説明

治療上の用量を低減させる方法および装置

改善された生物学的利用能を有する、皮膚の皮内層に物質を投与する方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の皮内層に物質を投与するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2001年6月29日に出願された米国特許出願公開第09/893,746号明細書(これは2001年4月13日に出願された米国特許出願公開第09/835,243号明細書の一部継続出願である)の一部継続出願、2000年6月29日に出願された米国特許出願公開第09/606,909号明細書の一部継続出願、および1999年10月14日に出願された米国特許出願公開第09/417,671号明細書の一部継続出願である。これらの各々は、参照によってその全体を本願明細書に組み込まれる。
【0003】
長い間、診断薬や薬剤のような医薬物質を効率的かつ安全に投与することの重要性が、認識されている。すべての医薬物質についての考慮すべき重要な事項ではあるが、バイオテクノロジー産業から生じるタンパク質のような大きな分子について十分な生物学的利用能を得ることは、最近、効率的かつ再現性のよい吸収を得るのに、この必要性を強調している(非特許文献1)。長い間、慣用の針の使用が、皮膚を通した投与によりヒトおよび動物に医薬物質を送達するための1つの手法を提供している。注射のし易さを改善し、かつ慣用の針に伴う患者の不安感および/または痛みを軽減しつつ、再現性よく効率的な皮膚を通した送達を達成するため、相当な努力がなされている。さらに、ある種の送達システムは、針を完全に排除し、化学的メディエイタまたは外的駆動力(例えば、イオン導入電流または電子穿孔法またはサーマルポレーション(thermal poration)または超音波導入法(sonophoresis))によって角質層(皮膚の最外層)を突破し、皮膚の表面を通じて物質を送達する。しかしながら、このような送達システムは、再現性よく皮膚障壁を突破せず、あるいは、皮膚表面下の所定の深さに医薬物質を送達しない。このため、臨床結果が、変わることがあり得る。したがって、針で行うような角質層の機械的な突破は、皮膚表面を通じた物質の投与の最も再現性よい方法を提供し、投与物質の配置における制御および信頼性をもたらすと考えられている。
【0004】
皮膚表面下に物質を送達するための手法は、ほぼ例外なく、経皮投与、すなわち、皮膚の下の部位への皮膚を通じた物質の送達を伴っている。経皮送達は、投与における皮下経路、筋肉内経路または静脈内経路を含み、中でも筋肉内(IM)注射および皮下(SC)注射が最も一般的に用いられている。
【0005】
解剖学的に、身体の外部表面は、2つの主要な組織層(外表皮および下部にある真皮)から形成され、これらが一緒になって皮膚を構成している(概説については、非特許文献2を参照)。表皮は、厚みの合計が75〜150μmの5つの層または薄層に細分される。表皮の下に真皮があり、真皮は2つの層を含み、この最外層部分が、真皮乳頭層(papillary dermis)と呼ばれ、より深い層が、真皮網状層(reticular dermis)と呼ばれる。この真皮乳頭層は、多量の微小循環性血液およびリンパ管叢を含む。対照的に、真皮網状層は比較的、無細胞性かつ無血管性であり、緻密な膠質性結合組織および弾性結合組織からなる。表皮および真皮の下は皮下組織であり、これは下皮とも呼ばれ、結合組織および脂肪組織からなる。皮下組織の下には筋組織が存在する。
【0006】
上記のように、医薬物質の投与のための部位としては、皮下組織と筋組織の両方が一般的に用いられている。しかし、真皮は、物質の投与部位としてはほとんど標的にされていない。これは、少なくとも部分的に、皮内部分への正確な針の配置の困難性のためかもしれない。さらに、真皮、特に、真皮乳頭層は、高い血管分布度を有することが知られているが、この高い血管分布度を利用して、皮下投与に比べて投与物質に対し改善される吸収プロフィール(profile)を得ることができることは、これまで認識されていない。これは、小さな薬剤分子は、典型的には、真皮よりもはるかに容易かつ正確に標的にされている皮下組織に投与後、急速に吸収されるからである。一方、タンパク質のような大きな分子は、血管分布度にかかわらず、典型的には、毛細管上皮を通じてはあまり吸収されず、このため、高分子についても、皮内投与を達成することはなおさら困難であったことから、皮下投与を上回る顕著な吸収上の優位性が達成されることは予想されていなかった。
【0007】
皮膚表面下の投与および皮内部分の領域への投与に対する1つの手法は、マントーツベルクリン試験(Mantoux tuberuclin test)で慣用的に用いられている。この手順では、精製されたタンパク質誘導体を、27ゲージまたは30ゲージの針を用いて皮膚表面に浅い角度で注射する(非特許文献3)。しかし、注射位置における、ある程度の不確実性によって、若干の偽陰性の試験結果がもたらされることがある。さらに、この試験は、注射部位で反応を引き起こすための局所的な注射に関連していて、マントーの手法は、物質の全身投与のための皮内注射の使用を導いていない。
【0008】
いくつかのグループが、「皮内」注射とみなされているものによる全身投与を報告している。このような報告の1つにおいて、皮下注射と「皮内」注射と記載されるものとの比較試験が行われた(非特許文献4)。試験した医薬物質は、分子量約3600のタンパク質であるカルシトニンであった。薬剤を皮内注射したと述べられていたが、この注射は、60度の角度で基部まで押し込まれる4mmの針を用いていた。これは、約3.5mmの深さで、血管の多い真皮乳頭層ではなく真皮網状層のより下部または皮下組織に、注射物(injectate)の配置をもたらしているだろう。実際には、このグループが皮下組織ではなく真皮網状層のより下部に注射した場合、この物質は比較的血管の少ない真皮網状層に緩慢に吸収されるか、または皮下領域に拡散して、機能的には皮下投与および皮下吸収と同じものとなることが予想される。このような実際の皮下投与または機能的な皮下投与によって、最大血漿濃度に達する時間、各アッセイ時間での濃度および曲線下面積において、皮下投与および皮内投与としてみなされるものの間に、報告された相違がないことが説明されるだろう。
【0009】
同様に、Bressolleらは、4mmの針を用い「皮内」注射とみなされるものでセフタジジムナトリウムを投与した(非特許文献5)。セフタジジムナトリウムは親水性であり、かつ比較的低分子量であるため、この場合、良好な皮下吸収が予想されているが、これは皮膚表面下4mmの深さへの注射をもたらし、実際の皮下注射または機能的な皮下注射を生じさせるであろう。
【0010】
別のグループは、皮内の薬剤送達装置として記載されるものについて報告した(特許文献1)。注射は、低速であることが示され、注射部位は、表皮下のある領域内(すなわち、表皮と真皮との間の界面または真皮または皮下組織の内部)であることが意図された。しかし、この参考文献は、真皮への選択的投与を示唆する教示を全く提供しておらず、また、この文献は、このような選択的投与からもたらされ得る何らかの可能性のある薬物動態学的利点を示唆するものでもない。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,997,501号明細書
【特許文献2】米国特許第5,928,207号明細書
【非特許文献1】Cleland et al., Curr. Opin.Biotechnol. 12: 212-219, 2001
【非特許文献2】Physiology,Biochemistry,and Molecular Biology of the Skin,Second Edition,L.A.Goldsmith編,Oxford University Press,New York,1991
【非特許文献3】Flynn et al, Chest 106 : 1463-5, 1994
【非特許文献4】Autret et al, Therapie 46 : 5-8,1991
【非特許文献5】Bressolle et al. J. Pharm. Sci. 82: 1175-1178, 1993
【非特許文献6】Hwang et al., Ann Plastic Surg 46: 327-331,2001
【非特許文献7】Southwood, Plast. Reconstr. Surg 15: 423-429, 1955
【非特許文献8】Rushmer et al., Science 154: 343-348,1966
【非特許文献9】Arildsson et al., Microvascular Res. 59: 122-130, 2000
【非特許文献10】Physiology,Biochemistry,and Molecular Biology of the Skin,Second Edition,L.A.Goldsmith編,Oxford University Press,New York,1991, p.1060
【非特許文献11】Wilhem, Rev. Can. Biol. 30: 153-172,1 971
【非特許文献12】Skobe et al., J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. 5: 14-19, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、医薬物質の投与のための有効かつ安全な方法および装置が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、真皮部分を直接標的にすることに基づく新たな非経口的投与方法に関するものであり、これにより、投与物質の薬物動態学的(PK)パラメータおよび薬力学的(PD)パラメータを劇的に変化させる方法に関する。直接的な皮内(ID)投与手段(以下、真皮導入手段(dermal-access means)という)の使用によって、例えば、マイクロニードルに基づく注射および注入システム(または皮内部分を正確に標的にするための他の手段)を用いることにより、薬剤および診断物質(これらは特にタンパク質およびペプチドホルモンである)を含む多くの物質の薬物動態を、皮下送達および静脈送達といった慣用的な非経口的投与経路に比べて変えることができる。これらの知見は、微小装置に基づく注射手段だけでなく、ID部分への流体または粉体の針なしまたは針不要のバリスティック注射(ballistic injection)、マントー型ID注射、マイクロ装置による強化型イオン導入、および流体、固体または他の投与形態の皮膚への直接的沈着(direct deposition)のような他の送達方法にも当てはまる。IV導入を必要とすることなしに、非経口的に投与される薬剤の摂取速度を増加させる方法が開示される。この送達方法の1つの顕著な有利な効果は、より短いTmax(薬剤の最大血中濃度を達成する時間)をもたらすことである。結果として生じる潜在的な利点は、所定の単位用量に対するより高い最大濃度(Cmax)、より高い生物学的利用能、より迅速な摂取速度、薬力学的効果または生物学的効果のより迅速な発現、および減少した薬剤蓄積効果が挙げられる。本発明によれば、改善された薬物動態学的手段により、薬剤送達の皮下手段、筋肉内手段、または他の非IV非経口手段と比べて、所定量の投与化合物に対して、生物学的利用能が増大し、遅延時間(Tlag)が減少し、Tmaxが減少し、吸収速度がより早まり、発現がより迅速となり、および/またはCmaxが増大した。
