説明

治療剤のデリバリーのためのマイクロチューブ

【課題】マイクロチューブを介して治療剤をデリバリーする医療用インプラント及びその製造方法を提供する。
【解決手段】1の実施態様において、患者の体内に合うように適合させられた生物学的に移植可能な構造が提供される。この構造は、その外部表面と物理的に連絡している複数の各マイクロチューブを有することができ、該マイクロチューブは治療剤を含むか又は保持している。他の実施態様においては、移植可能な医療用の装置の製造方法が提供される。この方法は、マイクロチューブの柔軟な層を、生物学的に移植可能な医療用の構造上に設置し、そして上記マイクロチューブを覆うか又は満たすように、治療剤を上記柔軟な層に適用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療剤の標的部位へのデリバリーに関する。より特別には本発明は、患者の標的部位に治療剤をデリバリーするために、標的部位又はその近くに移植された、治療剤を含むマイクロチューブの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
標的部位への治療剤のデリバリーは、現代の薬物の投与において幾度となく繰り返される手順である。治療剤は、直接注射を通じて、並びになんらかの方法で治療剤を保持するインプラントを通じて標的部位にデリバリーされることができる。治療剤をデリバリーするために使用されるインプラントは、疲弊したルーメンを強化し、破裂した血管をつなぐことを含む、いくつかの目的のために働く。これらの各場合において、デリバリーされる治療剤は、インプラントの導入に関連する短期の治療を容易にするだけでなく、周辺領域へ治療剤の長期デリバリーを提供することもできる。
【0003】
インプラントの1の例は、膨張型のステントである。膨張型のステントは、患者のルーメン内壁を支持するように設計された管状の医療用インプラントである。それらは、自己膨張型であるか、又はその替わりにそれらを膨張させるために外部からの力を必要とする。いずれの場合にも、それらはしばしばなんらかの種類のカテーテルを使用することを通じて配置される。
【0004】
ルーメンの内壁とステントとが直接に接触するため、ステントはそれらの有効性を高めるための多様な化合物及び治療剤でコーティングされた。このコーティングが無計画に適用されたり、ステントの製造中またはデリバリー中になんらかの除去を受けたりした場合、ステントのコーティングからその周囲への治療剤の一律の投与量が妥当でなくなるかもしれないために、ステントの有効性に欠陥を生じうる。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
マイクロチューブを介して治療剤をデリバリーする医療用インプラント及びその製造方法が提供される。1の実施態様において、患者の体内に合うように適合させられた生物学的に移植可能な構造が提供される。この構造は、その外部表面と物理的に連絡している複数のマイクロチューブを有し、該マイクロチューブは治療剤を含むか又は保持している。
【0006】
他の実施態様においては、移植可能な医療用装置の製造方法が提供される。この方法は、生物学的に移植可能な医療用の構造上にマイクロチューブの柔軟な層を設置し、そして、マイクロチューブを覆うか又は満たすように治療剤を上記柔軟な層に適用することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明中に採用されることのできる5のマイクロチューブの拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施態様による、治療剤で覆われ、且つ治療剤を含むマイクロチューブの柔軟な層の拡大透視図である。
【図3】図3は、マイクロチューブの柔軟な層で覆われたステントの側面図であり、該図は、すべて本発明の他の実施態様による、ステントに結合したマイクロチューブを強調するための拡大された部分を有する。
【図4】図4は、図3の線III−IIIに沿った拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施態様によるステント中に分散されたマイクロチューブを覆い、そして満たす治療剤を提供するためのシステムの図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施態様によるステント中に分散されたマイクロチューブを覆い、そして満たす治療剤を提供するためのシステムの図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施態様による移植可能な医療用インプラントをコーティングするために使用されることのできる、ポリマーマトリックス中に分散されたマイクロチューブの拡大図