説明

油性リトグラフ用印刷インキ系のための顔料組成物

着色剤として、有機顔料、有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)を含む油性のリトグラフ印刷インキシステム用の顔料組成物を提供する。これらの顔料組成物から調製される印刷インキは、得られる印刷物の光沢性および透明性の両方における向上と色強度における格別な向上とを併せて示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性リトグラフ用印刷インキにおける使用に適した顔料組成物に関するものである。より具体的には、本発明は、有機顔料および有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)の組合せを含有する顔料組成物に関するものである。
【0002】
リトグラフ印刷は、疎水性インキを受容する疎水性画像領域、および水、すなわち湿し水(fount water)を受ける非画像親水性領域を有する、コーティングされた金属またはポリマーの版を利用する方法である。
【0003】
オフセット・リトグラフ印刷用の伝統的な顔料インキは、一般により高い色強度を達成させるために高い顔料配合レベルを必要とする。しかしながら、顔料配合量を増やすと、結果として製造および性能の両面に問題が発生する。
【0004】
高顔料配合は、様々な困難を引き起こす可能性があり、たとえば顔料分散性が低下し、過大な顔料粒子および粗粒の形成、または顔料の湿潤性低下という結果を生じうる。他方、貧弱な湿潤性および分散性は、貧弱な色強度を生ずることになり、そしてさらに、所望の分散を達成するため、そして粘度を克服するために、製造工程を通じて高められたせん断速度が要求される。
【0005】
インキの高顔料配合および/または高粘度に由来する別の問題は、印刷機ローラー上における印刷インキの不十分な転写および配分、そして成膜性の無視できない低下である可能性がある。そして最終的に、高顔料配合インキは、不十分な透明性および光沢性を有する印刷物を生ずる可能性がある。
【0006】
増強された色強度への上記に代わるアプローチは、インキ膜の厚さを増加させることであろうが、これはまたさらなる問題を引き起こす結果となる。
【0007】
増加した膜厚は、結果として、乾燥または硬化がより困難な印刷物を生成させる可能性があり、さらには、より低い透明性および低下した印刷像精細度が観察される可能性もある。増加したインキ膜厚によって引き起こされる可能性のあるもう一つの問題は、リトグラフ印刷機上における調整されたインキ/水のバランス達成に関係するものであり、結局、印刷性能の問題に導かれる。
【0008】
そしてまた、インキの膜厚を増加させると、より短期の印刷機稼動のみが可能であり、そしてより頻繁なインキ補充が必要になるという点で、費用は一層増大する結果となる。
【0009】
リトグラフ用印刷インキ系における、後述の新規な有機顔料/油溶性染料組成物を用いた場合、これらの問題は克服可能であり、そして、たとえば増強された色強度、しかもまた得られる印刷物の改善された光沢および透明性、そして改善された印刷性能に関して卓越した効果の達成できることが、今や見出された。
【0010】
純粋に油溶性染料に基づくリトグラフ用印刷インキを製造することも可能ではあるが、これらは、顔料インキにくらべて、いかなる長所的利点をも示すことはない。
【0011】
したがって、本発明の主たる目的は、有機顔料/油溶性染料混合物を含む、前述の新規リトグラフ用印刷インキ組成物を提供することである。本発明の他の目的は、該組成物を製造する方法、該組成物から印刷インキを製造する方法、そのようにして得られた印刷インキ、および該インキのリトグラフ印刷方法における使用に関する。本発明のこれら、および他の目的については、以下に記述する。
【0012】
したがって、本発明の最初の局面においては、有機顔料および有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)の混合物と、印刷インキワニス(インキビヒクル)、溶媒、および他の通例の添加剤とを含み、ここで該印刷インキワニスまたは添加剤が、顔料分散の前またはその最中のいずれかに該油溶性染料と混合され、またはそれで着色される、リトグラフ用印刷インキ組成物が提供される。
【0013】
有機顔料および油溶性染料(通常、同じ色合いのもの)の、この独特の組合せは、−リトグラフ印刷系のための印刷インキに混合された場合−結果として、たとえば、より高い色強度および印刷性能に関して相乗効果を示すインキを生成する。
