説明

油圧制御装置

【課題】オイルポンプから吐出されたオイルの油圧をアキュムレータに蓄えている際に、低圧油路にオイルを供給することのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】オイルポンプ15から吐出されたオイルが供給される高圧油路21と低圧油路37とが並列に設けられており、高圧油路21に、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧を蓄える第1アキュムレータ22が設けられている油圧制御装置において、オイルポンプ15から吐出されたオイルを低圧油路37に供給する経路に、オイルポンプ15から低圧油路37に供給されるオイルの流量を制御する流量制御弁35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オイルポンプから吐出されたオイルを低圧回路および高圧回路に供給することができるとともに、高圧回路の圧力をアキュムレータに蓄えることのできる油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプから吐出されたオイルを低圧回路および高圧回路に供給することができるとともに、高圧回路の圧力をアキュムレータに蓄えることのできる油圧制御装置が知られており、その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された油圧制御装置は、変速機の制御回路および潤滑回路にオイルを供給するものであり、その油圧制御装置においては、電動モータにより駆動されるオイルポンプが設けられており、このオイルポンプの吐出油路が、モードセレクトバルブのインポートに接続されている。このモードセレクトバルブは2つのアウトポートを有しており、一方のアウトポートは潤滑回路に接続され、他方のアウトポートはチェックバルブを経て蓄圧回路に接続されている。モードセレクトバルブの切換え、つまり、インポートを2つのアウトポートのいずれかに接続する切換えは、ソレノイド信号圧によりなされるように構成されている。
【0003】
さらに、蓄圧回路にはアキュムレータが接続されている。また、蓄圧回路にはプライマリモジュレータバルブを経由してライン圧回路が接続されており、そのライン圧回路は、変速制御用のコントロールバルブを介して油圧サーボに接続されている。この油圧サーボは、変速機の変速比を制御する各クラッチの係合および解放を制御するものである。この特許文献1に記載された油圧制御装置においては、現在のモードが潤滑モードか蓄圧モードかを判定し、その判定結果に基づいてモードセレクトバルブを切換えて、オイルポンプから吐出されたオイルを蓄圧回路または潤滑回路に供給する制御がおこなわれる。
【0004】
なお、特許文献1に記載された油圧制御装置の他、高圧回路用および低圧回路用に別個のオイルポンプが設けられているとともに、高圧回路用のオイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧することのできる油圧制御装置が、特許文献2に記載されている。さらに、オイルポンプから吐出されたオイルを自動変速機のクラッチに供給する経路に蓄圧器が設けられた油圧制御装置が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−84928号公報
【特許文献2】特開平3−134368号公報
【特許文献3】特開平10−250402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された油圧制御装置においては、潤滑モードか蓄圧モードかの判定結果に基づいて、モードセレクトバルブが切り換えられるように構成されているため、オイルポンプから吐出されたオイルが蓄圧回路または潤滑回路のいずれか一方に供給することしかできないという問題があった。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、オイルポンプから吐出されたオイルを、高圧油路および低圧油路に並行して供給することのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、オイルポンプから吐出されたオイルが供給される高圧油路と低圧油路とが並列に設けられており、前記高圧油路に、前記オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を蓄える第1アキュムレータが設けられている油圧制御装置において、前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する経路に、前記オイルポンプから前記低圧油路に供給されるオイルの流量を制御する流量制御弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える制御と、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない制御とを切り替えておこなうことができるように構成されており、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くすることができるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記流量制御弁を制御して前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する流量を減らすことにより、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くするバルブ制御手段を備えていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、車両の動力源から駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室とを備え、前記動力源の動力で前記オイルポンプを駆動できるように構成されており、前記高圧油路に供給されたオイルが前記油圧室に供給されるように構成されており、前記バルブ制御手段は、前記車両が惰力走行する運動エネルギにより前記オイルポンプを駆動させ、かつ、そのオイルポンプから吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える際に、前記流量制御弁を制御して前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する流量を減らすことにより、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くする手段を含むことを特徴とする油圧制御装置である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記オイルポンプと前記流量制御弁とを接続する油路に、前記オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を蓄える第2アキュムレータが設けられており、この第2アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧を、前記第1アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧よりも低く設定されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記第1アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧と、前記第2アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧とが同一であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の発明は、請求項5または6の構成に加えて、前記第1アキュムレータに蓄えられた油圧が前記高圧油路に供給され、前記第2アキュムレータに蓄えられた油圧が前記低圧油路に供給されるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、オイルポンプから吐出されたオイルを高圧油路および低圧油路に供給することができるとともに、オイルポンプから低圧油路に供給されるオイルの流量を制御することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄える場合におけるオイルポンプの吐出圧を、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄えない場合におけるオイルポンプの吐出圧よりも高くすることができる。したがって、オイルポンプから吐出された油圧を第1アキュムレータに蓄えない場合に、オイルポンプの損失を相対的に少なくすることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、流量制御弁を制御して、オイルポンプから吐出されたオイルを低圧油路に供給する流量を減らすことにより、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄える場合におけるオイルポンプの吐出圧を、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄えない場合におけるオイルポンプの吐出圧よりも高くすることができる。したがって、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄える場合に、低圧油路に高圧のオイルが供給されることを回避できる。
【0018】
請求項4の発明によれば、車両が惰力走行する運動エネルギによりオイルポンプを駆動させ、かつ、そのオイルポンプから吐出されたオイルの油圧を第1アキュムレータに蓄える際に、請求項3の発明と同様の効果を得られる。したがって、オイルポンプを駆動するために動力源の動力が消費されることを抑制できる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、オイルポンプから吐出されたオイルの油圧が先に第2アキュムレータに蓄圧され、ついで、第1アキュムレータに蓄圧される。したがって、オイルポンプの負荷が段階的に高くなる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、オイルポンプの吐出圧が急激に高くなったときに、第1アキュムレータおよび第2アキュムレータの両方でその油圧を蓄えることができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項5または6の発明と同様の効果を得られる他に、オイルポンプが停止されているときに、第1アキュムレータに蓄えられた油圧を高圧油路に供給し、かつ、第2アキュムレータに蓄えられた油圧を低圧油路に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の油圧制御装置の第1具体例を示す模式図である。
【図2】図1の油圧制御装置において実行可能なフローチャートである。
【図3】この発明の油圧制御装置の第2具体例を示す模式図である。
【図4】図3に示された油圧制御装置のアキュムレータの特性を示す線図である。
【図5】図3に示された油圧制御装置の作用を示すタイムチャートである。
【図6】図3に示された油圧制御装置の比較例の作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明において、高圧油路と低圧油路とは、目標油圧または実際の油圧が、高圧油路の方が低圧油路よりも相対的に低いことを意味する。また、この発明における高圧油路および低圧油路には、オイルの流通経路であるポート、油路、バルブなどの他に、オイルが供給される油圧室が含まれる。この発明を車両に用いる場合、駆動輪に伝達する動力を発生する動力源がオイルポンプを駆動するように構成されていてもよいし、駆動輪に伝達する動力を発生する動力源とは別に、オイルポンプを駆動するために専用の動力源が設けられていてもよい。以下、この発明の油圧制御装置を車両に用いる場合について説明する。
【0024】
(第1具体例)
