説明

汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法

【目的】沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能な汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法を提供する。
【構成】フロック化した汚濁物に気泡を付着させて浮上分離させて回収する汚濁物浮上分離回収装置において、
気泡撹拌混合部と浮上分離促進部とを有して成り、
前記気泡撹拌混合部は、撹拌混合槽と、該撹拌混合槽内に配設される気泡発生装置と、を有し、
前記浮上分離促進部は、気泡撹拌混合部の撹拌混合槽の下流側に別槽構成で接続される浮上分離槽と、該浮上分離槽内の上流側と下流側とを区切るように分断状態に配設されると共に前記原水が前記上流側から下流側へ通過可能なスリット状及び/又は細管状の複数の通水路が形成された分離促進部材と、を有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法に関し、詳しくは、マイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を利用して原水中の汚濁物をフロック化し、浮上分離させて回収する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建設工事では地盤を掘削する際に地中から流出する水によって大量の濁水が発生する。発生した濁水をポンプ等で排水しながら工事は行われるが、排水される濁水には大量の土砂が含まれているため、環境保全の面からそのままの状態での排水は例規上許されておらず、濁水の浄化処理を施して、土等と水とを分離する水処理作業が必要である。
【0003】
土木・建設工事での水処理に限らず一般に行われている水処理は、濁水中に懸濁している土等を凝集剤を用いてフロック化し、凝集沈殿させて固液分離を行い、沈殿した汚泥を廃棄することで処理を行うものである。凝集沈殿に用いられる凝集剤としては、例えば、無機凝集剤(PAC:ポリ塩化アルミニウム)や高分子凝集剤(ポリアクリルアミド)が挙げられる。
【0004】
上記した凝集沈殿施設で処理された原水(一次処理済み水)には、沈降し切れなかった細かな汚濁物(鉱物質微粒子と凝集剤が混合したもの等)が浮遊状態で含まれており、かかる細かな汚濁物を含むフロックの沈降には時間を要するため、更なる浄化が必要な場合には処理に時間(滞留時間)が掛かってしまうという不都合を有している。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、処理槽内にハニカム構造体を配設することで沈殿処理を促進させる技術が記載されている。
【0006】
特許文献1の技術は、ハニカム構造体を該ハニカム構造体のハニカム孔が被処理水の流れ方向に対して下方に傾斜状態となるように配設することで、被処理水がハニカム孔を通過することで該被処理水に含まれている汚泥物の沈殿処理が促進される技術である。
【0007】
しかし特許文献1の技術では、ある程度の大きさまでの汚濁物については沈降速度が速くなることで沈殿処理が促進されるが、沈降することなく被処理水中に浮遊していた細かな微粒子状の汚濁物についてはハニカム孔を通過してもその一部乃至は多くは沈降することなく被処理水中を浮遊したままであり、かかる細かな汚濁物の沈殿処理による分離回収は変わらず困難のままであるという欠点を有している。
【0008】
そこで本発明者は、原水が導水及び/又は貯留される処理槽内に、気泡を発生する気泡発生装置と、スリット状及び/又は細管状の複数の通水路を有するフロック浮上促進装置と、を配設する構成によって、発生した気泡を前記通水路を通過させて浮上又は循環させることでフロック化した汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合を促進させることで、フロック化した汚濁物の浮上速度を速めることで原水からの汚濁物の分離回収を速やかに行うことができる技術を先に提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3792577号
【特許文献2】特開2010−012370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は当該技術について更に研究を続けた結果、先提案技術では原水からの汚濁物の分離を高効率に行うための手法として改善の余地があることが判った。特に、沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の分離回収に改善の余地があることが判った。
【0011】
そこで本発明の課題は、沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能な汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
【0013】
1.被処理水である原水中の汚濁物をフロック化し、該フロック化した汚濁物にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を付着させることで前記原水中から前記汚濁物を浮上分離させて回収する汚濁物浮上分離回収装置において、
前記汚濁物浮上分離回収装置は、気泡撹拌混合部と浮上分離促進部とを有して成り、
前記気泡撹拌混合部は、前記原水が導水及び/又は貯留される撹拌混合槽と、該撹拌混合槽内に配設されて前記原水中に気泡を発生させる気泡発生装置と、を有し、
前記浮上分離促進部は、前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽の下流側に該撹拌混合槽とは別槽構成で且つ通水可能に接続されて気泡が撹拌混合された原水が送水される浮上分離槽と、該浮上分離槽内の上流側と下流側とを区切るように分断状態に配設されると共に前記原水が前記上流側から下流側へ通過可能なスリット状及び/又は細管状の複数の通水路が形成された分離促進部材と、を有し、
前記気泡撹拌混合部で原水中に気泡を撹拌混合した後、該原水が浮上分離促進部に送水され、前記分離促進材の複数の通水路を通過する際に前記原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合が促進され、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収する構成であることを特徴とする汚濁物浮上分離回収装置。
