説明

油温脱水処理方法と油温脱水処理装置

【課題】油に対する比重や含水率の異なる廃棄物を併せて脱水処理しながら、変性なく、均質な結果物が得られる油温脱水処理装置を提供する。
【解決手段】送り軸を上層送り軸12及び下層送り軸13に、排出口を上層送り軸12に対応する上層排出口121及び下層送り軸13に対応した下層排出口131にそれぞれ分け、上層送り軸12による移送速度を下層送り軸13により移送速度に比べて速くすることにより、脱水用油DO中を上層に向け浮上する廃棄物Wを上層送り軸12に沿って移送し、上層排出口121から排出するまでの上層処理時間を、脱水用油DO中を下層に向けて沈降する廃棄物Wを下層送り軸13に沿って移送し、下層排出口131から排出するまでの下層処理時間より、相対的に短くする油温脱水処理装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水率が異なる廃棄物を混在させて同時に脱水処理しながら、脱水処理を終えて均質な結果物にする油温脱水処理方法と油温脱水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を含む廃棄物の脱水方法として、加熱された油中に廃棄物を投入し、水分を蒸散させる油温脱水処理方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。この油温脱水処理方法は、加熱された油を貯留する装置本体から構成される油温脱水処理装置(クッカーと呼ばれる)を用い、加熱された油中に廃棄物を投入し、装置本体に内蔵した送り軸(撹拌羽根や送りスクリュー等)によって廃棄物を撹拌又は移送しながら水分を蒸散させる。脱水処理を終えた結果物は、水分に代わって油分を含むため、搾油処理を経て減容され、埋め立て処分されたり(無機廃棄物)、肥料や飼料に再生されたりする(有機廃棄物)。特許文献1は、脱水処理の効率化を目的とし、廃棄物に予め油を馴染ませる油温脱水処理方法を、特許文献2は、高温の油による廃棄物の変性を避けるため、減圧下で低温の油により脱水処理する油温脱水処理方法をそれぞれ提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-071298号公報
【特許文献2】特開平11-159959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物が単一種類、すなわち油に対する比重や含水率(廃棄物又は結果物に含まれる水分の重量%)が均一であれば、同一の油温脱水処理装置による脱水処理は廃棄物全体で均等に進行するため、均質な結果物を得やすい(本発明にいう「均質な結果物」は、許容される一定範囲内に含水率が収まっている一様な結果物を意味する。以下、同じ。)。しかし、含水率が異なる種類の廃棄物が混在していると、含水率に応じて脱水処理に適した処理時間が異なるため、含水率の高い廃棄物又は含水率の低い廃棄物のいずれかに脱水処理の処理時間を合わせる必要性が出てくる。ところが、実際の処理現場では、単一種類の廃棄物のみが脱水処理されることは稀で、少なからず含水率の異なる廃棄物が混在して脱水処理されていたため、次のような問題が発生していた。
【0005】
従来の油温脱水処理装置は、含水率の異なる廃棄物それぞれを分別して処理時間を異ならせることができなかった。このため、含水率の低い廃棄物に適した条件で脱水処理すれば、含水率の高い廃棄物の脱水処理が不十分となり、肥料や飼料に適さなくなったり、含水率の高い廃棄物に適した処理時間で脱水処理すれば、含水率の低い廃棄物が変性したりする問題があった。特に、軽い廃棄物(油に対する比重が1未満)は、重い廃棄物(油に対する比重が1以上)に比べて脱水が早く進行する(水分が蒸散しやすい)ため、重い廃棄物と同等の処理時間を掛けると、炭化してしまう問題があった。こうした事情から、特許文献2に見られるように、減圧下で低温の油を用いて脱水処理することも考えられるが、処理時間が長くなり、実用的には改善が望まれていた。
【0006】