【0014】
生物学的利用能は、所定の用量のうち血液部分に達した合計量を意味する。これは、一般に、濃度対時間のプロットにおける曲線下面積として測定される。「遅延時間」は、化合物の投与と血液または血漿レベルが測定可能または検出可能になるまでの時間の間の遅れを意味する。Tmaxは、化合物の最大血中濃度に達するまでの時間を示す値であり、Cmaxは、所定の用量および投与方法で達する最大血中濃度である。発現時間は、Tlag、Tmax、およびCmaxの関数である。なぜなら、生物学的効果を実現するのに必要な血中(または標的組織)濃度を達成するのに必要な時間には、これらのパラメータの全てが影響するからである。TmaxおよびCmaxは、グラフの結果の目視検査によって求められ、しばしば、化合物の投与の2つの方法を比較するための十分な情報を提供し得る。しかし、数値を、動態モデルを用いる分析(以下に記載)および/または当業者に知られる他の手段によってより正確に求めることができる。
【0015】
本発明によって教示されるように真皮部分を直接標的にすることによって、薬剤または診断物質の効果のより迅速な発現がもたらされる。本発明者らは、制御されたID投与(真皮の脈管およびリンパ毛細管に選択的に導入する)により、物質を迅速に吸収させ、全身に分配させることができ、従って、物質が、SC投与よりもより迅速にそれらの有利な効果を発揮し得ることを見出している。これは、血中グルコースを低下させるインスリンのような迅速な発現を要する薬剤、抑えきれない癌性疼痛のような疼痛緩和、もしくは片頭痛緩和、またはアドレナンもしくは解毒剤のような緊急救援薬剤に対して特に重要性を有する。天然のホルモンはまた、迅速な発現バースト(onset burst)、それに続く迅速な除去を伴うパルス状様式で放出される。例としては、生物学的刺激(例えば、高いグルコースレベル)に応答して放出されるインスリンが挙げられる。別の例は、雌性の生殖ホルモンであり、これは、パルス状様式で一定の時間間隔で放出される。ヒト成長ホルモンはまた、睡眠中に、パルス状様式で正常患者に放出される。この利点は、合成薬剤化合物で自然な身体リズムを模倣することにより、さらに良好な治療を可能にする。同様に、これによって、インスリン送達を介した血中グルコースの制御のようないくつかの現行の治療法をより容易に行うことができる。「閉ループ」式インスリンポンプを用意することでの現行の多くの試みは、インスリンを投与することおよび生物学的効果が生じるのを待つことの間の遅延期間により妨げられる。これによって、過剰滴定させることなく、低血糖の危険性なしに、十分なインスリンが与えられているかどうかをリアルタイムで確認することを困難にさせる。より迅速なPK/PDのID送達によって、このタイプの問題の多くが解消される。
【0016】
哺乳動物の皮膚は、上記のように、2つの層、具体的には表皮および真皮を含む。表皮は、5つの層、すなわち角質層、透明層、顆粒層、有棘層および胚芽層からなり、真皮は2つの層、すなわち、より上部の真皮乳頭層およびより深部の真皮網状層からなる。この真皮および表皮の厚みは、個体間および個体中、身体の様々な位置で変化する。例えば、表皮は、約40〜約90μmの厚さで変化し、真皮は、表皮のすぐ下から、ある深さまでの範囲の厚さで変化する。その深さは、特定の研究報告によれば、身体のある領域においては1mm未満であり、身体の他の領域においてはちょうど2mmから約4mmまでである(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。
【0017】
本明細書において用いる場合、皮内(intradermal)とは、物質が、血管を発達させる真皮乳頭層に容易に達して、毛細血管および/またはリンパ管に迅速に吸収されて全身的に生物学的に利用可能になるような方法で、物質を真皮に投与することを意味することを意図している。このようなことは、真皮の上部領域(すなわち、真皮乳頭層)、または比較的脈管の少ない真皮網状層の上部における物質の配置によってもたらされ、その結果、物質が真皮乳頭層に容易に拡散する。少なくとも約0.3mm、より好ましくは、少なくとも約0.4mm、そして最も好ましくは少なくとも約0.5mmの深さで、約2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、そして最も好ましくは約1.7mm以下の深さまで物質を主に配置することによって、高分子および/または疎水性物質の迅速な吸収がもたらされると考えられる。さらにより深部でおよび/または真皮網状層のより下部に物質を主に配置することは、脈管の少ない真皮網状層または皮下領域(このいずれも高分子および/または疎水性物質の吸収低下をもたらす)に物質が緩慢に吸収される結果になると考えられる。真皮乳頭層の下の真皮網状層においてであるが、真皮と皮下組織との間の界面よりは十分に上である、真皮部分における物質の制御された送達は、(影響を受けない)脈管およびリンパ毛細管床(真皮乳頭層における)へのこの物質の効率的な(外部への)移動を可能にするはずであり、ここで、物質は、何らかの他の皮膚組織部分によって輸送中に隔離されることなく、これらの毛細管を介して全身循環に吸収され得る。
【0018】
本発明の別の利点は、薬剤または診断薬のより迅速な全身分配および相殺(offset)を達成することである。これはまた、パルス状様式で身体内に分泌される多くのホルモンに当てはまる。多くの副作用は、継続的な循環レベルの投与物質を有することと関係付けられる。これにまさに当てはまる例は、雌性生殖ホルモンであり、これは血液中に継続的に存在する場合、実際に反対の効果を有する(不妊を生じる)。同様に、継続して高いレベルのインスリンは、質および感度の両方においてインスリンレセプターをダウンレギュレートするのではないかと考えられている。
【0019】
本発明の別の利点は、薬剤または診断薬のより高い生物学的利用能を達成することである。この効果は、高分子量物質、特にタンパク質、ペプチドおよび多糖類のID投与について最も劇的であった。直接的な利点は、増強された生物学的利用能を伴うID投与が、より少ない活性薬剤を用いながら等価な生物学的効果を可能にするという点である。これによって、特に、高価なタンパク質治療および診断について、薬剤製造業者や、おそらく消費者に直接的な経済的な利益がもたらされる。同様に、より高い生物学的利用能によって、全体的な用量の減少が可能になり、高用量に関連する患者の副作用を低減させることができる。これらの場合、本発明は顕著な用量節約効果を有し、先行技術の方法より優れた顕著な経済的および治療上の優位性をもたらす。病的状態の症状を治療するために必要な有効量を、例えば、同じ物質の皮下送達と比べると、10%、20%、30%またはそれ以上低減させることができる。
【0020】
本発明の別の利点は、薬剤または診断物質のより高い最大濃度の獲得である。本発明者らは、ID投与された物質が、より迅速に吸収され、ボーラス投与では、より高い初期濃度をもたらすことを見出している。これは有効性が最大濃度に関係する物質にとって最も有益である。より迅速な発現は、より高いCMax値をより少量の物質で到達させることができる。したがって、より少ない量の薬剤または診断薬の量が必ず、身体によって排出されるので、用量を低減させることが可能になり、経済的利点ばかりでなく生理学的利点をもたらす。
【0021】
本発明の別の利点は、薬剤または診断薬の全身的排除速度または固有の除去機構に変化がないことである。本出願人らによる今日までの全ての試験では、IV投与経路またはSC投与経路を介するように試験した物質に対して、同じ全身的排除速度が維持されている。これは、この投与経路が全身の除去の生物学的機構において全く変化しないことを示している。これは、規制の観点から有利である。なぜなら、FDAの承認の提出前に、分解経路および除去経路を再検査する必要がないからである。これはまた、薬物動態学の観点からも有利である。なぜなら、投与計画の予測可能性が許されるからである。物質の除去機構が濃度依存性である場合、いくつかの物質は、身体からより迅速に排出され得る。ID送達ではより高いCmaxがもたらされるので、固有の機構は変化させないままで、除去速度を増大させることができる。
【0022】
本発明の別の利点は、薬物動態学的機構または生物学的応答機構において変化がないことである。上記のように、本出願人らによって教示される方法による投与薬剤は、他の送達手段に固有の同じ生物学的経路によって、それらの効果を依然として発揮する。薬物動態学的変化は、生物学的システムに存在する出現、消失、および薬剤もしくは診断薬の濃度の相違のパターンにのみ関連付けられる。
【0023】
本発明の方法を用いて、医薬化合物を、ボーラスとして、または注入によって投与できる。本明細書で用いる場合、「ボーラス」という用語は、10分未満の時間内に送達される量を意味することが意図される。「注入」とは、10分を超える時間にわたる物質の送達を意味することが意図される。ボーラス投与または送達は、速度制御手段(例えば、ポンプ)で行われてもよく、または特定の速度制御手段(例えば、使用者の自己注射)を有しなくてもよいことが理解される。
【0024】
本発明の別の利点は、薬剤が全身吸収される前に、皮膚組織部分を通過して捕捉されるときに生じる物理的障壁または運動学的障壁の除去である。このような障壁の除去は、種々の種類の薬剤に対して非常に広い適用可能性を導く。皮下投与された多くの薬剤は、この蓄積効果(すなわち、薬剤は、脂肪組織に対する親和性または脂肪組織を通じた緩慢な拡散のため、全身吸収前の律速段階として、薬剤を補足するSC部分から緩慢に放出される)を発揮する。この蓄積効果は、IDに比べて、より低いCmax、より長いTmaxをもたらし、吸収の大きな個体間のばらつきをもたらすことがある。この効果はまた、浸透の強化(permeation enhances)、イオン導入技術、超音波導入法または角質切除もしくは破壊方法を伴うまたは伴わない、受動的パッチ技術を含む経皮送達方法に当てはまる。経皮パッチ技術は、極めて不浸透性の角質および表皮の障壁を通る薬剤分配に依存する。極めて親油性の化合物以外の薬剤は、この障壁をほとんど突破できず、突破した薬剤は、薬剤の組織飽和および捕捉のために、しばしば長時間に及ぶ相殺型動力学を示す。能動的な経皮手段は、多くの場合、受動的転移手段(passive transfer means)より速いものの、電荷反発力または他の電気的もしくは静電的手段によって移動できる化合物の種類であるか、あるいは音波の適用の間、組織のキャビテーションによって生じる一時的な孔を通じて受動的に輸送され得る化合物の種類にさらに限定される。角質および表皮は、この輸送を阻害するための有効な手段をさらに提供する。サーマルアブレーションもしくはレーザーアブレーション、研磨方法または他の方法による角質除去では依然として、薬剤の浸透または摂取を容易にするための駆動力を欠いている。機械的手段による直接的なID投与は、皮膚の動力学的障壁特性を克服し、薬剤またはその調合物の賦形剤の製薬上の特性または物理化学的特性によって限定されない。
