説明

汚水処理装置

【課題】微生物を利用した汚水処理では、流入する汚水の水質や水量が変動すると、有機物(BOD)、とくに窒素やリンの除去が不安定になり、処理性能(窒素やリンの除去性能)が低下してしまう。
【解決手段】流入する汚水を分離水と分離汚泥に固液分離し、分離水は生物処理槽に導入して処理し、分離汚泥は濃縮機で濃縮して、有機物を含む濃縮分離液を生物反応槽へ移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水中の有機物等を生物学的に処理する汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水中の有機物(BOD)、窒素、リンの除去を行う方法として、嫌気・無酸素・好気法がある。このうち窒素の除去は比較的安定しており且つ高効率に達成できる。しかし、リンの除去に関しては、嫌気槽におけるリン蓄積菌のリン放出が不安定で好気槽での十分なリン除去(リン蓄積菌のリン過剰摂取)が得られないという課題があった。その原因としては、流入する汚水の有機物(BOD)濃度がリン除去に必要とされるだけ高くない、汚水の水質変動が大きい、好気槽での酸化が進み返送汚泥を介して酸化態窒素が嫌気槽に持ち込まれる、などが考えられる。
【0003】
また、嫌気・無酸素・好気法を利用した場合、反応槽の容積が従来の標準活性汚泥法の約2〜3倍必要となり、処理施設の建設費が大きくかさみ、より広いスペースが必要になる。
【0004】
このような従来技術に対して、既存の標準活性汚泥処理施設において増設を行うことなく、容易な改造を行うことにより、有機物(BOD)のみならず、窒素・リンをもあわせて効率よく同時除去が行える汚水処理装置として、嫌気処理槽に汚泥調質槽で得られる揮発性有機酸(VFA)を含んだ分離水を導入し、無酸素処理槽に汚水(最初沈殿池の流出水)を導入することにより、嫌気槽での汚泥の滞留時間を長く、また、汚泥濃度を高く維持することで、確実なリン放出を促進させ、無酸素処理槽および好気槽でのリン除去を効率化、安定化した廃水処理装置が発明されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1には、流入する汚水を予め固液分離する第1固液分離槽と、攪拌手段を備え、第1固液分離槽処理水を受け入れる無酸素処理槽と、無酸素処理槽処理水を受け入れ、微生物を担持する担体を用いて活性汚泥処理を行う好気槽と、好気槽処理水を固液分離する第2固液分離槽と、攪拌手段を備え、第2固液分離槽の分離汚泥を受け入れ無酸素処理槽へ流出させる嫌気槽と、第1固液分離槽の分離汚泥および/または第2固液分離槽の分離汚泥を調質する汚泥調質槽と、汚泥調質槽の分離液を嫌気槽に導入する導入管路とを備えていることが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている廃水処理装置では、その実施の形態において、汚泥調質槽として既存施設の汚泥濃縮槽または汚泥酸発酵槽を転用しており、該汚泥濃縮槽または汚泥酸発酵槽における発酵は、分離汚泥中の有機物(BOD)を著しく減少させてしまうことがあり、結果として、リン除去に必要な有機物(BOD)を十分に安定して供給することが困難となることが懸念される。
【0007】
【特許文献1】特開平11−156387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、本発明に想到するに際して、少なくとも以下に記載する課題を認識していた。
【0009】
(1)流入汚水中の有機物(BOD)の量に変動があると、微生物を利用した汚水処理装置の有機物(BOD)、窒素、リンの処理安定性が低下する。
【0010】
(2)分離汚泥を発酵させて溶解性の有機物(BOD)を得るためには専門的で煩雑な管理が必要である。
【0011】
(3)汚泥調質槽により分離汚泥を発酵させて溶解性の有機物(BOD)を安定して得るためには、十分な滞留時間が得られる槽容積を必要とし、かつ、pH調整や温度制御を行う設備を設けて高度な維持管理を行う必要がある。
【0012】
(4)既存の汚泥濃縮槽または汚泥酸発酵槽を汚泥調質槽として利用する場合には、生物処理後の窒素やリンを多く含む汚泥(余剰汚泥)も投入されるため、窒素やリンが汚水処理装置内へ還流し、生物反応槽で再溶出したり蓄積したりして負荷が増大し、その結果処理水の水質を悪化させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係る汚水処理装置は、汚水を分離水と分離汚泥に固液分離する分離槽と、該分離槽の分離水を導入して好気的に生物処理する生物反応槽と、前記分離槽の分離汚泥を導入して濃縮する濃縮機と、該濃縮機から排出される濃縮分離液を前記生物反応槽へ移送する移送設備とからなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係る汚水処理装置は、生物反応槽が、微生物を担持する担体が投入された担体投入型活性汚泥処理槽であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る汚水処理装置は、生物反応槽が、嫌気処理槽および/または無酸素処理槽を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る汚水処理装置は、濃縮機から排出される濃縮汚泥を前記分離槽へ返送する返送設備を備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る汚水処理装置は、分離槽に複数の間隙が設けられ、汚水が流入する回転円筒を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る汚水処理装置は、以下の作用・効果を奏する。
【0019】
濃縮機を用いて分離汚泥から濃縮分離液を短時間で分離するため、濃縮機内で分離汚泥の発酵が起こらない。これにより、分離汚泥に含まれる有機物を高収率で速やかに濃縮分離液に回収することが可能となり、微生物による窒素除去やリン除去で利用される有機物(BOD)を安定して確保できる。
【0020】
