説明

油性固形化粧料

【課題】
つやのある外観を有し、経時安定性に優れた油性固形化粧料を提供する。
【解決手段】
(A)極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下である油性成分と、 (B)特定のリジン誘導体変性シリコーンと、 (C)液状アルコールとを含むことを特徴とする油性固形化粧料。 上記成分(C)は、エタノール及び/又はグリセリンであることが好ましい。 上記化粧料は、球状樹脂粉末を0.1〜10質量%含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性固形化粧料、特にアミノ酸誘導体変性シリコーンを含む油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は、口紅やファンデーション、アイシャドウ等において汎用されている化粧品剤型の一種であり、液状油をワックスで固めた基剤に、顔料等を分散させたものが一般的である。
近年、油性固形化粧料については、固形状でありながらも、肌上で溶けるように伸び広がる使用感触が求められているので、ワックス特有の滑り感・べたつき感のある上記化粧料は、季節や肌質によっては好まれない傾向があった。また上記基剤は、外観が不透明となるため、透明感のある外観が求められる場合や、顔料を鮮やかに発色させたい場合には不向きであった。
一方近年では、伸びの良い油性化粧料として、油性成分をアミノ酸誘導体変性シリコーンにて増粘させた油性化粧料も開発されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−182680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の油性化粧料においては、基剤が十分に増粘ゲル化されず、流動性のある液状化粧料になる場合が多かった。さらに、増粘ゲル化された場合であっても、経時で油性成分の一部が表面に滲出する、いわゆる発汗と呼ばれる現象を生じ、化粧料としての商品価値を著しく損ねることが発見された。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、つやのある外観を有し、経時安定性に優れた油性固形化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために本発明者等が検討を行った結果、特定の組成からなる油性成分を特定のリジン誘導体変性シリコーンで増粘ゲル化し、さらに液状アルコールを配合することにより、つやのある外観を有し、経時安定性に優れた油性固形化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の油性固形化粧料は、
(A)極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下である油性成分と、
(B)下記一般式(I)、(II)及び(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンと、
(C)液状アルコールとを含むことを特徴とする。
【0005】
(化1)

(式中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数、yは1〜5の整数を表す。)
(化2)

(式中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【0006】
上記成分(C)は、エタノール及び/又はグリセリンであることが好ましい。
上記化粧料は、球状樹脂粉末を0.1〜10質量%含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下である油性成分を、特定のリジン誘導体変性シリコーンで増粘ゲル化し、液状アルコールを配合することにより、つやのあるみずみずしい外観を有し、経時での発汗や粘度低下のない油性固形化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明において油性固形化粧料とは、比較的多量の油性成分を含有し、常温(15〜25℃)、常圧で、流動性のない化粧料を意味する。
(A)油性成分
本発明の油性固形化粧料において、油性成分は、極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下であることを特徴とする。
油性成分中、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素油に代表される、シリコーン油以外の非極性油の割合が60質量%を超える場合や、油性成分中、シリコーン油が20質量%を超える場合には、十分に増粘ゲル化できず、流動性のある液状化粧料となってしまう。
【0009】
極性油としては、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ゴマ油、トウモロコシ油、大豆油、落花生油、ミンク油、液状ラノリン等の動植物性油脂;オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油類等を用いることができる。
【0010】
シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等の環状シリコーン油等を用いることができる。
これら極性油及びシリコーン油は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
また、その他の油性成分としては、ワックス類、半固形又は固形炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール等から選ばれる任意の成分を本発明の効果を損なわない範囲において配合することができる。なお、ワックス類は化粧料全体に対して、4.0質量%以下であることが好ましい。4.0質量%を超えると、外観につやがなくなったり、べたついた使用感となったりする。
本発明の油性固形化粧料において、油性成分は化粧料全体に対して、20〜60質量%、特に25〜40質量%であることが好ましい。
【0012】
(B)リジン誘導体変性シリコーン
本発明におけるリジン誘導体変性シリコーンは、下記一般式(I)、(II)及び(III)のいずれかで表されるものである。
(化3)

(式中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数、yは1〜5の整数を表す。)
(化4)