【0025】
本発明の別の利点は、高度に制御可能な投与計画である。本発明者らは、ID注入試験が、この経路によって送達される薬剤または診断薬の迅速な発現および相殺の動力学のために、高度に制御可能でありかつ予測可能な投与プロフィールを示していることを確認している。これにより、ID送達を、身体中への薬剤または診断薬の計量を調節するため流体制御手段または他の制御システムと連結する場合、所望の投与計画にわたってほぼ完全な制御が可能である。この1つの利点それだけでも、ほとんどの薬剤および診断薬送達方法の主要な目的の1つである。上に規定したようなボーラスID物質投与は、IV注射に最もよく似た動力学をもたらし、疼痛緩和化合物、食事時のインスリン、救急薬、勃起機能障害化合物、または迅速な発現を要する他の薬剤にとって最も望ましい。単独でまたは相乗効果的に作用し得る物質の組み合わせもまた含まれる。注入によってID投与期間を伸ばすことは、SC摂取パラメータを効率的に模倣し得るが、より優れた予測可能性を有する。このプロフィールは、成長ホルモンまたは鎮痛薬のような物質に特に良好である。典型的には、より遅い注入速度でより長い時間をかけての注入は、薬剤の継続的な低い基礎レベルをもたらすことができ、これは、抗凝固薬、基礎インスリン、および慢性疼痛治療にとって望ましい。これらの動力学的プロフィールを多数の形式で組み合わせて、所望のほとんどあらゆる動力学的プロフィールを表すことができる。例としては、妊娠誘発のための繁殖ホルモン(fertility hormone)(LHRH)のパルス状送達がある。これは、パルスの間に、完全な除去と90分ごとの間欠的なピークを必要とする。他の例は、片頭痛の緩和のための薬剤の迅速なピークの発現であり、疼痛予防にとってより低いレベルになるだろう。
【0026】
本発明の別の利点は、薬剤や診断薬の分解および/または望ましくない免疫原活性を低減させることである。化学的エンハンサーもしくはイオン導入法、または超音波導入法もしくは電気穿孔法もしくはサーマルポレーションを用いた経皮的方法は、薬剤が、高い代謝活性および免疫原活性を有する生存表皮層(viable epidermal layer)を通過することを必要とする。表皮における物質の代謝変換または免疫グロブリンによる壊死単分離は、吸収に利用可能な薬剤量を減少させる。ID投与は、真皮内に薬剤を直接配置し、このように表皮を完全に越えることによってこの問題を回避する。
【0027】
本発明のこれらおよび他の利点は、皮膚の真皮部分への薬剤、診断薬、および他の物質の、真皮乳頭層による直接標的化吸収(directly targeting absorption)によって、および制御された送達によって達成される。本発明者らは、皮内部分を明確に標的にすることによって、また、送達の速度およびパターンを制御することによって、特定の薬剤により示される薬物動態は、予想外に改善され、かつ、多くの状況において、得られる臨床的な利点によって変化され得ることを見出している。このような薬物動態を、IV導入を除く他の非経口投与経路によって、それほど簡単に得ることも、または制御することもできない。
【0028】
本発明は、ヒトまたは動物への薬剤、診断薬、および他の物質のID送達の臨床的有用性を改善する。この方法は、真皮導入手段(例えば、小ゲージの針、特にマイクロニードル)を使用して、ボーラスとしてまたは注入によって、皮内部分を直接標的にし、そして、皮内部分に物質を送達する。真皮内での真皮導入手段の配置が、活性物質の有効な送達および薬物動態学的制御をもたらすことが見出されている。真皮導入手段は、皮膚からの物質の漏出を防ぎ、かつ皮内部分内での吸収を改善するように設計される。本発明の方法によって送達されるホルモン薬の薬物動態は、薬剤の慣用のSC送達の薬物動態と非常に異なることが見出されており、このことは、本発明の方法によるID投与が、改善された臨床結果をもたらすことを示す。皮内部分の適切な深さに真皮導入手段を配置し、流体送達の容量および速度を制御する送達装置は、所望の位置に漏れなく正確な物質の送達をもたらす。
【0029】
IV導入を必要とせずに、非経口的に投与される薬剤の摂取速度を増大させる方法が開示される。この効果は、より短いTmaxをもたらす。結果として生じる潜在的な利点としては、所定の単位用量についてのより高い最大濃度(Cmax)、より高い生物学的利用能、薬力学的効果または生物学的効果のより迅速な発現、および減少させられた薬剤蓄積効果が挙げられる。
【0030】
皮内部分内での真皮導入手段の適切な深さ制御により、本発明の方法によって送達されるホルモン薬の薬物動態が、必要に応じ、薬剤の慣用のSC送達の臨床的結果と同様の結果を生じ得ることも見出されている。
【0031】
個々の化合物についての薬物動態学的プロフィールは、その化合物の化学的特性によって変化する。例えば、少なくとも1000ダルトンの分子量を有する比較的大きい化合物、さらに、少なくとも2000ダルトン、少なくとも4000ダルトン、少なくとも10,000ダルトンのより大きい化合物、並びにより大きくおよび/または疎水性の化合物は、慣用の非経口的投与方法(例えば、筋肉内注射、皮下性注射、または皮下注射)に比べて、最も顕著な変化を示すことが期待される。概して、小さな親水性物質は、他の方法に比べてID送達に対しての類似の動力学を示すことが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、皮内部分を直接的に標的にすることによる、ヒトまたは動物被験体への薬剤または他の物質の送達による治療的処置のための方法を提供する。ここで、薬剤または物質は、装置に組み込まれた1つまたは複数の真皮導入手段を通じて皮内部分に投与される。本発明の方法によって注入される物質は、SC注射によって投与される同じ物質について観察される薬物動態よりも優れ、かつ臨床的により望ましい薬物動態を示すことが見出されている。
【0033】
本発明によるID投与のために用いられる真皮導入手段は、それが、被験体の皮膚を貫通させることなく、皮内部分の所望の標的深さまで被験体の皮膚に進入する限りは決定的に重要ではない。ほとんどの場合、該装置は、皮膚を約0.5〜2mmの深さまで進入する。真皮導入手段は、単一でまたは複数の針アレイで用いられる、知られているすべてのタイプの、慣用の注射針、カテーテルまたはマイクロニードルを含み得る。真皮導入手段は、バラスティック注射装置を含む針なし装置を含み得る。本明細書で用いる場合、「針」および「複数の針」という用語は、このような針状構造をすべて包含することが意図される。本明細書で用いる場合、マイクロニードルという用語は、このような構造が性質上円柱状である場合、約30ゲージよりも小さい構造、典型的には約31〜50ゲージを包含することが意図される。したがって、マイクロニードルという用語に包含される非円柱状の構造は、相当する直径を有し、錐体、長方形、八角形、楔形、および他の幾何学的形状を含む。真皮導入手段はまた、バラスティック流体注射装置、パウダージェット送達装置、圧電補助送達装置、起電補助送達装置、電磁補助送達装置、ガス補助送達装置を含み、これは皮膚に直接進入し、真皮部分内の標的位置に物質を送達するための導入を提供するか、または直接に物質を送達する。真皮導入手段による物質の送達の標的深さを変化させることによって、薬剤または物質の薬物動態学的挙動および薬力学的(PK/PD)挙動を、個別の患者の状態に最も適切な所望の臨床的な適用に合わせることができる。真皮導入手段による物質の送達の標的深さを、医師によって手動で、または所望の深さに達したときを示す指示手段の補助を伴ってもしくは補助なしで制御することができる。しかし、好ましくは、該装置は皮内部分の所望の深さまで皮膚の進入を制御するための構造的手段を有する。これは、最も典型的には、真皮導入手段の軸に結合される、針が取り付けられるバッキング構造(backing structure)またはプラットフォームの形態をとり得る拡張領域またはハブによって達成される。真皮導入手段としてのマイクロニードルの長さは、製造プロセスにおいて容易に変更され、通常2mm未満の長さで製造される。マイクロニードルはまた、注射または注入の間の疼痛およびその他の感覚をさらに減少させるために、非常に鋭利であり、そして非常に小さいゲージである。それらは、本発明において、個別の単一管腔マイクロニードルとして用いることもできるし、あるいは、送達速度すなわち所定の時間内に送達される物質の量を増加させるように、複数のマイクロニードルを直線状アレイもしくは2次元アレイで組み立てるかまたは製造してもよい。マイクロニードルを、進入深さを制限することにも役立つ、ホルダーおよびハウジングのような種々の装置に組み込むことができる。本発明の真皮導入手段はまた、送達の前に物質を収容するための貯蔵所、あるいは圧力下で薬剤もしくは他の物質を送達するためのポンプまたは他の手段を組み込み得る。あるいはまた、真皮導入手段を収容する装置を、このような追加の構成要素に外部的に連結してもよい。
【0034】
IV様の薬物動態は、毛細管微小血管およびリンパ微小血管と密接に接触する真皮部分に薬剤を投与することによって達成される。微小毛細管または毛細管床という用語は、真皮領域内の脈管またはリンパ排液経路のいずれかを指すと理解されるべきである。
【0035】
作用に関する何らかの理論的機構に拘束されるものではないが、真皮中への投与に際して観察される迅速な吸収は、真皮中の血管およびリンパ管が豊富な叢の結果として達成されると考えられる。しかし、真皮中の血管叢およびリンパ管叢の存在は、それ自体によって、増大した高分子吸収を生じさせるとは予想されないであろう。これは、毛細管内皮が、通常、高分子(例えば、タンパク質、多糖、核酸ポリマー、PEG化タンパク質などのような結合したポリマーを有する物質など)に対して低い浸透性または不浸透性であるためである。このような高分子は、少なくとも1000ダルトンの分子量、または少なくとも2000ダルトン、少なくとも4000ダルトン、少なくとも10,000ダルトンもしくはそれ以上のより高い分子量を有する。さらに、間質から血管部分への比較的遅いリンパ排液はまた、真皮内への医薬物質の配置による血漿濃度の迅速な増大を生じさせる、とは予想されないであろう。
【0036】
本明細書で報告する予想外に増大した吸収についての1つの可能性のある説明は、真皮乳頭層に容易に達するように物質の注射を行うと、血流と毛細管の浸透性との増大が生じるということである。例えば、3mmの深さへの針刺しによって血流の増大が生じることが知られており、これは、疼痛刺激とは無関係でありヒスタミンの組織放出のためだと考えられている(非特許文献9)。これは、皮膚の損傷に応答して引き起こされる急性の炎症性反応が、血流と毛細管の浸透性との一時的な増加を生じさせるという観察(非特許文献10;非特許文献11参照)と一致する。同時に、皮内層への注射は、間質圧力を増大させることが予想されるだろう。約−7mmHg〜約+2mmHgの値(「正常範囲」を超える)からの間質圧力の増大は、リンパ管を膨張させ、かつ、リンパ流を増大させることが知られている(非特許文献12)。従って、皮内層への注射によって引き起こされた増大した間質圧力が、増大したリンパ流、および真皮に注射された物質の増大した吸収を引き起こすと考えられる。