【0014】
2.前記撹拌混合槽でフロックが形成される構成であることを特徴とする上記1に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0015】
3.無機凝集剤との凝集反応によって前記撹拌混合槽でフロックが形成される構成であることを特徴とする上記2に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0016】
4.前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とが、配管によって通水可能に接続された構成であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0017】
5.前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とが、一槽構成の処理槽内に配設した仕切板によって実質的に別槽に分離された構成であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0018】
6.浮上分離した汚濁物を液面部分に回収部を配設した回収装置で回収する構成であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0019】
7.前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽内への原水の導水が、ポンプ等の送水手段によって槽外から配管を介して導水する構成であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0020】
8.原水が前記浮上分離槽に入るまでに該原水中に高分子凝集剤を投入する構成であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0021】
9.前記原水が、沈砂槽施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L以上の前処理済み水、又は凝集沈殿施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L未満の一次処理済み水であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0022】
10.上記1〜7のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置を用い、該汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留した原水中に、気泡撹拌混合部の気泡発生装置により発生させた気泡を撹拌混合した後、該原水を浮上分離促進部の浮上分離槽に送水し、該浮上分子槽内に配設した分離促進材の複数の通水路を通過させることで、通過の際に前記原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化させると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合を促進し、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収することを特徴とする汚濁物浮上分離回収方法。
【0023】
11.前記汚濁物浮上分離回収装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留する原水のSS(浮遊物質)濃度が15mg/L以上である場合に無機凝集剤及び/又は高分子凝集剤を前記原水中に投入して処理を行うことを特徴とする上記10に記載の汚濁物浮上分離回収方法。
【0024】
12.凝集沈殿施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L未満の一次処理済み水を原水として汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留して処理を行うことを特徴とする上記10又は11に記載の汚濁物浮上分離回収方法。
【0025】
13.沈砂槽で砂・シルト分の沈降処理を行ったSS(浮遊物質)濃度が30mg/L以上の前処理済み水を原水とし、前記汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留した前記原水中に、気泡撹拌混合部の気泡発生装置により発生させた気泡を撹拌混合した後、該原水を浮上分離促進部の浮上分離槽に送水し、該浮上分子槽内に配設した分離促進材の複数の通水路を通過させることで、通過の前乃至は後又は最中に前記原水中の汚濁物への気泡の付着と気泡の付着した汚濁物同士の結合を促進し、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収する処理を行った後、
処理が済んだ処理済水を前記汚濁物浮上分離回収装置と同構成を有すると共に該汚濁物浮上分離回収装置の下流に配設された第2汚濁物浮上分離回収装置を用いて第2処理を行うことを特徴とする上記10又は11に記載の汚濁物浮上分離回収方法。
【0026】
上記本発明の好ましい実施態様としては下記構成を挙げることができる。
【0027】
14.前記分離促進部材の複数の通水路が前記浮上分離槽内の上流側が低く下流側が高くなるように前記分離促進部材を傾斜状態に配設したことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0028】
15.前記分離促進部材が、前記浮上分離槽内の上流側から下流側に複数個配設したことを特徴とする上記1〜3、14のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0029】
16.前記分離促進部材が、複数のハニカム孔群を有してなるハニカム構造体からなることを特徴とする上記1〜3、14、15のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0030】
17.前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とを接続する配管に静止型混合器を接続した構成であることを特徴とする上記4に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0031】
