説明

油脂用結晶化抑制剤、油脂、及び、食品

【課題】 油脂内における結晶析出に対して優れた結晶析出抑制効果を発揮する油脂用結晶化抑制剤、油脂、及び、食品の提供。
【解決手段】 油脂用結晶化抑制剤は、エルカ酸とステアリン酸を必須の構成脂肪酸としているポリグリセリン脂肪酸エステルである。この構成脂肪酸におけるエルカ酸は、エルカ酸とステアリン酸の総モル量中におけるエルカ酸のモル比率が0.50以上であることが好適である。油脂は、油脂用結晶化抑制剤を添加した油脂であり、食品は、この油脂を使用して製造されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂の結晶化を抑制する油脂用結晶化抑制剤、油脂、及び、食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体及び固体油脂は、周囲温度の低下によって、油脂成分の一部又は全部が結晶となり、このとき、油脂や油脂を使用して製造した食品の外観、風味および食感を悪化させる問題がある。また、油脂を使用して製造される水中油型乳化食品においては、低温で保管した場合や冷凍後に解凍した場合に、食品の乳化が破壊して油相と水相とに分離する問題が生じる。この油相と水相とに分離する問題は、近隣油脂が一体化することによって生じるものであるが、近隣油脂の一体化は、乳化で水中に分散している油脂内に結晶が析出そして成長し、結晶が水相を突き破って近隣の油脂に接触することが主要因であると考えられている。
【0003】
これら油脂内での結晶析出が原因となっている問題点を解決するには、第一に油脂内で結晶が生じることを抑制することが必要であり、第二に析出した結晶が成長することを抑制する必要がある。そのため、ポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に含有させて、結晶の析出や成長を抑制することが従来から行なわれている。例えば特許文献1には、結晶の析出を抑制するポリグリセリン脂肪酸エステルが開示されており、特許文献2には、結晶の成長を抑制するポリグリセリン脂肪酸エステルが開示されている。
【特許文献1】特開2002−212587号公報
【特許文献2】特開平9−124297号公報
【0004】
特許文献1に開示されている油脂用結晶化抑制剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルであり、このエステルの構成脂肪酸において、エルカ酸が40重量%以上であり、その他の構成脂肪酸はエルカ酸以外の炭素数が8〜22の脂肪酸であることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、水中油型乳化食品の一種であるマヨネーズの油脂内に結晶が生じ、これが成長して乳化が破壊することを抑制するために、結晶成長抑制剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に添加することが開示されている。そして、油脂に添加するポリグリセリン脂肪酸エステルは、このエステルを構成する脂肪酸として炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が総脂肪酸量の5〜50%を占め且つHLBが3以下であることが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来要求されていた油脂や食品の保管温度は、寒冷地や冷凍庫を想定した5〜15℃であったが、冷凍食品に油脂を使用するようになった今日では、−20〜−25℃の温度で保管することもある。−20〜−25℃の温度において油脂や油脂を使用して製造された食品を保管した場合、公知のポリグリセリン脂肪酸エステルが添加されている油脂や食品であっても結晶が析出することになる。
【0007】
また、油脂や食品の保管温度の低下に伴い、油脂や食品の腐敗・変敗期間が長期化しているので、油脂等の保管期間が長期化してきている。保管期間の長期化は、油脂内に結晶が析出する状況を生じ易くしている。
【0008】
本発明は、油脂内で結晶が析出する問題に鑑み、結晶析出に対して優れた結晶化抑制効果を発揮する油脂用結晶化抑制剤を提供することを目的とするものである。また、この油脂用結晶化抑制剤を含有させた油脂、及び、この油脂を使用して製造された食品を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、エルカ酸とステアリン酸を必須の構成脂肪酸にすることによって、エルカ酸とステアリン酸以外の脂肪酸を構成脂肪酸にしているポリグリセリン脂肪酸エステルにはない結晶化抑制効果がある知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、油脂の結晶析出を抑制するポリグリセリン脂肪酸エステルからなる油脂用結晶化抑制剤であって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸にエルカ酸及びステアリン酸を有していることを特徴とする油脂用結晶化抑制剤である。
【0011】
前記構成脂肪酸において、エルカ酸とステアリン酸の総モル量におけるエルカ酸のモル比率が0.50以上であることが好適である。また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が80%以上であることが好適である。エステル化率が80%以上である場合、乳化食品の乳化破壊抑制効果も優れたものとなる。ここでエステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、付加する分枝脂肪酸のモル数(M)とした時、(M/(n+2))×100=エステル化率(%)で算出される値である。