【0014】
顔料の分散は、解凝塊させ、湿潤させ、そして顔料粒子をワニス媒体中に取り込ませて、媒体全体が着色されたように見せる工程であると考えてほしい。
【0015】
顔料は、印刷工業において通常用いられる4色、すなわち黒、シアン(青)、マゼンタ(赤)、および黄を発色させるものである。一般にこれらは、本発明のインキ組成物の他の成分と相溶し得るものであり、そしてリトグラフ印刷方法用の油性印刷インキを形成させるための基(着色剤)を構成するものであって、これが本発明のもう一つの目的である。
【0016】
有機顔料は、たとえば、これに限定されるものではないが、モノアゾ、ジスアゾ、アゾメチン、アゾ縮合、金属錯体アゾ、ナフトール、金属錯体たとえばフタロシアニン、ジオキサゾン、ニトロ、ペリノン、キノリン、アントラキノン、ヒドロキシアントラキノン、アミノアントラキノン、ベンズイミダゾロン、イソインドリン、イソインドリノン、キナクリドン、アントラピリミジン、インダントロン、フラバントロン、ピラントロン、アントアントロン、イソビオラントロン、ジケトピロロピロール、カルバゾール、ペリレン、インジゴまたはチオインジゴ顔料を含む。これら顔料の混合物を使用してもよい。
【0017】
ジスアゾ顔料は、リトグラフ用印刷インキの製造に普通に用いられる着色剤の重要な分類を代表する。好ましくは、これらは黄色およびオレンジ色ジアリーリド顔料、およびオレンジ色ジスアゾピラゾロン顔料であって、たとえばC.I.(カラーインデックス)ピグメントイエロー12、13、14、17、83、174、および188、ならびに、暗色化剤としてよく用いられるC.I.ピグメントオレンジ13、および34を包含する。
【0018】
好ましい青色顔料は、たとえば金属錯体、例として銅フタロシアニン顔料(たとえば、C.I.ピグメントブルー15:3)であり、一方、赤色顔料は、たとえばナフトール顔料、好ましくはβ−ナフトールまたはβ−オキシナフトエ酸(BONA)顔料(たとえば、C.I.ピグメントレッド57:1)である。
【0019】
これらの有機顔料すべてについての、さらなる詳細に関しては、Industrial Organic Pigments(工業用有機顔料), W.Herbst, K.Hunger, 2nd edition, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1997を参照されたい。
【0020】
顔料は、選択されたインキ系の範囲内で、その性能を改善するための表面処理を受けてもよい。表面処理用の典型的な添加剤は、たとえば、これに限定されるものではないが、ロジン酸、イオン性または非イオン性界面活性剤、およびイオン性染料である。選択されたインキ系に適した顔料添加剤および表面処理用添加剤の適切な選別は、当業者によって実行可能である。
【0021】
「油溶性染料」は、当業者において周知の用語であり、Society of Dyers and Colourists(染色加工者協会)およびAmerican Association of Textile Chemists and Colorists(米国織物化学者および染色技術者協会)によって出版されたカラーインデックス(C.I.)中に定義されている。
【0022】
油溶性染料の化学構成に関しては、モノアゾおよびジスアゾ、そしてさらに若干のポリアゾ染料が主流となっている。他の重要な染料は、キサンテン、トリアリールメンタン、アントラキノン、アジン、トリアジン、およびフタロシアニン染料である。
【0023】
代表的な赤色染料は、C.I.ソルベントレッド19、23、24、25、26、27および29(これらはすべてジスアゾ染料である)、さらにC.I.ソルベントレッド1,49、52および111を包含する。
【0024】
代表的な青色染料は、C.I.ソルベントブルー14、35、36、59および78を包含する。
【0025】
代表的な黄色染料は、C.I.ソルベントイエロー7、14、33、72、94および114を包含する。
【0026】
代表的なオレンジ色染料は、C.I.ソルベントオレンジ1、2および7を包含する。
【0027】
上述の油溶性染料の混合物も使用することができる。例は、C.I.ソルベントレッド26および27の(重量比で)1:1混合物、またはC.I.ソルベントレッド23、24、26および27の1:1:1:1の混合物である。
【0028】
