説明

油性ゲル状化粧料

【課題】 高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料を提供する。
【解決手段】 水添ポリイソブテンと、非揮発性炭化水素油と、デキストリン脂肪酸エステルと、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物とを含有し、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を含有しないことを特徴とすることにより、高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の油性ゲル状化粧料は、特に口唇用化粧料に有用であり、更に詳しくは、高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口唇は、身体の他の皮膚組織とは異なって汗腺がなく、また水分の蒸散を抑える角層も薄いことから、乾燥しやすく荒れやすいことが知られている。そして、この症状は、特に冬の乾燥した時期に悪化する傾向にある。唇が乾燥し荒れてくると、皮が剥ける、切れる、皮膚が肥厚し唇が硬くなる等の症状が発生し、更に唇の色自体がくすんだり、透明感が失われる等の症状として現われる。その結果、口紅のノリや、口紅の発色に悪影響を及ぼすことになり、美容上好ましくない。
【0003】
このような唇の荒れを予防・改善するためには、唇の乾燥を防ぐことが必要であり、各種エキスなど有効成分や、グリセリンやムコ多糖類の保湿成分を配合する、または唇上に油膜を形成させて唇の水分蒸散を防ぐなどの試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コウジ酸誘導体を用いて、唇の皮剥けや荒れを防止する口紅が記載されている。また、特許文献2には、表皮の水バリヤ機能を有するセラミド類を、炭化水素ワックス類と併用した色落ちし難い口紅が記載されている。一方、特許文献3には、セラミド類、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、半固形脂又は固体脂、液体油及び顔料を含む油性固型化粧料が開示されている。さらに、特許文献4には、セラミド類と、高級アルコール、スクワランを組み合わせて用いることにより、水分蒸散の防止効果が長時間持続し、唇の荒れを予防・改善することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−16912号公報
【特許文献2】特開平10−7527号公報
【特許文献3】特開平9−169614号公報
【特許文献4】特開2005−53881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、保湿成分を配合する場合には、その効果が環境条件の影響を受けやすく、特に低湿度下では逆に唇の水分を吸い上げてしまい唇の乾燥を更に悪化させてしまうなどの問題があった。従って、単に保湿成分を配合する従来の方法では、唇上の水分の蒸散を防ぐには十分でなかった。
【0007】
そこで本発明においては、高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、油性ゲル状化粧料において、水添ポリイソブテンと、非揮発性炭化水素油と、デキストリン脂肪酸エステルと、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物とを含有し、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を含有しないことにより、高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料が得られることを見いだした。
【0009】
本発明の油性ゲル状化粧料は、水添ポリイソブテンと、非揮発性炭化水素油と、デキストリン脂肪酸エステルと、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物とを含有し、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を含有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い閉塞性を有し、保湿効果、口唇状態改善効果に優れた油性ゲル状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本発明の油性ゲル状化粧料に配合する各成分について説明する。
【0012】
本発明の油性ゲル状化粧料は、水添ポリイソブテンと、非揮発性炭化水素油と、デキストリン脂肪酸エステルと、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物とを含有する。
【0013】
水添ポリイソブテンは、イソブテンとn−ブテンを共重合して得られる液体ポリマーであり、多く市販品として得られる平均分子量500〜2700程度のものが好ましい。更に好ましくは、平均分子量800〜1200のものである。平均分子量500以下の水添ポリイソブテンは高温安定性に問題があり、逆に平均分子量2700以上では硬度が高くなりすぎ、化粧料として使用性に問題がある。
【0014】
本発明における水添ポリイソブテンの配合量は、油性ゲル状化粧料全量に対して20〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。20質量%未満の配合では保存安定性に、60重量%を超えて配合すると使用性(のび)に、それぞれ問題が生じる場合がある。
【0015】
非揮発性炭化水素油としては、常温で揮発性を示さず、かつ液状の炭化水素油が該当し、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマーが例示される。
【0016】
本発明における非揮発性炭化水素油の配合量は、油性ゲル状化粧料全量に対して、10〜60質量%が好ましい。10質量%未満の配合では使用性(のび)に、60質量%を超えて配合すると保存安定性に、それぞれ問題が生じる場合がある。
【0017】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと炭素数6〜22の高級脂肪酸とのエステルである。具体的には、カプリン酸デキストリル,2−エチルヘキサン酸デキストリル,カプリル酸デキストリル,ウンデカン酸デキストリル,ラウリン酸デキストリル,ミリスチン酸デキストリル,パルミチン酸デキストリル,ステアリン酸デキストリル,イソステアリン酸デキストリル,アラキン酸デキストリル,ベヘン酸デキストリル,ヤシ油脂肪酸デキストリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を選択して用いる。また化粧品原料として市販されているデキストリン脂肪酸エステルであるレオパールRKE,レオパールRKL,レオパールRTT,レオパールRTL,レオパールRMKL(いずれも千葉製粉社製)を用いてもよい。これらのデキストリン脂肪酸エステルの中では、パルミチン酸デキストリル,2−エチルヘキサン酸デキストリルが、安定性,使用性の面より最も好ましい。
【0018】
本発明におけるデキストリン脂肪酸エステルの配合量は、油性ゲル状化粧料全量に対して、5.5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%が更に好ましい。5.5質量%未満の配合では、充分な閉塞性が発揮されない場合がある。30質量%を超えて配合すると使用性(のび)に問題が生じる場合がある。
【0019】
イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物としては、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリルを用いることができ、特にトリイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリルを用いることが、刺激性の点から好ましい。
【0020】
本発明におけるイソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物の配合量は、油性ゲル状化粧料全量に対して、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。
【0021】
本発明における油性ゲル状化粧料においては、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を実質的に含有しないことを特徴とする。イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を有意な量配合することにより、閉塞性並びに安全性に問題が生じる場合がある。
【0022】
本発明の油性ゲル状化粧料は、常法により調製することができる。具体的には、例えば全成分を加熱し均一に溶解した後、脱泡しながら冷却することにより調製することができる。
【0023】
また、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、さらに脱泡剤、保湿剤、安定剤、酸化防止剤、着色料、香料、抗炎症剤、殺菌剤、抗菌剤、色素、着色剤などを添加してもよい。
【0024】
本発明の油性ゲル状化粧料は、リップケアジェル、リップグロス、リップカラーとして好適に使用される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
[実施例1、比較例1、2]
表1に示す処方にて、全成分を均一に混合することにより、リップグロスを調製した。
【0027】
【表1】