流入する汚水の水質変動による有機物(BOD)の過不足に応じて、また微生物量(MLSS濃度)に応じて、適宜濃縮機を運転(間欠、連続、少量、多量など)して適切に濃縮分離液を生物反応槽へ移送することができるので、生物反応槽で安定して処理(有機物、窒素、リンの除去)を行うことができる。
【0021】
分離槽の分離汚泥(初沈汚泥)から分離した濃縮分離液を生物反応槽へ移送するため、生物処理後のとくにリンを多く含む汚泥(余剰汚泥)の混入により生物反応槽へリンが還流(蓄積)したり、生物反応槽でリンが再溶出したりすることを防止できる。
【0022】
濃縮機から排出される(分離汚泥に由来する)濃縮汚泥を分離槽へ返送することにより、分離汚泥の分離槽における滞留時間が長くなり、分離汚泥に含まれる固形有機物を可溶化することができるので、生物反応槽へ導入される分離水の「分解され易く、窒素除去やリン除去に利用し易い有機物(BOD)」の濃度を高めることができる。これにより、生物反応槽では効率よく窒素除去やリン除去を行うことができ、良好な水質の処理水を安定して得ることができる。
【0023】
分離槽(最初沈殿池)や濃縮機は、汚泥調質槽に比べて維持管理や運転調整が容易であり、設備規模が小さく済むため汚泥調質槽のような広い設置スペースを要しない。また汚泥を長期間滞留させないので硫化水素の発生を低減できる。さらに、多くの装置(pH調整装置、温度調節装置など)や大規模な設備を要しないため、建設コストや運転コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る汚水処理装置の最も基本となる実施の形態を示す図であって、本発明の実施の形態1の全体を示す概略構成図である。
図1において、分離槽2は、例えば重力式の分離槽(最初沈殿池)や簡易な濾過槽であり、処理対象の汚水1を分離水3と分離汚泥4に固液分離する。なお、分離槽2は、汚水1を分離水3と分離汚泥4に固液分離することができればよく、重力式や濾過式に限られない。
分離水管5は、分離槽2と生物反応槽6を接続している配管であり、分離槽2の分離水3を生物反応槽6に導入する。必要に応じて分離水管5に導入ポンプ(図示せず)を設けてもよい。なお、生物反応槽6の上方に分離槽2を設けた場合には、分離水3を生物反応槽6へ自然落下(水路を設けて流出)させてもよく、また生物反応槽6と分離槽2とを隣接して設けた場合には、分離水3を生物反応槽6へオーバーフロー(堰を設けて越流)させてもよい。
【0025】
生物反応槽6は、微生物による生物反応処理を行う好気処理槽であり、分離槽2の分離水3を導入して原則として好気的に生物処理を行う。生物反応槽6(活性汚泥処理槽)では、硝化脱窒やリンの放出・過剰摂取を促進させて窒素除去やリン除去をするため、通常間欠曝気を行って槽内を好気状態と無酸素(嫌気)状態にする。
分離汚泥管7は、分離槽2と濃縮機8を接続している配管であり、分離槽2の分離汚泥4を濃縮機8に導入する。必要に応じて分離汚泥管7に導入ポンプ(図示せず)を設けてもよく、上記同様自然落下やオーバーフローでもよい。
【0026】
濃縮機8は、分離汚泥4から効率よく濃縮分離液10を分離して確実に濃縮汚泥9が得られるものであればよく、例えば回転するデカンタを用いた横型または竪型の遠心濃縮機、無端ベルトを用いたベルト濃縮機、回転ドラムを用いたドラムスクリーン濃縮機、バスケット型スクリーンを用いた回転スクリーン濃縮機、濾布が張られた回転バスケットを用いた遠心濾過濃縮機などが好適である。
要するに、濃縮機8は、分離槽2の分離汚泥4から、生物反応槽6で窒素除去やリン除去で利用できる有機物(水素供与体)を含む濃縮分離液10を確保できるものであればよい。なお、濃縮機8から排出される濃縮汚泥9は、適宜汚泥処理施設(図示せず)へ移送され処理・処分される。
【0027】
移送設備は、例えば濃縮分離液管11や移送ポンプ、バルブ、流量計(図示せず)などから構成してもよく、また生物反応槽6の上方に濃縮機8を設けた場合には、濃縮分離液10を生物反応槽6へ自然落下(水路を設けて流出)させてもよく、さらに生物反応槽6と濃縮機8とを隣接して設けた場合には、濃縮分離液10を生物反応槽6へオーバーフロー(濃縮機8から溢流)させてもよく、要は濃縮機8から排出される濃縮分離液10を確実に生物反応槽6へ移送できるものであればよい。
流出管12は、生物反応槽6と沈殿槽13を接続している配管であり、生物反応槽6から流出する(活性汚泥)混合液を、沈殿槽13など処理水を分離する設備に導入する。
【0028】
沈殿槽13は、生物反応槽6から流出する(活性汚泥)混合液を沈殿汚泥と処理水とに分離する槽であり、沈殿汚泥の一部は汚泥引抜管14を介して引き抜かれて、汚泥処理施設等(図示せず)で処理・処分される。また、沈殿汚泥の一部は、生物反応槽6の活性汚泥が適正に維持されるように、沈殿槽13と生物反応槽6とを接続している返送汚泥管16を介して生物反応槽6へ返送される。
【0029】
次に、図1に示す本実施の形態1の汚水処理装置の作用について簡潔に説明する。
汚水1は、重力式の分離槽2によって分離水3と分離汚泥4に分離される。
分離水3は、生物反応槽6(活性汚泥処理槽)に導入され活性汚泥によって好気的(間欠曝気により無酸素状態にもなる)に生物処理され、生物反応槽6から流出した(活性汚泥処理槽)混合液は、流出管12を介して沈殿槽13に導入されて固液分離され、処理水管15を介して処理水が排出される。分離槽2からの分離汚泥4は、分離汚泥管7を介して機械式の濃縮機8に導入され、濃縮分離液10と濃縮汚泥9に濃縮され、濃縮分離液10は、移送設備(濃縮分離液移送管11等)によって生物反応槽6に移送され、窒素除去やリン除去に利用されると共に活性汚泥によって処理される。
【0030】
生物反応槽6の後段には沈殿槽13が設けられ、上記した通り生物反応槽6から流出した(活性汚泥処理槽)混合液は沈殿汚泥と処理水とに分離され、沈殿汚泥の一部は、生物反応槽6の活性汚泥濃度を適正に維持するため、返送汚泥管16を介して生物反応槽6へ返送される。
【0031】
生物反応槽6に導入される分離水3の有機物(BOD)の濃度が低い場合、生物反応槽(活性汚泥処理槽)6ではBOD−MLSS負荷(微生物量に対する有機物負荷)が低い状態となり、酸化(好気状態)が促進され、活性汚泥フロックの解体、処理水質の悪化が懸念される。しかしながら、有機物(BOD)を多く含む濃縮分離液10を生物反応槽6に移送することで、BOD−MLSS負荷を適切な範囲に維持できるという効果が得られる。