顔料/油溶性染料比率は、一般に、(99〜1):(1〜99)、好ましくは(98〜10):(2〜90)、そしてもっとも好ましい(95〜30):(5〜70)を包含する。最後の範囲の中で、(95〜65):(5〜35)の比率が特に重要性がある。
【0029】
本発明の顔料を基としたリトグラフ用印刷インキは、本発明の顔料/油溶性染料組成物を0.1〜70重量%(以後に述べるパーセントのすべては、重量基準である)、残部として、通例の印刷インキワニス(インキビヒクル)、溶媒、および他の適した周知の添加剤を含有してよい。この0.1〜70%の範囲は、濃縮された印刷インキ、およびすぐ使用できる印刷インキの両方を包含している。実用では、濃縮された印刷インキは、適切な溶媒、レジン、ワニス(インキビヒクル)またはワニス/インキビヒクル成分を用いて希釈される。
【0030】
好ましいのは、百分比が2〜55%、もっとも好ましいのは、2〜20%である;通常の製造方法(すぐ使用できる印刷インキ)の場合には、12〜18%の範囲が特に興味があり、一方、20〜70%、好ましくは20〜55%の範囲は、インキ濃縮原液(concentrate)製造のためのものである。
【0031】
この好ましい20〜55%の範囲内において、ビーズミルによるインキ濃縮原液の製造は、好ましくは前述した顔料/油溶性染料含有率20〜35%の組成で実施する;一方、ニーダー(混練機)による製造では、相当する好ましい範囲は、35〜55%である。
【0032】
これらのインキ濃縮原液は、種々の濃度で押出しにより製造でき、たとえば、希釈により、実際の印刷工程に使用されるインキを製造するための基となり得る。
【0033】
本発明のもう一つの態様は、リトグラフ用印刷インキ着色剤を含んでおり、そしてこのものは、有機顔料および有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)の混合物を含み、ここで該有機顔料は、印刷インキワニス(インキビヒクル)、溶媒、および他の通例の添加剤でコーティングされ、かつ該印刷インキワニスまたは添加剤は、顔料加工の前またはその最中のいずれかに油溶性染料と混合され、またはそれで着色されているものである。
【0034】
これらのリトグラフ用印刷インキ着色剤は、(高度に濃縮された)有機顔料/油溶性染料の組合せを含む、表面処理(コーティング)された顔料組成物であって、たとえば該組合せを約60〜95%、好ましくは70〜90%、および以下に述べる印刷インキワニス、溶媒、および他の通例の添加剤を40〜5%、好ましくは30〜10%含有する組成物であると考えることができる。
【0035】
顔料/油溶性染料比率は、前に述べたとおりである。
【0036】
これは、有機顔料を、ワニス(インキビヒクル)またはワニスの成分、溶媒、および他の通例の添加剤を用いて表面処理(コーティング)することによって製造することができ、ここで該ビヒクル(成分)または添加剤は、加工工程の前または最中のいずれかに油溶性染料と混合され、またはこれで着色される。油溶性染料は、分散され、または溶解された形態で存在してよい。
【0037】
より具体的には、これらの(表面処理され、そして濃縮状態にある)リトグラフ用印刷インキ着色剤の製造方法は、以下の工程を含む:
(a)油溶性染料と予備混合またはこれで着色した印刷インキワニスを、有機顔料の水性スラリー中に混合し、分離し、そして場合により乾燥するか、または
(b)印刷インキワニスを、油溶性染料の水性スラリーに加え、ついでこれを有機顔料の水性スラリーと組み合わせ、分離し、そして場合により乾燥するか、または
(c)印刷インキワニスを、油溶性染料/有機顔料の組合せの水性スラリーに加え、分離し、そして場合により乾燥する。
【0038】
実際の印刷工程のための印刷インキは、たとえば、インキ濃縮原液を希釈することによって得ることができる。印刷インキワニス(インキビヒクル)は、なかでも、たとえば石油系高沸油および/または植物油、高湿潤性アルキド樹脂プラス高構造化アルキド樹脂、および植物樹脂、およびそれらの混合物を含んでよい;さらに、UV線によって硬化できるモノマー/オリゴマー/ポリマーも使用することができる。
【0039】
石油系高沸油は、沸点が100〜350℃、好ましくは180〜300℃の脂肪族もしくは芳香族炭化水素留分を含む、いわゆる鉱油系溶剤、または植物油であってよい。
【0040】