この第1具体例は、この発明の油圧制御装置を、車両1に搭載されている無段変速機2を含む動力伝達装置を制御するために用いたものである。前記無段変速機2は、従来知られているものと同様に構成されたベルト型無段変速機であり、駆動プーリ4と従動プーリ5とにベルト6を巻き掛けてこれらのプーリ4,5の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ4,5に対するベルト6の巻き掛け半径を変化させることにより、入力回転数と出力回転数との間の変速比を、無段階(連続的)に変化させることができるように構成されている。また、従動プーリ6には車両1の駆動輪(図示せず)が動力伝達可能に接続されている。
【0025】
前記駆動プーリ5は、駆動プーリ5の回転中心軸線に沿った方向に移動不可能に設けられた固定片7と、回転中心軸線に沿った方向に移動可能な可動片8とを備え、それらの固定片7と可動片8との間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されている。また、従動プーリ5は、従動プーリ5の回転中心軸線に沿った方向に移動不可能に設けられた固定片9と、回転中心軸線に沿った方向に移動可能な可動片10とを備え、それらの固定片9と可動片10との間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されている。さらに、駆動プーリ4の可動片8に推力を与えるプリマリ油圧室11が設けられており、そのプライマリ油圧室11には、ベルト6の巻き掛け半径を変化させて変速比を制御するためにオイルが供給または排出される。これに対して、従動プーリ5の可動片10に推力を与えるセカンダリ油圧室12が設けられており、このセカンダリ油圧室12には、従動プーリ5がベルト6を挟み付ける挟圧力を発生させる油圧が供給される。
【0026】
上記の無段変速機2の駆動プーリ4に伝達する動力を発生するエンジン13が設けられている。このエンジン13は従来知られているものと同様に構成されており、燃料の燃焼により発生する熱エネルギを運動エネルギに変換して出力する動力源である。このエンジン13は、電子スロットルバルブ(図示せず)の開度を制御することにより、吸入空気量を制御することができるように構成されている。また、エンジン13から駆動プーリ4に至る動力伝達経路を構成する流体伝動装置14が設けられている。この流体伝動装置14は、従来知られているように入力回転部材と出力回転部材との間で流体(作動油)の運動エネルギにより動力伝達をおこなうものである。この流体伝動装置14は、入力回転部材から出力回転部材に伝達されるトルクを増幅する機能を備えたトルクコンバータ、または入力回転部材から出力回転部材に伝達されるトルクを増幅する機能のないフルードカップリングのいずれでもよい。この実施例においては、流体伝動装置14としてトルクコンバータが用いられているものとして説明し、以下、流体伝動装置14をトルクコンバータ14と記す。
【0027】
つぎに、上記のプライマリ油圧室11およびセカンダリ油圧室12ならびにトルクコンバータ14に油圧を供給する油圧制御装置3の構成について説明する。図1に示す例においては、前記エンジン13によってオイルポンプ15が駆動されてオイルが吸入され、そのオイルポンプ15から吐出されたオイルが前記プライマリ油圧室11およびセカンダリ油圧室12ならびにトルクコンバータ14に供給されるように構成されている。具体的に説明すると、オイルポンプ15の吸入口16にはオイルパン17が接続され、そのオイルポンプ15の吐出口18には油路19が接続されている。なお、エンジン13とオイルポンプ15との間にクラッチを設けておき、エンジン13が自律回転しているときにオイルポンプ15を停止させることもできる。また、オイルポンプ15は、エンジン13の動力により駆動することができることに加えて、車両1が惰力走行するとその運動エネルギがオイルポンプ15に伝達されてオイルを吸入および吐出するように構成されている。
【0028】
この油路19にはチェック弁(逆止弁)20を介在させて油路21が接続されている。この油路21は、オイルポンプ15から吐出されたオイルをプライマリ油圧室11およびセカンダリ油圧室12に供給する経路を構成するものである。また、チェック弁20は、オイルポンプ15から油路21に向けて圧油が流れるときに開き、これとは反対方向の圧油の流れを阻止するように閉じる一方向弁である。そして、この油路21にはアキュムレータ22が接続されている。このアキュムレータ22は、従来知られているように、蓄圧室と背圧室とをピストンや弾性膨張体により流体密に区画したものであり、蓄圧室の圧力が背圧室の圧力を超えると、ピストンが移動したり弾性膨張体が膨張したりして蓄圧室の容積が拡大し、その蓄圧室に油圧を蓄えるように構成されている。このため、背圧室の圧力を制御することにより、蓄圧室に圧力を蓄え始める設定最低圧を調整することができる。
【0029】
さらに、高圧油路21は2方向に分岐されており、その一方は第1制御バルブ23の入力ポート24に接続されている。また、第1制御バルブ23の出力ポート25が油路26を介在させてプライマリ油圧室11に接続されている。この第1制御バルブ23は、プライマリ油圧室11の油圧を制御する機能を備えた調圧弁、またはプライマリ油圧室11における圧油の流量を制御する機能を備えた流量制御弁のいずれでもよい。この第1制御バルブ23としては、従来から知られているソレノイドバルブを用いることができ、そのソレノイドバルブに供給される電流値を制御することにより、プライマリ油圧室11の油圧またはプライマリ油圧室11における圧油の流量を制御することができるように構成されている。
【0030】
さらに、油路21は第2制御バルブ27の入力ポート28にも接続されている。この第2制御バルブ27の出力ポート29が油路30を介在させてセカンダリ油圧室12に接続されている。この第2制御バルブ27は、セカンダリ油圧室12の油圧を制御する機能を備えた調圧弁、またはセカンダリ油圧室12における圧油の流量を制御する機能を備えた流量制御弁のいずれでもよい。この第2制御バルブ27としては、従来から知られているソレノイドバルブを用いることができ、そのソレノイドバルブに供給される電流値を制御することにより、セカンダリ油圧室12の油圧、またはセカンダリ油圧室12における圧油の流量を制御することができるように構成されている。
【0031】
