説明

汚泥濃縮システム

【課題】原動機からの排熱または燃料焚ボイラの熱源を有効活用して水処理設備または工場の汚泥処理設備で発生する汚泥を効率的に処理できる汚泥濃縮システムを提供する。
【解決手段】水処理設備または工場の汚泥処理設備で発生する汚泥SWを処理する汚泥濃縮システムであって、動力を発生するガスタービン1と、ガスタービン1の排ガスEGを熱源として蒸気Sもしくはを発生する排熱ボイラ2と、蒸気Sもしくは温水を熱源として導入して汚泥SWの蒸発濃縮を行う汚泥濃縮装置3と、排熱ボイラ2を出た排ガスEGを熱源として蒸発濃縮された汚泥ケーキSCを乾燥させる汚泥乾燥装置4とを備える。ガスタービン1および排熱ボイラ2に代えて、燃料焚ボイラ20を用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機の排熱または燃料焚ボイラの熱源を有効利用して水処理設備または工場の汚泥処理設備から発生する汚泥を効率的に処理できる汚泥濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば浄水場などの水処理設備や工場の汚泥処理設備から大量に発生する汚泥は、通常、一定時間放置して重力濃縮した後、濃縮された汚泥を脱水機で脱水処理し、脱水処理した汚泥をさらに乾燥装置で乾燥して固形化・減量化し、園芸用土として利用するか、または、乾燥処理した乾燥汚泥を最終的に焼却炉で焼却している。
【0003】
前記汚泥処理の場合、脱水機稼動にかかる電気代、乾燥装置や焼却炉の稼動にかかるガスや重油などの燃料代を考慮すると、きわめて割高な処理方法となる。また、汚泥の重力濃縮は、一定時間、汚泥を放置し、溶媒(水分)と溶質(実質的な汚泥分)の比重差を利用するものであるから、最終の焼却処理に至るまでの処理時間がかかり、処理効率が低い処理方法であった。
【0004】
また、前記脱水機に代えて蒸発濃縮装置を用いる処理方法も知られている(例えば特許文献1参照)。この処理方法では、後工程のアンモニア除去工程や浄化工程に先立ち、尿および/または浄化槽汚泥からなる被処理物を前工程である濃縮工程において蒸発濃縮しておき、後工程での作業が効率的に行えるようにしている。この処理方法では、蒸発濃縮によって前記し尿および/または浄化槽汚泥を少ないエネルギで効率的に濃縮できるので、前記汚泥の汚泥処理に用いると、汚泥の脱水にかかる電気代、汚泥の乾燥や焼却にかかる燃料代を削減できると考えられる。
【特許文献1】特開2001−327999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが前記先行技術には、次のような不具合がある。すなわち、アンモニアを含むし尿およびし尿用の浄化槽汚泥の処理方法に限定されており、浄水場や工場での汚泥処理には直接適用できない。また、汚泥濃縮システム用の電源、濃縮装置用蒸気、焼却炉用燃料などが個別に必要となるなど、抜本的な省エネルギ化が図れておらず、エネルギを多く使用するシステムである。さらに、地震や停電時などの電力送給停止時には運転できないシステムであった。
【0006】
そこで、本発明は、原動機の排熱または燃料焚ボイラの熱源を有効活用して水処理設備または工場の汚泥処理設備で発生する汚泥を省エネルギで効率的に処理できる汚泥濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1構成に係る汚泥濃縮システムは、動力を発生する原動機と、前記原動機の排ガスを熱源として蒸気もしくは温水を発生する排熱ボイラと、前記蒸気もしくは温水を熱源として導入して汚泥の蒸発濃縮を行う汚泥濃縮装置と、を備えている。ここで、前記汚泥とは、浄水場などの水処理設備から発生する汚泥や工場の生産工程から発生する汚泥などを含む。また、原動機とは、燃料を燃焼させて動力を発生し、排ガスを放出するものをいい、例えばガスタービンやディーゼルエンジンである。
【0008】