本発明の印刷インキビヒクル中に用いられる植物油は、普通に入手できる植物性トリグリセリドであって、これの脂肪酸部分が、鎖長として約12〜14炭素原子、好ましくは18〜22炭素原子を有するものである。特に興味があるのは、二不飽和性のリノール酸部分および三不飽和性のリノレン酸部分の本質的比率を有するもの、たとえば大豆油、やし油、綿実油、あまに油、べにばな油、ひまわり油、とうもろこし油、ごま油、なたね油、およびピーナッツ油、またはそれらの混合物である。
【0041】
上述の油類は、種子材料から搾り出したばかりの生の状態のままで使用することも可能であるが、ある種の前処理工程にかけたほうが有利なことがある。たとえば、アルカリ精製は、ビヒクル、ひいては最終インキ配合物の性質に悪影響を与えるおそれのあるガム質およびリン脂質を除去する。アルカリ精製はさらに、インキ配合物の疎水性を低下させやすい遊離脂肪酸をも除去する。
【0042】
炭化水素留分がより好ましくはあるが、植物油も同様に重要である。
【0043】
樹脂の例は、長油アルキド樹脂、中油アルキド樹脂、短油アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、アミノアルキル樹脂、油なしアルキド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、UV硬化型樹脂、アクリルラッカー樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メチル化またはブチル化メラミン樹脂、酢酸ビニルコポリマー、スチレンまたはスチレン−アクリル樹脂、スチレン−ジエンコポリマー、ポリウレタン樹脂、ロジン(アビエチン酸)、ロジン(酸)塩、たとえばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム)塩、および変性ロジン、たとえばロジン(酸)金属樹脂酸塩(銅、亜鉛、マグネシウムの樹脂酸塩)、ロジンエステル、たとえばマレイン化ロジン、ペンタエリトリトールロジン、またはロジン変性フェノール樹脂、およびさらに植物油基ロジンエステル、たとえば大豆油またはトール油エステル(メチル、ブチル)、およびさらに水添ロジン、不均化ロジン、二量体化もしくは多量体化および部分多量体化ロジン(たとえば、ホルムアルデヒドで架橋化したロジン)、またはそれらの混合物を包含する。これらの化合物、および印刷用組成物におけるそれらの使用は、当業界内において周知されている。上述した例は限定的なものではない。
【0044】
UV線によって硬化できるモノマーの例は、これに限定されるものではないが、アクリラートモノマー、たとえば1,4−ブタンジオールアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、およびペンタエリトリトールトリアクリラートである。
【0045】
UV硬化可能なモノマーは、油溶性染料を溶解するためのインキ溶媒であると考えることができる。UV硬化の後、油溶性染料は、硬化樹脂中に溶解または分散したままで存在すると考えられる。インキ溶媒とインキ樹脂の活動識別点は流動的なものなので、たとえば、部分的にUV硬化したオリゴマーは、溶媒と樹脂の両方に分類され得ることになろう。
【0046】
リトグラフ用印刷インキ(オフセットインキ、油性インキ、鉱油基インキ、または植物油基インキとしても知られている)のさらなる詳細は、「The Printing Ink Manual(印刷インキ便覧)」, 5th edition, R.H.LeachおよびR.J.Pierce編纂, Blueprint(Chapman and Hall),chapter 6, p.342-452(1993)に見出すことができる。
【0047】
顔料/油溶性染料混合物は、この2種の成分を、固体または液体の状態で、従来の方法を用いて混合(摩砕)することによって製造できる。後者(液状)の場合、油溶性染料は、有機溶媒中に予備溶解または分散されるが、この有機溶媒は、脂肪族、脂環式および芳香族の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、およびアルコールであってよい。
【0048】
リトグラフ印刷系のための油性印刷インキは、顔料を、印刷インキワニス中に、種々のせん断速度誘導方法、たとえば、混合、ビーズミル処理、三本ロールミル処理、混練、および押出しによって取り込ませる;これに代わるものとして、熱誘導方法も使用可能である。
【0049】
