説明

油圧駆動装置

【課題】チャージポンプを駆動するための損失を低減し、出力効率の向上を図ること。
【解決手段】エンジン2によって駆動される油圧ポンプ10と、油圧循環回路1を介して油圧ポンプ10に接続され、油圧ポンプ10から循環供給される圧油によって駆動される油圧モータ20と、エンジン2によって駆動され、油圧循環回路1に圧油を供給するチャージポンプ30とを備え、油圧モータ20の駆動を外部出力する油圧駆動装置であって、油圧モータ20の出力軸20aに接続され、油圧モータ20が駆動している場合に油圧循環回路1に対して圧油の供給が可能となるアシストポンプ40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機によって駆動される油圧ポンプと、油圧閉回路を介して油圧ポンプから循環供給される圧油によって駆動される油圧モータとを備え、油圧モータの駆動を外部出力する油圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダやブルドーザ等、建設機械として使用される車両には、原動機であるエンジンと、駆動車輪との間にHST(Hydro-Static Transmission)と称される油圧駆動装置が設けられているものがある。油圧駆動装置は、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧閉回路を介して油圧ポンプから循環供給される圧油によって駆動される油圧モータとを備えて構成されており、油圧モータの駆動を駆動車輪に伝達することによって車両を走行させるようにしたものである。
【0003】
通常、この種の油圧駆動装置は、油圧閉回路に圧油を供給するためのチャージポンプを備えている。チャージポンプは、油圧ポンプや油圧モータの内部漏れ、あるいは油圧モータのポンプ動作に起因した油圧閉回路に生じる圧油の不足分を補充するもので、油圧ポンプと同様に、エンジンによって駆動されるように設けられている。こうした油圧駆動装置によれば、油圧ポンプや油圧モータにキャビテーションが招来される虞れがなく、安定した動作を確保することができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−227998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チャージポンプとしては、エンジンが最低回転数で運転されている場合にも、不足分の圧油を補充できるだけの容量を確保しなければならないため、比較的大容量のものが必要となる。しかしながら、こうした油圧駆動装置にあっては、エンジン回転数が上昇した場合、チャージポンプから吐出される圧油が直ちに過剰となる。過剰となった分の圧油はそのまま油タンクに返却されることになるため、チャージポンプのポンプ効率を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。しかも、常に大容量のチャージポンプをエンジンによって駆動しなければならないため、エンジンに対する負荷の点でも不利であり、出力効率の低下を招来する要因となる。
【0006】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、チャージポンプを駆動するための損失を低減し、出力効率の向上を図ることのできる油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る油圧駆動装置は、原動機によって駆動される油圧ポンプと、油圧閉回路を介して前記油圧ポンプに接続され、該油圧ポンプから循環供給される圧油によって駆動される油圧モータと、前記原動機によって駆動され、前記油圧閉回路に圧油を供給するチャージポンプとを備え、前記油圧モータの駆動を外部出力する油圧駆動装置であって、前記油圧モータの出力軸に接続され、該油圧モータが駆動している場合に前記油圧閉回路に対して圧油の供給が可能となるアシストポンプを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1において、前記アシストポンプと前記油圧閉回路との間の圧油供給系に介在し、前記アシストポンプから前記油圧閉回路への圧油の供給を制御するバルブユニットを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1において、前記油圧ポンプは、前記油圧モータに対する圧油の循環供給方向が変更可能であり、前記油圧モータは、前記油圧ポンプからの圧油の循環供給方向に応じて駆動するものであり、前記バルブユニットは、前記アシストポンプからの圧油の吐出方向に応じて前記油圧閉回路との接続態様を切り替え可能な切替バルブを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る油圧駆動装置は、上述した請求項1において、前記油圧閉回路の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の検出した圧力に応じて前記切替バルブを作動させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原動機によって駆動されるチャージポンプのみならず、油圧モータによって駆動されるアシストポンプからも油圧閉回路に圧油を供給するようにしている。