汚泥フロック化装置及びそのフロック化装置を有する汚泥処理装置
【課題】固液分離装置に送られる汚泥をフロック化する汚泥フロック化装置において、固液分離装置に送られる前の汚泥から水分を分離して、汚泥の固形分濃度を高め、その濃度を高めた汚泥を固液分離装置に送ることにより、固液分離効率を高める。
【解決手段】汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング17と隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有する濾過体19と、固定リング17の外周面に摺接しながら、可動リング18を、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転させる加圧部材38とを具備し、濾過体19の濾液流入ギャップgを通して、濾過体19内に濾液を流入させて、汚泥の固形分濃度を高める。
【解決手段】汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング17と隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有する濾過体19と、固定リング17の外周面に摺接しながら、可動リング18を、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転させる加圧部材38とを具備し、濾過体19の濾液流入ギャップgを通して、濾過体19内に濾液を流入させて、汚泥の固形分濃度を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置によって処理される汚泥を、その処理に先立ってフロック化する汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置及び固液分離装置を有する汚泥処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥フロック化装置によってフロック化した汚泥を固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置は従来より周知である(例えば、特許文献1乃至4参照)。かかる汚泥処理装置によって汚泥を処理する際、固液分離装置に送り込まれる汚泥の固形分濃度(浮遊物濃度)が低いと、その汚泥から分離できる固形分の量が減少し、効率よく汚泥を固液分離することができない。そこで、汚泥から一部の液体を分離して、汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高まった汚泥を固液分離装置に送り込むことができるようにした汚泥フロック化装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0003】
従来提案されているこの形式の汚泥フロック化装置は、汚泥と凝集剤が送り込まれる混和槽と、その混和槽内に配置された濾過体と、その濾過体内に配置されたスクリューとを具備し、濾過体は、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有していて、混和槽内に送り込まれた汚泥をフロック化し、フロック化された汚泥中の液体を、濾過体の濾液流入ギャップを通して濾過体内に流入させるように構成されている。このようにして、濃度の高まった汚泥を固液分離装置に送り込むことが可能となる。
【0004】
ところが、従来提案されている汚泥フロック化装置によると、混和槽内のフロック、すなわち汚泥の固形分が濾過体のまわりにへばりつくように付着してしまうため、汚泥中の液体が、濾過体の濾液流入ギャップを通して濾過体内に入り難くなり、汚泥から充分な量の液体を分離できなくなる欠点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特開2004−357615号公報
【特許文献3】特開2001−198599号公報
【特許文献4】特開平9−220596号公報
【特許文献5】特開2007−54684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去し、固液分離装置によって処理される前の汚泥から従来よりも多量の液体を分離することのできる汚泥フロック化装置と、その汚泥フロック化装置及び固液分離装置を有する汚泥処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有する濾過体と、該濾過体外に配置されていて、混和槽に送り込まれた汚泥と凝集剤とを撹拌する撹拌手段と、前記可動リングの中心軸線が前記固定リングの中心軸線のまわりに公転するように、該可動リングを駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの外径は、前記固定リングの外径よりも大きく設定されていて、前記駆動装置は、前記固定リングの外周面に摺接し、かつ可動リングの外周面を加圧しながら、固定リングのまわりに回転して、可動リングを固定リングの中心軸線のまわりに公転させる加圧部材を有している汚泥フロック化装置を提案する。
【0008】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記駆動装置は、前記加圧部材のほかに、モータと、前記濾過体内に挿入されて、前記モータにより回転駆動される軸とを有し、前記加圧部材は前記軸に固定連結され、該加圧部材が、前記モータにより、前記軸の中心軸線のまわりに回転駆動されることにより、前記可動リングを、前記固定リングの中心軸線のまわりに公転させるように構成されていると有利である。
【0009】
また、上記汚泥フロック化装置において、可動リングの幅が固定リングの幅よりも大きく設定されていると有利である。
【0010】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記固定リングの外周面に摺接しながら、前記加圧部材と共に回転するクリーニング部材を具備していると有利である。
【0011】
また、上記汚泥フロック化装置において、前記撹拌手段は、前記軸に固定されていて、前記モータによって回転駆動される撹拌羽根を具備するように構成されていると有利である。
【0012】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記混和槽に送り込まれた汚泥から分離されて、前記濾過体内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備していると有利である。
【0013】
また、上記汚泥フロック化装置において、前記濾液流入量調整手段は、前記濾過体内に流入した濾液が越流する堰と、含液率の低下した汚泥が越流する堰の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されていると有利である。
【0014】
さらに、本発明は、上述の各汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置とを具備し、前記汚泥フロック化装置によって含液率の低下した汚泥を前記固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、濾過体の周りに付着した固形分をクリーニングすることができるので、従来よりも多量の液体を濾過体内に流入させ、従来よりも含液率の低下した汚泥を固液分離装置に送り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0017】
図1は、汚泥処理装置の全体を示す部分断面図である。ここに示した汚泥処理装置は、汚泥フロック化装置1と、その汚泥フロック化装置1によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置2とを有している。
【0018】
汚泥フロック化装置1は、図2に示すように混和槽3を有し、その混和槽3の側壁4には、フロック化される前の汚泥が混和槽3内に流入する汚泥入口5が形成されている。混和槽3の底壁6には、凝集剤が流入する凝集剤注入口7が形成され、混和槽3の上壁8には、減速機付きのモータ9が固定支持されている。このモータ9の出力軸(図示せず)には、混和槽3の内部を上下方向に延びる軸15の上端部が固定連結され、かかる軸15には、混和槽3内に配置された撹拌羽根10の上部の基端部が固定されている。モータ9が作動することによって、軸15がその中心軸線Xのまわりに回転駆動され、これによって撹拌羽根10がその中心軸線Xのまわりに回転駆動される。
【0019】
図1及び図2に示した汚泥処理装置によって固液分離できる汚泥としては、例えば、下水処理物、養豚場等から排出される廃水、ディスポーザにより粉砕された生ごみ、細かく砕かれてどろどろの状態となった野菜くず、廃牛乳、水の加えられた廃豆腐、その他の食品加工排水などの有機系汚泥や、メッキ廃油、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥などが挙げられるが、ここでは多量の水分を含む汚泥を処理するものとする。かかる汚泥は、必要に応じて、水処理系にて水処理された後、図示していない汚泥槽に貯留され、ここでその汚泥に例えばポリ硫酸第二鉄より成る凝集促進剤が添加される。次いで、その汚泥が図示していない計量装置によって計量され、固液分離装置2の処理能力に合った量の汚泥が、汚泥入口5から矢印Aで示すように混和槽3内に送り込まれる。この計量装置としては、例えば、前述の特許文献2又は3に記載されている計量槽、又は定量ポンプなどを用いることができる。混和槽3に送り込まれる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。