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施態様による移植可能な医療用インプラントをコーティングするために使用されることのできる、ポリマーマトリックス中に分散され、研磨されたマイクロチューブの拡大図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施態様による医療用インプラントを形成するために使用されるマイクロチューブの柔軟な層の断面図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施態様による医療用インプラントとして使用されるマイクロチューブの柔軟な層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
図1は、本発明の多様な実施態様において使用することができるいくつかの異なるマイクロチューブの拡大断面図を提供するものである。図1において見られるとおり、マイクロチューブは、直径数十ミクロンであってヒトの毛よりも細いサイズであることができ、U-、Y-、星型、及び卵型の横断面を含む多様な横断面構成で構築することができる。マイクロチューブは中空の閉じた管、1以上の開放末端を有するスリーブ、そして中実の構造であることができる。図1のマイクロチューブは、少なくとも1の開放末端を有し、中空であるとして描かれている。マイクロチューブは金属、セラミックス、及び硬質カーボンを含む、多数の材料で作ることができる。本発明に従ってマイクロチューブを採用する1の利点は、それらの使用に関係する表面を増加させられることである。
【0009】
図2は、マイクロチューブ21の内側表面26及び外側表面22の両方に治療剤25のコーティングを有する、マイクロチューブ21の柔軟な層20の拡大図を提供する。この実施態様において、マイクロチューブ21は、図1に示されたものを含むいかなる他の望ましい断面を有することもできるにも拘らず、円形の断面を有する。マイクロチューブ21を、柔軟な層21を形成するように、互いに網掛けされる。この柔軟な層20は、柔軟且つ型取りできる、フェルト様のマットとして作用することができる。マイクロチューブ21は、図2に図示されたようにこの実施態様において、互いにランダムに位置することができる。替わりにそれらは、柔軟な層20を作り出すためにいくつかの種類のパターンに配置することができる。いずれの状況においても、実質的に単一の構造又はユニットとしてふるまうために、マイクロチューブが互いに相互作用し、且つ支持しあうように、それらを網掛けすることが望ましい。
【0010】
治療剤25がマイクロチューブ21をコーティング又はそれらに浸透するまで、マイクロチューブを治療剤25に浸漬することによって、治療剤25をマイクロチューブ21に適用することができる。マイクロチューブ21は、それらの間に空隙又は空間を作るようなやり方で隣同士で位置することができる。これらの空隙又は空間は、治療剤中にマイクロチューブ21の層を漬けること、且つ、治療剤がマイクロチューブ21に沿ってその中又は周囲を上がっていけるようにすることで、治療剤で満たすことができる。
【0011】
図3は、本発明の他の実施態様において採用することができるような、マイクロチューブ33で覆われたステント30の側面図である。図3の拡大された部分31は、マイクロチューブ33で覆われた、ステント30の2つの筋交い35の交点を図示する。図3に見られるように、マイクロチューブ33はステント30の筋交い35を完全に覆うことができ、且つ符号数字34で示されるように、筋交い33を越えて外側へ広がることもできる。筋交い35を完全に覆うことによって、マイクロチューブ33によって保持された治療剤を、より均一に体内の標的部位へ放出することができる。
【0012】
インプラントが膨張型であるか又は再構成型である場合、インプラントの再構成中に少なくとも偏向し又は動く、インプラント上の点に柔軟な層を固定することが好ましい。これらの最小限の偏向点に層を固定することによって、インプラントの再構成中に層に与えられる力の強さを減少させられる。再構成中の力を減少させることによって、再構成中に層が除去され、傷つけられ、又は破壊される可能性を減少させることができる。図3の実施態様において、ステント30の膨張の間にステントによって筋交いにかかるかも知れない力を減少させるために、層は連結部32近傍の筋交い35に固定されることができる。
【0013】
図4は、線III−IIIに沿った図3の拡大断面図である。図3中、筋交い35は柔軟なマイクロチューブ33の層で完全に覆われている。この図の中でマイクロチューブ33は管状の形状であるにも拘らず、図1に示された形状を含む多くの他の形状をとることもできた。この実施態様において、マイクロチューブ33は平滑な外部表面を作らず、むしろ、筋交い35上のマイクロチューブ33のランダムな方向性によって決定される粗い表面を作り出す。