アシストポンプから吐出される圧油の流量は、油圧モータの回転数に応じて増大するものである。従って、アシストポンプの容量を小さく抑えた場合にも、油圧モータのポンプ動作に起因した回転により圧油の不足分を十分に補充することができるようになる。しかも、アシストポンプを設けることにより、チャージポンプとしては油圧ポンプや油圧モータの内部漏れ分を補充できる容量を確保すれば十分であり、その小型化とともにポンプ効率の向上を図ることができるようになるばかりでなく、原動機に対する負荷損失も軽減し、出力効率の向上を期待することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る油圧駆動装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1である油圧駆動装置を示したものである。ここで例示する油圧駆動装置は、いわゆるHSTと称され、ホイールローダやブルドーザ、スキットステアローダ等、建設機械として使用される車両に搭載されるもので、閉回路となる油圧循環回路1に油圧ポンプ10及び油圧モータ20を備えている。
【0014】
油圧ポンプ10は、車両のエンジン2によって駆動されるものである。本実施の形態1では、斜板の傾転角を変更することによって容量及び圧油の吐出方向を変更することのできる可変容量型の油圧ポンプ10を適用している。尚、以下においては便宜上、油圧循環回路1を構成する通路を区別する場合、図1において油圧ポンプ10の上方に位置する吐出口10aに接続した通路を「上方通路1a」と称し、図1において油圧ポンプ10の下方に位置する吐出口10bに接続した通路を「下方通路1b」と称する。
【0015】
油圧モータ20は、油圧循環回路1を介して油圧ポンプ10から循環供給される圧油によって駆動されるものである。本実施の形態1では、斜板の傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型の油圧モータ20を適用している。油圧モータ20は、その出力軸20aが図示せぬ減速機を介して車両の駆動車輪3に接続してあり、駆動車輪3を回転駆動することで車両を走行させることができる。油圧モータ20の回転方向は、油圧ポンプ10からの圧油の循環供給方向に応じて変更され、車両を前進、もしくは後進させることができる。尚、以下においては、上方通路1aを介して油圧ポンプ10から油圧モータ20に圧油が供給された場合に図1において油圧モータ20が時計回りに回転し、下方通路1bを介して油圧ポンプ10から油圧モータ20に圧油が供給された場合に図1において油圧モータ20が反時計回りに回転するものとする。
【0016】
この油圧駆動装置には、チャージポンプ30、アシストポンプ40、バルブユニット50が設けてある。
【0017】
チャージポンプ30は、車両のエンジン2によって駆動されるもので、その吐出口30aがチャージ通路4及び一対の分岐通路5により上方通路1a及び下方通路1bのそれぞれに接続してある。一対の分岐通路5には、それぞれチェックバルブ5aが介装してある。また、チャージ通路4において分岐通路5の分岐点5bに至るまでの間には、所定のチャージリリーフ圧が設定されたチャージリリーフバルブ6が接続してある。本実施の形態では、チャージリリーフ圧として3MPaが設定してある。
【0018】
アシストポンプ40は、一対の流通口40a,40bを有し、その回転方向に応じて圧油の吐出方向を変更することのできるものである。このアシストポンプ40は、入力軸40cが油圧モータ20の出力軸20aに接続してあり、油圧モータ20の駆動によって駆動することが可能である。アシストポンプ40の回転方向は、油圧モータ20の回転方向に応じたものとなる。尚、以下においては、油圧モータ20が図1において時計回りに回転した場合にアシストポンプ40も時計回りに回転し、上方に位置する流通口(以下、「上方流通口40a」という)から圧油を吐出する。また、油圧モータ20が図1において反時計回りに回転した場合にアシストポンプ40も反時計回りに回転し、下方に位置する流通口(以下、「下方流通口40b」という)から圧油を吐出するものとする。
【0019】
