説明

油圧式走行車両

【課題】複数の油圧モータの駆動により走行する油圧式走行車両において、クラッチの切断・結合に伴う油圧モータの破損、ショックの発生及びクラッチの破損を抑制する。
【解決手段】油圧式走行車両では、合成機構28において、クラッチ46の第1係合部47は、車両を前進させる方向へのクラッチ46の第2係合部48の回転速度が上昇して同方向への第1係合部47の回転速度に等しくなった場合に第2係合部48と一体となって回転する一方、車両を前進させる方向への第2係合部48の回転速度が同方向への第1係合部47の回転速度を下回っている場合に第2係合部48に対して空転するように、第2係合部48に対して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)走行システムを用いた油圧式走行車両が知られている。HST走行システムは、エンジンによって油圧ポンプを駆動させてその油圧ポンプから供給する油圧で油圧モータを駆動させ、さらに油圧モータの駆動力で車輪を回転させることによって車両の走行を行うものである。
【0003】
このような油圧式走行車両では、加速時には、大きなトルクが必要とされる一方、一定速度に達した後は、大きなトルクは不要となる。このため、可変容量型の油圧モータを用い、車両の加速時には油圧モータの容量を増大させて大きなトルクを得る一方、車両の走行速度が一定速度に達した後は油圧モータの容量を減少させてトルクを下げるような油圧モータの容量制御が一般的に行われている。
【0004】
ところで、車両に最大容量の大きい可変容量型の油圧モータを1つだけ設けてその油圧モータについて前記容量制御を行う場合には、車両が一定速度に達した後においてその最大容量の大きい油圧モータにとっては非常に低容量の状態で駆動することになる。このため、その油圧モータの駆動効率が悪くなる。
【0005】
そこで、最大容量が比較的小さい複数の油圧モータを車両に設け、加速時にはそれら複数の油圧モータの駆動力の総和で大きなトルクを得る一方、車両が一定速度に達した後は複数の油圧モータのうち一部の油圧モータの容量を0とするとともに、残りの油圧モータの容量を所定の容量まで下げて全体としては低トルクで走行を行う技術が知られている。この技術では、車両が一定速度に達した後において、前記残りの油圧モータは、その油圧モータにとってはそれ程低くない容量で駆動するため、最大容量の大きい1つの油圧モータの駆動のみによって車両の走行を行う上記の場合に比べて油圧モータの駆動効率を向上させることが可能となる。
【0006】
しかし、この技術では、容量を0とした前記一部の油圧モータが車軸に繋がった状態で空転するため、その油圧モータの空転のために不要な動力を使うこととなり、車両全体としての駆動効率(燃費)のさらなる向上が困難になるという問題が依然残されている。
【0007】
そこで、下記特許文献1及び下記特許文献2には、この問題を解消可能な技術が示されている。まず、下記特許文献1に示された技術では、複数の車輪の各々に繋がる車軸に可変容量型の油圧モータがそれぞれ接続されており、その複数の油圧モータのうちいくつかの油圧モータはクラッチを介して車軸に接続されている。そして、この技術では、車両の加速時には、外部から各クラッチへ制御信号を入力することにより、その制御信号を受けた各クラッチが結合状態になる。これにより、結合状態となった各クラッチに対応する各油圧モータの駆動力が当該クラッチを介して車軸に伝達され、大きなトルクが得られる。一方、車両が一定速度に達した後は、クラッチを介して車軸に接続された各油圧モータに外部から制御信号を入力することによりその油圧モータの容量を0まで下げるとともに、外部から各クラッチへ制御信号を入力することにより、その制御信号を受けた各クラッチが切断状態になる。これにより、車両が一定速度に達した後、容量が0となった油圧モータが車軸から切り離され、油圧モータの空転による不要な動力の消費がなくなる。その結果、燃費の向上が図られる。
【0008】
また、下記特許文献2に示された技術では、車軸に歯車列を介して2つの可変容量型の油圧モータが接続されており、2つの油圧モータのうち一方の油圧モータは、クラッチを介して歯車列に接続されている。歯車列は、2つの油圧モータの駆動力を合成して車軸に伝達する。クラッチは、制御部により車両の走行に必要なトルクに応じて切断・結合の切り替え制御が行われる。そして、この技術では、車両が加速していって車両の走行に必要なトルクが小さくなると、前記一方の油圧モータの容量を0に低下させるとともに、制御部がクラッチを切断状態にして前記一方の油圧モータを歯車列から切り離す。これにより、この特許文献2の技術でも、前記一方の油圧モータの空転による不要な動力の消費がなくなり、上記特許文献1の技術と同様、燃費の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平4−501992号公報
【特許文献2】特開2001−336602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の技術及び上記特許文献2の技術では、クラッチの切断・結合のタイミングによっては油圧モータの破損、ショックの発生又はクラッチの破損等の種々の問題が生じる虞がある。
【0011】
具体的には、上記の各技術では、油圧モータの容量制御とクラッチの切断・結合の切り替え制御とを同時に行っている。しかし、油圧モータへの容量制御の入力が行われた時点から油圧モータの容量が入力された容量に実際に変化するまでの間には時間的な遅れが生じる。このため、例えば、油圧モータの容量を所定の容量から0まで低下させる容量制御を行う場合において、油圧モータへの制御入力と同時にクラッチの切断を行うと、油圧モータの容量が実際にはまだ低下していないのにクラッチが切断される虞がある。この場合には、車軸側から切り離された油圧モータが過回転を起こして破損を生じる虞がある。
【0012】
また、油圧モータの容量が変化した時点から油圧モータの回転速度が容量に応じた回転速度になるまでの間でも時間的な遅れが生じる。従って、油圧モータへの容量制御の入力が行われた時点から油圧モータの回転速度が容量に応じた回転速度になるまでには、前記油圧モータへの制御入力から油圧モータの容量が入力された容量に実際に変化するまでの時間の遅れと、油圧モータの容量変化から油圧モータの回転速度が容量に応じた回転速度になるまでの時間の遅れとの合計分の遅れが生じる。このため、車軸側が所定の回転速度で駆動している時に油圧モータの容量を0から上昇させる容量制御を行うとともにクラッチの結合を行う場合において、油圧モータへの制御入力と同時にクラッチの結合を行うと、油圧モータの回転速度が車軸側の回転速度に等しい回転速度まで上昇する前にクラッチが結合される虞がある。この場合には、クラッチの結合に伴うショックが生じて車両の乗り心地が悪くなったり、クラッチの損傷が発生したりする虞がある。
【0013】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の油圧モータの駆動により走行する油圧式走行車両において、クラッチの切断・結合に伴う油圧モータの破損、ショックの発生及びクラッチの破損を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンと、車輪と、前記車輪に繋がる車軸と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動する第1油圧モータ及び第2油圧モータと、前記第1油圧モータの駆動力と前記第2油圧モータの駆動力を合成可能な合成機構と、前記合成機構から得られる駆動力を前記車軸に伝達して前記車軸及び前記車輪を回転させることが可能な伝達機構とを備えた油圧式走行車両であって、前記第2油圧モータは、可変容量型であり、前記合成機構は、前記伝達機構に繋がり、前記第1油圧モータの駆動力が伝達されて回転する第1回転軸と、その第1回転軸と同軸に配置され、前記第2油圧モータの駆動力が伝達されて前記第1回転軸と同方向に回転する第2回転軸と、前記第1回転軸と一体となって回転するように前記第1回転軸に結合された第1係合部と前記第2回転軸と一体となって回転するように前記第2回転軸に結合された第2係合部とを有する第1クラッチとを含み、前記第1係合部は、前記油圧式走行車両を前進させる方向への前記第2係合部の回転速度が上昇して同方向への当該第1係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合に前記第2係合部に係合してその第2係合部と一体となって回転する一方、前記油圧式走行車両を前進させる方向への前記第2係合部の回転速度が同方向への当該第1係合部の回転速度を下回った場合に前記第2係合部に対して空転するように、前記第2係合部に対して配置されることを特徴とするものである。
【0015】
この請求項1に記載の発明では、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部の回転速度が上昇して同方向への第1係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合には、第1係合部と第2係合部が一体となって回転する一方、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部の回転速度が同方向への第1係合部の回転速度を下回った場合には、第1係合部が第2係合部に対して空転する。このため、第1油圧モータが駆動していて第1回転軸及び第1係合部が所定の回転速度で回転している状態で、かつ、第1係合部が第2係合部に対して空転している状態において、第2油圧モータの容量を0から増加させる容量制御を行う場合には、第2油圧モータの回転速度が上昇して第2回転軸及び第2係合部の回転速度が第1係合部の回転速度と等しい回転速度に達すると、第1係合部と第2係合部が一体となって回転する。この際、両係合部の回転速度は等しいため、両係合部の回転速度差に起因する第1クラッチの結合時のショックの発生が抑制されるとともに、第1クラッチの損傷が抑制される。
【0016】
また、この請求項1の発明では、第1油圧モータ及び第2油圧モータが駆動していて第1クラッチの第1係合部と第2係合部が一体となって回転している状態で第2油圧モータの容量を0まで低下させる容量制御を行う場合には、第2油圧モータの回転速度が低下して第2回転軸及び第2係合部の回転速度が第1係合部の回転速度を下回ると、第1クラッチが切断状態となり、第1係合部が第2係合部に対して空転する。この際、第2油圧モータの容量は、実際に低下しているため、第2油圧モータが過回転を生じるのが防止される。その結果、第2油圧モータの過回転に起因する破損を防ぐことができる。従って、この請求項1の発明では、複数の油圧モータの駆動により走行する油圧式走行車両において、第1クラッチの切断・結合に伴う第2油圧モータの破損、ショックの発生及び第1クラッチの損傷を抑制することができる。