【0032】
分離水3の有機物(BOD)の濃度でBOD−MLSS負荷が適正な範囲にある場合、濃縮機8を停止して生物反応槽6へ過剰に有機物(BOD)が供給されないようにする。なお、濃縮機8を停止した場合には、分離汚泥4は濃縮されることなく適宜汚泥処理施設へ移送され処理・処分される。
例えば、降雨時に汚水1に雨水が混入して、分離水3の有機物(BOD)の濃度が通常よりもかなり低くなる場合がある。このような場合には、濃縮機8を適宜運転させて、分離汚泥4に由来する有機物(BOD)を含む濃縮分離液10を生物反応槽6に投入することができる。
分離汚泥4の中には砂や夾雑物等の生物反応槽6では分解できず、生物反応槽6に堆積する可能性のある物質も含まれている。濃縮機8から移送される濃縮分離液10には、砂や夾雑物等は取り除かれ、生物分解し易い有機物(BOD)が高濃度に含まれているため、好気処理槽である生物反応槽6へのBOD源としては最適である。
【0033】
ここで、濃縮分離液を生物反応槽へ移送するメリットをまとめると、次のようになる。
(1)濃縮分離液には分離水以上に(汚水に由来する生物分解し易い)有機物が多く含まれる。
(2)濃縮分離液を生物反応槽に入れることで生物処理が安定する。
(3)生物処理安定のために、別途薬剤(有機物、凝集剤など)を添加する必要がない。
(4)特に、窒素やリンの除去において不足がちである有機物の安定供給ができる。
【0034】
また、濃縮機で濃縮するメリットをまとめると、次のようになる。
(1)短時間に濃縮できるため、専用の調質槽が不要となる。
(2)短時間に濃縮できるため、濃縮中に分離汚泥が腐敗するのを防止でき、窒素やリンの除去において利用できる生物分解され易い有機物の損失(変質)を抑えられる。
(3)運転・停止が容易であるため、生物反応槽の状況に応じて的確に対応できる。
(4)分離汚泥に含まれ、生物反応槽6では分解できず生物反応槽に堆積してしまう砂や夾雑物等を、濃縮汚泥と共に排除することができる。
【0035】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2の全体を示す概略構成図である。なお、図1に示す装置と同一の部品・部分については、同一の参照符号を付すと共に、重複する説明を適宜省略して、特徴的な部分について詳説する。本実施の形態以降の他の実施の形態・変更例に関する説明においても同様とする。
図2では、沈殿槽13や配管等を省略しており、図3〜図31においても同様に図示を省略する。ただし、図2〜図6については、返送汚泥管16を明示する。
【0036】
図2に示す本実施の形態2の生物反応槽6は、図1の生物反応槽6と同様に、微生物による生物反応処理を行う好気処理槽(活性汚泥処理槽)であるが、微生物を担持する担体17が投入されている点で相違している。
生物反応槽6における下流側(流出管12開口近傍)には、担体17が生物反応槽6の混合液と共に後段の沈殿槽13へ流出するのを防止する担体流出防止板18が設けられる。担体流出防止板18は、通常金属製やプラスチック製の網を用いたスクリーンタイプのもの、複数の通水孔が設けられた金属板やプラスチック板などのパンチングタイプのものなどが用いられるが、要は、担体17の流出を防ぎ、閉塞せずに生物反応槽6の混合液を確実に流出させることができるものであればよい。
なお、返送汚泥管16を介して沈殿汚泥の一部が生物反応槽6へ返送される。
【0037】
生物反応槽6には、流動する担体17が生物反応槽6全体に行き渡るようにするために、生物反応槽6の下流側(流出管12開口近傍)に流下してきた担体17を、生物反応槽6の上流側へ返送する担体返送設備が設けられる。担体返送設備は、通常担体返送管19、ポンプ類(エアリフトポンプ、機械式ポンプなど)、バルブ、流量計などから構成される。
担体17は、汚水の生物処理を行う微生物(細菌や原生動物等)を保持するもので、例えば一辺もしくは直径が5〜50mmの立体形状のポリウレタン製のもの(立方体や球体など)を用いるが、ポリエステルやポリプロピレンなどの生分解性がきわめて低く、耐食性、耐久性に優れ、例えばキューブ状、球状、ペレット状、ハニカム状のものであってもよい。また、活性炭、アルミナ、シリカなどの天然素材を用いてもよい。要は生物処理槽6(好気処理槽や無酸素処理槽等)において曝気や撹拌により槽内を流動し、微生物を保持できる機能を有するものであれば、材質のみならず形状や大きさも任意である。また、微生物の保持形態も、微生物を担体17の表面や内部に付着固定させてもよく、または担体材料で微生物を包括固定してもよい。
【0038】
図2に示す本実施の形態2の汚水処理装置では、生物反応槽6に微生物を担持する担体17を投入し、窒素除去やリン除去のために濃縮分離液10を生物反応槽6に移送して、担体投入型活性汚泥(通常間欠曝気)によって処理される。
担体17を投入すると、生物反応槽(担体投入型活性汚泥処理槽)6内の微生物濃度を高く維持できるため、汚水量増加や有機物濃度が高くなっても(処理負荷が増大しても)、安定して生物処理を行うことができ、また沈殿槽13での汚泥負荷を軽減できるので、処理水の良好な水質を維持することが可能となる。一方、分離水3の有機物濃度が極端に低濃度となった場合には、通常の活性汚泥処理と同様に、活性汚泥フロックの解体や処理水質悪化が懸念されるが、有機物濃度の高い濃縮分離液10を移送することで、適正なBOD−MLSS負荷を維持することが可能となり、活性汚泥フロックの解体や処理水質悪化を防止できる。
【0039】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3の全体を示す概略構成図である。
本実施の形態3の生物反応槽6は、図2の生物反応槽6と同様に、微生物を担持する担体17が投入されている担体投入型活性汚泥処理槽(好気処理槽)6cであり、さらに嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6bを備えている。なお、後述する図7や図8の生物反応槽6のように、嫌気処理槽6aと無酸素処理槽6bのどちらか一方を備えていてもよい。