【0020】
一方、凝集剤注入口7から、矢印Bで示すように、混和槽3内に例えば高分子凝集剤より成る凝集剤が送り込まれる。このようにして混和槽3内に送り込まれた汚泥と凝集剤は、モータ9により回転駆動された撹拌羽根10によって混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。図2には、かかる汚泥に対して符号Sを付してある。このように、撹拌羽根10は、混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する用をなし、撹拌手段の一例を構成している。本例の撹拌手段は、軸15に固定されていて、モータ9によって回転駆動される撹拌羽根10を具備しているのである。
【0021】
上述のようにフロック化された汚泥は、図2の矢印Iで示すように、混和槽3の汚泥出口11から流出し、図1に示した導管12を通って、固液分離装置2に移送され、ここで固液分離される。汚泥を固液分離するための具体的構成と作用は従来より周知であるため、ここではその説明を省略する。固液分離装置2としては、例えば前述の特許文献1又は2に記載された固液分離装置などを広く採用することができる。
【0022】
固液分離装置2によって、汚泥から分離された水分、すなわち濾液は、図1に矢印Cで示すように受け部材13に受け止められ、ついで排出管14内を流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、他の汚泥と共に、再度、水処理され、次いで再び汚泥フロック化装置1に送り込まれてフロック化され、さらにそのフロック化された汚泥が固液分離装置2によって脱水処理される。排出管14内を流下する濾液を、直接川などに放流して廃棄することも可能である。
【0023】
一方、固液分離装置2によって、水分を分離されて含水量の減少した汚泥は、図1に矢印Dで示すように固液分離装置2から排出される。脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。図1には、固液分離装置2によって分離された濾液と、含水量の減少した汚泥についての図示は省略してある。
【0024】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、汚泥と凝集剤が送り込まれる混和槽3と、その混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する撹拌手段とを有している。かかる汚泥フロック化装置から固液分離装置に送られる汚泥の固形分濃度が低いと、固液分離装置において効率よく汚泥から水分を分離することができない。
【0025】
そこで、本例の汚泥フロック化装置1には、ここに送り込まれた汚泥から一部の水分を除去して、その汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高められた汚泥を固液分離装置2に送り込むことができるように、濾過体19が混和槽3の内部に設けられている。以下に、その濾過体19の具体的構成例を明らかにする。
【0026】
図2に示した濾過体19の一部を拡大して示す断面図である図3に示すように、濾過体19は、リング状に形成されたスペーサ20によって互いに上下方向に間隔をあけて配置された複数の固定リング17と、隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有している。
【0027】
図4は1つの固定リング17と、1つの可動リング18と、スペーサ20の外観を示す斜視図であり、図5は可動リング18と固定リング17の重なり状態を示す、図3のV−V線に沿う断面図である。図3乃至図5に示すように、複数の固定リング17は前述の軸15と同心状に配置され、これらの中心軸線は共通の軸線Xとなっている。なお、図2においては、固定リングと可動リングを簡略化して示すと共に、スペーサの図示を省略してある。
【0028】
図4及び図5に示すように、各固定リング17は、円環状に形成された基部21と、該基部21からその半径方向内方へ突出した複数の、図の例では3つの耳部22とから構成され、その各耳部22には取付孔23が形成されている。これらの取付孔23と、隣り合う固定リング17の間に配置された小リング状のスペーサ20の中心孔には、図2乃至図5に示すように、ステーボルト24がそれぞれ挿通されている。図2に示すように、その各ステーボルト24の上部に形成された雄ねじに、ナット25がそれぞれ螺着されて締め付けられている。
【0029】
一方、図2に示すように、混和槽3の底壁6には、その底壁6に形成された孔26に整合して、上壁27を有する逆カップ形状の台座28が、図示していないボルトとナットにより固定されている。上述の各ステーボルト24の下部は、この台座28の上壁27を貫通し、各ステーボルト24の下部に形成された雄ねじに、ナット29がそれぞれ螺着されて締め付けられている。このようにして、スペーサ20を介して上下方向に互いに間隔をあけて配列された多数の固定リング17は、一体的に固定連結され、混和槽3に対して固定される。但し、各固定リング17を、互いにわずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0030】
隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18は、図4及び図5に示すように、円環状に形成され、かかる可動リング18が、隣り合う固定リング17の環状の基部21の間に作動可能に配置されている。しかも、その各可動リング18は、前述のスペーサ20よりも、固定リングの半径方向外方に位置しており、これによって可動リング18が、隣り合う固定リング17の間から離脱することが阻止される。
【0031】
図3に示すように、可動リング18と固定リング17の厚さt,Tは、例えば1mm乃至3mmに設定され、隣り合う固定リング17の間の間隙Gは、可動リング18の厚さtよりも大きく設定され、固定リング17と可動リング18との間には、例えば0.1mm乃至1.0mm程の濾液流入ギャップgが形成されている。
【0032】
上述のように構成された濾過体19の外部に、前述の撹拌羽根10より成る撹拌手段が、図2に示すように配置されていて、該濾過体19の内部に前述の軸15が挿入されている。この軸15は、濾過体19に接触することはない。
【0033】
図2に示すように、混和槽3の底壁6には、これに形成された孔26と台座28に整合して位置する排液管32が、台座28と共に前述のボルトとナットとによって固定されている。
【0034】
図2のVII−VII線拡大断面図である図7と、図2とに示すように、台座28の上壁27には、この上壁27に形成された中心孔に整合して位置する軸受33が固定され、この軸受33に、軸15の下部が回転自在に嵌合している。これにより、軸15の下部が水平方向にずれ動く不具合が阻止される。また、上壁27には、複数の濾液流通孔34が形成されている。
【0035】
前述のように、汚泥と凝集剤が混和槽3内に送り込まれ、このときモータ9により撹拌羽根10が回転駆動され、これによって汚泥と凝集剤が撹拌され、汚泥がフロック化される。このとき、混和槽3内には、濾過体19が配置され、その濾過体19の固定リング17と可動リング18の間には、図3に示した微小な濾液流入ギャップgが形成されるので、混和槽3内のフロック化された汚泥の水分が、濾液流入ギャップgを通して濾過体19の内部に流入する。濾液流入ギャップgは、ここをフロックが通過しないほどの大きさに設定されているのである。
【0036】
上述のように、固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgを通って、濾過体19内に流入した水分、すなわち濾液は、その重力によって、濾過体19内を下方に流下し、台座28の上壁27に形成された濾液流通孔34を通過して、図2に矢印Eで示したように排液管32を通る。次いで、この濾液は、図1に矢印Fで示したように排液管32から流出し、濾液受け部材35に受け止められた後、矢印Jで示すように下方に流下する。この濾液は、固液分離装置2から排出された濾液と共に、再度、水処理され、次いで再び汚泥フロック化装置1に送り込まれてフロック化されるか、又は川などに直に放流される。このように、汚泥フロック化装置1の濾過体19の固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgを通って濾過体19内に流入した濾液は、直接、固液分離装置2に送られることはなく、固液分離装置2以外の個所に排出されるのである。なお、図面には、濾過体19内に流入した濾液の図示は省略してある。