18.前記浮上分離槽が、フロック化した汚濁物を浮上分離させる分離槽部と汚濁物分離済みの処理済水を放流又は次槽へ送水する放流槽部とに分離されており、該分離槽部と該放流槽部とが底面近傍乃至は低層域に設けた導水部を介して連通した構成であることを特徴とする上記1〜5、14〜17のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0032】
19.前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽内の原水中に無機凝集剤を投入する構成であることを特徴とする上記1〜7、14〜18のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0033】
20.前記無機凝集剤の投入位置が、前記気泡発生装置の稼動用の給水管内であることを特徴とする上記19に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0034】
21.前記浮上分離促進部の浮上分離槽へ送水される原水中に高分子凝集剤を投入する構成であることを特徴とする上記8に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0035】
22.前記高分子凝集剤の投入位置が、前記気泡撹拌部の撹拌混合槽内であることを特徴とする上記8に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【0036】
23.前記高分子凝集剤の投入位置が、前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とを通水可能に接続する接続部分であることを特徴とする上記8に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【発明の効果】
【0037】
請求項1又は10に示す発明によれば、沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能な汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法を提供することができる。
【0038】
特に、気泡発生装置によって原水中に気泡を混合撹拌する気泡撹拌混合部と、分離促進部材の配設によって汚濁物への気泡の付着を促進して浮上させる浮上分離促進部と、に装置を分けたことから、気泡撹拌混合部の撹拌混合槽が単独槽となり、気泡の発生域を限定することができたため高い泡密度を保てるようになり、また、浮上分離促進部の浮上分離槽についても単独槽となったことにより、先提案技術で気泡発生時に生じていた撹拌流・乱流による浮上分離の障害が無くなったため原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合が促進されて浮上分離が速やかに行われるようになるという効果が得られる。
【0039】
更に、浮上分離促進部の浮上分離槽に配設した分離促進部材が、浮上分離槽内の上流側と下流側とを区切るように配設したことにより、該浮上分離槽内に送水された原水は下流側に流れる際に分離促進部材の通水路を必ず通過することになるので、原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合が促進されて浮上分離が速やか且つ確実に行われるようになるという効果が得られる。
【0040】
請求項2に示す発明によれば、浮上分離槽内でフロックが形成されることで浮上分離促進部の浮上分離槽での汚濁物の浮上分離がより速やか且つより確実に行われるようになる。
【0041】
請求項3に示す発明によれば、浮上分離槽内でのフロックの形成がより確実に行われるようになることで浮上分離促進部の浮上分離槽での汚濁物の浮上分離がとりわけ速やか且つとりわけ確実に行われるようになる。
【0042】
請求項4に示す発明によれば、浮上分離槽の構造が簡略化されるため設置に際しての運搬作業や加工作業等の諸作業が容易である。また、原水槽や、初期沈殿槽である沈砂槽に気泡発生装置を配設することで気泡撹拌混合部(槽)として利用することが可能である。
【0043】
請求項5に示す発明によれば、装置構成の簡略化、特に槽構成の簡略化を図ることができるので省スペース化・低コスト化を図ることができる。
【0044】
請求項6に示す発明によれば、フロック化し、気泡が付着して原水中から浮上分離して液面に溜まった汚濁物を容易に回収することができる。
【0045】
請求項7に示す発明によれば、原水の導水を処理装置の導水手段として一般的な手段であるポンプ等の送水手段によって行うことができる。この場合、気泡発生装置の稼動用の給水は撹拌混合槽内の原水を用いる槽内循環とすることができる。
【0046】
請求項8に示す発明によれば、原水中の汚濁物及び微細なフロックが凝集剤の高分子によってより付着し易くなるので浮上分離が更に促進されることになる。
【0047】
請求項9に示す発明によれば、既にある程度の大きさの汚濁物が分離回収され、原水中に浮遊する細かな微粒子状の汚濁物を浮上分離して回収することで前処理済み又は一次処理済みの原水の更なる浄化が可能となる。特に、本構成によれば、従来の汚濁物分離処理の際の凝集沈殿処理の後工程として一般的な濾過処理に換えて本発明の汚濁物浮上分離回収処理を行うことで、より効率的に沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能となる。
【0048】
請求項11に示す発明によれば、原水のSS(浮遊物質)濃度が15mg/L以上である場合に凝集剤の添加することで浮上分離性能を向上させることができる。
【0049】
請求項12に示す発明によれば、既にある程度の大きさの汚濁物が分離回収され、原水中に浮遊する細かな微粒子状の汚濁物を浮上分離して回収することで一次処理済みの原水の更なる浄化が可能となる。特に、本構成によれば、従来の汚濁物分離処理の際の凝集沈殿処理の後工程として一般的な濾過処理に換えて本発明の汚濁物浮上分離回収処理を行うことで、より効率的に沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能となる。
【0050】