【0014】
この実施態様におけるマイクロチューブ33は、多様な連結方法を用いてステント,又は他の装置に連結することができる。これらの方法の1は、マイクロチューブとステントの筋交いを、それらが互いに接触していた間に加熱することを含んだであろう。ここで、筋交いの分子又は原子とマイクロチューブが、熱運動によって混ざり合い、それによってマイクロチューブを筋交いに拡散結合させる。金属のマイクロチューブもまた、金のような生物適合性のろう付け材料でステントにろう付けすることによって結合することができる。替わりに、マイクロチューブは、その後ステントの表面めっきに使用することのできる、金のような電解質性のめっき材料であることもできる。レーザー又は抵抗溶接もまた、インプラントに柔軟な層を張り付けるのに使用することができる。レーザー溶接の1の利点は、層をインプラントへ正確に固定することを可能とすることである。加圧熱結合プロセスを用いても、マイクロチューブをインプラントに結合させることができる。
【0015】
他の実施態様のおいては、柔軟な層を作り出し、そしてそれをインプラントに適用するよりも、マイクロチューブを単にインプラントに直接スプレーし又はインプラントをマイクロチューブを含むポリマー又は他のコーティングのバットに漬けることができる。
【0016】
図5は、本発明の他の実施態様にしたがって、治療剤を含むマイクロチューブ53でステント51をコーティングするために使用されることができるシステム50を示す。このシステム50は、貯蔵容器55、ライン54、及びライン54を介して貯蔵容器55と流動体で連絡しているノズル52を採用することができる。この実施態様において、治療剤53、又はマイクロチューブとポリマー接着剤の混合物を貯蔵容器55中に保持し、製造品51をコーティングするために製造品51にスプレーすることができる。そのようなコーティングに適したポリマー接着剤は、シリコン(例えば、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサン)、ポリウレタン(ポリカーボネートウレタンを含む)、一般的な熱プラスチックエラストマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリオレフィンエラストマー、エチレン-プロピレンテルポリマーラバー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、及びそれらの組み合わせを含む。製造品が前もってマイクロチューブでコーティングされていた場合、治療剤を主成分とする混合物を用意し、製造品51にスプレーすることができる。逆に、製造品が前もって処理されていない場合、マイクロチューブと治療剤の混合物を製造品51にスプレーすることができる。
【0017】
図6は、本発明の他の実施態様に従って、前もってマイクロチューブでコーティングされたステント63の浸漬プロセスを示す。この実施態様におけるコーティングプロセスは、該プロセスを容易にし、既にステント63上にあるマイクロチューブ中へ又はその周囲へ治療剤が上がっていくように、真空チャンバー64中で実施することができる。この実施態様における真空力は、バルブ66を有するライン67を介して真空チャンバー64に連結した真空ポンプ65を使用して作り出す。
【0018】
図7は、製造品79表面の周囲の、又はこれを覆うマイクロチューブ72の拡大図を提供する。ここで、マイクロチューブ72は、エポキシのようなポリマーマトリックス74中に分散され、マトリックス74がマイクロチューブを満たすことを妨げる粘度を有する。ポリマーマトリックス74はまた、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンタン、ポリエーテルエーテルケトン、液体結晶ポリマー、ポリスルホン、ポリイミド及び類似の性質を有する、他の好適な”硬質”ポリマーを含むことができる。ポリマーマトリックスは、単一のポリマー又は複合ポリマーから作ることができる。この実施態様におけるマイクロチューブ72は、さらなる構造的支持をそれらの相互作用によってポリマーに提供することができる。この実施態様において、マトリックス74が硬化した後、ポリマーマトリックスは表面70に露出されたいくつかのマイクロチューブを有する実質的に平滑な表面70に硬化することができる。
【0019】
図8は、本発明の他の実施態様に従って、粘度の高いポリマーマトリックス84中に分散された、研磨されたマイクロチューブ82の拡大側面図を提供する。この実施態様においては、マイクロチューブ82を、硬化させる前にポリマー中に置くことができる。ポリマーの表面80は、ポリマーマトリックスの表面80に露出したマイクロチューブの開放末端を露出するように研磨することができる(図8に示すように)。研磨プロセスを通じてマイクロチューブの末端が露出することは、マイクロチューブがより効果的に治療剤をその内部ルーメンに引き込むことを可能にする。この実施態様において、マイクロチューブは、ポリマーマトリックスにさらなる構造的支持を提供し、並びに治療剤の標的部位へのデリバリーを容易にする。本実施態様においては、一般的により長いマイクロチューブが望ましい。