一方、前記オイルポンプ15の吐出口18には、油路19の他に油路31が接続されている。この油路31はトルクコンバータ14にオイルを供給する経路となるものであり、油路21または油路31の油圧が予め定められた最高圧以上となることを防止するリリーフ弁32が設けられている。このリリーフ弁32は、従来知られているものと同様に構成されており、ポートを開閉する弁体33と、その弁体33を弁座(図示せず)に押し付ける力を与えるバネ34とを有している。具体的に説明すると、リリーフ弁32は、油路21または油路31の油圧が最高圧未満では弁体33が弁座に押し付けられてポートが閉じられ、油路21または油路31の油圧が最高圧以上では弁体33がバネ34の力に抗して移動してポートが開かれるように構成されている。このリリーフ弁32は、前記油路21または油路31のいずれに設けられていてもよい。これは、リリーフ弁32が開かれることとなるのは、チェック弁20が開かれているときだからである。なお、この図1では便宜上、高圧油路21にリリーフ弁32を設けた例が示されており、そのリリーフ弁32が開かれると油路21の圧油がオイルパン17にドレーンされるように構成されている。
【0032】
さらに、油路31からトルクコンバータ14に至るオイルの供給経路には流量制御弁35が設けられている。この流量制御弁35は、油路31に接続された入力ポート36と、油路37を介してトルクコンバータ14に接続された出力ポート38とを備えている。この流量制御弁35は、オイルポンプ15から油路37に供給されるオイルの流量を制御するバルブである。この流量制御弁35は、従来から知られているデューティソレノイドバルブにより構成することができる。このデューティソレノイドバルブへの通電と非通電とを交互に繰り返し、通電の割合、つまり、デューティ比を制御することにより、オイルポンプ15から油路37に供給されるオイルの流量を制御することができる。なお、デューティソレノイドバルブを常時通電または常時非通電とする、いわゆるオンオフ制御(切り替え)をおこなうこともできる。この第1具体例においては、非通電であるときに入力ポート36と出力ポート38とが接続され、かつ、通電であるときに入力ポート36と出力ポート38とが遮断されるように、流量制御弁35が構成されている。
【0033】
また、油路37の油圧が予め定められた所定圧以上になることを防止するリリーフ弁39が設けられている。このリリーフ弁39は、従来知られているものと同様にポートを開閉する弁体40と、その弁体40を弁座(図示せず)に押し付ける力を与えるバネ41とを有している。具体的にはリリーフ弁39は、油路37の油圧が所定圧未満では弁体40が弁座に押し付けられてポートが閉じられている一方、油路37の油圧が所定圧以上では弁体40がバネ41の力に抗して移動してポートが開かれて、油路37の圧油がオイルパン17にドレーンされるように構成されている。
【0034】
なお、前記油路37のオイルはトルクコンバータ14の他に潤滑系統にも供給される。この潤滑系統は、無段変速機2の駆動プーリ4および従動プーリ5を回転可能に支持する軸受(図示せず)、エンジン13から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられた歯車同士の噛み合い部分(図示せず)などにオイルを供給して、それらの部位を潤滑および冷却するものである。また、車両1には電子制御装置42が設けられており、その電子制御装置42には車速、アクセル開度、無段変速機2の入力回転数および出力回転数、アキュムレータ22の内圧、エンジン回転数などを検知するセンサやスイッチの信号が入力され、この電子制御装置42からは第1制御弁23および第2制御弁27を制御する信号、流量制御弁35を制御する信号、エンジン出力を制御する信号が出力される。
【0035】
つぎに、無段変速機2における変速比の制御について説明する。前記エンジン13の動力によりオイルポンプ15が駆動され、そのオイルポンプ15から油路19へオイルが吐出される。この油路19にオイルが供給されて油路19の油圧が油路21の油圧を超えると、チェック弁20が開放されて油路19のオイルが油路21へ供給される。一方、車速およびアクセル開度に基づいて、車両1における要求駆動力(目標駆動力)が求められ、その要求駆動力に基づいて目標エンジン出力が求められる。さらに、実際のエンジン出力を目標エンジン出力に基づいて制御するにあたり、エンジン13の運転状態が最適燃費線に沿ったものとなるように、目標エンジン回転数および目標エンジン出力が求められる。そして、実際のエンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、無段変速機2の変速比が制御される。この無段変速機2の変速比を制御するために、第1制御弁23が制御されてプライマリ油圧室津11のオイル量または油圧が制御される。
【0036】
例えば、無段変速機2の変速比を相対的に小さくする制御(アップシフト)をおこなうために、駆動プーリ4の溝幅を狭くする(ベルト6の巻き掛け半径を大きくする)場合には、プライマリ油圧室11のオイル量を増加させるか、またはプライマリ油圧室11の油圧を高める制御がおこなわれる。また反対に、無段変速機2の変速比を相対的に大きくする制御(ダウンシフト)をおこなうために、駆動プーリ2の溝幅を広くする(ベルト6の巻き掛け半径を小さくする)場合には、プライマリ油圧室11のオイル量を減少させるか、またはプライマリ油圧室11の油圧を低下させる制御がおこなわれる。なお、無段変速機2の変速比を固定する場合は、プライマリ油圧室11のオイル量を一定に維持するか、または油圧を一定に維持する制御がおこなわれる。
【0037】
一方、無段変速機2の変速比の制御と並行して無段変速機2のトルク容量を制御するために、第2制御弁27が制御されてセカンダリ油圧室12のオイル量または油圧が制御される。例えば、無段変速機2のトルク容量を低下させる場合は、セカンダリ油圧室12のオイル量が減少させるか、または、セカンダリ油圧室12の油圧を低下させる制御がおこなわれる。これに対して、無段変速機2のトルク容量を高める場合は、セカンダリ油圧室12のオイル量を増加させるか、または、セカンダリ油圧室12の油圧を上昇させる制御がおこなわれる。さらに、無段変速機2のトルク容量を一定に保持する場合は、セカンダリ油圧室12のオイル量を一定にするか、または、セカンダリ油圧室12の油圧を一定にする制御がおこなわれる。
