説明

汚泥掻寄装置

【課題】水面のスカムの量に合わせて容易に飲み込み量を調整することのできる汚泥掻寄装置を提供する。
【解決手段】槽2の底部2bに堆積した汚泥を掻き寄せる複数のフライト30を支持する掻寄架台10と、槽2内に収容された処理水の水面3に浮上したスカムを吸い込むスカムパイプ54とを動力変換機構によって連動させることによって、フライト30を動かすための掻寄架台10の往復動作を利用して、スカムパイプ54の回動のためのみの動力源を導入することなく、効率よくスカムパイプ54を駆動させる。また、掻寄架台10の動きを変化させることで、スカムパイプ54の飲み込量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽の底に堆積した汚泥と水面のスカムを除去する汚泥掻寄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥掻寄装置として、槽内で循環運動することによって底に堆積した汚泥を掻き寄せる汚泥掻寄羽根と、その汚泥掻寄羽根の移動に伴って往復動作可能とされたカムとを備え、池上に設置されたスカム誘引・停止手段にカムの運動を伝達して開閉させることによって水面のスカムを除去する汚泥掻寄装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−84549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、水面のスカムの量は時期によって変化し易いものであり、その量にあわせて飲み込み量を調節する必要がある。しかし、上記汚泥掻寄装置にあっては、スカムの飲み込み量が汚泥掻寄羽根とスカム誘引・停止手段とカムとの構造により一義的に固定されているため、スカムの飲み込み量を変化させることができない。従って、飲み込み量を調整するためには機構自体を取り替えなければならないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、水面のスカムの量に合わせて容易に飲み込み量を調整することのできる汚泥掻寄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る汚泥掻寄装置によれば、槽内で該槽の長手方向に往復動する掻寄架台と、掻寄架台に支持され、槽の底部に堆積した汚泥を掻き寄せる複数の汚泥掻寄羽根と、槽内に収容された処理水の水面に浮上したスカムを吸い込む開口部を有し、該水面の高さにおいて該槽の短手方向に横架されて、該開口部が該処理水に対し出没するように回動可能に支持されたスカムパイプと、掻寄架台の往復動をスカムパイプの回動に変換させる動力変換機構と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この汚泥掻寄装置によれば、汚泥掻寄羽根を動かすための掻寄架台の往復動作を利用して、スカムパイプの回動のためのみの動力源を導入することなく、効率よくスカムパイプを回動させることができる。また、掻寄架台とスカムパイプの間を動力変換機構によって連動させているため、掻寄架台の動きを変化させることで、スカムパイプの飲み込量を変化させることができる。これによって、水面のスカムの量にあわせて容易に飲み込み量を調節することができる。
【0007】
本発明に係る汚泥掻寄装置において、動力変換機構は、一端において回動可能に軸支されたリフトバーと、掻寄架台と一体に往復動し、リフトバーの下面と係動させて、該リフトバーを回動させるリフトピンと、一端がリフトバーの他端に接続され、他端がスカムパイプに接続されて、該リフトバーの回動に応じて該スカムパイプを回動させるように両者をリンクするリンク機構と、を有することが好ましい。
【0008】
この汚泥掻寄装置によれば、掻寄架台の移動に伴ってリフトピンがリフトバーの方向へ移動すると、リフトバーの下面を係動して押し上げることによって、そのリフトバーを一端側を軸として回動させる。その回動がリンク機構を介してスカムパイプに伝えられると、スカムパイプも回動し、水面上に出ていた開口部が水中に没してスカムを吸い込む。また、掻寄架台に伴ってリフトピンが逆方向へ移動すると、持ち上げられたリフトバーは自重で元の位置に戻り、それに連動してスカムパイプの開口部も水面から再び出てスカムの吸い込みが中断される。このような構成によって、汚泥掻寄羽根を動かすための掻寄架台の往復動作を利用して、スカムパイプの回動のためのみの動力源を導入することなく、効率よくスカムパイプを回動させることができる。また、掻寄架台の停止時間やリフトピンの往復動作のストロークを調節してリフトバーの持ち上がる高さや時間を変化させることで、スカムパイプの飲み込量を変化させることができる。これによって、水面のスカムの量にあわせて容易に飲み込み量を調節することができる。