典型的な方法の例は、三本ロールミル、横型または縦型のビーズミル、コブラミル、Zブレードミキサーまたはニーダー、単軸、二軸または三軸スクリュー押出機、およびさらにミュラーガラスプレート分散装置(Muller glass plate dispersion apparatus)である。
【0050】
染料は、ワニスの中に任意の方法によって溶解できるが、その際、加熱も許容される。この熱は、外部の熱源から慎重に適用すればよい。たとえば、実験室規模の染料混合は、ホットプレートまたは水ジャケット加熱式ビーズミル上で実施するとよい。混合工程を通じて撹拌は有利であるが、高せん断は必ずしも必要であるとは限らない。
【0051】
代替方法として、熱は、せん断活動および粘性基材の運動性から発生し得る。たとえば、リトグラフワニスに工業規模のビーズミル処理を加えると、しばしば熱を生成する。この熱生成量は、多くの場合、顔料/ワニス混合物の粘度が高くなるほど、意図する顔料分散中により大きくなる。
【0052】
もし顔料混合方法で熱が生成しないのであれば、油溶性染料は、ワニス媒体、または1以上のワニス成分もしくは溶媒の一部を採り、これに熱を加えて予備溶解することによって、もっともよく混合される。
【0053】
混合の好ましい方法は押出しであろう。この種の装置を通すインキビヒクル(または溶融したインキビヒクル樹脂)では、顔料の分散(高せん断による)および染料の溶解(熱発生による)は、同時にまたは順次に達成できる。
【0054】
顔料は、湿潤圧縮ケーク、乾燥塊、顆粒または粉体のいずれの形態で適用してもよい。押出しには、顆粒の使用が一般に好まれるが、それはこの顔料形態ならほこりの立ち方が少ないからである。油溶性染料も、湿潤ケーク、乾燥塊、顆粒または粉体として同様に適用してよいであろう。
【0055】
さらにまた、ワニスは、あらかじめ油溶性染料と混合し、またはこれで着色し、その後、顔料の水性スラリーに添加できる。代替方法として、ワニスは、油溶性染料の水性スラリーか、または顔料と油溶性染料の混合スラリーに加えることができる。得られたリトグラフ用印刷インキ組成物は、その後、ろ過によって分離され、そして場合により乾燥される;これらは、本発明の顔料入りリトグラフ用印刷インキのための一基剤である。
【0056】
代替方法として、油溶性染料(固体または前述の有機溶媒溶液として)は、仕上がった顔料基印刷インキに後で加え、その後、溶解を完結させるのに必要なら加熱して混合させてもよい。
【0057】
さらなる代替方法として、顔料入りリトグラフ用印刷インキは、顔料または顔料/染料混合物の圧縮ケークを、ワニス媒体(印刷インキ媒体)または予備着色したワニス媒体中に洗い溶かすことを含む方法によって製造してもよい。
【0058】
本発明の顔料入りリトグラフ用印刷インキは、さらに、当業者に公知の通例の添加剤を含んでよい。
【0059】
典型的な添加剤は、乾燥促進剤、乾燥抑制剤、非有色増量材、充填材、不透明化材、抗酸化剤、ワックス、油脂、界面活性剤、レオロジー改質剤、湿潤剤、分散安定剤、裏抜け防止剤、および消泡剤;さらには接着向上剤、架橋剤、可塑剤、光開始剤、光安定剤、消臭剤、殺菌剤、レーキ化剤、およびキレート化剤を包含する。
【0060】
この種の添加剤は、通常、リトグラフ用印刷インキ組成物の総重量に対して0〜10重量%、特に0〜5重量%、そして好ましくは0.01〜2重量%の量で用いられる。
【0061】
本発明の顔料入り印刷インキは、リトグラフ印刷機を用いるリトグラフ印刷方法に使用することができ、その際にインキは、たとえばインキ溜めからローラーダクト系によって印刷しようとする平坦な基材(刷版)に移送される。通常、この刷版は、リトグラフ工程を助けるための、多くはアルコール成分を含有する浸し水溶液で事前処理される。この印刷方法は、本発明のさらなる目的である。
【0062】
本発明の顔料入りリトグラフ用印刷インキは、全般的に良好な印刷性能を発現し、当業界で公知のリトグラフ用印刷インキのすべてのタイプ、たとえば熱硬化形、シートフィード形、常温硬化形、またはUV硬化形の印刷インキにおいて、予期しない色強度の向上(顔料のみに基づくインキとの比較で)、さらに向上された光沢および透明性を有する印刷物を生成させる。
【0063】
本発明は、以下、それの個々例についてさらに記述されている。これらの例は具体的説明の目的で提供するものであって、本発明の範囲をここの記述に限定するためのものと解釈すべきでないことは認識されたい。
【0064】
以下の例においては、他に指定のない限り、量は重量部または重量パーセントで表示される。温度は℃で示される。
【実施例】
【0065】