請求項13に示す発明によれば、従来の汚濁物分離処理の際の凝集沈澱処理に換えて本発明の汚濁物浮上分離回収処理を行い、処理後に更に同構成の装置を用いて二度目の汚濁物浮上分離回収処理を行うため、より効率的に沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能となるという効果をより向上させることができる。
【0051】
また、上記本発明の好ましい実施態様によれば、下記の通りの効果を夫々得ることができる。
【0052】
実施態様項14に示す発明によれば、フロック化すると共に気泡の付着した汚濁物が該スリット状及び/又は細管状の複数の通路の内壁面に、より付着し易くなるため、汚濁物同士の結合機会が増大することになり、より速やかに汚濁物同士が結合して大型化して浮力が増大するので、汚濁物の浮上速度をより速めることができる。従って、汚濁物を原水から更に速やかに分離して回収することができる。
【0053】
実施態様項15に示す発明によれば、分離促進部材の通水路を複数回通過することになるので、フロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合機会が増大することになり、より速やかに汚濁物同士が結合して大型化して浮力が増大するので、汚濁物の浮上速度をより速めることができる。従って、汚濁物を原水から更に速やかに分離して回収することができる。
【0054】
実施態様項16に示す発明によれば、ハニカム孔群は複数の細管状の通路が整然と規則正しく並ぶ構成を有していることから、フロック化すると共に気泡の付着した汚濁物が複数のハニカム孔群の各通路の内壁面に、より付着し易くなるため、汚濁物同士の付着機会が増大することになり、より速やかに汚濁物同士が付着して浮力が増大するので、汚濁物の浮上速度をより速めることができる。従って、汚濁物を原水から更に速やかに分離して回収することができる。
【0055】
実施態様項17に示す発明によれば、原水中への気泡の撹拌混合をより確実に且つ効果的に行うことができる。
【0056】
実施態様項18に示す発明によれば、分離槽と放流槽との導水部を底面近傍乃至は低層域に設けたことにより、浮上途中のフロック及び/又は分離槽中で分離浮上して該分離槽の液面に溜まった汚濁物が前記導水部から放流槽への浸入を防ぐことができる。
【0057】
実施態様項19に示す発明によれば、原水中のSS(浮遊物質)濃度が高い場合(概ね15mg/L)に原水中の汚濁物がより付着しやすくなるので浮上分離が促進されることになる。
【0058】
実施態様項20に示す発明によれば、無機凝集剤を原水に効率的に分散させることが可能である。
【0059】
実施態様項21又は22に示す発明によれば、高分子凝集剤の投入が容易である。
【0060】
実施態様項23に示す発明によれば、高分子凝集剤を原水に効率的に分散させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る汚濁物浮上分離回収装置の第1実施例を示す概略構成図
【図2】汚濁物浮上分離回収装置の参考例を示す概略構成図
【図3】図1に示す第1実施例と図2に示す参考例による実験例1の試験結果を示すグラフ
【図4】実験例2の試験結果を示すグラフ
【図5】実験例3の試験結果を示すグラフ
【図6】実験例4の試験結果を示すグラフ
【図7】実験例5の試験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明に係る汚濁物浮上分離回収装置及び汚濁物浮上分離回収方法について図面に基づき詳細に説明する。
【0063】
本発明に係る汚濁物浮上分離回収装置(以下、単に回収装置と言うこともある。)1は、図1に示すように、被処理水である原水中の汚濁物をフロック化し、該フロック化した汚濁物にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を付着させることで前記原水中から前記汚濁物を浮上分離させて回収するものであり、気泡撹拌混合部2と浮上分離促進部3とを有して構成されている。尚、本明細書において「原水」とは、沈砂槽施設で前処理された前処理済み水、凝集沈殿施設で一次処理された一次処理済み水を言うこととする。
【0064】
気泡撹拌混合部2は、前記原水が導水及び/又は貯留(本実施例では回収装置1の外部の原水槽4からの送水により導水される。)される撹拌混合槽21と、該撹拌混合槽21内に配設されて前記原水中に気泡を発生させる気泡発生装置22と、を有して構成されている。
【0065】
撹拌混合槽21は、汚濁物が含まれる原水が導水され、気泡発生装置22によって気泡を発生すると共に原水中に撹拌混合するための槽であり、この種の水処理槽として公知公用の材質や大きさ等の構成のものを特別の制限なく用いることができる。撹拌混合槽21への原水の導水は、土木・建設工事などで地中から流出発生した濁水をポンプ等で排水したものをそのまま或いは貯溜槽等を介して間接的に配管を通して撹拌混合槽21外から導水されるか、或いは凝集沈殿施設等である程度の汚濁物を分離回収した後の一次処理済み水を導水することである。本発明は、沈砂槽施設や凝集沈殿施設等での処理によっても回収し切れなかった細かな微粒子状の汚濁物の分離回収に特に有効に用いられるものである。尚、図1に示す実施例及び後述する図2に示す参考例では、原水を貯溜する原水槽4から導水した場合の構成例を示す。尚また、本発明が適用される水処理分野は、上記した土木・建設現場で発生する濁水の浄化処理に限らず、河川・湖沼・池・海等の水域における水浄化処理等、本発明の範囲内で適用可能な水浄化処理に用いることができる。
【0066】
気泡発生装置22は、撹拌混合槽21外から気体を導入し、撹拌混合槽21内でマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を発生するものであり、この種の水処理技術に用いられる公知公用のマイクロバブル発生手段やエアバブル発生手段を特別の制限なく用いることができる(例えば、特開2010−000420、特許4019154号等参照)。尚、図1(図2も同様)に示す該気泡発生装置22の稼動用の給水は、撹拌混合槽21内の原水を用いる槽内循環によって行われることが好ましい。尚、槽内循環による場合、気泡発生装置22のポンプ23の吸水による気泡発生部分への影響を軽減するために気泡発生装置22とポンプ23の吸水部23Aとの間に遮断壁部24を配設することが好ましい。
【0067】
