説明

油圧コントロールバルブ

【課題】 ロードチェックバルブを必要としない油圧コントロールバルブを提供する。
【解決手段】 リフトロックポペットRPが外部接続ポートA1方向にフリーフローとなる向きに設置されている。リフトロックポペットRPは軸方向に摺動可能な直径D2のガイド部43と直径D2より小さい直径D3の同心円筒部44からなり、その同心円筒部44はバネ52によりケース34に設けられたシート座SZに押し付けられている。同心円筒部44の内側には、シート座48とそこに着座してリフトロックポペットRPの内部と外部を繋ぐ通路47を閉塞する閉塞部材49とその閉塞部材49をシート座48に押し付ける方向に付勢するバネ50とバネ50を保持するバネリテーナ51からなる内部チェック弁TVが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用車両やフォークリフトに搭載される油圧制御装置における油圧コントロールバルブの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図7の全体説明図に示すように、フォークリフトは車体1の前部にチルトシリンダ2により傾動するマスト3を備えるとともに、このマスト3に沿ってリフトシリンダ4により昇降するフォーク5を備えており、フォーク5を荷物の下部にさし込み、荷物を上げ、保持し、運搬するよう構成されている。
【0003】
このようなフォークリフトのフォーク5の昇降動を行うリフトシリンダ4の昇降は、図8の油圧回路に示すように油圧源11から吐出した作動油をコントロールバルブ12に供給し、その操作レバー13を切り換えて、スプール14を上昇位置(U)、停止位置(S)、下降位置(D)に移動することにより行う。本願発明はこの油圧コントロールバルブに関するものである。
【0004】
以下、従来におけるこの種の油圧コントロールバルブを、図7から図15について説明する。スプール14の位置とリフトシリンダ4の動作状態を、コントロールバルブ12の縦断面図である図9、図10、図11とこれらの縦断面図の紙面に垂直な方向のX−X面の断面図である図12、図13、図14にしたがってその構成を説明する。
【0005】
図9および図12は、前記スプール14が図8における停止位置(S)にある場合のコントロールバルブ12の縦断面を示す。図9において、15はコントロールバルブ12のケースである。スプール14は軸方向に摺動可能で、一端にはバネ部16とそして他端には図8における操作レバー13の取付け部17とを有し、それらの間に深い溝18、19と浅い溝20およびランド21、22、23を有する円柱状をなしている。
【0006】
このスプール14の深い溝18とケース15に設けた外部接続ポートAとを繋ぐ油路24の中間にあって、外部接続ポートAからスプール14の深い溝18への流れを遮断するシート部25を有するリフトロックポペットRPと、そのリフトロックポペットRPの反シート側のバネ室26とタンク通路27を連通する油路28の中間にあって、リフトロックポペットRPのバネ室26からタンク通路27への流れを遮断する電磁弁29と、図9のケース15をX−X面で紙面に垂直な方向に切断した断面を示す図12に示すように、前記油圧源11(図8)から吐出した作動油入口PとリフトロックポペットRP(図9)の入口側に連通する油路30との中間にあって前記作動油入口P側にシート部32を有するロードチェックポペットLPとで構成されている。
【0007】
なお、スプール14が図8における停止位置(S)にあるとき、油路30はスプール14のランド22で遮断され、油路28は電磁弁29の下流側でスプール14のランド23により遮断されている。そのため、作動油は外部接続ポートAに流れることなく、リフトシリンダ4(図8)は停止している。
【0008】
いま、図8において操作レバー13により、スプール14を上昇位置(U)に移動すると、図10のようにランド22により遮断されていた油路30がリフトロックポペットRPの入口に連通し、同時に図13に示すようにロードチェックポペットLPの作動油入口P側に待機していた圧油がロードチェックポペットLPを押し開き、油路30に流れ、リフトシリンダ4(図8)に掛かる負荷圧に打ち勝ってリフトロックポペットRP(図10)を押し開いて外部接続ポートAへの流れaを発生する。このようにしてリフトシリンダ4を上昇させる。
【0009】