以下の表は、本発明において使用される(フェニルアゾフェニルアゾ−β−ナフトール類の)、選択された赤色油溶性染料を示す:
【0066】
【化1】

【0067】
【表1】

【0068】
さらなる染料は、「Society of Dyers and Colouristsにより出版されたカラーインデックス」の中に見いだすことができる。これらの赤色染料のC.I.番号は、26000〜26150である。このC.I.番号選択の中に見出される、さらなる応用可能赤色染料(C.I.ソルベントレッド29)の構造を、以下(式2)に示す。
【0069】
【化2】

【0070】
例1
インキA
1−((4−((ジメチルフェニル)アゾ)ジメチルフェニル)アゾ)−2−ナフトール24gを、市販の熱硬化形ワニス組成物141.75gの中に、高せん断ビーズミルにより、温度80℃で15分間混合して組成物を生成させた。
【0071】
インキB
熱硬化使用に合わせてあるC.I.ピグメントレッド57:1組成物27gを、インキAを調製する場合と同様な方法によって、市販の熱硬化形ワニス141.75gの中に混合した。
【0072】
インキC
1−((2,5−ジメチル−4−((2−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトール23gを、インキAを調製する場合と同様な方法によって、市販の熱硬化形ワニス141.75gの中に混合した。
【0073】
インキブレンド
インキAとBのブレンド、および同様にインキBとCのブレンドは、ミュラーガラスプレート分散装置上で25回転を2連続で実施することにより調製した。それぞれのブレンドについて、510〜550nmにおける機器計測による色強度を、プリューフバウ(Prufbau)印刷によって、顔料のみの標準インキB(これを100%とした)と比較した。主要なプリューフバウ印刷物は、さらに目視で比較し、色強度を標準に対して5%刻みで割り当てた。
【0074】
【表2】

【0075】
顔料/油溶性染料ブレンド−追加的な有利点
染料の比較的少量の混合によってさえも達成できる追加的な有利点の例として、90/10および80/20のインキB/インキAブレンドを用いた印刷物は、インキB単独の場合より多少改善された光沢および透明性を示した。
【0076】
さらにまた、80/20のインキB/インキAブレンドは、純粋なインキBに比較して、低減された水乳化性および低減された色にじみ性を示した。
【0077】
同様な効果が、90/10および80/20のインキB/インキCブレンドから見出された。さらにまた、70/30のインキB/インキCブレンドは、インキB単独の場合より、光沢および透明性に明白な改善を示した。
【0078】
例2
着色されたインキビヒクルは、市販の熱硬化形リトグラフワニス42.0gと、1−((4−((ジメチルフェニル)アゾ)ジメチルフェニル)アゾ)−2−ナフトール0.80gを一緒にして組み合わせ、温度80〜105℃に15分間加熱することによって調製した。その後、このインキビヒクル0.856gを、熱硬化使用に合わせてあるC.I.ピグメントレッド57:1組成物0.144gと、ミュラーガラスプレート分散装置上で75回転を2連続で用いて組み合わせた。
【0079】
例3
例2の手順を、1−((4−((ジメチルフェニル)アゾ)ジメチルフェニル)アゾ)−2−ナフトールの代わりに、1−((2,5−ジメチル−4−((2−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトールを用いて繰り返した。
【0080】
例4
例2の手順を、1−((4−((ジメチルフェニル)アゾ)ジメチルフェニル)アゾ)−2−ナフトールの代わりに、1−(4−o−トリルアゾ−o−トリルアゾ)−2−ナフトールを用いて繰り返した。
【0081】
例5
例2の手順を、1−((4−((ジメチルフェニル)アゾ)ジメチルフェニル)アゾ)−2−ナフトールの代わりに、1−((4−フェニルアゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトールを用いて繰り返した。
【0082】
例6(比較例)
市販の熱硬化形リトグラフワニス42.0gを温度80〜105℃に15分間加熱して例2〜5に実施した条件を模した。加熱した材料0.840gを、熱硬化使用に合わせてあるC.I.ピグメントレッド57:1組成物0.160gと、ミュラーガラスプレート分散装置上で75回転を2連続で用いて組み合わせた。
【0083】
例2〜5の結果:
例2、3、4および5をそれぞれ完結させ、そして比較例6を標準にして目視で評価した。すべて、標準より優れた色強度を示した。
【0084】
例7(例8および9のための比較例)
熱硬化使用に合わせてあるC.I.ピグメントレッド57:1組成物27.00gを、市販の熱硬化形ワニス141.92gの中に、高せん断ビーズミル処理を含む方法によって、温度60℃で30分間混合し、組成物を生成させた。
【0085】
例8
比較例6を、顔料の10%の代わりに、1−((3−メチル−4−((3−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトール、および1−((2,5−ジメチル−4−((2−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトールの1:1ブレンド用いて繰り返した。印刷した場合、このインキは、色強度において比較例7より15%向上した。
【0086】
例9
比較例7を、顔料の10%の代わりに、1−((4−((フェニルアゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトール、1−(4−o−トリルアゾ−o−トリルアゾ)−2−ナフトール、1−((3−メチル−4−((3−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトール、および1−((2,5−ジメチル−4−((2−メチルフェニル)アゾ)フェニル)アゾ)−2−ナフトールの1:1:1:1ブレンドを用いて繰り返した。印刷した場合、このインキは、色強度において比較例7より20%向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リトグラフ用印刷インキ組成物であって、
該組成物が、有機顔料、有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)、印刷インキワニス(インキビヒクル)、および溶媒を含み、
ここで、該印刷インキワニスが、顔料分散の前またはその最中のいずれかに油溶性染料と混合され、またはそれを用いて着色されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
有機染料が、C.I.ソルベントレッド1、19、23、24、25、26、27、29、49、52、111、C.I.ソルベントブルー14、35、36、59、78、C.I.ソルベントイエロー7、14、33、72、94、114、C.I.ソルベントオレンジ1、2、7、およびこれらの混合物よりなる群から選択される油溶性染料、好ましくはC.I.ソルベントレッド19、23、24、25、26、27、29、およびこれらの混合物よりなる群から選択される油溶性染料であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機顔料が、ジスアゾまたはナフトール顔料であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
顔料/油溶性染料比率が(99〜1):(1〜99)、好ましくは(98〜10):(2〜90)、そしてもっとも好ましくは(95〜30):(5〜70)である、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
顔料/油溶性染料比率が(95〜65):(5〜35)である、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
油溶性染料の混合物および/または有機顔料の混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物を含む、顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項8】
有機顔料および油溶性染料を合計0.1〜70重量%、好ましくは2〜55重量%含み、残部が印刷インキワニス、溶媒、および他の通例の添加剤である、請求項7記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項9】
すぐ使用できるリトグラフ用印刷インキであって、有機顔料および油溶性染料を合計2〜20重量%、好ましくは12〜18重量%含むものである、請求項7または8記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項10】