前記気泡発生装置22によって発生する気泡は、原水中のフロック化した汚濁物に付着し、該気泡が付着したフロック化した汚濁物を気泡の浮力によって液面に向かって浮上させることになる。フロック化した汚濁物への気泡の付着は、フロック化した汚濁物の周囲に単に付着する場合だけでなく、マイクロバブル又はエアバブルの如き微細気泡の場合には気泡の周囲に汚濁物が付着して該気泡を内部に封入するように内包状態となる場合もあり、本発明では、前記した付着のみならず、内包状態となった場合も「付着」と言うこととする。
【0068】
以上のように撹拌混合槽21はフロックが形成される槽であり、該撹拌混合槽21は発生した気泡と原水とが撹拌混合されてフロックが形成されるに充分な反応時間を確保できる槽構成(原水容量に対する発生する気泡の密度等の諸条件から導き出される槽構成)を有し、無機凝集剤が投入される態様の場合には凝集反応が好適に行われるに充分な槽構成を有することが好ましい。
【0069】
汚濁物浮上分離回収の処理に際しては、汚濁物のより凝集性を高めることでフロック化をより促進するために、無機凝集剤及び/又は高分子凝集剤を投入することが好ましい。凝集剤を投入するか否かは、気泡撹拌混合部2の撹拌混合槽21に導水及び/又は貯留する原水のSS(浮遊物質)濃度によって判断することが好ましく、該SS濃度が15mg/L以上である場合に無機凝集剤及び/又は高分子凝集剤を前記原水中に投入し、15mg/L未満である場合には投入しないまま処理を行うことが好ましい。
【0070】
無機凝集剤の投入位置としては、前記気泡発生装置22の稼動用の給水管内であることが好ましい。
【0071】
高分子凝集剤の投入位置としては、原水が浮上分離槽31に入るまでの段階で投入することが好ましく、具体的な投入位置としては、撹拌混合槽21内であってもよいし、図1に示す本実施例のように、気泡撹拌混合部2の撹拌混合槽21と浮上分離促進部3の浮上分離槽31とを通水可能に接続する接続部分である配管内であってもよい。撹拌混合槽21と浮上分離槽31との接続部分である配管内に投入する場合、該投入位置の下流に混合手段25を配設することで、気泡が混合された原水に高分子凝集剤を効率的に分散させることができるので好ましい。混合手段25としては、例えば、静止型混合器、プロペラ体や回転羽根体等の動的撹拌手段を有する混合器、前記通水接続部分に落差を設けた落下衝撃型の混合手段等、公知公用の混合手段を挙げることができる。
【0072】
尚、凝集剤投入手段としては、この種の水処理技術に用いられる公知公用の手段が特別の制限なく挙げられる。尚また、投入される凝集剤としては、この種の水処理技術に用いられる公知公用のものが特別の制限なく挙げられ、例えば、無機凝集剤ではPAC(ポリ塩化アルミニウム)が好ましく挙げられ、高分子凝集剤としてはポリアクリルアミドが好ましく挙げられる。
【0073】
また、無機凝集剤と高分子凝集剤の両方を投入する場合、高分子凝集剤の投入位置は無機凝集剤の投入位置より下流位置であることが好ましい。
【0074】
以上の構成を有する気泡撹拌混合部2で気泡が撹拌混合された原水は、該気泡撹拌混合部2の下流側に配設された浮上分離促進部3に送水されることになる。
【0075】
前記浮上分離促進部3は、前記気泡撹拌混合部2の撹拌混合槽21の下流側に該撹拌混合槽21とは別槽構成で且つ通水可能に接続されて気泡が撹拌混合された原水が送水される浮上分離槽31と、該浮上分離槽31内の上流側と下流側とを区切るように分断状態に配設されると共に前記原水が前記上流側から下流側へ通過可能なスリット状及び/又は細管状の複数の通水路が形成された分離促進部材32と、を有して構成されている。
【0076】
浮上分離槽31と前記撹拌混合槽21とは、図1に示す本実施例のように配管によって通水可能に接続された別槽構成であることが好ましいが、気泡撹拌混合部2の撹拌混合槽21と浮上分離促進部3の浮上分離槽31とが、一槽構成の処理槽内に配設した仕切板によって実質的に別槽に分離された構成であることも本発明に包含することができる。
【0077】
浮上分離槽31に配設された分離促進部材32は、プロペラ体や回転羽根体等の動的撹拌手段を有する混合器ではなく、原水の循環流や気泡が下方から上方へ通過可能なスリット状及び/又は細管状の複数の通路を有してなる。前記撹拌混合槽21内にて気泡発生装置22によって発生した気泡が付着したフロック化した汚濁物を含む原水が浮上分離槽31に送水され、この送水された原水中の気泡が付着したフロック化した汚濁物が浮上の際に原水と共に、前記スリット状及び/又は細管状の複数の通水路の中を通過するが、この通過の際に、該スリット状及び/又は細管状の複数の通水路の内壁面に汚濁物が次々に付着し、付着した汚濁物同士が結合して大型化することになる。汚濁物同士の結合によって大型化することで更に浮力が増大し、浮力が前記内壁面に対する付着力を上回った時点で前記内壁面から離脱し、液面に向かって浮上することになる。大型化によって浮力が増大したフロック化した汚濁物は浮上速度が速いため、原水から速やかに分離することができる。
【0078】
分離促進部材32は、スリット状及び/又は細管状の複数の通水路が浮上分離槽31内の上流側が低く下流側が高くなるように該分離促進部材32を傾斜状態に配設することが好ましい。傾斜状態に配設することによって、スリット状及び/又は細管状の複数の通水路の各通水路をフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物が通過する際に、各通水路の内壁面により付着し易くなるため、汚濁物同士の結合機会が増大することになり、より速やかに汚濁物同士が結合して大型化して浮力が増大するので、汚濁物の浮上速度をより速めることができる。
【0079】
分離促進部材32のスリット状及び/又は細管状の複数の通水路の具体的構成としては、例えば、複数枚の邪魔板を任意の間隔で並列させることで各邪魔板間の間隙がスリット状の複数の通水路として形成される構成、複数枚の波板を任意の間隔で並列させることで各波板間の間隙が波形のスリット状の複数の通水路として形成される構成、角管又は丸管等の管体を複数本束ねることで細管状の複数の通水路が形成される構成、ハニカム構造体の複数のハニカム孔群が通水路となる構成、これらの混合混成、等を挙げることができ、中でもハニカム構造体を用いることで形成される構成が好ましい。
【0080】
