説明

油分離器

【課題】構造が簡素で小型でありながら油分離効率の高い油分離器を提供する。
【解決手段】略円筒形の容器本体2と、容器本体2の内壁に開口し、容器本体2に略垂直に接続された導入流路4と、導入流路4の開口4aに対向し、容器本体2の内壁2aに沿って延伸する隔壁部材5と、隔壁部材5の上端と容器本体の内壁との間を封止する上端部材と、隔壁部材5の片側の側端と容器本体2の内壁2aとの間を封止する側端部材7とを有する油分離器1において、隔壁部材5と容器本体2の内壁2aとの間の隙間Gは、導入流路4の内径d以下であり、且つ、少なくとも側端部材7が設けられていない開放側の側端において最大となり、隔壁部材5の導入流路4の中心に対向する位置から開放側の側端までの水平方向の外周の長さLは、導入流路4の内径の半分(d/2)よりも長く、且つ、容器本体2の内壁2aの周長の半分(πD/2)よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分離器、特に、油冷式圧縮機の吐出気体から冷却用油を分離するのに適した油分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油冷式圧縮機を用いた設備では、油冷式圧縮機の吐出気体を容器の中に吹き込んで、吐出気体中に含まれる冷却用油を慣性分離または遠心分離する油分離器が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、縦型の円筒状容器の側壁上部に流体入口を設け、円筒状容器の上蓋に流体出口を設け、流体出口を覆うように油分離用エレメントを設けた油分離器において、油分離用エレメントを囲むように内筒を設け、流体入口の片側において、円筒状容器と内筒との間を仕切板によって封止し、円筒状容器に流入した流体が、円筒状容器と内筒との間の流路を通って旋回運動することによって冷却用油を遠心分離した後、仕切り盤の近傍に設けた流入口から内筒の内側に進入し、油分離用エレメントを通過して、流体出口から流出するように構成した発明が記載されている。
【0004】
近年、メンテナンス性の向上や、油分離器における圧力損失の低減のために、より簡素な構成であり、且つ、小型の油分離器が求められている。それと同時に、油分離性能の向上も、強く求められている。特に、冷凍装置の熱交換器(凝縮器)は、油の混入量が一定量より多くなると、熱交換性能が極端に低下してしまう。このため、油冷式圧縮機と熱交換器(凝縮器)との間に設けられる油分離器には、十分な油分離能力が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−127883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点に鑑みて、本発明は、構造が簡素で小型でありながら油分離効率の高い油分離器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による油分離器は、略円筒形の容器本体と、前記容器本体の内壁に開口し、前記容器本体に略垂直に接続された導入流路と、前記導入流路の開口に対向し、前記容器本体の内壁に沿って延伸する隔壁部材と、前記隔壁部材の上端と前記容器本体の内壁との間を封止する上端部材と、前記隔壁部材の片側の側端と前記容器本体の内壁との間を封止する側端部材とを有し、前記隔壁部材と前記容器本体の内壁との間の隙間は、前記導入流路の内径以下であり、且つ、少なくとも前記側端部材が設けられていない開放側の側端において最大となり、前記隔壁部材の前記導入流路の中心に対向する位置から前記開放側の側端までの水平方向の外周の長さは、前記導入流路の内径の半分よりも長く、且つ、前記容器本体の内壁の周長の半分よりも短いものとする。
【0008】
また、本発明の油分離器において、前記上端部材は、前記導入流路の上部から、前記隔壁部材の開放側の側端に向かって下降するように傾斜しており、前記隔壁部材は、前記側端部材に封止された側端における高さ方向の長さより、前記開放側の側端における高さ方向の長さが長くてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明者らは、油分離器の試作と実験を重ね、容器本体の内壁と隔壁部材との間隔Gを導入流路の内径d以下とし、且つ、隔壁部材の導入流路の中心に対向する位置から開放側の側端までの水平方向の周長Lを、導入流路の内径の半分(d/2)よりも長く、且つ、容器本体の内壁の周長の半分(πD/2)よりも短くすることで、油冷式圧縮機の吐出気体に混入した冷却用油を1000ppm以下にすることができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の油分離器の水平断面図である。
【図2】図1の油分離器の垂直断面図である。
【図3】冷凍装置の凝縮器における油混入量と熱交換性能の劣化度をとの関係を示す図である。
【図4】図1の油分離器の隔壁部材の片側の長さと、分離できずに残留する油の量との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の油分離器の水平断面図である。
【図6】図5の油分離器の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1および2に、本発明の第1実施形態の油分離器1を示す。油分離器1は、主として、不図示の油冷式スクリュ圧縮機の吐出気体から冷却用油を分離するために使用されるものであり、冷凍装置において、油冷式スクリュ圧縮機と凝縮器(熱交換器)との間に配設されることが企図される。
【0012】
油分離器1は、直立有底筒状で直径Dの容器本体2と、容器本体2の上端開口を封止する蓋体3とを有する。容器本体2には、吐出気体を導入するために導入流路4が径方向に、つまり、容器本体2の側壁に垂直に設けられており、容器本体2の内壁2aに内径dの開口4aを形成している。
【0013】
容器本体2内には、開口4aに対向するように、内壁2aに沿って延伸する隔壁部材5が配設されている。隔壁部材5は、その上端と内壁2aとの間を封止するように設けられた上端部材6と、片側の側端と内壁2aとの間を封止するように設けられた側端部材7とによって、容器本体2に支持されている。また、隔壁部材5は、内壁2aとの間に、開口4aの内径d以下の一定の隙間Gを形成している。