【0037】
「改善された薬物動態」とは、例えば、標準的な薬物動態学的パラメータ(例えば、最大血漿濃度までの時間(Tmax)、最大血漿濃度の大きさ(Cmax)または検出可能な最小血中濃度または血漿濃度を引き起こすまでの時間(Tlag))によって測定されるように、薬物動態学のプロフィールの増大が達成されることを意味する。増大した吸収プロフィールとは、このような薬物動態学的パラメータによって測定されるように、吸収が改善されるかまたは吸収がより大きくなることを意味する。薬物動態学的パラメータの測定および最小有効濃度の決定は、当該分野で慣用的に行われる。得られる値は、例えば、皮下投与または筋内投与のような標準的な投与経路との比較によって高められていると考えられる。このような比較においては、皮内層への投与および皮下投与のような基準部位への投与は、同じ用量レベル、すなわち、単位時間当たりの量および容量に関して、同じ量かつ同じ濃度の薬剤並びに同じ担体ビヒクルおよび同じ投与経路を伴うことが好ましいが、これは必ずしも必須ではない。従って、例えば、100μg/mlのような濃度および5分間の期間にわたって100μL/分の速度での真皮への所定の医薬物質の投与が、好ましくは、100μg/mlの同じ濃度および5分間の期間にわたって100μL/分の同じ速度での皮下部分への同じ医薬物質の投与と比較されるだろう。
【0038】
増大した吸収プロフィールは、皮下注射された場合に十分に吸収されない物質(例えば、高分子および/または疎水性物質)に対して特に明らかであると考えられる。一般的に、高分子は、十分に皮下吸収されず、これは、毛細管の孔サイズに対する高分子のサイズのためだけでなく、高分子のサイズによる間質を通じる緩やかな拡散のためでもある。高分子は、疎水性および/または親水性の性質を有する別個のドメインを有し得ることが理解される。これに対し、親水性である低分子は、一般的に皮下投与された場合に十分に吸収され、増強した吸収プロフィールが、皮下投与後の吸収と比較して、真皮への注射において見られない可能性がある。本明細書中の疎水性物質という場合、実質的に不溶性であるほど低い水への溶解度を有する低分子量物質(例えば、1000ダルトン未満の分子量を有する物質)を意味することが意図される。
【0039】
上記のPKの利点およびPDの利点は、皮膚毛細管床の正確な直接的な標的化によって最もよく理解される。これは、例えば、約250ミクロン未満の外径、および2mm未満の露出長のマイクロニードルシステムを用いることによって達成される。このようなシステムは、鋼、シリコン、セラミック、および他の金属、プラスチック、ポリマー、糖、生物学的材料および/もしくは生分解性材料、並びに/またはこれらの組み合わせを含む種々の材料から公知の方法を用いて構成され得る。
【0040】
皮内投与方法のある種の特徴によって、臨床的に有用なPK/PDおよび用量の正確さがもたらされることが見出されている。例えば、針の排出口の皮膚内の配置が、PK/PDパラメータに顕著に影響を与えることが見出された。ベベルを有する、慣用のまたは標準的なゲージ針の排出口は、比較的大きな露出高(排出口の垂直高さ)を有する。針の先端は皮内部分内の所望の深さで配置され得るが、針の排出口の大きな露出高によって、送達物質が皮膚表面により近い、非常に浅い深さで沈着させられる。その結果として、該物質は、皮膚自体によってもたらされる背圧および注射または注入により流体を蓄積することから生じる圧力によって、皮膚の外に流れ出る傾向にある。すなわち、より深い深さでは、より大きな露出高を有する針の排出口は効果的に閉じ込めるが、同じ露出高を有する排出口が皮内部分内のより浅い深さに配置される場合には、効果的に閉じ込めない。典型的には、針の排出口の露出高は、0〜約1mmである。0mmの露出高を有する針の排出口は、ベベルを有さない針の先端である。この場合、排出口の深さは、針の進入深さと同じである。ベベルまたは針の側面を貫く開口のいずれかで形成される針の排出口は、測定可能な露出高を有する。一本の針は、真皮部分への物質送達に適した2つ以上の開口部または排出口を有してもよいことが理解される。
【0041】
また、注射または注入の圧力を制御することによってID投与の間にもたらされる高い背圧を回避し得ることも見出されている。液体界面上に直接に一定圧力をかけることによって、より一定の送達速度を達成することができ、これは、吸収を最適化して、改善された薬物動態学を得ることができる。送達速度および容量を制御して、送達部位における膨疹の形成を妨げ、かつ、背圧によって真皮導入手段が皮膚の外に押し出されるのを妨げることができる。選択された物質に対してこれらの効果を得るための適切な送達速度および容量は、通常の技術のみを用いて実験的に求められ得る。複数の針の間の間隔を増加させることにより、流体分布をより広くして、送達速度を増加させ、または流体容量をより大きくすることができる。さらに、特に、in vivoの分解もしくは除去を受け易い薬剤、または、SC脂肪組織に対する親和性を有する化合物、またはSCマトリクスを介して緩慢に分散する高分子について、ID注入またはID注射によって、慣用のSC投与よりも高い薬剤の初期血漿レベルがしばしば得られることが見出されている。これは、多くの場合、より少ない用量の物質が、ID経路を介して投与されることを可能にする。
【0042】
本発明を実行するのに有用な投与方法としては、ヒト被験体または動物被験体への薬剤および他の物質のボーラス送達および注入送達の両者が挙げられる。ボーラス用量は、比較的短期間、典型的には、約10分未満にわたって単一の容量単位で送達される単一の用量である。注入投与は、比較的より長い期間、典型的には、約10分を越える期間にわたって、一定または変えることができる選択された速度で流体を投与することを含む。物質を送達するために、真皮導入手段を、皮内部分に直接標的化される導入を提供する被験体の皮膚に隣接させて配置し、1つまたは複数の物質は皮内部分に送達または投与され、ここでそれらは局所的に作用するかまたは血流によって吸収されて系統的に分配され得る。真皮導入手段を、送達される1つまたは複数の物質を含む貯蔵所に連結してもよい。送達または投与される1つまたは複数の物質の形態は、製薬上許容可能な希釈剤または溶媒、乳濁液、懸濁液、ゲル、懸濁または分散されたマイクロ粒子およびナノ粒子のような粒子物、並びに同一のin−situ形成ビヒクル中の該物質の溶液が挙げられる。皮内部分への貯蔵所からの送達は、受動的(送達される1つまたは複数の物質に対して外圧または他の駆動手段を適用しない)および/または能動的(圧力または他の駆動手段を適用する)のいずれかで行なわれてもよい。好ましい圧力生成手段の例としては、ポンプ、シリンジ、エラストマー膜、ガス圧力、圧電性ポンプ、電動ポンプ、電磁気ポンプ、または皿ばねもしくは皿ばね座金、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。所望される場合、物質の送達速度を、圧力生成手段によって可変的に制御できる。その結果として、物質は、真皮部分に入り込み、臨床的に有効な結果を生成するのに十分な量および速度で吸収される。
【0043】
本明細書中に使用する場合、「臨床的に有効な結果」という用語は、1つまたは複数の物質の投与から生じる、診断的に有用な応答および治療的に有用な応答の両方を含む臨床的に有用な生物学的応答を意味する。例えば、疾患または症状の診断試験または予防または処置は、臨床的に有効な結果である。このような臨床的に有効な結果としては、診断的結果(例えば、イヌリン注射後の糸球体ろ過圧の測定、ACTH注射後の子供の副腎皮質機能の診断、コレシストキニン注射によって胆嚢を収縮させて胆汁を排出させることなど)、並びに治療的結果(例えば、インスリン注射による血糖値レベルの臨床的に適切な制御、副甲状腺ホルモンまたは成長ホルモンのようなホルモン注射後におけるホルモン欠乏の臨床的に適切な管理、抗毒素の注射による毒性の臨床的に適切な処置など)が挙げられる。
【0044】
本発明に従って皮内送達され得る物質は、製薬上活性な物質または生物学的に活性な物質を含むことが意図され、これらの物質としては、診断薬、薬剤、および例えば、機能性食品のような治療上または健康上の利益をもたらす他の物質が挙げられる。本発明において有用な診断用物質としては、例えば、イヌリン、ACTH(例えば、コルチコトロピン注入)、黄体化ホルモン放出ホルモン(例えば、ゴナドレリンハイドロクロライド)、成長ホルモン放出ホルモン(例えば、セルモレリンアセテート)、コレシストキニン(シンカリド)、副甲状腺ホルモンおよびその断片(例えば、テリパラチドアセテート)、甲状腺放出ホルモンおよびその類似体(例えば、プロチレリン)、セクレチンなどのような高分子物質が挙げられる。
【0045】
本発明と共に使用され得る治療用物質としては:α−1抗トリプシン、抗新脈管形成剤、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似体、セレダーゼ(ceredase)、COX−IIインヒビター、皮膚薬、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作用薬およびドーパミン拮抗薬、エンケファリンおよび他のオピオイドペプチド、上皮増殖因子、エリスロポイエチンおよび類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモンおよび類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジンおよびヒルジン類似体(例えば、ヒルログ(Hirulog))、IgEサプレッサ、インスリン、インスリノトロピン(insulinotropin)および類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似体、ヘパリン、低分子量ヘパリンおよび他の天然グリコアミノグリカン、変性グリコアミノグリカン、もしくは合成グリコアミノグリカン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、PEG化抗体、PEG化タンパク質あるいは親水性ポリマーもしくは疎水性ポリマーまたは追加の官能基で変性された任意のタンパク質、融合タンパク質、単鎖抗体断片あるいは付着タンパク質、高分子、もしくは追加の官能基の任意の組み合わせを有する単一鎖抗体断片、麻酔鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組換え型可溶性レセプター、スコポラミン、セロトニン作用薬およびセロトニン拮抗薬、シルデナフィル(sildenafil)、テルブタリン、血栓崩壊剤、組織プラスミノゲン活性薬、TNF−拮抗薬およびTNF−拮抗薬、