【0009】
本発明に係る汚泥掻寄装置において、リンク機構は、スカムパイプと一体に回動するスカムバーと、一端がリフトバーの他端に軸支されると共に、他端がスカムバーに軸支され、上下方向に延びるリフトシャフトと、を有することが好ましく、これによればリフトバーが押し上げられると、リフトシャフトとスカムバーを介してスカムパイプが回動してスカムの飲み込みを行うため、簡単な構造で確実にスカムの除去を行うことができる。
【0010】
本発明に係る汚泥掻寄装置において、リフトピンは、掻寄架台の通常の後退限位置ではリフトバーに係止しない位置に設けられ、掻寄架台を通常の後退限位置よりも後退させたとき、リフトピンがリフトバーに係止することが好ましく、これによれば、通常時はスカムを吸い込むことなく汚泥を掻き寄せ、必要な時にのみ掻寄架台を通常の後退限位置よりも後退させてスカムを吸い込むことができるため、一層容易にスカムの飲み込み量を調整することができる。
【0011】
本発明に係る汚泥掻寄装置において、掻寄架台の所定回数の往復動毎に、該掻寄架台を通常の後退限位置よりも後退させることが好ましく、これによれば掻寄架台を通常の後退限位置よりも後退させる回数を調整するだけで、容易にスカムの飲み込み量を調整することができる。
【0012】
本発明に係る汚泥掻寄装置において、複数の汚泥掻寄羽根のうち汚泥ピットから最も離れた汚泥掻寄羽根は、掻寄架台を通常の後退限位置よりも後退させた後の往動時に、該通常の後退限位置で掻き寄せられる掻寄限界位置よりも後ろに堆積した汚泥を掻き寄せることが好ましい。この汚泥掻寄装置によれば、汚泥がたまりにくい掻寄限界位置より後ろ側の底に対しては、新たな汚泥掻寄羽根を追加することなく、必要な頻度で効率よく掻き寄せることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る汚泥掻寄装置によれば、水面のスカムの量に合わせて容易に飲み込み量を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による汚泥掻寄装置の好適な実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る汚泥掻寄装置を示す図、図2は、図1中のフライト(汚泥掻寄羽根)及びリフトバーの取付部近傍の拡大図、図3〜図7は、フライトの各状態説明図、図8及び図9は、リフトバーの各状態説明図、図10及び図11は、汚泥掻寄装置の制御フローチャートである。なお、図3〜7は、槽の汚泥ピットから最も離れたフライトの状態を示しており、説明の便宜上スカム除去部の構成は省略している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の汚泥掻寄装置1は、例えば、下水処理場の沈殿池等に配置され、槽2の底部2bに堆積する汚泥等を汚泥ピット2aに向けて掻き寄せるとともに、槽2の水面3に浮上するスカム等を除去するものである。
【0017】
この汚泥掻寄装置1は、槽2内で長手方向に往復動する掻寄架台10と、この掻寄架台10の下部側に揺動可能に支持され、槽2の底部2bに堆積した汚泥を掻き寄せるフライト(汚泥掻寄羽根)30と、掻寄架台10を槽2の底部2bに対して略平行に往復動作させる駆動装置40と、掻寄架台10の往復動作を利用してスカムを除去するスカム除去部50と、駆動装置40を制御する制御部60を具備している。
【0018】
槽2は、図1に示すように、長手方向に沿って垂直に切った断面が略矩形状を成し、図1の左側から汚水が供給され(槽2の長手方向へ向かって汚水を供給する)、槽2の汚水供給側底部には、汚泥ピット2aが設けられ、掻き寄せられた汚泥はその汚泥ピット2aに収集される。なお、槽2の下流側底部2cは、通常の底部2bに比べて、堆積する汚泥の量は少ない。
【0019】
図1及び図2に示すように、槽2の長手方向に往復動作する掻寄架台10、この掻寄架台10を支持すると共に往復動作を案内するガイドユニット20、フライト30の構造及び動作は、特開2003−181209号公報に記載のものとほぼ同等である。具体的には、掻寄架台10は、この掻寄架台10の車輪を構成する主ローラ11を両端に有する複数の主ローラ支持軸12と、長手方向に延びる2本の平行な駆動方向材13とを備え、これらの主ローラ支持軸12と駆動方向材13とが、図2に示すように、結合板12a,13aを介して、互いに直角に交差することにより梯子状に構成されている。主ローラ11は、図1及び図2に示すように、槽2の長手方向に平行な一対の側壁2dに設置された横断面形状が略コ字状のレールを上下2段備えるガイドユニット20の上段の主ガイドレール21内に収容され支持されると共にその走行が案内され、図1に示すように、駆動装置40を構成するモータ41が回転することにより、その駆動力がチェーン42を介して掻寄架台10へ伝達され、当該掻寄架台10が往復動作する。