【0017】
そして、この請求項1の発明では、第1係合部と第2係合部の相対速度を利用したそれら両係合部の係合及び係合解除によって第1クラッチの結合と切断が行われる。このため、従来技術のように外部からクラッチへ制御信号を入力することによりクラッチの切断・結合の操作を行う場合と異なり、第2回転軸の回転速度が上昇して第1回転軸の回転速度と等しい回転速度に達した瞬間から実際に第1クラッチが結合状態となるまでの遅れ及び第2回転軸の回転速度が第1回転軸の回転速度を下回った瞬間から実際に第1クラッチが切断状態となるまでの遅れが極めて小さい。その結果、このような遅れに起因する第2油圧モータの破損、ショックの発生及び第1クラッチの損傷を確実に防ぐことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式走行車両において、前記第2係合部は、前記油圧式走行車両を後進させる方向への前記第1係合部の回転速度が上昇して同方向への当該第2係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合に前記第1係合部と一体となって回転する一方、前記油圧式走行車両を後進させる方向への前記第1係合部の回転速度が同方向への当該第2係合部の回転速度を下回った場合に前記第1係合部に対して空転し、前記合成機構は、前記第1クラッチに加えて、前記第1回転軸と前記第2回転軸とに跨るように設けられ、制御信号の入力を受けて前記第1回転軸と前記第2回転軸を連結する結合状態と前記第1回転軸と前記第2回転軸を切り離す切断状態とに切り替わる第2クラッチを含み、前記油圧式走行車両の前進を指示する前進位置と前記油圧式走行車両の後進を指示する後進位置とに切り替え可能な前後進切替部と、前記前後進切替部が前記前進位置に切り替えられたことに応じて前記第2クラッチに前記切断状態となるように指示する制御信号を送る一方、前記前後進切替部が前記後進位置に切り替えられたことに応じて前記第2クラッチに前記結合状態となるように指示する制御信号を送る制御装置とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
この請求項2に記載の発明では、車両を後進させる方向への第1係合部の回転速度が同方向への第2係合部の回転速度を下回っている場合には、第2係合部が第1係合部に対して空転し、さらに、伝達部が第1回転軸に接続されているので、車両の後進時に第2油圧モータの回転速度が第1油圧モータの回転速度よりも高い場合には、第2油圧モータの駆動力を第2回転軸から第1クラッチを介して伝達部へ伝えることができない。しかしながら、この請求項2の発明では、車両の後進時には、第2クラッチが結合状態となるので、第2油圧モータの駆動力を第2回転軸から第2クラッチ、第1回転軸を介して伝達部へ伝達することができる。その結果、車両の後進時に第2油圧モータの駆動力を車軸に伝達することができるので、第1油圧モータの駆動力と併せて、それらの駆動力で車両を後進させることができる。なお、車両の前進時には、第2クラッチは切断状態となるので、第1クラッチの切断・結合により上記請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の油圧式走行車両において、前記伝達機構は、前記合成機構から得られる駆動力を所定の高減速比とその高減速比よりも低い減速比である低減速比とで減速可能な減速機と、制御信号の入力を受けて、前記減速機により前記高減速比で減速された駆動力を前記車軸に伝達する高減速伝達状態と前記低減速比で減速された駆動力を前記車軸に伝達する低減速伝達状態とに切り替わる伝達部とを含み、高減速指示位置と低減速指示位置とに切り替え可能な減速比切替部を有し、前記減速比切替部が前記高減速指示位置に切り替えられることによって前記伝達部に前記高減速伝達状態となるように指示する制御信号を送る一方、前記減速比切替部が前記低減速指示位置に切替えられることによって前記伝達部に前記低減速伝達状態となるように指示する制御信号を送る減速比切替装置を備えることを特徴とするものである。
【0021】
この請求項3に記載の発明によれば、操作者が減速比切替部を操作して高減速比又は低減速比を選択することができるとともに、減速機においてその選択された減速比で減速した駆動力を車軸に伝達することができる。これにより、操作者が高減速比と低減速比のいずれかを選択して車両の走行を行うことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の油圧式走行車両において、前記減速機は、前記第1回転軸に取り付けられ、前記第1回転軸の回転を前記低減速比で減速可能な第1歯車装置と、前記第2回転軸に取り付けられ、前記第2回転軸の回転を前記高減速比で減速可能な第2歯車装置とを含み、前記伝達部は、前記低減速伝達状態では前記第1歯車装置に結合する一方、前記高減速伝達状態では前記第2歯車装置に結合することを特徴とするものである。
【0023】
この請求項4に記載の発明によれば、合成機構から得られる駆動力を高減速比と低減速比とで減速可能な減速機の具体的な構成を得ることができるとともに、減速機により高減速比で減速された駆動力を車軸に伝達する高減速伝達状態と低減速比で減速された駆動力を車軸に伝達する低減速伝達状態とに切り替え可能な伝達部の具体的な構成を得ることができる。さらに、この請求項4の発明では、第2歯車装置が第2回転軸に取り付けられているので、第2油圧モータの容量を0まで減少させる際、車両を前進させる方向への第1クラッチの第2係合部の回転速度が同方向への第1係合部の回転速度を下回り、第1クラッチの第1係合部が第2係合部に対して空転するようになった後、第2係合部及び第2回転軸の回転の停止とともに第2歯車装置の駆動を停止させることができる。このため、それ以降は、第2歯車装置の空転ロスをなくすことができ、燃費の悪化を抑制することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油圧式走行車両において、前記油圧ポンプの吐出口に接続された共給管と、前記供給管に接続され、前記油圧ポンプから前記供給管内に吐出された作動油を前記第1油圧モータに導入するための第1導入管と、前記供給管に接続され、前記油圧ポンプから前記供給管内に吐出された作動油を前記第2油圧モータに導入するための第2導入管とを備えることを特徴とするものである。
【0025】
この請求項5に記載の発明によれば、共通の供給管に第1導入管と第2導入管とが接続されているため、油圧ポンプから供給管内に吐出された作動油は第1導入管と第2導入管とに自然に同量ずつ分配されて流れる。このため、第1油圧モータの回転速度と第2油圧モータの回転速度を同調させやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、複数の油圧モータの駆動により走行する油圧式走行車両において、クラッチの切断・結合に伴う油圧モータの破損、ショックの発生及びクラッチの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図2】第1実施形態の油圧式走行車両における供給配管内の油圧と第1油圧モータの容量との相関関係を表す図である。
【図3】第1実施形態の油圧式走行車両における供給配管内の油圧と第2油圧モータの容量との相関関係を表す図である。
【図4】第1実施形態の油圧式走行車両の加速時における車速、供給配管内の油圧、第1油圧モータの容量、第2油圧モータの容量、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転数、クラッチの状態を経過時間に対する相関図としてそれぞれ表した図である。
【図5】第1実施形態の油圧式走行車両の減速時における車速、供給配管内の油圧、第1油圧モータの容量、第2油圧モータの容量、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転数、クラッチの状態を経過時間に対する相関図としてそれぞれ表した図である。
【図6】第1実施形態の油圧式走行車両の効果を説明するための比較例による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図7】図6に示した比較例の油圧式走行車両における供給配管内の油圧と第1油圧モータの容量との相関関係を表す図である。
【図8】図6に示した比較例の油圧式走行車両における供給配管内の油圧と第2油圧モータの容量との相関関係を表す図である。
【図9】本発明の第2実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図11】本発明の第4実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【図13】本発明の第6実施形態による油圧式走行車両の駆動系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0029】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0030】
この第1実施形態による油圧式走行車両は、HST走行システムを用いている。すなわち、この油圧式走行車両は、エンジン6によって油圧ポンプ8を駆動させるとともに、その油圧ポンプ8から供給する油圧で油圧モータ10,12を駆動させ、その油圧モータ10,12の駆動力によって車輪2を回転させて走行を行うことが可能となっている。
【0031】
具体的には、この第1実施形態の油圧式走行車両は、図1に示すように、車輪2と、車軸4と、エンジン6と、図略のアクセル装置と、油圧ポンプ8と、第1油圧モータ10と、第2油圧モータ12と、第1配管14と、第2配管16と、給排管17a,17b,18a,18bと、第1圧力センサ20aと、第2圧力センサ20bと、接続管22と、第1チェック弁23と、第2チェック弁24と、第1リリーフ弁25と、第2リリーフ弁26と、排出管27と、合成機構28と、伝達機構30と、前後進切替装置32と、制御装置34とを備えている。
【0032】
車軸4は、車輪2に繋がっている。具体的には、車軸4は、車両の車幅方向に延びており、この車軸4の両端に車輪2がそれぞれ取り付けられている。車両の走行時には、車輪2と車軸4が一体となって回転する。
【0033】
エンジン6は、油圧ポンプ8に接続されている。これにより、エンジン6が駆動することによってそのエンジン6の駆動力が油圧ポンプ8に伝達されるようになっている。
【0034】