バルブユニット50は、電磁式の切替バルブ51とコントローラ52とを備えて構成してある。切替バルブ51は、コントローラ52から制御信号が与えられた場合に、アシストポンプ40の各流通口40a,40bに接続した一対の流通通路7a,7bに対して、上述した一対の分岐通路5の分岐点5bに至るアシスト通路8と、油タンク60に至るドレン通路9との接続態様を切り替えるためのもので、中立位置51aを含めた三位置に切替可能である。すなわち、上方流通口40a及び下方流通口40bをそれぞれ油タンク60に接続する中立位置51aと、上方流通口40aを油タンク60に接続するとともに下方流通口40bを分岐通路5の分岐点5bに接続する第1位置51bと、上方流通口40aを分岐通路5の分岐点5bに接続するとともに下方流通口40bを油タンク60に接続する第2位置51cとに切り替わるものである。
【0020】
コントローラ52は、図2に示すように、一対の圧力センサ70a,70bからの検出信号に基づいて上述の切替バルブ51を作動させるための制御信号を出力するものである。圧力センサ70a,70bは、油圧循環回路1のそれぞれに配設されたもので、図3に示すように、それぞれが予め設定した閾値(例えば、3MPa)を下回った場合にLo信号を出力する一方、閾値以上となった場合にHi信号を出力するものである。尚、図2及び図3においては、上方通路1aに配設した圧力センサ70aの検出する圧力を「PA」、検出信号を「信号A」とし、下方通路1bに配設した圧力センサ70bの検出する圧力を「PB」、検出信号を「信号B」としてある。
【0021】
尚、図1中の符号80は、油圧循環回路1に接続されたメインリリーフバルブである。このメインリリーフバルブ80には、油圧循環回路1の最大許容圧力がメインリリーフ圧として設定してある。本実施の形態1では、メインリリーフ圧として40MPaが設定してある。
【0022】
上記のように構成した油圧駆動装置では、エンジン2が運転されると、油圧ポンプ10が駆動され、設定された斜板の傾転角に応じた吐出方向に、設定された容量の圧油が循環供給されることになる。油圧ポンプ10から圧油が循環供給されると、その循環供給方向に応じて油圧モータ20が回転駆動され、この油圧モータ20の回転によって車両が所望の方向に走行されることとなる。油圧ポンプ10からの圧油の吐出方向を変更することにより、車両の進行方向を変更することができ、油圧ポンプ10の斜板傾転角や油圧モータ20の斜板傾転角を変更することにより、車両の速度や牽引力を変更することが可能となる。
【0023】
上述した動作の間、エンジン2によってチャージポンプ30が常時駆動された状態にある。これにより、例えば油圧ポンプ10や油圧モータ20の内部漏れに起因して上方通路1a及び下方通路1bのいずれか一方の圧力がチャージリリーフ圧よりも低下した場合には、チャージポンプ30から供給される圧油が直ちに補充されることになる。尚、上方通路1a及び下方通路1bの圧力がいずれもチャージリリーフ圧よりも低下しない状況下においては、チャージポンプ30から吐出された圧油がチャージリリーフバルブ6を通じて油タンク60に返送される。
【0024】
一方、コントローラ52は、上述した動作の間、圧力センサ70a,70bからの検出信号を常時監視しており、これら圧力センサ70a,70bの検出結果に基づき、図2に示した作動態様に従って切替バルブ51を作動させる処理を実施している。
【0025】
いま、アクセルペダルを最大限踏み込んだ状態でエンジン2が2000rpmで運転され、油圧モータ20が図1において時計回りに3000rpmで回転しているものとする。この状態においては、図4中の0→t1に示すように、上方通路1aの圧力が20MPa程度となり、下方通路1bの圧力が3MPa程度となるため、双方の圧力センサ70a,70bからHi信号が出力される。従って、コントローラ52は、切替バルブ51に対して中立位置51aを維持するための制御信号を出力する。
【0026】
切替バルブ51が中立位置51aに維持された場合には、図1に示すように、アシストポンプ40の2つの流通口40a,40bがいずれも油タンク60に接続された状態となる。アシストポンプ40は、油圧モータ20に常時接続された状態にあるが、2つの流通口40a,40bがいずれも油タンク60に接続された場合、油圧循環回路1に対して圧油を供給することもなく、圧縮仕事を行わないため、油圧モータ20に対して大きな負荷となることもない。
【0027】
上述した状態からアクセルペダルをオフ状態とすると、エンジン2の回転数が急速に低下し、例えばそのままローアイドルである800rpmを維持すると、油圧ポンプ10から吐出される圧油の流量が低下するため、図4中のt1→t2に示すように、上方通路1aの圧力も20MPa程度から3MPa程度まで低下する。
【0028】