分離促進部材32は、図1に示す本実施例のように浮上分離槽31内の上流側から下流側に複数個(本実施例では3個)配設することが好ましい。分離促進部材32を複数個配設することで、該分離促進部材32の通水路を汚濁物を含む原水が複数回通過することになるので、フロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合機会が増大することになり、より速やかに汚濁物同士が結合して大型化して浮力が増大し、汚濁物の浮上速度をより速めることができる。従って、汚濁物を原水から更に速やかに分離して回収することができる。尚、分離促進部材32の配設個数は本実施例の3個に限定されず、1個又は2個でもよいし、4個以上であってもよく、回収装置1全体の大きさや設置されるスペース、原水のSS濃度等の諸条件によって適宜好ましい数を配設する。
【0081】
以上の構成を有する分離促進部材32のスリット状及び/又は細管状の複数の通水路内を通過し、液面に向かって浮上したフロック化した汚濁物は、液面に溜まることになる。液面に溜まった汚濁物は該液面を越流(オーバーフロー)させるか、該液面から吸引手段やスクレーパー等の掻取手段等の回収手段によって回収する。図1に示す本実施例では、液面に吸引管を接触乃至は浸漬した回収装置5によって回収する構成を示す。尚、図1に示す本実施例のように分離促進部材32を複数個配設した態様の場合、各分離促進部材32の下流にて回収装置5によって回収する構成であることが好ましい。
【0082】
尚、前記浮上分離槽31は、フロック化した汚濁物を浮上分離させる分離槽部31Aと汚濁物分離済みの処理済水を放流又は次槽へ送水する放流槽部31Bとに分離されていることが好ましく、汚濁物が分離除去された原水は放流槽部31Bを通って放流(排水)されるか、又は次処理等が必要な場合には次槽等へ送水されることになることで汚濁物分離回収の一工程が終了する。分離槽部31Aと放流槽部31Bとは、仕切板33によって仕切ることで分離されており、該仕切板33は底面近傍乃至は低層域を除く部分に配設されることで底面近傍乃至は低層域に導水部が設けられることになる。仕切板33を配設することによって、気泡が付着したフロック化した汚濁物は前述したように浮上分離して液面に溜まった状態となるので、汚濁物が該導水部を通過して放流槽部31Bに浸入するのを抑制することができる。
【0083】
以上、本発明に係る汚濁物浮上分離装置及び汚濁物浮上分離回収方法について実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0084】
水処理工程中において本発明が好ましく適用される工程位置としては、凝集沈殿施設等である程度の汚濁物を分離回収した後、即ち、凝集沈澱処理工程の後工程として一般的な濾過処理に換えて本発明の処理を用いることであるが、本発明はこれに限定されず、沈砂槽施設で前処理した後に本発明の処理を行うこと、即ち、既存の凝集沈澱処理を行わず当該凝集沈澱処理に換えて本発明の処理を用いるようにすることもできるし、沈砂槽施設での前処理の後の凝集沈澱処理と濾過処理の両方に換えて本発明の処理を二度連続で二重処理とすることもできる。尚、凝集沈殿施設で一次処理した一次処理済み水のSS(浮遊物質)濃度は概ね30mg/L未満まで低下しており、沈砂槽施設で前処理を行ったのみで凝集沈殿処理を行っていない前処理済み水のSS(浮遊物質)濃度は概ね30mg/L以上のままとなっている。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について実験例に基づき説明する。
【0086】
[実験例1]
<第1実施例>
図1に示す構成の汚濁物浮上分離回収装置1を用いてSS濃度が30mg/L程度の原水の処理を行ったところ、図3に示すような結果を得た。尚、処理開始時のSS濃度は30.4mg/Lであった。尚、気泡発生装置22としては、特許4019154号に記載の構成、即ち、縮流部及び渦崩壊部があり、配管内に垂直の旋回流を作るために複数の羽を有しており、配管長手方向に垂直の旋回流をおこして、その中心が負圧になり、取り込んだ気体が旋回流の中心に集まる構造の装置を用いた。
【0087】
<参考例>
図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1の撹拌混合槽21と浮上分離槽31とを同一槽構成とした以外は同様にした図2に示す汚濁物浮上分離回収装置1Hを用いてSS濃度が30mg/L程度の原水の処理を行ったところ、図3に示すような結果を得た。尚、処理開始時のSS濃度は32.7mg/Lであった。
【0088】
<結果>
図3のグラフに示す通り、第1実施例では12.1mg/L(30分以降の平均)までSS濃度が低下していたのに対し、参考例では20.3mg/L(30分以降の平均)までしかSS濃度は低下しなかった。
【0089】
従って、気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と浮上分離促進部の浮上分離槽とを別槽構成にすることで、沈み難く且つ浮き難い汚濁粒子の速やかな浮上分離回収が可能となることが判った。
【0090】
即ち、気泡発生装置によって原水中に気泡を混合撹拌する気泡撹拌混合部と、分離促進部材の配設によって汚濁物への気泡の付着を促進して浮上させる浮上分離促進部と、に装置を分けたことから、気泡撹拌混合部の撹拌混合槽が単独槽となり、気泡の発生域を限定することができたため高い泡密度を保てるようになり、また、浮上分離促進部の浮上分離槽についても単独槽となったことにより、先提案技術で気泡発生時に生じていた撹拌流・乱流による浮上分離の障害が無くなったため原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合が促進されて浮上分離が速やかに行われるようになったことが判った。
【0091】
更に、参考例も同様の構成であるが、浮上分離促進部の浮上分離槽に配設した分離促進部材が、浮上分離槽内の上流側と下流側とを区切るように配設したことにより、該浮上分離槽内に送水された原水は下流側に流れる際に分離促進部材の通水路を必ず通過することになるので、原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック同士の結合が促進されて浮上分離が速やか且つ確実に行われるようになるという効果が得られることが判った。
【0092】
尚、第1実施例の原水、参考例の原水について各々処理を行わない場合のSS濃度の経時変化にもついてもグラフに示した。
【0093】
[実験例2]
<比較例1>
凝集沈殿処理を行った一次処理済み水のSS濃度の径時変化について測定したところ、図4に示すような結果を得た。
尚、処理を行う原水は常に流れてくるため、そのSS濃度は不安定であるため、図4に示す比較例1のSS濃度のグラフは一定値を示すことなく時間毎に変動するものとなっている。後述する図5の比較例2、図6の比較例3、図7の比較例4の各々についても同様である。