図略のアクセル装置は、エンジン6に接続されており、操作者によって操作される。このアクセル装置は、操作者による操作量の増減に応じてエンジン6の回転数を増減させる。
【0035】
油圧ポンプ8は、エンジン6によって駆動されて作動油を吐出する。この油圧ポンプ8は、可変容量型で、かつ、両方向吐出型である。この油圧ポンプ8は、一側の給排口8aと他側の給排口8bを有している。そして、油圧ポンプ8は、制御装置34から出力される制御信号に応じて容量と作動油の吐出方向が変わるようになっている。油圧ポンプ8は、車両の前進時に制御装置34から出力される制御信号を受けて一側の給排口8aから作動油を吐出する一方、車両の後進時に制御装置34から出力される制御信号を受けて他側の給排口8bから作動油を吐出する。
【0036】
第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12は、油圧ポンプ8から供給される作動油の油圧によって駆動する。この第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12は、共に可変容量型である。第1油圧モータ10は、一側の給排口10aと他側の給排口10bを有しており、第2油圧モータ12は、一側の給排口12aと他側の給排口12bを有している。また、第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12は、両方とも制御装置34からの制御信号の入力を受けて容量が変化するようになっている。
【0037】
第1配管14は、油圧ポンプ8の一側の給排口8aに接続されており、第2配管16は、油圧ポンプ8の他側の給排口8bに接続されている。なお、第1配管14は、本発明の供給配管の概念に含まれるものである。
【0038】
給排管17a,17bのうち一方の給排管17aは、油圧ポンプ8から第1配管14内に吐出された作動油を第1油圧モータ10の一側の給排口10aに導入したり、第1油圧モータ10の一側の給排口10aから排出された作動油を第1配管14に戻したりするためのものである。なお、この一方の給排管17aは、本発明の第1導入管の概念に含まれる。一方の給排管17aは、その一端が第1配管14に接続されているとともに、他端が第1油圧モータ10の一側の給排口10aに接続されている。
【0039】
また、給排管17a,17bのうち他方の給排管17bは、油圧ポンプ8から第2配管16内に吐出された作動油を第1油圧モータ10の他側の給排口10bに導入したり、第1油圧モータ10の他側の給排口10bから排出された作動油を第2配管16に戻したりするためのものである。この他方の給排管17bは、その一端が第2配管16に接続されているとともに、他端が第1油圧モータ10の他側の給排口10bに接続されている。
【0040】
給排管18a,18bのうち一方の給排管18aは、油圧ポンプ8から第1配管14内に吐出された作動油を第2油圧モータ12の一側の給排口12aに導入したり、第2油圧モータ12の一側の給排口12aから排出された作動油を第1配管14に戻したりするためのものである。なお、この一方の給排管18aは、本発明の第2導入管の概念に含まれる。一方の給排管18aは、その一端が第1配管14に接続されているとともに、他端が第2油圧モータ12の一側の給排口12aに接続されている。
【0041】
また、給排管18a,18bのうち他方の給排管18bは、油圧ポンプ8から第2配管16内に吐出された作動油を第2油圧モータ12の他側の給排口12bに導入したり、第2油圧モータ12の他側の給排口12bから排出された作動油を第2配管16に戻したりするためのものである。この給排管18bは、その一端が第2配管16に接続されているとともに、他端が第2油圧モータ12の他側の給排口12bに接続されている。
【0042】
そして、このような各配管の構成により油圧ポンプ8と両油圧モータ10,12との間で作動油が循環するようになっている。具体的には、油圧ポンプ8の一側の給排口8aから作動油が吐出された場合には、その作動油は第1配管14を通って給排管17aと給排管18aとに同量ずつ分配されて流れ、給排管17aに流れた作動油は第1油圧モータ10の一側の給排口10aに導入される一方、給排管18aに流れた作動油は第2油圧モータ12の一側の給排口12aに導入される。そして、第1油圧モータ10の他側の給排口10bから排出された作動油は、給排管17bを通って第2配管16に流れ込み、第2油圧モータ12の他側の給排口12bから排出された作動油は、給排管18bを通って第2配管16に流れ込む。そして、第2配管16に流れ込んだ作動油は、油圧ポンプ8の他側の給排口8bに戻る。また、油圧ポンプ8の他側の給排口8bから作動油が吐出される場合には、上記と逆の経路で作動油が流れる。
【0043】
第1圧力センサ20aは、第1配管14に接続されており、第2圧力センサ20bは、第2配管16に接続されている。第1圧力センサ20aは、第1配管14内を流れる作動油の圧力を検出するものであり、第2圧力センサ20bは、第2配管16内を流れる作動油の圧力を検出するものである。これら両圧力センサ20a,20bからは、それぞれその検出圧力を示す信号が制御装置34へ送られる。
【0044】
接続管22は、第1配管14と第2配管16との間を繋ぐように設けられている。この接続管22には、第1チェック弁23と第2チェック弁24が設けられている。そして、接続管22のうち第1チェック弁23と第2チェック弁24との間の部分から第1配管14へ第1チェック弁23をバイパスするように第1リリーフ弁25が設けられている。また、接続管22のうち第1チェック弁23と第2チェック弁24との間の部分から第2配管16へ第2チェック弁24をバイパスするように第2リリーフ弁26が設けられている。また、接続管22のうち第1チェック弁23と第2チェック弁24との間の部分は、排出管27を通じて作動油タンクTに繋がっている。この構成により、第1配管14内の油圧が第1リリーフ弁25の設定圧力よりも高くなると、第1配管14から第1リリーフ弁25及び排出管27を通じて作動油タンクTへ作動油が逃がされる。また、第2配管16内の油圧が第2リリーフ弁26の設定圧力よりも高くなると、第2配管16から第2リリーフ弁26及び排出管27を通じて作動油タンクTへ作動油が逃がされる。従って、第1配管14内の油圧は、第1リリーフ弁25の設定圧力以下の圧力に維持されるとともに、第2配管16内の油圧は、第2リリーフ弁26の設定圧力以下の圧力に維持される。
【0045】
合成機構28は、第1油圧モータ10の駆動力と第2油圧モータ12の駆動力を合成可能に構成されている。この合成機構28は、第1回転軸42と、第2回転軸44と、クラッチ46とを備えている。
【0046】
第1回転軸42は、第1油圧モータ10の駆動力が伝達されることによって回転する。具体的には、この第1回転軸42は、第1油圧モータ10の出力軸に同軸となるように接続されており、第1油圧モータ10の駆動に伴ってその第1油圧モータ10の出力軸とともに回転する。また、第1回転軸42は、伝達機構30に繋がっている。
【0047】
第2回転軸44は、第2油圧モータ12の駆動力が伝達されることによって回転する。具体的には、この第2回転軸44は、第2油圧モータ12の出力軸に同軸となるように接続されており、第2油圧モータ12の駆動に伴ってその第2油圧モータ12の出力軸とともに回転する。
【0048】
クラッチ46は、第1回転軸42と第2回転軸44との間に設けられている。このクラッチ46は、本発明の第1クラッチの概念に含まれるものである。クラッチ46は、第1回転軸42及び第2回転軸44の回転方向と回転速度に応じて第1回転軸42と第2回転軸44を連結する連結状態と第1回転軸42と第2回転軸44とを切り離す切断状態とに自動的に切り替わるように構成されている。このクラッチ46は、いわゆるワンウェイクラッチであり、当該クラッチ46には公知の様々なワンウェイクラッチを適用可能である。
【0049】
例えば、クラッチ46がスプラグ型のワンウェイクラッチ(例えば、特開平5−26264号公報等参照)である場合には、クラッチ46は、第1係合部47と第2係合部48と図略の複数のスプラグとを備えている。
【0050】
第1係合部47は、第1回転軸42と一体となって回転するように第1回転軸42に結合されている。第2係合部48は、第2回転軸44と一体となって回転するように第2回転軸44に結合されている。そして、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部48の回転速度が上昇して同方向への第1係合部47の回転速度と等しい回転速度に達した場合には、クラッチ46は自動的に結合状態となり、第1係合部47は第2係合部48と一体となって回転する。一方、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部48の回転速度が同方向への第1係合部47の回転速度を下回っている場合には、クラッチ46は自動的に切断状態となり、第1係合部47は第2係合部48に対して空転する。また、油圧式走行車両を後進させる方向への第1係合部47の回転速度が上昇して同方向への第2係合部48の回転速度と等しい回転速度に達した場合には、クラッチ46は自動的に結合状態となり、第2係合部48は第1係合部47と一体となって回転する。一方、油圧式走行車両を後進させる方向への第1係合部47の回転速度が同方向への第2係合部48の回転速度を下回っている場合には、クラッチ46は自動的に切断状態となり、第2係合部48は第1係合部47に対して空転する。
【0051】
具体的には、第1係合部47は、第1回転軸42と同軸に配置された図略の外輪部を有している。第2係合部48は、第2回転軸44と同軸に配置された図略の内輪部を有しており、当該内輪部は、第1係合部47の外輪部の内側にその外輪部と同軸に配設されている。第1係合部47の外輪部と第2係合部48の内輪部との間には、前記複数のスプラグが周方向に並んで配設されている。このスプラグは、外輪部と内輪部との間でつっかい棒として機能するものである。
【0052】
そして、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部48の回転速度が上昇して同方向への第1係合部47の回転速度と等しい回転速度に達した場合、すなわち、第2係合部48の内輪部が車両を前進させる方向へ回転する第1係合部47の外輪部に対して相対的に同方向に回転して第1係合部47の外輪部の回転速度を超えそうになった場合には、第1係合部47の外輪部と第2係合部48の内輪部がスプラグと噛み合い、それによって、第1係合部47と第2係合部48が一体となって回転する。一方、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部48の回転速度が同方向への第1係合部47の回転速度を下回っている場合、すなわち、第2係合部48の内輪部が車両を前進させる方向へ回転する第1係合部47の外輪部に対して相対的に逆方向に回転する場合には、第1係合部47及び第2係合部48が共にスプラグに対して空転し、それによって第1係合部47が第2係合部48に対して空転する。