もちろん、油に対する比重や含水率の違いに合わせて複数の油温脱水処理装置を用意し、予め廃棄物を油に対する比重や含水率の違いに合わせて使用する油温脱水処理装置を特定しておき、それぞれ専用の油温脱水処理装置に投入してそれぞれの処理時間を異ならせることも考えられるが、より広い設置場所が必要になったり、何よりも設備投資にコストが掛かり過ぎたりとあまり現実的な対処方法でなく、何より脱水処理に掛かる労力と手間とが増えて、およそ効率的でない。そこで、油に対する比重や含水率の異なる廃棄物を併せて脱水処理しながら、変性なく、均質な結果物が得られるように、油温脱水処理方法及び油温脱水処理装置について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、加熱された油中に廃棄物を投入し、水分を蒸散させる油温脱水処理方法において、油中を上層に向けて浮上する廃棄物の上層処理時間を、油中を下層に向けて沈降する廃棄物の下層処理時間より、相対的に短くした油温脱水処理方法である。「上層処理時間」は、上下に二分割した油の上半分=上層に向けて浮上する廃棄物を脱水処理し終えるまでの時間、「下層処理時間」は、上下に二分割した油の下半分=下層に向けて浮上する廃棄物を脱水処理し終えるまでの時間を意味する。また、上層処理時間を下層処理時間より相対的に短くするとは、具体的な上層処理時間及び下層処理時間は、廃棄物の種類や量、その他の処理条件により一義的に定まらないものの、両者を比較した場合、上層処理時間が下層処理時間より必ず短いことを意味する。
【0008】
本発明の油温脱水処理方法は、油に対する比重が1未満である軽い廃棄物が含水率によって油中を沈降する又は浮上することを利用し、前記軽い廃棄物の炭化を抑えて、均質な結果物に仕上げる。この場合、油中に上層移送経路及び上層排出口と下層移送経路及び下層排出口とを設定し、油中を上層に向けて浮上する廃棄物を上層移送経路に沿って移送し、上層排出口から排出するまでを上層処理時間、油中を下層に向けて沈降する廃棄物を下層移送経路に沿って移送し、下層排出口から排出するまでを下層処理時間とすれば、具体的な上層処理時間及び下層処理時間を個別に設定しやすい。
【0009】
軽い廃棄物の沈降又は浮上を分ける含水率は、廃棄物の種類によっても異なるが、およそ40%である。すなわち、軽い廃棄物は、含水率が40%未満にならない限り、下層移送経路で脱水処理をゆっくりと進め、含水率が40%未満になった時点で上層移送経路へ移って脱水処理を迅速に進める。このとき、下層移送経路の上流で浮上した軽い廃棄物と下層移送経路の下流で浮上した軽い廃棄物とでは、上層処理時間が異なることになる。そこで、上層移送経路は、上流から下流に向けて移送速度が遅くなるようにし、下層移送経路の上流で浮上した軽い廃棄物が適切に脱水処理されるように設定するとよい。
【0010】
軽い廃棄物は、含水率が40%未満になった時点で上層移送経路に移行することから、下層移送経路は、基本的に重い廃棄物の脱水処理のみを考慮すればよい。すなわち、下層処理時間は、油に投入する時点の含水率が最も低い重い廃棄物が変性せず、適度な含水率の結果物となるように設定する。この場合、上層移送経路が含水率40%未満の軽い廃棄物だけを対象として上層移送時間を設定すればよいことに対し、下層移送経路は含水率が異なる重い廃棄物を対象として下層処理時間を設定する必要がある。そこで、下層処理時間は、基本的に重い廃棄物の一番高い含水率に合わせて設定するが、あまりに重い廃棄物の中で含水率にばらつきがある場合、予め予備処理で含水率を一定範囲に調整しておくとよい。例えば、あまりに含水率が高い場合は圧搾して水分を抽出したり、含水率が低過ぎる場合は適度に水分を追加したりする。
【0011】