ワクチン(担体/補助薬を含むかまたは含まない、中毒、関節炎、コレラ、コカイン中毒、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、黄熱病、RSウイルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎およびE型肝炎)、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタイン−バーウイルス、CMV、クラミジア、分類不能型ヘモフィルス、モラクセラカタル、ヒトパピローマウイルス、結核(BCGを含む)、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症、マラリア、E−コリ(E-coli)、アルツハイマー病、H.ピロリ(H.Pylori)、サルモネラ、糖尿病、癌、単純疱疹、ヒトパピローマなどに関連する、予防抗原および治療抗原(サブユニットタンパク質、ペプチドおよび多糖、多糖結合体、トキソイド、遺伝子ベースのワクチン、弱毒生ワクチン、リアソータントワクチン、不活性化ワクチン、全菌体ワクチン、ウイルスおよび細菌ベクターを含むが、これらに限定されない)を含む)、
主要な治療剤(例えば、感冒用薬剤、抗嗜癖薬、抗アレルギー薬、抗吐薬、抗肥満症薬、抗骨粗鬆薬(antiosteoporeteic)、抗感染薬、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、関節炎治療薬、ぜん息治療薬、鎮痙薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛調合物、抗動揺病調合物、制吐薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱薬、抗コリン作動薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、血管拡張薬(全身性、心臓、末梢および大脳を含む)、骨の刺激薬、中枢神経系刺激薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経様作動薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよび他の高分子、精神刺激薬、鎮静薬、および性機能不全およびトランキライザ)のすべてを含むその他の物質、
が挙げられる。
【0046】
インスリン注入データの薬物動態学的分析を、以下のように行った。段階的非線形の最小二乗回帰を使用して、各個の動物からのインスリン濃度−時間データを分析した。最初に、経験的な二指数関数(biexponential)方程式を、陰性対照条件(negative control condition)についてのインスリン濃度−時間データに当てはめた。この分析は、残余インスリンの一次放出を仮定し、そして、放出の一次速度定数、放出部位での残余インスリン濃度、放出のための遅延時間、並びに全身的循環からのインスリンの除去の一次速度定数についてのパラメータを回収した。分析のこの段階で回収されるパラメータは、本質的な重要性を有するものではなく、内因性供給源由来の循環するインスリン部分について説明するだけのものである。
【0047】
この分析の第二段階は、皮下注入または皮内注入の間または後のインスリン濃度−時間データへの明示的コンパートメントモデル(explicit compartmental model)をあてはめることを伴った。この数学的モデルに基づいたスキームを図1の上部に示す。[PK/PDモデル図]。インスリンの注入は、t=0からt=240分まで続け;遅延時間(tlag,2)後、注入部位からの吸収は、吸収速度定数kaによって支配される一次プロセスによって影響された。全身循環に吸収されたインスリンは、未知の部分的な生物学的利用能Fによって悪影響を及ぼされる見掛けの容量Vへと分配され、一次速度定数Kに従って除去される。このフィッティングの手順によって、tlag,2、ka、V/F、およびKの推定値が回収され;内因性インスリンの性質に関連するパラメータ(CR、tlag,1、kR)(これらは、この分析の第一段階で回収される)を、定数として扱った。
【0048】
パラメータの推定値は、平均値±SDとして報告される。2種類の異なるインスリン投与モデル(皮下注入対皮内注入)の間の特異的パラメータの差異の有意性を、ペアのスチューデントt検定を用いて評価した。
【0049】
インスリン注入データの薬力学的分析を、以下のように算出した。グルコースの血漿濃度を、インスリンの薬理学的効果についての代用物として使用した。時間tについての応答変数R(血漿グルコース濃度)における変化を、以下の
【0050】
【数1】

【0051】
のようにモデル化した。
【0052】
式中、kinは、グルコースのゼロ次の注入であり、koutは、グルコースの排出に影響する一次速度定数であり、Eは、S字形ヒル(Hill)関係に従うインスリンの効果である。
【0053】
【数2】

【0054】
式中、EMaxはインスリンによるkoutの最大刺激であり、EC50はkoutの刺激が最大値の半分であるインスリン濃度であり、Cはインスリンの濃度であり、γは該関係のヒル係数である。最初のモデル化の試みは、薬理学的応答のメディエイタとしてインスリンの血漿濃度を利用した。しかし、この手法は、血漿インスリンの濃度を増加させることに対する血漿グルコースの応答の遅れを取り込んでいなかった。そこで、最終的に、効果−コンパートメントモデル化手法を採用した。この手法では、インスリンの効果が、全身的薬物動態学的コンパートメントにとって皮相的な仮定的効果コンパートメントによってもたらされた。
【0055】
薬力学的分析を、二段階で行った。この分析の第一段階においては、グルコースの性質に関連する薬物動態学的パラメータ(koutおよびグルコースの分配容量(Vグルコース))の最初の推定値を、陰性対照条件でのグルコース濃度−時間データから求めた。次いで、完全に結びつけた薬物動態学的−薬力学的モデルを、各動物に対する陰性対照条件および各インスリン送達条件からのグルコース濃度−時間データに同時にあてはめた(すなわち、2セットの薬力学的パラメータを各動物から得た:一方は皮下インスリン注入/陰性対照データの同時分析から、そして他方は皮内インスリン注入/陰性対照データの同時分析から)。すべての薬力学的分析において、各動物からのインスリン濃度−時間データの薬物動態学的分析の間に得られるインスリンの性質を支配するパラメータは、一定値を保持した。
【0056】
すべての他の薬物動態学的分析を、類似のソフトウエアプログラムおよび当該分野で知られている技術を使用して、非コンパートメント法を使用して算出した。
【0057】
本発明について一般的に述べてきたが、以下の具体的であるが非限定的な例および添付の図面についての参照は、真皮導入を実施するための種々の例、直接標的化薬剤投与法、および改善されたPKおよびPD効果をもたらす真皮投与薬剤物質の例を示す。
【0058】
単一の針を備える真皮導入微小装置の代表例は、34ゲージの鋼材(MicroGroup,Inc.,Medway,MA)から用意され、800グリットのカーボランダム砥石車を使用して、1つの28度のベベルを研磨した。針を、アセトンおよび蒸留水中、一連の超音波処理によって洗浄し、そして蒸留水を用いて流れ検査を行った。マイクロニードルを、UV硬化型エポキシ樹脂を使用して、小口径のカテーテルチューブ(Maersk Medical)に固定した。深さを制限する制御機構として作用するカテーテルチューブのハブで、機械的位置合わせ板(indexing plate)を使用して、針の長さを設定し、そしてこの針の長さを光学顕微鏡によって確認した。種々の長さの針を使用する実験のために、位置合わせ板を使用して、露出する針の長さを0.5、0.8、1、2または3mmに調整した。カテーテル注入口で構成Luerアダプターを介して、流体計量装置(ポンプまたはシリンジのいずれか)に連結した。注入の間、針を皮膚表面に対して垂直に挿入し、ボーラス送達のために適度な手の圧力によって所定の位置に保持するか、またはより長時間の注入のために医療用接着テープによって垂直な状態を保持した。注入の直前および直後の両方において、機能および流体の流れについて装置を検査した。このルーアーロック単一針カテーテルの設計を、以下、SS1_34と表す。
【0059】
中央の注入口から各個の針に分枝する低容量流路を備え、アクリルポリマーから機械加工された直径1インチのディスクからなる、さらに別の真皮導入アレイ微小装置を調製した。ハミルトン(Hamilton)マイクロシリンジに連結される低容量カテーテルラインを介して流体を投入し、シリンジポンプによって送達速度を制御した。直径15mmの円形パターンを備えるディスク内に針を配列した。3針のアレイおよび6針のアレイを、針と針の間隔をそれぞれ12mmおよび7mmとして組み立てた。すべてのアレイの設計は、単一のベベル、1mm長の34Gステンレス鋼マイクロニードルを使用した。12mm間隔の3針のカテーテルの設計を、以下でSS3_34Bと表し、7mm間隔の6針のカテーテルの設計を、以下でSS6_34Aと表す。
【0060】
中央の注入口から各個の針に分枝する低容量流路を備え、アクリルポリマーから機械加工された直径11mmのディスクからなる、さらに別の真皮導入アレイ微小装置を調製した。ハミルトン(Hamilton)マイクロシリンジに連結される低容量カテーテルラインを介して流体を投入し、シリンジポンプによって送達速度を制御した。直径約5mmの円形パターンを備えるディスク内に針を配列した。約4mm間隔の3針のアレイを、上記のようなカテーテルに連結した。これらの設計を、1mm、2mmおよび3mmの針の長さそれぞれについて、以下、SS3S_34_1、SS3C_34_2およびSS3S_34_3と表す。
【0061】
皮膚の進入に利用可能な長さが1〜2mmであるように、先端部付近で90度の角度で曲げられたステンレス鋼の30ゲージの針を使用して、さらに別の真皮導入ID注入装置を組み立てた。この針を挿入したとき、針の排出口(針の先端部)は皮膚内1.7〜2.0mmの深さであり、そして針の排出口の総露出高は、1.0〜1.2mmであった。この設計を、以下でSSB1_30と表す。
【実施例】
【0062】
(実施例I)