【0038】
ところで、油路21の油圧が予め定められた所定圧以下である場合は、アキュムレータ22による蓄圧はおこなわれず、油路21の油圧が予め定められた所定圧を超えると場合は、アキュムレータ22による蓄圧がおこなわれる。そして、油路21の油圧が油路19の油圧以上になるとチェック弁20が閉じられる。さらに、アキュムレータ22の内圧が設定最高圧になると、プライマリ油圧室11およびセカンダリ油圧室12における目標オイル量、または目標油圧を賄うために、アキュムレータ22に蓄えられている圧力が放出される。ここで、設定最高圧とは、アキュムレータ22に蓄圧可能な圧力の上限値である。このように、アキュムレータ22の油圧が、プライマリ油圧室11およびセカンダリ油圧室12に供給されている間は、エンジン13の動力はオイルポンプ15には伝達されず、オイルポンプ15が停止している。そして、アキュムレータ22の油圧が所定圧未満になると、エンジン13の動力でオイルポンプ15が駆動されて、オイルポンプ15から吐出されたオイルが油路19を経由して油路21へ供給され、アキュムレータ22で蓄圧がおこなわれる。
【0039】
この図1の実施例においては、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄えている際に、流量制御弁35を構成するデューティソレノイドバルブのデューティ比を制御することにより、オイルポンプ15から油路31を経由して、トルクコンバータ14および潤滑系統に供給するオイルの流量を制御することができる。ここで、「オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄えている際」とは、アキュムレータ22に油圧を蓄えている最中であることを意味する。言い換えれば、アキュムレータ22への蓄圧が完了しておらず、現在も継続して油圧を蓄える作用が進行中であることを意味する。
【0040】
一方、第1具体例においては、流量制御弁35のデューティ比を制御することに代えて、流量制御弁35への通電または非通電を切り替える(オンオフ制御する)ことにより、オイルポンプ15から吐出されたオイルをトルクコンバータ14および潤滑系統に供給する制御と、オイルポンプ15から吐出されたオイルをトルクコンバータ14および潤滑系統には供給しない制御とを切り替えることもできる。例えば、アキュムレータ22の内圧が所定値を超えているときには、流量制御弁35のデューティ比を制御して、オイルポンプ15から油路31に供給されたオイルをトルクコンバータ14および潤滑系統に供給する制御をおこなうことができる。これに対して、アキュムレータ22の内圧が所定値以下であるときに、流量制御弁35を常時閉じて、オイルポンプ15から油路31に供給されたオイルをトルクコンバータ14および潤滑系統には供給しない制御をおこなうことができる。
【0041】
このように、第1具体例においては、オイルポンプ15から吐出されたオイルを油路21,31の両方に並行して供給することができる。したがって、例えば、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄えている最中において、オイルポンプ15から吐出されたオイルを、トルクコンバータ14および潤滑系統にも供給することができる。また、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄える場合におけるオイルポンプ15の吐出圧を、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ15に蓄えない場合におけるオイルポンプの吐出圧よりも高くすることができる。したがって、オイルポンプ15から吐出された油圧をアキュムレータ22に蓄えない場合に、オイルポンプ15の損失を相対的に少なくすることができる。
【0042】
特に、流量制御弁35を制御して入力ポート36と出力ポート38とを常時遮断することにより、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄える場合におけるオイルポンプ15の吐出圧を、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄えない場合におけるオイルポンプ15の吐出圧よりも高くすることができる。したがって、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ22に蓄える場合に、低圧の油路37に高圧のオイルが供給されることを回避できる。
【0043】
さらに第1具体例においては、油路31の油圧に関わりなく、つまり、アキュムレータ22の内圧に基づいて流量制御弁35を制御し、オイルポンプ15からトルクコンバータ14および潤滑系統に供給される圧油の流量を制御することができる。したがって、流量制御弁35を制御するための元圧を作るバルブを設けずに済み、部品点数が増加することなく油圧制御装置3の製造コストの上昇を抑制できる。また、流量制御弁35として、非通電状態で油路31と油路37とが接続される構成のソレノイドバルブを用いると、ソレノイドに電力を供給する電線が断線するフェールが発生したときにも、潤滑系統にオイルを供給することができる。
【0044】
なお、チェック弁20が開いているときに油路19および油路21の油圧が所定値以下である場合は、リリーフ弁32が閉じられており、油路21のオイルがチェック弁32を経由してオイルパン17に排出されることはない。これに対して、チェック弁20が開いているときに油路19および油路21の油圧が所定値を超えた場合はリリーフ弁32が開かれ、油路21のオイルがチェック弁32を経由してオイルパン17に排出される。このようにして、油路19および油路21の油圧が過剰に高圧となることを防止できる。
【0045】
つぎに、流量制御弁35を構成するソレノイドバルブをオンオフ制御(切り替え制御)する場合の具体的な制御例を図2のフローチャートに基づいて説明する。まず、アクセルペダルが戻されている(アクセルOFF)か否かが判断される(ステップS1)。このステップS1は車両1が惰力走行しているか否かを判断するためのものであり、ステップS1で肯定的に判断された場合、つまり、車両1が惰力走行している場合は、アクセルペダルが戻された時点から一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS2)。