本発明に用いられる油温脱水処理装置は、上層処理時間を下層処理時間より相対的に短くできればよいため、例えば油中を上層に向けて浮上する軽い廃棄物(油に対する比重が1未満かつ含水率が40%未満)を、油中を下層に向けて沈降する廃棄物(油に対する比重が1以上又は含水率が40%以上)よりも短い時間で回収するようにすれば、バッチ処理方式を採用することもできる。しかし、これでは大量の廃棄物を脱水処理することが難しい。これから、本発明では、装置本体に加熱された油を貯留し、前記装置本体に内蔵された送り軸により前記油中に投入される廃棄物を移送し、装置本体の排出口から排出するまでに水分を蒸散させるリアルタイム処理方式の油温脱水処理装置を用いる方が好ましい。送り軸は、捩じり角を備えた撹拌羽根や送りスクリューのほか、廃棄物の移送方向に延びる自転軸を有し、自転により廃棄物を撹拌しながら移動させる移送手段を含む。
【0012】
具体的なリアルタイム処理方式の油温脱水処理装置は、送り軸を上層送り軸及び下層送り軸に、排出口を上層送り軸に対応する上層排出口及び下層送り軸に対応した下層排出口にそれぞれ分け、上層送り軸による移送速度を下層送り軸により移送速度に比べて速くすることにより、油中を上層に向け浮上する廃棄物を上層送り軸に沿って移送し、上層排出口から排出するまでの上層処理時間を、油中を下層に向けて沈降する廃棄物を下層送り軸に沿って移送し、下層排出口から排出するまでの下層処理時間より、相対的に短くする。移送速度とは、例えば上層送り軸によって廃棄物が単位時間当たりに移動する平均距離を意味する。
【0013】
撹拌羽根で構成される上層送り軸は、撹拌羽根の捩れ角を大きくする、撹拌羽根の自転軸方向の間隔を狭める又は回転速度を速めると、移送速度を速くできる。また、送りスクリューである上層送り軸は、スクリューのピッチを大きくする又は回転速度を速くすると、移送速度を速くできる。同様に、撹拌羽根で構成される下層送り軸は、撹拌羽根の捩れ角を小さくする、撹拌羽根の自転軸方向の間隔を拡げる又は回転速度を遅くすると、移送速度を遅くできる。また、送りスクリューである下層送り軸は、スクリューのピッチを小さくする又は回転速度を遅くすると、移送速度を遅くできる。本発明は、上層処理時間を下層処理時間に対して相対的に短くできればよいので、上送り軸の移送速度を速めても、下送り軸の移送速度を遅くしてもよく、また両者それぞれ速く及び遅くしてもよい。また、上述したように、上流から下流に向けて移送速度を遅くするには、例えばスクリューのピッチを上流と下流とで異ならせることにより実現する。
【0014】
上層送り軸及び下層送り軸は、廃棄物の処理量に応じてそれぞれ複数設けてもよい。また、廃棄物は、油に対する比重や含水率に応じて上層及び下層に完全分離するわけでもなく、上層送り軸及び下層送り軸は互いに干渉しないように隙間を設けて配置されることから、例えば上層送り軸及び下層送り軸の間に中間送り軸を設けてもよい。この場合、前記中間送り軸に移送される廃棄物の移送速度を上層送り軸及び下層送り軸の中間にすることにより、未だ上層又は下層に完全に分離しない廃棄物をとりあえず移送させ、脱水処理の進行に応じて上層に向けて浮上させ、上層送り軸による移送に移行させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、油に対する比重や含水率の異なる廃棄物を併せて脱水処理しながら、変性なく、均質な結果物が得られる効果を有する。まず、本発明によれば、含水率の異なる廃棄物を分別することなくまとめて脱水処理できるので、単位時間あたりの廃棄物の処理量を増加させることができる。また、本発明によれば、特に変性しやすく、焦げ付きやすい軽い廃棄物が含水率に応じて沈降又は浮上して処理経路を変更し、自動的に処理時間を変えるため、途中で圧力又は油温を調整することなく、前記変性や焦げ付きを防止できる。これは、常圧下又は加圧下で高温の油を用いた油温脱水処理を用いても廃棄物の変性を防止できることを意味し、結果として従来よりも廃棄物全体の処理時間を短縮できる。更に、特に変性しやすく、焦げ付きやすい軽い廃棄物が沈降又は浮上して処理経路を変更し、自動的に処理時間を変えることにより、前記廃棄物の含水率が日によって変動しても、やはり変性や焦げ付きを防止できる。このように、本発明は、単位時間あたりの処理量を増やす又は処理時間を短縮し、廃棄物の変性を防いで均質な結果物を得られるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく油温脱水処理装置の一例(本例)を用いた廃棄物処理ラインのブロック図である。