先端部(100μmの露出高)から1.0μmの排出口を有する中空のケイ素ベースの単一管腔マイクロニードル(全長2mmおよび200×100μmのOD、約33ゲージに相当する)を使用して、緩慢注入IDインスリン送達をブタにおいて実証した。このマイクロニードルは、当該分野で知られている方法(特許文献2)を使用して作製され、微小口径のカテーテル(Disetronic)と接続された。このマイクロニードルの遠位端を、プラスチックカテーテル内に配置し、エポキシ樹脂で所定の位置に接合させ、深さを制限するハブを形成した。この針の排出口を、エポキシハブを越えて約1mmに位置付け、これによってこの針の排出口の皮膚への進入を約1mmに制限した(これはブタの皮内部分の深さに相当する)。このカテーテルを、流体送達の制御のためのMiniMed 507インスリンポンプに取り付けた。このマイクロニードルの遠位端を、プラスチックカテーテル内に配置し、エポキシ樹脂を用いて所定の位置に接合させて、深さを制限するハブを形成した。この針の排出口を、エポキシハブを越えて約1mmに位置付け、これによってこの針の排出口の皮膚への進入を約1mmに制限した(これはブタの皮内部分の深さに相当する)。この流体流路の開通性を、視覚的観察によって確認し、そして標準的な1ccのシリンジによって生じる圧力では、閉塞は観察されなかった。このカテーテルを、カテーテルの排出口で構成Luer接続を介して、外部インスリン注入ポンプ(MiniMed 507)に接続した。このポンプを、Humalog(商標)(Lispro)インスリン(Eli Lilly,Indianapolis,IN)で満たし、製造業者の指示に従ってこのカテーテルおよびマイクロニードルにインスリンを入れた。Sandostatin(登録商標)(Sandoz East Hanover,NJ)溶液を、IV注入を介して投与し、基礎的な膵臓機能およびインスリン分泌を抑えるためにブタを麻痺させた。適当な誘導期間およびベースラインサンプリングの後に、この入れられたマイクロニードルを、ハブが止まるまで、動物の脇腹の皮膚表面に垂直に挿入した。2U/時間の速度でのインスリン注入を使用し、4時間維持した。血液サンプルを定期的に引き出し、血清インスリン濃度および血中グルコース値について分析した。注入前のベースラインのインスリンレベルは、このアッセイのバックグラウンドの検出レベルであった。注入開始後、血清インスリンレベルは、プログラムによる注入速度に対応した増加を示した。血中グルコースレベルはまた、インスリンの注入なしの陰性対照標準(NC)と比較して、対応する低下を示し、この低下は慣用のSC注入に比べて改善された。この実験において、当該マイクロニードルは、皮膚の障壁を十分に突破し、薬学上適切な速度でin vivoで薬剤を送達することを実証した。インスリンのID注入は、薬物動態学的に許容可能な投与経路であることが実証され、血中グルコースの減少の薬力学的応答も実証された。ID注入について算出されたPKパラメータは、インスリンが、SC投与を介するよりもはるかに速く吸収されることを示す。ID部分からの吸収は、ほぼすぐに始まる:吸収前の遅延時間(tlag)は、IDおよびSCについて、それぞれ0.88分対13.6分であった。投与部位からの摂取速度もまた、約3倍高められ、IDおよびSCについて、それぞれka=0.0666/分対0.0225/分であった。ID投与によって送達されたインスリンの生物学的利用能は、SC投与よりも約1.3倍高められる。
【0063】
(実施例II)
Lilly Lispro即効性インスリンのボーラス送達を、IDおよびSCのボーラス投与を使用して行った。ID注射微小装置は、真皮導入アレイ設計SS3_34であった。10国際インスリン単位(U)(100μLの容量に相当する)をそれぞれ、糖尿病のユカタンミニブタに投与した。試験動物を、膵島細胞の化学的除去によって予め糖尿病にさせてあり、この試験動物はもはやインスリンを分泌できない。マイクロニードルアレイを介して、またはSC組織部分に側面にそって挿入される標準的30GX1/2インチの針を介してのいずれかによって、試験動物は、そのインスリン注射を受けた。循環血清中インスリンレベルを、市販の化学発光アッセイキット(Immulite,Los Angeles,CA)を使用して検出し、血中グルコース値を、血中グルコースストリップを使用して求めた。ID注射を、分析用マイクロシリンジを使用して手の圧力によって成し遂げ、約60秒にわたって投与した。比較すると、SC投与はほんの2〜3秒を必要とした。図1を参照すると、ID経路を介して投与された場合、ボーラス投与後の血清インスリンレベルは、注射されたインスリンのより迅速な摂取および分配を実証することが示される。SC投与に対する、ID投与については、最大濃度までの時間(Tmax)がより短く、得られる最大濃度(Cmax)はより高い。さらに、図2はまた、血中グルコース(BG)の減少によって測定されるように、投与されたインスリンに対する薬力学的な生物学的応答を実証し、ID投与後早期により多くのインスリンが利用できたので、BGのより迅速かつより大きな変化を示した。
【0064】
(実施例III)
Lilly Lisproは、速効性インスリンと考えられており、天然のヒトインスリンと比較してわずかに変化したタンパク質構造を有する。Hoechstの通常のインスリンは、化学的に類似する天然のヒトインスリンタンパク質構造を保つが、慣用のSC経路によって投与された場合、Lisproよりもゆっくりと摂取される。摂取における任意の差異がこの経路によって識別可能か否かを求めるために、両タイプのインスリンを、ID経路を介してボーラスで投与した。真皮導入微小装置設計SS3_34を使用して、各タイプのインスリンを5U、ID部分に投与した。インスリン濃度対時間のデータを、図3に示す。ID経路によって投与される場合、通常のインスリンおよび速効性インスリンではPKプロフィールは本質的に同一であり、両タイプのインスリンは、慣用のSC経路によって与えられるLisproよりも速い摂取を示した。このことは、ID投与の摂取機構が、投与される物質におけるわずかな生化学的変化によって影響されないことの証拠であり、および、ID送達が、通常のインスリンについて有利なPK摂取プロフィールをもたらし、これは、SC投与された速効性インスリンよりも優れていることの証拠である。
【0065】
(実施例IV)
種々の長さの針を有するマイクロニードルアレイを介するLilly Lispro速効性インスリンのボーラス送達を行い、真皮部分への薬剤の正確な沈着が、SCと比較してPKの利点および相違を得るために必要であることを実証した。そこで、5UのLily Lispro速効性インスリンを、真皮導入設計SS3_34を使用して投与した。同じ針アレイ配置の追加の微小装置を作製し、それによって、微小装置アレイの露出針長を長くして、2mmおよび3mmの長さの針を備えるアレイを含むようにした。ユカタンミニブタの平均的な総真皮厚は、1.5〜2.5mmの範囲である。従って、インスリン沈着は、1mm、2mm、および3mm長の針についてそれぞれ、真皮内、およそ真皮/SC界面、および真皮下、並びにSC内であると予想される。ボーラスインスリン投与は、実施例IIに記載した通りであった。平均インスリン濃度対時間を図4に示す。このデータは、マイクロニードルの長さが増加するにつれて、得られるPKプロフィールがSC投与により近似し始めることを明らかに示している。このデータは、真皮部分を直接標的にすることの利点を実証し、このような利点としては、迅速な摂取および分配、並びに高い初期濃度が挙げられる。このデータは複数の例の平均値であるので、これらは、より長い2mmおよび3mmのマイクロニードルからのPKプロフィールにおける増大する個体間のばらつきを示さない。このデータは、皮膚厚が個体間および単一個体内であっても変化し得るので、真皮部分を正確に標的にするより短い針長が、それらのPKプロフィールにおいてより再現性がよいことを実証する。なぜなら、これらは、同じ組織部分に、より一貫して薬剤を沈着させるからである。このデータは、真皮部分により深く、あるいはSC部分に部分的または完全に物質を沈着させるか投与する、より長いマイクロニードルが、より高い血管化真皮領域への浅い直接標的化投与と比較して、PKの利点を軽減するか排除することを実証する。
【0066】
(実施例V)
Lantus長時間作用型インスリンのボーラス送達を、ID経路を介して送達した。Lantusは、注射による投与部位で微小沈殿物を形成するインスリン溶液である。これらの微小粒子は、身体内で緩慢に溶解して、(製造業者の文献によれば)結晶性亜鉛沈殿物(例えば、Lente,NPH)のような現在の他の長時間作用型インスリンよりも安定な、低レベルの循環インスリンを提供する。Lantusインスリン(10Uの用量、100μL)を、前に記載したような標準的なSC法によって、真皮導入設計SS3_34を使用して、糖尿病ユカタンミニブタに投与した。図5を参照すると、ID経路を介して投与する場合、SCと比べて同様のPKプロフィールが得られた。わずかな相違としては、インスリンのID送達直後にわずかに高い「バースト」が挙げられる。これは、非常に高い分子量の化合物または小粒子であっても、その摂取はID経路を介して達成可能であることを実証する。より重要なことに、これは、身体における生物学的な除去機構が、投与経路によって容易に変化せず、薬剤物質を利用する方法でもないという事実を裏付ける。このことは、長い循環半減期を有する薬剤化合物(例としては、大きな可溶性レセプター化合物または癌治療のためのその他の抗体、あるいはPEG化された薬剤のような化学的に変性された種がある)にとって非常に重要である。
【0067】
(実施例VI)
ヒト顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)(Neupogen)のボーラスID送達を、ユカタンミニブタに、真皮導入微小装置設計SS3_34B(アレイ)またはSS1_34(単一針)を介して投与した。送達速度を、ハーバード(Harvard)シリンジポンプを介して制御し、1〜2.5分の期間にわたって投与した。図6は、GCSFに特異的なELISA免疫学的検定法によって検出されるような、血漿中のGCSFのPK利用能を示す。IV送達およびSC送達を介した投与を、対照として行った。図6を参照すると、GCSFのボーラスID送達は、ID送達と関連するより迅速な摂取を示す。Cmaxは、SCが120分なのに対して、約30〜90分で達成される。非常に高い曲線下面積(AUC)によって証明されるように、生物学的利用能も劇的に約2倍増大する。GCSFの循環レベルは、長期にわたって検出可能であり、ID送達が、薬剤についての固有の生物学的な除去の機構または速度を変化させないことを示す。これらのデータはまた、装置の設計が、ID部分からの薬剤の迅速な摂取に対し最小限の影響を有することを示す。図7において参照されるデータはまた、陰性対照標準(GCSFが投与されない)に対して、GCSFの投与の結果としての白血球の増殖の程度および時間経過を示す。白血球(WBC)数は、標準的な血球計算の臨床的な獣医学的方法によって求めた。ID送達は、同様な臨床的に顕著な生物学的結果を示す。すべての送達手段はほぼ等しいPD結果を与えるが、このデータは、約2倍の生物学的利用能の増加のために、SCと比較して、ID送達が、半分の用量の使用で、本質的に同じ生理学的結果を達成できることを示唆する。
【0068】
(実施例VII)
ID投与実験を、ペプチド薬剤物質(ヒト副甲状腺ホルモン1−34(PTH))を使用して行った。PTHを、4時間の間注入し、続いて2時間の除去を行った。対照のSC注入は、「つまみ上げ(pinch-up)」法を使用して、皮膚に対して横方向のSC部分に挿入される標準的な31ゲージ針によって行われた。ID注入は、真皮導入微小装置設計SSB1_30(皮膚進入に利用可能な長さが1〜2mmであるように、先端部で90度の角度に曲げられたステンレス鋼の30ゲージの針)によって行われた。この針の排出口(針の先端部)は、この針が挿入されたときには、皮膚の1.7〜2.0mmの深さであった。0.64mg/mLのPTH溶液を、75μL/時間の速度で注入した。流速を、ハーバードシリンジポンプを介して制御した。重量規格化送達プロフィール(weight normalized delivery profiles)は、より大きな曲線下面積(AUC)(これはより高い生物学的利用能を示す)、初期サンプリング時点(例えば、15分および30分)でのより高いピーク値(これはID送達からのより迅速な開始を示す)、および注入終了後の迅速な減少を示す(これは、蓄積効果のない迅速な摂取も示す)。
