗浄処理土から除去することができる。この分級処理は、1回以上行うのが好ましい。
【0018】
分級した砂・細砂は、重力式分離装置(60)に送られる。この重力式分離装置(60)は、水と共に土砂を上方から下方へと螺旋状に流す構造になっており、粒子が液体中を重力によって沈降する際の速度の差によって分級する。比重の重い金属汚染物質は、螺旋の内側に集まり、軽い砂・細砂は、水と共に螺旋の外側に分離し、砂・細砂が下方から取り出される。この重力式分離装置(60)には、市販の公知の装置を使用することができる。砂・細砂から、重力式分離装置(60)により、金属汚染物質が分離される(工程(A−6))。このような金属汚染物質としては、例えば、散弾銃の銃弾等がある。また金属汚染物質と水は、汚染物質を含んでいるため、凝集沈殿装置(100)に送られる。
【0019】
砂・細砂は、脱水サイクロン装置(70)に送られる。この脱水サイクロン装置(70)は、上記ハイドロサイクロン装置(30)と同じ構造からなっている。砂・細砂は、脱水サイクロン装置(70)で洗浄処理土と水に分離される(工程(A−7))。得られた洗浄処理土は、汚染物質の残留濃度を分析して、環境基準値以下になっていることを確認する。この洗浄処理土は、汚染物質の濃度が環境基準値以下であるため、埋め戻し等に再利用することができる。また水は、貯留水槽に送られて、循環水として、湿式ふるい装置(10)に添加する水として再利用される。
【0020】
一方、ハイドロサイクロン装置(30)で分離した汚染物質を含む細粒子は、凝集沈殿装置(100)に送られる。この凝集沈殿装置(100)は、沈殿槽を備え、細粒子を含んだ懸濁水に凝集剤を添加・撹拌し、水中の微細な浮遊物を大きな沈殿汚泥として沈殿させ、清澄な処理水を分離するものである(工程(B−1))。この凝集沈殿装置(100)には、市販の公知の装置を使用することができる。このような凝集剤としては、無機系凝集剤、有機系凝集剤を単独又は組合わせて用いることができる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、鉄塩等が挙げられ、有機系凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。凝集剤の添加量は、懸濁水の懸濁質(SS)濃度に応じて調整する。また、沈殿汚泥から分離した水は、貯留水槽に送られて、循環水として、湿式ふるい装置(10)に添加する水として再利用される。
【0021】
この沈殿汚泥は、水分を多量に含有しているため、プレス脱水装置(200)に送られ、脱水される。このプレス脱水装置(200)は、公知の加圧式濾過装置(ベルトフィルタープレス)等であり、濾布等からなるフィルターとプレス機を備えている。沈殿汚泥をプレス脱水装置(200)で濾過して脱水処理することで、フィルター上に含水率40〜50質量%の濃縮残渣を得ることができる(工程(B−2))。この濃縮残渣は、63μm未満の細粒子からなり、汚染物質が濃縮しているため、外部へ搬出して処分される。元の汚染土壌の粒度構成(乾燥重量比)が、礫・粗砂分25%、砂・細砂分50%、細粒子分25%であると、得られる洗浄処理土が75%、濃縮残渣が25%となり、洗浄処理土の再利用率を高くすることができる。
【0022】
また、本実施形態では、装置全体で使用する水を循環させて再利用しているため、排水による二次汚染も発生せず、また水処理のコストを低下することができる。
【0023】
本実施形態では、分散剤を添加して混合・攪拌する混合攪拌装置(20)を設けたことにより、土砂表面に強固に付着している汚染物質を剥離・分離することができ、洗浄処理土の品質を向上することができる。
【0024】
また、本実施形態では、サイズを2mmを超える礫・粗砂、63μm〜2mmの砂・細砂、63μm未満の細粒子とに分級して処理することにより、4mmまでのほとんどの土壌粒子を洗浄処理することができる。
【0025】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態に係る汚染土壌の洗浄装置の概略図である。本実施形態に係る洗浄装置は、請求項4に記載の発明に対応するものであり、洗浄方法は、請求項2に記載の発明に対応するものである。本実施形態では、ハイドロサイクロン装置(30)と重力式分離装置(60)との間に、分級処理した砂・細砂に捕集剤を添加して混合・攪拌する混合攪拌装置(40)と、この砂・細砂から汚染物質を分離する泡浮遊式分離装置(50)とを設けたこと以外は第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0026】
この混合攪拌装置(40)は、上記混合攪拌装置(20)と同じ構造からなっているが、添加する薬剤は分散剤ではなく、捕集剤(コレクター)である。この混合攪拌装置(40)では、汚染物質と土砂表面との表面電荷が異なることを利用して、汚染物質のみに選択的に付着する捕集剤を砂・細砂に添加し、機械的に混合・攪拌して、汚染物質に捕集剤を付着させるものである(工程(A−4))。この汚染物質は、次の泡浮遊式分離装置(50)において土砂から分離される。捕集剤の種類及び濃度は、対象とする汚染物質に応じて適宜選択される。
【0027】
この砂・細砂は泡浮遊式分離装置(50)に送られる。この泡浮遊式分離装置(50)は、フローテーションセルとその内部にローターとを備え、セルの上部液面には、液面と水平方向を回転軸とした泡かき取り用の回転羽根からなるスクレーパーを備えている。砂・細砂を含んだスラリーを泡浮遊式分離装置(50)のフローテーションセルに導入し、気泡剤を添加して、ローターを回転してセル底部に空気を導入する。ローターから発生した気泡は、捕集剤の付着した汚染物質を捕らえて気泡と共にセル上部の液面へと上昇し、液面から泡と共にフロスとしてスクレーパーによりかき取られて除去される(工程(A−5))。この泡と水は凝集沈殿装置(100)に送られ、分離した砂・細砂は、重力式分離装置(60)に送られる。
【0028】
本実施形態では、ハイドロサイクロン装置(30)と重力式分離装置(60)との間に、捕集剤混合攪拌装置(40)と泡浮遊式分離装置(50)とを設けたことにより、残存する汚染物質を除去することができ、洗浄処理土の品質をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態に係る汚染土壌の洗浄装置の概略図である。