【0012】
また、本発明は、前記油脂用結晶化抑制剤を含有させた油脂、及び、この油脂を使用して製造された食品である。この食品がドレッシングであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成された結晶化抑制剤によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸にエルカ酸とステアリン酸との特定の組合せを含ませていることで、優れた油脂の結晶化抑制効果を発揮する。
【0014】
また上記のように構成された油脂によれば、優れた結晶化抑制効果を発揮するポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させて油脂の結晶化が抑制されているので、外観、風味および食感の悪化が抑制された油脂となる。また、上記のように構成された食品も、外観、風味、及び、食感の悪化が抑制された食品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明する。本実施形態における結晶化抑制剤は、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化させて得られるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、油脂の結晶析出を抑制する結晶化抑制剤として使用される。
【0016】
ポリグリセリンは、特に限定されるものではないが、水酸基価から算出される平均重合度が2〜20のポリグリセリンを使用すると良い。本明細書において水酸基価から算出される平均重合度(n)とは、末端分析法によって算出される値であり、次式(式1)及び(式2)から算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
前記水酸基価とは、エステル化物中に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのエステル化物に含まれる遊離のヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、1996年度版」に準じて算出される。
【0017】
脂肪酸は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸となるものであり、エルカ酸とステアリン酸を必須の脂肪酸としている。エルカ酸とステアリン酸以外の脂肪酸とを必須の脂肪酸として製造したポリグリセリン脂肪酸エステルは、単にエルカ酸を使用して製造したポリグリセリン脂肪酸エステルと同程度の結晶化抑制効果を発揮するに留まるが、エルカ酸とステアリン酸を必須の脂肪酸として製造したポリグリセリン脂肪酸エステルは、単にエルカ酸を使用して製造したポリグリセリン脂肪酸エステルよりも優れた結晶化抑制効果を発揮する。
【0018】
脂肪酸は、エルカ酸とステアリン酸を必須の脂肪酸としていれば、他の脂肪酸が一種又は二種以上含まれていても良い。この他の脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数が8〜22の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸であると良い。炭素数が8〜22の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が例示される。一方、炭素数が8〜22の不飽和脂肪酸としては、デセン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸が例示される。
【0019】
エステルの構成脂肪酸であるエルカ酸は、特にその構成脂肪酸中におけるエルカ酸含量が限定されるものではないが、構成脂肪酸となっているエルカ酸とステアリン酸の総モル量におけるエルカ酸のモル比率が0.50以上であることが好適である。エルカ酸のモル比率が0.50以上であると、結晶析出を抑制する結晶化抑制効果が格段に良化するからである。より好ましいエルカ酸のモル比率は、0.55以上である。モル比率が0.55以上であると結晶化抑制効果だけでなく、単にエルカ酸を使用して製造したポリグリセリン脂肪酸エステルよりも優れた結晶化抑制効果を発揮すると共に、水中油型乳化食品の乳化破壊抑制効果も単にエルカ酸を構成脂肪酸にしているエステルよりも優れたものとなる。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、80%以上であることが好適である。エステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、付加する分枝脂肪酸のモル数(M)とした時、(M/(n+2))×100=エステル化率(%)で算出される値である。エステル化率が80%以上であるとき、エステル化率が80%未満のポリグリセリン脂肪酸エステルよりも際立って高い乳化破壊抑制効果を発揮する。乳化破壊抑制効果は、エステル化率が100%に近いほど良好であり、より好適には90%以上であり、更に好適には、95%以上である。
【0021】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、次の方法によって製造することができる。ポリグリセリンに脂肪酸を仕込み、この脂肪酸を仕込んだポリグリセリンに水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えた後、常圧もしくは減圧下において常法に従ってエステル化反応を行なわせる。脂肪酸の仕込みは、最終的に少なくともエルカ酸とステアリン酸が仕込まれていると良い。エステル化反応は、仕込んだ脂肪酸のほぼ全てがエステル化するまで反応させる。即ち、遊離の脂肪酸が殆どなくなるまで十分に反応させる。