【0053】
また、油圧式走行車両を後進させる方向(前記車両を前進させる方向と逆方向)への第1係合部47の回転速度が上昇して同方向への第2係合部48の回転速度と等しい回転速度に達した場合、すなわち、第1係合部47の外輪部が車両を後進させる方向へ回転する第2係合部48の内輪部に対して相対的に同方向に回転して第2係合部48の内輪部の回転速度を超えそうになった場合には、第1係合部47の外輪部と第2係合部48の内輪部がスプラグと噛み合い、それによって、第1係合部47と第2係合部48が一体となって回転する。一方、油圧式走行車両を後進させる方向への第1係合部47の回転速度が同方向への第2係合部48の回転速度を下回っている場合、すなわち、第1係合部47の外輪部が車両を後進させる方向へ回転する第2係合部48の内輪部に対して相対的に逆方向に回転する場合には、第1係合部47及び第2係合部48が共にスプラグに対して空転し、それによって第1係合部47が第2係合部48に対して空転する。
【0054】
なお、クラッチ46としては、上述したスプラグ型のワンウェイクラッチ以外に、例えば公知のローラ型のワンウェイクラッチ(特開平8−338450号公報等参照)やその他のワンウェイクラッチを適用してもよい。
【0055】
伝達機構30は、合成機構28から得られる駆動力を車軸4に伝達して車軸4及び車輪2を回転させることが可能に構成されている。この伝達機構30は、合成機構28の第1回転軸42に接続されており、第1回転軸42から車軸4へ駆動力を伝達する。この伝達機構30は、第1歯車49と、第2歯車50と、伝達軸51と、図略の変換部とを有する。
【0056】
第1歯車49は、第1回転軸42と同軸に配置された状態で第1回転軸42に外嵌して固定されている。第1歯車49は、外歯車であり、第1回転軸42と共に回転する。
【0057】
第2歯車50は、第1歯車49に噛み合っている。また、第2歯車50は、伝達軸51と同軸に配置された状態で伝達軸51の一端部に結合されており、第1歯車49の回転を受けて伝達軸51と一体となって回転する。
【0058】
伝達軸51は、車両の車長方向に延びており、第1歯車49から第2歯車50に伝達された回転を車軸4に伝達可能に構成されている。この伝達軸51は、図略の軸受けによってその軸回りに回転可能に支持されている。
【0059】
図略の変換部は、伝達軸51のうち第2歯車50が結合された端部と反対側の端部に接続されている。この変換部は、伝達軸51の軸回りの回転を車両の車幅方向に延びる水平軸回りの回転に変換するものである。この変換部は、車軸4に接続されており、当該変換部によって変換された回転を車軸4に付与する。
【0060】
前後進切替装置32は、図1に示すように本体部32aと前後進切替部32bとを有しており、前後進切替部32bが前進位置又は後進位置に切り替えられることに応じて制御装置34に信号を出力する。具体的には、前後進切替部32bは、本体部32aに取り付けられ、操作者によって操作される操作レバーからなる。この前後進切替部32bは、車両の前進を指示する前進位置と車両の後進を指示する後進位置とに切り替え可能に本体部32aに取り付けられている。すなわち、前後進切替部32bは、中立位置から一方側へ倒されることによって前進位置となる一方、中立位置から他方側へ倒されることによって後進位置となる。本体部32aは、前後進切替部32bが前進位置に切り替えられたことに応じてそのことを知らせる第1信号を制御装置34へ出力する一方、前後進切替部32bが後進位置に切り替えられたことに応じてそのことを知らせる第2信号を制御装置34へ出力する。
【0061】
制御装置34は、油圧ポンプ8の容量、第1油圧モータ10の容量及び第2油圧モータ12の容量をそれぞれ制御する。この制御装置34は、圧力センサ20a,20bから送られる検出圧力を示す信号に基づいて油圧ポンプ8、第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12の容量を制御する。また、制御装置34は、前後進切替装置32から送られる信号に応じて油圧ポンプ8の作動油の吐出方向を切り替える。具体的には、制御装置34は、前後進切替装置32から出力される前記第1信号を受けて一方の吐出口8aから作動油を吐出させる一方、前後進切替装置32から出力される前記第2信号を受けて他方の吐出口8bから作動油を吐出させる。
【0062】
次に、この第1実施形態による油圧式走行車両の動作について説明する。
【0063】
まず、この油圧式走行車両では、エンジン6の駆動に伴って油圧ポンプ8が駆動する。この際、操作者により前後進切替部32bが前進位置側に倒されていると、油圧ポンプ8の一側の給排口8aから第1配管14内に作動油が吐出される。
【0064】
そして、この際、制御装置34は、第1圧力センサ20aによって検出される第1配管14内の圧力に基づいて、第1油圧モータ10の容量を図2に示すような関係に従って制御するとともに第2油圧モータ12の容量を図3に示すような関係に従って制御する。
【0065】
この図2及び図3の関係に基づく両油圧モータ10,12の容量制御では、後述するように、車両の加速の開始時に第1配管14内の圧力が高圧となり、それに伴って制御装置34が第1油圧モータ10の容量を最大容量q1maxとするとともに第2油圧モータ12の容量を最大容量q2maxとする。一方、車両の速度が上昇すると第1配管14内の圧力が低下し、それに伴って制御装置34が両油圧モータ10,12の容量を減少させる。
【0066】
ここで、両油圧モータ10,12の容量の和をq、油圧ポンプ8の吐出量をQ、容積効率をηとすると、両油圧モータ10,12の回転数ωは、以下の式(1)のように表される。
【0067】
ω=η・Q/q・・・(1)
【0068】
この式(1)から判るように、両油圧モータ10,12の容量の和qが減少すると、両油圧モータ10,12の回転数ωは増大する。このため、図2及び図3の関係に基づく容量制御により、油圧モータ10,12の回転数を増加させて車両の高速走行を行うことが可能となる。
【0069】
具体的には、車両が停止している状態から加速を開始する時(図4(a)参照)には、第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12に車両の慣性力が作用していることに起因してそれら両油圧モータ10,12の回転数が上昇しにくい。このため、油圧ポンプ8からの作動油の吐出量に対して両油圧モータ10,12に流入可能な作動油の流量が小さくなる。その結果、図4(b)に示すように第1配管14内の圧力が急激に上昇する。そして、第1配管14内の圧力が高くなることにより、制御装置34は、図4(c)に示すように第1油圧モータ10の容量を最大容量q1max(図2参照)にするとともに、図4(d)に示すように第2油圧モータ12の容量を最大容量q2max(図3参照)とする。これにより、両油圧モータ10,12から大きなトルクが得られる。
【0070】
この時、クラッチ46は、結合状態となっており(図4(f)参照)、第1回転軸42と第2回転軸44が一体となって回転する。これにより、両油圧モータ10,12の駆動力が合成され、その合成された駆動力が伝達機構30を通じて車軸4へ伝達される。その結果、車両の加速時に、両油圧モータ10,12の駆動力が合成された大きなトルクで車輪2が駆動される。
【0071】
その後、車速が上昇して両油圧モータ10,12の回転数が図4(e)に示すように上昇してくると、両油圧モータ10,12に流入可能な作動油の流量が増加するので、第1配管14内の圧力が図4(b)に示すように徐々に低下していく。そして、第1配管14内の圧力がP2(図3参照)を下回ると、制御装置34は、第2油圧モータ12の容量を徐々に減少させる。さらに、第1配管14内の圧力がP4(図2参照)を下回ると、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を徐々に減少させる。なお、前記圧力P2は、前記圧力P4よりもわずかに大きな圧力に設定されている。
【0072】
そして、図4(b)に示すように第1配管14内の圧力がP1まで低下した時点t1では、制御装置34は、図4(d)に示すように第2油圧モータ12の容量を最小容量q2min=0まで減少させる。これにより、第2油圧モータ12は、駆動力を発しなくなり、惰性で回転しながら自己の回転抵抗によって回転速度が減少する。その結果、第2油圧モータ12及び第2回転軸44の回転数(回転速度)は、図4(e)に示すように急激に0まで低下する。それに伴って、クラッチ46の第2係合部48の回転速度が、第1油圧モータ10の出力軸及び第1回転軸42とともに回転する第1係合部47の回転速度を下回るので、第1係合部47と第2係合部48は互いに空転し、クラッチ46は結合状態から切断状態となる(図4(f)参照)。これにより、合成機構28において第1油圧モータ10の駆動力に第2油圧モータ12の駆動力が加算されず、車軸4には第1油圧モータ10の駆動力のみが伝達機構30を通じて伝達される。すなわち、これ以降、第1油圧モータ10の駆動力のみによって車輪2が駆動される。
【0073】
この後、第1配管14内の圧力がP3(図2参照)まで低下すると、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を最小容量q1minまで減少させる。それ以降、第1配管14内の圧力がP3以下であれば、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を最小容量q1minに維持する。そして、これ以降、第1油圧モータ10の回転数及び第1回転軸42の回転速度は、一定速度に達する。これにより、車速が一定速度に達する。
【0074】
次に、車両が一定速度で走行している状態から減速する時(図5(a)参照)には、車輪2及び車軸4の回転速度が低下され、それに伴って第1回転軸42及び第1油圧モータ10の回転数が低下する(図5(e)参照)。
【0075】