【図2】本例の油温脱水処理装置を正面側から見た縦断面図である。
【図3】本例の油温脱水処理装置を排出口側から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明に基づく油温脱水処理装置1は、例えば図1〜図3に見られる廃棄物処理ラインに組み込まれて、廃棄物Wを脱水処理し、減容又は再資源化する。廃棄物Wは、直接油温脱水処理装置1に投入されてもよい。しかし、本例では、脱水処理に要する処理時間を短縮することを目的として廃棄物Wの表面積を増大するため、微細装置2に廃棄物Wを投入して微細化する。微細装置2は、従来公知のプリブレーカー等を用いることができる。このほか、微細装置2では、油温脱水処理装置1において廃棄物Wに脱水用油DOが浸透しやすくなるように、油分の少ない廃棄物Wに対して補助油(廃棄物に対して30wt%〜40wt%)を追加投入したり、後工程の装置(例えば油温脱水処理装置1)から回収される廃棄物Wの回収物(残渣)を回収して追加投入したりする。
【0018】
微細化された廃棄物Wは、次いで予熱装置3に投入され、撹拌、混練されながら、予熱される。予熱装置3は、表面にジャケット31を巻き付け、前記ジャケット31内にスチームを流し込むことにより、投入された廃棄物Wを加熱する。本例は、油温脱水処理装置1における脱水用油DOの加熱温度を120℃〜130℃(大気圧下)又は80℃〜85℃(減圧下)として、廃棄物Wの予熱温度を80℃(大気圧下での水分の沸点以下)としている。これにより、廃棄物Wと脱水用油DOとの温度差が小さくなり、廃棄物Wを投入することにより脱水用油DOの降温が抑制又は防止できる。予熱の過程で発生する臭気は、直接油温脱水処理装置1の装置本体11へ通され、大気中に放出しないようにする。また、本例の予熱装置3は、混練羽根32を内蔵し、前工程の微細装置2で追加投入された補助油が均一に行き渡るように、廃棄物Wを撹拌、混練できるようにしている。また、必要により、水分を加えて廃棄物Wの含水率(例えば40%〜90%)を調整する。
【0019】
予熱装置3での撹拌、混練を終えた廃棄物Wは、流動化しているため、スクリューコンベア4により、油温脱水処理装置1の装置本体11上部に設けられた廃棄物投入口117から前記装置本体11内に貯留された脱水用油DOに投入される。本例の油温脱水処理装置1は、装置本体11に内蔵された上層送り軸12及び下層送り軸13により前記脱水用油DO中に投入される廃棄物Wを移送し、装置本体11の上層排出口121及び下層送り軸13から排出するまでに水分を蒸散させる構成である。上層排出口121は上層送り軸12により移送される廃棄物W(図2及び図3中白丸)を排出し、上層取込口171を通じて排出スクリュー17へ前記廃棄物Wを受け渡す。また、下層排出口131は下層送り軸13により移送される廃棄物W(図2及び図3中黒丸)を排出し、下層取込口172を通じて排出スクリュー17へ前記廃棄物Wを受け渡す。
【0020】
脱水用油DOは、上層送り軸12の自転軸に一致する液面高さOLで装置本体11に貯留されている。これは、浮上する廃棄物Wが液面に集中することから、上層送り軸12により効率的に前記廃棄物Wを移送できるようにしたものである。装置本体11は、表面にジャケット111を巻き付け、前記ジャケット111内にスチームを流し込むことにより、脱水用油DOを120℃〜130℃(大気圧下)又は80℃〜85℃(減圧下)まで加熱、保温している。本例の脱水用油DOは、廃棄物Wの投入による降温の影響を最小限に抑制又は防止するため、上層送り軸12と同じ高さに設けられた回収用パイプ接続口112に接続される回収用パイプ(図示略)からタンク本体(図示略)に回収され、再加熱された後、下層送り軸13と同じ高さに設けられた供給用パイプ接続口113に接続される供給用パイプ(図示略)を通じて供給されるようにしている。