【0014】
また、蓋体3の中心部には、容器本体2の中心方向に開口する排気口8が形成されている。容器本体2の底部には、分離された油を排出するための液体排出口9が形成されている。容器本体2と蓋体3とは、複数のボルト10によって固定される。
【0015】
本実施形態の油分離器1において、隔壁部材5は、導入流路4の開口4aを覆い、つまり、導入流路4の管路の延長線上に、導入流路4から容器本体2に径方向に流入する気体の進路を妨害するように配設されている。これにより、隔壁部材5は、先ず、導入流路4から導入された気体の流れを受け止め、気体に随伴されている冷却用油、また、導入流路4の底部を流れ、気体とともに容器本体2の内部に流入する冷却用油を慣性分離する。隔壁部材5によって慣性分離された液体は、隔壁部材5を伝い落ち、容器本体2の下方に回収される。
【0016】
さらに、一旦隔壁部材5に流れを遮られた気体は、内壁2aと隔壁部材5との隙間によって形成される流路に沿って、隔壁部材5の上端部材6および側端部材7の設けられていない方向、つまり、開放端側を下向きに流れる。つまり、容器本体2に導入された気体は、内壁2aに沿って下向き螺旋状の気流を形成する。この螺旋気流の遠心力によって、気体中の冷却用油がさらに遠心分離されて内壁2aに付着し、内壁2aを伝い落ちて容器本体2の下方に回収される。
【0017】
本実施形態において、隔壁部材5の導入流路4の中心に対向する位置から開放側の側端までの水平方向の外周の長さLを変更したものを多数試作し、冷凍装置の油冷式スクリュ圧縮機が吐出する冷媒から油を分離する実験を行った。ここでは、油分離器1の分離能力を、油分離器1を通過した冷媒中に含まれる冷却用油の混入量を指標として評価する。
【0018】
油分離器1の下流に位置する凝縮器は、図3に示すように、冷却用油の混入率が1000ppmを超えると、熱交換能力の低下が見られるので、冷却用油の混入率を1000ppm以下にできれば、油分離器1は十分な分離能力を発揮できたと評価できる。尚、熱交換能力の劣化度は、凝縮器における熱伝達率の低下率で示す。例えば、凝縮器の熱伝達率が冷媒中に冷却油を全く含まないときの熱伝達率の90%の値であれば、劣化度は10%となる。
【0019】
図4に示すように、隔壁部材5の導入流路4の中心に対向する位置から開放側の側端までの水平方向の周長Lが、導入流路4の内径dの半分(d/2)より長く、且つ、容器本体2の内壁の周長の半分(πD/2)より短ければ、油分離器1を通過した冷媒中に含まれる冷却用油の混入量が1000ppmを以下にできることが確認された。
【0020】
また、隔壁部材5と内壁2aとの隙間Gを変えて実験した結果、隙間Gを大きくすると、冷却用油を分離する効果が低くなったが、隙間Gを導入流路4の内径d以下にすれば、隙間Gの値に関係なく略一定の分離能力を発揮できることが確認された。
【0021】
続いて、図5および6に、本発明の第2実施形態の油分離器1aを示す。尚、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態において、隔壁部材5は、その上端および下端の位置が、側端部材7に封止された側端から開放側に向かって徐々に低くなっており、上端部材6は、導入流路4の上部から隔壁部材5の開放側の側端に向かって下降するように傾斜している。これにより、下向きの螺旋気流の形成が促進される。
【0023】
また、本実施形態の隔壁部材5は、隔壁部材5と容器本体2の内壁2aとの隙間が、側端部材7に封止された側端において最小となり、開放側の側端に向かって徐々に大きくなるように配設されている。隙間が広くなる方向に気体が流れやすいので、企図する旋回方向の螺旋気流を形成しやすくなるからである。このとき、隔壁部材5と内壁2aとの隙間の最大値、つまり、開放側の側端における隙間Gが、導入流路4の内径d以下となるようにすればよい。
【0024】
さらに、隔壁部材5は、側端部材7に封止された側端における高さ方向の長より、開放側の側端における高さ方向の長さの方が長くなっている。気流の下流側ほど気体が拡散して流れの範囲が広がるため、これらを十分に案内して螺旋気流を形成させるためである。
【符号の説明】
【0025】
1,1a,1b…油分離器
2…容器本体
2a…内壁
3…蓋体
4…導入流路
4a…隔壁
5…隔壁
6…上端部材
7…側端部材
8…排気流路
9…油排出流路
10…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形の容器本体と、
前記容器本体の内壁に開口し、前記容器本体に略垂直に接続された導入流路と、
前記導入流路の開口に対向し、前記容器本体の内壁に沿って延伸する隔壁部材と、
前記隔壁部材の上端と前記容器本体の内壁との間を封止する上端部材と、
前記隔壁部材の片側の側端と前記容器本体の内壁との間を封止する側端部材とを有し、
前記隔壁部材と前記容器本体の内壁との間の隙間は、前記導入流路の内径以下であり、且つ、少なくとも前記側端部材が設けられていない開放側の側端において最大となり、
前記隔壁部材の前記導入流路の中心に対向する位置から前記開放側の側端までの水平方向の外周の長さは、前記導入流路の内径の半分よりも長く、且つ、前記容器本体の内壁の周長の半分よりも短いことを特徴とする油分離器。
【請求項2】
前記上端部材は、前記導入流路の上部から、前記隔壁部材の開放側の側端に向かって下降するように傾斜しており、
前記隔壁部材は、前記側端部材に封止された側端における高さ方向の長さより、前記開放側の側端における高さ方向の長さが長いことを特徴とする請求項1に記載の油分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125727(P2012−125727A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281330(P2010−281330)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】