この際、第1油圧モータ10に流入可能な作動油の流量が減少し、それに伴って第1配管14内の圧力が徐々に上昇する(図5(b)参照)。そして、第1配管14内の圧力がP3(図2参照)を超えると、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を徐々に増加させる(図5(c)参照)。さらに、第1配管14内の圧力がP1(図3参照)を超えると、制御装置34は、第2油圧モータ12の容量を徐々に増加させる(図5(d)参照)。第2油圧モータ12の容量が増加することによって、第2油圧モータ12が回転を開始し、第2油圧モータ12の出力軸及び第2回転軸44の回転数は、図5(e)に示すように急激に上昇する。それに伴って、クラッチ46の第2係合部48の回転速度が急激に上昇する。そして、第2係合部48の回転速度が、第1係合部47の回転速度と等しい回転速度に達すると、第1係合部47と第2係合部48は一体となって回転し、クラッチ46は切断状態から結合状態となる(図5(f)参照)。
【0076】
この後、第1配管14内の圧力がP4(図2参照)まで上昇すると、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を最大容量q1maxまで増加させて保持する。さらに、第1配管14内の圧力がP2(図3参照)まで上昇すると、制御装置34は、第2油圧モータ12の容量を最大容量q2maxまで上昇させて保持する。この後、車両の走行が停止されて車速が0になると、油圧ポンプ8の駆動が停止される。これにより、油圧ポンプ8からの作動油の吐出がなくなるため、第1配管14内の圧力が0に低下する。この第1配管14内の圧力の低下に応じて、制御装置34は、第1油圧モータ10の容量を最小容量q1minに減少させるとともに、第2油圧モータ10の容量を最小容量q2min=0に減少させる。
【0077】
以上説明したように、この第1実施形態では、車両の減速時に第1油圧モータ10が駆動していて第1回転軸42及びクラッチ46の第1係合部47が所定の回転速度で回転している状態で、かつ、第1係合部47が第2係合部48に対して空転している状態において、第2油圧モータ12の容量を0から増加させる容量制御を行う場合には、第2油圧モータ12の回転数が上昇して第2回転軸44及び第2係合部48の回転速度が第1係合部47の回転速度と等しい回転速度に達すると、クラッチ46が結合状態となり、第1係合部47と第2係合部48が一体となって回転する。この時、両係合部47,48の回転速度は等しいため、両係合部47,48の回転速度差に起因するクラッチ46の結合時のショックの発生が抑制されるとともに、クラッチ46の損傷が抑制される。
【0078】
また、第1実施形態では、車両の加速時に第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12が駆動していてクラッチ46の第1係合部47と第2係合部48が一体となって回転している状態で第2油圧モータ12の容量を0まで低下させる容量制御を行う場合には、第2油圧モータ12の回転数が低下して第2回転軸44及び第2係合部48の回転速度が第1係合部47の回転速度を下回ると、クラッチ46が切断状態となり、第1係合部47が第2係合部48に対して空転する。この際、第2油圧モータ12の容量は、実際に低下しているため、第2油圧モータ12が過回転を生じるのが防止される。その結果、第2油圧モータ12の過回転に起因する破損を防ぐことができる。従って、この第1実施形態では、複数の油圧モータ10,12の駆動により走行する油圧式走行車両において、クラッチ46の切断・結合に伴う第2油圧モータ12の破損、ショックの発生及びクラッチ46の損傷を抑制することができる。
【0079】
そして、第1実施形態では、第1係合部47と第2係合部48の相対速度を利用してクラッチ46の結合と切断が行われる。このため、従来のように外部からクラッチへ制御信号を入力することによりクラッチの切断・結合の操作を行う場合と異なり、第2油圧モータ12及び第2回転軸44の回転速度が上昇して第1油圧モータ10及び第1回転軸42の回転速度と等しい回転速度に達した瞬間から実際にクラッチ46が結合状態となるまでの遅れ及び第2油圧モータ12及び第2回転軸44の回転速度が第1油圧モータ10及び第1回転軸42の回転速度を下回った瞬間から実際にクラッチ46が切断状態となるまでの遅れが極めて小さい。その結果、このような遅れに起因する第2油圧モータ12の破損、ショックの発生及びクラッチ46の損傷を確実に防ぐことができる。
【0080】
また、第1実施形態では、油圧ポンプ8の一側の給排口8aに接続された共通の第1配管14に給排管17a,18aが接続されているため、車両の前進時に油圧ポンプ8から第1配管14内に吐出された作動油は、第1油圧モータ10に繋がる給排管17aと、第2油圧モータ12に繋がる給排管18aとに自然に同量ずつ分配されて流れる。このため、第1油圧モータ10の回転速度と第2油圧モータ12の回転速度を同調させやすくなる。
【0081】
ところで、第1油圧モータ10の駆動力と第2油圧モータ12の駆動力とを合成して車軸4に伝達する油圧式走行車両の構成としては、図6に示す比較例のような構成もある。具体的には、この比較例では、第1油圧モータ10に繋がる第1回転軸42と、第2油圧モータ12に繋がる第2回転軸44とが車幅方向に離間して互いに平行に配置されている。そして、この比較例では、第1回転軸42に伝達される第1油圧モータ10の駆動力と、第2回転軸44に伝達される第2油圧モータ12の駆動力とを合成して伝達軸51へ伝達するためのギアボックス100が設けられている。このギアボックス100は、第1伝達歯車101と、第2伝達歯車102と、合成歯車103とを有している。
【0082】
第1伝達歯車101は、第1回転軸42と同軸に配置された状態で第1回転軸42に結合しており、第1回転軸42と一体となって回転する。第2伝達歯車102は、第2回転軸44と同軸に配置された状態で第2回転軸44に結合しており、第2回転軸44と一体となって回転する。合成歯車103は、第1伝達歯車101と第2伝達歯車102との間に設けられており、それら両伝達歯車101,102に噛み合っている。この合成歯車103は、伝達軸51と同軸に配置された状態でその伝達軸51に結合している。
【0083】
このような構成により、この比較例の油圧式走行車両では、第1油圧モータ10の駆動力が第1伝達歯車101から合成歯車103に伝達されるとともに、第2油圧モータ12の駆動力が第2伝達歯車102から合成歯車103に伝達される。それによって、両油圧モータ10,12の駆動力が合成され、その合成された駆動力が合成歯車103から伝達軸51を介して車軸4に伝達されるようになっている。この比較例において、両油圧モータ10,12の容量制御は、上記第1実施形態と同様に行うものとする。すなわち、第1油圧モータ10の容量制御は、図2で示す関係に従って行い、第2油圧モータ12の容量制御は、図3で示す関係に従って行う。
【0084】
しかし、この比較例では、車速が上昇して第2油圧モータ12の容量が0にされると第2油圧モータ12は駆動力を発せず、逆に第1油圧モータ10にとって負荷となる。
【0085】
具体的には、第1油圧モータ10と第2油圧モータ12は、第1回転軸42、第2回転軸44及び各歯車101〜103を介して繋がっている。このため、第1油圧モータ10が回転している時に第2油圧モータ12が駆動力を発していなくても、第2油圧モータ12は、第1油圧モータ10の駆動力を受けて回転する。この場合、第1油圧モータ10に第2油圧モータ12の回転抵抗等が負荷として作用する。
【0086】
詳細には、第2油圧モータ12の回転抵抗トルクをTm2、車速を維持するために必要な車軸4への入力トルクをT、第1伝達歯車101及び第2伝達歯車102から合成歯車103への回転の伝達における減速比をi、ギアボックス100の機械効率をηとすると、第2油圧モータ12の容量が0にされて第2油圧モータ12が駆動力を発しない状態で車速を維持するために必要な第1油圧モータ10の出力トルクTm1は、以下の式(2)で表される。
【0087】
m1=(Tm2+T/i)/η・・・(2)
【0088】
この式(2)から判るように、比較例では、第1油圧モータ10の必要出力トルクTm1に、車軸4を駆動するために必要なトルクT/i以外に第2油圧モータ12の回転抵抗トルクTm2が含まれるため、第1油圧モータ10の必要出力トルクが増大する。そして、第1油圧モータ10の必要出力トルクが増大すると、結果的に、第1油圧モータ10の動力源であるエンジン6の動力が増大し、燃費が悪化する。
【0089】
これに対して、第1実施形態では、第2油圧モータ12の容量が0まで減少した時には、クラッチ46が切断状態となって第1係合部47が第2係合部48に対して空転しているため、第2油圧モータ12の回転抵抗トルクは第1油圧モータ10に伝達されなくなる。このため、第1実施形態における第1油圧モータ10の必要出力トルクTm1は、以下の式(2)で表される。
【0090】
m1=T/(i・η)・・・(3)
【0091】
この式(3)から判るように、第1実施形態では、第1油圧モータ10の必要出力トルクTm1が上記比較例に比べて第2油圧モータ12の回転抵抗トルクの分だけ小さくなる。その結果、エンジン6の動力を低減することができ、燃費を向上させることができる。
【0092】
また、上記比較例の構成で図7に示すような関係に従って第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12の容量を第1配管14内の圧力に対して制御する方法もある。この方法では、第1油圧モータ10の容量と第2油圧モータ12の容量とを同様に制御する。この場合、油圧ポンプ8の吐出量をQ、容積効率をη、車両の最高速度をVmax、車輪2の直径をRとすると、比較例における第1油圧モータ10の最小容量と第2油圧モータ12の最小容量の総和qsumは、以下の式(4)で表される。
【0093】
sum=Q/{η・(i×Vmax/R)}・・・(4)
【0094】
ここで、図7の関係に従って両油圧モータ10,12の容量制御を行う場合の比較例における両油圧モータ10,12の最小容量をq5とすると、以下の式(5)で示す関係が成り立つ。
【0095】
2×q5=q1min=qsum・・・(5)
【0096】
すなわち、図7の関係に従って両油圧モータ10,12の容量制御を行う場合の比較例による両油圧モータ10,12の最小容量q5は、図2及び図3の関係に従って油圧モータ10,12の容量制御を行う第1実施形態における第1油圧モータ10の最小容量q1minの1/2の値となる。
【0097】
一方、油圧モータ10,12の全効率ηは、油圧モータ10,12の容量に対して図8に示すような関係となる。図7の関係に従って両油圧モータ10,12の容量制御を行う比較例では、上記したように油圧モータ10,12の最小容量q5が第1実施形態の第1油圧モータ10の最小容量q1minの1/2の値になっているため、図8の関係に基づくと、この比較例における油圧モータ10,12の全効率は、第1実施形態における第1油圧モータ10の全効率に比べて悪くなる。その結果、比較例では、車軸4への動力伝達効率が低下し、その分、エンジン6から多くの動力を出力しなければならなくなるため、燃費が悪化する。