この構成によれば、排熱ボイラからの蒸気もしくは温水を、汚泥を蒸発濃縮するための熱源として利用できる。また、汚泥を蒸発濃縮することで汚泥量を効率的に減少できるので、通常、汚泥の乾燥に先立って行われる脱水に用いる脱水機台数も削減できる。また、汚泥の蒸発濃縮により汚泥温度が上昇して汚泥の粘性が下がるので、脱水機のろ過速度が増し、脱水機台数をさらに削減することができる。このように、汚泥処理に伴う多くのエネルギを原動機の排熱によって賄えるので、環境汚染の少ない省エネルギの汚泥処理を実現できる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記排熱ボイラを出た排ガスを熱源として前記蒸発濃縮された汚泥を乾燥させる汚泥乾燥装置を備えている。
【0010】
この構成によれば、従来、大気中へ排出していた排熱ボイラ出口からの排ガスも、汚泥乾燥装置において前記蒸発濃縮した汚泥を乾燥させるために有効利用される。その結果、原動機の排熱が一層効果的に利用される。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記原動機、排熱ボイラおよび汚泥濃縮装置に加えて、前記排熱ボイラを出た排ガスを燃焼用空気として前記蒸発濃縮された汚泥を焼却する焼却炉を備えている。
【0012】
この構成によれば、排熱ボイラからの蒸気もしくは温水を、汚泥を蒸発濃縮するための熱源として利用でき、従来、大気中へ排出していた排熱ボイラ出口からの排ガスも、焼却炉において前記蒸発濃縮した汚泥を焼却する燃焼用空気として有効に利用される。その結果、原動機の排熱が一層効果的に利用される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、汚泥濃縮装置に、熱源として前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記原動機の排ガスが導入されている。
【0014】
この構成によれば、汚泥の蒸発濃縮の一部分または全体が、排熱ボイラからの蒸気温度を大きく上回る原動機の排ガス(例えば約500℃前後)の導入によっても行われるので、汚泥濃縮装置への前記蒸気もしくは温水の導入量が少ない場合、または蒸気もしくは温水が他の用途に使用されて汚泥濃縮装置に導入されない場合であっても、汚泥の蒸発濃縮が効果的に行われる。
【0015】
本発明の他の好ましい実施形態では、汚泥濃縮装置に、熱源として前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記排熱ボイラを出た排ガスが導入されている。
【0016】
この構成によれば、汚泥の蒸発濃縮の一部分または全体が、排熱ボイラを出た比較的低温(例えば約150℃前後)の排ガスによっても行われるので、汚泥濃縮装置への前記蒸気もしくは温水の導入量が少ない場合、または蒸気もしくは温水が他の用途に使用されて汚泥濃縮装置に導入されない場合であっても、汚泥の蒸発濃縮が効果的に行われる。
【0017】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記汚泥濃縮装置が、前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記汚泥乾燥装置からの汚泥ガスを導入してこの汚泥ガス中の水蒸気潜熱を熱源として汚泥の蒸発濃縮を行うものである。
【0018】
この構成によれば、汚泥の蒸発濃縮の一部分または全体が、汚泥乾燥装置からの乾燥排気である汚泥ガス中の水蒸気潜熱によって行われるので、汚泥濃縮装置への前記蒸気もしくは温水の導入量が少ない場合、または蒸気もしくは温水が他の用途に使用されて汚泥濃縮装置に導入されない場合であっても、特に水蒸気潜熱は大きいので、汚泥の蒸発濃縮が効果的に行われる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、汚泥濃縮装置からの凝縮水が前記排熱ボイラのボイラ給水として導入されている。
【0020】
この構成によれば、汚泥濃縮装置からの凝縮水が排熱ボイラへのボイラ給水として利用できる分だけ、水資源を節約できる。しかも、前記凝縮水は汚泥濃縮装置内の汚泥を蒸発濃縮させる際に発生したもので、異物やゴミのない清浄な水であるので、ボイラ給水としてそのまま用いることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記汚泥濃縮装置からの臭気成分を含んだ汚泥ガスが前記原動機の吸気に混入されている。
【0022】