【0021】
本例の上層送り軸12は送りスクリューで、連続した螺旋羽根により、連続的で比較的速い移送速度の上層移送経路を構成する。また、本例の下層送り軸13は撹拌羽根で、前後に離れた撹拌羽根の捩れ角を小さくすることにより、断続的で比較的遅い移送速度の下層移送経路を構成する。これから、本例の上層送り軸12は浮上する廃棄物W(図2及び図3中白丸)を速い移送速度(図2中白抜き矢印)で連続して移送し、上層処理時間を相対的に短くし、また下層送り軸13は沈降する廃棄物W(図2及び図3中黒丸)を遅い移送速度(図2中黒塗り矢印)で断続的に移送し、下層処理時間を相対的に長くしている。脱水用油DOの加熱温度を120℃〜130℃(大気圧下)とした場合、例えば上層処理時間を下層処理時間の半分として、上層処理時間を上流から下流に到るまでを10分、下層処理時間を上流から下流に到るまでを20分とし、それぞれ螺旋羽根のピッチ(上層送り軸12)や撹拌羽根の捩れ角及び密度(下層送り軸13)を変化させて上流から下流に向けて移送速度を遅くして、上流から中流にかけて処理時間を短くし、中流から下流にかけて処理時間を長くしている。
【0022】
脱水用油DOに投直後の廃棄物W(図2及び図3中黒丸)は、大部分が40%を大きく超える含水率のため、脱水用油DO中を沈降し、下層送り軸13により撹拌されながらゆっくりとした移送速度で移送されていく。そして、脱水処理が進み、含水率が40%未満となった軽い廃棄物W(図2及び図3中白丸)は、脱水用油DO中を浮上し、今度は上層送り軸12により速い移送速度で移送されていく。こうして、上層処理時間が上流から10分、下層処理時間が上流から20分である場合、脱水処理が進まない廃棄物Wは下層送り軸13により移送されて20分かけて脱水処理され、脱水処理により含水率が40%未満になる軽い廃棄物は最初下層送り軸13により、途中から上層送り軸12により移送されて10分〜20分の処理時間で脱水処理され、最初から軽い含水率が40%未満の廃棄物Wは上層送り軸12により移送されて10分の処理時間で脱水処理されることになる。
【0023】
ここで、上層移送経路は、上述の通り、上流から下流に向けて移送速度を遅くして、上流から中流にかけて処理時間を短くし、中流から下流にかけて処理時間を長くしている。これにより、上流で浮上した軽い廃棄物Wは10分の処理時間で脱水処理されながら、中流又は下流で浮上した軽い廃棄物Wは、単純な上層移送経路の距離の割合で案分される処理時間ではなく、より長い処理時間で脱水処理されるようにしている。これにより、上流で浮上して最大10分で脱水処理される軽い廃棄物Wの変性や焦げ付きを抑制しながら、中流や下流で浮上した軽い廃棄物が十分に脱水されるようにしている。こうして、軽い廃棄物Wについては、最初の含水率に応じて処理時間の長短が自動調整され、結果物が均質化できる。通常、製品として出荷できる結果物の含水率は10%以下であるとされているので、上層処理時間は前記含水率が実現されるように設定する。
【0024】
重い廃棄物Wは、浮上することなく、最後まで下層移送経路を進んでいくが、軽い廃棄物Wに比べて水分の蒸散が遅いので、投入される重い廃棄物Wのうち、最も低い含水率のものが過剰に脱水処理されないようにすれば、変性や焦げ付きを招く虞はない。しかし、あまり含水率のばらつきが大きいと、設定された下層処理時間が長過ぎたり、短過ぎたりする。そこで、本例のように予熱装置3を前段に備える場合、必要により、水分を加えて廃棄物Wの含水率を調整するとよい。例えば、予熱装置3において、廃棄物Wの含水率を40%〜90%に調整した場合、軽い廃棄物Wがすべて浮上する時点で重い廃棄物Wの含水率は20%〜40%の範囲に収まり、最終的に下層排出口131から排出される段階で前記含水率は8%〜10%にすることができる。
【0025】