【0098】
これに対して、第1実施形態では、第1油圧モータ10の最小容量q1minが比較例による油圧モータ10,12の最小容量q5に比べて大きくなるため、第1油圧モータ10の全効率が比較例の油圧モータ10,12の全効率に比べて良くなる。このため、車軸4への動力伝達効率が向上し、その分、エンジン6から出力する動力を減らすことが可能となる。その結果、燃費を向上することができる。
【0099】
(第2実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第2実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0100】
この第2実施形態の油圧式走行車両では、合成機構28が、第1クラッチ46aに加えて第2クラッチ52を備えており、車両の後進時には第2クラッチ52を介して第1油圧モータ10の駆動力と第2油圧モータ12の駆動力が合成されるようになっている。
【0101】
具体的には、第1クラッチ46aは、上記第1実施形態のクラッチ46と同様に構成されている。
【0102】
第2クラッチ52は、第1クラッチ46aの周りを囲むように第1回転軸42と第2回転軸44とに跨って設けられている。この第2クラッチ52は、制御装置34から制御信号の入力を受けて第1回転軸42と第2回転軸44を連結する結合状態と第1回転軸42と第2回転軸44を切り離す切断状態とに切り替わるように構成されている。詳細には、第2クラッチ52は、第3係合部53と、第4係合部54と、一側支持部55と、他側支持部56と、駆動部57とを有する。
【0103】
第3係合部53と第4係合部54は、それぞれ第1クラッチ46aの周りを囲むように第1クラッチ46aの外側に配置された円環状のクラッチ板である。これら第3係合部53と第4係合部54は、同軸に配置されている。そして、両係合部53,54は、軸方向において互いに対向する面同士が接触することによって係合し、一体となって回転する。
【0104】
一側支持部55は、第1回転軸42に設けられており、第3係合部53を第1回転軸42と同軸となるように支持している。他側支持部56は、第2回転軸44に設けられており、第4係合部54を第2回転軸44と同軸となるように支持している。この他側支持部56は、第4係合部54を軸方向に移動可能に支持している。これにより、第4係合部54は、第3係合部53に対して接離可能となっている。
【0105】
駆動部57は、他側支持部56に設けられており、制御装置34から制御信号の入力を受けて第4係合部54を、第3係合部53と接触する接触位置と第3係合部53から離反した離反位置との間で移動させる。
【0106】
具体的には、この第2実施形態では、制御装置34は、前後進切替部32bが前進位置に切り替えられたことに応じて第2クラッチ52に切断状態となるように指示する制御信号を送る一方、前後進切替部32bが後進位置に切り替えられたことに応じて第2クラッチ52に結合状態となるように指示する制御信号を送る。詳細には、制御装置34は、前後進切替部32bが前進位置に切り替えられたことを知らせる第1信号が前後進切替装置32の本体部32aから送られた場合には、第2クラッチ52の駆動部57に前記切断状態を指示する制御信号を送る一方、前後進切替部32bが後進位置に切り替えられたことを知らせる第2信号が前後進切替装置32の本体部32aから送られた場合には、第2クラッチ52の駆動部57に前記結合状態を指示する制御信号を送る。
【0107】
そして、駆動部57は、前記切断状態を指示する制御信号が入力された場合には、第4係合部54を離反位置へ移動させて第3係合部53と第4係合部54とを切り離す。また、駆動部57は、前記結合状態を指示する制御信号が入力された場合には、第4係合部54を接触位置へ移動させて第3係合部53と第4係合部54を係合させる。
【0108】
前後進切替部32bが後進位置に切り替えられて車両が後進する時には、制御装置34は、油圧ポンプ8に他側の給排口8bから第2配管16内へ作動油を吐出させる。この第2配管16内に吐出された作動油は、給排管17bを通って第1油圧モータ10の他側の給排口10bに導入されるとともに、給排管18bを通って第2油圧モータ12の他側の給排口12bに導入される。これにより、第1油圧モータ10及び第2油圧モータ12は、逆転する。
【0109】
ここで、第1油圧モータ10の回転速度が第2油圧モータ12の回転速度よりも低い状態から第1油圧モータ10の回転速度(第1回転軸42及び第1係合部47の回転速度)が上昇して第2油圧モータ12の回転速度(第2回転軸44及び第2係合部48の回転速度)と等しい回転速度に達した場合には、第1クラッチ46aは結合状態になり、第1係合部47と第2係合部48が一体となって回転する。また、第1油圧モータ10の回転速度(第1回転軸42及び第1係合部47の回転速度)が第2油圧モータ12の回転速度(第2回転軸44及び第2係合部48の回転速度)を下回っている状態では、第1クラッチ46aは切断状態になり、第1係合部47が第2係合部48に対して空転する。そして、伝達機構30が第1回転軸42に繋がっていることから、この車両の後進時には、第1クラッチ46aを通じての動力の伝達経路では第2油圧モータ12の駆動力を有効に活用することができない。すなわち、第2油圧モータ12の回転速度が第1油圧モータ10の回転速度よりも高い場合には、第1クラッチ46aが切断状態になるため、第2油圧モータ12の駆動力を第1クラッチ46aを介して伝達機構30に伝えられない。従って、第1クラッチ46aを通じての動力の伝達経路では、第2油圧モータ12をメインモータとして用いることができない。しかしながら、この第2実施形態では、車両の後進時に第2クラッチ52が結合状態となることによって、第2クラッチ52を介して第2油圧モータ12の駆動力が第1回転軸42に伝達されるので、その駆動力を伝達機構30を通じて車軸4へ伝達することができる。このため、第2油圧モータ12をメインモータとして用いることができる。
【0110】
この第2実施形態による油圧式走行車両の上記以外の構成及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0111】
以上説明したように、伝達機構30が第1回転軸42に繋がっているとともに、車両を後進させる方向への第1クラッチ46aの第1係合部47の回転速度が同方向への第2係合部48の回転速度を下回っている場合に第2係合部48が第1係合部47に対して空転するように第1クラッチ46aが構成されていると、車両の後進時に第2油圧モータ12の回転速度が第1油圧モータ10の回転速度よりも高い場合には、第2油圧モータ12の駆動力を第1クラッチ46aを介して伝達機構30へ伝えることができない。しかしながら、この第2実施形態では、車両の後進時には、第2クラッチ52が結合状態となるので、第2油圧モータ12の駆動力を第2回転軸44から第2クラッチ52、第1回転軸42を介して伝達機構30へ伝達することができる。その結果、車両の後進時に第2油圧モータ12の駆動力を車軸4に伝達することができるので、第1油圧モータ10の駆動力と併せて、それらの駆動力で車両を後進させることができる。なお、車両の前進時には、第2クラッチ52は切断状態となるので、第1クラッチ46aの切断・結合により上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0112】
(第3実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第3実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0113】
この第3実施形態による油圧式走行車両では、伝達機構30が、合成機構28から得られる駆動力を所定の高減速比とその高減速比よりも低い減速比である低減速比とで減速可能な減速機60を備えており、操作者が選択した高減速比又は低減速比で減速した駆動力を車軸4へ伝達できるようになっている。
【0114】
具体的には、伝達機構30が備えている減速機60は、前記低減速比での減速を行う第1歯車装置61と、前記高減速比での減速を行う第2歯車装置62とを有する。
【0115】
第1歯車装置61は、第1回転軸42に設けられており、第1回転軸42の回転を前記低減速比で減速可能に構成されている。この第1歯車装置61は、低減速主動歯車61aと、低減速従動歯車61bと、連結軸61cと、低減速中間歯車61dと、低減速伝達歯車61eとを有する。なお、各歯車61a,61b,61d,61eは、全て外歯車である。
【0116】
低減速主動歯車61aは、第1回転軸42と同軸に配置された状態で第1回転軸42に外嵌して固定されている。この低減速主動歯車61aは、第1回転軸42と共に回転する。
【0117】
低減速従動歯車61bは、低減速主動歯車61aに噛み合っており、低減速主動歯車61aの回転を受けて回転する。この低減速従動歯車61bの歯数は、低減速主動歯車61aの歯数よりもわずかに多く、かつ、低減速主動歯車61aの回転を所望の低減速比で減速可能な歯数となっている。すなわち、低減速主動歯車61aから低減速従動歯車61bに回転が伝達される際に低減速比での減速が行われるようになっている。
【0118】
低減速中間歯車61dは、低減速従動歯車61bと同軸に配置されており、連結軸61cを介して低減速従動歯車61bと連結されている。これにより、低減速従動歯車61b、連結軸61c及び低減速中間歯車61dは、一体となって同じ軸回りに回転する。
【0119】
低減速伝達歯車61eは、低減速中間歯車61dに噛み合っており、低減速中間歯車61dの回転を受けて回転する。この低減速伝達歯車61eは、後述する伝達部63の伝達軸63aと同軸に配置されている。そして、この低減速伝達歯車61eには、軸方向に貫通する図略の貫通穴が設けられており、その貫通穴に後述する伝達軸63aが挿通されている。
【0120】
第2歯車装置62は、第1回転軸42に設けられており、第1回転軸42の回転を前記高減速比で減速可能に構成されている。この第2歯車装置62は、高減速主動歯車62aと、高減速従動歯車62bと、連結軸62cと、高減速中間歯車62dと、高減速伝達歯車62eとを有する。各歯車62a,62b,62d,62eは、全て外歯車である。
【0121】
高減速主動歯車62aは、第1回転軸42と同軸に配置された状態で第1回転軸42に外嵌して固定されている。高減速主動歯車62aは、第1回転軸42と共に回転する。
【0122】