(式中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【0013】
上記化合物のうち、特に好ましい化合物は一般式(I)及び(II)の構造において、xが50〜200、n及びmが10、Rがエチル基もしくはイソブチル基である化合物である。
具体的には下記式(V)〜(VIII)で表される構造を有する化合物である。
(化5)

【0014】
本発明の油性固形化粧料において、上記リジン誘導体変性シリコーンの配合量(実分)は、化粧料全量中2.0〜10.0質量%であることが好適である。2.0質量%未満であると、増粘ゲル化作用が十分でないことがあり、10質量%を超えると使用感触が劣ることがある。
また、油性成分に対する上記一般式(I)〜(III)で表されるリジン誘導体変性シリコーンの割合は、質量比で0.01〜0.2、特に0.05〜0.1であることが好ましい。0.01未満であると、増粘ゲル化作用が十分でないことがあり、0.2を超えると使用感触が劣ることがある。
【0015】
(C)液状アルコール
本発明の油性固形化粧料においては、液状アルコールを配合することにより、発汗を防止することができる。
液状アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の3価アルコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール重合体等のうち1種または2種以上が使用できる。
【0016】
これらの液状アルコールのうち、特にエタノール及び/又はグリセリンを用いることが好ましい。
本発明の油性固形化粧料において、上記液状アルコールの配合量は0.1〜3.0質量%、特に1.0〜3.0質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると発汗が防止できず、3.0質量%を超えると保形性が劣ることがある。
なお、上記液状アルコールのうち、多価アルコールを本発明の油性固形化粧料に配合する場合、均一に混合しにくく、本発明の効果が十分でないことがある。この場合、事前に多孔質粉体に多価アルコールを吸着させることにより、均一に混合させることができる。
本発明において用いられる多孔質粉体は、開口径、容積等の均一な細孔を有し、通常化粧料に用いられるものであれば、任意のものを用いることができるが、それらのうちでも、例えば特開平10−152317号公報等に記載の、酸化ケイ素などのケイ素種を主成分とし、開口径、容積が均一な細孔を有するものが好ましい。細孔径としては直径2〜50nm程度であることが好ましい。
また、酸化ケイ素を主成分とする多孔質粉体のうちでも、例えば特開平11−100208号公報等に記載の、棒状メソポーラス粉末が特に好ましい。そのうちでも、例えば外径20〜200nmの棒状であり、且つその長手方向に細孔が伸長しているものがさらに好ましい。
多孔質粉体の量としては、液状アルコールの多孔質粉体への吸着率が1〜90質量%、特に10〜70質量%になるように調整することが好ましい。
【0017】
本発明の油性固形化粧料には、化粧料の取れ付き及び使用感触をより改善するため、また肌の色むらや凹凸を隠蔽し、優れた化粧効果を得るために、球状樹脂粉末を配合することが好ましい。
本発明に用いる球状樹脂粉末としては、ポリアミド樹脂粉末、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、ポリアクリル酸アルキル粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、シリコーン粉末、架橋型シリコーン粉末等が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
球状樹脂粉体の中でも、油膨潤性粉末を用いると、化粧料の使用感触が特に優れるため好ましい。油膨潤性基粉末としては、具体的にはシリコーンゴム粉末とシリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉末が挙げられる。
本発明に用いる球状樹脂粉末の平均粒子径は1〜30μm、特に1〜10μmであることが好ましい。
球状樹脂粉末の配合量は、特に制限されるものではないが、組成物中に0.1〜10質量%、特に0.5〜5.0質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明の油性固形化粧料には、通常の着色顔料では得られない高い彩度感、質感を外観色及び塗布色に付与するために、パール顔料を配合することが好ましい。パール顔料とは、真珠光沢やメタリック感のある外観を有する平均粒子径0.1〜8μm程度の粉末状の顔料である。
パール顔料は、一般に成型性が悪く、化粧料中に高配合させることが困難であるが、本発明の油性固形化粧料には、パール顔料を40質量%程度まで配合させることができる。
パール顔料としては、従来使用されているもの、例えば雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等を用いることができる。
またパール顔料は、そのままでも、疎水化処理されたものを用いても良い。疎水化処理としては、脂肪酸デキストリン処理、シリコーン処理、アルキル変性シリコーン処理、ジメチコーン処理、ジメチコーン処理無水ケイ酸被覆、脂肪酸デキストリン・チタン処理、脂肪酸処理等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
その他の粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、セリサイト、雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、ベンガラ、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等を用いることができる。
本発明の油性固形化粧料は、透明感のある基剤であるので、顔料や色素を鮮やかに発色させることができる。
【0020】
本発明の油性固形化粧料には、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
本発明の油性固形化粧料は、固形状となる油性化粧料であれば、その製造・成型方法に何ら制約はなく、常法により得ることができる。また形状の具体例としては、棒状、板状及び皿状物へ流し込み成型したものや、シート上に固着したもの等が挙げられる。
本発明の油性固形化粧料は、口紅、リップクリーム、ファンデーション、コンシーラー、アイシャドウ、チークカラー、アイライナー、アイブロウ等に広く適用することが可能である。
本発明の油性固形化粧料は、弾力感があるが、塗布中急激に粉末感のあるさらさらとした使用感触に変化するという今までにない感触を有するものである。また、肌上への付きが良く、べたつかず、よれにくく、耐水性に優れるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
【実施例1】
【0022】
[製造例1]Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル誘導体変性シリコーン
(1)20.1gのNε−ラウロイル−L−リジンを205mlのエタノールに懸濁させた。反応溶液を氷冷後、乾燥塩化水素ガスを飽和になるまで導入し、6時間撹拌した。
次にエタノールを留去後、250mlのジイソブチルエーテルを加え、吸引濾過後、精製水300mlを加えた。この溶液に精製水70mlに溶かしたモルホリン55gを撹拌しながらゆっくりと加え、析出した白色粉末をろ別した。得られた白色粉末は、n−ヘキサンから再結晶を行い、Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル20.1gを得た。
(2)アジ化ナトリウム45.5gに精製水150gを加え、氷水中で冷却しながら、撹拌して完全に均一な溶液とした。ここに10−ウンデセノイルクロライド101.4gとアセトン150mlを混合した溶液を少しずつ、溶液の温度が10〜15℃の範囲になるように滴下した。添加終了後、12℃付近で1時間撹拌した。
次に溶液を分液ロートに移し、水層と有機層を分けた。有機層を60℃に維持した500mlのトルエンにゆっくりと加え、温度50〜60℃の範囲で3時間撹拌を行った。トルエンを留去後、減圧蒸留することで10−ウンデセノイルイソシアネート73.2gを得た。
(3)次式
(化6)