【図2】第2の実施形態に係る汚染土壌の洗浄装置の概略図である。
【符号の説明】
【0030】
10 湿式ふるい装置
20、40 混合攪拌装置
30 ハイドロサイクロン装置
50 泡浮遊式分離装置
60 重力式分離装置
70 脱水サイクロン装置
100 凝集沈殿装置
200 プレス脱水装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法であって、
前記汚染土壌に水を添加し、湿式ふるい分級処理して礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする工程(A−1)と、
このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する工程(A−2)と、
このスラリー状の土砂を、ハイドロサイクロン処理して砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理する工程(A−3)と、
分級処理した前記砂・細砂を重力式分離処理して、さらに金属汚染物質を分離する工程(A−6)と、
この砂・細砂を脱水処理する工程(A−7)とを経て、前記洗浄処理土を得ると共に、
前記工程(A−3)で分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する工程(B−1)と、
この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣と水とに分離する工程(B−2)とを経て、前記濃縮残渣を得ることを特徴とする汚染土壌の洗浄方法。
【請求項2】
有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄方法であって、
前記汚染土壌に水を添加し、湿式ふるい分級処理して礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする工程(A−1)と、
このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する工程(A−2)と、
このスラリー状の土砂を、ハイドロサイクロン処理して砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理する工程(A−3)と、
分級処理した前記砂・細砂に捕集剤を添加して混合・攪拌する工程(A−4)と、
混合・攪拌した前記砂・細砂を、泡浮遊式分離処理して汚染物質を分離する工程(A−5)と、
分離した前記砂・細砂を重力式分離処理して、さらに金属汚染物質を分離する工程(A−6)と、
この砂・細砂を脱水処理とする工程(A−7)とを経て、前記洗浄処理土を得ると共に、
前記工程(A−3)で分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する工程(B−1)と、
この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣と水とに分離する工程(B−2)とを経て、前記濃縮残渣を得ることを特徴とする汚染土壌の洗浄方法。
【請求項3】
有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄装置であって、
水を添加した前記汚染土壌から礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする湿式ふるい装置(10)と、
このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する混合攪拌装置(20)と、
このスラリー状の土砂を、砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理するハイドロサイクロン装置(30)と、
分級処理した前記砂・細砂からさらに金属汚染物質を分離する重力式分離装置(60)と、
この砂・細砂を脱水処理し、前記洗浄処理土を得る脱水サイクロン装置(70)とを備え、
かつ、分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する凝集沈殿装置(100)と、
この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣を得るプレス脱水装置(200)とを備えたことを特徴とする汚染土壌の洗浄装置。
【請求項4】
有害な汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄し、洗浄処理土と前記汚染物質の濃縮した濃縮残渣とに分離し、前記洗浄処理土を再利用に供し、前記濃縮残渣を回収処理に供する汚染土壌の洗浄装置であって、
水を添加した前記汚染土壌から礫・粗砂を分離して、スラリー状の土砂とする湿式ふるい装置(10)と、
このスラリー状の土砂に分散剤を添加して混合・攪拌し、汚染物質を土砂表面から剥離する混合攪拌装置(20)と、
さらにこのスラリー状の土砂を、砂・細砂と、汚染物質を含む細粒子とに分級処理するハイドロサイクロン装置(30)と、
分級処理した前記砂・細砂に捕集剤を添加して混合・攪拌する混合攪拌装置(40)と、
混合・攪拌した前記砂・細砂から汚染物質を分離する泡浮遊式分離装置(50)と、
分離した前記砂・細砂からさらに金属汚染物質を分離する重力式分離装置(60)と、
前記砂・細砂を脱水処理し、前記洗浄処理土を得る脱水サイクロン装置(70)とを備え、
かつ、分離した前記細粒子を凝集沈殿して、沈殿汚泥と水とに分離する凝集沈殿装置(100)と、
この沈殿汚泥を脱水処理し、前記濃縮残渣を得るプレス脱水装置(200)とを備えたことを特徴とする汚染土壌の洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116397(P2006−116397A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305570(P2004−305570)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】