【0094】
<第2実施例>
比較例1と同じ凝集沈殿処理を行った一次処理済み水を用いて、図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1を用いた本発明による浮上分離処理を行った場合のSS濃度の径時変化について測定したところ、図4に示すような結果を得た。
【0095】
<結果>
図4のグラフに示す通り、比較例1の一次処理済み水の時間経過毎のSS濃度は36.9mg/L(1時間以降の平均)と改善が見られるどころか上昇してしまったのに対し、本発明の第2実施例では一次処理済み水のSS濃度を8.0mg/L(1時間以降の平均)まで低下させることができることが判った。
従って本発明によれば、凝集沈澱処理を行ったSS濃度が30mg/L未満の一次処理済み水のSS濃度を更に低下させることができることが判った。
尚、本発明によれば、凝集沈澱処理を行った一次処理済み水のSS濃度を更に低下させることができることで、用いられる濾過装置に掛かる負担が軽減されるので逆洗浄頻度が減少したり(洗浄水の減少効果も有り。)、濾過材の耐久性向上も得られるという効果もあることが判った。
【0096】
[実験例3]
<比較例2>
沈砂槽処理を行った前処理済み水のSS濃度の径時変化について測定したところ、図5に示すような結果を得た。
【0097】
<第3実施例>
比較例2と同じ沈砂槽処理を行った前処理済み水を用いて、図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1を用いた本発明による浮上分離処理を行った後、該図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1と同様の構成の装置を用いて再び本発明による浮上分離処理を行う二重処理を行った場合のSS濃度の径時変化について測定したところ、図5に示すような結果を得た。
【0098】
<結果>
図5のグラフに示す通り、比較例2の前処理済み水の時間経過毎のSS濃度は237.3mg/L(1時間以降の平均)であったが、本発明の第3実施例では凝集沈澱処理を行わないにもかかわらず前処理済み水のSS濃度を22.7mg/L(1時間以降の平均)まで濁度が低下させることができることが判った。
従って本発明によれば、沈砂槽施設による前処理のみで凝集沈澱処理を行っていないSS濃度が30mg/L以上の前処理済み水であっても、従来の凝集沈澱処理と同等の浄化能力を当該凝集沈澱処理よりも簡易な構成によって得られることが判った。特に、本発明による浮上分離処理を二重に行うことで高効率な浄化処理が可能であることが判った。
【0099】
[実験例4]
<比較例3>
凝集沈殿処理を行った一次処理済み水のSS濃度の径時変化について測定したところ、図6に示すような結果を得た。
【0100】
<第4実施例>
比較例3と同じ凝集沈殿処理を行った一次処理済み水を用いて、図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1を用い、凝集剤を投入することなく本発明による浮上分離処理を行った場合のSS濃度の径時変化について測定したところ、図6に示すような結果を得た。
【0101】
<結果>
図6のグラフに示す通り、SS濃度が11mg/L程度(15mg/L未満)であった一次処理済み水の時間経過毎のSS濃度が、比較例3では14.55mg/L(1時間以降の平均)と改善がほぼ見られなかったのに対し、本発明の第4実施例ではSS濃度を8.2mg/L(1時間以降の平均)まで低下させることができることが判った。
従って本発明によれば、凝集沈澱処理を行った一次処理済み水のSS濃度がそれほど高くない場合(15mg/L未満である場合)であっても、本発明の浮上分離処理によれば凝集剤を投入することなく一次処理済み水のSS濃度を更に低下させることができることが判った。
尚、凝集沈澱処理を行った一次処理済み水中の汚濁は既にフロックを形成しているため、高い気泡密度によって凝集剤の再添加が必要ないと考えられる。凝集剤を添加して処理を行う場合のSS濃度の目安は15mg/L以上である。
【0102】
[実験例5]
<比較例4>
沈砂槽処理を行った前処理済み水のSS濃度の径時変化について測定したところ、図7に示すような結果を得た。
【0103】
<第5実施例>
比較例4と同じ沈砂槽処理を行った前処理済み水を用いて、図1に示す汚濁物浮上分離回収装置1を用い、凝集剤を投入することなく本発明による浮上分離処理を行った場合のSS濃度の径時変化について測定したところ、図7に示すような結果を得た。
【0104】
<結果>
図7のグラフに示す通り、SS濃度が160mg/L程度であった前処理済み水の時間経過毎のSS濃度が、比較例4では209.8mg/L(1時間以降の平均)と改善が見られるどころか上昇してしまったのに対し、本発明の第5実施例では凝集沈澱処理を行わないだけでなく凝集剤も投入することなく処理を行ったにもかかわらず前処理済み水のSS濃度を113.3mg/L(1時間以降の平均)と50mg/L程度もSS濃度を低下させることができることが判った。
従って本発明によれば、沈砂槽施設による前処理のみで凝集沈澱処理を行っていないSS濃度が30mg/L以上の前処理済み水であっても、前処理槽(沈砂槽)に気泡撹拌混合部と同様の機能を持たせた簡易な構成でしかも凝集剤を投入することなくSS濃度を低下させることができることが判った。
【符号の説明】
【0105】
1 汚濁物浮上分離回収装置
2 気泡撹拌混合部
21 撹拌混合槽
22 気泡発生装置
23 ポンプ
23A 吸水部
24 遮断壁部
25 混合手段
3 浮上分離促進部
31 浮上分離槽
31A 分離槽部
31B 放流槽部
32 分離促進部材
33 仕切板
4 原水槽
1H 汚濁物浮上分離回収装置(比較例)
2H 気泡撹拌混合部(比較例)
3H 浮上分離促進部(比較例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水である原水中の汚濁物をフロック化し、該フロック化した汚濁物にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を付着させることで前記原水中から前記汚濁物を浮上分離させて回収する汚濁物浮上分離回収装置において、
前記汚濁物浮上分離回収装置は、気泡撹拌混合部と浮上分離促進部とを有して成り、