で表されるSi−H化合物92.6gと10−ウンデセノイルイソシアネート7.4gをトルエン100gに加え、85℃に加温した後、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体トルエン溶液(白金濃度0.3質量%)0.33gを加え、3時間撹拌した。トルエンと余剰のイソシアネート化合物を減圧留去した後、新たにトルエン1000gとNε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル10.5gを加え、90℃で6時間撹拌した。トルエンを留去後、得られた透明ゴム状固体をヘキサン1000gに加熱溶解させ、熱ろ過した。ろ液からヘキサンを留去後、固体を得た。
次に得られた固体を細かく砕き、25℃のヘキサンでよく洗いながら吸引ろ過を行った後、減圧乾燥することで上記式(V)で表される粉末状のリジン誘導体変成シリコーン(Nε−ラウロイル−L−リジンイソブチルエステル誘導体変性シリコーン)20.3gを得た。
【0023】
本発明における組成物の評価方法及び評価基準について説明する。
(1)外観
各試料の外観(つやの有無)について、以下の基準で評価した。
評価基準
A:つやがある。
B:ややつやがある(許容内)。
C:つやがない(許容外)。
【0024】
(2)流動性
製造直後の試料をチューブ容器に入れて約3cm押し出し、2時間後の形状を観察し、流動性の有無について、以下の基準で評価した。
A:押し出した形状をほぼ完全に保っている。
B:押し出した形状がやや崩れるが、円筒形を保っている(許容内)。
C:押し出した形状が崩れ、平板状になった状態(許容外)。
【0025】
(3)発汗
各試料を37℃及び50℃で15分間、30分間、1時間、2時間、4時間及び1ヶ月間保存後、発汗(油性成分の滲出)の有無を観察し、以下の基準で評価した。
評価基準
A:いずれの温度・時間においても発汗がない。
B:37℃及び50℃で1時間保存の場合、やや発汗があるが許容範囲内。
C:いずれの温度・時間においても発汗がある。
【0026】
(4)硬度安定性
各試料を0℃、25℃、37℃及び50℃で1ヶ月間保存後、硬度安定性について、以下の基準で評価した。
評価基準
A:いずれの温度下にて保存の場合も硬度に変化がない。
B:37℃及び50℃下にて保存の場合、やや硬度が低下するが許容範囲内。
C:いずれの温度にて保存の場合も硬度が低下する。
【0027】
(5)取れ付き
各試料をパフ又はチップで擦り取り、取れ付きの良さについて、以下の基準で評価した。
評価基準
A:取れ付きが良い。
B:やや取れ付きが良い(許容範囲内)。
C:取れ付きが悪い(許容範囲外)。
【0028】
(6)化粧持ち
専門パネラーの顔面に、各試料を1.2mg/cm塗布し、4時間後及び8時間後の化粧崩れの有無について、以下の基準で評価した。
評価基準
A:8時間後においても化粧崩れがない。
B:4時間後においては化粧崩れがないが、8時間後においてやや化粧崩れがある。
C:4時間後において化粧崩れがある。
【0029】
下記表1に示す組成に基づく油性化粧料について、上記評価を行った。
(表1)