【0020】
図9は、粘度の高いポリマーマトリックス93中に分散されたマイクロチューブ92の横断面切欠図を提供する。ここで、ポリマーマトリックスを、例えば移植片である医療用インプラント94のように形成した。この実施態様において、マイクロチューブ92は、円形の断面を有し、そして、上記のようにスプレーし、浸漬し、又は他の方法でインプラントに適用するよりむしろ医療用インプラントの形状に形成される。
【0021】
図10は、本発明の他の実施態様による、マイクロチューブ102の柔軟な層104の側面図を提供する。この実施態様において、柔軟な層104は、例えば大動脈101中の動脈瘤を満たす塞栓剤100である医療用インプラントのように形成することができ、標的部位に治療剤をデリバリーするために標的部位に設置することができる。言い換えれば、本インプラント104は、上記のステントを構造的に支持するよりもむしろさらなる構造的利益を提供せずに、単純に治療剤を標的部位にデリバリーする。
【0022】
この実施態様におけるマイクロチューブ102は、互いに網掛けし、柔軟な層104のような構造メンバを形成するために一緒に焼結することができる。治療剤105は、浸漬又は他の有効な方法によってマイクロチューブ102に適用されることができる。いったん調製されると、このインプラントは標的部位への治療剤の短期又は長期のデリバリーのために、大動脈又は体の他の標的部位に挿入されることができる。
【0023】
上記の医療用インプラントは、膨張型ステント、ステント移植片、末梢挿入セントラルカテーテル(PICCs)、動脈心室(arterioventricular)シャント(a-vシャント)、血管カテーテル、塞栓剤、大静脈フィルター、動脈瘤コイル、移植型プロテーゼ、及び移植型ファスナーを含む多くの医療用インプラントのいずれか1であることができる。他のものと同様に、これらのインプラントは、医療用装置によって体内の標的部位に運ばれ、そして標的部位に医療による軽減又は修復を提供するために配置されることができる。それらはまた、より侵入性の方法によっても設置されることができる。
【0024】
上記各実施態様におけるインプラントはまた、従事者がインプラントを位置決め又は配置するのを助ける、トレーサー物質を含むこともできる。例えば、トレーサーが採用された場合、ステントが標的部位に到達するために体内のルーメンを蛇行して通るときに、ステントの進行と位置を追跡するために使用されることができる。
【0025】
治療剤は、薬物活性のある化合物、脂質のような担体ベクターを伴うか又は伴わない核酸、(ヒストンのような)圧縮剤、(アデノウイルス、アデノ関連のウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、及びa―ウイルスのような)ウイルス、ポリマー、ヒアルロン酸、タンパク、ターゲティング配列を有するか又は有さない細胞などを含むことができる。
【0026】
本発明に関連して使用される治療剤の例は、薬物活性のある化合物、タンパク、細胞、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNA圧縮剤、遺伝子/ベクター系(すなわち、核酸の取り込み及び発現を可能とするいずれかの媒体)、核酸(例えば、組換え核酸;裸のDNA、cDNA、RNA;感染性のベクター中又はウイルスベクター中のゲノムDNA、cDNA、又はRNA及び結合したペプチドターゲティング配列をさらに有することのできるもの;アンチセンス核酸(RNA又はDNA);並びに遺伝子配列を含み、膜転位配列(”MTS”)のようなフェリータンパクをコードしているDNAキメラ及び単純ヘルペスウイルス-1(”VP22”)、そして所望の適用によって多くのタイプから選択された、ウイルスの、リポソーム並びにカチオン性及びアニオン性のポリマー及び中性ポリマーを含む。アデノウイルスベクター、単純ヘルペスベクター、パピローマベクター、アデノ関連ベクター、レトロウイルスベクターなどを含むウイルスベクター又はウイルス由来のベクターの例には限りがない。ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPACK(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)のような抗凝固剤;プロブコール及びレチノイン酸のような抗酸化剤;血管形成性及び抗血管形成性の作用物質及び因子;ラパマイシン、アンギオペプチンのような平滑筋細胞増殖遮断剤及び平滑筋細胞増殖を遮断することのできるモノクローナル抗体;デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、アセチルサリチル酸及びメサラミンのような抗炎症剤;ベラパミル、ディルチアゼム及びニフェジピンのようなカルシウム流入ブロッカー、;パクリタキセル(paclitaxcel)、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン(epothilones)、エンドスタチン、アンギオスタチンのような抗新生性/抗増殖性/抗有糸分裂性作用物質及びチミジンキンーゼインヒビター;トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びニトルフラントインのような抗菌剤;リドカイン、ブピバカイン、並びにロピバカインのような麻酔剤;リシドミン、モルシドミン、L-アルギニン、NO-タンパク付加物、NO-炭水化物付加物、ポリマー又はオリゴマーNO付加物のような酸化窒素(NO)供与体;D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗-トロンビン抗体、抗-血小板受容体抗体、エノキサパリン(enoxaparin)、ヒルジン、ワーファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジンインヒビター、血小板インヒビター及びダニ抗血小板因子;成長因子、成長因子受容体アンタゴニスト、転写アクチベーター及び翻訳プロモーターのような血管細胞成長プロモーター;成長因子インヒビター、成長因子受容体アンタゴニスト、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製インヒビター、抑制性抗体、成長因子に対する抗体、成長因子及びサイトトキシンから成る二機能性の分子のような血管細胞成長インヒビター;コレステロール低下剤;血管拡張剤;内因性血管作用性メカニズムの妨害剤;抗-アポトーシス性Bcl-2ファミリー因子及びAktキナーゼのような、細胞死から保護する生存遺伝子;並びにこれらの組み合わせを含む生物学的に活性のある溶質の例には限りがない。細胞は、ヒト由来(自己の又は同種異系の)又は動物由来(異種の)であることができ、問題のタンパクを注入部位にデリバリーすることが望ましい場合、遺伝子工学により作り出される。仲介されるデリバリーは、細胞機能及び生存率を維持するのに必要な剤型に製剤される。いかなる変更も当業者によって日常的に行われる。
【0027】
本発明の実施に有用なポリヌクレオチド配列は、細胞に取り込まれた後に治療的効果を有するDNAまたはRNA配列を含む。治療的ポリヌクレオチドの例は、アンチセンスDNA及びRNA;アンチセンスRNAをコードするDNA;又は欠損した若しくは不足した内因性分子を補充するためのtRNA若しくはrRNAをコードするDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドはまた、治療的タンパクまたはポリペプチドをコードすることができる。ポリペプチドは、その大きさそしてグリコシル化の有無に拘らず、ポリヌクレオチドの翻訳産物であると解される。主要な例として、治療的タンパク及びポリペプチドは動物において欠損又は不足している種を補填するもの又は毒性効果を通じて作用し、体から有害な細胞を制限又は除去するものを含む。さらに、注入されることのできる、又はそのDNAが組み入れられることのできるポリペプチド又はタンパクは、血管形成因子そして酸性及び塩基性の繊維芽細胞成長因子、血管内皮細胞成長因子、hif-1、上皮細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子α及びβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子、並びにインシュリン様成長因子を含む、血管形成を誘導する能力のある他の分子;成長因子;CDKインヒビターを含む細胞サイクルインヒビター;p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkB及びE2Fデコイを含む抗-再狭窄剤、チミジンキナーゼ("TK")及びそれらの組み合わせ、そして悪性腫瘍治療剤;及びそれらの組み合わせを含む細胞増殖を妨害するのに有用な他の作用物質を制限なく含む。ポリペプチド又はこれらのポリペプチドをコードするDNAとして提供されることのできる、さらに他の有用な因子は、単球化学誘引タンパク("MCP-1")及び骨形成性タンパク("BMP'S")のファミリーを含む。既知のタンパクは、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6(Vgr-1)、BMP-7(OP-1)、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15及びBMP-16を含む。最近好ましいとされるBMPは、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6及びBMP-7のいずれかである。これらの2量体タンパクは、ホモダイマー、ヘテロダイマー又はこれらの組み合わせであってそれ単独又は他の分子と一緒になったものとして提供されることができる。その替わりに又はそれに加えて、BMPの上流又は下流の効果を誘導することのできる分子が提供されることができる。そのような分子は”ハリネズミ”タンパクのいずれか又はそれらをコードするDNAを含む。