一方、油圧モータ20にあっては、エンジン2の回転数が急速に低下した状況下にあっても、慣性により徐々に回転数が低下することになる。この結果、下方通路1bの圧力が急速に上昇し、メインリリーフ圧の40MPa程度となる。この状態において当初は、双方の圧力センサ70a,70bからHi信号が出力されるため、コントローラ52からの制御信号によって切替バルブ51が中立位置51aを維持する。尚、下方通路1bの圧力がメインリリーフ圧程度となると、油圧ポンプ10及び油圧モータ20の内部漏れが増大することになるものの、この内部漏れ分の圧油が上述したチャージポンプ30から補充されることになる。
【0029】
ここで、上述の状態が暫時継続すると、油圧モータ20のポンプ動作により油圧モータ20に供給される圧油に対して油圧モータ20から吐出される圧油が過大となる。従って、単にチャージポンプ30の容量を小さく設定した場合には、図4中のt3→t4において破線で示すように、上方通路1aの圧力が3MPaを下回る虞れがある。
【0030】
しかしながら、上記油圧駆動装置によれば、上方通路1aの圧力が3MPaを下回った場合、圧力センサ70aからLo信号が出力され、図2に示す場面(3)となり、コントローラ52によって切替バルブ51が第2位置51cに切り替えられることになる。これにより、アシストポンプ40の上方流通口40aから吐出された圧油がアシスト通路8及び一方の分岐通路5を介して上方通路1aに補充されるため、図4中のt3→t4において実線で示すように、上方通路1aの圧力が3MPaを維持するようになる。従って、油圧ポンプ10や油圧モータ20にキャビテーションが招来される虞れがなく、油圧駆動装置の安定した動作を確保することができるようになる。
【0031】
さらに、上述の状態が暫時継続し、図4中のt4→t5に示すように、油圧モータ20の回転数が十分に低下し、チャージポンプ30からの圧油の補充のみによって上方通路1aに3MPaの圧力が確保できるようになると、コントローラ52によって切替バルブ51が中立位置51aに復帰され、アシストポンプ40から油圧循環回路1に対する圧油の供給が停止される。
【0032】
尚、油圧モータ20が図1において反時計回りに回転している状況下では、エンジン2の回転数が急速に低下すると、上方通路1aと下方通路1bとで圧力の変化が先とは逆となり、下方通路1bの圧力が3MPaを下回る傾向となる。しかしながら、この場合には、コントローラ52からの制御信号によって切替バルブ51が中立位置51aから第1位置51bに切り替えられ、アシストポンプ40の下方流通口40bから吐出された圧油がアシスト通路8及び一方の分岐通路5を介して下方通路1bに補充されることになる。
【0033】
また、エンジン2の回転数が急速に低下した場合にアシストポンプ40が動作する場面を例示しているが、これらの場面のみならず、上方通路1a及び下方通路1bのいずれか一方の圧力が閾値を下回れば、アシストポンプ40から吐出された圧油が該当する通路に補充されることになる。
【0034】
このように、上記油圧駆動装置では、エンジン2によって駆動されるチャージポンプ30のみならず、油圧モータ20によって駆動されるアシストポンプ40からも油圧循環回路1に圧油を供給するようにしている。アシストポンプ40から吐出される圧油の流量は、油圧モータ20の回転数に応じて増大するものである。従って、アシストポンプ40の容量を小さく抑えた場合にも、油圧モータ20のポンプ動作に起因した圧油の不足分を十分に補充することができるようになる。しかも、アシストポンプ40を設けることにより、チャージポンプ30としては油圧ポンプ10や油圧モータ20の内部漏れ分を補充できる容量を確保すれば十分であり、その小型化とともにポンプ効率の向上を図ることができるようになるばかりでなく、エンジン2に対する負荷も軽減し、出力効率の向上を期待することが可能となる。
【0035】
尚、上述した実施の形態1で示した圧力センサ70a,70bの閾値、チャージリリーフバルブ6のチャージリリーフ圧、メインリリーフバルブ80のメインリリーフ圧等々、具体的な数値は例示のために明示したものであり、その他の値に設定しても構わない。
【0036】
また、上述した実施の形態1では、油圧ポンプ10として油圧モータ20に対する圧油の循環供給方向が変更可能なものを適用しているが、必ずしもこれに限定されず、圧油の循環供給方向が一方向となる油圧ポンプ10を適用することも可能である。
【0037】
さらに、上述した実施の形態1では、アシストポンプ40の入力軸40cと油圧モータ20の出力軸20aを接続する場合には、両者を直接接続しても良いし、複数の歯車列を介して両者を接続しても構わない。
【0038】
また、上述した実施の形態1では、アシストポンプ40に接続した流通通路7a,7bと油圧循環回路1に至るアシスト通路8との間の切替バルブ51を配設しているため、必要時にのみアシストポンプ40からの圧油を油圧循環回路1に供給することができ、アシストポンプ40の負荷を可及的に低減することができるが、必ずしも切替バルブ51を配設する必要はない。
【0039】