【0046】
このステップS2で肯定的に判断された場合は、車両1の惰力走行による運動エネルギによりオイルポンプ15を駆動するとともに、流量制御弁35を制御して油路31と油路37とを遮断する制御をおこない(ステップS3)、この制御ルーチンを終了する。このように、ステップS3に進んだ場合は、車両1の惰力走行による運動エネルギでオイルポンプ15が駆動され、そのオイルポンプ15から吐出されたオイルが油路21に供給されて、アキュムレータ22により蓄圧される。
【0047】
一方、前記ステップS1で否定的に判断されるということは、アクセルペダルが踏み込まれており、エンジン13の動力が無段変速機2を経由して駆動輪に伝達されて駆動力が発生していることを意味する。また、ステップS2で否定的に判断された場合は、その後に、アクセルペダルが踏み込まれることが予想される。そこで、ステップS1で否定的に判断された場合、またはステップS2で否定的に判断された場合は、流量制御弁35を制御して油路31と油路37とを連通させる制御をおこない(ステップS4)、この制御ルーチンを終了する。このステップS4の制御をおこなうと、油路21の油圧が上昇しにくくなるため、エンジン13の動力でオイルポンプ15が駆動されているときにアキュムレータ22で蓄圧されることがない。このように、図2の制御をおこなうとアキュムレータ22に蓄圧するときにオイルポンプ15を車両1の運動エネルギで駆動することができ、エンジン13の動力を使わずに済むため、エンジン13の燃料消費量を低減することができる。
【0048】
この第1具体例は請求項1ないし4の発明に対応しており、第1具体例で示した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、オイルポンプ15が、この発明のオイルポンプに相当し、油路21,26,30、プライマリ油圧室11、セカンダリ油圧室12が、この発明の高圧油路に相当し、油路37、トルクコンバータ14、潤滑系統が、この発明の低圧油路に相当し、アキュムレータ22が、この発明の第1アキュムレータに相当し、流量制御弁35が、この発明の流量制御弁に相当し、エンジン13が、この発明の動力源に相当し、無段変速機2が、この発明の動力伝達装置に相当し、無段変速機12の変速比およびトルク容量が、この発明の動力伝達状態に相当する。また、図2のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1,S2,S3,S4が、この発明のバルブ制御手段に相当する。
【0049】
(第2具体例)
つぎに、この発明の油圧制御装置3を車両に用いた第2具体例を図3に基づいて説明する。図3に示された油圧制御装置3においては、アキュムレータ22の他に、油路19または油路31にもアキュムレータ43が設けられている。図3では、便宜上、油路19にアキュムレータ43を接続してある。このアキュムレータ43の構成はアキュムレータ22と同じである。また、図3に示された油圧制御装置3において、図1に示された油圧制御装置3と同じ構成部分については、図1と同じ符号を付してある。そして、図3の油圧制御装置3において、図1の油圧制御装置3と同じ構成部分については、図1の油圧制御装置3と同じ作用効果を得られる。また、図3に示された油圧制御装置3においても、図2に示された制御を実行することができる。
【0050】
ところで、図3の油圧制御装置3においては、油路31の油圧が予め定められた所定圧以下である場合はアキュムレータ43による蓄圧がおこなわれず、油路31の油圧が予め定められた所定圧を超えるとアキュムレータ43による蓄圧がおこなわれるように、アキュムレータ43の蓄圧特性が決定されている。また、図3に示された油圧制御装置3においては、アキュムレータ43の内圧が最大設定圧になると、そのアキュムレータ43に蓄圧された圧力を放出して、トルクコンバータ14および潤滑系統における目標オイル量または目標油圧を賄うことができる。
【0051】
ここで、アキュムレータ22,43の蓄圧特性を、図4に基づいて説明する。この図4の特性線図においては、横軸にアキュムレータの容量が示され、縦軸にアキュムレータ内圧が示されている。なお、アキュムレータ22の容量よりもアキュムレータ43の容量の方が小さく構成されている。まず、アキュムレータ22は、油路21の油圧が設定最低圧PHL を超えると蓄圧がおこなわれ、油路21の油圧が設定最低圧PHL 以下では蓄圧がおこなわれないように特性が決定されている。この設定最低圧PHL は、具体的には、プライマリ油圧室11における目標油圧または、セカンダリ油圧室12における目標油圧のうち高い方の油圧以上の値である。プライマリ油圧室11における目標油圧は、無段変速機2の目標変速比から求めることができる。セカンダリ油圧室12における目標油圧は、無段変速機2の目標トルク容量から求めることができる。また、アキュムレータ22により蓄圧をおこなう基準となる設定最低圧PHL は、アキュムレータ22の背圧室の圧力を制御することにより調整可能である。
【0052】
これに対して、アキュムレータ43は、油路31の油圧が設定最低圧PLL を超えると蓄圧がおこなわれ、油路31の油圧が設定最低圧PLL 以下では蓄圧がおこなわれないように特性が決定されている。この設定最低圧PLL は設定最低圧PHL よりも低く、かつ、トルクコンバータ14における目標油圧の最大値以上の値である。また、アキュムレータ43で蓄圧をおこなう基準となる設定最低圧PLL は、アキュムレータ43の背圧室の圧力を制御することにより調整可能である。
【0053】
また、アキュムレータ22の設定最高圧PHH およびアキュムレータ43の設定最高圧PHH は同一であり、かつ、設定最高圧PHH は設定最低圧PHL よりも高圧である。この設定最高圧PHH は、アキュムレータ22,43で蓄圧可能な圧力の上限値であり、リリーフ弁32が開くこととなる油路21の油圧が、設定最高圧PHH に相当する。前記のように、リリーフ弁32は弁体33がバネ34の力に抗して移動して開かれ、油路21のオイルがリリーフ弁32を経由してオイルパン17に排出されて、油路21の油圧の上昇を防止するように構成されている。このため、リリーフ弁32が開くと、その時点における油路21の油圧を超える油圧がアキュムレータ22,43に蓄圧されことはない。つまり、リリーフ弁32のバネ34のバネ定数を調節することにより、設定最高圧PHH を調整することができる。