【0022】
本実施形態におけるポリグリセリンを油脂に添加することによって、油脂内の結晶析出が抑制される。結晶析出を抑制することができる油脂は、特に限定されるものではなく、動物脂や動物油である動物油脂、又は、植物脂や植物油である植物油脂の何れであっても良い。動物脂としては、牛乳脂、ヤギ乳脂、牛脂、豚脂、羊脂が例示される。動物油としては、イワシ油、サバ油、サメ肝油が例示される。植物脂としては、ヤシ油、パーム油、カカオ脂、シア脂、木ロウパーム核油等である。植物油としては、乾性油、半乾性油及び不乾性油の何れであってもよく、乾性油としては、アマニ油、キリ油、サフラワー油、ブドウ種子油が例示され、半乾性油としては、大豆油、コーン油、ゴマ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油が例示され、不乾性油としては、オリーブ油、カラシ油、ツバキ油、ヒマシ油、落花生油、マカデミアンナッツ油、ヘーゼルナッツ油が例示される。また、油脂に含まれる構成油脂を分別したものや水素添加油脂であっても良く、油脂が中鎖トリグリセライドやジグリセライドであっても良い。また、油脂には、ステロールやステロールエステルが添加されていても良い。
【0023】
本実施形態における油脂は、従来から食品に使用されている油脂と同様に食品に使用することが可能である。食品としては、例えば、マーガリン、菓子類、マヨネーズが挙げられ、またドレッシング等の水に油脂を乳化分散させた食品である水中油型乳化食品も挙げられる。
【0024】
以下、本発明を実施例をもとに具体的に示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用されているエルカ酸は、純度が88重量%のエルカ酸であって、飽和脂肪酸が1重量%以下の実質的にステアリン酸を含有していないものを使用した。
【0025】
(実施例1)
平均重合度が10のポリグリセリン100gにエルカ酸357gとステアリン酸150gを混合し、アルカリ触媒および窒素気流下、250℃で反応させてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0026】
(実施例2)
エルカ酸357g、ステアリン酸75g、及び、パルミチン酸68gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0027】
(比較例1)
エルカ酸357g、及び、パルミチン酸135gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0028】
(比較例2)
エルカ酸357g、及び、ミリスチン酸120gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0029】
(比較例3)
エルカ酸541gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0030】
以上の実施例1および2、並びに、比較例1〜3を次の試験例1に基づき油脂の結晶化抑制効果についての確認試験を行なった。なお、全てのポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、90%以上であった。
【0031】
(試験例1)
ポリグリセリン脂肪酸エステルを菜種油に0.1重量%添加し、80℃に加熱して溶解させた。その後、ポリグリセリン脂肪酸エステルが溶解している菜種油を0℃の恒温槽に放置し、菜種油内に結晶が析出するのに要した日数を計った。その結果を、表1に示す。なお、表1内の構成脂肪酸数値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの総構成脂肪酸における各構成脂肪酸のモル比率であり、エルカ酸中の不純物もエルカ酸とみなしている。
【0032】
【表1】

表1において、エルカ酸とステアリン酸を使用して製造された実施例1及び2のポリグリセリン脂肪酸エステルは、単にエルカ酸を使用して製造された比較例3のポリグリセリン脂肪酸エステルよりも結晶析出日数を大きく遅延させている。一方、ステアリン酸以外の脂肪酸とエルカ酸を使用して製造された比較例1および2のポリグリセリン脂肪酸エステルは、比較例3のエステルと差のない結晶析出日数となっている。つまり、エルカ酸とステアリン酸を必須の構成脂肪酸としているポリグリセリン脂肪酸エステルのみが、結晶析出日数が延長されており、油脂の結晶析出抑制効果に優れていることを確認することができる。
【0033】
また、以下の実施例3〜5のエステル、及び、比較例4のエステルを調製した。
【0034】
(実施例3)
エルカ酸268g、及び、ステアリン酸224gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリンを得た。
【0035】
(実施例4)
エルカ酸322g、及び、ステアリン酸180gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリンを得た。
【0036】
(実施例5)
エルカ酸428g、及び、ステアリン酸90gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリンを得た。
【0037】
(比較例4)
ステアリン酸449gを脂肪酸に使用した以外は、実施例1と同様にしてポリグリセリンを得た。
【0038】