試 験 例
1-1 1-2 1-3 1-4 1-5 1-6
オクタン酸セチル 40.0 10.0 10.0 7.0 32.0 22.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 7.0 7.0 7.0 --- 15.0 15.0
流動パラフィン --- 30.0 --- 30.0 --- ---
スクワラン --- --- 30.0 --- --- ---
ワセリン --- --- --- 10.0 --- 10.0
製造例1のリジン誘導体変性シリコーン
4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
タルク 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
雲母チタン 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
球状樹脂粉末 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
(トレフィルE−506STM:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
(1)外観 B B B C B C
(2)流動性 A C C A C A
(3)発汗 C C C C C C
【0030】
油性成分について検討したところ、試験例1−1のように、極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下である場合、流動性のない固形化粧料とすることができた。
これに対し、試験例1−2や試験例1−3のように、炭化水素油が多い場合、十分に増粘ゲル化できず、液状の化粧料となってしまった。この場合、試験例1−4のようにワセリンを比較的高配合すれば、固形化粧料とすることができるが、外観につやがなくなり、さらに使用感もべたついてしまった。
また、試験例1−5のように、シリコーン油が油性成分中20質量%を超える場合も、十分に増粘ゲル化できず、固形化粧料とするためには試験例1−6のようにワセリンを高配合する必要があった。
【0031】
一方、どの試験例においても、経時で発汗が観察され、化粧料として致命的な欠陥があることが発見された。
そこで、発汗を防止するために様々な検討を行った。
(表2)

試 験 例
2-1 2-2 2-3 2-4 2-5
オクタン酸セチル 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0
製造例1のリジン誘導体変性シリコーン
4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
エタノール 1.0 --- --- --- ---
水 --- 1.0 --- --- ---
ステアリルアルコール --- --- 1.0 --- ---
オレイン酸 --- --- --- 1.0 ---
タルク 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
雲母チタン 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
球状樹脂粉末 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
(トレフィルE−506STM:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
(1)外観 A B B B B
(2)流動性 A A A A A
(3)発汗 A C C C C
【0032】
(表3)