【0054】
ここで、図3においてアキュムレータ22,43の蓄圧特性が上記のように構成されているときにおける油圧制御装置3の作用を説明する。前記エンジン13の動力、または車両1の運動エネルギによりオイルポンプ15が駆動され、そのオイルポンプ15からオイルが油路19,31へ吐出されるとともに、流量制御弁35が閉じられているときに、油路31の油圧が設定最低圧PLL 未満であるときはアキュムレータ43には蓄圧されない。
【0055】
そして、油路31の油圧が設定最低圧PLL になるとアキュムレータ43による蓄圧が開始される。さらに、油路21の油圧が上昇して、その油圧が設定最低圧PHL になると、アキュムレータ22による蓄圧が開始される。その後、アキュムレータ43,22の内圧が設定最大圧となり蓄圧が完了すると、オイルポンプ15を停止させるとともに、トルクコンバータ14および潤滑系統における目標オイル量に基づいて流量制御弁35が制御され、アキュムレータ43の圧力がトルクコンバータ13および潤滑系統に供給される。一方、プライマリ油圧室11またはセカンダリ油圧室12における目標流量または目標オイル量が、アキュムレータ22に蓄えられている油圧で賄われる。
【0056】
ここで、第2具体例のアキュムレータ22,43の蓄圧特性が図4で示す用に決定されている場合において、オイルポンプ15の負荷トルクの変化の一例を、図5のタイムチャートに基づいて説明する。時刻t1以前においては、油路31の油圧が設定最低圧PLL であるため、アキュムレータ43で蓄圧がおこなわれ、かつ、アキュムレータ22では蓄圧がおこなわれない。したがって、時刻t1以前におけるオイルポンプ15の負荷トルクはTq1である。この時刻t1以降もアキュムレータ43による蓄圧がおこなわれ、かつ、油路31の油圧が上昇する。また、油路31の油圧の上昇に伴い、オイルポンプ15の負荷トルクも上昇する。そして、時刻t2で油路31の油圧が設定最低圧PHL 以上になるとアキュムレータ22で蓄圧がおこなわれるとともに、オイルポンプ15の負荷トルクの上昇勾配が、時刻t2以前よりも緩やかになる。さらに、油路31の油圧が上昇して、時刻t3で油路31の油圧が設定最高圧PHH になると、アキュムレータ22,43での蓄圧がおこなわれなくなり、時刻t3以降はオイルポンプ15の負荷トルクが低下する。そして、時刻t4以降は油路31の油圧が設定最低圧PLL に維持され、オイルポンプ15の負荷トルクもTq1に維持されている。
【0057】
このように、第2具体例においては、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧が先にアキュムレータ43に蓄圧され、油路31の油圧が上昇すると、オイルポンプ15から吐出されたオイルの油圧がアキュムレータ15,22の両方に蓄圧される。つまり、オイルポンプ15の負荷が段階的に高くなる。第2具体例の車両1においては、エンジン13の動力を、オイルポンプ15および駆動輪の両方に伝達することが可能に構成されているため、エンジン13の動力を駆動輪に伝達して車両1が走行しているときに、オイルポンプ15の負荷が急激に増加することはなく、駆動力の変化によるショックを低減できる。
【0058】
また、第2具体例においては、オイルポンプ15の吐出圧が設定最低圧PHL を超えると、アキュムレータ22,43の両方に油圧を蓄えることができる。さらに、第2具体例においては、オイルポンプ15が停止されているときに、アキュムレータ22に蓄えられた油圧をプライマリ油圧室11またはセカンダリ油圧室12に供給する一方、アキュムレータ43に蓄えられた油圧をトルクコンバータ14および潤滑系統に供給することができる。
【0059】
第2具体例の効果を分かりやすくするために、オイルポンプから吐出されたアキュムレータが単数である比較例の特性を、図6に示すタイムチャートにより説明する。このアキュムレータは油路の油圧が最低設定圧PLL 以上になると蓄圧をおこなうように構成されている。このため、時刻t1で油路の油圧が最低設定圧PLL 以上になるとアキュムレータにより蓄圧がおこなわれ、時刻t3では最高設定圧にPHH になると蓄圧が終了する。そして、時刻t3以降はアキュムレータの圧力が放出されて油路の圧力が低下する。このようにアキュムレータを単数有する比較例においては、油路の油圧が急激に上昇するため、オイルポンプの負荷が急激に増加する。したがって、そのオイルポンプを駆動する動力源の動力が駆動輪に伝達される構成の車両であれば、駆動力が急激に変化してショックが生じる可能性がある。
【0060】
上記の第2具体例は、請求項1ないし7の発明に対応するものであり、この第2具体例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、アキュムレータ43が、この発明の第2アキュムレータに相当する。また、設定最低圧PLL が、この発明の「第2アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧」に相当し、設定最低圧PHL が、この発明の「第1アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧」に相当し、設定最高圧PHH が、この発明の「第1アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧」および「第2アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧」に相当する。なお、第2具体例におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、第1具体例の構成とこの発明の構成との対応関係と同じである。
【0061】