高減速従動歯車62bは、高減速主動歯車62aに噛み合っており、高減速主動歯車62aの回転を受けて回転する。この高減速従動歯車62bの歯数は、高減速主動歯車62aの歯数よりも多く、かつ、高減速主動歯車62aの回転を所望の高減速比で減速可能な歯数となっている。すなわち、高減速主動歯車62aから高減速従動歯車62bに回転が伝達される際に高減速比での減速が行われるようになっている。高減速主動歯車62aの歯数に対する高減速従動歯車62bの歯数の比は、前記低減速主動歯車61aの歯数に対する前記低減速従動歯車61bの歯数の比よりも大きくなっており、それによって、高減速主動歯車62aから高減速従動歯車62bへの回転の伝達における減速比は、低減速主動歯車61aから低減速従動歯車61bへの回転の伝達における減速比に比べて大きくなっている。
【0123】
連結軸62c、高減速中間歯車62d及び高減速伝達歯車62eの構成は、上記の連結軸61c、低減速中間歯車61d及び低減速伝達歯車61eの構成と同様であり、高減速従動歯車62bの回転を連結軸62c、高減速中間歯車62d及び高減速伝達歯車62eを介して後述する伝達部63の伝達軸63aへ伝達可能となっている。高減速伝達歯車62eは、伝達軸63aと同軸に配置されているとともに、低減速伝達歯車61eから軸方向に離間して配置されている。そして、高減速伝達歯車62eには、軸方向に貫通する図略の貫通穴が設けられており、その貫通穴に後述する伝達軸63aが挿入されている。
【0124】
また、伝達機構30は、伝達部63を備えている。この伝達部63は、後述する減速比切替装置66からの信号の入力を受けて、減速機30により高減速比で減速された駆動力を車軸4に伝達する高減速伝達状態と、減速機30により低減速比で減速された駆動力を車軸4に伝達する低減速状態とに切り替わる。
【0125】
具体的には、伝達部63は、伝達軸63aと、シフタフォーク63bと、シフタフォーク駆動部63cとを有する。
【0126】
伝達軸63aは、減速機30で減速された駆動力を車軸4へ伝達するためのものである。この伝達軸63aは、上記したように低減速伝達歯車61eの貫通穴に挿通されているとともに、高減速伝達歯車62eの貫通穴に挿入されている。
【0127】
シフタフォーク63bは、伝達軸63aのうち低減速伝達歯車61eと高減速伝達歯車62eの間に位置する部位に設けられている。このシフタフォーク63bは、低減速伝達歯車61eと高減速伝達歯車62eのいずれか一方と伝達軸63aとを結合状態にするものである。このシフタフォーク63bは、伝達軸63aに沿って低減速伝達歯車61e側の低減速伝達位置に移動することにより低減速伝達歯車61eと伝達軸63aを結合させる一方、伝達軸63aに沿って高減速伝達歯車62e側の高減速伝達位置に移動することにより高減速伝達歯車62eと伝達軸63aを結合させる。
【0128】
シフタフォーク駆動部63cは、例えばエアシリンダを有しており、後述の減速比切替装置66から出力される信号を受けて、シフタフォーク63bを前記低減速伝達位置と前記高減速伝達位置との間でエア圧によって移動させる。
【0129】
また、伝達軸63aのうち前記伝達歯車61e,62eと反対側の端部は、図略の変換部を介して車軸4に繋がっている。この図略の変換部は、上記第1実施形態で説明した変換部と同様のものであり、伝達軸63aの回転を車幅方向に延びる水平軸回りの回転に変換して車軸4に伝達する。これにより、伝達軸63aがシフタフォーク63bにより低減速伝達歯車61eと結合された場合には、第1歯車装置61において低減速比で減速された駆動力が伝達軸63a及び前記変換部を通じて車軸4に伝達される。一方、伝達軸63aがシフタフォーク63bにより高減速伝達歯車62eと結合された場合には、第2歯車装置62において高減速比で減速された駆動力が伝達軸63a及び前記変換部を通じて車軸4に伝達される。
【0130】
また、この第3実施形態の油圧式走行車両は、減速比切替装置66を備えている。この減速比切替装置66は、本体部66aと減速比切替部66bを有している。この減速比切替装置66は、減速比切替部66bが高減速指示位置又は低減速指示位置に切り替えられることに応じてシフタフォーク駆動部63cへ信号を出力する。
【0131】
具体的には、減速比切替部66bは、本体部66aに取り付けられ、操作者によって操作される操作レバーからなる。この減速比切替部66bは、減速機30により前記高減速比で減速された駆動力を車軸4に伝達するように指示する高減速指示位置と、減速機30により前記低減速比で減速された駆動力を車軸4に伝達するように指示する低減速指示位置とに切り替え可能に本体部66aに取り付けられている。すなわち、減速比切替部66bは、中立位置から一方側へ倒されることによって高減速指示位置となる一方、中立位置から他方側へ倒されることによって低減速指示位置となる。本体部66aは、減速比切替部66bが高減速指示位置に切り替えられたことに応じてそのことを知らせる高減速指示信号をシフタフォーク駆動部63cへ出力する一方、減速比切替部66bが低減速指示位置に切り替えられたことに応じてそのことを知らせる低減速指示信号をシフタフォーク駆動部63cへ出力する。シフタフォーク駆動部63cは、前記高減速指示信号を受けて第1伝達軸部63dを前記高減速伝達位置に移動させる一方、前記低減速指示信号を受けて第2伝達軸部63dを前記低減速伝達位置に移動させる。
【0132】
この第3実施形態の油圧式走行車両の上記以外の構成及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0133】
以上説明したように、第3実施形態では、操作者が減速比切替部66bを操作して高減速比又は低減速比を選択することができるとともに、減速機30においてその選択された減速比で減速した駆動力を車軸4に伝達することができる。これにより、操作者が高減速比と低減速比のいずれかを選択して車両の走行を行うことができる。
【0134】
(第4実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第4実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0135】
この第4実施形態の油圧式走行車両では、減速機60の第2歯車装置62が第2回転軸44に設けられている。
【0136】
具体的には、第2歯車装置62の高減速主動歯車62aは、第2回転軸44に設けられている。この高減速主動歯車62aは、第2回転軸44と同軸に配置された状態で第2回転軸44に外嵌して固定されている。この高減速主動歯車62aは、第2回転軸44と共に回転する。
【0137】
そして、この第4実施形態では、車速が上昇する過程で制御装置34が第2油圧モータ12の容量を減少させて第2油圧モータ12及び第2回転軸44の回転速度が低下すると、高減速主動歯車62aの回転速度も低下する。そして、車両を前進させる方向へのクラッチ46の第2係合部48の回転速度が同方向への第1係合部47の回転速度を下回り、クラッチ46が切断状態となって第1係合部47が第2係合部48に対して空転するようになった後、第2油圧モータ12の容量が0まで減少されて第2油圧モータ12が回転を停止すると、高減速主動歯車62aも回転を停止する。それによって、第2歯車装置62の駆動が停止する。
【0138】
この第4実施形態による油圧式走行車両の上記以外の構成及び動作は、上記第3実施形態と同様である。
【0139】
以上説明したように、この第4実施形態では、クラッチ46の第1係合部47が第2係合部48に対して空転するようになった後、第2油圧モータ12、第2回転軸44及び第2係合部48の回転の停止とともに第2歯車装置62の駆動を停止させることができる。このため、それ以降は、第2歯車装置62の空転ロスをなくすことができ、燃費の悪化を抑制することができる。
【0140】
(第5実施形態)
次に、図12を参照して、本発明の第5実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0141】
この第5実施形態による油圧式走行車両は、上記第2実施形態の第1クラッチ46aと第2クラッチ52を有する合成機構28を備えた油圧式走行車両の構成に上記第4実施形態と同様の減速機60を有する伝達機構30を加えた構成を有する。
【0142】
具体的には、この第5実施形態では、減速機60の第1歯車装置61の低減速主動歯車61aが、第1回転軸42のうち第2クラッチ52の一側支持部55が設けられた箇所よりも第1油圧モータ10側の部分に設けられている。また、減速機60の第2歯車装置62の高減速主動歯車62aは、第2回転軸44のうち第2クラッチ52の他側支持部56が設けられた箇所よりも第2油圧モータ12側の部分に設けられている。
【0143】
この第5実施形態による油圧式走行車両の上記以外の構成は、上記第2実施形態及び上記第4実施形態と同様である。
【0144】
そして、この第5実施形態による油圧式走行車両のうち合成機構28に係る部分の動作は、上記第2実施形態と同様であり、伝達機構30に係る部分の動作は、上記第4実施形態と同様である。従って、この第5実施形態では、車両の後進時に第2油圧モータ12の駆動力を車軸4に伝達することができるので第1油圧モータ10の駆動力と併せてその第2油圧モータ12の駆動力を車両の後進に有効に活用することができるという効果と、操作者が高減速比と低減速比のいずれかを選択して車両の走行を行うことができるという効果と、第2歯車装置62の空転ロスに起因する燃費の悪化を抑制することができるという効果を得ることができる。
【0145】
(第6実施形態)
次に、図13を参照して、本発明の第6実施形態による油圧式走行車両の構成について説明する。
【0146】
この第6実施形態の油圧式走行車両では、第1油圧モータ10に繋がる第1出力軸72と第2油圧モータ12に繋がる第2出力軸74とが同軸に配置されておらず、第1油圧モータ10の駆動力が第1出力軸72から伝達歯車76、中間歯車78及び連結軸部80を介してクラッチ46の第1係合部47に伝達されるようになっている。
【0147】
具体的には、この第6実施形態では、合成機構28が、第1出力軸72と、第2出力軸74と、伝達歯車76と、中間歯車78と、連結軸部80と、クラッチ46とを有する。
【0148】
第1出力軸72は、第1油圧モータ10の駆動力が出力されるものであり、第1油圧モータ10の駆動に伴って回転する。この第1出力軸72は、第1油圧モータ10から車長方向に延びており、その先端部が第1軸受け82によって支持されている。
【0149】
第2出力軸74は、第2油圧モータ12の駆動力が出力されるものであり、第2油圧モータ12の駆動に伴って回転する。この第2出力軸74は、本発明の第2回転軸の概念に含まれるものである。そして、この第2出力軸74は、第2油圧モータ12から前記第1出力軸72と同方向に延びており、その先端部が第2軸受け84によって支持されている。また、第2出力軸74は、第1出力軸72と同軸に配置されておらず、第1出力軸72から離間して第1出力軸72と平行に配置されている。