【0037】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、混和槽3内に配置された濾過体19を具備し、その濾過体19が、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング17と、隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有し、混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する撹拌手段が濾過体外に配置されているので、混和槽3に送り込まれた汚泥をフロック化し、そのフロック化された汚泥中の液体を、濾過体19の濾液流入ギャップgを通して濾過体19内へ流入させることができる。このため、混和槽3に送り込まれた汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高まった汚泥を固液分離装置2に送り込むことができる。このようにして、汚泥フロック化装置1によって含液率の低下した汚泥を固液分離装置2によって、効率よく固液分離することができるのである。
【0038】
ところで、濾過体19の濾液流入ギャップgに汚泥の固形分が詰まったり、濾過体19のまわりに多量の水分を含んだ固形分がへばりつくように付着してしまえば、汚泥中の水分を濾過体19の内部に効率よく流入させることができなくなる。そこで、本例の汚泥フロック化装置1は、濾液流入ギャップgの目詰まりを防止できると共に、濾過体19のまわりに付着した固形分を効率よくクリーニングすることができるように構成されている。以下に、その具体的構成例を明らかにする。
【0039】
図8は、複数のスペーサ20と可動リング18の位置関係を説明する平面図である。この図に示すように、複数のスペーサ20の外側面に接する円OCを考えたとき、この円OCの直径ID1は、可動リング18の内径ID2よりも小さくなっている。このため、前述のように、可動リング18は、隣り合う固定リング17の間で可動であり、しかも隣り合う固定リング17の間から離脱することが阻止される。なお、この例においては、円OCの中心は、固定リング17の中心軸線Xに一致している。
【0040】
一方、図5に示すように、可動リング18の外径OD1は、固定リング17の外径OD2よりも、わずかに大きく設定されている。
【0041】
さらに、図9は、図2のIX−IX線に沿って切断すると共に、濾過体19及び撹拌羽根10などの図示を省略した拡大断面図であるが、この図と図2に示すように、前述の軸15には、その半径方向外方に延びるアーム36の基端部が固定され、そのアーム36の先端部には、丸棒より成る加圧部材38の上端部がナットによって固定されている。加圧部材38は、図2に示すように下方に延び、しかも図3及び図5に示したように、固定リング17と可動リング18の外周面に当接し、その可動リング18を加圧している。従って、図5に示すように、可動リング18の中心軸線Yは、固定リング17の中心軸線に対して、δで示すわずかな距離だけ位置をずらした状態で位置している。
【0042】
先に説明したように、モータ9が作動して、軸15が回転駆動されることにより、撹拌羽根10が軸15の中心軸線Xのまわりに回転するが、これと同時に、アーム36を介して、軸15に固定連結された加圧部材38も、軸15の中心軸線Xのまわりに回転する。これに対して、固定リング17は回転することはない。このとき、加圧部材38は、全ての可動リング18と全ての固定リング17の外周面に当接しているので、加圧部材38は、図5及び図6から判るように、固定リング17の外周面に摺接し、かつ可動リング18の外周面を加圧しながら、固定リング17の中心軸線Xのまわりに回転する。これにより、可動リング18は、その中心軸線Yが、図6に符号Kで示したように、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転しながら作動する。このように、可動リング18は、隣り合う固定リング17の間で積極的に作動するので、固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgに入り込んだ汚泥の固形分を効果的に排出させることができる。なお、図示した例では、図5に示したように、加圧部材38とスペーサ20が互いに向き合った状態に対向したとき、可動リング18は、その加圧部材38とスペーサ20とに接触して、これらによって挟まれた状態となる。
【0043】
また、加圧部材38は、可動リング18と固定リング17の外周面に摺接しながら、該固定リング17の中心軸線Xのまわりを回転するので、濾過体19のまわりに付着した水分を含む固形分は、加圧部材38によって効果的に掻き取られ、濾過体19のまわりに多量の固形分がへばりつくように付着することはない。加圧部材38が、可動リング18を作動させる働きと、濾過体19の外周をクリーニングする働きをなすのである。
【0044】
上述のように、濾液流入ギャップgの目詰まりを防止できると共に、濾過体19のまわりに多量の固形分がへばりつくことを防止できるので、汚泥から分離された多量の水分が濾過体19の内部に流入することができる。このように、汚泥フロック化装置1により含液率の低下させた汚泥を、固液分離装置2によって効率よく固液分離することができる。
【0045】
丸棒より成る加圧部材38に代えて、例えば角棒又はパイプなどの他の適宜な形態の加圧部材を用いることもできる。
【0046】
以上のように、本例の汚泥フロック化装置1は、可動リング18の中心軸線Yが固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転するように、該可動リング18を駆動する駆動装置を有しており、その駆動装置は、固定リング17の外周面に摺接し、かつ可動リング18の外周面を加圧しながら、固定リング17のまわりに回転して、可動リング18を固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転させる加圧部材38を有している。しかも、本例の駆動装置は、上記加圧部材38のほかに、モータ9と、濾過体19内に挿入されて、モータ9により回転駆動される軸15とを有し、加圧部材38は軸15に固定連結され、該加圧部材38がモータ9により軸15の中心軸線Xのまわりに回転駆動されることにより、可動リング18が、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転するように構成されている。
【0047】
また、図2に示すように、撹拌羽根10も、軸15に固定され、モータ9の作動によって回転駆動されるように構成されているので、撹拌羽根10と加圧部材38を別々のモータにより回転駆動する場合に比べ、汚泥フロック化装置の構造を簡素化でき、かつそのコストの低減を達成できる。
【0048】
また、本例の汚泥フロック化装置1においては、図5に示すように、可動リング18の幅W1が、固定リング17の幅W2よりもわずかに大きく設定されている。ここに言う固定リング17の幅W2は、図5から判るように、その固定リング17の環状の基部21の幅を意味している。これらの幅W1,W2を上述のように設定することによって、加圧部材38が1回転する間に、可動リング18が隣り合う固定リング17の隙間を必ず通過するので、濾液流入ギャップgに固形物が詰まる不具合をより効果的に阻止することができる。
【0049】
前述のように、加圧部材38は、濾過体19のまわりを清掃するクリーニング部材を兼ねており、この加圧部材38だけで、濾過体19のまわりを清掃することも可能であるが、その清掃効果をより一層高めるために、濾過体19の外周部を清掃する独立したクリーニング部材を用いることもできる。
【0050】
すなわち、図9に二点鎖線で示すように、アーム36に分岐アーム36Aを一体に固定連結し、その分岐アーム36Aに、ナットによってクリーニング部材40の上端部を固定する。ここに示したクリーニング部材40は丸棒により構成され、かかるクリーニング部材40が、前述の加圧部材38と同様に下方に延び、図5に示すように、全ての固定リング17と全ての可動リング18の外周面に当接している。
【0051】
前述の如く、モータ9が作動して軸15が回転駆動されるが、これによって、アーム36と分岐アーム36Aを介して軸15に固定されたクリーニング部材40も、加圧部材38と共に、軸15の中心軸線Xのまわりに回転する。このように、クリーニング部材40が、加圧部材38と同様に、固定リング17の外周面に摺接しながら回転することにより、濾過体19のまわりに付着した固形物を掻き取ることができる。
【0052】
上述のように、固定リング17の外周面に摺接しながら、加圧部材38と共に回転するクリーニング部材40を設けることによって、濾過体19に対するクリーニング効果を高めることができ、より一層多量の濾液を濾過体19の内部に流入させることが可能となる。
【0053】
丸棒より成るクリーニング部材40に代えて他の適宜な形態のクリーニング部材を用いることもできる。例えば、図10に示すように、芯軸41と、その芯軸41の表面に植設されたブラシ繊維42とから成るクリーニング部材40を用いることもできる。かかるクリーニング部材40の場合には、そのブラシ繊維42が固定リング17の外周面を摺接する。
【0054】
前述のように、本例の汚泥フロック化装置1によれば、濾過体19内に流入する水分の量を増大させ、固形分濃度の高い汚泥を固液分離装置に送り込むことができる。ところが、固液分離装置へ送られる汚泥の固形分濃度が高くなりすぎると不具合が発生することもある。例えば、汚泥フロック化装置1から排出された汚泥を、図1に示すようにポンプ44によって固液分離装置2に送るように構成した場合、その汚泥の固形分濃度が高くなりすぎると、当該汚泥がポンプ44に汚泥が詰まってしまうおそれがある。そこで、本例の汚泥フロック化装置1は、そのフロック化装置1から排出されて固液分離装置2に送られる汚泥の固形分濃度を調整できるように構成されている。以下に、その具体的構成例を説明する。
【0055】