次に、スプール14を図8の停止位置(S)から図11のように下降位置(D)に移動し、電磁弁29を切り替えて出入り口を連通状態にするとランド23で遮断されていた油路28はタンク通路27に繋がり、リフトロックポペットRPのバネ室26とタンク通路27が連通して流れbを発生する。このときロードチェックポペットLPは図14に示すようにリシートし作動油入口Pを塞ぐ。一方、図15にその詳細を示すようにリフトロックポペットRPには外部接続ポートA(図11)側とバネ室26との間に絞り31が設けられており、流れb(図11)により外部接続ポートA(図11)側の圧力P1とバネ室26の圧力P2との間に圧力差ΔP(=P1−P2)を発生する。
【0010】
この差圧ΔPがリフトロックポペットRPのシート部直径D1とガイド部直径D2との直径差によりできる面積差ΔS(=π/4(D22−D12))に作用する。
もちろん、閉じる力はP2とπ/4(D22)の積であり、また、開く力はP1とΔS(=π/4(D22−D12)との積であり、単純にΔPとΔSとの積の値だけ開くという状況ではないが、バネ50のリフトロックポペットRPをシート部25に押し付ける力に打ち勝ってリフトロックポペットRPを押し開く。このことにより外部接続ポートA(図11)とタンク通路27が連通し、流れc(図11)が発生してリフトシリンダ4(図7)が下降する。
【特許文献1】特開2002−235701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記フォークリフトのための油圧コントロールバルブでは、スプール14を図8における停止位置(S)に切り換えたとき、流れb(図11)が停止するため、それまでシート座から離れていたリフトロックポペットRPをシート部25に着座させるには絞り31を通ってバネ室26に油を素早く充填しなければない。ところが絞り31の影響で充填に時間がかかるため、リフトロックポペットRPがシート部25に着座するのに時間遅れを生じていた。そのため、スプール14が停止位置(S)から上昇位置(U)や下降位置(D)に切り替える過渡期の全通路が一旦繋がる状態のとき、図8におけるリフトシリンダ4にかかる負荷圧が油圧源11の吐出圧力より大きい場合にはリフトシリンダ4が負荷に押し戻されてずり落ちる現象を生じ、それを防止するため別途応答性の高いロードチェックポペットLP(図13)を設ける必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明が提供する油圧コントロールバルブは、上記課題を解決するために、軸方向に摺動可能なガイド部を有する円筒部材の一方にガイド部より直径寸法が小さい同心円筒部を設け、その同心円筒部の外周から内側に貫通する細い孔を穿孔し、更に同心円筒部の内径側にシート座とシート座に着座して軸方向内部から軸方向外部への連通を遮断する部材とその部材をシート座に押し付ける方向に付勢するバネとそのバネを保持し、バネ室と反対の部屋とを十分な面積で連通する通路を有する部材とで構成するチェック弁機構を内部に設けたものである。
【0013】
本発明の円筒状ポペットによれば、従来のリフトロックポペットが着座するときの絞りの影響を、内部チェック弁が開くことによってバネ室の圧力を素早く外部圧力と同圧にし、差圧をゼロにして瞬時にリフトロックポペットが着座することになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提供する油圧コントロールバルブによれば、フォークリフトの油圧回路を利用することにより、リフトシリンダの昇・降・停止時のずれ落ちを防止するという機能上の効果の他に従来ずれ落ち防止に使用していたロードチェックバルブを廃止したので大きなコスト効果および圧力損失量の低減を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
リフトロックポペットを外部接続ポート方向にフリーフローとなる向きに設置する。リフトロックポペットは軸方向に摺動可能な直径のガイド部と直径より小さい直径の同心円筒部からなり、その同心円筒部はバネによりケースに設けられたシート座に押し付けられるよう構成する。同心円筒部の内側には、シート座とそこに着座してリフトロックポペットの内部と外部を繋ぐ通路を閉塞する閉塞部材とその閉塞部材をシート座に押し付ける方向に付勢するバネとこのバネを保持するバネリテーナからなる内部チェック弁を設ける。
【実施例1】
【0016】