【0020】
この掻寄架台10が往動する際には、図3〜図7に示すように、掻寄架台10の主ローラ支持軸12に、この軸回りに揺動可能なフライトアーム31を介して接続されたフライト30が、垂下した第一の揺動位置で、槽2の底部2bに堆積した汚泥を汚泥ピット2aに向けて掻き寄せる。このとき、フライトアーム31から側壁2dへ向かうように張り出した副ローラ32は、図3に示すように、ガイドユニット20の下段に設置された副ガイドレール22の下面に揺動可能に設けられると共にこの副ガイドレール22の下方に略30度の傾斜面を形成するように張り出した下側案内フラップ33を、図4に示すように、ばね力に抗して押し退けて往動する。
【0021】
副ローラ32は、副ガイドレール22の下面に形成され往動方向に隣接する開口部34下を通り過ぎると(この時の掻寄架台10の位置を前進限位置とする)、モータ41が逆回転(図示反時計回り)して掻寄架台10が復動を始め、副ローラ32が下側案内フラップ33の傾斜面に沿って上昇し、上記開口部34を通して副ガイドレール22内に進入する。このとき、フライトアーム31は、図示時計回りに回動して傾斜状態とされ、図5に示すように、フライト30が底部2bと離間した状態とされて、掻き寄せた汚泥を逆方向(復動方向)に掻き戻すこと無く掻寄架台10が復動する。副ローラ32が復動方向に隣接する開口部34に近づくと、副ガイドレール22の下面に揺動可能に設置されると共に上方に延びる上側案内フラップ35をばね力に抗して押し倒して開口部34上を通過する。副ローラ32が開口部34上を通過したら(この時の掻寄架台10の位置を後退限位置とする)、モータ41がさらに逆方向に回転し図示時計回りに回転して掻寄架台10が再び往動を始め、図6に示すように、副ローラ32が下側案内フラップ33の傾斜面に沿って降下して副ガイドレール22外へ案内される。このような一連の動作が繰り返されて、底部2bに堆積した汚泥が、汚泥ピット2aへと運ばれる。ここで、図3〜7において、槽2の底部2bでフライト30が通常掻き寄せることのできる限界位置を掻寄限界位置Lとする。
【0022】
なお、主ガイドレール21を省略し、副ガイドレール22上面を主ガイドレールとしてもよい。
【0023】
また、下側案内フラップ33のばねを省略し、下側案内フラップ33を自動で動作するようにしてもよい。
【0024】
また、上側案内フラップ35のばねに代えて、上側案内フラップ35の端部にカウンタウエイトを設置して動作するようにしてもよい。
【0025】
ここで、本発明の特徴的な動作について説明する。汚泥の堆積の少ない下流側底部2cは、他の領域と同じ頻度で掻き寄せる必要はないため、所定回数の掻き寄せ動作のうち一回だけ掻き寄せることとする。すなわち、上述の往復運度を所定回数繰り返すと、復動している掻寄架台10は、後退限位置を通過しても、図7に示すように、引き続き復動を続行し、そのまま進んで汚泥ピット2aから最も離れた位置に配置される上側案内フラップ35aを押し倒して開口部34aを通過し、副ローラ32が開口部34a上を通過したら、モータ41がさらに逆方向に回転し図示時計回りに回転して掻寄架台10が再び往動を始め、副ローラ27が下側案内フラップ33aの傾斜面に沿って降下して副ガイドレール22外へ案内され、下流側底部2cに堆積した汚泥を汚泥ピット2aに向けて掻き寄せる。
【0026】
上述のような動作(以下、「スカム吸引動作」とする)が、所定回数の往復動毎に行なわれることによって、掻寄限界位置より後ろ側の汚泥がたまりにくい下流側底部2cに対しては、新たなフライト30を追加することなく、必要な頻度で効率よく掻き寄せることができる。
【0027】
なお、図2及び図3〜7に示すように、主ローラ支持軸12に固定された固定板12aには、フライトアーム31の垂下状態から図示反時計回りのそれ以上の回動を阻止するアームストッパ36が固定され、下側案内フラップ33に対しては、上記傾斜状態から図示反時計回りのそれ以上の回動を阻止するストッパ36が設けられ、図3〜図7に示すように、案内フラップ33,35には、副ローラ32により回動された位置から元の位置(図3〜図7に示す位置)に円滑に復帰させるためのバネ37、38が各々設けられている。これらのバネ37、38に代えてウエイトを設けても良い。
【0028】