図1及び図2に示すように、混和槽3の内部には、堰45が設けられ、含水率の低下した汚泥が、この堰45を越流して、固液分離装置2に送られるように構成されている。
【0056】
一方、濾過体19内に流入した濾液は、排液管32内を流れて、その排液管32から流出するが、図1及び図11に示すように、この排液管32の濾液排出口47の側に、濾液越流管46が嵌合している。排液管32の濾液排出口47から排出された濾液は、さらに濾液越流管46内を流れ、その濾液越流管46の上端の出口開口48から外部に越流して、濾液受け部材35に受け止められるのである。このように、濾液越流管46は、濾液が越流する堰を構成している。
【0057】
図11に示すように、濾液越流管46の内周面には雌ねじが形成され、その濾液越流管46が嵌合した排液管32の外周面には、その雌ねじにねじ係合する雄ねじが形成されていて、濾液越流管46をその中心軸線のまわりに回転させることによって、濾液越流管46の高さ、すなわちその出口開口48の高さH1を調整することができる。これに対し、図1に示した前述の堰45の上端の高さH2は一定している。濾液越流管46を回転することにより、堰45の上端の高さH2に対する濾液越流管46の出口開口48の高さH1を調整することができるのである。
【0058】
ここで、固液分離装置2に送り込まれる汚泥の固形分濃度を高める必要のあるときは、濾液越流管46を回して、その出口開口48の高さH1を低くする。堰45の高さH2に対する濾液越流管46の高さH1を低くするのである。これにより、濾液越流管46の出口開口48から越流する濾液の量が増えるので、濾過体19に流入する濾液の量が増大し、汚泥フロック化装置1から固液分離装置2へ移送される汚泥の固形分濃度を高めることができる。
【0059】
逆に、固液分離装置2に送り込まれる汚泥の固形分濃度をあまり高くしたくないときは、濾液越流管46を上述した場合と逆の方向に回転させて、その濾液越流管46を上方に移動させ、堰46の高さH2に対する濾液越流管46の高さH1を高くする。これにより、濾液越流管46の出口開口48から越流する濾液の量が減るので、濾過体19に流入する濾液の量が減少し、汚泥フロック化装置1から固液分離装置2へ移送される汚泥の固形分濃度を低下させることができる。
【0060】
汚泥の性状とポンプ44の性能などに応じて、上述のように汚泥フロック化装置1を流出する汚泥の固形分濃度を変えることができるので、いかなる性質の汚泥も、支障なく固液分離装置2に送り込んで、これを処理することができる。
【0061】
上述した例では、堰としての働きをなす濾液越流管46の高さH1を調整することによって、濾過体19内に流入する濾液の量を調整したが、堰45の高さH2を調整できるように構成し、或いはその堰45と濾液越流管46の高さを共に調整できるように構成して、濾過体19内に流入する濾液の量を調整することもできる。
【0062】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、混和槽3に送り込まれた汚泥から分離されて、濾過体19内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備しており、しかもその濾液流入量調整手段は、濾過体19内に流入した濾液が越流する堰の一例である濾液越流管46と、含液率の低下した汚泥が越流する堰45の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されている。濾液越流管46以外の堰を用いてもよいことは当然である。
【0063】
上述した具体例においては、スペーサ20として、固定リング17とは別部材の小リング状部材を用いたが、スペーサを固定リングに一体に形成することもできる。例えば、スペーサ20を、当該スペーサ20に隣接する2つの固定リングのうちの一方の固定リング17に一体に形成し、固定リング17とスペーサ20を1つの部品として構成する。より具体的に示すと、固定リング17とスペーサ20が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化し、或いは鋳造によって、これらを一体に成形することができる。或いは、素材を切削加工して、一体となった固定リング17とスペーサ20を製造することもできる。また固定リング17とスペーサ20を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することもできる。
【0064】
また、前述の各具体例においては、軸線方向に隣り合う固定リング17の間に1つの可動リング18が配置されているが、軸線方向に隣り合う固定リング17の間に複数の可動リング18を配置してもよいことは当然である。隣り合う固定リングの間に少なくとも1つの可動リングが配置されるのである。
【0065】
以上説明した汚泥フロック化装置1は、その濾過体19の固定リング17が上下方向に配列され、その中心軸線Xが上下に延びているが、その中心軸線が傾斜した状態となるように、濾過体19を配置することもできる。要は、濾過体19内に流入した濾液が、濾過体19の下部から外部に自重で流出できるように構成すればよいのである。
【0066】
また、以上説明した各構成は、特開平9−220596号公報に開示されているように、汚泥フロック化装置の混和槽を、第1の撹拌室と第2の撹拌室とに仕切り、その第1の撹拌室に汚泥と凝集促進剤を送り込んでこれらを撹拌し、次いでその汚泥を第2の撹拌室に送り込むと共に、第2の撹拌室に凝集剤を供給して、これらを撹拌することにより、汚泥をフロック化する汚泥フロック化装置にも適用できる。かかる汚泥フロック化装置の場合には、例えば、その第2の撹拌室に濾過体を設け、前述したところと全く同様にして、濾過体内に流入した濾液を固液分離装置以外の個所に排出させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】汚泥処理装置の一例を示す部分断面図である。
【図2】汚泥フロック化装置の拡大断面図である。
【図3】図2に示した濾過体の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】1つの固定リングと、1つの可動リングと、スペーサとを示す斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】加圧部材が図5に位置した位置からほぼ90°回転したときの様子を示す、図5と同様な断面図である。
【図7】図2のVII−VII線拡大断面図である。
【図8】複数のスペーサと可動リングの位置関係を説明する平面図である。
【図9】図2のIX−IX線拡大断面図である。
【図10】クリーニング部材の他の例を示す断面図である。
【図11】図1に示した排液管と濾液越流管の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 汚泥フロック化装置
2 固液分離装置
3 混和槽
9 モータ
10 撹拌羽根
15 軸
17 固定リング
18 可動リング
19 濾過体
38 加圧部材
40 クリーニング部材
45 堰
DO1,DO2 外径
H1,H2 高さ
X,Y 中心軸線
W1,W2 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置によって処理される汚泥を、その処理に先立ってフロック化する汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置及び固液分離装置を有する汚泥処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥フロック化装置によってフロック化した汚泥を固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置は従来より周知である(例えば、特許文献1乃至4参照)。かかる汚泥処理装置によって汚泥を処理する際、固液分離装置に送り込まれる汚泥の固形分濃度(浮遊物濃度)が低いと、その汚泥から分離できる固形分の量が減少し、効率よく汚泥を固液分離することができない。そこで、汚泥から一部の液体を分離して、汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高まった汚泥を固液分離装置に送り込むことができるようにした汚泥フロック化装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0003】
従来提案されているこの形式の汚泥フロック化装置は、汚泥と凝集剤が送り込まれる混和槽と、その混和槽内に配置された濾過体と、その濾過体内に配置されたスクリューとを具備し、濾過体は、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有していて、混和槽内に送り込まれた汚泥をフロック化し、フロック化された汚泥中の液体を、濾過体の濾液流入ギャップを通して濾過体内に流入させるように構成されている。このようにして、濃度の高まった汚泥を固液分離装置に送り込むことが可能となる。
【0004】
ところが、従来提案されている汚泥フロック化装置によると、混和槽内のフロック、すなわち汚泥の固形分が濾過体のまわりにへばりつくように付着してしまうため、汚泥中の液体が、濾過体の濾液流入ギャップを通して濾過体内に入り難くなり、汚泥から充分な量の液体を分離できなくなる欠点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特開2004−357615号公報