【0040】
図3に示す本実施の形態3の汚水処理装置では、生物反応槽6が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6bを備え、また無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cには微生物を担持する担体17が投入されており、さらに好気処理槽6cから無酸素処理槽6bへは担体17の返送も兼ねて循環液管19を介して好気処理槽混合液が循環し、また嫌気処理槽6aへは濃縮分離液10が移送される構成となっている。
嫌気処理槽6aに濃縮分離液10を移送することにより、嫌気処理槽6aでは沈殿槽からの返送汚泥に含まれるリン蓄積菌の嫌気下におけるリン放出等に利用される有機物を十分に確保でき、これにより好気処理槽6cにおけるリン蓄積菌の好気下におけるリン過剰摂取(=リン除去)を行うことが可能となる。
なお、返送汚泥管16を介して沈殿汚泥の一部が嫌気処理槽6aへ返送されるが、処理状況等に応じて無酸素処理槽6bや好気処理槽6cへ適宜返送(分注)してもよい。
【0041】
図3の嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cからなる処理プロセスはA2&O法と呼ばれ、生物学的に有機物(BOD)だけでなく、窒素とリンも同時に除去できる。
窒素除去の流れをみてみると、分離水2等に含まれるアンモニア態窒素や有機態窒素は、好気処理槽6cにおいて好気下で硝化細菌により酸化されてNO3-やNO2-となる。ただし、硝化細菌は増殖速度が遅いため、長い汚泥滞留時間を必要とする。そこで担体17を投入することにより、担体17が硝化細菌を担持して流出させずに増殖に寄与する(担体17が硝化細菌の棲み家として役割を果たす)ため、好気処理槽6cでは硝化細菌を高濃度に保持することができ、硝化を安定して確実に行うことができる。NO3-やNO2-を含んだ好気処理槽混合液は無酸素処理槽6bへ担体17と共に循環される。
【0042】
無酸素処理槽6bでは、脱窒菌が無酸素状態で有機物(BOD)を水素供与体として利用し、NO3-やNO2-を還元する。その際、窒素ガスN2が生成され、これが放散することで汚水(汚水処理系)から窒素が除去されることになる。
リン除去の流れをみてみると、嫌気処理槽6aにおいてリン蓄積菌は、投入された有機物(BOD)を蓄える際に、エネルギーであるPO4-Pを放出してリン欠乏の状態になる。その後、好気条件になると先に放出した量以上のPO4-Pを菌体内に過剰摂取する。そしてPO4-Pを過剰摂取したリン蓄積菌を含む汚泥(余剰汚泥)を処理・処分することで汚水(汚水処理系)からリンが除去されることになる。
【0043】
脱窒菌やリン蓄積菌は、生物分解し易い有機物(BOD源)を利用する。生物反応槽6に導入される分離水3の有機物濃度が低くなりBOD源が欠乏すると、窒素除去やリン除去の反応がスムーズに進まなくなる。濃縮機8から排出される濃縮分離液10には、生物分解し易い有機物が高濃度に含まれているため、脱窒菌やリン蓄積菌のBOD源としては最適であり、生物反応槽6へ適切に濃縮分離液10を移送すれば、安定して高い窒素およびリンの除去性能が得られる。
なお、生物反応槽6に嫌気処理槽6aを備えることにより、活性汚泥処理で問題となる糸状性細菌によるバルキングを抑制するという副次的な効果も得られる。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態3(図3)の変形例を示す。図3の生物反応槽6は、嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cから構成されているが、図7の生物反応槽6は担体投入型活性汚泥処理槽(好気処理槽)6cであり、さらに無酸素処理槽6bを備えている。
この変形例(図7)においては、分離水3は無酸素処理槽6bへ導入され、濃縮分離液10も無酸素処理槽6bに移送される。
好気処理槽6cから無酸素処理槽6bへは担体17(図示せず)の返送も兼ねて循環液管(担体返送管)19を介して好気処理槽混合液が循環する。
【0045】
図8は、本発明の実施の形態3(図3)の別の変形例を示す。図3の生物反応槽6は、嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cから構成されているが、図8の生物反応槽6は好気処理槽6cであり、さらに嫌気処理槽6aを備えている。この変形例(図8)においては、分離水3は嫌気処理槽6aへ導入され、好気処理槽6cでは通常間欠曝気を行っている。
【0046】
図9は、本発明の実施の形態3(図3)の更に別の変形例を示す。図3の汚水処理装置では、濃縮分離液移送管11で濃縮分離液10を嫌気処理槽6aに移送しているが、図9の汚水処理装置では、濃縮分離液移送管20を分岐させ、濃縮分離液10を無酸素処理槽6bへも移送できる構造としている。
これにより、無酸素処理槽6bにおいて脱窒菌が利用するBODを確保することができ、安定して確実に窒素除去を行うことが可能となる。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態3(図3)の他の変形例を示し、図9の汚水処理装置に関連する。図9の汚水処理装置では、処理対象である分離水3が分離水管5を介して嫌気処理槽6aに導入されているが、図10の汚水処理装置では、分離水管21を分岐させ、分離水3を無酸素処理槽6bへも導入できる構造としている。なお、図10の汚水処理装置では、好気処理槽6cが担体投入型活性汚泥処理槽であり、担体流出防止板18が設けられており(担体17は図示せず)、またNO3-やNO2-を含む好気処理槽混合液は担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6bへ循環される。
これにより、例えば雨水の混入等により希薄になった分離水3が多量に嫌気処理槽6aに流入してしまい嫌気処理(リン蓄積菌のリン放出など)に支障を来たすことを防止することができ、また無酸素処理槽6bにおいて脱窒菌が利用するBODを確保することができ、安定して確実に窒素除去やリン除去を行うことが可能となる。