なお、図2に示された車両においては、動力伝達装置の一例として無段変速機が挙げられているが、前後進切換装置のトルク容量を制御する油圧室にオイルポンプの油圧を供給するように構成された油圧制御装置においても、各制御例を実行可能である。また、無段変速機としてベルト型無段変速機が挙げられているが、トロイダル型無段変速機を備えた車両においても、各制御例を実行可能である。このトロイダル型無段変速機においては、パワーローラがトラニオンにより支持されており、油圧室の油圧を制御することにより、パワーローラの傾転角度が制御されて、変速比が制御される。また、トロイダル型無段変速機においては、入力ディスクおよび出力ディスクの回転軸線に沿った方向に挟圧力を与える油圧室が設けられており、その油圧室に供給される油圧を制御することにより、トルク容量が制御される。
【0062】
さらに、この発明の動力伝達装置には、変速比を段階的に変更可能な有段変速機が含まれる。この有段変速機には、常時噛み合い式変速機、選択歯車式変速機、遊星歯車式変速機などが含まれる。いずれの構成の有段変速機においても、油圧室の油圧を制御することにより変速比が変更されるように構成されている。このように、無段変速機または有段変速機のいずれにおいても、油圧室の油圧を制御することにより、変速比またはトルク容量が制御されるように構成されていれば、オイルポンプから吐出されたオイルおよびアキュムレータに蓄圧された油圧をその油圧室に供給することができる。すなわち、油圧室がこの発明の高圧油路に相当する。
【0063】
また、この発明は、駆動輪に伝達する動力を発生する動力源として、前記エンジンに代えて、電動モータまたはフライホイールが設けられている車両にも適用可能である。このように構成された車両において、前記図2のフローチャートを実行するとともに、車両の惰力走行時における運動エネルギでオイルポンプを駆動すると、電動モータを駆動するための電気エネルギ、フライホイールの持つ慣性エネルギの消費量を相対的に少なくすることができる。
【符号の説明】
【0064】
11…プライマリ油圧室、 12…セカンダリ油圧室、 14…トルクコンバータ、 15…オイルポンプ、 21,26,30,37…油路、 22,43…アキュムレータ、 35…流量制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプから吐出されたオイルが供給される高圧油路と低圧油路とが並列に設けられており、前記高圧油路に、前記オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を蓄える第1アキュムレータが設けられている油圧制御装置において、
前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する経路に、前記オイルポンプから前記低圧油路に供給されるオイルの流量を制御する流量制御弁が設けられていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える制御と、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない制御とを切り替えておこなうことができるように構成されており、
前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くすることができるように構成されている請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記流量制御弁を制御して前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する流量を減らすことにより、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くするバルブ制御手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の油圧制御装置。
【請求項4】
車両の動力源から駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室とを備え、前記動力源の動力で前記オイルポンプを駆動できるように構成されており、前記高圧油路に供給されたオイルが前記油圧室に供給されるように構成されており、
前記バルブ制御手段は、前記車両が惰力走行する運動エネルギにより前記オイルポンプを駆動させ、かつ、そのオイルポンプから吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える際に、前記流量制御弁を制御して前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記低圧油路に供給する流量を減らすことにより、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄える場合における前記オイルポンプの吐出圧を、前記オイルポンプから前記高圧油路に吐出されたオイルの油圧を前記第1アキュムレータに蓄えない場合における前記オイルポンプの吐出圧よりも高くする手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の油圧制御装置。
【請求項5】
前記オイルポンプと前記流量制御弁とを接続する油路に、前記オイルポンプから吐出されたオイルの油圧を蓄える第2アキュムレータが設けられており、この第2アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧を、前記第1アキュムレータで蓄圧をおこなう油圧の最低圧よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油圧制御装置。
【請求項6】
前記第1アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧と、前記第2アキュムレータに蓄えられる油圧の最高圧とが同一であることを特徴とする請求項5に記載の油圧制御装置。
【請求項7】
前記第1アキュムレータに蓄えられた油圧が前記高圧油路に供給され、前記第2アキュムレータに蓄えられた油圧が前記低圧油路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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