【0069】
(実施例VIII)
インスリンの生物学的利用能およびマイクロニードル装置を介して送達されるNeupogen
Humalog(登録商標)速効性インスリン(lispro)およびNeupogen(登録商標)コロニー刺激因子の両者について生物学的利用能の薬物動態学的パラメータを、非コンパートメントデータの分析を使用して求めた。生物学的利用能を、用量について調整された、各投与ルートについての濃度対時間の血清プロフィールの測定された曲線下面積(AUC)から計算した。例えば、IV投与された用量に対する血管外投与ルートの絶対的生物学的利用能(F)は、次の方程式:
【0070】
【数3】

【0071】
の使用により計算される。
投与方法間の相対的な生物学的利用能は、2つの非血管性投与ルートについての同様の方法で計算される。HumalogインスリンおよびNeupogenの血液レベルを、上記のようなSC送達またはID送達に続いて測定した。
【0072】
皮内Hexsilマイクロニードルおよび標準皮下(SC)カテーテル針によって、2U/時間の割合で4時間にわたって注入したHumalogインスリンについては、相対的な生物学的利用能は、1.29+/−0.12(実験数n=3)であった。これは、皮内ルート経由で投与されたインスリンの生物学的利用能の約30%の増加を示す。この生物学的利用能の増加は、(1−1/1.29)、すなわち22.5%の用量節約効果をもたらす。言いかえれば、標準SC注入で得られる同様の血中インスリンレベルを達成するために、SC用量の77.5%だけを皮内に投与すればよい。
【0073】
Neupogenについては、2つのID投与ルートおよびSCの間のIV投与に関して計算された絶対的な生物学的利用能を、表1(実験数n=6)に示す。各IDマイクロニードル投与法について、Neupogenの絶対的な生物学的利用能は、SCの42%に対して、およそ60%であった。IDルートの相対的な生物学的利用能は、SCに対して約40〜45%の増加を示す。したがって、Neupogenの同様な血中レベルを達成するためには、平均してSC用量の約70%(42/60)のみを皮内に送達すればよい。
【0074】
【表1】

【0075】
用量を適切に低減させるために有利に皮内に送達できる他の物質に関して、慣用の実験によって、同様の測定を行うことができる。時間にわたる血中レベルを求め、AUCを計算するための適切な手段は、製薬および医学の分野における当業者に知られている。30%以上用量を低減させる能力に起因するコスト削減は、多くの薬剤の場合に重要であることが認識されるであろう。
【0076】
上記の実施例および結果は、多点アレイのID投与および単一針のID投与を使用する本発明の送達方法が、SC注射よりも高いCmaxでより迅速な摂取をもたらすことを実証する。IDの摂取および分配は明らかに、装置の幾何学的パラメータ、約0.5〜約1.7mmの針長を使用すること、針数および針間隔によって影響されない。生物学的吸収についての濃度限界は見出されず、かつ、PKプロフィールは主に濃度に基づく送達速度によって決定された。ID投与の主な制限は、高密度組織部分への外因性物質の漏れのない点滴注入のための総容量および容量注入速度(volumetric infusion-rate)の制限である。ID部分からの薬剤の吸収は、装置の設計および容量注入速度の両方に影響を受けないと思われるため、多数の調合物/装置の組み合わせを使用して、この制限を回避し、必要とされるか所望される治療プロフィールを提供することができる。例えば、容量が制限された投与計画は、より濃縮された調合物を使用するか、あるいは、点滴注入部位の総数を増加させるかのいずれかによって回避され得る。さらに、物質の注入または投与の速度を操作することによって、効果的なPKの制御が得られる。
【0077】
一般に、本明細書中に記載される方法によって教示されるような、真皮導入マイクロニードル装置を介してのID送達は、高い生物学的利用能、並びに、装置の注入パラメータを調整することによって血漿プロフィールを調節する高い能力を有する、容易に利用可能でありかつ再現性のある非経口送達経路を提供する。なぜなら、摂取は、生物学的な摂取パラメータによって速度が制限されないからである。
【0078】
前に記載した実施例において、本発明によって実施される方法は、大きく改善された製薬上適切な速度で、薬剤をin vivoに送達する能力を実証する。このデータは、本発明の方法によれば、ヒトにおける他の薬剤について、記載される方法によって教示されるようなID投与の改善された薬理学的結果が期待されることを示す。
【0079】
本明細書中に挙げたすべての参考文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書中での参考文献の議論は、その著者によってなされた主張を要約することのみを意図するものであって、いずれかの参考文献が特許性に関する先行技術を構成すると認めるものではない。出願人は、引用される参考文献の正確さおよび適切さについて異議を唱える権利を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】速効性の皮内ボーラス投与対皮下ボーラス投与の血漿インスリンレベルの時間経過を示すグラフである。
【図2】速効性インスリンの皮内ボーラス投与対皮下ボーラス投与の血中グルコースレベルの時間経過を示すグラフである。
【図3】速効性インスリン対標準インスリンのボーラスID投与の比較を示すグラフである。
【図4】インスリンレベルの時間経過に対する速効性インスリンのボーラス投与についての、皮内注射の種々の深さの影響を示すグラフである。
【図5】皮下または皮内に投与された持続性インスリンのボーラス投与についてのインスリンレベルの時間経過の比較を示すグラフである。
【図6】皮下または静脈内に、単一針または3点式針のアレイを用いて皮内に送達された、顆粒球コロニー刺激因子の薬物動態学的有用性および薬力学的結果の比較を示すグラフである。
【図7】皮下または静脈内に、単一針または3点式針のアレイを用いて皮内に送達された、顆粒球コロニー刺激因子の薬物動態学的有用性および薬力学的結果の比較を示すグラフである。
【図8】皮下注入と比較した、ボーラス注入、短時間注入、長時間注入による低分子量ヘパリンの皮内送達の比較を示すグラフである。
【図9】皮下注入と比較した、ボーラス注入、短時間注入、長時間注入による低分子量ヘパリンの皮内送達の比較を示すグラフである。
【図10】皮下注入と比較した、ボーラス注入、短時間注入、長時間注入による低分子量ヘパリンの皮内送達の比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与しなければならない治療用物質の量を低減させ、治療効果を達成する方法であって、0〜1mmの露出高を備える排出口を有する少なくとも1本の小ゲージの中空針を介して物質を投与することを含み、前記排出口が0.3〜2mmの深さまで皮膚に挿入され、その結果、物質の送達が0.3〜2mmの深さで起こることを特徴とする方法。
【請求項2】
注射することは、表面下少なくとも約0.3mmから表面下約2mm以下に物質を送達する深さまで針を挿入することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与することは、少なくとも約0.3mmおよび約2mm以下の深さまで皮膚内に針を挿入することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
10分以下の時間にわたって、物質を投与することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
10分を超える時間にわたって、物質を投与することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
用量が、皮下注射に比べて少なくとも10%低減されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
用量が、少なくとも20%低減されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
用量が、少なくとも30%低減されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
物質が、ペプチドまたはタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1nL/分と200mL/分との間の速度で、物質を投与することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記物質が、ホルモンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記物質が、核酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記物質が、疎水性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記物質が、親水性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1本または複数本の針を、皮膚に対し実質的に垂直に挿入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
物質が、インスリン、顆粒球刺激因子およびPTHからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
物質が、核酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者に投与しなければならない治療用物質の量を低減させ、治療効果を達成する方法であって、物質を真皮内に選択的に送達するのに適する長さおよび排出口を有する1本または複数本のマイクロニードルを介して、物質を皮内に注射または注入して真皮内で物質の吸収を得ることを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
1本または複数本のマイクロニードルの長さが、約0.5mm〜約1.7mmであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
マイクロニードルが、30〜34ゲージの針であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
マイクロニードルが、0〜1mmの排出口を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