脱水処理を終えた廃棄物Wは、排出スクリュー17を通じて外部に取り出され、最終的に搾油装置5を経て、結果物(製品)として出荷される。排出スクリュー17は、上層取込口171を上層排出口121に、下層取込口172を下層排出口131に接続し、上層処理経路及び下層処理経路それぞれから排出される廃棄物Wを個別に取りこめるようにしている。本例の排出スクリュー17は、廃棄物Wの排出に際して装置本体11内の脱水用油DOが降温しないように、上層排出口121及び下層排出口131から上層取込口171及び下層取込口172までも脱水用油DOで満たし、降温の原因となる熱の放出面である液面を排出スクリュー17内に遠ざけている。更に、排出スクリュー17の内外環境を隔絶しながら脱水処理を終えた廃棄物Wを搾油装置5へ受け渡すため、排出スクリュー17の排出口にロータリーバルブ173を設けている。
【0026】
微細装置2、予熱装置3、スクリューコンベア4、油温脱水処理装置1、排出スクリュー17及び搾油装置5に至る廃棄物Wの処理ラインは、油に対する比重や含水率の異なる廃棄物Wを分けることなく併せて脱水処理できることから、いずれもリアルタイム方式で連続的に処理することができる。また、油温脱水処理装置1は、軽い廃棄物Wについて、含水率の違いにより処理時間を自動的に加減できることから、軽い廃棄物Wを加熱し過ぎて炭化させる事態がなくなり、変性なく、均質な結果物が得られるようにする。このように、本発明を適用した廃棄物処理ラインは、油に対する比重や含水率の異なる廃棄物Wを併せてリアルタイム方式で脱水処理できるようにして処理量を増加させるだけでなく、得られる結果物(製品)の品質を高めることができ、廃棄物処理方法としての油温脱水処理の有用性を高め、更に品質に優れた肥料又は飼料の提供を可能にする。
【符号の説明】
【0027】
1 油温脱水処理装置
11 装置本体
12 上層送り軸(送りスクリュー)
13 下層送り軸(撹拌羽根)
17 排出スクリュー
2 微細装置
3 予熱装置
4 スクリューコンベア
5 搾油装置
W 廃棄物
DO 脱水用油
OL 液面高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された油中に廃棄物を投入し、水分を蒸散させる油温脱水処理方法において、
油中を上層に向けて浮上する廃棄物の上層処理時間を、油中を下層に向けて沈降する廃棄物の下層処理時間より、相対的に短くしたことを特徴とする油温脱水処理方法。
【請求項2】
油中に上層移送経路及び上層排出口と下層移送経路及び下層排出口とを設定し、
油中を上層に向けて浮上する廃棄物を上層移送経路に沿って移送し、上層排出口から排出するまでを上層処理時間、
油中を下層に向けて沈降する廃棄物を下層移送経路に沿って移送し、下層排出口から排出するまでを下層処理時間とした請求項1記載の油温脱水処理方法。
【請求項3】
装置本体に加熱された油を貯留し、前記装置本体に内蔵された送り軸により前記油中に投入される廃棄物を移送し、装置本体の排出口から排出するまでに水分を蒸散させる油温脱水処理装置において、
送り軸は上層送り軸及び下層送り軸、排出口は上層送り軸に対応する上層排出口及び下層送り軸に対応した下層排出口にそれぞれ分け、
上層送り軸による移送速度を下層送り軸により移送速度に比べて速くすることにより、
油中を上層に向け浮上する廃棄物を上層送り軸に沿って移送し、上層排出口から排出するまでの上層処理時間を、
油中を下層に向けて沈降する廃棄物を下層送り軸に沿って移送し、下層排出口から排出するまでの下層処理時間より、
相対的に短くしたことを特徴とする油温脱水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−43280(P2011−43280A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191118(P2009−191118)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(304056578)
【出願人】(509236173)
【出願人】(509235486)
【Fターム(参考)】