インキ濃縮原液であって、有機顔料および油溶性染料を合計20〜70重量%、好ましくは20〜55重量%含むものである、請求項7または8記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項11】
印刷インキワニスとして、石油系高沸油および/または植物油のブレンド、高湿潤性アルキド樹脂、高構造化アルキド樹脂および植物樹脂、およびそれらの混合物を含む、またはUV線によって硬化できるモノマー/オリゴマー/ポリマーを含む、請求項7〜10のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項12】
顔料/油溶性染料組成物を、印刷インキワニスか、またはそれの1成分の中に、せん断速度−または熱誘導方法によって混合し、そして場合により、その顔料/油溶性染料含有成分をワニスの他の成分と組み合わせることを含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキの製造方法。
【請求項13】
顔料および油溶性染料を別々に、印刷インキワニスか、またはそれの1成分の中に、せん断速度−または熱誘導方法によって混合し、そして場合により、その顔料および油溶性染料含有成分をワニスの他の成分と組み合わせることを含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキの製造方法。
【請求項14】
油溶性染料を固体または有機溶媒溶液として、仕上げ印刷インキに混合し、場合により、その後に加熱することを含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキの製造方法。
【請求項15】
顔料または顔料/染料混合物の圧縮ケークを、ワニス媒体または予備着色したワニス媒体中に洗い溶かすことを含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキの製造方法。
【請求項16】
平面状基材を、請求項7〜11のいずれか一項記載の顔料入りリトグラフ用印刷インキを用いて、または請求項12〜15の方法に従って製造された顔料入りリトグラフ用印刷インキを用いて印刷することを含む、リトグラフ印刷方法。
【請求項17】
溶媒、有機顔料、および有機溶媒可溶有機染料(油溶性染料)を含むリトグラフ用印刷インキ着色剤であって、
ここで、
該有機顔料が、印刷インキワニス(インキビヒクル)でコーティングされ、かつ
該印刷インキワニスが、顔料加工の前またはその最中のいずれかに、油溶性染料と混合され、またはそれを用いて着色される、着色剤。
【請求項18】
有機顔料および油溶性染料を合計60〜95重量%、そして印刷インキワニス(インキビヒクル)、溶媒、および他の通例の添加剤を40〜5重量%含む、請求項17記載の着色剤。
【請求項19】
顔料/油溶性染料比率が(99〜1):(1〜99)、好ましくは(98〜10):(2〜90)、そしてもっとも好ましい(95〜30):(5〜70)である、請求項17記載の着色剤。
【請求項20】
顔料/油溶性染料比率が(95〜65):(5〜35)である、請求項17記載の着色剤。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項記載の着色剤を含む、顔料入りリトグラフ用印刷インキ。
【請求項22】
請求項17〜20のいずれか一項記載のリトグラフ用印刷インキ着色剤の製造方法であって、以下を含む方法:
(a)油溶性染料と予備混合またはこれで着色した印刷インキワニスを、有機顔料の水性スラリー中に混合し、分離し、そして場合により乾燥するか、または
(b)印刷インキワニスを、油溶性染料の水性スラリーに加え、ついでこれを有機顔料の水性スラリーと組み合わせ、分離し、そして場合により乾燥するか、または
(c)印刷インキワニスを、油溶性染料/有機顔料の組合せの水性スラリーに加え、分離し、そして場合により乾燥する。

【公表番号】特表2007−515507(P2007−515507A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538839(P2006−538839)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052741
【国際公開番号】WO2005/044924
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】