マイクロニードルが、皮膚表面に対して垂直にマイクロニードルを配置する送達装置中に形成されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
マイクロニードルの針が、マイクロニードルの針のアレイ中に含まれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
アレイが、3本のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アレイが、6本のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
10分以下の時間にわたって、物質を投与することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項27】
10分を超える時間にわたって、物質を投与することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項28】
用量が、皮下注射に比べて少なくとも10%低減されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項29】
用量が、少なくとも20%低減されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
用量が、少なくとも30%低減されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
物質が、ペプチドまたはタンパク質であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項32】
1nL/分と200mL/分との間の速度で、物質を投与することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記物質が、ホルモンであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記物質が、核酸であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項35】
前記物質が、疎水性であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項36】
前記物質が、親水性であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項37】
1本または複数本のマイクロニードルを、皮膚に対し実質的に垂直に挿入することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項38】
物質が、インスリン、顆粒球刺激因子およびPTHからなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項39】
物質が、核酸であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項40】
投与しなければならない医薬物質の量を低減させ、治療または診断効果を達成する方法であって、物質を真皮に選択的に送達するのに適する長さおよび排出口を有する1本または複数本のマイクロニードルを介して、物質を皮内に注射または注入して真皮内で物質の吸収を得ることを含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
用量が、皮下注射に比べて少なくとも10%低減されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
用量が、少なくとも20%低減されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
用量が、少なくとも30%低減されることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
マイクロニードルの長さが、約0.5mm〜約1.7mmであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項45】
マイクロニードルが、30〜34ゲージの針であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項46】
マイクロニードルが、0〜1mmの排出口を有することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項47】
マイクロニードルが、皮膚表面に対して垂直にマイクロニードルを配置する送達装置中に形成されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項48】
マイクロニードルの針が、マイクロニードルの針のアレイ中に含まれることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項49】
アレイが、3本のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
アレイが、6本のマイクロニードルを含むことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
被験体に送達しなければならない生物活性物質の量を低減させ、治療または診断効果を達成する方法であって
a)有効量の生物活性物質で被験体の真皮部分を正確に標的にするための真皮導入手段を有する装置と、被験体の皮膚を接触させること;および
b)真皮部分に前記物質を送達すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
用量が、皮下注射に比べて少なくとも10%低減されることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
用量が、少なくとも20%低減されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
用量が、少なくとも30%低減されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
装置が、シリンジ、注入ポンプ、圧電性ポンプ、電動ポンプ、電磁気ポンプまたは皿ばねを含む流体駆動手段を有することを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項56】
真皮導入手段が、約0.5mm〜約1.7mmまでの長さを有する1本または複数本の中空マイクロカニューレを含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記真皮導入手段が、露出高0〜1mmの排出口を有する1本または複数本の中空マイクロカニューレを含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項58】
被験体に送達しなければならない生物活性物質の量を低減させ、治療または診断効果を達成する方法であって
a)被験体の真皮部分を正確に標的にするための真皮導入手段を有する装置と、被験体の皮膚を接触させること;および
b)lnL/分から200mL/分の速度で有効量の生物活性物質を送達すること
を含む方法。
【請求項59】
用量が、皮下注射に比べて少なくとも10%低減されることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
用量が、少なくとも20%低減されることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
用量が、少なくとも30%低減されることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
真皮導入手段が、前記被験体の皮膚に、約0.5〜約2.0mmの深さまで挿入される1本または複数本の中空マイクロカニューレを有することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記真皮導入手段が、露出高0〜1mmの排出口を有する1本または複数本の中空マイクロカニューレを有することを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項64】
病的状態の症状を治療する方法であって、0〜1mmの露出高の排出口を有する少なくとも1本の小ゲージ中空針を介して、有効量の治療用物質を投与することを含み、前記排出口が0.3mm〜2mmの深さまで皮膚に挿入され、その結果、物質の送達が0.3mm〜2mmの深さで起こり、前記有効量は、同じ症状を緩和するために皮下注射によって投与される有効量より少ないことを特徴とする方法。
【請求項65】
病的状態の症状を治療する方法であって、治療用物質を真皮内に選択的に送達するのに適する長さおよび排出口を有する1本または複数本のマイクロニードルを介して、有効量の治療用物質を皮内に注射または注入して真皮内で治療用物質の吸収を得ることを含み、前記有効量は、同じ症状を緩和するために皮下注射によって投与される有効量より少ないことを特徴とする方法。
【請求項66】
病的状態の症状を治療する方法であって、医薬物質を真皮内に選択的に送達するのに適する長さおよび排出口を有する1本または複数本のマイクロニードルを介して、医薬物質を皮内に注射または注入することによって、有効量の医薬物質を投与し、真皮内での医薬物質の吸収を得ることを含み、前記有効量は、同じ症状を緩和するために皮下注射によって投与される有効量より少ないことを特徴とする方法。
【請求項67】
被験体に有効量の生物活性物質を送達することにより、病的状態の症状を治療する方法であって、
a)有効量の生物活性物質で被験体の真皮部分を正確に標的にするための真皮導入手段を有する装置と、被験体の皮膚を接触させること;および
b)真皮部分に前記物質を送達すること
を含み、
前記有効量は、同じ症状を緩和するために皮下注射によって投与される有効量より少ないことを特徴とする方法。
【請求項68】
被験体に有効量の生物活性物質を送達することにより、病的状態の症状を治療する方法であって:
a)被験体の真皮部分を正確に標的にするための真皮導入手段を有する装置と、被験体の皮膚を接触させること;および
b)lnL/分から200mL/分の速度で、有効量の生物活性物質を送達すること
を含み、
前記有効量は、同じ症状を緩和するために皮下注射によって投与される有効量より少ないことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−506103(P2006−506103A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−557502(P2003−557502)
【出願日】平成14年12月23日(2002.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2002/040841
【国際公開番号】WO2003/057143
【国際公開日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(504248746)
【Fターム(参考)】