説明

河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システム

【課題】 河川増水時の鉄道や道路等の交通機関の運転規制値を変更して河川増水と地震の複合災害を防止し、安全性の向上を図ることができる、河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムを提供する。
【解決手段】
河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、鉄道や道路が構築されている橋梁に河川の水位計5を、前記橋梁の近傍に地震計6をそれぞれ設置し、前記水位計5による過去の水位データと前記地震計6による過去の地震データ、過去の増水又は地震による前記橋梁の被災度、並びに前記橋梁の防災工事に関する防災度を処理装置の記憶装置に予め蓄積しておき、前記水位計による水位データ又は前記地震データが新たに計測されると、中央処理装置によって前記記憶装置に蓄積されたデータを読み出して、前記橋梁の運転規制値を変更可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、降雨やダム放水時などは、河川の水位が上昇し、橋梁の橋台・橋脚まわりで洗掘が発生しやすい状態となる。また、地震発生時には、河床の地盤がゆるんだり、周辺地盤で液状化が発生する可能性があり、橋梁の橋台・橋脚の安全性が通常時よりも低下すると考えられる。
本発明者らは、既に、鉄道や道路付近の斜面における降雨と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−236698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した河川増水時の鉄道や道路等の交通機関の運転規制値の変更については、十分であるとは言えないのが現状である。
本発明は、上記状況に鑑みて、河川増水時の鉄道や道路等の交通機関の運転規制値を変更して河川増水と地震の複合災害を防止し、安全性の向上を図ることができる、河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、鉄道や道路が構築されている橋梁に河川の水位計を、前記橋梁の近傍に地震計をそれぞれ設置し、前記水位計による過去の水位データと前記地震計による過去の地震データ、過去の増水又は地震による前記橋梁の被災度、並びに前記橋梁の防災工事に関する防災度を処理装置の記憶装置に予め蓄積しておき、前記水位計による水位データ又は前記地震計による地震データが新たに計測されると、中央処理装置によって前記記憶装置に蓄積されたデータを読み出して、前記橋梁の運転規制値を変更可能にすることを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、前記水位計による水位データが予め定められた規定値を超過した場合には、地震による前記運転規制値を低減させることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、前記地震計による地震データが予め定められた規定値を超過した場合には、河川増水による前記運転規制値を低減させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、河川増水時の鉄道や道路等の交通機関の運転規制値を変更して河川増水と地震の複合災害を防止し、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例を示す河川増水と地震の複合災害を防止する橋梁に構築された交通機関の運転規制値の変更システムの構成図である。
【図2】本発明に係る河川増水と地震の複合災害に対する運転規制値の変更システムにおける処理装置及び運転規制値の変更情報の報知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムは、鉄道や道路が構築されている橋梁に河川の水位計を、前記橋梁の近傍に地震計をそれぞれ設置し、前記水位計による過去の水位データと前記地震計による過去の地震データ、過去の増水又は地震による前記橋梁の被災度、並びに前記橋梁の防災工事に関する防災度を処理装置の記憶装置に予め蓄積しておき、前記水位計による水位データ又は前記地震計による地震データが新たに計測されると、中央処理装置によって前記記憶装置に蓄積されたデータを読み出して、前記橋梁の運転規制値を変更可能にする。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す河川増水と地震の複合災害を防止する橋梁に構築された交通機関の運転規制値の変更システムの構成図である。
この図において、1は河川、2は橋脚、3は橋桁、4は橋台、5は水位計、6は地震計、11は水位計5と地震計6とが接続される橋梁に構築された交通機関の運転規制値の変更処理装置である。なお、水位計5は、例えば、橋台4や橋脚2に設置することができる。
【0011】
図2は本発明に係る河川増水と地震の複合災害に対する運転規制値の変更システムにおける処理装置及び運転規制値の変更情報の報知装置のブロック図である。
この図において、橋梁に構築された交通機関の運転規制値の変更処理装置11は、入力インターフェース12、CPU(中央処理装置)13、記憶装置14、運転規制値の変更装置15、出力インターフェース16を備えている。記憶装置14は、橋梁の災害の発生年月日a、災害時の水位データ又は地震データb、被災度c、橋梁の防災工事に関する防災度dなどを記憶している。出力インターフェース16からの出力は運転規制値の変更情報の報知装置17に送信される。
【0012】
そこで、河川1の水位が増水した場合は、まず、その河川1の水位データを水位計5で計測し、過去の水位データ及び地震データb、過去の増水又は地震による橋梁の被災度c、並びに橋梁の防災工事に関する防災度dが予め蓄積されている記憶装置14を検索し、その検索結果に基づいて、CPU(中央処理装置)13により、運転規制値の変更装置15が河川増水後の地震に対する運転規制値を変更する必要があるか否かを判定し、地震計6で計測している地震動の大きさにより、運転規制値を変更する必要があれば運転規制値の変更装置15から出力インターフェース16を介して報知装置17に運転規制値の変更情報を出力し、列車の運転士や運行指令員および自動車の運転手に報知することにより、河川1の増水中に揺れの大きい地震に見舞われた場合の橋梁交通の安全性を向上させることができる。
【0013】
一方、揺れの大きい地震に見舞われた場合は、まず、その地震のデータを記憶した後、同様に過去の水位データ及び地震データb、過去の増水又は地震による橋梁の被災度c、並びに橋梁の防災工事に関する防災度dが予め蓄積されている記憶装置14を検索し、その検索結果に基づいて、CPU(中央処理装置)13により、運転規制値の変更装置15が地震後の河川増水に対する運転規制値を変更する必要があるか否かを判定し、水位計5で計測している河川水位により、運転規制値を変更する必要があれば運転規制値の変更装置15から出力インターフェース16を介して報知装置17に運転規制値の変更情報を出力し、列車の運転士や運行指令員および自動車の運転手に報知することにより、揺れの大きい地震に見舞われた後に河川1の増水があった場合の橋梁交通の安全を向上させることができる。
【0014】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムは、河川増水と地震の複合災害に対する的確な予防対策を講じることができ、河川増水と地震の複合災害に対する橋梁に構築された運転規制値の変更システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 河川
2 橋脚
3 橋桁
4 橋台
5 水位計
6 地震計
11 橋梁に構築された交通機関の運転規制値の変更処理装置
12 入力インターフェース
13 CPU(中央処理装置)
14 記憶装置
15 運転規制値の変更装置
16 出力インターフェース
17 報知装置
a 橋梁の災害の発生年月日
b 災害時の水位データ又は地震データ
c 被災度
d 橋梁の防災工事に関する防災度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道や道路が構築されている橋梁に河川の水位計を、前記橋梁の近傍に地震計をそれぞれ設置し、前記水位計による過去の水位データと前記地震計による過去の地震データ、過去の増水又は地震による前記橋梁の被災度、並びに前記橋梁の防災工事に関する防災度を処理装置の記憶装置に予め蓄積しておき、前記水位計による水位データ又は前記地震計による地震データが新たに計測されると、中央処理装置によって前記記憶装置に蓄積されたデータを読み出して、前記橋梁の運転規制値を変更可能にすることを特徴とする河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システム。
【請求項2】
請求項1記載の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、前記水位計による水位データが予め定められた規定値を超過した場合には、地震による前記運転規制値を低減させることを特徴とする河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システム。
【請求項3】
請求項1記載の河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システムにおいて、前記地震計による地震データが予め定められた規定値を超過した場合には、河川増水による前記運転規制値を低減させることを特徴とする河川増水と地震の複合災害に対する交通機関の運転規制値の変更システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256207(P2012−256207A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128913(P2011−128913)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】