この構成によれば、前記汚泥乾燥装置から排出される臭気成分を含んだ乾燥排気である汚泥ガスは、かなりの残存空気を含んでいるので(少なくとも約13〜16%程度含む)、これを吸気として原動機で利用できる。これにより、臭気成分の熱分解によって周辺環境への臭気対策が図れるので、専用の脱臭設備が不要となり、脱臭設備などの付帯設備が不要になって、システムの簡略化およびコスト低減を実現できる。
【0023】
本発明の第2構成に係る汚泥濃縮システムは、蒸気もしくは温水を発生する燃料焚ボイラと、前記蒸気もしくは温水を熱源として汚泥の蒸発濃縮を行う汚泥蒸発装置と、前記排熱ボイラを出た排ガスを熱源として前記蒸発濃縮された汚泥を乾燥させる汚泥乾燥装置と、前記燃料焚ボイラを出た排ガスを熱源として前記蒸発濃縮された汚泥を乾燥させる汚泥乾燥装置とを備えている。
【0024】
この構成によれば、原動機の排ガスを熱源として蒸気もしくは温水を発生する排熱ボイラに代えて、燃料焚ボイラからの蒸気もしくは温水を、汚泥濃縮装置での蒸発濃縮を行う熱源として利用するのに加えて、燃料焚ボイラを出た排ガスを、汚泥乾燥装置の熱源として利用している。このように燃料焚ボイラからのボイラ出口排ガスの一部が、排ガス供給通路により汚泥乾燥装置に供給されて、その熱エネルギが有効利用される。また、汚泥を蒸発濃縮することで汚泥量を効率的に減少できるので、通常、汚泥の乾燥に先立って行われる脱水に用いる脱水機台数も削減できる。さらに、汚泥の蒸発濃縮により汚泥温度が上昇して汚泥の粘性が下がるので、脱水機のろ過速度が増し、脱水機台数をさらに削減することができる。このように、汚泥処理に伴う多くのエネルギを燃料焚ボイラからの蒸気もしくは温水、および排熱によって賄えるので、環境汚染の少ない省エネルギの汚泥処理を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の汚泥濃縮システムによれば、汚泥処理に伴う多くのエネルギを原動機の排熱または燃料焚ボイラの熱源によって賄えるので、環境汚染の少ない省エネルギの汚泥処理が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面にしたがって説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。この実施形態で示される汚泥濃縮システムは、電気と蒸気を発生するコージェネレーション設備の排熱を、汚泥濃縮システムで有効に利用されるように両者を組み合わせた構成となっている。
【0027】
図1に示す汚泥濃縮システムは、動力を発生するガスタービン(原動機)1と、このガスタービン1の排ガスを熱源とする排熱ボイラ2と、汚泥SWの蒸発濃縮を行う汚泥濃縮装置3と、蒸発濃縮した濃縮汚泥CSWを乾燥する汚泥乾燥装置4とから基本的に構成されている。
【0028】
前記ガスタービン1は、圧縮機Cと燃焼器FCとタービンTとを有し、その回転軸X1に負荷である発電機Gが連結されている。燃焼器FCには、都市ガスのような燃料f1が供給され、圧縮機Cには、吸気冷却器5を介して吸気が導入される。この吸気冷却器5は、外部から取り入れた空気A1を、例えば地下水Wの循環により冷却する。
【0029】
前記タービンTと排熱ボイラ2の間は、タービン排気通路P2で連結され、タービンTからの排ガスEGが排熱ボイラ2に供給される。
【0030】
前記排熱ボイラ2と汚泥乾燥装置4との間の排ガス導入通路P3には、エコノマイザ6と、三方排気ダンパ7とが設けられ、前記三方排気ダンパ7には不要な排ガスEGを大気に放出する排気筒8が取り付けられている。この三方排気ダンパ7は、ダンパ角度調整の制御によって、排ガスEGを汚泥乾燥装置4側に供給したり、汚泥乾燥装置4の停止時には前記排ガスEGが排気筒8側に流して大気へ放出することができるようになっている。
【0031】
前記排熱ボイラ2のドラム10と排熱ボイラ2用の給水タンク9との間は、給水通路P4によって連結され、前記給水タンク9内の水は、給水ポンプにより加圧され、前記給水通路P4によりエコノマイザ6を経て排熱ボイラ2のドラム10内に供給される。
【0032】
前記汚泥乾燥装置4には、都市ガスのような燃料f2の供給を受けて燃焼し、外部から取り入れた空気A2を加熱して乾燥用加熱ガスHGとするガスバーナ41を備えた乾燥用ガス通路P5が接続され、この乾燥用ガス通路P5の下流部に前記排ガス導入通路P3の下流部を合流させて接続することで、前記排熱ボイラ2からの排ガスEGと前記乾燥用加熱ガスHGとが、乾燥用熱源として汚泥乾燥装置4 内に導入される。