試 験 例
3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-7
オクタン酸セチル 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0
製造例1のリジン誘導体変性シリコーン
4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
エタノール 1.0 --- --- --- --- --- ---
グリセリン --- 1.0 --- --- --- --- ---
1,3−ブチレングリコール --- --- 1.0 --- --- --- ---
ジプロピレングリコール --- --- --- 1.0 --- --- ---
イソプロパノール --- --- --- --- 1.0 --- ---
イソステアリルアルコール --- --- --- --- --- 1.0 ---
タルク 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
雲母チタン 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
球状樹脂粉末 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
(トレフィルE−506STM:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
(1)外観 A B A A A A B
(2)流動性 A A A A A A A
(3)発汗 A A B B B B C
(4)硬度安定性 A A B B B B A
(5)取れ付き A A A A A A B
(6)化粧持ち A A A A A A A
【0033】
表2及び3に示されるように、液状アルコールを配合すると、発汗が防止されることがわかった。これに対し、水を配合した場合(試験例2−2)、固形状アルコールを配合した場合(試験例2−3)、液状脂肪酸を配合した場合(試験例2−4)には、この効果は見られなかった。
また液状アルコールの中でも、特にエタノールやグリセリンを配合した場合、発汗防止効果が高いことが確認された。
【0034】
なお、上記液状アルコールのうち、多価アルコールを本発明の油性固形化粧料に配合する場合、均一に混合しにくく、本発明の効果が十分でないことがある。
本発明者らが検討した結果、表4に示すように担体として多孔質粉体を用いることにより、より均一に混合できるため、つやのある外観が十分に得られ、経時安定性も向上することがわかった。
(表4)

試 験 例
4-1 4-2 4-3 4-4
オクタン酸セチル 40.0 40.0 40.0 40.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 6.0 6.0 6.0 6.0
製造例1のリジン誘導体変性シリコーン 4.0 4.0 4.0 4.0
グリセリン 1.0 --- --- ---
グリセリン吸着シリカ(※1) --- 3.0 --- ---
1,3−ブチレングリコール --- --- 1.0 ---
1,3−ブチレングリコール吸着シリカ(※2) --- --- --- 3.0
タルク 20.0 18.0 20.0 18.0
雲母チタン 20.0 20.0 20.0 20.0
酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0
球状樹脂粉末 4.0 4.0 4.0 4.0
(トレフィルE−506STM:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
(1)外観 B A A A
(2)流動性 A A A A
(3)発汗 A A B A
(4)硬度安定性 A A B A
(5)取れ付き A A A A
(6)化粧持ち A A A A
※1 メソポーラスシリカ(細孔径2nm、比表面積700m/g)2.0gにグリセリン1.0gを吸着させたもの。
※2 メソポーラスシリカ(細孔径2nm、比表面積700m/g)2.0gに1,3−ブチレングリコール1.0gを吸着させたもの。
【実施例2】
【0035】
液状アルコールの好ましい配合量を検討するため、下記表5に示す組成に基づく油性固形化粧料について、上記評価を行った。
(表5)
試 験 例
5-1 5-2 5-3 5-4 5-5 5-6
オクタン酸セチル 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0 40.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0
製造例1のリジン誘導体変性シリコーン
4.0 4.0 4.0 4.0 4.0 4.0
エタノール --- 0.1 0.5 1.0 3.0 5.0
タルク 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
雲母チタン 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0
酸化鉄 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
球状樹脂粉末 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5
(トレフィルE−506STM:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
(1)外観 B A A A A A
(2)流動性 A A A A A B
(3)発汗 C B B A A A
(4)硬度安定性 A A A A B C
(5)取れ付き B B A A A B
(6)化粧持ち B A A A A B
【0036】
液状アルコールの配合量0.1質量%において、外観及び経時安定性の改善が確認された。特に配合量が1.0〜3.0質量%である場合、発汗防止作用及び取れ付きの良さの点で好ましい結果が得られた。しかし、配合量が5.0質量%である場合には、硬度安定性が悪くなってしまった。
以上の結果から、液状アルコールの好ましい配合量は0.1〜3.0質量%、特に1.0〜3.0質量%であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性油及びシリコーン油の合計量が40質量%以上を占め、且つシリコーン油が20質量%以下である油性成分と、
(B)下記一般式(I)、(II)及び(III)のいずれかで表されるリジン誘導体変性シリコーンと、
(C)液状アルコールとを含むことを特徴とする油性固形化粧料。
(化1)

(式中、R及びRは互いに同一でも異なっても良く、下記式(IV)で表される基を表し、xは1〜900の整数、yは1〜5の整数を表す。)
(化2)

(式中、Rは炭素数2〜30のアルキル基を表し、n及びmは1〜20の整数を表す。)
【請求項2】
成分(C)が、エタノール及び/又はグリセリンであることを特徴とする請求項1に記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
球状樹脂粉末を0.1〜10質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の油性固形化粧料。

【公開番号】特開2006−335747(P2006−335747A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165864(P2005−165864)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】