【特許文献3】特開2001−198599号公報
【特許文献4】特開平9−220596号公報
【特許文献5】特開2007−54684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去し、固液分離装置によって処理される前の汚泥から従来よりも多量の液体を分離することのできる汚泥フロック化装置と、その汚泥フロック化装置及び固液分離装置を有する汚泥処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有する濾過体と、該濾過体外に配置されていて、混和槽に送り込まれた汚泥と凝集剤とを撹拌する撹拌手段と、前記可動リングの中心軸線が前記固定リングの中心軸線のまわりに公転するように、該可動リングを駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの外径は、前記固定リングの外径よりも大きく設定されていて、前記駆動装置は、前記固定リングの外周面に摺接し、かつ可動リングの外周面を加圧しながら、固定リングのまわりに回転して、可動リングを固定リングの中心軸線のまわりに公転させる加圧部材を有している汚泥フロック化装置を提案する。
【0008】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記駆動装置は、前記加圧部材のほかに、モータと、前記濾過体内に挿入されて、前記モータにより回転駆動される軸とを有し、前記加圧部材は前記軸に固定連結され、該加圧部材が、前記モータにより、前記軸の中心軸線のまわりに回転駆動されることにより、前記可動リングを、前記固定リングの中心軸線のまわりに公転させるように構成されていると有利である。
【0009】
また、上記汚泥フロック化装置において、可動リングの幅が固定リングの幅よりも大きく設定されていると有利である。
【0010】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記固定リングの外周面に摺接しながら、前記加圧部材と共に回転するクリーニング部材を具備していると有利である。
【0011】
また、上記汚泥フロック化装置において、前記撹拌手段は、前記軸に固定されていて、前記モータによって回転駆動される撹拌羽根を具備するように構成されていると有利である。
【0012】
さらに、上記汚泥フロック化装置において、前記混和槽に送り込まれた汚泥から分離されて、前記濾過体内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備していると有利である。
【0013】
また、上記汚泥フロック化装置において、前記濾液流入量調整手段は、前記濾過体内に流入した濾液が越流する堰と、含液率の低下した汚泥が越流する堰の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されていると有利である。
【0014】
さらに、本発明は、上述の各汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置とを具備し、前記汚泥フロック化装置によって含液率の低下した汚泥を前記固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、濾過体の周りに付着した固形分をクリーニングすることができるので、従来よりも多量の液体を濾過体内に流入させ、従来よりも含液率の低下した汚泥を固液分離装置に送り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0017】
図1は、汚泥処理装置の全体を示す部分断面図である。ここに示した汚泥処理装置は、汚泥フロック化装置1と、その汚泥フロック化装置1によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置2とを有している。
【0018】
汚泥フロック化装置1は、図2に示すように混和槽3を有し、その混和槽3の側壁4には、フロック化される前の汚泥が混和槽3内に流入する汚泥入口5が形成されている。混和槽3の底壁6には、凝集剤が流入する凝集剤注入口7が形成され、混和槽3の上壁8には、減速機付きのモータ9が固定支持されている。このモータ9の出力軸(図示せず)には、混和槽3の内部を上下方向に延びる軸15の上端部が固定連結され、かかる軸15には、混和槽3内に配置された撹拌羽根10の上部の基端部が固定されている。モータ9が作動することによって、軸15がその中心軸線Xのまわりに回転駆動され、これによって撹拌羽根10がその中心軸線Xのまわりに回転駆動される。
【0019】
図1及び図2に示した汚泥処理装置によって固液分離できる汚泥としては、例えば、下水処理物、養豚場等から排出される廃水、ディスポーザにより粉砕された生ごみ、細かく砕かれてどろどろの状態となった野菜くず、廃牛乳、水の加えられた廃豆腐、その他の食品加工排水などの有機系汚泥や、メッキ廃油、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥などが挙げられるが、ここでは多量の水分を含む汚泥を処理するものとする。かかる汚泥は、必要に応じて、水処理系にて水処理された後、図示していない汚泥槽に貯留され、ここでその汚泥に例えばポリ硫酸第二鉄より成る凝集促進剤が添加される。次いで、その汚泥が図示していない計量装置によって計量され、固液分離装置2の処理能力に合った量の汚泥が、汚泥入口5から矢印Aで示すように混和槽3内に送り込まれる。この計量装置としては、例えば、前述の特許文献2又は3に記載されている計量槽、又は定量ポンプなどを用いることができる。混和槽3に送り込まれる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。
【0020】
一方、凝集剤注入口7から、矢印Bで示すように、混和槽3内に例えば高分子凝集剤より成る凝集剤が送り込まれる。このようにして混和槽3内に送り込まれた汚泥と凝集剤は、モータ9により回転駆動された撹拌羽根10によって混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。図2には、かかる汚泥に対して符号Sを付してある。このように、撹拌羽根10は、混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する用をなし、撹拌手段の一例を構成している。本例の撹拌手段は、軸15に固定されていて、モータ9によって回転駆動される撹拌羽根10を具備しているのである。
【0021】
上述のようにフロック化された汚泥は、図2の矢印Iで示すように、混和槽3の汚泥出口11から流出し、図1に示した導管12を通って、固液分離装置2に移送され、ここで固液分離される。汚泥を固液分離するための具体的構成と作用は従来より周知であるため、ここではその説明を省略する。固液分離装置2としては、例えば前述の特許文献1又は2に記載された固液分離装置などを広く採用することができる。
【0022】
固液分離装置2によって、汚泥から分離された水分、すなわち濾液は、図1に矢印Cで示すように受け部材13に受け止められ、ついで排出管14内を流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、他の汚泥と共に、再度、水処理され、次いで再び汚泥フロック化装置1に送り込まれてフロック化され、さらにそのフロック化された汚泥が固液分離装置2によって脱水処理される。排出管14内を流下する濾液を、直接川などに放流して廃棄することも可能である。
【0023】
一方、固液分離装置2によって、水分を分離されて含水量の減少した汚泥は、図1に矢印Dで示すように固液分離装置2から排出される。脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。図1には、固液分離装置2によって分離された濾液と、含水量の減少した汚泥についての図示は省略してある。
【0024】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、汚泥と凝集剤が送り込まれる混和槽3と、その混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する撹拌手段とを有している。かかる汚泥フロック化装置から固液分離装置に送られる汚泥の固形分濃度が低いと、固液分離装置において効率よく汚泥から水分を分離することができない。
【0025】
そこで、本例の汚泥フロック化装置1には、ここに送り込まれた汚泥から一部の水分を除去して、その汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高められた汚泥を固液分離装置2に送り込むことができるように、濾過体19が混和槽3の内部に設けられている。以下に、その濾過体19の具体的構成例を明らかにする。
【0026】
図2に示した濾過体19の一部を拡大して示す断面図である図3に示すように、濾過体19は、リング状に形成されたスペーサ20によって互いに上下方向に間隔をあけて配置された複数の固定リング17と、隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有している。
【0027】