このような一連の掻寄架台10及び副ローラ32の動作によりフライト30は揺動し、汚泥ピット2a側へ所定区間(開口部34,34同士間の距離)掻き寄せられた汚泥は、下側案内フラップ33より汚泥ピット2a側の位置で、一時堆積したままの状態になり、その後、復動して戻って来た汚泥ピット2a側の隣のフライト30により、さらに、汚泥ピット2a側へ所定区間掻き寄せられ、汚泥は所定区間毎に一つのフライト30で順送りにされ、汚泥ピット2a迄掻き寄せられて排出される。
【0029】
スカム除去部50は、図2、図8及び図9に示すように、掻寄架台10の往復動作に合わせて動くリフトピン51と、リフトピン51によって持ち上げられるリフトバー52と、リフトバー52を回動可能に軸支する支持部材53と、スカムを吸い込むスカムパイプ54と、スカムパイプ54と一体に回転するスカムバー55と、スカムバー55とリフトバー52とを接続するリフトシャフト56とを備えている。
【0030】
リフトピン51は、図2に示すように、掻寄架台10の駆動方向材13を挟み込むことで固定されているリフトピン固定部材51aから、側壁2dへ向かって円柱状のピンが延在することで形成されている。このリフトピン51は、掻寄架台10が通常の後退限位置まで移動してもリフトバー52の手前で反転し接触することはないが、スカム吸引時には、リフトバー52の下面52aに係止する位置に配置されている。
【0031】
リフトバー52は、ガイドユニット20に固定された支持部材53によって端部52bを支点として回動可能に軸支されており、下面52aにリフトピン51が入り込むよう傾斜をなしつつ汚泥ピット2a側へ向かって延びている。なお、支持部材53には、リフトバー52が下方へ回動するのを防止するためのストッパ53aがリフトバー52の端部52bの下面52a側に設けられている。
【0032】
スカムパイプ54は、槽の下流側の水面3に、槽2の短手方向である幅全域に亘って横置きされている。このスカムパイプ54は、軸回りに回動可能に支持され、周面に長手方向に延びる開口部54aを備えている。スカムパイプ54は、横断面形状がC字状を成し、通常時はスカムを飲み込まないように開口部54aが上方を向いて水面から出るように配置されている。そして、回動して開口部54aが水中に没することによって、水面上のスカムを飲み込むようにされている。
【0033】
スカムバー55は、スカムパイプ54の長手方向の端部から斜め下に向かって延在することで形成されており、スカムパイプ54と一体的に固定されており、上方に持ち上げられることによって、スカムパイプ54を回転させるものである。
【0034】
リフトシャフト56は、上下方向に延びて一端がリフトバー52の端部52cに軸支されるとともに、他端がスカムバー55の端部55aに軸支されることによって、リフトバー52とスカムバー55とを連結するものである。
【0035】
このように構成されたスカム除去部50においては、掻寄架台10が通常の後退限位置よりも後退したとき、その掻寄架台10の移動に伴って移動するリフトピン51が、リフトバー52の端部52c側の下面52aに係止し、そのまま移動することによって、図9に示すように、リフトバー52を下面側から押し上げながら端部52bを中心に回動させる。
【0036】
この時、リフトバー52の回動によって、その端部52cに接続されたリフトシャフト56も同時に上方へ押し上げられるとともに、スカムバー55も押し上げられることによって、スカムパイプ54を回転させる。このような動作によって、通常時には上方を向いて水面3から出ている開口部54aが水中に没し、水面上のスカムを飲み込んで除去する。
【0037】
そして、一定時間が経過すると、掻寄架台10は往動をはじめ、それに伴ってリフトピン51が移動し、リフトピン51に持ち上げられていたリフトバー52は、自重で元の位置に戻り、それに連動してスカムパイプ54の開口部54aも水中から再び出てスカムの吸い込みが中断される。
【0038】
以上のように、本実施形態にあっては、フライト30を動かすための掻寄架台10の往復動作を利用して、効率よくスカムパイプ54を駆動させることができる。また、掻寄架台10の停止時間やリフトピン51の往復動作のストロークを調節してリフトバー52の持ち上がる高さ等を変化させることで、スカムパイプ54の飲み込量を変化させることができる。これによって、水面のスカムの量にあわせて容易に飲み込み量を調節することができる。
【0039】
また、リフトバー52が押し上げられると、リフトシャフト56とスカムバー55を介してスカムパイプ54が回転してスカムの飲み込みを行うため、簡単な構造で確実にスカムの除去を行うことができる。
【0040】