【0048】
図11は、本発明の実施の形態3(図3)の変形例を示し、図9の汚水処理装置に関連する。図9の汚水処理装置では、処理対象である分離水3が分離水管5を介して嫌気処理槽6aに導入されているが、図11の汚水処理装置では、分離水管5を無酸素処理槽6bに延伸させ、分離水3を無酸素処理槽6bへ導入する構造としている。なお、図11の汚水処理装置では、好気処理槽6cが担体投入型活性汚泥処理槽であり、担体流出防止板18が設けられており(担体17は図示せず)、またNO3-やNO2-を含む好気処理槽混合液は担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6bへ循環される。
これにより、嫌気処理槽6aでは十分に嫌気性が保たれて良好に嫌気処理(リン蓄積菌のリン放出など)が行われ、また無酸素処理槽6bにおいて脱窒菌が利用するBODを確保することができ、安定して確実に窒素除去やリン除去を行うことが可能となる。
また、図11の汚水処理装置では、濃縮機8として、内周面に濾布81bが張設された逆円錐状の回転バスケット81a内へ分離汚泥4を供給し、回転バスケット81aを高速で回転させることにより遠心効果と濾過作用で分離汚泥4を濃縮汚泥9と濃縮分離液(濾液)10とに分離する遠心濾過濃縮機81を用いた。これにより、分離汚泥4の性状にかかわらず、生物分解され易い有機物(BOD)を含む濃縮分離液(濾液)10を安定して確実に得ることができる。
【0049】
図12は、本発明の実施の形態3(図3)の別の変形例を示し、図10の汚水処理装置に関連する。図13は、実施の形態3(図3)の更に別の変形例を示し、図11の汚水処理装置に関連する。図10および図11の汚水処理装置では、好気処理槽6cが担体投入型活性汚泥処理槽であるが、図12および図13の汚水処理装置は、好気処理槽6cが通常の活性汚泥処理槽であり、NO3-やNO2-を含む好気処理槽混合液は循環液管19を介して無酸素処理槽6bへ循環される。
なお、図12の汚水処理装置では、濃縮機8として、内部に掻寄用のスクリュウが設けられたデカンタ82a内へ分離汚泥4を供給し、デカンタ82aを高速で回転させることにより大きい遠心効果で分離汚泥4を濃縮汚泥9と濃縮分離液10とに分離する横型遠心濃縮機82を用いた。これにより、分離汚泥4の性状にかかわらず、生物反応槽6において有機物負荷を増大させてしまう固形物(SS成分)をほとんど含まない濃縮分離液10を効率よく速やかに得ることができる。
また、図13の汚水処理装置では、濃縮機8として、分離汚泥に高分子凝集剤を注入して無端ベルト83a上に供給して分離汚泥4を濃縮汚泥9と濃縮分離液10とに分離するベルト濃縮機83を用いた。これにより、分離汚泥4の性状にかかわらず、濃縮分離液10を効率よく安定して得ることができる。
【0050】
図14は、本発明の実施の形態3(図3)の他の変形例を示し、図7の汚水処理装置に関連する。図7の汚水処理装置では、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cから構成されている生物反応槽6を設けているが、図14の汚水処理装置は、生物反応槽6が無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cを2つずつ備える構造としている。すなわち、生物反応槽6は、上流側から順に無酸素処理槽6b(1)、好気処理槽6c(1)、無酸素処理槽6b(2)、好気処理槽6c(2)が設けられている。分離水3は、分岐する分離水管21によって、無酸素処理槽6b(1)や6b(2)に導入できる構造となっており、また好気処理槽6c(1)および6c(2)は担体投入型活性汚泥処理槽であり、好気処理槽6c(2)には担体流出防止板18が設けられており(担体17は図示せず)、さらにNO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環される。なお、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cの設置数は、2つに限るものではなく、また相互に同数でなくてもよい。
これにより、生物反応槽6では繰り返し硝化脱窒反応が行われ、十分に窒素除去を行うことができる。
【0051】
図15は、本発明の実施の形態3(図3)の更に他の変形例を示し、図14の汚水処理装置に関連する。図14の汚水処理装置では、濃縮分離液10を濃縮分離液移送管11を介して無酸素処理槽6b(1)に移送しているが、図15の汚水処理装置は、濃縮分離液移送管20を分岐させ、濃縮分離液10を無酸素処理槽6b(1)および無酸素処理槽6b(2)へ移送する構造としている。
これにより、無酸素処理槽6b(1)および無酸素処理槽6b(2)では脱窒に利用される生物分解され易い有機物を安定して確保することができる。
【0052】
図16は、本発明の実施の形態3(図3)の別の変形例を示し、図15の汚水処理装置に関連する。図15の汚水処理装置では、NO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環されるが、図16の汚水処理装置は、好気処理槽6c(1)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19aを介して無酸素処理槽6b(1)へ循環され、好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19bを介して無酸素処理槽6b(2)へ循環される構造としている。
これにより、生物反応槽6における処理段階に応じて好気処理槽混合液を無酸素処理槽6bへ循環させることができるため、微生物の適用性を高め効率的な汚水処理(窒素除去やリン除去を含む)を安定して行うことができる。
【0053】
図17は、本発明の実施の形態3(図3)の変形例を示し、図16の汚水処理装置に関連する。図16の汚水処理装置では、微生物を担持する担体17が生物反応槽6に投入されるが、図17の汚水処理装置では、とくに担体17を投入することなく、そのため好気処理槽6c(2)には担体流出防止板18が設けられていない。
【0054】
実施の形態4.