【0028】
[in vitroでの閉塞性試験]
実施例1若しくは比較例1をメンブランフィルター(Millipore Type JH, 0.45mm)に塗布(15 mg/cm2)し、10 mL の蒸留水を入れたバイアルビン(詳細は下記)に装着する。これを室温(20 ± 3℃、相対湿度 40 ± 3%)で静置し、1時間後の試料塗布膜を透過する水分蒸散量をテヴァメーター TM210(C+K社製)を用いて測定した。なお、比較のため閉塞性が高いとされる代表的な油剤である白色ワセリンも同時に閉塞性試験を行った。結果は図1に示したとおり、本発明の実施例1は、白色ワセリンよりも高い閉塞性を発揮することが示された。
バイアルビン
容量:13 mL
胴径×全長:24 × 50 mm
口内径(ガラス部分):15 mm
蓋の開口部径:12 mm
【0029】
[安全性試験]
実施例1及び比較例2を用いて安全性試験を行った。安全性試験は、女性10名を一群として実使用により行った。試験は、一日2回2日間連続して使用させ、塗布による乾燥やひび割れなどの口唇異常、痛みや痒みなどの口唇刺激の有無について下記の基準で回答させ、合計点を算出した。実使用試験の結果は、表2に示した。
評価
強い異常、刺激がある:2点
軽い異常、刺激がある:1点
異常、刺激がない:0点
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示した通り、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油であるリンゴ酸ジイソステアリルを含有する比較例2は、口唇異常、口唇刺激ともに高い値となり、安全性に問題があることは明らかである。
【0032】
[使用試験]
口唇の乾燥を訴える20〜40才台の女性5名を対象とし、本発明の実施例1の連続使用試験を行った。使用試験は、1日2回以上7日間連続して実施例1のみを使用させ、使用前後の口唇の水分量、及び水分蒸散量の測定を行うと共に、口唇細胞の観察を行った。
水分量は、SKICON−200(IBS社製)を用いて、水分蒸散量はテヴァメーター TM210(C+K社製)を用いてそれぞれ測定した。口唇細胞は、文献(日本香粧品学会誌、vol.29,No.1,20〜27ページ、(2005))の記載を参考に、テープストリッピングで口唇細胞を採取し、電子顕微鏡で細胞の内側を観察し、微絨毛様突起の状態を観察した。使用前は、ほぼ全員の細胞で微絨毛様突起がほとんど認められなかったが、使用後には採取した細胞の約半分の面積で微絨毛様突起が認められていた。水分量の水分蒸散量の測定結果は表3に示したとおり、使用前と比較して有意に水分量が増加し、水分蒸散量が明確に減少し口唇状態が改善していることが示された。
【0033】
【表3】

【0034】
本発明のほかの実施例を示す。
【0035】
[実施例2] リップグロス
(1)(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン 5.00(質量%)
(2)パルミチン酸デキストリン 5.00
(3)イソステアリン酸ジグリセリル 10.00
(4)トリイソステアリン酸ジグリセリル 10.00
(5)流動パラフィン 29.80
(6)重質流動イソパラフィン 40.00
(7)d−δ−トコフェロール 0.10
(8)グリチルレチン酸ステアリル 0.10
製法:(1)〜(8)の成分を、均一に溶解、混合する。
【0036】
[実施例3] 顔料入りリップグロス
(1)(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン 3.00(質量%)
(2)パルミチン酸デキストリン 7.00
(3)ジイソステアリン酸ジグリセリル 15.00
(4)トリイソステアリン酸ジグリセリル 5.00
(5)スクワラン 29.66
(6)重質流動イソパラフィン 40.00
(7)d−δ−トコフェロール 0.10
(8)フェノキシエタノール 0.20
(9)シリコーン樹脂 0.01
(10)ベンガラ 0.01
(11)酸化チタン 0.02
製法:(1)〜(11)の成分を、均質に溶解、混合する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1に示したリップグロスの閉塞性を、比較例1、白色ワセリンと比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ポリイソブテンと、非揮発性炭化水素油と、デキストリン脂肪酸エステルと、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物とを含有し、イソステアリン酸とグリセリンおよび/またはジグリセリンとのエステル化合物以外のエステル油を含有しないことを特徴とする、油性ゲル状化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−19187(P2008−19187A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190738(P2006−190738)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】