【0150】
伝達歯車76は、第1出力軸72に設けられている。この伝達歯車76は、第1出力軸72と同軸に配置された状態で第1出力軸72に外嵌して固定されている。これにより、伝達歯車76は、第1出力軸72と一体となって回転する。
【0151】
中間歯車78は、伝達歯車76に噛み合っている。これにより、中間歯車78は、伝達歯車76の回転を受けて回転する。
【0152】
連結軸部80は、中間歯車78とクラッチ46の第1係合部47とを連結している。この連結軸部80は、本発明の第1回転軸の概念に含まれるものである。この連結軸部80によって中間歯車78と第1係合部47が連結されていることにより、中間歯車78、連結軸部80及び第1係合部47は、一体となって回転する。
【0153】
中間歯車78、連結軸部80及び第1係合部47は、同軸に配置されている。中間歯車78には、その中間歯車78の軸心と同軸となるように軸方向に貫通する貫通孔78aが設けられている。また、連結軸部80にも、その連結軸部80の軸心と同軸となるように軸方向に貫通する貫通孔80aが設けられている。さらに、第1係合部47にも、その軸心と同軸となるように軸方向に貫通する貫通孔が設けられている。そして、これら中間歯車78の貫通孔78a、連結軸部80の貫通孔80a及び第1係合部47の貫通孔に第2出力軸74が挿通されている。中間歯車78の貫通孔78a、連結軸部80の貫通孔80a及び第1係合部47の貫通孔の各内径は、第2出力軸74の外径よりも大きくなっている。これにより、第2出力軸74は、前記各貫通孔にゆとりを持った状態で挿通されている。このため、第2出力軸74と、中間歯車78、連結軸部80及び第1係合部47とは、互いに干渉することなく相対的に回転可能となっている。
【0154】
また、クラッチ46の第2係合部48には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられている。この第2係合部48の貫通孔に第2出力軸74が挿嵌され、その状態で第2係合部48と第2出力軸74とが結合されている。これにより、第2出力軸74と第2係合部48が一体となって同じ軸回りに回転するようになっている。
【0155】
そして、この第6実施形態では、前記中間歯車78が、減速機60の第1歯車装置61の低減速主動歯車としても機能する。すなわち、第1歯車装置61の低減速従動歯車61bは、中間歯車78に噛み合っており、中間歯車78の回転を受けて回転する。低減速従動歯車61bの歯数は、中間歯車78の歯数よりもわずかに多く、かつ、中間歯車78の回転を所望の低減速比で減速可能な歯数となっている。
【0156】
また、第2歯車装置62の高減速主動歯車62aは、第2出力軸74に外嵌して固定されている。これにより、高減速主動歯車62aは、第2出力軸74と一体となって回転する。
【0157】
この第6実施形態による油圧式走行車両の上記以外の構成は、上記第4実施形態と同様である。
【0158】
そして、この第6実施形態では、第1油圧モータ10の駆動力は、第1出力軸72から伝達歯車76、中間歯車78及び連結軸部80を介してクラッチ46の第1係合部47に伝達される。一方、第2油圧モータ12の駆動力は、第2出力軸74を介してクラッチ46の第2係合部48に伝達される。クラッチ46が結合状態にある場合には、クラッチ46を介して第1油圧モータ10の駆動力と第2油圧モータ12の駆動力が合成される。一方、クラッチ46が切断状態になった場合には、第1係合部47が第2係合部48に対して空転して第1油圧モータ10の駆動力に第2油圧モータ12の駆動力が合成されず、第1油圧モータ10の駆動力のみが中間歯車78から低減速従動歯車61bに伝達される。
【0159】
この第6実施形態による油圧式走行車両の上記以外の動作は、上記第4実施形態と同様である。
【0160】
以上説明したように、この第6実施形態では、第1出力軸72と第2出力軸74とが同軸に配置されておらず、互いに離間して設けられており、その各出力軸72,74の先端部がそれぞれ軸受け82,84で支持されている。このため、各出力軸72,74を強固に支持することができ、剛性の向上を図ることができる。
【0161】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0162】
例えば、前記クラッチ46及び前記第1クラッチ46aは、図2に示す構造のものに限られない。すなわち、クラッチの第1係合部が、油圧式走行車両を前進させる方向へのクラッチの第2係合部の回転速度が上昇して同方向への第1係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合に第2係合部と一体となって回転する一方、油圧式走行車両を前進させる方向への第2係合部の回転速度が同方向への第1係合部の回転速度を下回った場合に第2係合部に対して空転するような構造のものであれば、どのようなクラッチを用いてもよい。
【符号の説明】
【0163】
2 車輪
4 車軸
6 エンジン
8 油圧ポンプ
8a 給排口(吐出口)
10 第1油圧モータ
12 第2油圧モータ
14 第1配管(供給管)
17a 給排管(第1導入管)
18a 給排管(第2導入管)
28 合成機構
30 伝達機構
32 前後進切替装置
32b 前後進切替部
34 制御装置
42 第1回転軸
44 第2回転軸
46 クラッチ(第1クラッチ)
46a 第1クラッチ
47 第1係合部
48 第2係合部
52 第2クラッチ
56 伝達軸(伝達部)
60 減速機
61 第1歯車装置
62 第2歯車装置
66 減速比切替装置
66b 減速比切替部
74 第2出力軸(第2回転軸)
80 連結軸部(第1回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、車輪と、前記車輪に繋がる車軸と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動する第1油圧モータ及び第2油圧モータと、前記第1油圧モータの駆動力と前記第2油圧モータの駆動力を合成可能な合成機構と、前記合成機構から得られる駆動力を前記車軸に伝達して前記車軸及び前記車輪を回転させることが可能な伝達機構とを備えた油圧式走行車両であって、
前記第2油圧モータは、可変容量型であり、
前記合成機構は、前記伝達機構に繋がり、前記第1油圧モータの駆動力が伝達されて回転する第1回転軸と、その第1回転軸と同軸に配置され、前記第2油圧モータの駆動力が伝達されて前記第1回転軸と同方向に回転する第2回転軸と、前記第1回転軸と一体となって回転するように前記第1回転軸に結合された第1係合部と前記第2回転軸と一体となって回転するように前記第2回転軸に結合された第2係合部とを有する第1クラッチとを含み、
前記第1係合部は、前記油圧式走行車両を前進させる方向への前記第2係合部の回転速度が上昇して同方向への当該第1係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合に前記第2係合部と一体となって回転する一方、前記油圧式走行車両を前進させる方向への前記第2係合部の回転速度が同方向への当該第1係合部の回転速度を下回っている場合に前記第2係合部に対して空転するように、前記第2係合部に対して配置される、油圧式走行車両。
【請求項2】
前記第2係合部は、前記油圧式走行車両を後進させる方向への前記第1係合部の回転速度が上昇して同方向への当該第2係合部の回転速度と等しい回転速度に達した場合に前記第1係合部と一体となって回転する一方、前記油圧式走行車両を後進させる方向への前記第1係合部の回転速度が同方向への当該第2係合部の回転速度を下回っている場合に前記第1係合部に対して空転し、
前記合成機構は、前記第1クラッチに加えて、前記第1回転軸と前記第2回転軸とに跨るように設けられ、制御信号の入力を受けて前記第1回転軸と前記第2回転軸を連結する結合状態と前記第1回転軸と前記第2回転軸を切り離す切断状態とに切り替わる第2クラッチを含み、
前記油圧式走行車両の前進を指示する前進位置と前記油圧式走行車両の後進を指示する後進位置とに切り替え可能な前後進切替部と、
前記前後進切替部が前記前進位置に切り替えられたことに応じて前記第2クラッチに前記切断状態となるように指示する制御信号を送る一方、前記前後進切替部が前記後進位置に切り替えられたことに応じて前記第2クラッチに前記結合状態となるように指示する制御信号を送る制御装置とを備える、請求項1に記載の油圧式走行車両。
【請求項3】
前記伝達機構は、前記合成機構から得られる駆動力を所定の高減速比とその高減速比よりも低い減速比である低減速比とで減速可能な減速機と、制御信号の入力を受けて、前記減速機により前記高減速比で減速された駆動力を前記車軸に伝達する高減速伝達状態と前記低減速比で減速された駆動力を前記車軸に伝達する低減速伝達状態とに切り替わる伝達部とを含み、
高減速指示位置と低減速指示位置とに切り替え可能な減速比切替部を有し、前記減速比切替部が前記高減速指示位置に切り替えられることによって前記伝達部に前記高減速伝達状態となるように指示する制御信号を送る一方、前記減速比切替部が前記低減速指示位置に切替えられることによって前記伝達部に前記低減速伝達状態となるように指示する制御信号を送る減速比切替装置を備える、請求項1又は2に記載の油圧式走行車両。
【請求項4】
前記減速機は、前記第1回転軸に取り付けられ、前記第1回転軸の回転を前記低減速比で減速可能な第1歯車装置と、前記第2回転軸に取り付けられ、前記第2回転軸の回転を前記高減速比で減速可能な第2歯車装置とを含み、
前記伝達部は、前記低減速伝達状態では前記第1歯車装置に結合する一方、前記高減速伝達状態では前記第2歯車装置に結合する、請求項3に記載の油圧式走行車両。
【請求項5】
前記油圧ポンプの吐出口に接続された共給管と、
前記供給管に接続され、前記油圧ポンプから前記供給管内に吐出された作動油を前記第1油圧モータに導入するための第1導入管と、
前記供給管に接続され、前記油圧ポンプから前記供給管内に吐出された作動油を前記第2油圧モータに導入するための第2導入管とを備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油圧式走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−84094(P2011−84094A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236141(P2009−236141)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】