図4は、本発明の実施の形態4の全体を示す概略構成図であり、本発明の実施の形態3(図3)に関連する。
図4に示す本実施の形態4の汚水処理装置は、実施の形態3の汚水処理装置に対して、濃縮汚泥9を分離槽2へ返送する濃縮汚泥返送設備が設けられており、この濃縮汚泥返送設備は、例えば濃縮汚泥返送管22や移送ポンプ、バルブ、流量計(図示せず)などから構成してもよく、また分離槽2の上方に濃縮機8を設けた場合には、濃縮汚泥9を分離槽2へ自然落下(水路を設けて流出)させてもよく、さらに分離槽2と濃縮機8とを隣接して設けた場合には、濃縮汚泥9を分離槽2へオーバーフロー(濃縮機8から溢流)させてもよく、要は濃縮機8から排出される濃縮汚泥9を確実に分離槽2へ返送できるものであればよい。
なお、返送汚泥管16を介して沈殿汚泥の一部が生物反応槽6へ返送されるが、処理状況等に応じて無酸素処理槽6bや好気処理槽6cへ適宜返送(分注)してもよい。
【0055】
濃縮汚泥9を分離槽2へ返送することにより分離槽2に長く滞留するため、濃縮汚泥9に含まれる固形有機物の可溶化が促進され、分離水3や濃縮分離液10中の生物分解され易い有機物(BOD)の濃度が高まると共に、分離槽2から発生する汚泥の総量を減少させること(汚泥減量化)ができ、生物反応槽6では効率よく窒素除去やリン除去を行うことができ、良好な水質の処理水を安定して得ることができる。
つまり、濃縮汚泥9を分離槽2に返送すると、濃縮汚泥9の分離槽2における滞留時間が延びるため、固形有機物の分解が進み、分離液3および分離汚泥4中の有機酸の含有量が増加する。そして、リン蓄積菌は嫌気処理槽6aで酢酸やプロピオン酸等の有機酸を積極的に利用してPO4-Pを放出し、好気処理槽6cでPO4-Pを効率よく過剰摂取するため、リン除去が促進される。
【0056】
実施の形態5.
図5は、本発明の実施の形態5の全体を示す概略構成図であり、本発明の実施の形態4(図4)に関連する。
本実施の形態5の汚水処理装置は、汚水1を分離水3と分離汚泥4に固液分離する分離槽23が、回転円筒24を備えられている。
回転円筒24は、周囲に複数の間隙(図5では縦長のスリットであるが、複数の通水孔でも格子状の間隙でもかまわない)が設けられており、図示しない駆動機等によって、回転軸24aを中心にして回転するものであり、内部に導入した汚水1を効率よく分離水3と分離汚泥4に分離させることができる。
なお、返送汚泥管16を介して沈殿汚泥の一部が生物反応槽6へ返送されるが、処理状況等に応じて無酸素処理槽6bや好気処理槽6cへ適宜返送(分注)してもよい。
【0057】
図5の汚水処理装置では、分離槽23に回転円筒24を設けることにより、汚水1を分離水3と分離汚泥4に分離する能力が増しているために、分離槽23の小型化が図れると共に、流入する汚水の水質変動に対処でき、生物反応槽6の汚濁負荷となる有機系の固形物や生物分解できない砂や夾雑物等を確実にかつ速やかに除去できる。
分離槽23の小型化は装置全体の省スペース化に寄与するのみならず、汚水1の分離槽23での滞留時間の短縮につながる。これにより、分離槽23における分離汚泥4の滞留時間は実施の形態1乃至4等と変わらない条件において、分離水3の滞留時間のみ短縮されることとなり、分離水3を腐敗させることなく速やかに生物反応槽6へ導入することができ、良好な生物処理を行うことができる。
【0058】
実施の形態6.
図6は、本発明の実施の形態6の全体を示す概略構成図であり、本発明の実施の形態4(図4)に関連する。
図4に示す実施の形態4の汚水処理装置では、生物反応槽6は微生物を担持する担体17が投入されている担体投入型活性汚泥処理槽(好気処理槽)6cであり、さらに嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6bを備えているが、図6に示す本実施の形態6の汚水処理装置においては、生物反応槽6は、上流側から順に、嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)、好気処理槽6c(1)、無酸素処理槽6b(2)および好気処理槽6c(2)から構成されている。
本実施の形態6の汚水処理装置(図6)では、分岐する分離水管21によって、分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっており、また好気処理槽6c(1)および(2)は担体投入型活性汚泥処理槽であり、好気処理槽6c(2)には担体流出防止板18が設けられており(担体17は図示せず)、さらにNO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環される。
なお、返送汚泥管16を介して沈殿汚泥の一部が生物反応槽6へ返送されるが、処理状況等に応じて無酸素処理槽6b(1)や6b(2)、好気処理槽6c(1)や6c(2)へ適宜返送(分注)してもよい。また、分離汚泥管7は分岐して分離汚泥4が濃縮機8と汚泥処理施設等(図示せず)に移送できる構造となっている。さらに、無酸素処理槽6bおよび好気処理槽6cの設置数は、2つに限るものではなく、また相互に同数でなくてもよい。
【0059】
本実施の形態6の汚水処理装置は、5つの処理槽を備え、嫌気、無酸素および好気の各槽においてリン、窒素、有機物の除去が安定して行われる。とくに二つ目の無酸素処理槽6b(2)では十分に脱窒(NO3-やNO2-が還元されN2が生成)を行い、そして二つ目の好気処理槽6c(2)では曝気により混合液中に溶存する窒素ガス(N2)を十分に大気へ放散させると共に沈殿槽6でリンが再溶出しないように混合液を好気状態にすることができる。また、担体17を用いることで、負荷変動への対応が可能となりばかりか、増殖速度の遅い硝化細菌を高濃度に維持することができる。
窒素除去やリン除去には生物分解し易い有機物(BOD)が必要であり、有機物(BOD)の濃度の高い濃縮分離液10を嫌気処理槽6aへ移送し、また有機物(BOD)を含有する分離水3を嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)へ導入することで、有機物(BOD)の不足を確実に解消でき、効率的に安定して生物処理(窒素除去やリン除去を含む)の促進を図ることができる。
【0060】
図18は、本発明の実施の形態6の(図6)の変形例を示す。実施の形態6の汚水処理装置では、濃縮分離液10を濃縮分離液移送管11を介して嫌気処理槽6aに移送しているが、図18の汚水処理装置では、濃縮分離液移送管25を分岐させ、濃縮分離液10を無酸素処理槽6b(1)および6b(2)へ移送できる構造としている。
これにより、無酸素処理槽6b(1)および6b(2)では、生物分解しやすい有機物(BOD)を十分に確保でき、安定して効率的に窒素除去を行うことができる。
【0061】
図19は、本発明の実施の形態6の(図6)の別の変形例を示し、図18の汚水処理装置に関連する。図18の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっているが、図19の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(1)に導入できる構造としている。
これにより、導入された分離水3は、水量が多くても生物反応槽6で十分に処理(窒素除去やリン除去を含む)することができる。
【0062】
図20は、本発明の実施の形態6の(図6)の更に別の変形例を示し、図18の汚水処理装置に関連する。図18の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(1)に導入できる構造となっているが、図20の汚水処理装置では、分岐する分離水管26によって、分離水3が嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)および無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造としている。
これにより、分離水3は、水量、水質、有機物(BOD)の状況等に応じて、適宜生物反応槽6内へ導入することができる。
【0063】
図21は、本発明の実施の形態6の(図6)の他の変形例を示し、図18の汚水処理装置に関連する。図18の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっているが、図21の汚水処理装置では、分離水3を分離水管5を介して嫌気処理槽6aに導入する構造としている。