図4は1つの固定リング17と、1つの可動リング18と、スペーサ20の外観を示す斜視図であり、図5は可動リング18と固定リング17の重なり状態を示す、図3のV−V線に沿う断面図である。図3乃至図5に示すように、複数の固定リング17は前述の軸15と同心状に配置され、これらの中心軸線は共通の軸線Xとなっている。なお、図2においては、固定リングと可動リングを簡略化して示すと共に、スペーサの図示を省略してある。
【0028】
図4及び図5に示すように、各固定リング17は、円環状に形成された基部21と、該基部21からその半径方向内方へ突出した複数の、図の例では3つの耳部22とから構成され、その各耳部22には取付孔23が形成されている。これらの取付孔23と、隣り合う固定リング17の間に配置された小リング状のスペーサ20の中心孔には、図2乃至図5に示すように、ステーボルト24がそれぞれ挿通されている。図2に示すように、その各ステーボルト24の上部に形成された雄ねじに、ナット25がそれぞれ螺着されて締め付けられている。
【0029】
一方、図2に示すように、混和槽3の底壁6には、その底壁6に形成された孔26に整合して、上壁27を有する逆カップ形状の台座28が、図示していないボルトとナットにより固定されている。上述の各ステーボルト24の下部は、この台座28の上壁27を貫通し、各ステーボルト24の下部に形成された雄ねじに、ナット29がそれぞれ螺着されて締め付けられている。このようにして、スペーサ20を介して上下方向に互いに間隔をあけて配列された多数の固定リング17は、一体的に固定連結され、混和槽3に対して固定される。但し、各固定リング17を、互いにわずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0030】
隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18は、図4及び図5に示すように、円環状に形成され、かかる可動リング18が、隣り合う固定リング17の環状の基部21の間に作動可能に配置されている。しかも、その各可動リング18は、前述のスペーサ20よりも、固定リングの半径方向外方に位置しており、これによって可動リング18が、隣り合う固定リング17の間から離脱することが阻止される。
【0031】
図3に示すように、可動リング18と固定リング17の厚さt,Tは、例えば1mm乃至3mmに設定され、隣り合う固定リング17の間の間隙Gは、可動リング18の厚さtよりも大きく設定され、固定リング17と可動リング18との間には、例えば0.1mm乃至1.0mm程の濾液流入ギャップgが形成されている。
【0032】
上述のように構成された濾過体19の外部に、前述の撹拌羽根10より成る撹拌手段が、図2に示すように配置されていて、該濾過体19の内部に前述の軸15が挿入されている。この軸15は、濾過体19に接触することはない。
【0033】
図2に示すように、混和槽3の底壁6には、これに形成された孔26と台座28に整合して位置する排液管32が、台座28と共に前述のボルトとナットとによって固定されている。
【0034】
図2のVII−VII線拡大断面図である図7と、図2とに示すように、台座28の上壁27には、この上壁27に形成された中心孔に整合して位置する軸受33が固定され、この軸受33に、軸15の下部が回転自在に嵌合している。これにより、軸15の下部が水平方向にずれ動く不具合が阻止される。また、上壁27には、複数の濾液流通孔34が形成されている。
【0035】
前述のように、汚泥と凝集剤が混和槽3内に送り込まれ、このときモータ9により撹拌羽根10が回転駆動され、これによって汚泥と凝集剤が撹拌され、汚泥がフロック化される。このとき、混和槽3内には、濾過体19が配置され、その濾過体19の固定リング17と可動リング18の間には、図3に示した微小な濾液流入ギャップgが形成されるので、混和槽3内のフロック化された汚泥の水分が、濾液流入ギャップgを通して濾過体19の内部に流入する。濾液流入ギャップgは、ここをフロックが通過しないほどの大きさに設定されているのである。
【0036】
上述のように、固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgを通って、濾過体19内に流入した水分、すなわち濾液は、その重力によって、濾過体19内を下方に流下し、台座28の上壁27に形成された濾液流通孔34を通過して、図2に矢印Eで示したように排液管32を通る。次いで、この濾液は、図1に矢印Fで示したように排液管32から流出し、濾液受け部材35に受け止められた後、矢印Jで示すように下方に流下する。この濾液は、固液分離装置2から排出された濾液と共に、再度、水処理され、次いで再び汚泥フロック化装置1に送り込まれてフロック化されるか、又は川などに直に放流される。このように、汚泥フロック化装置1の濾過体19の固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgを通って濾過体19内に流入した濾液は、直接、固液分離装置2に送られることはなく、固液分離装置2以外の個所に排出されるのである。なお、図面には、濾過体19内に流入した濾液の図示は省略してある。
【0037】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、混和槽3内に配置された濾過体19を具備し、その濾過体19が、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング17と、隣り合う固定リング17の間に配置された可動リング18とを有し、混和槽3に送り込まれた汚泥と凝集剤を撹拌する撹拌手段が濾過体外に配置されているので、混和槽3に送り込まれた汚泥をフロック化し、そのフロック化された汚泥中の液体を、濾過体19の濾液流入ギャップgを通して濾過体19内へ流入させることができる。このため、混和槽3に送り込まれた汚泥の固形分濃度を高め、その濃度の高まった汚泥を固液分離装置2に送り込むことができる。このようにして、汚泥フロック化装置1によって含液率の低下した汚泥を固液分離装置2によって、効率よく固液分離することができるのである。
【0038】
ところで、濾過体19の濾液流入ギャップgに汚泥の固形分が詰まったり、濾過体19のまわりに多量の水分を含んだ固形分がへばりつくように付着してしまえば、汚泥中の水分を濾過体19の内部に効率よく流入させることができなくなる。そこで、本例の汚泥フロック化装置1は、濾液流入ギャップgの目詰まりを防止できると共に、濾過体19のまわりに付着した固形分を効率よくクリーニングすることができるように構成されている。以下に、その具体的構成例を明らかにする。
【0039】
図8は、複数のスペーサ20と可動リング18の位置関係を説明する平面図である。この図に示すように、複数のスペーサ20の外側面に接する円OCを考えたとき、この円OCの直径ID1は、可動リング18の内径ID2よりも小さくなっている。このため、前述のように、可動リング18は、隣り合う固定リング17の間で可動であり、しかも隣り合う固定リング17の間から離脱することが阻止される。なお、この例においては、円OCの中心は、固定リング17の中心軸線Xに一致している。
【0040】
一方、図5に示すように、可動リング18の外径OD1は、固定リング17の外径OD2よりも、わずかに大きく設定されている。
【0041】
さらに、図9は、図2のIX−IX線に沿って切断すると共に、濾過体19及び撹拌羽根10などの図示を省略した拡大断面図であるが、この図と図2に示すように、前述の軸15には、その半径方向外方に延びるアーム36の基端部が固定され、そのアーム36の先端部には、丸棒より成る加圧部材38の上端部がナットによって固定されている。加圧部材38は、図2に示すように下方に延び、しかも図3及び図5に示したように、固定リング17と可動リング18の外周面に当接し、その可動リング18を加圧している。従って、図5に示すように、可動リング18の中心軸線Yは、固定リング17の中心軸線に対して、δで示すわずかな距離だけ位置をずらした状態で位置している。
【0042】
先に説明したように、モータ9が作動して、軸15が回転駆動されることにより、撹拌羽根10が軸15の中心軸線Xのまわりに回転するが、これと同時に、アーム36を介して、軸15に固定連結された加圧部材38も、軸15の中心軸線Xのまわりに回転する。これに対して、固定リング17は回転することはない。このとき、加圧部材38は、全ての可動リング18と全ての固定リング17の外周面に当接しているので、加圧部材38は、図5及び図6から判るように、固定リング17の外周面に摺接し、かつ可動リング18の外周面を加圧しながら、固定リング17の中心軸線Xのまわりに回転する。これにより、可動リング18は、その中心軸線Yが、図6に符号Kで示したように、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転しながら作動する。このように、可動リング18は、隣り合う固定リング17の間で積極的に作動するので、固定リング17と可動リング18との間の濾液流入ギャップgに入り込んだ汚泥の固形分を効果的に排出させることができる。なお、図示した例では、図5に示したように、加圧部材38とスペーサ20が互いに向き合った状態に対向したとき、可動リング18は、その加圧部材38とスペーサ20とに接触して、これらによって挟まれた状態となる。
【0043】
また、加圧部材38は、可動リング18と固定リング17の外周面に摺接しながら、該固定リング17の中心軸線Xのまわりを回転するので、濾過体19のまわりに付着した水分を含む固形分は、加圧部材38によって効果的に掻き取られ、濾過体19のまわりに多量の固形分がへばりつくように付着することはない。加圧部材38が、可動リング18を作動させる働きと、濾過体19の外周をクリーニングする働きをなすのである。