更に、リフトピン51は、掻寄架台10の通常の後退限位置ではリフトバー52に係止しない位置に設けられているため、通常時はスカムを吸い込むことなく汚泥を掻き寄せ、必要な時にのみ掻寄架台10を通常の後退限位置よりも後退させてスカムパイプ54を回転させることでスカムを吸い込むことができるため、一層容易にスカムの飲み込み量を調整することができる。
【0041】
なお、リフトピン51、リフトバー52、スカムバー55、リフトシャフト56により、本発明における動力変換機構が構成される。
【0042】
次に、図10及び図11を参照して、制御部60にて実行される処理手順について説明する。まず、図10に示すように、汚泥掻寄装置1の自動運転スイッチの状況を検出し(手順101)、スイッチが入っていることを確認したら、駆動装置40を時計回りに回転させて掻寄架台10を往動させる(手順102)。この移動に伴って、フライト30は、槽の底部2bに堆積した汚泥を前方に掻き寄せながら往動する。
【0043】
掻寄架台10の往動中に、その位置情報を数値として検出し、予め設定した前進限位置の設定値に達しているか否かをモニタする(手順103)。設定値に達していなければ、引き続き駆動装置40を回転させて、掻寄架台10を往動させる。掻寄架台10が前進限位置まで移動し、設定値に達した場合は、駆動装置40を停止させる(手順104)。
【0044】
その後、前進フラグをオフ、後退フラグをオンとし(手順106)、予め定められた時間が経過するまで、動作を停止させ、前進位置遅延タイマが入るまで待機する(手順107)。
【0045】
所定の時間が経過して、前進位置遅延タイマが入ると、駆動装置40を反時計回りに回転させて、掻寄架台10を復動させる。この移動に伴って、副ローラ32は下側案内フラップ33によって副ガイドレール22内に収納され、底部2bと離間した状態とされ、掻き寄せた汚泥を復動方向に掻き戻すこと無く移動する(手順108)。
【0046】
掻寄架台10の位置情報を数値として検出し、予め設定した後退限位置の設定値に達しているか否かをモニタする(手順109)。設定値に達していなければ、引き続き駆動装置40を回転させて、掻寄架台10を復動させる。掻寄架台10が後退限位置まで移動し、設定値に達した場合は、一回分の往復動作が完了したとして、カウンタを一つ増加させる(手順111)。なお、掻寄架台10が後退限位置に来ても、リフトピン51は、リフトバー52とは接触しない。
【0047】
ここで、カウンタを参照して(手順112)、往復動作が所定の回数Nまで行なわれていない場合は、駆動装置40を停止させ(手順113)、所定の回数Nまで行なわれた場合は、掻寄架台10を引き続き復動させ、スカム吸引動作へと移行させる(後述)。
【0048】
駆動装置40を停止させた後は、後退フラグをオフ、前進フラグをオンとし(手順114)、予め定められた時間が経過するまで、動作を停止させ、後退位置遅延タイマが入るまで待機する(手順116)。ここまでが掻寄架台10の通常の往復動作となる。
【0049】
一方、手順112において、往復動作が所定回数Nだけ行われたと判断されたら、スカム吸引動作へと移行し、掻寄架台10を引き続き復動させる。掻寄架台10の位置情報を数値として検出し、予め設定したスカム作動限位置の設定値に達しているか否かをモニタする(手順117)。設定値に達していなければ、引き続き駆動装置40を回転させて、掻寄架台10を復動させる。
【0050】
ここで、掻寄架台10が後退限位置よりも後方へ移動することによって、リフトピン51がリフトバー52の下面52aに係止して押し上げ、それによってスカムパイプ54が回動して、開口部54aからスカムを飲み込む。なお、この時、最後部のフライト30は、傾斜状態を保ったまま後退する。
【0051】
掻寄架台10がスカム作動限位置まで移動し、設定値に達した場合は、駆動装置40を停止させる(手順118)。その後、後退フラグをオフ、前進フラグをオンとし(手順119)、予め定められた時間が経過するまで、動作を停止させ、スカム作動遅延タイマが入るまで待機する(手順121)。所定時間が経過し、スカム動作遅延タイマが入ると、カウンタをリセットする(手順122)。ここまでが掻寄架台10のスカム吸引動作となる。
【0052】
通常の往復動作あるいはスカム動作が終了すると、自動停止スイッチが入っているか否かを検出する(手順123)。自動停止スイッチが入っている場合は、駆動装置を停止させて(手順124)、再び自動運転スイッチが入るまで待機する。自動停止スイッチが入っていなければ、図10の手順102へ戻り、前進運転を開始する。なお、このとき、最後部のフライト30は、最後部の下側案内フラップ33aから降下して、下流側底部2cに堆積した汚泥を掻き寄せながら前進するため、掻寄限界位置Lよりも後ろに堆積した汚泥を掻き寄せることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態にあっては、掻寄架台10の停止時間やスカム動作限位置、及びスカム動作の回数を調整するだけで、容易にスカムの飲み込み量を調整することができる。