これにより、導入された分離水3は、水量が多くても生物反応槽6で十分に処理(窒素除去やリン除去を含む)することができる。
【0064】
図22は、本発明の実施の形態6の(図6)の更に他の変形例を示し、図18の汚水処理装置に関連する。図18の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が担体投入型活性汚泥処理槽であるが、図22の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が通常の活性汚泥処理槽であり、NO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は循環液管19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環される。
【0065】
図23は、本発明の実施の形態6の(図6)の変形例を示し、図18の汚水処理装置に関連する。図18の汚水処理装置では、NO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環されるが、図23の汚水処理装置は、好気処理槽6c(1)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19aを介して無酸素処理槽6b(1)へ循環され、好気処理槽6c(2)の混合液は、担体17と共に循環液管(担体返送管)19bを介して無酸素処理槽6b(2)へ循環される構造としている。
これにより、生物反応槽6における処理段階に応じて好気処理槽混合液を無酸素処理槽6bへ循環させることができるため、微生物の適用性を高め効率的な汚水処理(窒素除去やリン除去を含む)を安定して行うことができる。
【0066】
図24は、本発明の実施の形態6の(図6)の別の変形例を示し、図19の汚水処理装置に関連する。図19の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が担体投入型活性汚泥処理槽であるが、図24の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が通常の活性汚泥処理槽であり、NO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は循環液管19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環される。
【0067】
図25は、本発明の実施の形態6の(図6)の更に別の変形例を示し、図20の汚水処理装置に関連する。図20の汚水処理装置では、分岐する分離水管26によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造となっているが、図25の汚水処理装置では、分岐する分離水管27によって、処理対象である分離水3が無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造としている。
これにより、嫌気処理槽6aでは分離水3が導入されないため十分に嫌気性が保たれて良好に嫌気処理(リン蓄積菌のリン放出など)を行うことができる。
【0068】
図26は、本発明の実施の形態6の(図6)の他の変形例を示し、図21の汚水処理装置に関連する。図21の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が担体投入型活性汚泥処理槽であるが、図26の汚水処理装置では、好気処理槽6c(1)および6c(2)が通常の活性汚泥処理槽であり、NO3-やNO2-を含む好気処理槽6c(2)の混合液は循環液管19を介して無酸素処理槽6b(1)へ循環される。
【0069】
図27は、本発明の実施の形態6の(図6)の更に他の変形例を示し、図22の汚水処理装置に関連する。図22の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっているが、図27の汚水処理装置では、分岐する分離水管26によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造としている。これにより、分離水3は、水量、水質、有機物(BOD)の状況等に応じて、適宜生物反応槽6内へ導入することができる。
【0070】
図28は、本発明の実施の形態6の(図6)の変形例を示し、図23の汚水処理装置に関連する。図23の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっているが、図28の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(1)に導入できる構造としている。
【0071】
図29は、本発明の実施の形態6の(図6)の別の変形例を示し、図23の汚水処理装置に関連する。図23の汚水処理装置では、分岐する分離水管21によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aおよび無酸素処理槽6b(2)に導入できる構造となっているが、図29の汚水処理装置では、分離水管5によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aに導入できる構造としている。
これにより、導入された分離水3は、水量が多くても生物反応槽6で十分に処理(窒素除去やリン除去を含む)することができる。
【0072】
図30は、本発明の実施の形態6の(図6)の更に別の変形例を示し、図29の汚水処理装置に関連する。図29の汚水処理装置では、分離水管5によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6aに導入できる構造になっているが、図30の汚水処理装置は、分岐する分離水管26によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造としている。
これにより、分離水3は、水量、水質、有機物(BOD)の状況等に応じて、適宜生物反応槽6内へ導入することができる。
【0073】
図31は、本発明の実施の形態6の(図6)の他の変形例を示し、図30の汚水処理装置に関連する。図30の汚水処理装置では、分岐する分離水管26によって、処理対象である分離水3が嫌気処理槽6a、無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造となっているが、図31の汚水処理装置は、分岐する分離水管27によって、処理対象である分離水3が無酸素処理槽6b(1)および6b(2)に導入できる構造としている。
これにより、嫌気処理槽6aでは分離水3が導入されないため十分に嫌気性が保たれて良好に嫌気処理(リン蓄積菌のリン放出など)を行うことができる。
【実施例】
【0074】
実施例1.
図6に示す実施の形態6については、実施例1として説明する。
【0075】
図32は、実施例1(図6)の汚水処理装置において、従来技術である分離槽2(最初沈殿池)へ凝集剤を添加して化学的に分離水3(汚水)に含まれるリンを除去した期間(以下、凝集剤添加実施期間)、一般的な(従来の)運転操作で生物処理を行った期間(以下、未実施期間)、および本発明にかかる濃縮機8を稼動させ濃縮分離液10を嫌気処理槽6aへ移送して生物処理を行った期間(以下、実施例1実施期間)における分離水3および処理水(沈殿槽13流出水)のリン濃度の経日変動を示す。
実施例1において、分離水3のリン濃度は各期間において変動しているが、凝集剤添加実施期間と実施例1実施期間において、処理水のリン濃度は放流規制値(通常1.0mg/L)を十分に下回る結果であった。未実施期間における分離水3のリン濃度は、他の期間に比べて低濃度であったが、処理水のリン濃度は放流規制値以下ではあるものの、凝集剤添加実施期間や実施例1実施期間と比較して高く、また不安定であった。
【0076】
以上の結果より、実施例1に示した本発明にかかる汚水処理装置は、濃縮機8により分離汚泥4に含まれる生物分解し易い有機物(BOD)を適時に効率よく回収し、これを嫌気処理槽6aに移送することにより、従来技術である分離水3(汚水)へ凝集剤を添加する化学的処理と同等の安定したリン除去が行えるという優れた効果が得られる。
【0077】
実施例2乃至5.