【0044】
上述のように、濾液流入ギャップgの目詰まりを防止できると共に、濾過体19のまわりに多量の固形分がへばりつくことを防止できるので、汚泥から分離された多量の水分が濾過体19の内部に流入することができる。このように、汚泥フロック化装置1により含液率の低下させた汚泥を、固液分離装置2によって効率よく固液分離することができる。
【0045】
丸棒より成る加圧部材38に代えて、例えば角棒又はパイプなどの他の適宜な形態の加圧部材を用いることもできる。
【0046】
以上のように、本例の汚泥フロック化装置1は、可動リング18の中心軸線Yが固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転するように、該可動リング18を駆動する駆動装置を有しており、その駆動装置は、固定リング17の外周面に摺接し、かつ可動リング18の外周面を加圧しながら、固定リング17のまわりに回転して、可動リング18を固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転させる加圧部材38を有している。しかも、本例の駆動装置は、上記加圧部材38のほかに、モータ9と、濾過体19内に挿入されて、モータ9により回転駆動される軸15とを有し、加圧部材38は軸15に固定連結され、該加圧部材38がモータ9により軸15の中心軸線Xのまわりに回転駆動されることにより、可動リング18が、固定リング17の中心軸線Xのまわりに公転するように構成されている。
【0047】
また、図2に示すように、撹拌羽根10も、軸15に固定され、モータ9の作動によって回転駆動されるように構成されているので、撹拌羽根10と加圧部材38を別々のモータにより回転駆動する場合に比べ、汚泥フロック化装置の構造を簡素化でき、かつそのコストの低減を達成できる。
【0048】
また、本例の汚泥フロック化装置1においては、図5に示すように、可動リング18の幅W1が、固定リング17の幅W2よりもわずかに大きく設定されている。ここに言う固定リング17の幅W2は、図5から判るように、その固定リング17の環状の基部21の幅を意味している。これらの幅W1,W2を上述のように設定することによって、加圧部材38が1回転する間に、可動リング18が隣り合う固定リング17の隙間を必ず通過するので、濾液流入ギャップgに固形物が詰まる不具合をより効果的に阻止することができる。
【0049】
前述のように、加圧部材38は、濾過体19のまわりを清掃するクリーニング部材を兼ねており、この加圧部材38だけで、濾過体19のまわりを清掃することも可能であるが、その清掃効果をより一層高めるために、濾過体19の外周部を清掃する独立したクリーニング部材を用いることもできる。
【0050】
すなわち、図9に二点鎖線で示すように、アーム36に分岐アーム36Aを一体に固定連結し、その分岐アーム36Aに、ナットによってクリーニング部材40の上端部を固定する。ここに示したクリーニング部材40は丸棒により構成され、かかるクリーニング部材40が、前述の加圧部材38と同様に下方に延び、図5に示すように、全ての固定リング17と全ての可動リング18の外周面に当接している。
【0051】
前述の如く、モータ9が作動して軸15が回転駆動されるが、これによって、アーム36と分岐アーム36Aを介して軸15に固定されたクリーニング部材40も、加圧部材38と共に、軸15の中心軸線Xのまわりに回転する。このように、クリーニング部材40が、加圧部材38と同様に、固定リング17の外周面に摺接しながら回転することにより、濾過体19のまわりに付着した固形物を掻き取ることができる。
【0052】
上述のように、固定リング17の外周面に摺接しながら、加圧部材38と共に回転するクリーニング部材40を設けることによって、濾過体19に対するクリーニング効果を高めることができ、より一層多量の濾液を濾過体19の内部に流入させることが可能となる。
【0053】
丸棒より成るクリーニング部材40に代えて他の適宜な形態のクリーニング部材を用いることもできる。例えば、図10に示すように、芯軸41と、その芯軸41の表面に植設されたブラシ繊維42とから成るクリーニング部材40を用いることもできる。かかるクリーニング部材40の場合には、そのブラシ繊維42が固定リング17の外周面を摺接する。
【0054】
前述のように、本例の汚泥フロック化装置1によれば、濾過体19内に流入する水分の量を増大させ、固形分濃度の高い汚泥を固液分離装置に送り込むことができる。ところが、固液分離装置へ送られる汚泥の固形分濃度が高くなりすぎると不具合が発生することもある。例えば、汚泥フロック化装置1から排出された汚泥を、図1に示すようにポンプ44によって固液分離装置2に送るように構成した場合、その汚泥の固形分濃度が高くなりすぎると、当該汚泥がポンプ44に汚泥が詰まってしまうおそれがある。そこで、本例の汚泥フロック化装置1は、そのフロック化装置1から排出されて固液分離装置2に送られる汚泥の固形分濃度を調整できるように構成されている。以下に、その具体的構成例を説明する。
【0055】
図1及び図2に示すように、混和槽3の内部には、堰45が設けられ、含水率の低下した汚泥が、この堰45を越流して、固液分離装置2に送られるように構成されている。
【0056】
一方、濾過体19内に流入した濾液は、排液管32内を流れて、その排液管32から流出するが、図1及び図11に示すように、この排液管32の濾液排出口47の側に、濾液越流管46が嵌合している。排液管32の濾液排出口47から排出された濾液は、さらに濾液越流管46内を流れ、その濾液越流管46の上端の出口開口48から外部に越流して、濾液受け部材35に受け止められるのである。このように、濾液越流管46は、濾液が越流する堰を構成している。
【0057】
図11に示すように、濾液越流管46の内周面には雌ねじが形成され、その濾液越流管46が嵌合した排液管32の外周面には、その雌ねじにねじ係合する雄ねじが形成されていて、濾液越流管46をその中心軸線のまわりに回転させることによって、濾液越流管46の高さ、すなわちその出口開口48の高さH1を調整することができる。これに対し、図1に示した前述の堰45の上端の高さH2は一定している。濾液越流管46を回転することにより、堰45の上端の高さH2に対する濾液越流管46の出口開口48の高さH1を調整することができるのである。
【0058】
ここで、固液分離装置2に送り込まれる汚泥の固形分濃度を高める必要のあるときは、濾液越流管46を回して、その出口開口48の高さH1を低くする。堰45の高さH2に対する濾液越流管46の高さH1を低くするのである。これにより、濾液越流管46の出口開口48から越流する濾液の量が増えるので、濾過体19に流入する濾液の量が増大し、汚泥フロック化装置1から固液分離装置2へ移送される汚泥の固形分濃度を高めることができる。
【0059】
逆に、固液分離装置2に送り込まれる汚泥の固形分濃度をあまり高くしたくないときは、濾液越流管46を上述した場合と逆の方向に回転させて、その濾液越流管46を上方に移動させ、堰46の高さH2に対する濾液越流管46の高さH1を高くする。これにより、濾液越流管46の出口開口48から越流する濾液の量が減るので、濾過体19に流入する濾液の量が減少し、汚泥フロック化装置1から固液分離装置2へ移送される汚泥の固形分濃度を低下させることができる。
【0060】
汚泥の性状とポンプ44の性能などに応じて、上述のように汚泥フロック化装置1を流出する汚泥の固形分濃度を変えることができるので、いかなる性質の汚泥も、支障なく固液分離装置2に送り込んで、これを処理することができる。
【0061】
上述した例では、堰としての働きをなす濾液越流管46の高さH1を調整することによって、濾過体19内に流入する濾液の量を調整したが、堰45の高さH2を調整できるように構成し、或いはその堰45と濾液越流管46の高さを共に調整できるように構成して、濾過体19内に流入する濾液の量を調整することもできる。
【0062】
上述のように、本例の汚泥フロック化装置1は、混和槽3に送り込まれた汚泥から分離されて、濾過体19内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備しており、しかもその濾液流入量調整手段は、濾過体19内に流入した濾液が越流する堰の一例である濾液越流管46と、含液率の低下した汚泥が越流する堰45の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されている。濾液越流管46以外の堰を用いてもよいことは当然である。
【0063】
上述した具体例においては、スペーサ20として、固定リング17とは別部材の小リング状部材を用いたが、スペーサを固定リングに一体に形成することもできる。例えば、スペーサ20を、当該スペーサ20に隣接する2つの固定リングのうちの一方の固定リング17に一体に形成し、固定リング17とスペーサ20を1つの部品として構成する。より具体的に示すと、固定リング17とスペーサ20が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化し、或いは鋳造によって、これらを一体に成形することができる。或いは、素材を切削加工して、一体となった固定リング17とスペーサ20を製造することもできる。また固定リング17とスペーサ20を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することもできる。