【0033】
この汚泥乾燥装置4には乾燥ガス排出通路P6が接続され、前記乾燥用熱源である排ガスEGと乾燥用加熱ガスHGを汚泥乾燥装置4内に導入して後述する汚泥ケーキSCを乾燥処理したとき、前記汚泥ケーキSCに含まれていた臭気成分を含む乾燥排気である汚泥ガスSGを乾燥ガス排出通路P6を通して排出できるようになっている。
【0034】
この排出用通路P6には、マルチサイクロン42が取り付けられ、前記排ガスEGと乾燥用加熱ガスHG中に含まれるゴミや異物を除去してから排風機43で強制的に大気中に排出させることもできるが、この実施形態では、前記乾燥ガス排出通路P6の下流端と吸気冷却器5の間を汚泥ガス導入通路P7で連結して、汚泥ガスSGを原動機1の吸気に混入させて利用するようになっている。
【0035】
上記構成よりなる諸設備に対して、浄水場のような水処理設備または工場の生産工程などで発生する汚泥SWを溜める汚泥槽11と、この汚泥槽11からの汚泥SWを蒸発濃縮する汚泥濃縮装置3と、汚泥濃縮装置3で蒸発濃縮した濃縮汚泥CSW中から水分を除去する脱水機12を含む汚泥処理設備が組み合わせられている。この脱水機12は例えば遠心式または加圧式である。汚泥濃縮装置3は、蒸気Sもしくは温水(以下「蒸気S等」という。)により汚泥を加熱し、汚泥中の水分のみを蒸発させることで汚泥SWの固形分濃度を高める。この蒸発した水分と蒸気の凝縮水は、合わせて凝縮水として回収され、ボイラ給水として再利用される。
【0036】
汚泥槽11と汚泥濃縮装置3の間は、汚泥供給通路P8で連結され、汚泥槽11の汚泥SWが、汚泥濃縮装置3側に連続的にあるいは断続的に供給される。前記汚泥濃縮装置3に供給される汚泥SWは、汚泥濃縮装置3に供給される前に、つまり、浄水場や工場の汚泥処理設備から発生した汚泥SWが汚泥槽11に供給される前に、汚泥重力濃縮を行うか、あるいは汚泥槽11内で汚泥重力濃縮を行ったものが汚泥濃縮装置3側に供給される。汚泥濃縮装置3には、蒸気導入通路P9により排熱ボイラ2からの蒸気S等が導入される。この汚泥濃縮装置3には、タービン排気通路P2から分岐させて設けた排ガス導入通路P10が接続されており、前記蒸気S等に加え、排ガス導入通路P10を経由してガスタービン1からの排ガスEGの一部が汚泥濃縮装置3に導入されている。但し、この通路P10は割愛し、前記蒸気S等のみを汚泥濃縮装置3に導入して汚泥SWの蒸発濃縮を行ってもよい。
【0037】
前記汚泥濃縮装置3と脱水機12の間は濃縮汚泥導入通路P11で連結され、汚泥濃縮装置3で蒸発濃縮されて濃度が高くなった濃縮汚泥CSWが濃縮汚泥導入通路P11を通って脱水機12に送られる。前記脱水機12と汚泥乾燥装置4とは、汚泥ケーキ供給通路P12で連結され、脱水機12で脱水処理されて固化された汚泥ケーキSCは汚泥乾燥装置4の中に投入され、乾燥処理に付される。また、前記汚泥濃縮装置3と給水タンク9との間は、凝縮水補給通路P13で連結されており、この凝縮水補給通路P13により前記汚泥濃縮装置3にて汚泥SWを蒸発濃縮する際に発生した凝縮水CWを給水タンク9に戻してボイラ用給水として利用する。これにより、水資源の有効利用を図っている。なお、前記汚泥濃縮装置3には、望ましくは冷却塔31を付設して前記凝縮水CWが速やかに得られるようにしているが、この冷却塔31は必ずしも付設されなくてもよく、汚泥濃縮システムの運転に影響を及ぼさない。
【0038】
上記構成において、ガスタービン1により発電機Gが駆動されて電力が得られる。ガスタービン1が通常運転を行っているとき、タービンTからの排ガスEGはタービン排気通路P2を通って排熱ボイラ2に供給されて熱回収される。他方、給水タンク9から給水ポンプにて加圧された水は、給水通路P4によりエコノマイザ6を通って予熱されたのち、排熱ボイラ2の上部のドラム10に入り、ここから排熱ボイラ2内の水管に入って、排ガスEGにより加熱されて蒸気化される。こうして得られた蒸気S等は、ドラム10を経て、蒸気導入通路P9により汚泥濃縮装置3内に導入される。
【0039】