本発明が提供する油圧コントロールバルブは、フォークリフトに好適に利用されるが、図7において、フォークリフトの作業体であるフォーク5の昇降動を行うリフトシリンダ4の昇降は、図6の油圧回路に示すように油圧源11から吐出した作動油をコントロールバルブCVに供給し、操作レバー13を切り換えることにより、スプール14を上昇位置(U)、停止位置(S)、下降位置(D)に移動して行う。
【0017】
図1および図2は前記スプール14が停止位置(S)にある場合のコントロールバルブCVの縦断面図およびその縦断面図の紙面に垂直な方向のX−X部断面図を示す。図1、図2において、34はコントロールバルブCVのケースであり、円柱状のスプール14を軸方向に摺動可能なるよう収納している。スプール14には、一端にスプール14を停止位置(S)に保持するバネ部35と他端に図示していない操作レバーの取付け部36とを設けてあり、円周方向に深い溝18、19と浅い溝20およびランド21、22、23が設けられている。ケース34にはタンク通路37に連通するリセス38、39およびスプール14の深い溝18に軸方向に一致する位置にリセス40と、図2における作動油入口PMと連通するリセス41、電磁弁EVの出口側に連通するリセス42が施されている。
【0018】
ケース34のリセス40と図6におけるリフトシリンダ4に接続する外部接続ポートA1とを繋ぐ油路ARの間には、リフトロックポペットRPが外部接続ポートA1方向にフリーフローとなる向きに設置されている。リフトロックポペットRPは図5にその詳細を示すように軸方向に摺動可能な直径D2のガイド部43と直径D2より小さい直径D3の同心円筒部44からなり、その同心円筒部44はバネ52によりケース34に設けられたシート座SZに押し付けられている。同心円筒部44の内側には、シート座48とそこに着座してリフトロックポペットRPの内部と外部を繋ぐ通路47を閉塞する閉塞部材49とその閉塞部材49をシート座48に押し付ける方向に付勢するバネ50とバネ50を保持するバネリテーナ51からなる内部チェック弁TVが設けられている。また、同心円筒部44の外周からバネ50の部屋と連通する絞り孔46が設けられている。
【0019】
図1および図5において電磁弁EVはリセス42とリフトロックポペットRPのバネ52側とを連通する油路BRの間に設けられ、油路BRを開通及び遮断する。
【0020】
いま、図1および図6においてスプール14を上昇位置(U)に切り換えると、図2、図3に示すようにリセス40、41が連通し、作動油は作動油入口PMからリフトロックポペットRPの入口へ流れ、リフトロックポペットRPを押し開け外部接続ポートA1を通り図6におけるリフトシリンダ4に送り込まれる。(流れa1参照)
【0021】
次に図6におけるスプール14を停止位置(S)に切り換えると、図1におけるランド22によってリセス40と41は遮断され、作動油の流れは停止する。しかし、切り換え直後には、リフトロックポペットRPは図5における絞り孔46による効果のためバネ52の部屋に油が充填されるのに時間がかかり、まだシート座SZに着座しておらずそのため図1におけるリセス40は外部接続ポートA1と連通したままである。この状態でもしスプール14を上昇位置(U)に切り替えたとき、リフトシリンダ4(図6)の負荷による圧力が作動油入口圧力より高い場合、作動油は作動油入口PMへ逆流し、リフトシリンダ4がズレ落ちることになるが、本発明ではリフトロックポペットRPに内臓の内部チェック弁TVが開いてバネ52の部屋に素早く油を充填するため殆ど時間遅れを生じることなくリフトロックポペットRPをシート座SZに着座させることができリフトシリンダ4(図6)のズレ落ちを防止することができる。
【0022】
次に図6においてスプール14を降下位置(D)に切り換えると、図4に示すようにランド23がリセス42をタンク通路37に開通し、電磁弁EVが開いている場合は油路BRがタンク通路37に連通する。このためリフトロックポペットRP(図5)の絞り46を通り、図4に示すようにタンク通路37への作動油の流れb1が生じる。この流れにより図5に示すようにリフトロックポペットRPの外部と内部に圧力差ΔS(=PS1−PS2)が生じ、この差圧ΔSがリフトロックポペットRPのガイド部43の直径D2とシート部直径D1との差による面積差ΔS(=π/4(D22−D12))に作用する。もちろん、閉じる力はPS2とπ/4(D22)の積であり、また、開く力はPS1とΔS(=π/4(D22−D12)との積であり、単純にΔPとΔSとの積の値だけ開くという状況ではないが、リフトロックポペットRPを押し開き、外部接続ポートA1をタンク通路37に連通して図6におけるリフトシリンダ4を降下させる。