【0064】
また、前述の各具体例においては、軸線方向に隣り合う固定リング17の間に1つの可動リング18が配置されているが、軸線方向に隣り合う固定リング17の間に複数の可動リング18を配置してもよいことは当然である。隣り合う固定リングの間に少なくとも1つの可動リングが配置されるのである。
【0065】
以上説明した汚泥フロック化装置1は、その濾過体19の固定リング17が上下方向に配列され、その中心軸線Xが上下に延びているが、その中心軸線が傾斜した状態となるように、濾過体19を配置することもできる。要は、濾過体19内に流入した濾液が、濾過体19の下部から外部に自重で流出できるように構成すればよいのである。
【0066】
また、以上説明した各構成は、特開平9−220596号公報に開示されているように、汚泥フロック化装置の混和槽を、第1の撹拌室と第2の撹拌室とに仕切り、その第1の撹拌室に汚泥と凝集促進剤を送り込んでこれらを撹拌し、次いでその汚泥を第2の撹拌室に送り込むと共に、第2の撹拌室に凝集剤を供給して、これらを撹拌することにより、汚泥をフロック化する汚泥フロック化装置にも適用できる。かかる汚泥フロック化装置の場合には、例えば、その第2の撹拌室に濾過体を設け、前述したところと全く同様にして、濾過体内に流入した濾液を固液分離装置以外の個所に排出させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】汚泥処理装置の一例を示す部分断面図である。
【図2】汚泥フロック化装置の拡大断面図である。
【図3】図2に示した濾過体の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】1つの固定リングと、1つの可動リングと、スペーサとを示す斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】加圧部材が図5に位置した位置からほぼ90°回転したときの様子を示す、図5と同様な断面図である。
【図7】図2のVII−VII線拡大断面図である。
【図8】複数のスペーサと可動リングの位置関係を説明する平面図である。
【図9】図2のIX−IX線拡大断面図である。
【図10】クリーニング部材の他の例を示す断面図である。
【図11】図1に示した排液管と濾液越流管の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 汚泥フロック化装置
2 固液分離装置
3 混和槽
9 モータ
10 撹拌羽根
15 軸
17 固定リング
18 可動リング
19 濾過体
38 加圧部材
40 クリーニング部材
45 堰
DO1,DO2 外径
H1,H2 高さ
X,Y 中心軸線
W1,W2 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有する濾過体と、該濾過体外に配置されていて、混和槽に送り込まれた汚泥と凝集剤とを撹拌する撹拌手段と、前記可動リングの中心軸線が前記固定リングの中心軸線のまわりに公転するように、該可動リングを駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの外径は、前記固定リングの外径よりも大きく設定されていて、前記駆動装置は、前記固定リングの外周面に摺接し、かつ可動リングの外周面を加圧しながら、固定リングのまわりに回転して、可動リングを固定リングの中心軸線のまわりに公転させる加圧部材を有している汚泥フロック化装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記加圧部材のほかに、モータと、前記濾過体内に挿入されて、前記モータにより回転駆動される軸とを有し、前記加圧部材は前記軸に固定連結され、該加圧部材が前記モータにより前記軸の中心軸線のまわりに回転駆動されることにより、前記可動リングを、前記固定リングの中心軸線のまわりに公転させる請求項1に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項3】
可動リングの幅が固定リングの幅よりも大きく設定されている請求項1又は2に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項4】
前記固定リングの外周面に摺接しながら、前記加圧部材と共に回転するクリーニング部材を具備する請求項1乃至3のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項5】
前記撹拌手段は、前記軸に固定されていて、前記モータによって回転駆動される撹拌羽根を具備する請求項2乃至4のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項6】
前記混和槽に送り込まれた汚泥から分離されて、前記濾過体内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備する請求項1乃至5のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項7】
前記濾液流入量調整手段は、前記濾過体内に流入した濾液が越流する堰と、含液率の低下した汚泥が越流する堰の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されている請求項6に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置とを具備し、前記汚泥フロック化装置によって含液率の低下した汚泥を前記固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置。
【請求項1】
汚泥と凝集剤とが送り込まれる混和槽と、該混和槽内に設けられていて、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと隣り合う固定リングの間に配置された可動リングとを有する濾過体と、該濾過体外に配置されていて、混和槽に送り込まれた汚泥と凝集剤とを撹拌する撹拌手段と、前記可動リングの中心軸線が前記固定リングの中心軸線のまわりに公転するように、該可動リングを駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの外径は、前記固定リングの外径よりも大きく設定されていて、前記駆動装置は、前記固定リングの外周面に摺接し、かつ可動リングの外周面を加圧しながら、固定リングのまわりに回転して、可動リングを固定リングの中心軸線のまわりに公転させる加圧部材を有している汚泥フロック化装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記加圧部材のほかに、モータと、前記濾過体内に挿入されて、前記モータにより回転駆動される軸とを有し、前記加圧部材は前記軸に固定連結され、該加圧部材が前記モータにより前記軸の中心軸線のまわりに回転駆動されることにより、前記可動リングを、前記固定リングの中心軸線のまわりに公転させる請求項1に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項3】
可動リングの幅が固定リングの幅よりも大きく設定されている請求項1又は2に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項4】
前記固定リングの外周面に摺接しながら、前記加圧部材と共に回転するクリーニング部材を具備する請求項1乃至3のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項5】
前記撹拌手段は、前記軸に固定されていて、前記モータによって回転駆動される撹拌羽根を具備する請求項2乃至4のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項6】
前記混和槽に送り込まれた汚泥から分離されて、前記濾過体内に流入する濾液の量を調整する濾液流入量調整手段を具備する請求項1乃至5のいずれかに記載の汚泥フロック化装置。
【請求項7】
前記濾液流入量調整手段は、前記濾過体内に流入した濾液が越流する堰と、含液率の低下した汚泥が越流する堰の少なくとも一方の堰の高さを調整する装置により構成されている請求項6に記載の汚泥フロック化装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の汚泥フロック化装置と、該汚泥フロック化装置によってフロック化された汚泥を固液分離する固液分離装置とを具備し、前記汚泥フロック化装置によって含液率の低下した汚泥を前記固液分離装置によって固液分離する汚泥処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−213986(P2009−213986A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58846(P2008−58846)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【特許番号】特許第4318735号(P4318735)
【特許公報発行日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【特許番号】特許第4318735号(P4318735)
【特許公報発行日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]