汚泥濃縮装置3には、汚泥槽11から汚泥SW(例えば固形分濃度2.5%)が連続的に供給されており、前記汚泥濃縮装置3内に蒸気S等が導入されると、これらの間の熱交換により、前記汚泥SWの蒸発濃縮が行われる。これにより、汚泥濃縮装置の下流にある脱水機12の設置台数を削減でき、脱水機12を稼動するための電気エネルギーを節減できる。汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮には蒸気S等のみならず、原動機1からの排ガスEGも利用されるので、前記蒸発濃縮がより促進される。蒸発濃縮が促進されることで、脱水機12の設置台数をさらに削減できる。
【0040】
続いて、汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮により得られた濃縮汚泥CSW(例えば固形分濃度6%)は濃縮汚泥導入通路P11を経て脱水機12に送られる。この脱水機12での脱水処理により前記濃縮汚泥CSWは所定水分含量(例えば水分65%)まで脱水され、汚泥ケーキSC(例えば固形分濃度35%)となる。その後、この汚泥ケーキSCは、汚泥ケーキ供給通路P12を経て汚泥乾燥装置4内に投入される。
【0041】
前記汚泥乾燥装置4には、排ガス導入通路P3を通って導かれた排熱ボイラ2からの排ガスEG(例えば温度約150℃)が導入されており、この排ガスEGによって前記汚泥ケーキSCを乾燥処理する。この乾燥により、前記汚泥ケーキSC中の水分を一定以下の水分量(例えば水分35%以下)まで乾燥してのち、固形の乾燥ケーキDCとして回収する。このとき、この汚泥乾燥装置4には、乾燥用ガス通路P5から乾燥用ガスHGも導入されるが、前記排熱ボイラ2からの排ガスEGが導入されることで、ガスバーナ41での都市ガス使用量を削減できる。前記、乾燥ケーキDCは、例えばそのまま園芸用土として用いるか、例えば型に入れて焼き、レンガ材として用いられる。
【0042】
このように、この汚泥濃縮システムでは、コージェネレーション設備と組み合わせ、コージェネレーション設備の排熱を、汚泥濃縮装置3では汚泥SWの蒸発濃縮用の蒸気S等として利用し、汚泥乾燥装置4では乾燥ケーキDCを造るための高温ガスとして利用することで、排熱を有効利用できる。また、汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮時に発生する臭気成分を含んだ汚泥ガスSGは、吸気としてガスタービン1で処理されるので、脱臭設備も不要となる。
【0043】
図2に示す第2実施形態は、前記第1実施形態(図1)の汚泥乾燥装置4の代わりに焼却炉13を用いたものを示し、汚泥ケーキSCを汚泥乾燥装置4で乾燥処理に付するのではなく、焼却炉13で焼却処理に付する場合を示している。この第2実施形態の基本的構成は、前記第1実施形態と同様であり、同一構成部分についてはその説明を省略し、相異点についてのみ説明する。図2に示すように、排熱ボイラ2出口から延びる排ガス導入通路P3の下流側に前記第1実施形態の汚泥乾燥装置4に代えて焼却炉13を配置している。この焼却炉13は、内部に投入される汚泥ケーキSCを単に乾燥ではなく、完全に焼却処理するのもので、ガスバーナ部131と排ガス排出部132とを備え、上方のホッパ133から内部に投入された汚泥ケーキSCは、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGを燃焼用空気とする前記ガスバーナ部131からの高温ガスによって焼却される。汚泥ケーキSCが焼却されると、焼却灰BAとして下部から取り出し、例えば埋め立て用材として用いる。なお、前記排ガス排出部132は、第1実施形態の乾燥ガス排出通路P6と同様、前記排気排出用通路132aとマルチサイクロン132bおよび排風機132cが設けられており、異物やゴミを取り除いたガスが大気に排出されるようになっている。
【0044】