【0028】
マイクロチューブを介して治療剤をデリバリーする医療用インプラント及びその製造方法が提供される。上記実施態様は本発明を例示するものである。当業者に明白なように、本発明の精神及び範囲から離れることのない、これらの実施態様への変更並びに全く新しい実施態様は、妥当なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントであって、以下の:
第一の表面を有する、生物学的に移植可能な構造であって、患者の体内に合うような大きさに作られた該移植可能な構造;及び
上記移植可能な構造の上記第一の表面と物理的に連絡している、複数のマイクロチューブ。
を含むことに特徴を有する、前記医療用インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の上記インプラントであって、
上記生物学的に移植可能な構造が第二の表面を有し、上記移植可能な構造の該第二の表面がチャンネルを定義し;及び
上記複数のマイクロチューブが、上記移植可能な構造の上記第二の表面と物理的に連絡していること。
に特徴を有する、前記インプラント。
【請求項3】
請求項1に記載の上記インプラントであって、
上記マイクロチューブがポリマー担体マトリックス内に含まれること、及び
上記マイクロチューブが隣同士でランダムに位置すること。
に特徴を有する、前記インプラント。
【請求項4】
請求項1に記載の上記インプラントであって、上記移植可能な構造が最初の断面積を有する最初のサイズから、第二の相対的により大きな断面積を有する第二のより大きなサイズに膨張可能であることに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項5】
請求項1に記載の上記インプラントであって、上記移植可能な構造がそれ自身、マイクロチューブを含むことに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項6】
請求項1に記載の上記インプラントであって、上記複数のマイクロチューブからの各マイクロチューブが互いに網掛けされて、柔軟な層を形成し、そしてスリーブを定義することに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項7】
請求項1に記載の上記インプラントであって、上記移植可能な構造が、以下の:PICC,塞栓剤、動脈瘤コイル、ステント移植片、a-vシャント、バルーン、大静脈フィルター及び血管カテーテルを含む群から選ばれることに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項8】
請求項1に記載の上記インプラントであって、
上記移植可能な構造が金属を含み、そして
上記複数のマイクロチューブが上記移植可能な構造の上記第一の表面に機械的に結合されていることに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項9】
請求項8に記載の上記インプラントであって、上記複数のマイクロチューブが、上記移植可能な構造の上記第一の表面に焼結され、ろう付けされ、めっきされ、電解によって結合され、金属細工され、拡散によって結合され、又は溶接されることに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項10】
請求項1に記載の上記インプラントであって、上記マイクロチューブがセラミック及びカーボンを含む材料から作られることに特徴を有する、前記インプラント。
【請求項11】
治療剤が上記複数のマイクロチューブ中に含まれることに特徴を有する、請求項1に記載の上記インプラント。
【請求項12】
医療用インプラントの製造方法であって、以下のステップ:
複数のマイクロチューブを供給すること;
マイクロチューブの柔軟な層を生物学的に移植可能な医療用の構造上に設置すること;そして、
上記マイクロチューブを覆うように上記柔軟な層に治療剤を適用すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の上記方法であって、上記マイクロチューブの柔軟な層を生物学的に移植可能な医療用の構造上に設置することが、さらに以下のステップ:
上記柔軟な層を形成するために、上記マイクロチューブを一緒に網掛けすること;そして、
上記柔軟な層を、上記生物学的に移植可能な医療用の構造の表面上に適用すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項14】
請求項13に記載の上記方法であって、上記柔軟な層を生物学的に移植可能な医療用の構造の表面上に適用する上記方法が、拡散による結合、金属細工、焼結、ろう付け、めっき、電解による結合又は溶接から成る群の1以上であることに特徴を有する、前記方法。
【請求項15】
請求項13に記載の上記方法であって、上記柔軟な層に治療剤を適用することがさらに以下のステップ:
治療剤を、上記柔軟な層を形成している上記マイクロチューブ中又はその間へ引き込むために、真空力を作動させること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項16】
請求項13に記載の上記方法であって、治療剤を上記柔軟な層に適用することが、さらに以下のステップ:
上記マイクロチューブの柔軟な層を治療剤中に浸漬すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項17】
請求項12に記載の上記方法であって、上記生物学的に移植可能な医療用の構造が、最初の構成から第二の構成へ膨張可能であることに特徴を有する、前記方法。
【請求項18】
請求項12に記載の上記方法であって、上記生物学的に移植可能な医療用の構造が、以下の:PICC、塞栓剤、動脈瘤コイル、ステント移植片、a-vシャント、大静脈フィルター及び血管カテーテルを含む群から選ばれることに特徴を有する、前記方法。
【請求項19】
請求項13に記載の上記方法であって、ポリマーが、上記マイクロチューブを柔軟な層中へ網掛けするために使用されることに特徴を有する、前記方法。
【請求項20】
請求項19に記載の上記方法であって、上記柔軟な層の外部表面が上記治療剤を適用する前に研磨されることに特徴を有する、前記方法。
【請求項21】
医療用インプラントの製造方法であって、以下のステップ:
複数のマイクロチューブを供給すること;
柔軟な層を形成するために、上記マイクロチューブを一緒に網掛けすること;
生物学的に移植可能な医療用の構造を形成するために、上記柔軟な層を操作すること;そして、
上記マイクロチューブを覆うために、治療剤を上記柔軟な層に適用すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項22】
請求項21に記載の上記方法であって、上記柔軟な層に治療剤を適用することがさらに以下のステップ:
上記柔軟な層を形成している上記マイクロチューブ中へ治療剤を引き込むために、真空力を作り出すこと。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項23】
請求項21に記載の上記方法であって、上記柔軟な層に治療剤を適用することがさらに以下のステップ:
マイクロチューブの上記柔軟な層を治療剤中に浸漬すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項24】
請求項21に記載の上記方法であって、上記生物学的に移植可能な医療用の構造が、最初の構成から第二の構成へ膨張可能であることに特徴を有する、前記方法。
【請求項25】
請求項21に記載の上記方法であって、さらに以下のステップ:
上記生物学的に移植可能な医療用の構造を形成している上記柔軟な層の上記外部表面を研磨すること。
を含むことに特徴を有する、前記方法。
【請求項26】
請求項21に記載の上記方法であって、上記生物学的に移植可能な医療用の構造が、以下の:PICC、塞栓剤、動脈瘤コイル、ステント移植片、a-vシャント及び血管カテーテルから成る群の1の形状に形成されることに特徴を有する、前記方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、ポリマーが柔軟な層中の上記マイクロチューブを網掛けするために使用されることに特徴を有する、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−137060(P2010−137060A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16527(P2010−16527)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【分割の表示】特願2003−528589(P2003−528589)の分割
【原出願日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】