例えば、図5に示す実施の形態2の油圧駆動装置では、アシストポンプ40の各流通口40a,40bに接続した一対の流通通路107a,107bを直接分岐通路5の分岐点5bに接続するようにしている。それぞれの流通通路107a,107bには、アシストポンプ40から分岐点5bへの圧油の通過を許容するチェックバルブ108a,108bが介在させてある。また各流通通路107a,107bには、個別の補給通路109a,109bを介して油タンク60が接続してある。それぞれの補給通路109a,109bには、油タンク60から補給通路109a,109bへの圧油の通過を許容するチェックバルブ110a,110bが介在させてある。尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0040】
この実施の形態2の油圧駆動装置においては、油圧モータ20が回転している場合に常にアシストポンプ40から圧油が吐出され、この圧油により分岐通路5の分岐点5bに常に油圧が作用することになる。従って、例えば上方通路1aの圧力がチャージリリーフバルブ6のチャージリリーフ圧を下回った場合には、この上方通路1aに対してアシストポンプ40の上方流通口40aから吐出された圧油が補充されることになる。
【0041】
上記実施の形態2の油圧駆動装置によれば、エンジン2によって駆動されるチャージポンプ30のみならず、油圧モータ20によって駆動されるアシストポンプ40からも油圧循環回路1に圧油を供給するようにしている。アシストポンプ40から吐出される圧油の流量は、油圧モータ20の回転数に応じて増大するものである。従って、アシストポンプ40の容量を小さく抑えた場合にも、油圧モータ20のポンプ動作に起因した圧油の不足分を十分に補充することができるようになる。しかも、アシストポンプ40を設けることにより、チャージポンプ30としては油圧ポンプ10や油圧モータ20の内部漏れ分を補充できる容量を確保すれば十分であり、その小型化とともにポンプ効率の向上を図ることができるようになるばかりでなく、エンジン2に対する負荷も軽減し、出力効率の向上を期待することが可能となる。
【0042】
さらに、上述した切替バルブ51を適用する場合に上述した実施の形態1では、油圧循環回路1の上方通路1a及び下方通路1bにそれぞれ圧力センサ70a,70bを配設し、これら圧力センサ70a,70bの検出結果に基づくコントローラ52からの制御信号によって切り替えられる電磁式のものを例示しているが、切替バルブとしては必ずしも電磁式のものである必要はない。
【0043】
例えば、図6に示す実施の形態3の油圧駆動装置では、油圧式の切替バルブ251を適用し、この切替バルブ251の一方の端部に上方通路1aの圧力を作用させる一方、切替バルブ251の他方の端部に下方通路1bの圧力を作用させるようにしている。尚、実施の形態3において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0044】
この実施の形態3の油圧駆動装置においては、油圧モータ20が回転している場合に生じる上方通路1aと下方通路1bとの圧力差によって切替バルブ251が中立位置251aから第1位置251bもしくは第2位置251cに切り替えられ、油圧モータ20の回転方向に寄らず常にアシストポンプ40からの圧油により分岐通路5の分岐点5bに常に油圧が作用することになる。従って、例えば上方通路1aの圧力がチャージリリーフバルブ6のチャージリリーフ圧を下回った場合には、この上方通路1aに対してアシストポンプ40の上方流通口40aから吐出された圧油が補充されることになる。
【0045】
尚、図6に示す実施の形態3の油圧駆動装置においては、切替バルブ251を設けた場合であっても常時アシストポンプ40が圧縮仕事を行うことになる。油圧式の切替バルブ251を適用してアシストポンプ40の油圧モータ20に対する負荷を軽減する場合には、図7に示す実施の形態4のように油圧駆動装置を構成すれば良い。
【0046】
すなわち、図7に示す実施の形態4の油圧駆動装置では、油圧式の切替バルブ251の他に、低圧選択バルブ300及び油圧感応式の補助切替バルブ310とを備えて構成してある。低圧選択バルブ300は、油圧循環回路1の上方通路1a及び下方通路1bから低圧側の油圧を選択し、選択した油圧を補助切替バルブ310に作用させるものである。補助切替バルブ310は、低圧選択バルブ300から出力される油圧循環回路1の低圧側油圧が予め設定した閾値を下回った場合にのみ、切替バルブ251の一方の端部に上方通路1aの圧力を作用させるとともに、切替バルブ251の他方の端部に下方通路1bの圧力を作用させるものである。尚、実施の形態4において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0047】