【0023】
次にスプール14を停止位置(S)に切り換える瞬間の過渡状態を見てみるとランド23がリセス42を遮断し、作動油の流れb1は停止するが前述同様リフトロックポペットRPは図5に示す絞り46の影響でシートSZへの着座が遅れる。そして本発明の内部チェック弁TVが開いてリフトロックポペットRPの差圧ΔSが迅速に消失し殆ど時間遅れの無いリシートを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の油圧コントロールバルブの構成を示す縦断面図である。
【図2】油圧コントロールバルブの一部の構成を示す図である。
【図3】本発明の油圧コントロールバルブのスプールの作動説明のための図である。
【図4】本発明の油圧コントロールバルブのスプールの作動説明のための図である。
【図5】本発明のリフトロックポペットの構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明をフォークリフトに実施したときの油圧回路構成図である。
【図7】フォークリフトの全体を示す図である。
【図8】従来におけるフォークリフトの油圧回路図である。
【図9】従来の油圧コントロールバルブのスプールの構成を示す縦断面図である。
【図10】従来の油圧コントロールバルブのスプールの作動状態を示す縦断面図である。
【図11】従来の油圧コントロールバルブのスプールの作動状態を示す縦断面図である。
【図12】従来の油圧コントロールバルブのスプールの一部の構成を示す図である。
【図13】従来の油圧コントロールバルブのスプールの一部の構成を示す図である。
【図14】従来の油圧コントロールバルブのスプールの一部の構成を示す図である。
【図15】従来のリフトロックポペットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 車体
2 チルトシリンダ
3 マスト
4 リフトシリンダ
5 フォーク
11 油圧源
12、CV コントロールバルブ
13 操作レバー
14 スプール
15、34 ケース
16、35 バネ部
17、36 取付け部
18、19、20 深い溝
21、22、23 ランド
24、28、30、AR、BR 油路
25、32 シート部
26 バネ室
27 タンク通路
29、EV 電磁弁
31、46 絞り
37 タンク通路
38、39、40、41、42 リセス
43 ガイド部
44 同心円筒部
47 通路
48、SZ シート座
49 閉塞部材
50、52 バネ
51 バネリテーナ
A、A1 外部接続ポート
D1、D2、D3 直径
LP ロードチェックポペット
P、PM 作動油入口
RP リフトロックポペット
TV 内部チェック弁
a、a1、b、b1、c 流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に摺動可能なガイド部を有する円筒部材の一方にガイド部より直径寸法が小さい同心円筒部と、この同心円筒部の外周から内側に貫通する細い孔を穿孔し、更に同心円筒部の内径側にシート座とシート座に着座して軸方向内部から軸方向外部への連通を遮断する遮断部材とこの遮断部材をシート座に付勢するバネと、このバネを収容保持するバネ室と対向する室とを連通する連通路で構成するチェック弁機構を設けたことを特徴とする油圧コントロールバルブ。
【請求項2】
油圧コントロールバルブは、軸方向にスライドするスプールの移動により外部のアクチュエータへ作動油を送油し又はアクチュエータからの作動油をタンクに戻す油路の切り換え機構を有し、アクチュエータポートとスプールの一方向の移動により作動油入口とアクチュエータポートを連通し、逆方向の移動によりアクチュエータポートとタンク通路とを連通する油路切り換え通路との間に設置されることを特徴とする請求項1記載の油圧コントロールバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−8433(P2008−8433A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180738(P2006−180738)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】