図3に示す第3実施形態は、汚泥濃縮装置3で汚泥SWを蒸発濃縮する熱源として前記第1実施形態(図1)の原動機1からの排ガスEGに代えて、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGを利用したものを示している。この第3実施形態の基本的構成は、前記第1実施形態と同様であり、同一構成部分についてはその説明を省略し、相異点についてのみ説明する。図3において、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGは、原動機1からの排ガスEG(約500℃前後)に比べ、比較的低温(約150℃)であるが、前記汚泥SWを蒸発濃縮するに足りる熱量を保有している。そこで、前記排ガス導入通路P3の下流側から分岐させた排ガス導入通路P14を汚泥濃縮装置3に接続し、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGの一部を汚泥濃縮装置3に導入する。これにより、汚泥濃縮装置3での汚泥SWの蒸発濃縮は、前記蒸気S等に加え、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGによっても行われ、蒸発濃縮が促進される。
【0045】
図4に示す第4実施形態は、第2実施形態(図2)の原動機1の排ガスに代えて、排熱ボイラ2出口からの排ガスEGを,排ガス導入通路P14により汚泥濃縮装置3に導入して利用している。この第4実施形態による汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮の促進効果は、前記第3実施形態(図3)の場合と同一である。
【0046】
図5に示す第5実施形態は、汚泥乾燥装置4からの汚泥ガスを汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮を行う熱源として利用できるように構成したものを示している。この第5実施形態の基本的構成は、前記第1実施形態(図1)と同様であり、同一構成部分についてはその説明を省略し、相異点についてのみ説明する。図5に示すように、汚泥乾燥装置4からの排ガス排出通路P6の下流端と汚泥濃縮装置3との間を汚泥ガス導入通路P15で連結している。これにより、排熱ボイラ2からの蒸気S等に加え、汚泥乾燥装置4での乾燥処理時に発生する汚泥ガスSGを汚泥濃縮装置3に導入している。この汚泥ガスSG中には多量の水蒸気が含まれているから、その水蒸気潜熱を汚泥SWの蒸発濃縮を行う熱源とすることで、蒸発濃縮が一層促進される。
【0047】
図6に示す第6実施形態は、前記第1〜5実施形態の原動機1の排ガスを熱源として蒸気S等を発生する排熱ボイラ2に代えて、図示した燃料焚ボイラ20からの蒸気S等を、汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮を行う熱源として利用し、さらに、前記燃料焚ボイラを出た排ガスを、汚泥乾燥装置4の熱源として利用している。この第6実施形態の基本的構成は、図1に示した第1実施形態と同様であり、同一構成部分についてはその説明を省略し、相異点についてのみ説明する。図6に示すように、燃料f3の供給によって運転され、蒸気S等を発生する燃料焚ボイラ20と、汚泥槽11からの汚泥SWを蒸発濃縮する汚泥濃縮装置3とが、熱源供給通路P20で連結されている。これにより、汚泥濃縮装置3において汚泥SWは、燃料焚ボイラ20からの蒸気S等を熱源として蒸発濃縮され、濃縮汚泥CSWとなる。
【0048】
つづいて、前記濃縮汚泥CSWは脱水機12で脱水され、汚泥ケーキSCとしてガスバーナ41を備えた汚泥乾燥装置4に供給され、固形の乾燥ケーキDCとされる。また、燃料焚ボイラ20からのボイラ出口排ガスEGの一部が排ガス供給通路P21により前記汚泥乾燥装置4に供給され、汚泥ケーキSCを乾燥させるようになっているので、前記ガスバーナ41での燃料f2の使用量を削減できる。さらに、汚泥乾燥装置4での乾燥時に発生する臭気成分を含んだ汚泥ガスSGは、汚泥ガス供給通路P22により燃料焚ボイラ20に戻されて燃焼処理されるので、脱臭設備も不要となる。また、汚泥濃縮装置3と燃料焚ボイラ20との間は凝縮水補給通路P23で連結されており、この凝縮水補給通路P23により、汚泥濃縮装置3にて汚泥SWを蒸発濃縮する際に発生した凝縮水CWを、燃料焚ボイラ20に戻してボイラ用給水として利用する。これにより、前記第1実施形態の場合と同様、水資源の有効利用を図っている。
【0049】