前記気泡撹拌混合部は、前記原水が導水及び/又は貯留される撹拌混合槽と、該撹拌混合槽内に配設されて前記原水中に気泡を発生させる気泡発生装置と、を有し、
前記浮上分離促進部は、前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽の下流側に該撹拌混合槽とは別槽構成で且つ通水可能に接続されて気泡が撹拌混合された原水が送水される浮上分離槽と、該浮上分離槽内の上流側と下流側とを区切るように分断状態に配設されると共に前記原水が前記上流側から下流側へ通過可能なスリット状及び/又は細管状の複数の通水路が形成された分離促進部材と、を有し、
前記気泡撹拌混合部で原水中に気泡を撹拌混合した後、該原水が浮上分離促進部に送水され、前記分離促進材の複数の通水路を通過する際に前記原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化すると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合が促進され、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収する構成であることを特徴とする汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項2】
前記撹拌混合槽でフロックが形成される構成であることを特徴とする請求項1に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項3】
無機凝集剤との凝集反応によって前記撹拌混合槽でフロックが形成される構成であることを特徴とする請求項2に記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項4】
前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とが、配管によって通水可能に接続された構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項5】
前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽と前記浮上分離促進部の浮上分離槽とが、一槽構成の処理槽内に配設した仕切板によって実質的に別槽に分離された構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項6】
浮上分離した汚濁物を液面部分に回収部を配設した回収装置で回収する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項7】
前記気泡撹拌混合部の撹拌混合槽内への原水の導水が、ポンプ等の送水手段によって槽外から配管を介して導水する構成であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項8】
原水が前記浮上分離槽に入るまでに該原水中に高分子凝集剤を投入する構成であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項9】
前記原水が、沈砂槽施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L以上の前処理済み水、又は凝集沈殿施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L未満の一次処理済み水であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の汚濁物浮上分離回収装置を用い、該汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留した原水中に、気泡撹拌混合部の気泡発生装置により発生させた気泡を撹拌混合した後、該原水を浮上分離促進部の浮上分離槽に送水し、該浮上分子槽内に配設した分離促進材の複数の通水路を通過させることで、通過の際に前記原水中の汚濁物への気泡の付着とフロック化させると共に気泡の付着した汚濁物同士の結合を促進し、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収することを特徴とする汚濁物浮上分離回収方法。
【請求項11】
前記汚濁物浮上分離回収装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留する原水のSS(浮遊物質)濃度が15mg/L以上である場合に無機凝集剤及び/又は高分子凝集剤を前記原水中に投入して処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の汚濁物浮上分離回収方法。
【請求項12】
凝集沈殿施設で処理したSS(浮遊物質)濃度が30mg/L未満の一次処理済み水を原水として汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留して処理を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の汚濁物浮上分離回収方法。
【請求項13】
沈砂槽で砂・シルト分の沈降処理を行ったSS(浮遊物質)濃度が30mg/L以上の前処理済み水を原水とし、前記汚濁物浮上分離装置の気泡撹拌混合部の撹拌混合槽に導水及び/又は貯留した前記原水中に、気泡撹拌混合部の気泡発生装置により発生させた気泡を撹拌混合した後、該原水を浮上分離促進部の浮上分離槽に送水し、該浮上分子槽内に配設した分離促進材の複数の通水路を通過させることで、通過の前乃至は後又は最中に前記原水中の汚濁物への気泡の付着と気泡の付着した汚濁物同士の結合を促進し、気泡の付着によって浮上したフロック化した汚濁物を回収する処理を行った後、
処理が済んだ処理済水を前記汚濁物浮上分離回収装置と同構成を有すると共に該汚濁物浮上分離回収装置の下流に配設された第2汚濁物浮上分離回収装置を用いて第2処理を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の汚濁物浮上分離回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240237(P2011−240237A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113903(P2010−113903)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】