以下、図4に示す実施の形態4については、実施例2として説明し、図7に示す実施の形態3の変形例については、実施例3として説明し、図8に示す実施の形態3の変形例については、実施例4として説明し、図14に示す実施の形態3の変形例については、実施例5として説明する。
【0078】
【表1】

【0079】
表1は、実施例2乃至5の処理結果の一覧である。表中、全リン(T−P)ならびに全窒素(T−N)の単位はmg/Lであり、数値はそれぞれ実施期間の平均値である。
【0080】
実施例2.
実施例2は、いわゆる担体投入型のA2O法を用いた本発明にかかる汚水処理装置の処理結果である。従来の汚水処理装置(担体投入型のA2O法)の処理結果と比較して、処理水のリン、窒素は共に低い値となり、良好な結果が得られた。
【0081】
実施例3.
実施例3は、いわゆる担体投入型の循環式硝化脱窒法を用いた本発明にかかる汚水処理装置の処理結果である。窒素除去に優れた処理方式であるため、従来の汚水処理装置(担体投入型の循環式硝化脱窒法)の処理結果と比較して、リン除去に明確な差異は見られないが、窒素除去については良好な結果が得られた。
【0082】
実施例4.
実施例4は、リン除去を目的としたいわゆる嫌気好気処理法を用いた本発明にかかる汚水処理装置の処理結果である。従来の汚水処理装置(嫌気好気処理法)の処理結果と比較して、リン除去について明らかに優れており、良好な結果が得られた。さらに、窒素除去についても良好な結果が得られた。
【0083】
実施例5.
実施例5は、いわゆる担体投入型のステップ流入式硝化脱窒法を用いた本発明にかかる汚水処理装置の処理結果である。従来の汚水処理装置(担体投入型のステップ流入式硝化脱窒法)の処理結果と比較して、リン除去に明確な差異は見られないが、窒素除去については明らかに優れており、良好な結果が得られた。
【0084】
以上、実施例2〜5の結果からもわかるように、本発明にかかる汚水処理装置は、既存の様々なリン除去や窒素除去の処理技術に適用した場合においても、脱窒菌やリン蓄積菌が利用し易い有機物(BOD)を確実に且つ的確に供給(移送)できるため、従来の汚水処理装置に比べ、窒素やリンを安定して効率的に除去できる処理性能の高いものである。
【0085】
上述した実施の形態、変形例、図、実施例の相互の関係について、分かり易くするために、以下のように表にまとめた。
【0086】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態1の全体を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2の全体を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3の全体を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態4の全体を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態5の全体を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施の形態6の全体を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施の形態3の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3の別の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3のさらに別の変形例を示す図である。
【図10】図9に示す本発明の実施の形態3の変形例を示す図である。
【図11】図9に示す本発明の実施の形態3別の変形例を示す図である。
【図12】図10における実施の形態3の変形例を示す図である。
【図13】図11における実施の形態3の変形例を示す図である。
【図14】図7における実施の形態3の変形例を示す図である。
【図15】図14における実施の形態3の変形例を示す図である。
【図16】図15における実施の形態3の変形例を示す図である。
【図17】図16における実施の形態3の別の変形例を示す図である。
【図18】図6における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図19】図18における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図20】図18における実施の形態6の別の変形例を示す図である。
【図21】図18における実施の形態6のさらに別の変形例を示す図である。
【図22】図18における実施の形態6のさらに別の変形例を示す図である。
【図23】図18における実施の形態6のさらに別の変形例を示す図である。
【図24】図19における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図25】図20における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図26】図21における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図27】図22における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図28】図23における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図29】図23における実施の形態6の別の変形例を示す図である。
【図30】図29における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図31】図30における実施の形態6の変形例を示す図である。
【図32】分離水および処理水のリン濃度の経日変動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 汚水
2 分離槽
3 分離水
4 分離汚泥
5、21、26、27 分離水管
6 生物反応槽
6a 嫌気処理槽
6b、6b(1)、6b(2) 無酸素処理槽
6c、6c(1)、6c(2) 好気処理槽
7 分離汚泥管
8 濃縮機
9 濃縮汚泥
10 濃縮分離液
11、20、25 濃縮分離液移送管
12 流出管
13 沈殿槽
14 汚泥引抜管
15 処理水管
16 返送汚泥管
17 担体
18 担体流出防止板
19、19a、19b 担体返送管(循環液管)
22 濃縮汚泥返送管
23 分離槽
24 回転円筒
24a 回転軸
81 遠心濾過濃縮機
81a 回転バスケット
81b 濾布
82 遠心濃縮機
82a デカンタ
83 ベルト濃縮機
83a ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を分離水と分離汚泥に固液分離する分離槽と、
該分離槽の分離水を導入して好気的に生物処理する生物反応槽と、
前記分離槽の分離汚泥を導入して濃縮する濃縮機と、
該濃縮機から排出される濃縮分離液を前記生物反応槽へ移送する移送設備と
からなることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
前記生物反応槽は、
微生物を担持する担体が投入された担体投入型活性汚泥処理槽
であることを特徴とする請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項3】
前記生物反応槽は、
嫌気処理槽および/または無酸素処理槽を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の汚水処理装置。
【請求項4】
前記濃縮機から排出される濃縮汚泥を前記分離槽へ返送する返送設備を
備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項5】
前記分離槽は、複数の間隙が設けられ、汚水が流入する回転円筒を備えて
いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の汚水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−24725(P2012−24725A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167452(P2010−167452)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(391022418)株式会社西原環境 (21)
【Fターム(参考)】