この第6実施形態に係る汚泥濃縮システムによれば、燃料焚ボイラ20からの蒸気S等を、汚泥濃縮装置3での蒸発濃縮を行う熱源として利用するのに加えて、燃料焚ボイラ20からのボイラ出口排ガスEGの一部が、排ガス供給通路P21により汚泥乾燥装置4に供給されるので、燃料焚ボイラ20の排熱が有効利用される。また、汚泥SWを蒸発濃縮することで汚泥(SW)量を効率的に減少できるので、汚泥SWの汚泥乾燥装置4での乾燥に先立って脱水を行う脱水機12の台数も削減できる。さらに、汚泥SWの蒸発濃縮により汚泥温度が上昇して汚泥の粘性が下がるので、脱水機12のろ過速度が増し、脱水機台数をさらに削減することができる。このように、汚泥処理に伴う多くのエネルギを燃料焚ボイラ20からの蒸気S等、および排熱によって賄えるので、環境汚染の少ない省エネルギの汚泥処理を実現できる。
【0050】
なお、図1、図3、図5および図6に示した第1,第3,第5,第6実施形態では、汚泥乾燥装置4と脱水機12の一方を省略することができ、図2および図4に示した第2、第4実施形態では、脱水機12を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の汚泥濃縮システムは、浄水場などの水処理設備から発生する汚泥や工場の生産工程から発生する汚泥の処理に対して、付帯設備に改良を加えることで比較的容易に適用でき、コージェネレーション設備からの排熱を有効利用するシステムとして幅広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す系統図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ガスタービン(原動機)
2 排熱ボイラ
3 汚泥濃縮装置
4 汚泥乾燥装置
13 焼却炉
20 燃料焚ボイラ
CSW 濃縮汚泥
DC 乾燥ケーキ
EG 排ガス
S 蒸気
SW 汚泥
SC 汚泥ケーキ
SG 汚泥ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生する原動機と、
前記原動機の排ガスを熱源として蒸気もしくは温水を発生する排熱ボイラと、
前記蒸気もしくは温水を熱源として導入して汚泥の蒸発濃縮を行う汚泥濃縮装置と、
を備えた汚泥濃縮システム。
【請求項2】
請求項1において、さらに、前記排熱ボイラを出た排ガスを熱源として前記蒸発濃縮された汚泥を乾燥させる汚泥乾燥装置を備えた汚泥濃縮システム。
【請求項3】
請求項1において、さらに、前記排熱ボイラを出た排ガスを燃焼用空気として前記蒸発濃縮された汚泥を焼却する焼却炉を備えた汚泥濃縮システム。
【請求項4】
請求項1、2または3において、前記汚泥濃縮装置に、熱源として、前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記原動機の排ガスが導入されている汚泥濃縮システム。
【請求項5】
請求項1、2または3において、前記汚泥濃縮装置に、熱源として、前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記排熱ボイラを出た排ガスが導入されている汚泥濃縮システム。
【請求項6】
請求項2において、前記汚泥濃縮装置は、前記蒸気もしくは温水に代えて、または蒸気もしくは温水に加えて、前記汚泥乾燥装置からの汚泥ガスを導入してこの汚泥ガス中の水蒸気潜熱を熱源として汚泥の蒸発濃縮を行うものである汚泥濃縮システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記汚泥濃縮装置からの凝縮水が前記排熱ボイラのボイラ給水として導入されている汚泥濃縮システム。
【請求項8】
請求項2または6において、前記汚泥乾燥装置からの臭気成分を含んだ汚泥ガスが前記原動機の吸気に混入されている汚泥濃縮システム。
【請求項9】
蒸気もしくは温水を発生する燃料焚ボイラと、
前記蒸気もしくは温水を熱源として汚泥の蒸発濃縮を行う汚泥蒸発装置と、
前記燃料焚ボイラを出た排ガスを熱源として前記蒸発濃縮された汚泥を乾燥させる汚泥乾燥装置と、
を備えた汚泥濃縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−21333(P2007−21333A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205557(P2005−205557)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(590002208)横浜市 (13)
【Fターム(参考)】