この実施の形態4の油圧駆動装置においては、上方通路1a及び下方通路1bのいずれか一方の油圧が補助切替バルブ310に設定した閾値、例えば3MPaを下回った場合、これら上方通路1a及び下方通路1bの圧力差によって切替バルブ251が中立位置251aから第1位置251bもしくは第2位置251cに切り替えられ、油圧モータ20の回転方向に寄らずアシストポンプ40からの圧油により分岐通路5の分岐点5bに油圧が作用することになる。従って、例えば上方通路1aの圧力が3MPaを下回った場合には、この上方通路1aに対してアシストポンプ40の上方流通口40aから吐出された圧油が補充されることになる。しかも、実施の形態4の油圧駆動装置によれば、上方通路1a及び下方通路1bのいずれか一方の油圧が補助切替バルブ310に設定した閾値を下回らない場合、つまりアシストポンプ40が不必要となっている状態においては、アシストポンプ40の2つの流通口40a,40bがいずれも油タンク60に接続されて圧縮仕事をしないため、油圧モータ20に対する負荷の軽減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1である油圧駆動装置を示す回路図である。
【図2】図1に示した油圧駆動装置に適用するコントローラにおいて油圧閉回路の圧力に応じた切替バルブの作動態様を示す図表である。
【図3】図1に示した油圧駆動装置に適用する圧力センサにおいて検出圧力と出力信号との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示した油圧駆動装置において油圧ポンプを高回転数状態からローアイドル状態に変化させた場合の油圧モータの回転数変化と、油圧閉回路の圧力変化との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態2である油圧駆動装置を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3である油圧駆動装置を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態4である油圧駆動装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧循環回路
1a 上方通路
1b 下方通路
2 エンジン
4 チャージ通路
5 分岐通路
5a チェックバルブ
5b 分岐点
6 チャージリリーフバルブ
7a,7b 流通通路
8 アシスト通路
9 ドレン通路
10 油圧ポンプ
20 油圧モータ
30 チャージポンプ
30a 吐出口
40 アシストポンプ
50 バルブユニット
51 切替バルブ
52 コントローラ
60 油タンク
70a,70b 圧力センサ
107a,107b 流通通路
108a,108b チェックバルブ
109a,109b 補給通路
110a,110b チェックバルブ
251 切替バルブ
300 低圧選択バルブ
310 補助切替バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機によって駆動される油圧ポンプと、
油圧閉回路を介して前記油圧ポンプに接続され、該油圧ポンプから循環供給される圧油によって駆動される油圧モータと、
前記原動機によって駆動され、前記油圧閉回路に圧油を供給するチャージポンプと
を備え、前記油圧モータの駆動を外部出力する油圧駆動装置であって、
前記油圧モータの出力軸に接続され、該油圧モータが駆動している場合に前記油圧閉回路に対して圧油の供給が可能となるアシストポンプを備えたことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
前記アシストポンプと前記油圧閉回路との間の圧油供給系に介在し、前記アシストポンプから前記油圧閉回路への圧油の供給を制御するバルブユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記油圧ポンプは、前記油圧モータに対する圧油の循環供給方向が変更可能であり、
前記油圧モータは、前記油圧ポンプからの圧油の循環供給方向に応じて駆動するものであり、
前記バルブユニットは、前記アシストポンプからの圧油の吐出方向に応じて前記油圧閉回路との接続態様を切り替え可能な切替バルブを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
前記油圧閉回路の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段の検出した圧力に応じて前記切替バルブを作動させる制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−223992(P2008−223992A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66910(P2007−66910)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】