実施例3〜5、及び、比較例4のポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、90%以上であった。実施例3〜5、及び、比較例4のエステルの結晶化抑制効果の確認試験について、試験例1と同様にして行なった。また、実施例1及び3〜5、並びに、比較例3及び4の水中油型乳化食品の乳化破壊抑制効果の確認試験を次の試験例2に基づき行なった。
【0039】
(試験例2)
実施例1及び3〜5、並びに、比較例3及び4のいずれかのポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した水中油型乳化食品であるドレッシングを調製し、調製したドレッシングを密閉容器に封入し、−30℃の温度で冷凍保管した後に室温で解凍した。そして、解凍したドレッシングの水相と油相が分離する乳化破壊が生じる日数を計ることにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルの乳化破壊抑制効果の試験を行なった。なお、ドレッシングは、水相を攪拌しながら、水相に油相を徐々に添加することにより調製した。この場合、水相は水10.5gに食酢11.0g、キサンタンガム0.2g、MSW−7S(阪本薬品工業株式会社商品名)1g、及び、食塩1.5gを混合溶解させて調製し、油相は、実施例及び比較例のエステルのいずれかを大豆サラダ油75gに0.8g添加し80℃の温度で溶解して調製した。
【0040】
表2に、この試験例1による結晶化抑制効果の試験結果を上記実施例1および比較例3の結果と共に示す。また、表2に試験例2による乳化破壊抑制効果の試験結果を示す。また、図1に表2の結果を折れ線グラフで表す。表2中、エルカ酸のモル比率は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するエルカ酸とステアリン酸の総モル量におけるエルカ酸のモル量の比率であり、エルカ酸の純度を考慮した値である。即ち、エルカ酸のモル量=使用したエルカ酸(g)×0.88/エルカ酸分子量、であり、エルカ酸のモル比率は、エルカ酸のモル量/エルカ酸のモル量とステアリン酸のモル量との総モル量、である。
【0041】
【表2】

表2の結晶析出日数において、実施例の析出日数は、いずれも比較例の析出日数よりも長い日数となっている。つまり、ステアリン酸だけ、又は、単にエルカ酸を使用して製造したポリグリセリン脂肪酸エステルは、油脂の結晶化抑制効果が小さく、エルカ酸とステアリン酸を併用して製造したポリグリセリン脂肪酸エステルは、結晶化抑制効果が向上することを確認することができる。
【0042】
また、表2の相分離日数において、エルカ酸のモル比率が0.55を超える実施例1、4、5のエステルの結果は、比較例3の結果よりも良好な結果となっている。つまり、エルカ酸のモル比率が0.55を超えるエステルは、油脂の結晶化抑制効果だけでなく、水中油型乳化食品であるドレッシングの乳化破壊抑制効果もエルカ酸を使用して製造したエステルよりも良好な結果となっていることを確認することができる。
【0043】
次に、以下の実施例6〜11のポリグリセリン脂肪酸エステルを調製し、試験例2と同様にして乳化破壊抑制試験を行なった。
【0044】
実施例6〜11のエステルの調製を次の通り行なった。平均重合度が10のポリグリセリン100gに、モル比がエルカ酸:ステアリン酸=2:1となるエルカ酸とステアリン酸との混合脂肪酸を混合し、アルカリ触媒および窒素気流下、250℃で反応させてエステルを得た。このとき、実施例の各エステルのエステル化率は、各々異なるエステル化率であった。
【0045】
実施例6〜11のエステルの乳化破壊抑制試験をエステル化率と併せて表3に示す。
【0046】
【表3】

表3において、エステル化率が80%に満たない実施例6及び7の日数は、0日である。これは、ドレッシングを−30℃の温度で冷凍した直後に解凍しても乳化が破壊したものである。一方、エステル化率が80%以上である実施例8〜11のエステルを使用したドレッシングにおいては、冷凍した直後に解凍しても乳化破壊が生じなかった。つまり、エステル化率が80%を超える場合には、乳化破壊抑制効果が格段に向上することを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】表2の結果を表す折れ線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂の結晶析出を抑制するポリグリセリン脂肪酸エステルからなる油脂用結晶化抑制剤であって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸にエルカ酸及びステアリン酸を有していることを特徴とする油脂用結晶化抑制剤。
【請求項2】
前記構成脂肪酸において、エルカ酸とステアリン酸の総モル量におけるエルカ酸のモル比率が0.50以上であることを特徴とする請求項1に記載の油脂用結晶化抑制剤。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油脂用結晶化抑制剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の油脂用結晶化抑制剤を含有させた油脂。
【請求項5】
請求項4に記載の油脂を使用して製造された食品。
【請求項6】
前記食品がドレッシングである請求項5に記載の食品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−124448(P2006−124448A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311888(P2004−311888)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】