【0054】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、槽2の水面3付近に何も設けていないが、掻寄架台10の往復動作に連動して動く羽根部材を配置させて、スカムパイプがスカムに入り易くしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る汚泥掻寄装置を示す図である。
【図2】図1中のフライト及びリフトバーの取付部近傍の拡大図である。
【図3】往動時のフライトの状態を示す模式図である。
【図4】往動時に副ローラが下側案内フラップを押し倒す状態を示す模式図である。
【図5】復動時のフライトの状態を示す模式図である。
【図6】往動時に副ローラが下側案内フラップの傾斜面に沿って降下する状態を示す模式図である。
【図7】スカム吸引時のフライトの状態を示す模式図である。
【図8】リフトバーが押し上げられる前の状態を示す模式図である。
【図9】リフトバーが押し上げられた状態を示す模式図である。
【図10】汚泥掻寄装置の制御フローチャートである。
【図11】汚泥掻寄装置の制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1…汚泥掻寄装置、2…槽、2a…汚泥ピット、2b…底部(槽の底部)、3…水面、10…掻寄架台、30…フライト(汚泥掻寄羽根)、51…リフトピン、52…リフトバー、52b,52c…端部、52…下面、54…スカムパイプ、54a…開口部、55…スカムバー、56…リフトシャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内で該槽の長手方向に往復動する掻寄架台と、
前記掻寄架台に支持され、前記槽の底部に堆積した汚泥を掻き寄せる複数の汚泥掻寄羽根と、
前記槽内に収容された処理水の水面に浮上したスカムを吸い込む開口部を有し、該水面の高さにおいて該槽の短手方向に横架されて、該開口部が該処理水に対し出没するように回動可能に支持されたスカムパイプと、
前記掻寄架台の往復動を前記スカムパイプの回動に変換させる動力変換機構と、
を備えることを特徴とする汚泥掻寄装置。
【請求項2】
前記動力変換機構は、
一端において回動可能に軸支されたリフトバーと、
前記掻寄架台と一体に往復動し、前記リフトバーの下面と係動させて、該リフトバーを回動させるリフトピンと、
一端が前記リフトバーの他端に接続され、他端が前記スカムパイプに接続されて、該リフトバーの回動に応じて該スカムパイプを回動させるように両者をリンクするリンク機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の汚泥掻寄装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記スカムパイプと一体に回動するスカムバーと、
一端が前記リフトバーの前記他端に軸支されると共に、他端が前記スカムバーに軸支され、上下方向に延びるリフトシャフトと、
を有することを特徴とする請求項2に記載の汚泥掻寄装置。
【請求項4】
前記リフトピンは、前記掻寄架台の通常の後退限位置では前記リフトバーに係止しない位置に設けられ、
前記掻寄架台を前記通常の後退限位置よりも後退させたとき、前記リフトピンが前記リフトバーに係止することを特徴とする請求項2または3記載の汚泥掻寄装置。
【請求項5】
前記掻寄架台の所定回数の往復動毎に、該掻寄架台を前記通常の後退限位置よりも後退させることを特徴とする請求項4記載の汚泥掻寄装置。
【請求項6】
前記複数の汚泥掻寄羽根のうち汚泥ピットから最も離れた汚泥掻寄羽根は、前記掻寄架台を前記通常の後退限位置よりも後退させた後の往動時に、該通常の後退限位置で掻き寄せられる掻寄限界位置よりも後ろに堆積した汚泥を掻き寄せることを特徴とする請求項4または5に記載の汚泥掻寄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−80205(P2008−80205A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261065(P2006−261065)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】